(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265751
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3232 20160101AFI20180115BHJP
F16C 33/80 20060101ALI20180115BHJP
F16C 33/78 20060101ALI20180115BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20180115BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20180115BHJP
F16J 15/40 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
F16J15/3232 201
F16C33/80
F16C33/78 Z
F16C19/18
F16J15/447
F16J15/40 Z
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-10292(P2014-10292)
(22)【出願日】2014年1月23日
(65)【公開番号】特開2015-137723(P2015-137723A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000167196
【氏名又は名称】光洋シーリングテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】境 真太郎
【審査官】
山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−097817(JP,A)
【文献】
特開2001−178076(JP,A)
【文献】
特開2011−075004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3232
F16C 33/80
F16C 33/78
F16C 19/18
F16J 15/447
F16J 15/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心状に配置された内軸と外輪とを備え、当該外輪の軸方向端面に間隔を隔てて対向する側面を有したフランジが前記内軸の端部に設けられた車輪用転がり軸受装置に用いられ、前記内軸と前記外輪との間の環状空間に泥水が浸入するのを防ぐ密封装置であって、
前記外輪の端部内周面に嵌合して当該外輪に固定される円筒部、及び当該円筒部から径方向外方へ延びて前記外輪の軸方向端面に当接する外円環部を有する芯金と、
前記内軸に設けられているシール面に摺接する内リップ部、及び前記内リップ部の径方向外方で前記フランジの側面に近づく側に延びて当該側面に対向する環状突部を有するシール部材と、を備え、
前記環状突部の軸方向端面は、表面張力により泥水の膜が生じ得る隙間を隔てて前記フランジの側面と対向しており、且つ前記シール部材の他の部分と比較して粗面に形成されており、
前記粗面が、前記フランジの側面と対向している径方向の領域を越えてさらに径方向外側にも形成されていることを特徴とする密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪用転がり軸受装置が備えている内軸と外輪との間の環状空間に装着され、この環状空間に泥水が浸入するのを防ぐ密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載され、車輪を回転可能に支持する車輪用転がり軸受装置は、同心状に配置された内軸と外輪とを備えており、これら内軸と外輪との間に介在する転動体(玉やテーパローラ)によって、例えば、外輪に対して内軸が回転可能となる。内軸の軸方向車両外側の端部には、径外方向へ延びるフランジが設けられており、このフランジに車輪及びブレーキディスクが取り付けられる。
このような車輪用転がり軸受装置では、内軸と外輪との間に形成され、転動体が配設されている環状空間に泥水が浸入するのを防ぐために、この環状空間の軸方向両端部に密封装置が装着されている。
【0003】
図3に示すように、環状空間109の軸方向車両外側の端部に装着されている密封装置110として、外輪102に嵌合している芯金111と、この芯金111に固定されているシール部材112とを備えたものがある。
図示例では、芯金111は、外輪102の端部内周面121に嵌合して当該外輪102に固定される円筒部116、及び当該円筒部116から径外方向へ直線的に延びて一部が外輪102の軸方向端面120に接触する外円環部117を有している。
また、シール部材112は、弾性部材からなり、外輪102、及び外円環部117に固定されている外固定部135よりも径方向外側において、当該外固定部135から軸方向に延びる円筒状のデフレクタ140を有している。
【0004】
デフレクタ140は、軸方向においてフランジ108の側面128に近づく方向(車両外側方向)へ延びて当該側面128に所定間隔を隔てて対向する環状突部141を備えている。環状突部141は、当該環状突部141の軸方向端面141eの内周縁141fのみがフランジ108の角部129b付近において側面128と近接するように配設されている。また、環状突部141の内周縁141fとフランジ108の側面128との軸方向の隙間s1の寸法は通常1.0±0.5mmに設定されている。
【0005】
シール部材112は、金型を用いて加硫成形されている。この金型の内面粗さは、旋削加工が施されることによってRa(算術平均粗さ)=0.5程度となっている。そして、当該金型によって加硫成形されるシール部材112の表面粗さも金型の内面粗さと同程度となっている。
【0006】
上述の密封装置110によれば、軸方向端面141eの内周縁141fと側面128との軸方向の隙間s1の寸法が1.0±0.5mmに設定されていることで、高速回転(例えば1000rpm)時において、軸方向端面141eの内周縁141fと、フランジ108の側面128における前記内周縁141fに対向する部分との間に表面張力による泥水wの膜が形成される。密封装置110は、この泥水wの膜の形成により、泥水wが内リップ部131,132,133側へ浸入することを抑制している。これにより、泥水wが内リップ部131,132,133近傍で滞留して内軸103の内リップ部摺動部分が錆びることを防止できる。その結果、内リップ部131,132,133が錆びにより摩耗して不具合が発生することを回避できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記密封装置110では、軸方向端面141eの内周縁141fとフランジ108の側面128との間に泥水wを十分量保持できないために、泥水wが内リップ部131,132,133側へ浸入する虞があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、外部から内リップ部側への泥水の浸入を防止して耐泥水性能を向上させた密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明は、同心状に配置された内軸と外輪とを備え、当該外輪の軸方向端面に間隔を隔てて対向する側面を有したフランジが前記内軸の端部に設けられた車輪用転がり軸受装置に用いられ、前記内軸と前記外輪との間の環状空間に泥水が浸入するのを防ぐ密封装置であって、
前記外輪の端部内周面に嵌合して当該外輪に固定される円筒部、及び当該円筒部から径方向外方へ延びて前記外輪の軸方向端面に当接する外円環部を有する芯金と、
前記内軸に設けられているシール面に摺接する内リップ部、及び前記内リップ部の径方向外方で前記フランジの側面に近づく側に延びて当該側面に対向する環状突部を有するシール部材と、を備え、
前記環状突部の軸方向端面は、表面張力により泥水の膜が生じ得る隙間を隔てて前記フランジの側面と対向しており、且つ
前記シール部材の他の部分と比較して粗面に形成されて
おり、
前記粗面が、前記フランジの側面と対向している径方向の領域を越えてさらに径方向外側にも形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の密封装置によれば、フランジの側面と環状突部の軸方向端面との間に表面張力による泥水の膜が生じ得る。また、本発明の密封装置は、シール部材の環状突部の軸方向端面が粗面に形成されていることによって、平坦に形成されている場合よりも、泥水が軸方向端面上で濡れ易くなり、軸方向端面に保持され易くなる。このため、本発明の密封装置は、軸方向端面が粗面に形成されていない従来のものよりも環状突部の軸方向端面とフランジの側面との間での泥水保持機能を向上させることができる。これにより、本発明の密封装置は、外部から内リップ部側への泥水の浸入を抑えて耐泥水性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の密封装置によれば、外部から内リップ部側への泥水の浸入を防止して耐泥水性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る密封装置が装着されている車輪用転がり軸受装置の断面説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る密封装置の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る密封装置10が用いられている車輪用転がり軸受装置1を示す断面説明図である。また、
図2は、
図1における密封装置10の断面説明図である。
図2では、外輪2及び内軸3(フランジ8及び軸本体部6)を二点鎖線で示している。車輪用転がり軸受装置1(以下、単に「軸受装置」ともいう。)は、自動車の車体に設けられている懸架装置50に対して車輪を回転可能に支持するためのものであり、
図1に示すように、外輪2と内軸3とを備えている。
【0013】
外輪2は円筒形状の部材であり、車体側の懸架装置50に固定される。
内軸3は、軸本体部6と、この軸本体部6の車両内側A1の端部に外嵌して固定されている環状の内輪部材7とを有している。外輪2と内軸3との間には2列で且つ各列に複数の玉4が介在している。外輪2と内軸3とは同心状に配置され、本実施形態では、外輪2に対して内軸3が回転自在となっている。また、この軸受装置1は、複数の玉4を保持する保持器5を備えている。
【0014】
内軸3の車両外側A2の端部には、車輪及びブレーキディスク(図示せず)を取り付けるためのフランジ8が設けられている。このフランジ8が有する車両内側A1の側面28の一部は、外輪2の軸方向端面20と、間隔Sを隔てて対向している。
以上の構成により、軸受装置1は、複列のアンギュラ玉軸受を構成し、図示しない車輪及びブレーキディスクがフランジ8に固定された内軸3を、車両に対して回転可能に支持することができる。
【0015】
フランジ8の側面28は、
図2に示すように、第1側面28aと第2側面28bと第3側面28cとを有している。第1側面28aは、軸本体部6の外周面6aと滑らかに連続している。第2側面28bは、第1側面28aの径外方向において第1側面28aよりも軸方向車両外側A2に設けられている。第3側面28cは、第2側面28bの径外方向において第2側面28bよりもさらに軸方向車両外側A2に設けられている。第1側面28aと第2側面28bとの間には鈍角の第1角部29aが形成されており、第2側面28bと第3側面28cとの間には略直角の第2角部29bが形成されている。第1側面28aは第1角部29aに至るまで滑らかに連続しており、第2側面28bは第1角部29aから第2角部29bに至るまで滑らかに連続している。また、フランジ8の側面28は第2側面28bと第3側面28cとの間に外周面28dを有しており、外周面28dと第3側面28cとは滑らかに連続している。
【0016】
図1に示すように、外輪2の軸方向両端部と内軸3との間には、密封装置10,60が取り付けられている。これら密封装置10,60は、外輪2の径方向外側から外輪2と内軸3との間に形成される環状空間9に泥水wが浸入するのを防ぐ役割を有する。そして、これら密封装置10,60のうち、車両外側A2の密封装置10が本発明の一実施形態に係る密封装置10である。
この密封装置10は、
図2に示すように、外輪2の軸方向一端部に固定されている円環状の芯金11と、この芯金11に取り付けられたシール部材12とを備えている。
【0017】
芯金11は、SPCC等の鋼板をプレス加工することによって環状に形成されている。芯金11は、外輪2の端部内周面21に嵌合して外輪2に固定されている円筒部16と、この円筒部16の軸方向車両外側A2の端部から径外方向へ延びて外輪2の軸方向端面20に当接する外円環部17とを有している。また、芯金11は、円筒部16の軸方向車両内側A1の端部に連続する屈曲部18と、この屈曲部18から径内方向へ延びる内円環部19とを有している。
【0018】
外円環部17は、その先端部17eに至るまで径外方向へ直線的に延びている。先端部17eは、外輪2の端部外周面22a及び後述するデフレクタ40の外リップ部45の基端部内周面49よりも径方向外側、且つ、デフレクタ40の内部に位置している。
外円環部17は、外輪2の軸方向端面20に当接することで、密封装置10全体を軸方向に関して位置決めする。また、外円環部17は、外輪2の軸方向端面20に当接した状態で、フランジ8の第2側面28bと、シール部材12の一部(後述の外固定部35)を挟んで対向するように配置されている。
【0019】
外円環部17は、外輪2の軸方向端面20に接触している当接部17aと、この当接部17aが軸方向端面20に接触した状態で当該軸方向端面20に非接触となる非当接部17bとを有している。当接部17aは外円環部17の基端側(径方向内側)を構成し、非当接部17bは外円環部17の先端側(径方向外側)を構成している。非当接部17bは当接部17aに比べて厚さ(軸方向寸法)が薄くなっており、外円環部17のフランジ8側の面は平坦であるが外円環部17の外輪2側の面は段部を有している。
【0020】
シール部材12は、ニトリルゴム等のゴムを円環状に形成したものであり、芯金11に加硫接着している。シール部材12のゴムの硬度は、JIS−K6253に基づきデュロメータタイプAにより23℃の環境下で測定したデュロメータA硬さで、例えば70〜80度のものが用いられている。シール部材12は、第1シール部13と第2シール部14とで構成されている。第1シール部13は、芯金11の円筒部16、屈曲部18及び内円環部19に固定されている部分であり、第2シール部14は、芯金11の外円環部17に固定されている部分及びその径方向外側の部分である。なお、本実施形態では、第1シール部13と第2シール部14とは一体形成されている。
【0021】
シール部材12は、金型を用いて加硫成形されている。この金型の内面粗さは、旋削加工が施されることによって、Ra(算術平均粗さ)=0.5程度となっている。そして、当該金型によって加硫成形されるシール部材112の表面粗さもRa=0.5程度となっている。ただし、後述する環状突部41の軸方向端面41eは、金型内面における対応部分を粗面に加工することで、シール部材12の他の部分よりも粗面に形成されている。
【0022】
第1シール部13は、芯金11の円筒部16、屈曲部18及び内円環部19に固定されている内固定部30と、この内固定部30から内軸3へ向かって延びている内リップ部31,32,33とを有している。そして、内リップ部31,32,33は、内軸3に設けられているシール面に摺接する。
【0023】
本実施形態では、第1の内リップ部31が摺接するシール面は、フランジ8の側面28(第1側面28a)であり、第2の内リップ部32及び第3の内リップ部33が摺接するシール面は、軸本体部6の外周面6aである。これら内リップ部31,32,33は、外輪2の径外方向(つまり、外部)の泥水、砂、小石等の異物が浸入するのを防止する機能、及び環状空間9に設けられている玉4用の潤滑剤が外部へ漏れるのを防止する機能を有している。
【0024】
第2シール部14は、芯金11の外円環部17に固定されている外固定部35と、この外固定部35と一体であるデフレクタ40とを有している。
外固定部35は、外円環部17(当接部17a及び非当接部17b)よりもフランジ8側の本体部35a、及び非当接部17bと軸方向端面20の間の第1密封部35bを有している。第1密封部35bは、芯金11の当接部17aよりも軸方向において外輪2側に突出した環状の凸部35b−1と、当接部17aの当接面よりも軸方向においてフランジ8側に凹んでいる環状の凹部35b−2,35b−3とを有している。凹部35b−2,35b−3は、凸部35b−1の径方向外側及び内側にそれぞれ配設されている。
芯金11の当接部17aが軸方向端面20に当接した状態で、凸部35b−1は、押圧されて軸方向端面20と密着する。凹部35b−2,35b−3は、凸部35b−1の押圧による非圧縮変形を妨げない機能を有する。
【0025】
デフレクタ40は、外固定部35の径方向外側の端部からフランジ8の側面28に近づく側へ軸方向に沿って延びる環状突部41と、外固定部35の径方向外側の端部からフランジ8の側面28と離れる側へ軸方向に沿って延びる外リップ部45とで構成されている。デフレクタ40は、1.0mm程度の厚さを有する円筒状に形成されている。
【0026】
環状突部41の軸方向端面41eは、フランジ8の側面28と隙間s1を隔てて対向している。軸方向端面41eの内周縁41fは、
図2に示すように、フランジ8の側面28の第2角部29bよりもやや径方向内側に位置しており、軸方向端面41eの内周縁41fのみが当該第2側面28bと軸方向において対向している。
【0027】
また、環状突部41は、密封装置10を外輪2に装着した状態で、軸方向端面41eの内周縁41fと側面28の第2角部29bとの軸方向の隙間s1が、例えば1.0mm程度(0.5〜1.5mm)となるように形成されている。この程度の隙間を生じさせることで、高速回転(例えば1000rpm)時において、軸方向端面41eの内周縁41fと、フランジ8の第2側部28bにおける前記内周縁41fと軸方向において対向する部分との間に表面張力により泥水wの膜が形成される。
また、環状突部41の軸方向端面41eは、加硫金型の内面の当該軸方向端面41eに対応する部分を放電加工によってRa=5〜8程度の粗面にすることで、当該部分と同程度の粗面に形成されている。
【0028】
外リップ部45は、円筒状に形成されており、外輪2の端部外周面22aに当接している。外リップ部45の軸方向端部45eの内周側には、径内方向へ突出した環状の第2密封部48が形成されている。この第2密封部48は、外輪2に対して密封装置10を装着する際に、外リップ部45の軸方向端部45eが径外方向へ拡径するように変形することで生じる外リップ部45の弾性力により、外輪2の端部外周面22aに当接している。また、この第2密封部48よりも外リップ部45の基端側の部分は、端部外周面22aとの間に隙間が形成されている。これにより、第2密封部48を端部外周面22aに全周にわたって線接触させて密封性能を高めている。
【0029】
上述の本発明の実施形態に係る密封装置10によれば、環状突部41の軸方向端面41eの内周縁41fと、フランジ8の第2側面28bにおける前記内周縁41fと軸方向に対向する部分との間に表面張力による泥水wの膜が生じ得る。また、密封装置10は、環状突部41の軸方向端面41eがRa=5〜8程度の粗面に形成されているため、軸方向端面がこれよりも平坦な場合に比べて、泥水wが軸方向端面41e上で濡れ易くなり、軸方向端面41eに保持され易くなる。このため、密封装置10は、軸方向端面41eが前記粗面よりも平坦である従来のものよりも環状突部41の軸方向端面41eとフランジ8の側面28との間での泥水保持機能を向上させることができる(
図2及び
図3参照)。これにより、密封装置10は、外部から内リップ部31,32,33側への泥水wの浸入を抑えて耐泥水性能を向上させることができる。
【0030】
[変形例]
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、環状突部41は、軸方向端面41eの径方向中央に環状突部41の周方向に沿った環状溝を備えていて、環状溝を含む軸方向端面41eの全面に粗面加工が施されている構成であってもよい。環状溝は、断面U字状、断面半円形状、断面V字状、又は断面矩形状とすることができる。また、環状溝は、溝幅に比べて溝深さが浅い構成であり、溝幅は例えば0.4mm、溝深さは例えば0.2±0.1mmとすることができる。この場合、軸方向端面41eは環状溝を備え且つ粗面加工されているので、粗面加工のみの場合よりも更に泥水保持機能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0031】
1:車輪用転がり軸受装置、2:外輪、3:内軸、6a:シール面、8:フランジ、9:環状空間、10:密封装置、11:芯金、12:シール部材、16:円筒部、17:外円環部、20:外輪の軸方向端面、21:外輪の端部内周面、28:側面、28a:シール面、31,32,33:内リップ部、41:環状突部、41e:環状突部の軸方向端面、s1:隙間