(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265823
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】排水配管方法
(51)【国際特許分類】
E03F 3/02 20060101AFI20180115BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20180115BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
E03F3/02
E03C1/122 Z
F16L5/00 N
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-89681(P2014-89681)
(22)【出願日】2014年4月23日
(65)【公開番号】特開2015-209637(P2015-209637A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000505
【氏名又は名称】アロン化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】中居 義貴
(72)【発明者】
【氏名】西村 英己
(72)【発明者】
【氏名】佐野 陽和
【審査官】
西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−082771(JP,A)
【文献】
特開2004−295069(JP,A)
【文献】
特開2004−036114(JP,A)
【文献】
米国特許第01472794(US,A)
【文献】
特開2002−306892(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02427250(GB,A)
【文献】
特開2002−047711(JP,A)
【文献】
特開2000−050481(JP,A)
【文献】
特開2005−240475(JP,A)
【文献】
実開昭60−100470(JP,U)
【文献】
米国特許第04433860(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12
E03C 1/122
E03C 1/28
E03F 3/02
F16L 5/00
F16L 11/12
G09F 19/22
H02G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に配された孔のない蓋によって閉鎖されている点検口を有する立管が接続された、地中に埋設されている既設の配管に、前記既設の配管に対して新たに増設した雨水排水設備又は汚水排水設備からなる新規設備から流出した排水を導入する排水配管方法であって、
前記新規設備を増設する前の既設の配管に設けられた点検口を閉鎖する前記孔のない蓋に、貫通孔を新たに開ける工程と、
該貫通孔に、前記新規設備から流出した排水が流れる排水管を挿通させて当該排水管の下端を前記蓋より下側に位置させる工程と、
前記排水管と前記蓋とを固定手段を用いて相互固定する工程と、
を含むことを特徴とする排水配管方法。
【請求項2】
前記固定手段は、
前記排水管の外周面に形成された一対のフランジ部で構成されており、
前記蓋の貫通孔に該排水管が挿通された状態で、該蓋における貫通孔の周縁部を、前記一対のフランジ部の間に介挿する
請求項1に記載の排水配管方法。
【請求項3】
前記一対のフランジ部間に、前記貫通孔の内周面と前記排水管の外周面との間の隙間を密封するためのシール部材を配設する
請求項2に記載の排水配管方法。
【請求項4】
前記排水管の一部が、上下方向に開口した筒状のソケット管によって構成されており、該ソケット管は、
上下方向に開口したソケット本体と、
該ソケット本体の管軸に直交する方向に延設され、前記一対のフランジ部のうちの一方となるフランジ部と
を有し、
該フランジ部を、該ソケット本体の上端よりも下側に配置し、該ソケット本体の上端部には、他の管材が接続可能な接続管端部を形成している
請求項2又は請求項3に記載の排水配管方法。
【請求項5】
前記排水管の一部が、上下方向に開口した筒状のソケット管によって構成されており、該ソケット管は、
上下方向に開口したソケット本体と、
該ソケット本体の管軸に直交する方向に延設され、前記一対のフランジ部のうちの一方となるフランジ部と
を有し、
該フランジ部を、該ソケット本体の上端に配置し、該ソケット本体の上端側の管端内に、他の管材を嵌入して該ソケット管と他の管材とを接続する
請求項3又は請求項4に記載の排水配管方法。
【請求項6】
前記孔部に前記排水管を挿通し、上下方向に貫通した孔部を有する配管支持部材を該排水管に固定し、かつ、該排水管が前記蓋の貫通孔に挿通された状態で、該配管支持部材の外周縁を全周にわたって、前記立管の内壁面に当接させる
請求項1に記載の排水配管方法。
【請求項7】
前記貫通孔を、前記蓋の中央に設ける
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の排水配管方法。
【請求項8】
前記蓋は親子蓋であり、前記貫通孔は子蓋に設ける
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の排水配管方法。
【請求項9】
前記排水管の下端を、前記既設の配管内に配置する
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の排水配管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たに設けた設備から排出される排水を、既設の排水用の配管に導入するための
排水配管方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内で発生した排水は公共ますに集められ、該公共ますから下水本管へ導入されていることが一般的である。また、該公共ますに接続される配管は、定期的に点検や清掃を行う必要があるため、点検口を有する排水ますが該配管の所定位置に設けられていることもよく知られている。なお、該点検口は、点検時や清掃時以外は蓋によって閉鎖されている。
【0003】
例えば特許文献1には、内部を点検する点検口、排水を排出する排出口、排水が流入する排水口、を設けた枡本体と、該枡本体の点検口を密閉する枡蓋と、から構成される排水枡と、排水枡の排出口に連結され、排水を屋外側に排出するための排水主管と、該排水枡の排水口と排水機器を連結する排水枝管と、から構成した排水枡を用いた屋内の床下配管が開示されている。
【0004】
また特許文献2には、建物の床下にて、排水主管が建物の外周基礎の内側に沿って配管され、この排水主管の所定位置にて、建物内に設置された各種排水設備に接続されている排水枝管の流出側端部が接続され、前記排水主管の下流側端部が建物の外周基礎の外側地中に埋設された排水枡の流入側端部と接続され、この排水枡の流出側接続部と接続されている屋外側排水主管の下流側端部が公共枡の流入側接続部と接続されている住宅用排水システムであって、前記屋外側排水主管が、外周基礎の外側地中に埋設されているU字溝内に配置されて配管されている住宅用排水システムが開示されている。
【0005】
ところで、既存の建物において新規な設備(例えばポータブルトイレや給湯システム)を増設する場合、該新規設備から排出される排水を建物の外に配された既存の配管に接続することがある。このような場合には、例えば排水ます周囲の地面を掘削して該排水ますの壁面を露出させ、そこに孔を開けて新たな排水配管を接続したり、あるいは、該排水ますに接続されている配管の壁面を露出させ、そこに孔を開けて新たな排水配管を接続したり、また新規に排水ますを接続して合流するようにしたりする。
【0006】
なお、その他の新規設備としては、仮設トイレや、仮設住宅に備えられた雨水排水設備等も含まれる。このような設備から流出する排水を既存の排水用の配管に導入する場合にも、改めて地面を掘削して配管を接続するという作業が通常行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−40745号公報
【特許文献2】特開2001−227021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、既に地中に埋設されている配管等を改めて掘り起こして露出させる作業は時間と労力を要し、また建物の周囲に犬走り等が設けられている場合には、別途コンクリートを取り除く作業と、施工後に再度コンクリートによって地面を覆う作業とが必要となり、コスト高となる大変大掛かりな工事となる。
【0009】
また、新規設備が、仮設トイレや仮設住宅の雨水排水設備の場合には、一時的に利用する設備であるため、役割を果たした後に設備そのものが撤去されることが多い。このため、これに伴い、排水用配管の周囲を再度掘削して該当する排水配管を撤去する作業を要する。また、既設の配管に孔を開けてそこに排水配管を接続した場合には、撤去に伴い、当該孔を適切に塞いで原状の構造に回復させる必要があり、これらの作業は大変手間がかかって面倒であり、全体としてコストが高騰する問題があった。特に、施工現場が狭小地である場合には、手作業が要求されることもあり、上記した作業は効率が大変悪くなってしまう。
【0010】
そこで本発明は、新規設備の設置に際し、新規設備からの排水を既設の排水配管に容易に導入でき、さらに当該新規設備を撤去する際にも最小限の手間をかけるだけで元の構造に回復させることができる
排水配管方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
例えば、蓋によって閉鎖されている点検口を有する立管が接続された既設の配管に、新規設備から流出した排水が流入する排水配管構造であって、前記点検口に配置された蓋に貫通孔が設けられており、該貫通孔に、前記新規設備から流出した排水が流れる排水管が挿通されていることを特徴とする排水配管構造
が提案される。
【0012】
かかる構成にあっては、新規設備から流出した排水は、前記排水管を通って既設の配管内に案内され、該排水管の下流側の管口から排出される。したがって、既設の配管周囲の地面を改めて掘削することなく新規設備の排水処理を行うことができ、施工時間やコストの大幅な低減が可能となる。勿論、仮に新規設備を撤去する場合には、不要となった排水管を撤去すると共に、点検口の蓋のみを新しいものに取り替えればよいため、最小限の手間をかけるだけで元の構造に回復させることができる。なお、本発明における新規設備には、上記したようなポータブルトイレ、給湯システム、仮設トイレ、あるいは仮設住宅に備えられた雨水排水設備等が含まれ、要は、排水を下水本管にまで導く必要がある新規な排水設備が該当する。
【0013】
また、上記構成にあっては、前記排水管と前記蓋とを相互固定する固定手段を具備していることが望ましい。
【0014】
かかる構成とすることにより、該排水管を貫通孔に挿通した状態で該排水管がぐらついたり、該排水管が蓋から意図せず外れたりしてしまうことを防止することができる。
【0015】
なお、前記固定手段は、前記排水管の外周面に形成された一対のフランジ部で構成されており、前記蓋の貫通孔に該排水管が挿通された状態で、該蓋における貫通孔の周縁部が、前記一対のフランジ部の間に介挿されているものが提案される。
【0016】
かかる構成とすることによって、前記蓋が前記フランジ部によって挟まれた状態となるため、該蓋に対して該排水管がその管軸方向に位置ずれすることがなくなり、該蓋と該排水管とが好適に固定される。また、該蓋の貫通孔が前記フランジ部によって被覆されるため、該貫通孔の内周面と該排水管の外周面との隙間を介してゴミ等が立管内に侵入してしまうことを抑制できる。
【0017】
また、前記一対のフランジ部間には、前記貫通孔の内周面と前記排水管の外周面との間の隙間を密封するためのシール部材が配設されていることが望ましい。
【0018】
かかる構成とすることにより、前記貫通孔と前記排水管との間から既設配管内の臭気が外部に漏出することを防止することができる。
【0019】
また、前記排水管の一部が、上下方向に開口した筒状のソケット管によって構成されており、該ソケット管は、上下方向に開口したソケット本体と、該ソケット本体の管軸に直交する方向に延設され、前記一対のフランジ部のうちの一方となるフランジ部とを有し、該フランジ部は、該ソケット本体の上端よりも下側に配置されており、該ソケット本体の上端部には、他の管材が接続可能な接続管端部が形成されている構成が提案される。
【0020】
かかる構成にあっては、前記フランジ部から地上方向に向かって突出した前記接続管端部に、他の管材を容易に接続することが可能となる。さらに、例えば該接続管端部における軸方向の長さを予め長めに設定しておき、施工現場の状況に応じて当該施工現場で該接続管端部を適正な長さに切断して使用することも可能となる。
【0021】
これに対し、前記排水管の一部が、上下方向に開口した筒状のソケット管によって構成されており、該ソケット管は、上下方向に開口したソケット本体と、該ソケット本体の管軸に直交する方向に延設され、前記一対のフランジ部のうちの一方となるフランジ部とを有し、該フランジ部は、該ソケット本体の上端に配置されており、該ソケット本体の上端側の管端内に、他の管材が嵌入されて該ソケット管と他の管材とが接続されている構成としてもよい。
【0022】
かかる構成にあっては、前記ソケット管を前記蓋に装着した状態で、ソケット管が地上側に過剰に突出しないため、施工時に現場の作業員が足を引っ掛けてソケット管を破損させてしまったり、該ソケット管につまずいて怪我をしたりしてしまう、ことが防止される。
【0023】
また、上下方向に貫通した孔部を有する配管支持部材を備え、前記孔部に前記排水管が挿通されて該配管支持部材が該排水管に固定され、かつ、該排水管が前記蓋の貫通孔に挿通された状態で、該配管支持部材の外周縁が全周にわたって、前記立管の内壁面に当接している構成が提案される。
【0024】
かかる構成とすることによっても、立管に対して排水管を位置決めすることが可能となる。また、該配管支持部材により、立管内が外気側と既設配管側とに分断されるため、既設の配管内の臭気が点検口を介して外部に漏出することを好適に防止することができる。
【0025】
また、前記貫通孔は、前記蓋の中央に設けられていることが望ましい。
【0026】
かかる構成とすることにより、排水管の下流側の管口を前記立管の横断面において中央に配置しやすくなるため、該管口から排出する排水が立管の内周面に飛散して該内周面を汚してしまう、ということを可及的に抑制することができる。したがって、前記立管が清潔に維持され、前記点検口を介した点検作業が衛生的な環境下で行える。また、蓋の中心軸線に対して偏心させて貫通孔を設けた構成に比して、蓋の強度低下を招きにくいという利点がある。
【0027】
さらに、前記蓋は親子蓋であり、前記貫通孔は子蓋に設けられていることが望ましい。
【0028】
かかる構成にあっては、前記新規設備が不要となって前記排水管と共に撤去する際に、該排水管が挿通されていた貫通孔を有する子蓋のみを孔のない新しいものと交換すれば元の構造に容易に回復することができる。このため、施工の作業時間やコストをより大幅に削減できる。
【0029】
そして、前記排水管の下端が、前記既設の配管内に配置されていることが望ましい。
【0030】
かかる構成とすることによって、前記排水管から流出する排水によって前記立管の内周面が汚れてしまうことを、より一層確実に防止することができる。
【0031】
また、本発明は、
地上に配された孔のない蓋によって閉鎖されている点検口を有する立管が接続された
、地中に埋設されている既設の配管に、
前記既設の配管に対して新たに増設した雨水排水設備又は汚水排水設備からなる新規設備から流出した排水を導入する排水配管
方法であって、前記
新規設備を増設する前の既設の配管に設けられた点検口を閉鎖する
前記孔のない蓋に
、貫通孔を新たに開ける工程(工程1)
と、該貫通孔に、
前記新規設備から流出した排水が流れる排水管を挿通
させて当該排水管の下端を前記蓋より下側に位置させる工程(工程2)
と、前記排水管と前記蓋とを固定手段を用いて相互固定する工程とを含むことを特徴とする排水配管方法である。
また、前記固定手段は、前記排水管の外周面に形成された一対のフランジ部で構成されており、前記蓋の貫通孔に該排水管が挿通された状態で、該蓋における貫通孔の周縁部を、前記一対のフランジ部の間に介挿するようにしてもよい。
また、前記一対のフランジ部間に、前記貫通孔の内周面と前記排水管の外周面との間の隙間を密封するためのシール部材を配設するようにしてもよい。
また、前記排水管の一部が、上下方向に開口した筒状のソケット管によって構成されており、該ソケット管は、上下方向に開口したソケット本体と、該ソケット本体の管軸に直交する方向に延設され、前記一対のフランジ部のうちの一方となるフランジ部とを有し、該フランジ部を、該ソケット本体の上端よりも下側に配置し、該ソケット本体の上端部には、他の管材が接続可能な接続管端部を形成しているようにしてもよい。
また、前記排水管の一部が、上下方向に開口した筒状のソケット管によって構成されており、該ソケット管は、上下方向に開口したソケット本体と、該ソケット本体の管軸に直交する方向に延設され、前記一対のフランジ部のうちの一方となるフランジ部とを有し、該フランジ部を、該ソケット本体の上端に配置し、該ソケット本体の上端側の管端内に、他の管材を嵌入して該ソケット管と他の管材とを接続するようにしてもよい。
また、前記孔部に前記排水管を挿通し、上下方向に貫通した孔部を有する配管支持部材を該排水管に固定し、かつ、該排水管が前記蓋の貫通孔に挿通された状態で、該配管支持部材の外周縁を全周にわたって、前記立管の内壁面に当接させるようにしてもよい。
また、前記貫通孔を、前記蓋の中央に設けるようにしてもよい。
また、前記蓋は親子蓋であり、前記貫通孔は子蓋に設けるようにしてもよい。
また、前記排水管の下端を、前記既設の配管内に配置するようにしてもよい。
【0032】
かかる構成とすることによって、新規設備に対応する新規の排水管を既設の配管に接続する際に、地面を掘削する工程を省くことができるため、施工の作業効率が大幅に向上する。また、該新規設備の撤去作業においても地面を改めて掘削する必要がないため、最小限の手間をかけるだけで元の構造に容易に回復させることができる。
【発明の効果】
【0033】
上述の排水配管構造は、新規設備の設置に際し、新規設備からの排水を既設の排水用の配管に容易に導入でき、さらに当該新規設備を撤去する際にも最小限の手間をかけるだけで元の構造に容易に回復させることができる利点がある。
【0034】
また、本発明の排水配管方法は、既存の配管構造を、容易に上記排水配管構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】排水配管構造の要部を拡大して示す拡大縦断面図である。
【
図3】ソケット管とストッパとを示し、(a)はソケット管の縦断面図、(b)はソケット管の平面図、(c)はストッパの縦断面図、(d)はストッパの平面図である。
【
図4】排水配管方法の手順を説明する説明図である。
【
図5】
図4から続く、排水配管方法の手順を説明する説明図である。
【
図7】
例2の排水配管構造の要部を拡大して示す拡大縦断面図である。
【
図8】(a)は配管支持部材の縦断面図、(b)は配管支持部材の平面図である。
【
図9】排水配管構造における配管支持部材周辺を示す図であり、(a)は一部切欠部分縦断面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【
図10】
例3の排水配管構造の要部を拡大して示し、(a)は拡大平面図、(b)は拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、
排水配管構造、及び排水配管方法を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、
排水配管構造は、下記に示す排水配管構造1A〜1Cに限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0037】
〔
例1〕
図1に示すように、新規設備としてのポータブルトイレ4を既設の建物2内に新しく設置した場合には、該ポータブルトイレ4から排出される排水を、建物2の外の地中に埋設された既設の配管5に導入する排水配管構造1Aを構築することが提案される。
【0038】
以下、排水配管構造1Aについて説明する。
前記ポータブルトイレ4には、汚水を案内する配管10が接続されており、該配管10が床部3及び壁部9を介して、屋外に設置される真空排水ユニット11に接続されている。そしてさらに、該真空排水ユニット11には、汚水を既設の配管5に案内するための直管13が接続されている。
【0039】
一方、既設の配管5には、点検口7を有する立管8が接続されており、さらに該点検口7は、地上に配された蓋6によって閉鎖されている。また、
図2に示すように、該蓋6の中央には、当該排水配管構造1Aを構築すべく、上下方向に貫通した貫通孔15が新たに設けられている。
【0040】
そして、前記真空排水ユニット11に接続された直管13にエルボ管14が接続され、該エルボ管14に接続されたソケット管16が、前記蓋6の貫通孔15に挿通されている。ここで、該ソケット管16と蓋6との間でがたつきが発生することを防止すべく、相互を固定するための固定手段30が設けられている。
【0041】
前記固定手段30についてさらに詳述すると、
図3(a),(b)に示すように、前記ソケット管16は、上下方向に開口した円筒状のソケット本体17と、該ソケット本体17の管軸に直交する方向に延設された鍔状のフランジ部18とで構成されている。該フランジ部18は、該ソケット本体17の上端よりもやや下側に配置されており、該ソケット本体17の上端部には、他の管材としての前記エルボ管14が接続可能な差口形状の接続管端部17aが形成されている。また、前記フランジ部18の外寸は、前記蓋6の貫通孔15の孔径よりも大きく、かつ該蓋6の外径よりも小さい寸法に設定されている。そして、
図2に示すように、該フランジ部18が前記蓋6の上面に配置されるように、前記ソケット本体17の下端部が立管8内に上から差し入れられている。
【0042】
さらに、前記ソケット管16には、
図3(c),(d)に示すような円盤形状のストッパ19が取り付けられている。具体的には、該ストッパ19の外径は、上記ソケット管16のフランジ部18における外寸に略等しくなるように定められている。また、該ストッパ19の中央には円形の孔19aが貫通状に設けられており、該孔19aの孔径は前記ソケット管16のソケット本体17の外形に合わせた寸法に設定されている。なお、該ストッパ19の外径と、前記ソケット管16のフランジ部18の外径とが、異なる寸法であっても構わない。
【0043】
そして、前記ソケット管16のフランジ部18の直下にシール部材である円環状のパッキン20が配置され、かつ該ソケット管16の下端部が該ストッパ19の孔19aに挿通されて、該ストッパ19がソケット管16に接着剤を介して固定されている。これにより、上下に並んだ前記フランジ部18と該ストッパ19との間に、前記蓋6における貫通孔15の周縁部が介挿された状態となり、該蓋6が該フランジ部18と該ストッパ19とで挟持され、該ソケット管16と該蓋6とが相互に固定状態となっている。また、かかる状態で、前記パッキン20により該貫通孔15の内周面と、該ソケット管16の外周面との間が密封されている。
【0044】
さらに、上述のように、エルボ管14における受口形状の下流側の管端がソケット管16の上端に接続されると共に、前記ソケット管16の下端には、接続継手22が接続され、さらに延長パイプ23が接続される。そして、該延長パイプ23の下端が、既設の配管5内に配置されている。
【0045】
なお、前記フランジ部18と前記ストッパ19の円盤部分とにより、本発明にかかる一対のフランジ部が構成され、本発明にかかる固定手段30が実現されている。また、本実施例における直管13、エルボ管14、ソケット管16、接続継手22、及び延長パイプ23により、本発明にかかる排水管12が構成されている。したがって、該排水管12の外周面12aは、具体的には該排水管12を構成する各管材(例えば、直管13、エルボ管14、ソケット管16、接続継手22、又は延長パイプ23)の外周面によって構成されている。
【0046】
上記構成とすることにより、前記ポータブルトイレ4から流出した排水は、前記排水管12を通って立管8内に案内され、該排水管12の下流側の管口から既設の配管5内に導入される。
【0047】
また、上記構成は、前記排水管12と前記蓋6とが固定手段30により相互固定されているため、該排水管12がぐらついたり、該排水管12が蓋6から意図せず外れたりしてしまうことがない。また、該固定手段30は、フランジ部18とストッパ19とで蓋6を挟持する構造であるため、該蓋6と該排水管12とが強固に接続される。また、該フランジ部18が、該蓋6の貫通孔15を被覆しているため、該貫通孔15内に地上のゴミ等が入り込んでしまうことが抑制されている。また、貫通孔15の内周面と排水管12の外周面12aとの隙間を密封するためのパッキン20を備えているため、既設の配管5内の臭気が外部に漏出することが抑止されている。また、前記ソケット管16とストッパ19は、容易に着脱可能であるため、点検口7を利用したメンテナンスの際に作業を妨げることが抑制される。
【0048】
また、前記貫通孔15が前記蓋6の中央に設けられ、かつ前記排水管12の下端が既設の配管5内に配置されているため、該排水管12の管口から排出される排水が、立管8の内壁面47に飛散して該内壁面47を汚してしまう、ということが可及的に抑制されている。このため、前記点検口7の衛生環境が好適に維持されている。また、貫通孔15が蓋6の中央に配されることにより、貫通孔15を形成することによる蓋6自体の強度低下が可及的に抑えられている。なお、前記配管5には、立管8が接続される既設の排水ますや、該排水ますに接続されている既設の管材が含まれる。
【0049】
以下に、排水配管構造1Aの施工手順を再度詳細に説明する。
新規設備としてのポータブルトイレ4が設置される以前においては、既設の配管5の点検口7は孔のない蓋6(
図4a参照)によって完全に遮蔽されている。そして、ポータブルトイレ4を新規に設置することに伴い、
図4(b)に示すように、排水管12の外径よりも若干広い径の貫通孔15をホールソー等で設ける(工程1)。あるいは、貫通孔15が既に開口した蓋6を新たに準備して配置するようにしてもよい。なお、蓋6自体の強度を十分に確保することができるのであれば、蓋6の中心軸線に対して偏心させて貫通孔15を設けてもよい。
【0050】
次に、
図5(c)に示すように、前記蓋6の貫通孔15内にソケット管16を上から挿通し(工程2)、該貫通孔15の内周面と該ソケット管16の外周面との間にパッキン20を配置する。そして、
図5(d)に示すように、ストッパ19を蓋6の下側から装着して、該蓋6を、フランジ部18とストッパ19とで挟持する。さらに、該ソケット管16の上流側と下流側とに適宜上記部材を接続して、
図2に示すような排水配管構造1Aを構築する。
【0051】
かかる排水配管方法とすることにより、ポータブルトイレ4を設置するために点検口7周囲の地面を掘削したり、建物2周囲のコンクリート等を剥がしたりする等の工程が不要となるため、施工時間やコストの大幅な低減が可能となる。また、仮にポータブルトイレ4が不要となって排水配管構造1Aを撤去することになったとしても、再度地面を掘削する必要もなく、不要となった排水管12を取り除いた後、孔のない蓋6を取り付け直せば、元の構造に回復することができる。なお、各管材の取付順序は、施工現場の状況によって適宜変更することが可能である。また、各管材を使用する際には、施工現場の状況に応じて当該施工現場で適正な長さに切断して使用することができる。例えば、前記ソケット管16の接続管端部17aを、前記真空排水ユニット11に接続された直管13の高さ位置に応じて、適正な長さに切断して使用することが可能である。
【0052】
本実施例において、前記ストッパ19をソケット管16に取り付ける手段としては、接着剤を用いる構成に限定されるものではなく、例えばソケット管16の外周面に雄ネジが形成され、かつ、ストッパ19の孔19aの内周面に雌ネジが形成されて、相互を螺着するようにした構成としてもよい。また、該ストッパ19と該ソケット管16とを留めネジ等で固定してもよいし、ストッパ19の孔19aにソケット本体17を圧入固定するような寸法設定にしておくようにしてもよい。
【0053】
また、
図6に示すようなソケット管26を採用することもできる。該ソケット管26にあっては、フランジ部18がソケット本体17の上端に配置されている。そして、該ソケット本体17の上端は受口形状となっており、該ソケット本体17の上端に、差口形状とされたエルボ管14の下流側の管端が嵌入されて、該ソケット管26と該エルボ管14とが接続される。
【0054】
かかる構成にあっては、前記ソケット管26を蓋6に装着した状態で、ソケット管26が地上側に過剰に突出しないため、施工時に現場の作業員が足を引っ掛けてソケット管26を破損させてしまったり、該ソケット管26につまずいて怪我をしたりしてしまう、ということを防止することができる。
【0055】
また、これまでに述べた
例にあって、パッキン20の配設位置は、上記構成の位置に限定されることはなく、適宜変更することが可能である。また、排水管12を構成する管材は、塩化ビニル製のものが好適に採用可能であるが、特に限定されるものではなく、ホース等が代用されてもよい。また、前記排水管12の下端は、既設の配管5内に配置されることが望ましいが、かかる構成に限定されるものではない。
【0056】
〔
例2〕
図7に従って、
例2にかかる排水配管構造1Bを説明する。なお、上記
例1と同様の構成であるものは、同じ符号を付し、また説明を簡略するものとする。
【0057】
排水配管構造1Bにあっては、配管支持部材45によって排水管12が蓋6に対して位置決めされている。さらに詳述すると、
図8に示すように、該配管支持部材45は、SBR等の合成ゴム材料からなり、上下方向に貫通した孔部46aを有する円筒状の本体部46と、該本体部46から左右方向に延出形成された鍔状のフランジ部48とを備えている。
【0058】
そして、
図7,9に示すように、前記配管支持部材45における本体部46の孔部46aに排水管12が圧入されて、該排水管12に該配管支持部材45が固定された状態で、蓋6の貫通孔15に該排水管12が挿通されることで当該排水配管構造1Bが実現されている。この使用状態にあっては、該配管支持部材45の該フランジ部48が前記立管8の内壁面47に向かって差し出され、該フランジ部48の先端縁48aが、該立管8の内壁面47に圧接した状態となっている。すなわち、該配管支持部材45の外周縁が全周にわたって、該立管8の内壁面47に当接した状態となっている。
【0059】
かかる構成とすることにより、前記排水管12が、立管8及び蓋6に対して位置決めされると共に、立管8内が外気側と既設配管5側とに分断されるため、既設の配管5内の臭気が点検口7を介して外部に漏出することを好適に防止できる。
【0060】
なお、前記配管支持部材45を排水管12に固定する構成は、上記
例に限定されることはなく、接着剤等で接着してもよいし、別部材からなる固定具を用いるようにしてもよい。また、例えば配管支持部材45のフランジ部48は、上記のように単数である必要はなく、上下に複数段設けられていても構わない。また、同一の配管支持部材45が、立管8内に複数配置されていても構わない。さらに、前記配管支持部材45が全体として円盤形状をなしており、具体的にフランジ部48が形成されていないような外観形状であっても構わない。
【0061】
〔
例3〕
図10に従って、
例3にかかる排水配管構造1Cを説明する。なお、上記
例1,2と同様の構成であるものは、同じ符号を付し、また説明を簡略するものとする。
【0062】
本
例にあっては、点検口7を閉塞する蓋51が、親蓋51aと子蓋51bとからなる親子蓋で構成されている。そして、該子蓋51bの中央に、貫通孔52が設けられ、該貫通孔52に排水管12が挿通されている。
【0063】
かかる構成とすることにより、前記ポータブルトイレ4が不要となって前記排水管12と共に撤去する際に、該排水管12が挿通されていた貫通孔52を有する子蓋51bのみを孔のない新しい子蓋と交換すれば元の構造に容易に回復することができ、作業時間やコストをより大幅に削減することができる。また、子蓋51bが配設されている孔を貫通孔52として利用することも可能である。
【0064】
これまでに述べた
例1〜3の排水配管構造1A〜1Cは、排水ます、又は雨水ます等にも勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1A〜1C 排水配管構造
4 ポータブルトイレ(新規設備)
5 配管
6,51 蓋
7 点検口
8 立管
12 排水管
12a 外周面
15,52 貫通孔
16,26 ソケット管
17 ソケット本体
17a 接続管端部
18 フランジ部
19 ストッパ(フランジ部)
20 パッキン(シール部材)
30 固定手段
45 配管支持部材
46a 孔部
47 内壁面
51b 子蓋