(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265800
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】接地線端子箱
(51)【国際特許分類】
H01R 4/64 20060101AFI20180115BHJP
H01R 9/22 20060101ALI20180115BHJP
H01T 4/04 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
H01R4/64 Z
H01R9/22
H01T4/04
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-53562(P2014-53562)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-176805(P2015-176805A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(73)【特許権者】
【識別番号】000145954
【氏名又は名称】株式会社昭電
(74)【代理人】
【識別番号】100100516
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 惠
(72)【発明者】
【氏名】沼波 秀行
(72)【発明者】
【氏名】山野井 賢一
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−111152(JP,A)
【文献】
特許第4028516(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/64
H01R 9/22
H01T 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの端子を有し、建物の鉄筋、建物に装備された電力設備及び電子機器の接地線がそれぞれ一方端子に接続される複数の接地端子台と、
前記複数の接地端子台の他方端子を共通に接続し前記建物の避雷用の接地極に接続される共通バーと、
前記接地端子台の前記一方端子と前記他方端子とを接続するための着脱可能に前記接地端子台に設けられる接続バーと、
前記電子機器が接続される接地端子台の前記一方端子と前記他方端子との間に設けられた避雷器とを備えたことを特徴とする接地線端子箱。
【請求項2】
前記建物の鉄筋、建物に装備された前記電力設備及び前記電子機器が接続される前記接地端子台のそれぞれに前記一方端子と前記他方端子との間に前記接続バーが接続されていることを特徴とする請求項1記載の接地線端子箱。
【請求項3】
前記建物の鉄筋及び建物に装備された前記電力設備の前記一方端子と前記他方端子との間に前記接続バーが接続されており、前記電子機器が接続される前記接地端子台の前記一方端子と前記他方端子との間には前記接続バーが接続されていないことを特徴とする請求項1記載の接地線端子箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の鉄筋、建物に装備された電力設備及び電子機器を接地するための接地線端子箱に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物には避雷用の接地極が設けられており、建物の避雷針からの落雷を建物の鉄筋を通して避雷用の接地極に導くようにしている。また、建物に装備された電力設備、例えば変圧器や空調設備等の接地は、電力設備用の接地極を個別に設けて接地することもあるが、避雷用の接地極を共用して行われることが多い。また、建物に装備された電子機器、例えば通信機器や計算機などについても電子機器用の接地極を個別に設けることなく、避雷用の接地極を共用して行われることが多い。これは、電力設備や電子機器は後から追加して装備される場合が多いので、その度に個別の接地極を設けることを避けるためである。これら建物、電力設備、電子機器の接地線は接地線端子箱に収納され、接地線端子箱から接地極へ接続される。
【0003】
ここで、電子機器については避雷用の接地極を共用すると、避雷用の接地極に接続された各種設備機器からのノイズが共用の接地極を介して電子機器に伝搬することがある。電子機器はノイズ障害を受けやすいので、それを避けるために、電子機器用の接地極を設けて電子機器の接地を独立接地することも行われている。電子機器の接地を独立接地にすると電子機器へのノイズ障害は解消されるが、落雷があった場合には、他の接地極と電子機器用の接地極との間に電位差が生じ、その電位差により耐電圧性能の低い電子機器が被害を受けることがある。
【0004】
そこで、避雷用の接地極、電力設備用の接地極、電子機器用の接地極を独立して設け、常時は、避雷用の接地極、電力設備用の接地極、電子機器用の接地極で個別に接地し、落雷時には、避雷用の接地極、電力設備用の接地極、電子機器用の接地極を連結し、電子機器へのノイズの伝搬を防止するとともに落雷時の接地極間の電位差による電子機器の被害を防止するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−111152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のものは接地の理想的な形態であるが、電力設備や電子機器が後から追加された場合には、その度に個別の接地極を設けなければならない。通常、既存の建物には、避雷用の接地極しか設けられていないことが多く、新たな接地極を設置するには、その新たな接地極の設置場所を確保しなければならない。たとえ、接地極の設置場所を確保できたとしても、コンクリートを剥がし、接地が有効となる深さまで掘り、接地極を埋設して接地線を接地線端子箱まで配線しなければならないので、作業面及びコスト面の負担が大きい。
【0007】
また、特許文献1の放電保安器は、それなりの大きさを有するため、後付けで設置する場合にはそれなりのスペースの確保が必要であり、既存の接地線端子箱に収納することは困難であり、新たに設置場所を確保するにも既設の建物にそのような格好の良いスペースは一般にはないしコストもかかる。
【0008】
本発明の目的は、避雷用の接地極しか設けられていない既存の建物に適用され、電子機器へのノイズの伝搬を防止できるとともに落雷時の高電圧による電子機器の被害を防止できる接地線端子箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る接地線端子箱は、二つの端子を有し、建物の鉄筋、建物に装備された電力設備及び電子機器の接地線がそれぞれ一方端子に接続される複数の接地端子台と、前記複数の接地端子台の他方端子を共通に接続し前記建物の避雷用の接地極に接続される共通バーと、前記接地端子台の前記一方端子と前記他方端子とを接続するための着脱可能に前記接地端子台に設けられる接続バーと、前記電子機器が接続される接地端子台の前記一方端子と前記他方端子との間に設けられた避雷器とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る接地線端子箱は、請求項1の発明において、
前記建物の鉄筋、建物に装備された前記電力設備及び前記電子機器が接続される前記接地端子台のそれぞれに前記一方端子と前記他方端子との間に前記接続バーが接続されていることを特徴とする。また、請求項3に係る接地線端子箱は、請求項1の発明において、前記建物の鉄筋及び建物に装備された前記電力設備の前記一方端子と前記他方端子との間に前記接続バーが接続されており、前記電子機器が接続される前記接地端子台の前記一方端子と前記他方端子との間には前記接続バーが接続されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接地端子台の一方端子と他方端子とを接続するための接続バーにより、電子機器の接地線を建物の避雷用の接地極に選択的に接続可能としているので、電子機器の接地線を建物の避雷用の接地極に接続するか否かを選択できる。電子機器の接地線を建物の避雷用の接地極に接続しないようにすることで、電子機器へのノイズの伝搬を防止できる。
【0012】
また、電子機器が接続される接地端子台の一方端子と他方端子との間に避雷器を設けているので、電子機器の接地線を建物の避雷用の接地極に接続しない場合であっても、避雷器の動作により落雷時だけ電子機器の接地線を建物の避雷用の接地極に接続できるので、落雷時の高電圧による電子機器の被害を防止できる。
【0013】
さらに、接地端子台の接続バーは、共通バーのノイズが所定値以下の場合には、電子機器の接地線が接続される接地端子台の一方端子と他方端子との間に接続しておけるので、ノイズの影響を受けることなく電子機器の接地線を接地できる。一方、共通バーのノイズが所定値を超えると予想される場合には、電子機器の接地線が接続される接地端子台の接続バーは接続しないので、電子機器へのノイズの伝搬を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る接地線端子箱の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る接地線端子箱の構成図である。
図1に示すように、接地線端子箱11には複数の接地端子台12が設けられている。
図1では、3個の接地端子台12a、12b、12cが設けられた場合を示している。接地端子台12aは建物の避雷用の接地線16aが接続される避雷用の接地端子台、接地端子台12bは電力設備用の接地線16bが接続される電力設備用の接地端子台、接地端子台12cは電子機器用の接地線16cが接続される電子機器用の接地端子台である。なお、電力設備や電子機器が後から追加して装備されたときは、電力設備用の接地端子台12b、電子機器備用の接地端子台12cは、図示省略の予備の接地端子台を用いるか、接地端子台を追加して設けることになる。
【0016】
各々の接地端子台12a〜12cは、それぞれ二つの端子13a〜13c、14a〜14cを有する。一方端子13a〜13cには、建物の鉄筋15から導かれた避雷用の接地線16a、建物に装備された電力設備用の接地線16b、電子機器用の接地線16cがそれぞれ接続される。建物の鉄筋15には建物の避雷用の接地極25が接続されている。また、他方端子14a〜14cには共通バー19が取り付けられ、この共通バー19により他方端子14a〜14cを共通に接続する。共通バー19は建物の鉄筋15を介して建物の避雷用の接地極25に接続される。また、共通バー19は接地線端子箱11の筐体接地極20に接続され、接地線端子箱11自体を保護している。筐体接地極20は建物の鉄筋15を介して建物の避雷用の接地極25に接続される。
【0017】
また、接地端子台12a〜12cには、接続バー取付部21a〜21cが設けられている。この接続バー取付部21a〜21cに接続バー22が着脱可能に取り付けられる。接続バー22は、接地端子台12a〜12cの一方端子13a〜13cと他方端子14a〜14cとを接続するものであり、この接続バー22が接続バー取付部21に取り付けられると、一方端子13a〜13cの接地線16が共通バー19を介して建物の避雷用の接地極25に接続されることになる。
【0018】
図1では、避雷用の接地端子台12aの接続バー取付部21a、電力設備用の接地端子台12bの接続バー取付部21bに接続バー22が接続され、電子機器備用の接地端子台12cの接続バー取付部21cには接続バー22が接続されていない場合を示している。
【0019】
次に、電子機器用の接地端子台12cの一方端子13cと他方端子14cとの間には、接続バー取付部21cに並列に避雷器(SPD)23が設けられている。避雷器23は、電子機器用の接地線16cに落雷による高電圧が発生した場合に導通し、電子機器用の接地線16cを共通バー19を介して建物の避雷用の接地極25に接続するものである。
【0020】
また、避雷用の接地線16aにはサージカウンタ24が取り付けられ、雷の発生頻度をカウントする。建物の接地線16aの電流を測定し、所定値以上の電流サージを検出することによって、雷の発生頻度をカウントする。これにより、建物の落雷状況を確認できるようにしている。
【0021】
以上の説明では、電子機器用の接地端子台12cには接続バー22を接続していない場合について説明したが、この接地端子台12cに接続バー22を接続するようにしてもよい。電子機器用の接地端子台12cに接続バー22を取り付けるか否かは、事前に避雷用の接地線16aや電力設備用の接地線16bが接続される共通バー19のノイズを測定し、電子機器18に影響のあるノイズがない場合には、電子機器用の接地端子台12cに接続バー22を取り付ける。これにより、電子機器用の接地線16cを接地できる。
【0022】
一方、共通バー19のノイズが所定値を超え電子機器18に影響のある場合、共通バー19のノイズが所定値を超えると予想される場合には電子機器用の接地端子台12cに接続バー22を取り付けない。共通バー19のノイズが所定値を超えると予想される場合としては、新たに空調設備や変圧器などが新たに導入され、新たにノイズが重畳される可能性のある場合である。
【0023】
電子機器用の接地端子台12cに接続バー22を取り付けない場合には、電子機器用の接地線16cは接地されていない状態となるが、共通バー19から切り離された状態となるので、避雷用の接地線16aや電力設備用の接地線16bから電子機器18へのノイズの伝搬を防止できる。また、電子機器用の接地線16cを建物の避雷用の接地極25に接続しない場合であっても、電子機器用の接地端子台12cの一方端子13cと他方端子14cとの間に避雷器23を設けているので、落雷時だけ電子機器用の接地線16cを建物の避雷用の接地極25に接続できる。従って、落雷時の高電圧による電子機器18の被害を防止できる。
【0024】
このように、本発明の実施形態では、避雷器23及び接続バー22を設けることで、既存の避雷用の接地極25を有効活用し、高額の電子機器18を簡便に落雷から保護できるとともにノイズの混入も防止できる。また、電子機器用の接地端子台12cに接続バー22を取り付けない場合には、電子機器用の接地線16cは非接地状態となるが、雷の発生状況とノイズの発生状況を見ながら、電子機器18の接地を優先する場合には、電子機器用の接地端子台12cに接続バー22を取り付け、一方、ノイズ障害の防止を優先する場合には、電子機器用の接地端子台12cに接続バー22を取り付けないようにし、運用面で電子機器用の接地端子台12cの接続バー22の取り付けを選択できる。
【0025】
また、電力設備17や電子機器18が後から追加して装備されても、電力設備用の接地端子台12b、電子機器備用の接地端子台12cは、既存の接地線端子箱に設けられている予備の接地端子台を用いることができる。予備の接地端子台がない場合であっても、接地端子台を容易に追加できる。
【0026】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
11…接地線端子箱、12…接地端子台、13…一方端子、14…他方端子、15…建物の鉄筋、16…接地線、17…電力設備、18…電子機器、19…共通バー、20…筐体接地極、21…接続バー取付部、22…接続バー、23…避雷器、24…サージカウンタ、25…避雷用の接地極