(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
編地組織Aおよび編地組織Bの少なくとも一方における編んだ線条体が単繊維繊度が0.5〜20dtexで総繊度が10〜350dtexのモノフィラメント糸および/またはマルチフィラメント糸から形成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の液体保持材。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の液体保持材は、間隔をあけて平行に配置した2つの編地組織Aおよび編地組織
Bが、モノフィラメント糸およびマルチフィラメント糸から選ばれる連結糸によって連結
されている立体編物であって、当該立体編物を形成している編地組織Aおよび編地組織B
の一方または両方が、複数本の編んだ線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を
有し、その編んだ線条体部分で編んだ線条体の長さ方向に沿って編地組織Aと編地組織B
が連結糸によって連結されている立体編物からなっている。
本発明の液体保持材をなす立体編物では、立体編物の一方の表面側に位置する編地組織
Aと立体編物のもう一方の表面側に位置する編地組織Bが間隔をあけて平行に配置されて
いて、当該編地組織Aと編地組織Bが、編地組織Aおよび/または編地組織Bを構成して
いる複数本(多数本)の編んだ線条体2のそれぞれにおいて当該編んだ線条体2の長さ方
向に沿って連結糸1によって多数箇所で連結されていて、編地組織A層(編地組織B層)
/連結糸層(連結糸1よりなる中間層)/編地組織B層(編地組織A層)からなる3層構
造を有している。
【0019】
何ら限定されるものではないが、本発明について図を参照して説明する。
本発明の液体保持材をなす立体編物では、
図1の(a)に示すように、編地組織Aおよ
び編地組織Bの一方のみが
図2(平面図)に例示するような複数本の編んだ線条体2が同
一面で互いに平行に配列した縞状構造を有し、もう一方は前記縞状構造を有しておらず、
そのような編地組織Aと編地組織Bが連結糸1によって連結されているか、または
図1の
(b)に示すように、編地組織Aおよび編地組織Bの両方が
図2(平面図)に例示するよ
うな複数本の編んだ線条体2が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有していて当該
編地組織Aと編地組織Bが連結糸1によって連結されている。
【0020】
編地組織Aおよび/または編地組織Bを形成する編んだ線条体2は、1ウエールまたは
2ウエールの経編みの線条体であることが、立体編物の製造が容易で、しかも立体編物の
通気性、液体保持性、付着した固形分の除去・清掃性などがより良好になることから好ま
しい。編んだ線条体2のウエール数が3よりも大きくなると、立体編物の通気性、液体保
持性、付着した固形分の除去・清掃性などが低下したものになり易い。
編んだ線条体2の経編みの種類は特に限定されず、例えば、1ウエールまたは2ウエー
ルの鎖編み、デンビ編み、挿入編み、それらの複合組織などを挙げることができる。その
うちでも編んだ線条体2は、2ウエールのデンビ編みまたはデンビ編みを含む複合組織で
あることが、編んだ線条体2の保形性などの点から好ましい。
【0021】
図2の(a)および(c)は、編地組織Aおよび/または編地組織Bが1ウエールの経
編みの線条体を同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有する場合の例を示した図であ
り、
図2の(b)は、編地組織Aおよび/または編地組織Bが2ウエールの経編みの線条
体を同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有する場合の例を示した図である。
編地組織Aおよび/または編地組織Bが、
図2の(a)および(c)にみるような1ウ
エールの経編みの線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造からなる場合に、1ウ
エールの経編みの線条体の全てが同じ経編みであってもよいし、または異なる経編みであ
ってもよく、異なる経編みである場合には、例えば、例えば1本おき、2本おきなどで互
いに異なっていてもよい。
また、編地組織Aおよび/または編地組織Bが、
図2の(b)にみるような2ウエール
の経編みの線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造からなる場合に、2ウエール
の経編みの線条体の全てが同じ経編みであってもよいし、または異なる経編みであっても
よく、異なる経編みである場合には、例えば、例えば1本おき、2本おきなどで互いに異
なっていてもよい。
【0022】
さらに、編地組織Aおよび/または編地組織Bは、
図2のものに限定されず、例えば、
1ウエールの経編みの線条体と2ウエールの経編みの線条体とが同一面で互いに1本ずつ
交互に平行に配列した縞状構造を有していてもよいし、1ウエールの経編みの線条体と2
ウエールの経編みの線条体とが同一面で互いに2本ずつ交互に平行に配列した縞状構造を
有していてもよいし、1ウエールの経編みの線条体と2ウエールの経編みの線条体とが同
一面で前者の1本と後者の2本が交互に平行に配列した縞状構造を有していてもよい。
【0023】
編地組織Aおよび/または編地組織Bを形成する編んだ線条体2は、フィラメント糸か
ら形成されていてもまたは紡績糸から形成されていてもよいが、合成繊維製モノフィラメ
ント糸および合成繊維製マルチフィラメント糸の一方または両方から形成されていること
が、立体編物の形状保持性、通気性、付着した固形分の分離・清掃性、耐久性、防カビ性
などが良好になる点から好ましい。
編んだ線条体2を形成する合成繊維フィラメント糸の代表例としては、ポリエステルフ
ィラメント糸、ポリアミドフィラメント糸、ポリプロピレンフィラメント糸、ポリエチレ
ンフィラメント糸、ポリビニルアルコールフィラメント糸などを挙げることができ、これ
らの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリエステルモノフィラ
メント糸、ポリエステルマルチフィラメント糸、ポリアミドモノフィラメント糸、ポリア
ミドマルチフィラメント糸およびポリプロピレンモノフィラメント糸の1種または2種以
上が汎用性、強度などの点から好ましく用いられ、特にポリエステルモノフィラメント糸
および/またはポリエステルマルチフィラメント糸が前記した特性に加えて耐酸性にも優
れている点からより好ましく用いられる。
【0024】
編地組織Aおよび/または編地組織Bを形成する編んだ線条体2をモノフィラメント糸
および/またはマルチフィラメント糸から形成するに当たっては、10〜60dtex、特に10〜40dtexのモノフィラメント糸または総繊度が30〜350dtex、特に50〜250dtexのマルチフィラメント糸から形成することが、立体編物の製造性、立体編物の形状保持性、通気性、付着した固形分の分離・清掃性、耐久性などの点から好ましい。
また、編地組織Aおよび/または編地組織Bを形成する編んだ線条体2は、編んだ線条体2の長さ方向に対して直角な断面での断面積が0.08〜3mm
2、更には0.1〜2mm
2、特に0.25〜1.5mm
2となるような太さであることが、立体編物の製造性、立体編物の形状保持性、通気性、付着した固形分の分離・清掃性、耐久性などの点から好ましい。
編地組織Aおよび/または編地組織Bを形成する編んだ線条体2は、捲縮加工などを施
していないフィラメント糸を用いて形成されていてもよいし、または場合により、仮撚加
工、クリンプ加工、エア加工などの捲縮加工を施したフィラメント糸から形成されていて
もよい。
【0025】
編地組織Aおよび/または編地組織Bにおける隣り合う編んだ線条体2間の間隙幅、す
なわち、
図1の(a)〜(c)に示すように、編んだ線条体の太さ部分を含まない、隣り合う編んだ線条体間の間隙の幅は、立体編物の製造性、形状保持性、液体保持性、通気性、付着した固形分の分離・清掃性、耐久性などの点から、1〜8mmであることが好ましく、1〜6mmであることがより好ましく、1.5〜5mmであることが更に好ましい。
【0026】
本発明の液体保持材をなす立体編物が、
図1の(a)に示すような、複数本の編んだ線
条体2が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有する編地組織A(または編地組織B
)と、当該縞状構造を有していない編地組織B(または編地組織A)を連結糸1で連結さ
れた立体編物である場合は、縞状構造を有していない編地組織B(編地組織A)として、
縞状構造を有する編地組織A(または編地組織B)と連結糸1で連結して立体編物にした
ときに、立体編物の液体保持性、通気性、形状保持性、付着した固形分の分離・清掃性、
耐久性などの性能の低下を生じない編地組織であればいずれでもよく、例えば、編んだ網
状体などを挙げることができる。
前記編んだ網状体における網目は、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形などのい
ずれでもよく、特に四角形、六角形であることが形態保持性の点から好ましい。
編地組織Aおよび編地組織Bの一方が、編んだ線条体2が平行に配列した縞状構造を有
していない編地組織である場合は、当該編地組織は、JIS L1096 A法で測定し
た通気量が200cm/s以上であることが好ましく、250cm/s以上であることが
より好ましい。縞状構造を有していない編地組織の通気量が低いと、立体編物全体の通気
量が低下し、立体編物を加湿装置の気化フィルターとして用いた際の加湿機能が低くなり
易い。
【0027】
複数本の編んだ線条体2が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有する編地組織A
(または編地組織B)と連結糸1によって連結される、縞状構造を有していない編地組織
B(または編地組織A)は、フィラメント糸から形成されていてもまたは紡績糸から形成
されていてもよいが、合成繊維製モノフィラメント糸および合成繊維製マルチフィラメン
ト糸の一方または両方から形成されていることが、立体編物の形状保持性、通気性、付着
した固形分の分離・清掃性、耐久性、防カビ性などが良好になる点から好ましい。
縞状構造を有していない編地組織B(または編地組織A)を形成する合成繊維フィラメ
ント糸の代表例としては、ポリエステルフィラメント糸、ポリアミドフィラメント糸、ポ
リプロピレンフィラメント糸、ポリエチレンフィラメント糸、ポリビニルアルコールフィ
ラメント糸などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリエステルモノフィラメント糸、ポリエステルマルチフィラメント糸、ポリアミドモノフィラメント糸、ポリアミドマルチフィラメント糸およびポリプロピレンモノフィラメント糸の1種または2種以上が汎用性、強度などの点から好ましく用いられ、特にポリエステルモノフィラメント糸および/またはポリエステルマルチフィラメント糸が前記した特性に加えて耐酸性にも優れている点からより好ましく用いられる。
【0028】
縞状構造を有していない編地組織B(または編地組織A)をモノフィラメント糸および
/またはマルチフィラメント糸から形成するに当たっては、10〜60dtex、特に1
0〜30dtexのモノフィラメント糸または総繊度が30〜350dtex、特に50
〜250dtexのマルチフィラメント糸から形成することが、立体編物の製造性、立体
編物の形状保持性、通気性、付着した固形分の分離・清掃性、耐久性などの点から好まし
い。
また、縞状構造を有していない編地組織B(または編地組織A)は、捲縮加工などを施
してないフィラメント糸から形成されていてもよいし、または場合により仮撚加工、クリ
ンプ加工、エア加工などの捲縮加工を施したフィラメント糸から形成されていてもよい。
【0029】
本発明の液体保持材をなす立体編物では、間隔をあけて平行に配置した編地組織Aおよ
び編地組織Bが、編地組織Aおよび/または編地組織Bを構成している複数本の編んだ線
条体部分で当該編んだ線条体の長さ方向に沿って連結糸1によって連結されている。
編地組織Aおよび編地組織Bを連結する連結糸1は、モノフィラメント糸および/また
はマルチフィラメント糸からなっている。連結糸1としては、合成繊維製モノフィラメン
ト糸および合成繊維製マルチフィラメント糸のいずれか一方または両方を用いることが、
立体編物の形状保持性、通気性、付着した固形分の分離・清掃性、耐久性、防カビ性など
が良好になる点から好ましく用いられる。
連結糸1として用いれられる合成繊維製のフィラメント糸の代表例としては、ポリエス
テルフィラメント糸、ポリアミドフィラメント糸、ポリプロピレンフィラメント糸、ポリ
エチレンフィラメント糸、ポリビニルアルコールフィラメント糸などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、ポリエステルモノフィラメント糸、ポリエステルマルチフィラメント糸、ポリアミドモノフィラメント糸、ポリアミドマルチフィラメント糸およびポリプロピレンモノフィラメント糸が汎用性、強度などの点から好ましく用いられ、特にポリエステルモノフィラメント糸および/またはポリエステルマルチフィラメント糸が前記した特性に加えて耐酸性にも優れ、しかも立体編物を型崩れのない形状保持性に優れたものとする点からるより好ましく用いられる。
【0030】
連結糸1をなすモノフィラメント糸および/またはマルチフィラメント糸は、その単繊
維繊度が0.5〜60dtexで且つ総繊度が10〜400dtexであることが好まし
く、単繊維繊度が3〜40dtexで且つ総繊度が20〜300dtexであることがよ
り好ましい。
そのため、連結糸としてモノフィラメント糸のみを用いる場合は、単繊維繊度(ひいて
は総繊度)が10〜60dtex、特に単繊維繊度(ひいては総繊度)が20〜50dt
exのモノフィラメント糸を用いることが好ましい。
また、連結糸1としてマルチフィラメント糸のみを用いる場合は、個々のフィラメント
の単繊維繊度が0.5〜60dtexで且つマルチフィラメント糸全体の総繊度が30〜
400dtex、特に個々のフィラメントの単繊維繊度が1〜30dtexで且つマルチ
フィラメント糸全体の総繊度が50〜250dtexであるマルチフィラメント糸を用い
ることが好ましい。
また、連結糸1としてモノフィラメント糸とマルチフィラメント糸の両方を用いる場合
は、単繊維繊度が10〜60dtex、特に30〜50dtexであるモノフィラメント
糸と、個々のフィラメントの単繊維繊度が0.5〜60dtex、特に0.5〜5dte
xであるマルチフィラメント糸を、モノフィラメント糸とマルチフィラメント糸の平均繊
度が400dtex以下、特に50〜350dtexとなるようにして用いることが好ま
しい。
連結糸1の繊度を前記範囲にすることによって、液体保持性、通気性、気体への加湿性
能、析出した固形分の除去・清掃性、形状保持性などに優れる立体編物を円滑に製造する
ことができる。
連結糸1の繊度が小さすぎると、通気量は大きくなるが液体の保持量が小さくなるため、気体に十分な液体を付与できなくなり(加湿性能が低下し)、一方連結糸1の繊度が大きすぎると、液体保持量は増すが通気量が小さくなり、液体を付与された気体(加湿空気など)の発生量が低下する。
【0031】
連結糸1による編地組織Aと編地組織Bの連結方式としては、編地組織Aおよび/また
は編地組織Bを構成している平行に配列した複数本の編んだ線条体2のそれぞれの長さ方
向に沿って編地組織Aと編地組織Bが連結糸1によって連結されていて且つ立体編物の液
体保持能および通気性を高く維持することができ、さらに潰れたり変形しにくくて形状保
持性に優れる立体編物を得ることのできる連結方式であればいずれも採用することができ
る。
限定されるものではないが、本発明で採用し得る連結糸1による編地組織Aと編地組織
Bの連結方式の例としては、例えば、
図3の(a)〜(f)に示す連結方式などを挙げる
ことができる。
図3の(a)〜(f)は、いずれも、編地組織Aおよび/または編地組織Bを構成して
いる平行に配列した複数本の編んだ線条体2の長さ方向に対して直角に立体編物を厚さ方
向に切断した切断面からみた連結糸1による連結方式を模式的に示したものである。
【0032】
図3の(a)および(c)は、複数本の編んだ線条体2が同一面で互いに平行に配列し
た縞状構造を有する編地組織A(または編地組織B)とそれとは異なる編地組織を有する
編地組織B(または編地組織A)を、連結糸1によって直角方向および斜め方向に連結し
て中間層(連結糸層)を形成した立体編物の例を示したものである。
図3の(b)は、編地組織Aおよび編地組織Bの両方が、複数本の編んだ線条体2が同
一面で互いに平行に配列した縞状構造をし、当該編地組織Aと編地組織Bを連結糸1によ
って直角方向および斜め方向に連結して中間層(連結糸層)を形成した立体編物の例を示
したものである。この
図3の(b)の立体編物では、編地組織Aおよび編地組織Bを構成
している平行に配列した複数本の編んだ線条体2には補強糸3が取り付けられていて編ん
だ線条体2間の間隔が一定に保たれるようになっている。
図3の(d)〜(f)は、複数本の編んだ線条体2が同一面で互いに平行に配列した縞
状構造を有する編地組織A(または編地組織B)とそれとは異なる編地組織を有する編地
組織B(または編地組織A)を、連結糸1によって斜め方向に連結して中間層(連結糸層
)を形成した立体編物の例を示したものである。
なお、
図3の(a)〜(f)では、連結糸1としてモノフィラメント糸を用いているが、それに限定されるものではなく、マルチフィラメント糸からなる連結糸1を用いてもよいし、またはモノフィラメント糸とマルチフィラメント糸の両方を連結糸1として用いてもよい。
【0033】
本発明の液体保持材をなす立体編物では、中間層をなす連結糸層における連結フィラメ
ント数が、立体編物1cm
2当たり(立体編物における編地組織A面または編地組織B面
1cm
2当たり)50〜20000本であることが必要であり、70〜15000本であ
ることが好ましく、90〜10000本であることがより好ましい。
立体編物1cm
2当たりの連結フィラメント数が前記範囲であることによって、立体編
物の液体保持能および通気性が良好になり、しかも立体編物が厚さ方向に潰れにくくなっ
て立体編物の形状保持性も良好になる。
立体編物1cm
2当たりの連結フィラメント数が前記範囲よりも少ないと、液体保持性
および形状保持性が低下し、一方前記範囲よりも多いと通気性が低下する。
ここで、本明細書における立体編物1cm
2当たりの連結フィラメント数とは、編地組
織A面(または編地組織B)の1cm
2当たりにつき、編地組織Aと編地組織Bを連結し
ている連結糸からなる中間層を形成している個々のフィラメントの数の合計をいい、連結
糸がマルチフィラメント糸である場合は、マルチフィラメント糸を形成しているそれぞれ
のフィラメントを1本と数える。
【0034】
本発明の液体保持材をなす立体編物では、立体編物の液体保持性が高くなり、しかも立
体編物を通過する空気などの気体が気体立体編物に保持された液体と効率よく接触するよ
うにするために、編地組織Aおよび/または編地組織Bを構成する編んだ線条体の長さ方
向に対して直角な方向で立体編物を厚さ方向に切断した切断面において、中間層をなす連
結糸層を形成している連結フィラメント総数の50%以上が75°以下の連結角度をなし
て編地組織Aと編地組織Bが連結糸1によって連結されていることが好ましく、特に、立体編物の中間層をなす連結糸層を形成している連結フィラメント総数の30%以上が50°〜75°の連結角度をなし且つ中間層をなす連結糸層を形成している連結フィラメント総数の30%以上が50°未満の連結角度をなすようにして編地組織Aと編地組織Bが連結糸によって連結されていることがより好ましい。
ここで、本明細書における前記した「連結フィラメントの連結角度」とは、
図4に示す
ように、編地組織Aおよび/または編地組織Bを構成する編んだ線条体2の長さ方向に対
して直角な方向で立体編物を厚さ方向に切断した切断面において、連結糸をなすフィラメ
ント(連結糸がモノフィラメント糸である場合は当該モノフィラメント、また連結糸がマ
ルチフィレメント糸である場合はマルチフィレメント糸を形成している個々のフィラメン
ト)が、編地組織Aをなす面および編地組織Bをなす面に対して結合している角度のうち
の鋭角をなす角度をいう。すなわち、編地組織Aおよび編地組織Bが前記した切断面にお
いて連結フィラメント(連結糸をなすフィラメント)によって斜めに連結されている場合
は、連結フィラメントを挟んで90°未満の鋭角と90°を超える鈍角(両者の合計が180°)が形成されるが、本明細書でいう「連結角度」は、両者のうちの鋭角の角度をい
う。なお、編地組織Aをなす面と編地組織Bをなす面に対して連結糸が直角に連結してい
る場合は連結角度は90°である。
また、本明細書における「連結フィラメント総数」とは、立体編物の中間層をなす連結
糸を形成している個々の連結フィラメントの数の合計をいい、連結糸がマルチフィラメン
ト糸である場合は、マルチフィラメント糸を形成している個々のフィラメントの合計数で
ある。
【0035】
本発明の液体保持材をなす立体編物では、編地組織Aおよび/または編地組織Bを構成
する複数の編んだ線条体2の長さ方向に沿っては、編地組織Aと編地組織Bが連結糸1に
よって等間隔で連結されていてもよいし、または場合によっては多少間隔が異なっていて
もよいが、編んだ線条体2の長さ方向に沿っては連結糸1によって編地組織Aと編地組織
Bが等間隔またはほぼ等間隔で連結されていると、立体編物全体の液体保持能および通気
性に斑が生じず均一なものとなる。
【0036】
編地組織Aおよび/または編地組織Bでは、同一面で互いに並行に配列した複数本の編
んだ線条体2は、例えば
図2の(a)および(b)などに示すように、編んだ線条体2を
横切る方向に互いに連結されておらずに長さ方向に互いに離れたままであってもよいし、
または例えば
図1の(b)、
図2の(c)、
図3の(b)、
図4の(b)に示すように、
編んだ線条体2を横切る方向に補強糸3を取り付けて補強糸3部分で連結してもよい。
補強糸3を編地組織Aおよび/または編地組織Bを形成する編んだ線条体2に取り付け
るか否かは、編地組織Aおよび/または編地組織Bを形成する編んだ線条体2よりなる縞
状構造の内容、連結糸1による編地組織Aと編地組織Bの連結の仕方、立体編物全体の形
状保持性の大小などを考慮して決めるとよい。編んだ線条体2に補強糸3を取り付けると、編地組織Aおよび/または編地組織Bの形状維持性が向上する。
【0037】
編んだ線条体2に補強糸3を取り付けて、編地組織Aおよび/または編地組織Bにおけ
る同一面で互いに並行に配列した複数本の編んだ線条体2間を連結する場合は、編んだ線
条体2への補強糸3の取付け方は、例えば、
図2の(c)に示すような編んだ線条体2の
長さ方向に対して直角の方向に取り付けてもよいし、編んだ線条体2の長さ方向に対して
斜めに横切る方向に取り付けてもよい(図示せず)。
補強糸3を取り付ける場合は、編地組織Aおよび/または編地組織Bを形成する編んだ
線条体2よりも細い糸を用いることが、立体編物の通気性、析出した固形分の除去・清掃
性などの点から好ましく、かかる点から、補強糸3としては、単繊維繊度が0.5〜60
dtex、特に10〜40dtexの合成繊維製モノフィラメント糸が好ましく用いられ
る。
編地組織Aおよび/または編地組織Bを形成する編んだ線条体2間を補強糸3で連結し
て補強するに当たっては、編んだ線条体2の長さ方向を横切る方向(例えば編んだ線条体
2の長さ方向に対して直角の方向)に隣り合う補強糸3間の間隔が3〜10mm程度、特に5〜8mm程度になるようにしてで取り付けることが、立体編物の通気性、液体保持性、析出した固形分の除去・清掃性などの点から好ましい。
【0038】
編地組織A層(編地組織B層)/連結糸からなる中間層(連結糸中間層)/編地組織B
層(編地組織A層)からなる3層構造を有する立体編物からなる本発明の液体保持材では、立体編物(立体編物全体)の厚みが2〜10mmであることが好ましく、4〜8mmであることがより好ましい。
立体編物の厚みが小さすぎると、液体保持能が低下し易くなり、一方立体編物の厚みが
大きすぎると、立体編物の製造が困難になったり、通気性が低下したり、立体編物を加湿
装置などの気化フィルターとして商品化する際の縫製作業が行いにくくなる。
【0039】
また、本発明の液体保持材をなす立体編物では、連結糸からなる中間層(連結糸層)の
厚みが1〜9mmであることが好ましく、1.5〜7mmであることがより好ましい。
立体編物における連結糸1からなる中間層の厚みが小さすぎると、液体保持能が低下し
易くなり、一方連結糸1からなる中間層の厚みが大きすぎると、立体編物が厚み方向に潰
れやすくなって立体編物の形状保持性が低下する。
【0040】
本発明の液体保持材をなす立体編物は、編地組織A用の糸、編地組織B用の糸および連
結糸用の糸(フィラメント糸)、場合によりさらに補強糸用の糸を用いてダブルラッセル
機を使用して編製することによって製造することができる。ダブルラッセル機に制約はな
いが、14ゲージから28ゲージの機械が一般的に用いられる。
【0041】
本発明の液体保持材をなす立体編物は、必要に応じて、染色加工、親水加工、防カビ加
工、抗菌加工などの後加工を施してあってもよい。但し、撥水加工などのような立体編物
の液体保持能(水保持能)を低下される加工は適さない。
【0042】
本発明の液体保持材は、その優れた液体保持能、通気性、防カビ性、形状保持性、析出
した固形分の除去・清掃性などの特性により、水、アルコール、アロマオイルなどの液体
を保持させるための液体保持材として有効に用いられ、特に加湿装置(加湿器)用の気化
フィルターとして有効に用いることができる。したがって、本発明は、本発明の液体保持
材よりなる加湿装置用の気化フィルターおよび当該気化フィルターを備える加湿装置を本
発明の範囲に包含する。
【実施例】
【0043】
以下に、実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例に何ら限定
されるものではない。
以下の例において、立体編物における複数本の編んだ線条体が平行に配置した縞状構造
を有する編地組織Aにおける隣り合う編んだ線条体間の間隙および編んだ線条体の太さ(
周長)、立体編物の中間層をなす連結糸層における立体編物1cm
2当たりの連結フィラ
メント数、立体編物の中間層をなす連結糸層における連結角度が75°以下の連結フィラ
メントの割合(%)、立体編物における縞状構造を有しないもう一方の編地組織Bの通気
量、立体編物の厚み並びに立体編物における連結糸層の厚みおよび立体編物の加湿量は、
以下のようにして求めた。
【0044】
(1)縞状構造を有する編地組織Aにおける隣り合う編んだ線条体間の間隙:
編地組織Aにおける編んだ線条体上部より金尺と共に写真を撮り、その写真を10倍に
拡大後、任意に5ヶ所の線条体の間隙を実測し平均を算出した。その平均値を写真の金尺
の目盛りを基準として実際の間隙を算出した。
【0045】
(2)編んだ線条体2の太さ(長さ方向に対して直角の断面の断面積):
編地組織Aにおける編んだ線条体の長さ方向に対して直角な方向で立体編物を厚さ方向に切断した切断面を金尺と共に写真を撮り、その写真を10倍に拡大後、任意に5ヶ所の編んだ線条体の巾方向の長さL
1(mm)と厚み方向の長さL
2(mm)を測定し、巾方向の長さL
1(mm)の平均値L
1a(mm)と厚み方向の長さの平均値L
2a(mm)を算出し、その平均値を写真の金尺の目盛りを基準として実際の長さを算出して、下記の数式(I)から編んだ線条体の長さ方向に対して直角の断面の断面積(D)を求めた。
断面積(D)(mm
2)=3.14×(L
1a/2)×(L
2a/2) (I)
【0046】
(3)立体編物の中間層をなす連結糸層における立体編物1cm
2当たりの連結フィラメ
ント数:
立体編物の任意の5ヶ所において、1cm
2(1cm×1cmの方形)中に存在するル
ープの数(編んだ線条体に基づく網目の数)aを数えた後、1個のループ当たりの連結フ
ィラメントの数(1個のループに結合しているフィラメントの数)bを数えて、a×bの
値を1cm
2当たりフィラメント数とし、5ヶ所の平均値を採って、立体編物の中間層を
なす連結糸層における立体編物1cm
2当たりの連結フィラメント数とした。
【0047】
(4)立体編物の中間層をなす連結糸層における連結角度が75°以下の連結フィラメン
トの割合(%):
編地組織Aにおける編んだ線条体の長さ方向に対して直角な方向で立体編物を厚さ方向
に切断した切断の写真を任意に5ヶ所撮影し、その写真を10倍に拡大し、その写真に基
づいて切断面を分度器を用いて連結角度が75°以下の連結フィラメントの本数(n
1)
と連結角度が75°を超える連結フィラメントの本数(n
2)を数え、下記の数式(II)か
ら連結フィラメント総数に対する連結角度が75°以下の連結フィラメントの割合(%)
を求めた。
なお、連結角度が75°以下の連結フィラメントの数と連結角度が75°を超える連結
フィラメントの数は、写真における切断面の各幅1cmの範囲について数えた。
連結角度75°以下の連結フィラメントの割合(%)={n
1/(n
1+n
2)}×100 (II)
【0048】
(5)立体編物における縞状構造を有しない編地組織Bの通気量:
立体編物における連結糸層(連結フィラメント層)の編地組織Bと連結している基部の
全てをカットして、立体編物から編地組織Bを取り出し(切り出し)、当該取り出した編
地組織Bを用いて、JIS L1096A法によって編地組織Bの通気量を測定した。
【0049】
(6)立体編物の厚み:
立体編物の任意の5か所について、ダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)(株式会
社尾崎製作所製「PEACOCKタイプH])を使用して厚さを測定し、その平均値を採
って立体編物の厚みとした。
【0050】
(7)立体編物における連結糸層の厚み:
上記(4)で撮影した、編地組織Aにおける編んだ線条体の長さ方向に対して直角な方
向で立体編物を厚さ方向に切断した切断面の顕微鏡写真から立体編物における連結糸層(連結フィラメント層)の厚みを求めた。
【0051】
(8)立体編物の加湿量
(i) 加湿器(パナソニック株式会社製「FE−KFG05」)に、液体保持材として、以下の例で得られた立体編物(縦×横=25cm×18cmに裁断した立体編物片1枚)を取り付けた後、加湿器の水タンクを満タンにし、そのときの加湿器全体の重さ(W
0)(g)を測定した。
(ii) 次いで、上記(i)の満タンにした加湿器を、恒温湿度室(温度20℃、湿度30%)に配置し、加湿装置の運転状態を強および運転時間を1時間に設定した後、測定者は恒温湿度室から直ちに退出した。
(iii) 1時間後に、恒温湿度室から加湿器を取り出して、その時の重さ(W
1)(g)
を測定して、下記の数式(III)から加湿量(g/hour)を求めた。
加湿量(g/hour)=W
0−W
1 (III)
【0052】
《実施例1〜4》
(1) 釜間距離7mmの22ゲージダブルラッセル機(カールマイヤー社製「RD6D
PLM」)を使用して、編地組織A用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(1
67dtex/48f)を用い、連結糸としてポリエステルモノフィラメント糸(33d
tex/1f)を用いるか、またはポリエステルモノフィラメント糸(33dtex/1
f)とポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex/144f)を用い、編地組織
B用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dtex/48f)を用いて、多数本の編んだ線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有する編地組織Aと、メッシュ構造[四角形(菱型)の網目構造]を有する編地組織Bが、編地組織Aの編んだ線条体部分で編んだ線条体の長さ方向に沿って連結糸によって連結されている立体編物[
図1の(a)の立体編物]をそれぞれ作製した。
(2) 実施例1〜4および比較例1のそれぞれで作製した立体編物について、編地組織
Aにおける隣り合う編んだ線条体間の間隙および編んだ線条体の太さ(断面積)、立体編
物の中間層をなす連結糸層における立体編物1cm
2当たりの連結フィラメント数、立体
編物の中間層をなす連結糸層における連結角度が75°以下の連結フィラメントの割合(
%)、立体編物における編地組織Bの通気量、立体編物の厚み、立体編物における連結糸
層の厚みおよび立体編物の加湿量を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとお
りであった。
【0053】
《実施例5》
(1) 実施例1〜4で使用したのと同じ釜間距離7mmの22ゲージダブルラッセル機
を使用して、編地組織A用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dte
x/48f)を用い、連結糸としてポリエステルモノフィラメント糸(33dtex/1
f)を用い、編地組織B用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dte
x/48f)を用い、補強糸としてポリエステルモノフィラメント糸(22dtex/1
f)を用いて、多数本の編んだ線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有する
編地組織Aと、メッシュ構造[四角形(菱型)の網目構造]を有する編地組織Bが、編地
組織Aの編んだ線条体部分で編んだ線条体の長さ方向に沿って連結糸によって連結され、
且つ編地組織Aを形成している編んだ線条体に対して直角に交わる補強糸によって編地組
織Aが補強されている立体編物[編地組織Aが
図2の(c)に例示するようにして補強糸
によって補強されている立体編物、隣り合う補強糸間の間隔=3mm]を作製した。
(2) 上記(1)で得られた立体編物について、編地組織Aにおける隣り合う編んだ線
条体間の間隙および編んだ線条体の太さ(断面積)、立体編物の中間層をなす連結糸層に
おける立体編物1cm
2当たりの連結フィラメント数、立体編物の中間層をなす連結糸層
における連結角度が75°以下の連結フィラメントの割合(%)、立体編物における編地
組織Bの通気量、立体編物の厚み、立体編物における連結糸層の厚みおよび立体編物の加
湿量を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0054】
《実施例6》
(1) 実施例1〜4で使用したのと同じ釜間距離7mmの22ゲージダブルラッセル機
を使用して、編地組織A用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dte
x/48f)を用い、連結糸としてポリエステルモノフィラメント糸(33dtex/1
f)を用い、編地組織B用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dte
x/48f)を用いて、多数本の編んだ線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造
を有する編地組織Aと、多数本の編んだ線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造
を有する編地組織B(編地組織Aと編地組織Bは同じ編地組織)が、編地組織Aおよび編
地組織Bの編んだ線条体部分で編んだ線条体の長さ方向に沿って連結糸によって連結され
ている立体編物[
図1の(b)の立体編物から補強糸3を取り除いた立体編物]を作製し
た。
(2) 上記(1)で得られた立体編物について、編地組織Aおよび編地組織Bにおける
隣り合う編んだ線条体間の間隙および編んだ線条体の太さ(断面積)、立体編物の中間層
をなす連結糸層における立体編物1cm
2当たりの連結フィラメント数、立体編物の中間
層をなす連結糸層における連結角度が75°以下の連結フィラメントの割合(%)、立体
編物における編地組織Bの通気量、立体編物の厚み、立体編物における連結糸層の厚みおよび立体編物の加湿量を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0055】
《実施例7》
(1) 実施例1〜4で使用したのと同じ釜間距離7mmの22ゲージダブルラッセル機
を使用して、編地組織A用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dte
x/48f)を用い、連結糸としてポリエステルモノフィラメント糸(33dtex/1
f)を用い、編地組織B用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dte
x/48f)を用い、補強糸としてポリエステルモノフィラメント糸(22dtex/1
f)を用いて、多数本の編んだ線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有する
編地組織Aと、多数本の編んだ線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有する
編地組織B(編地組織Aと編地組織Bは同じ編地組織)が、編地組織Aおよび編地組織B
の編んだ線条体部分で編んだ線条体の長さ方向に沿って連結糸によって連結され、且つ編
地組織Aおよび編地組織Bを形成している編んだ線条体に対して直角に交わる補強糸によ
って編地組織Aおよび編地組織Bが補強されている立体編物[
図1の(b)に示す立体編
物、隣り合う補強糸間の間隔=3mm]を作製した。
(2) 上記(1)で得られた立体編物について、編地組織Aおよび編地組織Bにおける
隣り合う編んだ線条体間の間隙および編んだ線条体の太さ(断面積)、立体編物の中間層
をなす連結糸層における立体編物1cm
2当たりの連結フィラメント数、立体編物の中間
層をなす連結糸層における連結角度が75°以下の連結フィラメントの割合(%)、立体
編物における編地組織Bの通気量、立体編物の厚み、立体編物における連結糸層の厚みお
よび立体編物の加湿量を上記した方法で求めたところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0056】
《比較例1》
(1) 実施例1〜4で使用したのと同じ釜間距離7mmの22ゲージダブルラッセル機
を使用して、編地組織A用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dte
x/48f)を用い、連結糸としてポリエステルモノフィラメント糸(33dtex/1
f)を用い、編地組織B用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(167dte
x/48f)を用いて、多数本の編んだ線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造
を有する編地組織Aと、メッシュ構造[四角形(菱型)の網目構造]を有する編地組織B
が、編地組織Aの編んだ線条体部分で編んだ線条体の長さ方向に沿って連結糸によって連
結されている立体編物[
図1の(a)の立体編物]を作製した。
(2) 上記(1)で得られた立体編物について、編地組織Aにおける隣り合う編んだ線
条体間の間隙および編んだ線条体の太さ(断面積)、立体編物の中間層をなす連結糸層に
おける立体編物1cm
2当たりの連結フィラメント数、立体編物の中間層をなす連結糸層
における連結角度が75°以下の連結フィラメントの割合(%)、立体編物における編地
組織Bの通気量、立体編物の厚み、立体編物における連結糸層の厚みおよび立体編物の加
湿量を上記した方法で求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0057】
《比較例2》
(1) 実施例1〜4で使用したのと同じ釜間距離7mmの22ゲージダブルラッセル機
を使用して、編地組織A用の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex
/24f)を用い、連結糸としてポリエステルモノフィラメント糸(33dtex/1f)とポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex/144f)を用い、編地組織B用
の糸としてポリエステルマルチフィラメント糸(84dtex/24f)を用いて、多数
本の編んだ線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有する編地組織Aと、メッ
シュ構造[四角形(菱型)の網目構造]を有する編地組織Bが、編地組織Aの編んだ線条
体部分で編んだ線条体の長さ方向に沿って連結糸によって連結されている立体編物[
図1
の(a)の立体編物]を作製した。
(2) 上記(1)で作製した立体編物について、編地組織Aにおける隣り合う編んだ線
条体間の間隙および編んだ線条体の太さ(周長)、立体編物の中間層をなす連結糸層にお
ける立体編物1cm
2当たりの連結フィラメント数、立体編物の中間層をなす連結糸層に
おける連結角度が75°以下の連結フィラメントの割合(%)、立体編物における編地組
織Bの通気量、立体編物の厚み、立体編物における連結糸層の厚みおよび立体編物の加湿
量を上記した方法で求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0058】
《比較例3》
(1) 実施例1〜4で使用したのと同じ釜間距離7mmの22ゲージダブルラッセル機
を使用して、両方の表面に位置する、略正六角形の網目構造を有する編地用の糸としてポ
リエステルマルチフィラメント糸(167dtex/48f)を用い、連結糸としてポリ
エステルモノフィラメント糸(33dtex/1f)を用いて、略正六角形の網目構造(
正六角形の最長対角線の長さ=4.5mm)を有する両面の編地が当該六角形の網状構造
部分で連結糸によって連結された立体編物(表裏を貫く略正六角形の空隙を有する前記し
た特許文献4に記載されている発明に相当する立体編物)を作製した。
(2) 上記(1)で得られた立体編物について、立体編物1cm
2当たりの連結フィラ
メント数、立体編物の厚み、立体編物における連結糸層の厚みおよび立体編物の加湿量を
上記した方法で求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
上記の表1にみるように、実施例1〜7の立体編物は、間隔をあけて平行に配置した2
つの編地組織Aおよび編地組織Bが、モノフィラメント糸およびマルチフィラメント糸か
ら選ばれる連結糸によって連結されている、編地組織A層/連結糸層/編地組織B層の3
層構造を有する立体編物からなり、立体編物を形成している編地組織Aが複数本の編んだ
線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有するか(実施例1〜5)、または立
体編物を形成している編地組織Aと編地組織Bの両方が複数本の編んだ線条体が同一面で
互いに平行に配列した縞状構造を有し(実施例6〜7)、その編んだ線条体部分で編んだ
線条体の長さ方向に沿って編地組織Aと編地組織Bが連結糸によって連結されており、且
つ中間の連結糸層における連結フィラメント数が立体編物1cm
2当たり50〜20000本の範囲内であることにより、水分保持性および通気性に優れていて、加湿器の気化フ
ィルターとして用いたときに、水と空気の接触が効率よく行われて、単位時間当たりの加
湿量が大きい。
【0062】
それに対して、上記の表2にみるように、比較例1および2の立体編物は、間隔をあけ
て平行に配置した2つの編地組織Aおよび編地組織Bが、モノフィラメント糸およびマル
チフィラメント糸から選ばれる連結糸によって連結されている、編地組織A層/連結糸層
/編地組織B層の3層構造を有する立体編物からなり、立体編物を形成している編地組織
Aが、複数本の編んだ線条体が同一面で互いに平行に配列した縞状構造を有し、その編ん
だ線条体部分で編んだ線条体の長さ方向に沿って編地組織Aと編地組織Bが連結糸によっ
て連結されているが、中間の連結糸層における連結フィラメント数が立体編物1cm
2当
たり50本よりも少ないか(比較例1)または20000本よりも多い(比較例2)こと
により、水分保持性が実施例1〜7に比べて低いか(比較例1)または通気性が実施例1
〜7の立体編物に比べて劣るために(比較例2)、加湿器の気化フィルターとして用いたと
きに、水と空気の接触が効率よく行われず、単位時間当たりの加湿量が実施例1〜7に比
べて15〜28%も低い。
【0063】
また、比較例3の立体編物は、立体編物中に編地の開口に基づく大きな空隙が多数存在
するため、水の保持能が低く、それに伴って立体編物を通過する空気と水との接触が効率
よく行われないために、加湿器の気化フィルターとして用いたときに、単位時間当たりの
加湿量が実施例1〜7の立体編物に比べて大幅に低い(約30%も低い)。