特許第6265780号(P6265780)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6265780-人工原木の炭化装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265780
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】人工原木の炭化装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 53/02 20060101AFI20180115BHJP
   C10L 5/44 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C10B53/02
   C10L5/44
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-35247(P2014-35247)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-160863(P2015-160863A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】593076220
【氏名又は名称】鈴木 健
(73)【特許権者】
【識別番号】507301442
【氏名又は名称】鈴木 啓次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓次郎
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−153838(JP,A)
【文献】 特開2004−314499(JP,A)
【文献】 特開2002−161278(JP,A)
【文献】 特開2001−48648(JP,A)
【文献】 特開平6−128575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 53/02
C10L 5/44
B27K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の粉状原料を圧縮成形または加熱圧縮成形して成る棒状の人工原木を炭化させる装置であって、
前記植物由来の粉状原料には、マイクロ波が照射されることによって発熱する発熱材料としての粉炭が混入されており、電磁遮蔽された筐体内で、前記人工原木にマイクロ波を照射することで前記発熱材料を発熱させ、該人工原木を炭化させるマイクロ波発生装置を備え、
前記マイクロ波発生装置は、非磁性および耐熱性を有する材料から成り、前記筐体に形成された人工原木の出入口から前記筐体内に延び、内部の空間と筐体内の空間との間を気密に遮蔽する案内管を備えることを特徴とする人工原木の炭化装置。
【請求項2】
前記人工原木は、前記植物由来の粉状原料としてのオガ粉または木粉を、前記加熱圧縮成形して成る棒状のオガライトまたは圧縮成形して成る棒状のソーダスト・ブリケットであることを特徴とする請求項1記載の人工原木の炭化装置。
【請求項3】
前記案内管は、ガラス管またはセラミック管であることを特徴とする請求項1または2記載の人工原木の炭化装置。
【請求項4】
前記粉炭は、5〜10重量%混入されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の人工原木の炭化装置。
【請求項5】
前記案内管は、前記マイクロ波発生装置の筐体に形成された人工原木の入口から出口の間を連通し、
前記マイクロ波発生装置の前段に、前記植物由来の粉状原料としてのオガ粉または木粉を加熱圧縮成形して、前記人工原木としてのオガライトを作成するオガライト作成装置をさらに備えることを特徴とする請求項2〜4の何れか1項に記載の人工原木の炭化装置。
【請求項6】
前記オガライトは、孔無しの棒状で、その外周面に、軸方向に延びる1または複数本の溝が形成されていることを特徴とする請求項5記載の人工原木の炭化装置。
【請求項7】
前記筐体に形成された人工原木の入口または出口の少なくとも一方に、導電性の糸がメッシュ状に形成されたシールド部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の人工原木の炭化装置。
【請求項8】
前記筐体に形成された人工原木の出入口には、前記案内管内に人工原木が収容されているか否かを検知する検知スイッチが設けられており、前記マイクロ波発生装置は、該検知スイッチで人工原木の収容が検知されている状態で、マイクロ波の照射を行うことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の人工原木の炭化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状のオガライトまたはソーダスト・ブリケットから成る人工原木を炭化させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記棒状の人工原木としては、我が国や中国などでは、オガ粉、または建築廃材や間伐材などの自然木を粉砕した木粉を加熱圧縮成形して成るオガライトが普及しており、欧米などでは、オガ粉または木粉を圧縮成形して成るソーダスト・ブリケットが普及している。このような人工原木では、オガ粉や木粉は、植物由来の粉状原料であり、原料となる木は、CO2を原料として、光合成によって作成されるので、燃料として燃やしても、ゼロエミッションを実現することができ、環境面で好ましい。
【0003】
ところで、現在、世界において、トレファクション(torrefaction)という熱処理技術が注目されている。トレファクションとは、国際エネルギー機関(IEA)では、「無酸素雰囲気下、200〜300℃で行う熱処理」と定義されている。トレファクションとは、本来、コーヒーや茶などの「焙煎」を意味するもので、日本国内では、このトレファクションを、半炭化或いは低温炭化と訳すケースもある。
【0004】
そのトレファクション処理は、現在、ヨーロッパ等で、木質ペレットを高性能化するために、設備の研究開発から、一部実際の製造まで行われている。前記の高性能化とは、木質ペレットや、上述のオガライトおよびソーダスト・ブリケットは、低発熱量や弱耐水性などの欠点を有しており、その欠点を克服することが可能になることである。このトレファクション処理を施すことで、石炭との混焼が可能になり、前記のゼロエミッションである木質成形物を使用するだけ、石炭の使用を削減し、CO2発生量を抑えることが可能になる。
【0005】
そこで、本件出願人は、現在実現されていない前記オガライトへのトレファクション処理を実現するために、先に特許文献1を提案している。この先行技術は、前記オガライトの原材料としてのオガ粉に、電気伝導性を有することでマイクロ波が照射されることによって発熱する発熱材料としての粉炭を混入しておき、得られた棒状のオガライト(人工原木)をマイクロ波発生装置に収容し、マイクロ波を照射することで、加熱するものである。
【0006】
こうして、先行技術は、ごく簡単に、棒状人工原木であるオガライトの未炭化物(トレファクション処理物)を得るものであり、さらにそれに留まらず、マイクロ波出力やオガライトの製造(投入)スピードの調節によって、黒炭、また更に赤熱させ白炭までをも製造し得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2013−105267号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1は、未炭化物に留まらず、黒炭以上の炭をも低コストに作成できる優れた技術である。しかしながら、それでも、オガライト(人口原木)から発生したタールなどの高温のガスが、常温に近いマイクロ波発生装置の筐体の内壁面に触れて、付着してしまい、適宜清掃などのメンテナンスが必要になって、生産性(スループット)の向上の余地を残している。
【0009】
本発明の目的は、生産性を向上することができる人工原木の炭化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の人工原木の炭化装置は、植物由来の粉状原料を圧縮成形または加熱圧縮成形して成る棒状の人工原木を炭化させる装置であって、前記植物由来の粉状原料には、マイクロ波が照射されることによって発熱する発熱材料としての粉炭が混入されており、電磁遮蔽された筐体内で、前記人工原木にマイクロ波を照射することで前記発熱材料を発熱させ、該人工原木を炭化させるマイクロ波発生装置を備え、前記マイクロ波発生装置は、非磁性および耐熱性を有する材料から成り、前記筐体に形成された人工原木の出入口から前記筐体内に延び、内部の空間と筐体内の空間との間を気密に遮蔽する案内管を備えることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、オガ粉や木粉などの植物由来の粉状原料を圧縮成形または加熱圧縮成形して成る棒状の人工原木を炭化させるにあたって、前記植物由来の粉状原料には、電気伝導性を有することで、マイクロ波が照射されることによって発熱する発熱材料としての粉炭を混入しておき、その発熱材料にマイクロ波発生装置からのマイクロ波が照射されることで、該発熱材料が発熱し、前記棒状の人工原木が炭化する。これによって、前記人工原木を、未炭化の状態で得ることができ、さらにその未炭化の状態から赤熱させ、黒炭から、より高温の白炭まで作成することができる。
【0012】
そして、そのマイクロ波照射の際、マイクロ波発生装置の電磁遮蔽された筐体内に、棒状の人工原木を、そのまま収容するのではなく、人工原木を収容する内側と、外側となる筐体内とを気密に遮蔽する案内管内に収容する。前記案内管は、非磁性および耐熱性を有する管から成る。なお、前記筐体に設けた開口となる人工原木の入口と出口とは、個別に設けられ、すなわち案内管内に収容される人工原木が入口から出口へ一方通行で挿入から排出されてもよく、或いは共用されて同じ出入り口から出し入れされてもよい。
【0013】
したがって、マイクロ波加熱される棒状の人工原木は、案内管で外囲されて筐体内とは気密に遮蔽されるので、該人口原木から発生したタールなどの高温のガスが、常温に近いマイクロ波発生装置の筐体の内壁面に触れて、付着してしまうようなことは無く、前記内壁面へのガスの付着を防止することができる。これによって、清掃などのメンテナンス作業を軽減し、生産性(スループット)を向上することができる。なお、案内管も高温になるので、該案内管に前記高温のガスが触れても、殆ど付着することはない。
【0014】
また、本発明の人工原木の炭化装置では、前記人工原木は、前記植物由来の粉状原料としてのオガ粉または木粉を、前記加熱圧縮成形して成る棒状のオガライトまたは圧縮成形して成る棒状のソーダスト・ブリケットであることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、オガ粉や木粉の原料となる木は、CO2を原料として光合成によって作成されるので、炭化させた人工原木を燃料として燃やしても、ゼロエミッションを実現することができる。
【0016】
さらにまた、本発明の人工原木の炭化装置では、前記案内管は、ガラス管またはセラミック管であることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、ガラス管またはセラミック管は、非磁性を有するとともに、高い耐熱性を有し、好適である。
【0018】
また、本発明の人工原木の炭化装置では、前記粉炭は、5〜10重量%混入されることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、人工原木を比較的短時間で発熱させることができる。
【0020】
さらにまた、本発明の人工原木の炭化装置では、前記案内管は、前記マイクロ波発生装置の筐体に形成された人工原木の入口から出口の間を連通し、前記マイクロ波発生装置の前段に、前記植物由来の粉状原料としてのオガ粉または木粉を加熱圧縮成形して、前記人工原木としてのオガライトを作成するオガライト作成装置をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、オガライトの作成は高温で行われるので、成形されたオガライトは、たとえば軸直角の断面の中心で、116〜117℃、外周で300〜400℃の温度となる。そのオガライトを、そのままマイクロ波発生装置に投入するので、オガライトの中心で、200〜300℃と、さらに100℃程度温度上昇させ、未炭化状態の(トレファンクション処理された)人工原木を、短時間で作成することができ、或いは同じ作成時間でも、冷えたオガライトから加熱する場合より、マイクロ波のパワーを小さくすることができる。
【0022】
また、本発明の人工原木の炭化装置では、前記オガライトは、孔無しの棒状で、その外周面に、軸方向に延びる1または複数本の溝が形成されていることを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、オガライトの中心に孔が形成されていると、マイクロ波照射時に内部から発生するガスがその中心穴を通じて外部に出て、ガスの管理が難しくなるとともに、マイクロ波の漏洩の可能性もあるのに対して、孔無しに形成することで、そのような不具合が発生することなく、安全性を向上することができる。また、外周面に溝が形成されていることで、ガス抜きを円滑に行うことができ、炭化を促進することができる。
【0024】
さらにまた、本発明の人工原木の炭化装置は、前記筐体に形成された人工原木の入口または出口の少なくとも一方に、導電性の糸がメッシュ状に形成されたシールド部材が設けられていることを特徴とする。
【0025】
上記の構成によれば、筐体に形成された人工原木の出入口において、人工原木で塞がっている範囲は、該人工原木に混入された粉炭によってマイクロ波が遮蔽されるが、人工原木の外周から出入口の間の隙間からは、前記マイクロ波が漏洩する可能性がある。そのため、その部分を覆うようにスチールウールなどのメッシュ状のシールド部材を設けておくことで、マイクロ波の漏洩を防止でき、安全性を向上することができる。
【0026】
また、本発明の人工原木の炭化装置では、前記筐体に形成された人工原木の出入口には、前記案内管内に人工原木が収容されているか否かを検知する検知スイッチが設けられており、前記マイクロ波発生装置は、該検知スイッチで人工原木の収容が検知されている状態で、マイクロ波の照射を行うことを特徴とする。
【0027】
上記の構成によれば、筐体に形成された人工原木の出入口において、人工原木が収容されている状態では、該人工原木に混入された発熱材料によってマイクロ波が遮蔽されるが、人工原木が収容されていない状態では、前記出入口からマイクロ波が漏洩する可能性が高くなる。そこで、該出入口に、案内管内に人工原木が収容されているか否かを検知する検知スイッチを設けてマイクロ波発生装置のインターロックを掛けることで、安全性を向上することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の人工原木の炭化装置は、以上のように、オガ粉や木粉などの植物由来の粉状原料を圧縮成形または加熱圧縮成形して成る棒状の人工原木を炭化させるにあたって、前記植物由来の粉状原料に、発熱材料としての粉炭を混入しておき、その発熱材料にマイクロ波が照射されることで、該発熱材料が発熱し、前記人工原木を、未炭化の状態で得ることができ、さらにその未炭化の状態から赤熱させ、黒炭から、より高温の白炭まで作成することができる。そして、マイクロ波発生装置の電磁遮蔽された筐体内には、棒状の人工原木をそのまま収容するのではなく、ガラス管やセラミック管などの非磁性および耐熱性を有する管に収容する。
【0029】
それゆえ、人口原木から発生した、タールなどの高温のガスが、常温に近いマイクロ波発生装置の筐体の内壁面に触れて、付着してしまうようなことは無く、前記内壁面へのガスの付着を防止することができ、清掃などのメンテナンス作業を軽減し、生産性(スループット)を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施の一形態に係る炭化装置であるマイクロ波発生装置の構造を示す縦断面図である。
図2】本発明の実施の他の形態に係る炭化装置の構造を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明の実施の一形態に係る炭化装置であるマイクロ波発生装置1の構造を示す縦断面図である。このマイクロ波発生装置1は、植物由来の粉状原料を圧縮成形または加熱圧縮成形して成る棒状の人工原木を炭化させる装置であり、予め前記人工原木は、前記植物由来の粉状原料に、マイクロ波が照射されることによって発熱する発熱材料が混入されており、このマイクロ波発生装置1は、前記人工原木に、マイクロ波源2がマイクロ波を照射することで、炭化させるものである。
【0032】
炭化の程度および用途については、前記特許文献1が詳しいが、概略的に、マイクロ波加熱温度が200〜250℃の場合、未炭化物となり、300〜500℃の場合、炭化物となり、800℃以上で高温処理炭となる。本実施形態のマイクロ波発生装置1は、マイクロ波のパワーおよび加熱時間によって、任意の炭化度を得ることができ、白炭などの灰が少なく、コークス代替品となる高温処理炭が有効であるが、バイオコークスの代替品となったり、石炭と混焼させることができる前述のトレファクション化処理された未炭化物を大量に生成できるだけでも、本実施形態のマイクロ波発生装置1は、極めて有効である。
【0033】
前記棒状の人工原木には、我が国や中国で普及しているオガライトや、欧米で普及しているソーダスト・ブリケットを用いることができる。オガライトは、前記植物由来の粉状原料としてのオガ粉または木粉を、前記加熱圧縮成形して成り、ソーダスト・ブリケットは、前記材料を圧縮成形して成る。前記植物由来の粉状原料についても、前記特許文献1が詳しいが、たとえばオガライトの場合、木粉、竹粉、木粉と竹粉の混合物や、植物性バイオマス(樹皮、果実核、果実残渣、コーヒー粕、パーム椰空房、落花生殻等々)を用いることができる。したがって、これらの原料は、植物によって、CO2を原料として光合成によって作成されるので、炭化させた人工原木を燃料として燃やしても、ゼロエミッションを実現することができる。なお、前記人工原木の成型の際は、接着剤または粘結剤を混入してもよい。接着剤としては、熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂やクレオソート等である。
【0034】
本実施形態では、以下、人工原木として、本件出願人が先に特許第4314290号で提案した孔無しオガライトを用いるものとする。その場合、オガライトの中心に孔が形成されていると、マイクロ波照射時に内部から発生するガスがその中心穴を通じて外部に出て、ガスの管理が難しくなるとともに、マイクロ波の漏洩の可能性もあるのに対して、孔無しに形成することで、そのような不具合が発生することなく、安全性を向上することができる。さらに本実施形態では、その孔無しオガライトの外周面に、軸方向に延びる1または複数本の溝を形成している。これによって、ガス抜きを円滑に行うことができ、炭化を促進できるようになっている。
【0035】
そして、その孔無しオガライトの作成にあたって、篩に掛けた原料に、発熱材料を、5〜10重量%混合する。前記発熱材料としては、電気伝導性を有することで、前記マイクロ波の照射によって発熱する粉で、高温炭の粉である粉炭である。本実施形態では、木粉100%の原料を使用し、前記篩に掛けて成形可能な粒度の木粉に調節した後、含水率が約5%に乾燥し、その原料に、含水率が約5%に乾燥した粉炭を混合してオガライト成形機に投入し、前記人工原木としてのオガライトを成形している。粉炭の場合、5重量%程度で、充分発熱するので、混合する割合は、この5重量%程度が好ましい。本実施形態では、前記粉炭に、オガ炭を約60メッシュの粒度に粉砕したものを用い、前記オガ炭の状態で、約3mmの厚さに切り、ミリオーム計で、クリップで挟み1cm間の値を測定すると、20mΩ前後であり、粉炭の状態での電気抵抗値は1Ω以下となっている。そして、この粉炭は、800〜1000℃で作成した高温炭(白炭)であるので、その温度までは変質せず、マイクロ波の照射によって発熱することができる。粉炭は、細かく砕く程、コストが高くなるので、もっと粗い目の篩にかけたものでもよい。
【0036】
このように構成することで、たとえばマイクロ波発生装置1のマイクロ波パワーが700Wである場合、直径52mm、長さ40〜50cmの人工原木を、約1分で200℃以上に加熱し、未炭化状態とすることができ、さらにその未炭化の状態から加熱を継続することで、赤熱させ、黒炭から、より高温の白炭まで作成することができる。
【0037】
図1に戻って、本発明に係るマイクロ波発生装置1で注目すべきは、マイクロ波源2によるマイクロ波を電磁遮蔽する筐体3内に、前記棒状の人工原木は、そのまま収容されるのではなく、案内管4に収容されて配置されることで、該案内管4の内部空間と筐体3の内部空間との間が気密に遮蔽されていることである。
【0038】
このように構成することで、マイクロ波加熱される棒状の人工原木は、案内管4で外囲されて筐体3内とは気密に遮蔽されるので、該人口原木から発生したタールなどの高温のガスが、常温に近いマイクロ波発生装置2の筐体3の内壁面に触れて、付着してしまうようなことは無く、前記内壁面へのガスの付着を防止することができる。これによって、清掃などのメンテナンス作業を軽減し、生産性(スループット)を向上することができる。なお、案内管4も高温になるので、該案内管4に前記高温のガスが触れても、殆ど付着することはない。
【0039】
本実施形態では、筐体3に形成された入口31から出口32の間を前記案内管4が連通しており、案内管4の内部は外気に開放し、筐体3内は外気と遮断されている。本発明では、案内管4は筐体3に形成された1つの出入口に通じていればよいが、つまり案内管4が有底筒状に形成されていてもよいが、入口31と出口32とを区分した単純な筒とすることで、人工原木を連続して案内することができ、生産性(スループット)を向上することができる。
【0040】
筐体3は、鉄板などから箱形に形成された外部筐体33に、マイクロ波遮蔽のシール材34が内張りされて形成されており、その天面の略中央部に、マイクロ波源2が配設される。マグネトロンなどから成るマイクロ波源2は、適宜の場所に設置され、筐体3内へ導波管などでマイクロ波が導入されてもよい。本実施形態では、筐体3内は、上述のようにタールの付着などによる汚れが生じることはないが、熱気の排気などのために、適宜換気の手段が設けられていてもよい。
【0041】
案内管4は、非磁性を有するとともに、高い耐熱性を有する材料から成り、たとえばガラス管やセラミック管から成る。案内管4は、前記オガライトから成る人工原木の外径、たとえば52mmに対して、各方向に1mm強の隙間を確保する、たとえば55mmの内径に形成されて前記人工原木を案内する管本体41と、その管本体41の長手方向の端部付近から延設されるフランジ板42,43とを備えて構成される。前記フランジ板42,43は、特に内部を流れる人工原木に引っ張られて軸方向のずれが生じないように、半径方向の外方に延びて形成され、該フランジ板42,43が筐体3の壁面にボルト44によって固定されることで、案内管4は、筐体3内のマイクロ波照射に適した位置に保持される。
【0042】
一方、筐体3の入口31側には、導入管5が取付けられており、この導入管5から前記人工原木が投入される。この導入管5の入口51は、前記人工原木の外径の52mmと略等しい内径に形成される。そして、前記入口31における案内管4との接合部において、案内管4の中心軸と、この導入管5の中心軸とは偏心しており、具体的には前記55mmの内径の案内管4の中心軸から、52mmの内径の導入管5の中心軸が1.5mm偏心して、それらの案内管4および導入管5の内周底面が面一に形成され、人工原木の底面が円滑に案内されるようになっている。そのため、案内管4の天面には、導入管5との間に、段差45を生じている。
【0043】
前記導入管5の入口51付近には、レーザ使用の(光路を形成する)リミットスイッチなどから成り、人工原木の通過を検知する一対の検知スイッチ61が設けられている。前記導入管5の入口51より内方から、前記筐体3の入口31の裏側にかけては、スチールウールなどの導電性の糸がメッシュ状に形成された筒状のシールド部材71が設けられている。このシールド部材71の内径は、前記人工原木の外径の52mmと略等しく形成される。
【0044】
同様に、筐体3の出口32側には、排出管8が取付けられており、この排出管8から前記人工原木が排出される。排出管8の排出端付近にも、レーザ使用のリミットスイッチなどから成り、人工原木の通過を検知する一対の検知スイッチ62が設けられている。前記排出管8の出口80より内方から、前記筐体3の出口32の裏側にかけては、スチールウールなどの導電性の糸がメッシュ状に形成された筒状のシールド部材72が設けられている。このシールド部材72の内径は、たとえば半炭化して排出される人工原木の外径と略等しく形成される。
【0045】
このように構成することで、筐体3に形成された人工原木の出入口32,31において、人工原木で塞がっている範囲は、該人工原木に混入された粉炭や黒鉛などの発熱材料によってマイクロ波が遮蔽されるが、人工原木の外周から出入口32,31の間の隙間からは、前記マイクロ波が漏洩する可能性があるのに対して、先ずその部分を覆うようにシールド部材72,71を設けておくことで、マイクロ波の漏洩を防止でき、安全性を向上することができる。
【0046】
次に、検知スイッチ61,62の検知結果に応答して、図示しない制御装置が前記マイクロ波源2のマイクロ波照射を制御する。具体的には、投入端側の検知スイッチ61によって人工原木の通過が検知され(筐体3内へ搬入され)た後、排出端側の検知スイッチ61によって人工原木の通過が検知される(排出が開始される)までの間は、制御装置は、案内管4内に人工原木が収容されていると判断して、マイクロ波照射を行わせ、何れかの検知スイッチ61,62で検知されている搬入中または排出中は、制御装置はマイクロ波源2のインターロックを掛ける。このように構成することでも、人工原木が収容されていない状態で不所望にマイクロ波が漏洩することを防止し、安全性を向上することができる。
【0047】
そして、前記人工原木としてのオガライトに、前記のように粉炭を5重量%程度混入するだけで、通常は白色に近いオガライトの断面は、ねずみ色から黒褐色になり、前記マイクロ波の漏洩を防止できるとともに、効率良く、比較的短時間で発熱させることができる。
【0048】
さらにまた、排出管8の途中は、上方に開放されて煙突81が延設されるとともに、下方に開放されてダストシュート82が延設される。ダストシュート82は、加熱された人工原木としてのオガライトから剥がれ落ちるオガ粉などのダストを落下させるために設けられており、該ダストシュート82の内周から、下方の開口端には、マイクロ波の漏洩を防止するための金網83が内張されている。金網83は、ガスによる腐食を抑えるために、ステンレスの金網が好ましい。
【0049】
前記煙突81は、マイクロ波加熱によって人工原木から発生するタールなどの高温のガスを吸引し、無害化して乾燥機へ排出するものである。そのため、煙突81は、前記排出管8に連結される下方の立ち上げ部84と、それに連なる上方の処理部85とを備えて構成される。立ち上げ部84の内周から、上方の開口端には、マイクロ波の漏洩を防止するための金網86が内張されている。
【0050】
処理部85は、前記タールなどの高温のガスを燃焼させて無害化するものであり、外壁87に、耐火処理のためにキャスター88が内張されている。処理部85の頂部には吸引用のファン89が設けられている。処理部85の下端付近には、点火プラグ91およびガス供給口92が設けられるとともに、空気取り入れ口93が形成されている。そして、ガス供給口92からガスを供給している状態で点火プラグ91から火花94を発生させることで、ガス供給口92に種火95を形成し、前記人工原木から発生したガスを空気取り入れ口93からの酸素で燃焼し、処理させる。なお、人工原木から発生したガスの燃焼が開始すると、そのことを火炎検知器等で検知し、ガス供給口92へのガスの供給を停止し、種火95を消灯するようにしてもよい。
【0051】
こうして、前記人工原木に充分なマイクロ波が照射されて、赤熱している状態で、該人工原木が排出管8を通過すると、自燃し、黒炭から、より高温炭を作成することもできる。その自燃によって発生するガスを燃焼させて炉内温度を上げて、精練を行う精練装置を、このマイクロ波発生装置1の後段に設けるようにしてもよい。
【0052】
図2は、本発明の実施の他の形態に係る炭化装置11の構造を模式的に示す正面図である。この炭化装置11は、上述のマイクロ波発生装置1の前段に、前記人工原木としてのオガライトを作成するオガライト作成装置12をさらに備えることを特徴としている。そして、オガライト作成装置12は、ホッパ13から投入された原料を加熱圧縮成形して、前記孔無し溝有りの人工原木を作成する。このオガライト作成装置12については、前記特許第4314290号が詳しいが、概略的に、原料をスクリューでテーパー式の筒から押出して連続的に固形化するので、ピストンの往復運動によって固形化するソーダスト・ブリケット・マシーンに比べて、時間当たりの生産量が圧倒的に多い。このオガライト作成装置12の排出口が、前記マイクロ波発生装置1における導入管5の入口51に連通している。
【0053】
そして、オガライトの作成は高温で行われるので、成形されたオガライトは、たとえば軸直角の断面の中心で、116〜117℃、外周で300〜400℃の温度となる。また、成形直後のオガライトの含水量は無水状態であり、さらに原子団も親水基がほとんどであり、吸湿性が非常に高い。本実施形態で使用されるオガライトが、従来のオガライトと比較して異なる点は、ただ単に電気伝導性を有する粉炭が混入された点だけである。
【0054】
そして、本実施形態の炭化装置11は、その生成された直後のオガライトを、そのままマイクロ波発生装置1に投入し、連続して処理するので、オガライトの中心で、200〜300℃と、さらに100℃程度温度上昇させ、未炭化状態の(トレファンクション処理された)人工原木を、短時間で作成することができ、或いは同じ作成時間でも、冷えたオガライトから加熱する場合より、マイクロ波のパワーを小さくすることができ、非常に効率的である。
【0055】
このオガライト作成装置12は、上述のように、連続して(切れ目無く)棒状のオガライトを押し出して来るので、その押出し中は、前記検知スイッチ61,62は、通過を検知したままとなる。ただ、こうしてオガライトを連続処理することで、非常に高効率で、むらの無いトレファン化処理された人工原木を得ることができるが、実際の商品には、所定寸法に裁断することも必要になる。一方で、オガライトは、上述のように、オガ粉や木粉を成形したもので、軸方向に繊維が無く、叩くだけで簡単に折ることができる。そのため、オガライト作成装置12は、押し出したオガライトに、前記所定寸法毎に小さなピン孔を押し開けて炭化装置11に投入し、炭化装置11の排出管8を出たオガライトを、前記ピン孔側が外側となるように緩くカーブした案内管を通すだけで、容易に分断することが可能になる。
【0056】
また、未炭化状態の(トレファンクション処理された)オガライトは、石炭と混焼される際に、棒状のままでも良いが、適切な長さにカットされていることで、石炭と同様にコンベアー輸送も出来、好適である。そのカットされたオガライトは、粒状の木質ペレットに比べて、石炭との空隙が大きく、空気の流通が良く、より燃焼効率を高めることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 マイクロ波発生装置
2 マイクロ波源
3 筐体
31 入口
32 出口
33 外部筐体
34 シール材
4 案内管
41 管本体
42,43 フランジ板
5 導入管
51 入口
61,62 検知スイッチ
71,72 シールド部材
8 排出管
80 出口
81 煙突
82 ダストシュート
83,86 金網
84 立ち上げ部
85 処理部
89 ファン
91 点火プラグ
92 ガス供給口
93 空気取り入れ口
11 炭化装置
12 オガライト作成装置
13 ホッパ
図1
図2