(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265849
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】制御回路
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20180115BHJP
H03K 17/08 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H03K17/08 C
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-139267(P2014-139267)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-19314(P2016-19314A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】菊地 芳彦
【審査官】
小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/146570(WO,A1)
【文献】
特開2006−324839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H03K 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノーマリオフ型のローサイド半導体スイッチとノーマリオン型のハイサイド半導体スイッチとが所定の接続点でカスコード接続させてカスコード素子を構成し、前記ローサイド半導体スイッチが前記接続点と前記カスコード素子の電気的な基準電位となる基準点との間に設けられて構成されるカスコード素子の制御回路において、
前記ローサイド半導体スイッチのスイッチング制御を行うスイッチング制御部と、
前記ハイサイド半導体スイッチと前記接続点との間に接続され、前記スイッチング制御部によりスイッチング制御された前記ローサイド半導体スイッチのオフ期間中に、前記基準点と前記接続点との間の電圧である接続点電圧に対して補助的にバイアスするバイアス補助部と、
を備え、
前記バイアス補助部は、ダイオード、コンデンサおよび抵抗を有し、前記ダイオードのアノード端子は前記接続点に接続され、前記ダイオードのカソード端子は前記コンデンサの一端に接続され、前記コンデンサの他端は前記基準点に接続され、前記抵抗は前記ダイオードに並列接続されていることを特徴とする制御回路。
【請求項2】
前記バイアス補助部は、ツェナダイオードを有し、
前記ツェナダイオードのアノード端子は前記基準点に接続され、前記ツェナダイオードのカソード端子は前記接続点に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の制御回路。
【請求項3】
前記ハイサイド半導体スイッチは、高電子移動度トランジスタであることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御回路。
【請求項4】
前記高電子移動度トランジスタは、窒化ガリウム、炭化ケイ素をチャネルに用いたものであることであることを特徴とする請求項3に記載の制御回路。
【請求項5】
前記高電子移動度トランジスタは、酸化物半導体をチャネルに用いたものであることであることを特徴とする請求項3に記載の制御回路。
【請求項6】
前記酸化物半導体は、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム又はこれらを複合した複合酸化物半導体であることを特徴とする請求項5に記載の制御回路。
【請求項7】
前記スイッチング制御部および前記バイアス補助部は、所定の半導体基板上にモノリシック集積回路として形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載の制御回路。
【請求項8】
前記制御回路は、前記ローサイド半導体スイッチ及び/又は前記ハイサイド半導体スイッチと共に、モノリシック集積回路として形成されることを特徴とする請求項7に記載の制御回路。
【請求項9】
前記制御回路は、前記ローサイド半導体スイッチ及び/又は前記ハイサイド半導体スイッチと共に、所定の樹脂モールドパッケージに搭載されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カスコード素子の制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ノーマリオン型半導体スイッチをスイッチング回路に使用する場合、ノーマリオフ型半導体スイッチとノーマリオン型半導体スイッチとを、カスコード接続したノーマリオフ型の複合半導体素子(以下、カスコード素子とする。)として構成することが多い(特許文献1参照)。
【0003】
このようなカスコード素子をスイッチング回路に使用する場合には、例えば、ノーマリオフ型半導体スイッチのスイッチングを制御し、カスコード素子自体のスイッチングを制御するよう構成される。
【0004】
カスコード素子のスイッチング制御においては、ノーマリオン型半導体スイッチの特性に鑑み、カスコード素子のスイッチングのオフ期間は、ノーマリオン型半導体スイッチのゲート・ソース間電圧をノーマリオン型半導体スイッチの閾値Vthに対して十分負にバイアスする制御が必要となる。
【0005】
ここで、図面を参照しながら、従来の制御回路を用いたスイッチング回路の構成および動作について説明する。
図6は、従来の制御回路200を用いたスイッチング回路2の構成を示す回路図である。
図7は、スイッチング回路2の通常動作時における各部の動作波形図である。
図8は、スイッチング回路2の異常動作時における各部の動作波形図である。なお、以下の説明では、便宜的に、ノーマリオフ型半導体スイッチをスイッチQ1、ノーマリオン型半導体スイッチをスイッチQ2とする。
【0006】
図7および
図8においては、スイッチング回路2におけるスイッチQ1のゲート・ソース間電圧VGS(Q1)、接続点11と基準点12との間の接続点電圧V(C)、カスコード素子10のスイッチング電流ID(C)、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)およびスイッチQ2のドレイン・ソース間電圧VDS(Q2)の波形図を示している。
【0007】
スイッチング回路2は、スイッチQ1とスイッチQ2とが接続点11で直列接続されたカスコード素子10を備えている。カスコード素子10のスイッチング制御は、スイッチQ1のゲート・ソース間に印加されるスイッチング制御信号に基づいて行われる。スイッチング制御信号は、制御回路200が有するスイッチング駆動制御部210により生成され、スイッチQ1のゲート端子G1に出力される。
【0008】
スイッチング回路2においては、スイッチQ1のゲート・ソース間電圧VGS(Q1)がHighレベルの期間(
図7中の時刻t1〜t2の期間)に、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)が約0[V]となり、カスコード素子10がオンとなる。これにより、カスコード素子10のスイッチング電流ID(C)が
図7中の時刻t1〜t2の期間中流れる。
【0009】
また、スイッチQ1のゲート・ソース間電圧VGS(Q1)がLowレベルの期間(
図7中の時刻t2〜t3の期間)には、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)が負電圧にバイアスされ、カスコード素子10がオフとなる。これにより、カスコード素子10のスイッチング電流ID(C)が流れなくなる。
【0010】
スイッチング回路2においては、
図7中の時刻t2〜t3の期間において、カスコード素子10を確実にオフさせるために、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)をスイッチQ2の閾値Vthに対して十分負にバイアスしておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−10487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の制御回路200においては、
図8に示すように、カスコード素子10がオン状態からオフ状態になった直後のタイミングで、スイッチQ1のゲート・ソース間にノイズが印加された場合(
図8中、破線で囲まれたA部参照)、スイッチQ1がオンして接続点電圧V(C)が低下してしまい、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)がスイッチQ2の閾値Vthに対して十分負にバイアスされなくなることがある。
【0013】
また、カスコード素子10がオン状態からオフ状態に遷移するタイミングでは、カスコード素子10の各部に寄生する容量値が大きく変化するため、スイッチQ1およびスイッチQ2の寄生容量特性によっては、スイッチQ1のドレイン・ソース間電圧VDS(Q1)が低下してしまい、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)がスイッチQ2の閾値Vthに対して十分負にバイアスされなくなることがある。
【0014】
上記のような場合、カスコード素子10のスイッチング制御が不安定となり、スイッチQ1およびスイッチQ2に過大なストレスが掛かってしまう虞がある。特に、カスコード素子10を高速スイッチングさせて使用する場合、カスコード素子10の内部およびその周辺回路の寄生容量および寄生インダクタ等に起因するノイズが生じることが多く、そのノイズによって、カスコード素子10のスイッチング制御が不安定となり、スイッチQ1およびスイッチQ2に過大なストレスが掛かり、カスコード素子10が破壊してしまう虞があった。
【0015】
以上のように、従来のカスコード素子の制御回路においては、安定的にスイッチング制御をすることが困難であるという課題があった。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、安定的にカスコード素子のスイッチング制御をすることが可能な制御回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の事項を提案している。
【0018】
ノーマリオフ型のローサイド半導体スイッチとノーマリオン型のハイサイド半導体スイッチとが所定の接続点でカスコード接続され、ローサイド半導体スイッチが接続点とカスコード素子の電気的な基準電位となる基準点との間に設けられて構成されるカスコード素子の制御回路において、ローサイド半導体スイッチのスイッチング制御を行うスイッチング制御部と、スイッチング制御部によりスイッチング制御されたローサイド半導体スイッチのオフ期間中に、基準点と接続点との間の電圧である接続点電圧に対して補助的にバイアスするバイアス補助部と、を備えたことを特徴とする制御回路を提案している。
【0019】
バイアス補助部は、ダイオード、コンデンサおよび抵抗を有し、ダイオードのアノード端子は接続点に接続され、ダイオードのカソード端子はコンデンサの一端に接続され、コンデンサの他端は基準点に接続され、抵抗はダイオードに並列接続されていることを特徴とする制御回路を提案している。
【0020】
バイアス補助部は、ツェナダイオードを有し、ツェナダイオードのアノード端子は基準点に接続され、ツェナダイオードのカソード端子は接続点に接続されていることを特徴とする制御回路を提案している。
【0021】
ハイサイド半導体スイッチは、高電子移動度トランジスタであることを特徴とする制御回路を提案している。
【0022】
高電子移動度トランジスタは、窒化ガリウム、炭化ケイ素をチャネルに用いたものであることであることを特徴とする制御回路を提案している。
【0023】
高電子移動度トランジスタは、酸化物半導体をチャネルに用いたものであることを特徴とする制御回路を提案している。
【0024】
酸化物半導体は、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム又はこれらを複合した複合酸化物半導体であることを特徴とする制御回路を提案している。
【0025】
スイッチング制御部およびバイアス補助部は、所定の半導体基板上にモノリシック集積回路として形成されることを特徴とする制御回路を提案している。
【0026】
制御回路は、ローサイド半導体スイッチ及び/又はハイサイド半導体スイッチと共に、モノリシック集積回路として形成されることを特徴とする制御回路。
【0027】
制御回路は、ローサイド半導体スイッチ及び/又はハイサイド半導体スイッチと共に、所定の樹脂モールドパッケージに搭載されることを特徴とする制御回路を提案している。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ノーマリオフ型のローサイド半導体スイッチとノーマリオン型のハイサイド半導体スイッチとが所定の接続点でカスコード接続され、ローサイド半導体スイッチが接続点とカスコード素子の電気的な基準電位となる基準点との間に設けられて構成されるカスコード素子の制御回路において、スイッチング制御部は、ローサイド半導体スイッチのスイッチング制御を行い、バイアス補助部は、スイッチング制御部によりスイッチング制御されたローサイド半導体スイッチのオフ期間中に、基準点と接続点との間の電圧である接続点電圧に対して補助的にバイアスする。そのため、スイッチング制御部によるスイッチング制御のオフ期間中、ハイサイド半導体スイッチのゲート・ソース間電圧がハイサイド半導体スイッチの閾値に対して十分負にバイアスされる。これにより、カスコード素子のスイッチング制御が安定化し、カスコード素子が破壊するのを防止することができる。
【0029】
本発明によれば、バイアス補助部は、ダイオード、コンデンサおよび抵抗を有し、ダイオードのアノード端子は接続点に接続され、ダイオードのカソード端子はコンデンサの一端に接続され、コンデンサの他端は基準点に接続され、抵抗はダイオードに並列接続されて構成されているため、簡素な制御回路を構成することができる。
【0030】
本発明によれば、バイアス補助部は、ツェナダイオードを有し、ツェナダイオードのアノード端子は基準点に接続され、ツェナダイオードのカソード端子は接続点に接続された構成とするため、接続点電圧が過度にバイアスされず、カスコード素子のスイッチング制御を安定化させることができる。
【0031】
本発明によれば、ハイサイド半導体スイッチは、高電子移動度トランジスタであるため、高速スイッチング、低オン抵抗、高耐圧および高温動作といった特徴を有するカスコード素子を構成でき、カスコード素子のスイッチング制御が安定的であり、且つ、高効率なスイッチング回路を構成することが可能となる。
【0032】
本発明によれば、高電子移動度トランジスタは、窒化ガリウムまたは炭化ケイ素をチャネルに用いたものであるため、高速スイッチング、低オン抵抗、高耐圧および高温動作といった特徴を有するカスコード素子を構成でき、カスコード素子のスイッチング制御が安定的であり、且つ、高効率なスイッチング回路を構成することが可能となる。
【0033】
高電子移動度トランジスタは、酸化物半導体をチャネルに用いたものであるため、多様なスイッチング回路を構成することが可能となる。
【0034】
酸化物半導体は、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム又はこれらを複合した複合酸化物半導体であるため、多様なスイッチング回路を構成することが可能となる。
【0035】
スイッチング制御部およびバイアス補助部は、所定の半導体基板上にモノリシック集積回路として形成される構成とするため、スイッチング回路を小型化できノイズ耐量も向上できる。
【0036】
制御回路は、ローサイド半導体スイッチ及び/又はハイサイド半導体スイッチと共に、モノリシック集積回路として形成される構成とするため、スイッチング回路を小型化できノイズ耐量も向上できる。
【0037】
制御回路は、ローサイド半導体スイッチ及び/又はハイサイド半導体スイッチと共に、所定の樹脂モールドパッケージに搭載される構成とするため、スイッチング回路を小型化できノイズ耐量も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の実施形態に係る制御回路100の構成を示す回路図である。
【
図2】
図1の制御回路100によりスイッチング制御されるカスコード素子10の構成図である。
【
図3】
図1の制御回路100を用いたスイッチング回路1の構成を示す回路図である。
【
図4】カスコード素子10および制御回路100を搭載する樹脂モールドパッケージの一例である。
【
図5】
図3のスイッチング回路1の各部の動作波形図である。
【
図6】従来の制御回路200を用いたスイッチング回路2の構成を示す回路図である。
【
図7】
図6のスイッチング回路2の通常動作時における各部の動作波形図である。
【
図8】
図6のスイッチング回路2の異常動作時における各部の動作波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、また、他の既存の構成要素との組合せをする様々なバリエーションが可能である。したがって、本実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0040】
図1は、本発明の実施形態に係る制御回路100の構成を示す回路図である。
図2は、
図1の制御回路100によりスイッチング制御されるカスコード素子10の構成図である。
【0041】
カスコード素子10は、スイッチQ1(ノーマリオフ型のローサイド半導体スイッチ)とスイッチQ2(ノーマリオン型のハイサイド半導体スイッチ)とが所定の接続点11でカスコード接続され、スイッチQ1が接続点11とカスコード素子の電気的な基準電位となる基準点12との間に設けられて構成されている。
【0042】
制御回路100は、カスコード素子10の制御回路である。制御回路100は、スイッチQ1のスイッチング制御を行うスイッチング制御部110を備えている。また、制御回路100は、スイッチング制御部110によりスイッチング制御されたスイッチQ1のオフ期間中に、基準点12と接続点11との間の電圧である接続点電圧V(C)に対して補助的にバイアスする
バイアス補助部120を備えている。
【0043】
スイッチング制御部110は、駆動部111と、発振部112と、駆動制御部113と、を有している。駆動部111は、端子101を介してスイッチQ1のゲート端子に接続されており、スイッチQ1のスイッチングを駆動する。また、駆動部111は、駆動制御部113に接続されており、駆動制御部113により制御される。
【0044】
発振部112は、駆動制御部113に接続されており、スイッチQ1のスイッチング周波数を決定する発振信号を生成して駆動制御部113に出力する。駆動制御部113は、発振部112が出力する発振信号に基づいて、駆動部111を制御し駆動部111によりスイッチQ1を駆動させる。
【0045】
また、駆動制御部113は、端子102を介して基準点12に接続されており、カスコード素子10に流れるスイッチング電流ID(C)が過電流になった場合等に駆動部111を制御してスイッチング電流ID(C)の増加を抑制する。
【0046】
バイアス補助部120は、ダイオード121、コンデンサ122、抵抗123、ツェナダイオード124および抵抗125を有している。ダイオード121のアノード端子は、接続点11に接続されている。ダイオード121のカソード端子は、コンデンサ122の一端および抵抗123の他端に接続されている。
【0047】
コンデンサ122の他端は、カスコード素子10の電気的基準電位である基準点12、ツェナダイオード124のアノード端子および抵抗125の他端に接続されている。抵抗123は、ダイオード121に並列接続されている。
【0048】
ツェナダイオード124のアノード端子は、基準点12、コンデンサ122の他端および抵抗125の他端に接続されている。ツェナダイオード124のカソード端子は、接続点11、ダイオード121のアノード端子および抵抗123の一端に接続されている。
【0049】
抵抗125の一端は、端子104を介してスイッチQ2のゲート端子G2に接続され、抵抗125の他端は、コンデンサ122の他端、ツェナダイオード124のアノード端子および基準点12に接続されている。
【0050】
スイッチQ1は、例えば、ドレイン端子D1、ソース端子S1およびゲート端子G1を有する電界効果型トランジスタ(MOSFET)で構成する。
【0051】
スイッチQ2は、例えば、ドレイン端子D2、ソース端子S2およびゲート端子G2を有する高電子移動度トランジスタで構成する。カスコード素子10は、スイッチQ1のドレイン端子D1と、スイッチQ2のソース端子S2とが、接続点11で接続されて構成されている。
【0052】
スイッチQ2は、例えば、窒化ガリウム又は炭化ケイ素をチャネルに用いた高電子移動度トランジスタを用いると、好適である。スイッチQ2に高電子移動度トランジスタを用いると、高速スイッチング、低オン抵抗、高耐圧および高温動作といった特徴を有するカスコード素子10を構成することができる。これにより、カスコード素子10のスイッチング制御が安定的であり、且つ、高効率なスイッチング回路1を構成することが可能となる。
【0053】
また、スイッチQ2は、例えば、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム又はこれらを複合した複合酸化物半導体をチャネルに用いた高電子移動度トランジスタを用いてもよい。
【0054】
ここで、
図3および
図4を参照して、本実施の形態に係る制御回路100を用いたスイッチング回路1の構成について説明する。
図3は、
図1の制御回路100を用いたスイッチング回路1の構成を示す回路図である。
図4は、カスコード素子10および制御回路100を搭載する樹脂モールドパッケージの一例である。
【0055】
スイッチング回路1は、直流電源3と、抵抗4と、抵抗5と、カスコード素子10と、制御回路100と、を備えている。直流電源3の正極は、抵抗4の一端に接続されている。抵抗4の他端は、カスコード素子10のスイッチQ2のドレイン端子D2に接続されている。
【0056】
抵抗5の一端は、カスコード素子10のスイッチQ1のソース端子S1に接続されている。抵抗5の他端は、直流電源3の負極およびスイッチング回路1のグランドGNDに接続されている。
【0057】
なお、スイッチング制御部110およびバイアス補助部120は、所定の半導体基板上にモノリシック集積回路として形成される構成とすれば、スイッチング回路1を小型化できノイズ耐量も向上できる。
【0058】
また、制御回路100は、スイッチQ1及び/又はスイッチQ2と共に、モノリシック集積回路として形成される構成とすれば、スイッチング回路1を小型化できノイズ耐量も向上できる。
【0059】
更に、制御回路100は、スイッチQ1及び/又はスイッチQ2と共に、所定の樹脂モールドパッケージに搭載される構成とすれば、スイッチング回路1を小型化できノイズ耐量も向上できる。
【0060】
例えば、カスコード素子10および制御回路100を、
図4の例に示すような所定の樹脂モールドパッケージに搭載すれば、スイッチング回路1の小型化、低ノイズ化、高放熱化、高効率化、設計容易化が可能となる。
【0061】
続いて、
図5を参照して、本実施の形態に係る制御回路100およびスイッチング回路1の動作について説明する。
図5は、
図3のスイッチング回路1の各部の動作波形図である。
【0062】
なお、
図5においては、
図1のスイッチング回路1におけるスイッチQ1のゲート・ソース間電圧VGS(Q1)、接続点11と基準点12との間の接続点電圧V(C)、カスコード素子10のスイッチング電流ID(C)、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)およびスイッチQ2のドレイン・ソース間電圧VDS(Q2)の波形図を示している。
【0063】
図3に示すスイッチング回路1においては、スイッチQ1のゲート・ソース間電圧VGS(Q1)がHighレベルの期間(
図5中の時刻t1〜t2の期間)に、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)が約0[V]となり、カスコード素子10がオンとなる。これにより、カスコード素子10のスイッチング電流ID(C)が流れる。
【0064】
また、スイッチQ1のゲート・ソース間電圧VGS(Q1)がLowレベルの期間(
図5中の時刻t2〜t3の期間)には、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)が負電圧にバイアスされ、カスコード素子10がオフとなる。これにより、カスコード素子10のスイッチング電流ID(C)が流れなくなる。
【0065】
スイッチング回路1においては、
図5中の時刻t2〜t3の期間において、カスコード素子10を確実にオフさせるために、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)をスイッチQ2の閾値VTHに対して十分負にバイアスされている。
【0066】
特に、本実施の形態に係る制御回路100では、バイアス補助部120は、スイッチング制御部110によるスイッチング制御のオフ期間中(
図5中の時刻t2〜t3の期間)に、スイッチQ1とスイッチQ2との接続点11の電位をバイアス補助する。
【0067】
そのため、スイッチング制御部110によるスイッチング制御のオフ期間中(
図5中の時刻t2〜t3の期間)、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧VGS(Q2)がスイッチQ2の閾値Vthに対して十分負にバイアスされる。
【0068】
したがって、
図5において、カスコード素子10がオン状態からオフ状態になった直後のタイミングでスイッチQ1のゲート・ソース間にノイズが印加されているが(
図5中、破線で囲まれたA部参照)、スイッチング制御は安定的であり、スイッチング制御部110によるスイッチング制御のオフ期間中(
図5中の時刻t2〜t3の期間)にカスコード素子10はオンしておらず、カスコード素子10のスイッチング電流ID(C)は流れていない。
【0069】
そのため、本実施の形態に係る制御回路100においては、スイッチQ1およびスイッチQ2に過大なストレスが掛からない。従って、カスコード素子10のスイッチング制御は安定化され、カスコード素子10が破壊するのを防止することができる。
【0070】
また、本実施の形態に係る制御回路100においては、バイアス補助部120は、スイッチング制御部110によるスイッチング制御のオフ期間中に、接続点電圧V(C)に対して補助的にバイアスする。そのため、カスコード素子10がオン状態からオフ状態に遷移するタイミングであっても、カスコード素子10のスイッチング制御は安定的であり、カスコード素子10が破壊するのを防止することができる。
【0071】
以上説明したように、本実施の形態に係る制御回路100によれば、スイッチQ1とスイッチQ2とが所定の接続点11でカスコード接続され、スイッチQ1が接続点11と基準点12との間に設けられて構成されるカスコード素子10の制御回路100において、スイッチング制御部110は、スイッチQ1のスイッチング制御を行い、バイアス補助部120は、スイッチング制御部110によりスイッチング制御されたスイッチQ1のオフ期間中に、基準点11と接続点12との間の電圧である接続点電圧V(C)に対して補助的にバイアスする。そのため、スイッチング制御部110によりスイッチング制御されたスイッチQ1のオフ期間中に、スイッチQ2のゲート・ソース間電圧がスイッチQ2の閾値に対して十分負にバイアスされる。これにより、カスコード素子のスイッチング制御が安定化し、カスコード素子が破壊するのを防止することができる。
【0072】
本実施の形態に係る制御回路100によれば、バイアス補助部120は、ダイオード121、コンデンサ122および抵抗123を有し、ダイオード121のアノード端子は接続点11に接続され、ダイオード121のカソード端子はコンデンサ122の一端に接続され、コンデンサ122の他端は基準点12に接続され、抵抗123はダイオード121に並列接続されて構成されている。そのため、簡素な制御回路100を構成することができる。
【0073】
本実施の形態に係る制御回路100によれば、バイアス補助部120は、ツェナダイオード124を有し、ツェナダイオード124のアノード端子は基準点12に接続され、ツェナダイオード124のカソード端子は接続点11に接続された構成とするため、接続点11と基準点12との間の接続点電圧V(C)が過度にバイアスされず、カスコード素子10のスイッチング制御を安定化させることができる。
【0074】
本実施の形態に係る制御回路100によれば、スイッチ
Q2は、高電子移動度トランジスタであるため、高速スイッチング、低オン抵抗、高耐圧および高温動作といった特徴を有するカスコード素子10を構成でき、カスコード素子10のスイッチング制御が安定的であり、且つ、高効率なスイッチング回路を構成することが可能となる。
【0075】
本実施の形態に係る制御回路100によれば、高電子移動度トランジスタは、窒化ガリウムまたは炭化ケイ素をチャネルに用いたものであるため、高速スイッチング、低オン抵抗、高耐圧および高温動作といった特徴を有するカスコード素子10を構成でき、カスコード素子10のスイッチング制御が安定的であり、且つ、高効率なスイッチング回路1を構成することが可能となる。
【0076】
高電子移動度トランジスタは、酸化物半導体をチャネルに用いたものであるため、多様なスイッチング回路1を構成することが可能となる。
【0077】
酸化物半導体は、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム又はこれらを複合した複合酸化物半導体であるため、多様なスイッチング回路1を構成することが可能となる。
【0078】
なお、スイッチング制御部110およびバイアス補助部120は、所定の半導体基板上にモノリシック集積回路として形成すれば、スイッチング回路1を小型化できノイズ耐量も向上できる。
【0079】
また、制御回路100は、スイッチQ1及び/又はスイッチQ2と共に、モノリシック集積回路として形成すれば、スイッチング回路1を小型化できノイズ耐量も向上できる。
【0080】
更に、制御回路100は、スイッチQ1及び/又はスイッチQ2と共に、所定の樹脂モールドパッケージに搭載すれば、スイッチング回路1を小型化できノイズ耐量も向上できる。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能であり、上記の実施の形態には限定せずに、発明の範囲内であれば、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0082】
1:スイッチング回路
3:直流電源
4、5:抵抗
10:カスコード素子
11:接続点
12:基準点
100:制御回路
101、102、103、104:端子
110:スイッチング制御部
111:駆動部
112:発振部
113:駆動制御部
120:バイアス補助部
121:ダイオード
122:コンデンサ
123、125:抵抗
124:ツェナダイオード
Q1、Q2:スイッチ