(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、給気弁に連通する吹き出しノズルの活用により、容器本体内のエアの効率的な置換が期待できるものの、吹き出しノズルの上部がフリーの場合には、容器本体内のエアを効率良く置換することに支障を来すおそれが考えられる。
【0006】
この点について説明すると、吹き出しノズルの上部が特に保持されずにフリーの場合には、基板収納容器の外部から内部にパージガスが高圧で供給されたり、基板収納容器が高速で搬送されたりすると、振動や加速度の作用により、吹き出しノズルの上部が前後左右に揺れ、吹き出しノズルの姿勢が不安定となる。吹き出しノズルが揺れ、姿勢が安定しないと、吹き出しノズルの吹出孔の位置が当初の設定位置から横方向にずれたり、容器本体の底板に対する固定が緩んだり、その結果、容器本体内のエアをパージガスに効率良く置換することに困難を来すおそれが考えられる。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、吹き出しノズルの揺れや姿勢の不安定化を抑制し、容器本体内の気体を基板用の気体に効率良く置換することのできる基板収納容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面に着脱自在に嵌め合わされる蓋体とを備え、
容器本体の底部後方両側に、外部から内部に基板用の気体を供給する給気弁をそれぞれ取り付け、容器本体の底部前方両側に、内部から外部に気体を排気する排気弁をそれぞれ取り付けたものであって、
容器本体の
底部後方両側に、複数の給気弁に連通する中空の吹き出しノズルを
それぞれ立て設け、
各吹き出しノズルの周壁に、基板方向に基板用の気体を吹き出す吹出孔を設け、
複数の吹き出しノズルの上部を
容器本体の上部に保持部材を介して支持させ、
保持部材を容器本体の上部後方に整合するよう板形の略弓なりに形成して容器本体の上部後方内面と複数の吹き出しノズルの上部との間に介在するとともに、この保持部材の上面に、容器本体の上部内面に密接する圧縮可能な複数の接触部を形成してこれら複数の接触部の高さを揃え、保持部材の下面には、複数の吹き出しノズルの上部に嵌まる嵌合保持部をそれぞれ形成したことを特徴としている。
【0009】
また、本発明においては上記課題を解決するため、基板を収納する容器本体と、この容器本体の開口した正面に着脱自在に嵌め合わされる蓋体とを備え、容器本体の底部後方両側に、外部から内部に基板用の気体を供給する給気弁をそれぞれ取り付け、容器本体の底部前方両側に、内部から外部に気体を排気する排気弁をそれぞれ取り付けたものであって、
容器本体を多色成形してその背面壁に基板用の観察窓を一体形成し、容器本体の底部後方両側に、複数の給気弁に連通する中空の吹き出しノズルをそれぞれ立て設け、各吹き出しノズルの周壁には、基板方向に基板用の気体を吹き出す吹出孔を設け、
容器本体の観察窓内面から容器本体の正面方向に複数の保持部材をそれぞれ突出させ、この複数の保持部材の自由端部に、吹き出しノズルの上部に嵌まる嵌合保持部を一体形成したことを特徴としている。
【0010】
また、吹き出しノズルの上部と保持部材の嵌合保持部とを相互に対応する多角形に形成することにより、吹き出しノズルの回転を規制することができる。
【0011】
ここで、特許請求の範囲における基板には、少なくともφ300や450mmの半導体ウェーハ、ガラスウェーハ、マスクガラス等が必要数含まれる。容器本体は、透明、不透明、半透明のいずれでも良い。また、給気弁、排気弁、吹き出しノズルとその吹出孔の数、保持部材は、必要に応じ、増減することができる。基板用の気体には、少なくとも各種のパージガス(例えば、アルゴンガス等の不活性ガスやドライエア)が含まれる。
【0012】
給気弁については、底板後部の取付孔に嵌められる上部ハウジングと、この上部ハウジングの開口面に下方から嵌められる下部ハウジングと、これら上部ハウジングと下部ハウジングとの間に上下動可能に内蔵されて基板用の気体の流動を制御する弁体とから構成し、容器本体に改造を施さない観点から、上部ハウジングと下部ハウジングとに吹き出しノズルの下部を挟み持たせることができる。
【0013】
吹き出しノズルの上部は、容器本体の上部及び周壁(背面壁や側壁)内面、容器本体の上部、あるいは容器本体の周壁内面に保持部材により支持させることができる。さらに、保持部材は、各種の合成樹脂(例えば、PCやPEEK等)や変形可能な弾性部材により形成することができ、接触部を、容器本体の上部内面の形状に応じ、突出させたり、凹ませたりすることが可能である。
【0014】
本発明によれば、容器本体の上部と
背面壁内面のいずれかに吹き出しノズルの上部が保持され、吹き出しノズルの動きが規制されるので、例え基板収納容器に基板用の気体が高圧で供給されたり、基板収納容器に加速度や熱履歴等が作用しても、吹き出しノズルの上部が揺れたり、振動したりするのを抑制することができ、しかも、吹き出しノズルが回転するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、保持部材の保持機能により、吹き出しノズルの吹出孔の位置が周方向に回転して当初の設定位置から側方や後方にずれたり、吹き出しノズルが緩んだりすることが少ない。したがって、基板用の気体を基板方向に常時適切に噴射することができるので、容器本体内の気体を基板用の気体に効率良く置換することができるという効果がある。また、容器本体と保持部材とが一体ではなく、別体なので、容器本体の構成を何ら変更する必要がなく、容器本体を既存の製法により製造することができる。また、保持部材の上面に複数の接触部を形成し、この複数の接触部の高さを揃えるので、保持部材の姿勢を傾けることなく、安定させることが可能になる。さらに、保持部材の接触部が圧縮可能なので、容器本体の上部と複数の吹き出しノズルの上部とに隙間なく密接させることができ、吹き出しノズルのがたつき等を防止することが可能になる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、保持部材の保持機能により、吹き出しノズルの吹出孔の位置が周方向に回転して当初の設定位置から側方や後方にずれたり、吹き出しノズルが緩んだりすることが少ない。したがって、基板用の気体を基板方向に常時適切に噴射することができるので、容器本体内の気体を基板用の気体に効率良く置換することができるという効果がある。また、容器本体の観察窓と複数の保持部材とを一体成形するので、保持部材の製造を簡略化することができる。また、全ての吹き出しノズルをまとめて保持部材により保持するのではなく、吹き出しノズルを一本ごとに保持部材で保持するので、保持部材の構成の多様化が期待できる。さらに、接触部を省略することができるので、保持部材の構成の簡素化を図ることができる。
請求項3記載の発明によれば、簡易な構成で吹き出しノズルの保持を容易にしたり、吹き出しノズルの回転を有効に防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基板収納容器は、
図1ないし
図8に示すように、複数枚の半導体ウェーハWを収納する容器本体1と、この容器本体1の開口した正面2に着脱自在に嵌合される蓋体20と、容器本体1の正面2に嵌合された蓋体20を施錠する施錠機構26とを備え、容器本体1の底板6に、複数の給気弁30と排気弁50とをそれぞれ配設するとともに、複数の給気弁30に連通する縦長の吹き出しノズル70をそれぞれ立設し、この複数の吹き出しノズル70の上部を容器本体1の天板10に保持部材80を介して支持させるようにしている。
【0019】
各半導体ウェーハWは、例えば775μmの厚さを有するφ300mmの丸いシリコンウェーハからなり、半導体部品の製造工程(500〜600工程にも及ぶ)で各種の加工や処理が適宜施され、容器本体1に25枚が水平に挿入して整列収納される。
【0020】
容器本体1、蓋体20、施錠機構26、及び吹き出しノズル70は、所要の樹脂を含有する成形材料により射出成形されたり、射出成形された複数の部品の組み合わせにより構成されたりする。係る成形材料に含まれる樹脂としては、例えばポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、液晶ポリマーといった熱可塑性樹脂やこれらのアロイ等があげられる。
【0021】
これらの樹脂には、カーボン繊維、カーボンパウダー、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー等からなる導電物質やアニオン、カチオン、非イオン系等の各種帯電防止剤が必要に応じて添加される。また、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、オキザリックアシッドアニリド系、ヒンダードアミン系の紫外線吸収剤が添加されたり、剛性を向上させるガラス繊維や炭素繊維等も選択的に添加される。
【0022】
容器本体1は、
図1ないし
図3に示すように、正面2が開口したフロントオープンボックスタイプに形成され、開口した正面2を水平横方向に向けた状態で半導体製造工場の天井搬送機構に把持して工程間を搬送されたり、半導体加工装置に付属の蓋体開閉装置上に位置決めされたりして搭載される。
【0023】
容器本体1は、その内部両側、換言すれば、両側壁3の内面に、半導体ウェーハWを水平に支持する左右一対の支持片4がそれぞれ対設され、両側壁3の内面後部に、半導体ウェーハWの過剰な挿入を規制する位置規制部5がそれぞれ一体形成される。左右一対の支持片4は、上下方向に所定のピッチで配列され、各支持片4が半導体ウェーハWの側部周縁を支持する細長い板形に形成されており、支持片4の前部表面に、半導体ウェーハWの飛び出しを規制する段差部が一体形成される。
【0024】
容器本体1の底板6における前後部の両側には円筒形の取付孔7がそれぞれ貫通して穿孔され、底板6後部両側の取付孔7には、容器本体1の外部から内部に矢印で示す半導体ウェーハW用のパージガス(例えば、不活性ガスやドライエア)を供給する給気弁30がそれぞれ嵌着されており、底板6前部両側の取付孔7には、半導体ウェーハW用のパージガスの供給に伴い容器本体1の内部から外部に矢印で示すエアを排気する排気弁50がそれぞれ嵌着される。複数の取付孔7のうち、少なくとも底板6後部両側の取付孔7の周縁部には、下方に突出する円筒形のリブ7aが一体形成される(
図4参照)。
【0025】
容器本体1の底板6裏面における前部両側と後部中央とには、容器本体1を位置決めする位置決め具8がそれぞれ配設される。各位置決め具8は、基本的には平面略楕円形を呈する断面略V字形状に形成されてその一対の斜面を備えた凹部を下方に指向させ、蓋体開閉装置の位置決めピンに上方から凹部を嵌合・摺接させることにより、容器本体1を高精度に位置決めするよう機能する。また、容器本体1の底板6裏面には、別体のボトムプレート9が螺子具を介して水平に螺着され、このボトムプレート9が複数の位置決め具8をそれぞれ露出させる。
【0026】
容器本体1の天板10中央部には、半導体製造工場の天井搬送機構に把持される搬送用のトップフランジ11が着脱自在に装着され、容器本体1の正面2内周における上下の両側には、施錠機構26用の施錠穴がそれぞれ穿孔される。また、容器本体1の両側壁3中央部には、握持操作用に機能するグリップ12がそれぞれ着脱自在に装着され、両側壁3の下部には、搬送用のサイドレール13がそれぞれ選択的に水平に装着される。
【0027】
蓋体20は、
図1ないし
図3に示すように、容器本体1の開口した正面2内に圧入して嵌合される蓋本体21と、この蓋本体21の開口した正面を被覆する表面プレート24と、容器本体1の正面2内周と蓋本体21との間に介在される密封封止用のシールガスケット23とを備え、容器本体1の開口した正面2の内周に蓋本体21の周壁が接触する。蓋本体21は、基本的には底の浅い断面略皿形に形成され、内部に補強用や取付用のリブが複数配設されており、半導体ウェーハWに対向する対向面である裏面に、半導体ウェーハWの前部周縁を弾発的に保持するフロントリテーナ22が装着される。
【0028】
蓋本体21の裏面周縁部には枠形の嵌合溝が凹み形成され、この嵌合溝内に、容器本体1の正面2内周に圧接するシールガスケット23が密嵌されており、蓋本体21の周壁における上下の両側部には、容器本体1の施錠穴に対向する施錠機構26用の出没孔が貫通して穿孔される。
【0029】
表面プレート24は、横長の正面矩形に形成され、補強用や取付用のリブ、螺子孔等が複数配設される。この表面プレート24の両側部には、施錠機構26用の操作孔25がそれぞれ穿孔される。また、シールガスケット23は、例えば耐熱性や耐候性等に優れるポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー等を成形材料として弾性変形可能な枠形に成形される。
【0030】
施錠機構26は、蓋体20の蓋本体21における左右両側部にそれぞれ軸支されて外部から回転操作される左右一対の回転プレートと、各回転プレートの回転に伴い蓋体20の上下方向にスライドする複数の進退動プレートと、各進退動プレートのスライドに伴い蓋本体21の出没孔から出没して容器本体1の施錠穴に接離する複数の施錠爪とを備え、蓋体20の蓋本体21と表面プレート24との間に介在される。
【0031】
各回転プレートは、蓋体20の表面プレート24の操作孔25に対向し、この操作孔25を貫通した蓋体開閉装置の操作キーにより回転操作される。また、各施錠爪は、基本的には断面略L字形状に屈曲形成されてその先端部に回転可能なローラを備え、蓋本体21内の出没孔付近に揺動可能に軸支されて進退動プレートの先端部にピンを介し連結されており、容器本体1の施錠穴にローラを接離する。
【0032】
複数の給気弁30と排気弁50とは、蓋体開閉装置に対する基板収納容器の搭載時に蓋体開閉装置に着脱自在に接続され、パージガスやエアを基板収納容器の内外に流通させることにより、半導体ウェーハWの表面状態の変質を抑制したり、基板収納容器の内外圧力差を解消するよう機能する。
【0033】
各給気弁30は、
図4に示すように、底板6の後部両側の取付孔7と、この後部両側の取付孔7に遊嵌される上部ハウジング31と、この上部ハウジング31に下方から遊嵌され、後部両側の取付孔7の周縁部から下方に延出するリブ7aに接触するまで螺入固定される下部ハウジング37とを備え、これら上部ハウジング31と下部ハウジング37との間に、パージガスの流動を制御する弁体40が上下動可能に内蔵される。
【0034】
上部ハウジング31は、例えば容器本体1内にパージガスを流出させる開口付きの断面略逆U字形状に形成され、開口した内周部にフィルタ押さえ34が嵌合される。このフィルタ押さえ34の上部内面の中央からは、弁体40案内用の芯出し32が下方に向けて突出形成される。
【0035】
フィルタ押さえ34の内部上方には、開口を区画する格子リブが形成され、この格子リブに、濾過用の薄いフィルタ33が覆着されて上部ハウジング31の開口内周の段差部との間に保持される。また、上部ハウジング31の外周面の上部段差には、吹き出しノズル70の内周面に密接するOリング35が嵌着され、外周面の下部から半径外方向に吹き出しノズル70固定用の係止部36が先細りに突出形成される。
【0036】
下部ハウジング37は、例えば容器本体1の外部から内部にパージガスを流入させる開口38付きの断面略U字形状に形成され、上部ハウジング31に外側から隙間を介して遊嵌される。この下部ハウジング37の周壁の内周面には、吹き出しノズル70取付用の螺子溝39が螺刻形成される。
【0037】
弁体40は、例えば断面略凸字形状に形成され、中心の凸部に、上部ハウジング31の芯出し32にスライド可能に嵌挿されるガイド穴41が穿孔される。この弁体40の上面には凸部を包囲する嵌合穴が穿孔され、この嵌合穴に、弁体40を下方に弾圧付勢して下部ハウジング37の開口38を閉塞するコイル形のバネ部材42が嵌合される。また、弁体40の下面にはエンドレスの切り欠きが形成され、この切り欠きに、下部ハウジング37中央の開口38を包囲してパージガスの流通を規制するOリング35Aが嵌着される。
【0038】
このような弁体40は、下部ハウジング37に接触する場合には、下部ハウジング37中央の開口38を閉塞し、容器本体1の外部から内部にパージガスが流入するのを規制するよう機能する。これに対し、パージガスの供給に伴い、下部ハウジング37から上昇して離隔する場合には、下部ハウジング37の開口38を開放し、容器本体1の外部から内部にパージガスを流入させるよう機能する。
【0039】
各排気弁50は、
図5に示すように、底板6前部の取付孔7にOリングを介し嵌合される上部ハウジング51と、この上部ハウジング51の開口した下面に下方から嵌合される下部ハウジング58とを備え、これら上部ハウジング51と下部ハウジング58との間に、エアの流動を制御する弁体61が上下動可能に内蔵される。
【0040】
上部ハウジング51は、例えば容器本体1のエアを流入させる開口付きの断面略逆U字形状に形成され、内部の上方に、開口を区画する格子リブが形成されており、この格子リブに、濾過用の薄いフィルタ52が断面略逆皿形状のフィルタ押さえ53を介して覆着される。上部ハウジング51は、その外周面の上部に、取付孔7の周縁部に係合する係合部54が先細りに突出形成され、外周面の下部には、下部ハウジング58取付用の螺子55が螺刻形成される。また、フィルタ押さえ53は、その外周面の上部段差に、フィルタ52用のOリング56が嵌着され、下面中央から弁体61案内用の芯出し57が下方に向けて突出形成される。
【0041】
下部ハウジング58は、例えば容器本体1の内部から外部にエアを流出させる開口59付きの断面略U字形状に形成され、上部ハウジング51に外側から螺嵌される。この下部ハウジング58の周壁の内周面には、上部ハウジング51の螺子55に螺合する螺子溝60が螺刻形成される。
【0042】
弁体61は、例えば断面略逆凸字形状に形成され、上面の中心部に、フィルタ押さえ53の芯出し57にスライド可能に嵌挿されるガイド穴62が穿孔される。弁体61の上面周縁部には、エンドレスの切り欠きが形成され、この切り欠きに、フィルタ押さえ53に下方から圧接してエアの漏洩を防止するOリング56Aが嵌着される。弁体61の下面の凸部には、弁体61を上方に弾圧付勢してフィルタ押さえに圧接するコイル形のバネ部材63が嵌合され、このバネ部材63が下部ハウジング内面の開口59周縁部付近に支持される。
【0043】
このような弁体61は、上部ハウジング51のフィルタ押さえ53に接触する場合には、容器本体1の内部から外部にエアが流出するのを規制するよう機能する。また、容器本体1内にパージガスが充満してエアが押されるのに伴い、フィルタ押さえ53から下降して離隔する場合には、容器本体1の内部から外部にエアを流出させる。
【0044】
各吹き出しノズル70は、
図3、
図4、
図6、
図7に示すように、例えば上下方向に細長い中空の円柱形状に形成され、給気弁30の上部ハウジング31と下部ハウジング37との間に支持されて上部ハウジング31に着脱自在に連通する。この吹き出しノズル70は、その周壁の下部から取付孔7の周縁部に干渉するフランジ71が半径外方向に突出形成され、このフランジ71に円筒形状の筒部72が一体形成されており、上部ハウジング31と下部ハウジング37とを嵌合固定している。筒部72の内周面には、給気弁30の上部ハウジング31の係止部36に係止される凹部73が切り欠かれる。
【0045】
筒部72の外周面上部には、取付孔7内に圧接する気密確保用のOリング74が嵌合され、筒部72の外周面下部には、給気弁30の下部ハウジング37の螺子溝39に螺合される螺子75が螺刻形成される。また、吹き出しノズル70の周壁の上下方向には、前方の半導体ウェーハW方向、換言すれば、容器本体1の正面2方向に給気弁30からのパージガスを吹き出す複数の吹出孔76が並べて穿孔され、各吹出孔76が半導体ウェーハW間にパージガスを吹き出す。
【0046】
保持部材80は、
図3、
図7、
図8に示すように、所定の材料により平坦な板形状に形成され、容器本体1の天板10内面と吹き出しノズル70の上端部との間に介在される。この保持部材80の所定の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば変形可能なポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー等があげられる。
【0047】
保持部材80は、容器本体1の天板10の後部形状に整合するよう緩やかな略弓なりに形成され、その両端部が容器本体1の前後方向にそれぞれ平面略V字形状に屈曲形成される。この保持部材80の屈曲部付近と両端部の上面には、容器本体1の天板10内面に隙間なく密接する平面円形状でボタン形状の接触部81がそれぞれ圧縮可能に突出形成され、保持部材80の下面には、複数の吹き出しノズル70の上端部にそれぞれ上方から圧接嵌合する平面円形状で断面皿形状の嵌合保持部82が一体形成される。
【0048】
上記構成において、基板収納容器内のエアをパージガスに置換するため、容器本体1にパージガスが高圧で供給されると、パージガスは、給気弁30の弁体40を押し上げ、給気弁30から吹き出しノズル70内に流入し、吹き出しノズル70の複数の吹出孔76から半導体ウェーハW間にそれぞれ噴射される。この際、保持部材80に吹き出しノズル70の上端部が保持され、固定されているので、例えパージガスが高圧で供給されても、吹き出しノズル70の上部が前後左右に揺れ、吹き出しノズル70の姿勢が不安定になるのを有効に防止することができる。
【0049】
容器本体1にパージガスが高圧で供給され、充満すると、容器本体1内のエアは、パージガスに押されて排気弁50の弁体61を押し下げ、排気弁50から容器本体1の外部に流出する。このエアの流出により、基板収納容器内のエアがパージガスに置換されることとなる。
【0050】
上記構成によれば、保持部材80の保持機能により、吹き出しノズル70の吹出孔76の位置が周方向に回転して当初の設定位置から側方や後方にずれたり、吹き出しノズル70が緩んだりすることがない。したがって、パージガスを半導体ウェーハW方向に常時適切に噴射することができるので、容器本体1内のエアをパージガスに効率良く置換することができる。
【0051】
また、容器本体1と保持部材80とが一体ではなく、別体なので、容器本体1の構成を何ら変更する必要がなく、容器本体1を既存の製法により製造することができる。また、保持部材80の上面に複数の接触部81を間隔をおいて突出形成し、この複数の接触部81の高さを揃えるので、保持部材80の姿勢を傾けることなく、安定させることが可能になる。さらに、保持部材80に圧縮変形可能な弾性を付与すれば、容器本体1の天板10と複数の吹き出しノズル70の上端部とに隙間なく密接させることができ、吹き出しノズル70のがたつき等を有効に防止することが可能になる。
【0052】
次に、
図9は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、吹き出しノズル70の上端部と保持部材80の嵌合保持部82とを相互に対応する平面四角形状にそれぞれ形成し、吹き出しノズル70の回転を規制するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0053】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、吹き出しノズル70の上端部と保持部材80の嵌合保持部82とがそれぞれ方向性を有する多角形状なので、吹き出しノズル70の保持を容易化したり、吹き出しノズル70の回転を有効に防止したりすることができるのは明らかである。
【0054】
次に、
図10と
図11とは本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、容器本体1を二色成形してその背面壁14に視認可能な半導体ウェーハW用の観察窓15を縦長に一体形成し、観察窓15の内面上部から容器本体1の正面2方向に複数の保持部材80を間隔をおき水平に突出させ、各保持部材80を細長く伸長形成してその自由端部に、吹き出しノズル70の上端部に嵌合する断面皿形状の嵌合保持部82を一体形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0055】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、容器本体1の観察窓15と複数の保持部材80とを一体成形するので、保持部材80の製造を簡略化することができるのは明らかである。また、全ての吹き出しノズル70をまとめて保持部材80により保持するのではなく、吹き出しノズル70を一本ごとに保持部材80で保持するので、保持部材80の構成の多様化が期待できる。さらに、接触部81を省略することができるので、保持部材80の構成の簡素化を図ることができる。
【0056】
なお、上記実施形態では吹き出しノズル70を中空の円柱形状に形成したが、中空の円錐台形状等に形成しても良い。また、吹き出しノズル70の上端部と保持部材80の嵌合保持部82とをそれぞれ平面四角形状に形成したが、平面三角形、六角形、八角形等にそれぞれ形成しても良い。また、円形の一部を切り欠いた回転止め付きの形状であったりしても良いし、吹き出しノズル70の上端部外周面と嵌合保持部82の内周面とをそれぞれ螺刻形成し、これらを螺合して吹き出しノズル70の回転を規制しても良い。
【0057】
また、保持部材80の接触部81を突出形成したが、容器本体1の天板10内面に密接するのであれば、保持部材80の接触部81を凹み形成することもできる。さらに、容器本体1の側壁3の内面上部から容器本体1の内方向に複数の保持部材80を水平に突出させ、各保持部材80の自由端部に、吹き出しノズル70の上端部に嵌合する断面皿形状の嵌合保持部82を一体形成することもできる。