(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガス発生剤が収容された燃焼室、前記燃焼室にて発生したガスが通過するフィルタが収容されたフィルタ室、および、前記燃焼室と前記フィルタ室とを繋ぐガス通路室を内部に含み、軸方向の一端部および他端部が閉塞された長尺筒状のハウジングと、
前記ハウジングの前記一端部に組付けられた点火器と、
前記ハウジングの内部に位置し、前記燃焼室、前記フィルタ室および前記ガス通路室を相互に隔てる区画部材および仕切り部とを備え、
前記区画部材は、その軸方向が前記ハウジングの軸方向と略平行となるように配置されることにより、前記ハウジングの内部の空間を径方向に区画する筒状部と、前記筒状部の前記ハウジングの前記他端部側に位置する軸方向端部から径方向外側に向けて立設され、その外周縁が前記ハウジングの内周面に当接することにより、前記ハウジングの内部の空間を軸方向に区画する環状部とを含み、
前記仕切り部は、前記筒状部の内部に配置されることにより、前記筒状部の内部の空間を軸方向に仕切り、
前記燃焼室は、前記仕切り部よりも前記ハウジングの前記一端部側の空間であってかつ前記筒状部の内側の空間の少なくとも一部を含み、
前記フィルタ室は、前記区画部材の前記環状部が位置する側の軸方向端部よりも前記ハウジングの前記他端部側の空間である第1空間と、前記仕切り部よりも前記ハウジングの前記他端部側の空間であってかつ前記筒状部の内側の空間である第2空間とを含み、
前記ガス通路室は、前記筒状部の外側の空間であってかつ前記区画部材の前記環状部が位置する側の軸方向端部よりも前記ハウジングの前記一端部側の空間を含み、
前記筒状部の前記燃焼室と前記ガス通路室とを区画する部分には、前記燃焼室と前記ガス通路室とを連通させるための第1連通孔が設けられ、
前記筒状部の前記ガス通路室と前記フィルタ室とを区画する部分には、前記ガス通路室と前記フィルタ室とを連通させるための第2連通孔が設けられ、
前記ハウジングの前記第1空間を規定する部分には、前記ハウジングの外部に向けてガスを噴出するためのガス噴出口が設けられ、
前記フィルタは、前記ハウジングの軸方向と直交する断面の外形が相対的に大きい大形部と、前記ハウジングの軸方向と直交する断面の外形が相対的に小さい小形部とを含み、
前記大形部が前記第1空間に位置するとともに前記小形部が前記第2空間に達するように、前記フィルタが、前記フィルタ室に配置されている、ガス発生器。
前記小形部の周面と前記筒状部の内周面とが非接触となるように、前記小形部が、前記筒状部から離間して位置している、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
前記仕切り部が、前記筒状部に圧入されることによって前記筒状部に固定された仕切り部材の一部によって構成されている、請求項1から6のいずれかに記載のガス発生器。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、サイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器の概略図である。
図2および
図3は、それぞれ
図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図およびフィルタ近傍の拡大断面図である。また、
図4および
図5は、それぞれ
図3中に示すIV−IV線およびV−V線に沿った断面図である。まず、これら
図1ないし
図5を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの構成について説明する。
【0023】
図1ないし
図3に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aは、長尺円柱状の外形を有しており、軸方向に位置する一端部および他端部が閉塞されたハウジングを有している。ハウジングは、周壁部11および閉塞部12を有する軸方向の片側が閉塞された有底円筒状のハウジング本体10と、ハウジング本体10の軸方向と同方向に沿って延びる貫通部21aを有する筒状のカラー21を含む点火器組立体20Aとによって構成されている。カラー21は、その外周面の所定位置に後述するかしめ固定のための環状溝部21bを有しており、当該環状溝部21bは、カラー21の外周面に周方向に沿って延びるように形成されている。
【0024】
点火器組立体20Aは、ハウジング本体10の開口端を閉塞するようにハウジング本体10に固定されている。具体的には、ハウジング本体10の開口端に点火器組立体20Aが内挿された状態で、当該点火器組立体20Aのカラー21の外周面に設けられた環状溝部21bに対応する部分のハウジング本体10の周壁部11を径方向内側に向けて縮径させて当該環状溝部21bに係合させることにより、点火器組立体20Aがハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の一端部が、点火器組立体20Aによって構成されることになり、ハウジングの軸方向の他端部が、ハウジング本体10の閉塞部12によって構成されることになる。
【0025】
当該かしめ固定は、ハウジング本体10の周壁部11を径方向内側に向けて略均等に縮径される八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、ハウジング本体10の周壁部11には、かしめ部14が設けられることになり、当該かしめ部14が環状溝部21bに密着することになる。これにより、ハウジング本体10と点火器組立体20Aとの間に隙間が生じることが防止されている。
【0026】
ハウジング本体10は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで有底円筒状に成形された金属製のプレス成形品、またはSTKMに代表される電縫管の軸方向端部の一方をクロージング処理して有底円筒状に成形された金属製の成形品にて構成されていてもよい。特に、ハウジング本体10を圧延鋼板のプレス成形品や電縫管の成形品で構成した場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易にハウジング本体10を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。一方、点火器組立体20Aのカラー21は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
【0027】
図1および
図2に示すように、点火器組立体20Aは、上述したカラー21に加えて、点火器22と、樹脂成形部からなる保持部23と、シール部材24とを含んでいる。点火器22は、カラー21の貫通部21a内に配置されており、保持部23は、カラー21と点火器22との間を埋め込むように位置している。
【0028】
点火器22は、後述するガス発生剤60を燃焼させるためのものであり、保持部23を介してカラー21によって支持されることでハウジングの軸方向の上述した一端部に組付けられている。より詳細には、
図2に示すように、点火器22は、点火部22aと、一対の端子ピン22bとを含んでおり、点火部22aの内部には、一対の端子ピン22bに接続するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するように点火部22内に点火薬が充填され、また必要に応じて伝火薬も装填されている。
【0029】
ここで、抵抗体としては、一般にニクロム線やプラチナおよびタングステンを含む合金製の抵抗線等が用いられ、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が用いられ、伝火薬としては、B/KNO
3、B/NaNO
3、Sr(NO
3)
2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5−アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。なお、点火部22aを囲うスクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
【0030】
衝突を検知した際には、端子ピン22bを介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器22が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
【0031】
保持部23は、型を用いた射出成形(より特定的にはインサート成形)によって形成されるものであり、絶縁性の流動性樹脂材料をカラー21および点火器22に付着させてこれを固化させることによって形成される。ここで、点火器22は、保持部23の成形の際に、カラー21の貫通部21aに挿通された状態となるように配置され、この状態においてカラー21と点火器22との間の空間を充填するように上述した流動性樹脂材料が流し込まれることにより、保持部23を介してカラー21に固定される。
【0032】
射出成形によって形成される保持部23の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において保持部23の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
【0033】
保持部23は、カラー21の貫通部21a内のみならず当該貫通部21aの軸方向に沿って両外側に向けて突出するように形成されている。このうちの点火器22の点火部22aが位置する側に向けて突出する部分の保持部23の外周面には、一対の環状溝部23a,23bが設けられており、点火器22の端子ピン22bが位置する側に向けて突出する部分の保持部23の軸方向端部には、凹部23cが設けられている。
【0034】
環状溝部23aには、Oリング等からなるシール部材24が収容されており、環状溝部23bには、後述するカップ状部材40がかしめ固定されている。一方、凹部23cは、点火器22とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れる雌型コネクタ部を形成しており、当該凹部23c内には、点火器22の端子ピン22bの先端寄りの部分が露出して位置している。当該雌型コネクタ部としての凹部23cには、雄型コネクタが挿し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン22bとの電気的導通が実現される。
【0035】
図1ないし
図5に示すように、ハウジングの内部の空間の所定位置には、中空略円筒状の区画部材30が配置されている。区画部材30は、その軸方向がハウジングの周壁部11の軸方向と略平行となるように配置された筒状部31と、当該筒状部31のハウジングの上述した他端部側(すなわち、閉塞部12が位置する方のハウジングの端部側)に位置する軸方向端部から径方向外側に向けて立設されたフランジ状の環状部32と、当該筒状部31のハウジングの上述した一端部側(すなわち、点火器組立体20Aが位置する方のハウジングの端部側)から径方向外側に向けて広がるように形成されたスカート部33とを有している。
【0036】
環状部32は、その外周縁がハウジングの周壁部11の内周面に当接するように配置されており、ハウジングの上述した他端部から所定の距離をもって位置している。一方、スカート部33は、その外周面がハウジングの周壁部11の内周面に当接するように配置されており、ハウジングの上述した一端部から所定の距離をもって位置している。
【0037】
区画部材30は、上述した環状部32およびスカート部33がハウジングの周壁部11に圧入されることによってハウジングに固定されている。これにより、区画部材30は、ハウジングの内部の空間を軸方向および径方向に沿って区画しており、ハウジングに対して容易には移動しないように構成されている。
【0038】
ここで、区画部材30としては、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものが用いられ、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材が利用される。
【0039】
図1ないし
図3に示すように、区画部材30の筒状部31の内側には、ハウジングの上述した一端部側からカップ状部材40が内挿されている。カップ状部材40は、側壁部41および頂壁部42を有する有底略円筒状の部材からなり、その開口端に上述した点火器組立体20Aが内挿された状態とされている。
【0040】
より詳細には、カップ状部材40の上記開口端寄りに位置する部分の側壁部41のうち、保持部23に設けられた環状溝部23bに対応する部分を径方向内側に向けて縮径させて当該環状溝部23bに係合させることにより、カップ状部材40の側壁部41に固定部41aが設けられ、これによりカップ状部材40が点火器組立体20Aに対してかしめ固定されている。また、これにより、上述した保持部23に設けられた環状溝部23a内に収容されたシール部材24が、当該カップ状部材40の上記開口端寄りに位置する部分の側壁部41と保持部23とによって挟み込まれることになり、当該部分における気密性が確保されることになる。
【0041】
カップ状部材40は、側壁部41および頂壁部42のいずれにも開口を有しておらず、カップ状部材40が点火器組立体20Aに固定された状態において、その内部の空間を完全に密閉している。このカップ状部材40は、点火器22が作動することによってガス発生剤60が燃焼した場合にその圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものである。カップ状部材40の材質としては、銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金等の金属薄板(箔)をプレス加工等することで成形された金属部材や、射出成形やシート成形等を行なうことで形成された樹脂部材等が利用できる。
【0042】
ここで、カップ状部材40の頂壁部42は、区画部材30の筒状部31の軸方向における途中位置に配置されるように構成されており、これにより当該頂壁部42は、筒状部31の内部の空間を軸方向に仕切る仕切り部となっている。当該仕切り部となる頂壁部42は、カップ状部材40の側壁部41よりも厚みが十分に厚く形成されており、さらにその外周縁部に側壁部41側に向けて傾斜する傾斜面が構成されている。
【0043】
図1ないし
図4に示すように、カップ状部材40の内部には、ガス発生剤60およびクッション部材61が収容されている。より具体的には、カップ状部材40の内部の空間のうち、頂壁部42側に位置する空間にはガス発生剤60が装填されており、点火器組立体20Aが位置する側の空間には、当該点火器組立体20Aとガス発生剤60との間に介在するようにクッション部材61が配置されている。
【0044】
ガス発生剤60は、点火器22が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤60としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤60が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0045】
ガス発生剤60の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤60の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤60の形状の他にもガス発生剤60の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0046】
クッション部材61は、成形体からなるガス発生剤60が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、金属線材を曲げ加工することによって形成されたバネ部61aおよび押圧部61bを有している。バネ部61aは、その一端が点火器組立体20Aの保持部23に当接するように配置されており、その他端に押圧部61bが形成されている。押圧部61bは、金属線材が所定の間隔をもって略平行に配置されることで構成されており、ガス発生剤60に当接している。これにより、ガス発生剤60は、クッション部材61によってカップ状部材40の頂壁部42側に向けて付勢されることになり、カップ状部材40の内部において移動してしまうことが防止されている。なお、上述した如くのクッション部材61に代えて、たとえばセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなるクッション材を利用することとしてもよい。
【0047】
図1、
図3および
図5に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、区画部材30よりもハウジングの上述した他端部側(すなわち、閉塞部12が位置する方のハウジングの端部側)の空間である第1空間S3Aおよび区画部材30の内側の空間であって上記カップ状部材40の頂壁部42よりもハウジングの上述した他端部側の空間である第2空間S3Bには、フィルタ70Aが配置されている。
【0048】
フィルタ70Aは、ガス発生剤60が燃焼することによって発生したガスがこのフィルタ70A中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。フィルタ70Aは、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたものが用いられる。ここで、網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。
【0049】
フィルタ70Aは、ハウジングの軸方向と直交する断面の外形が相対的に大きい(すなわち直径が大きい)大形部71と、ハウジングの軸方向と直交する断面の外形が相対的に小さい(すなわち直径が小さい)小形部72とを含む段差形状を成した略円柱状の外形を有しており、このうちの大形部71がハウジングの上述した他端部側に位置しており、小形部72が当該大形部71よりもハウジングの上述した一端部側に位置している。
【0050】
フィルタ70Aの大形部71は、上述した第1空間S3Aに収容されており、フィルタ70Aの小形部72は、上述した第2空間S3Bに達するように位置している。ここで、フィルタ70Aの大形部71の直径は、区画部材30の筒状部31の内径よりも大きく構成されており、フィルタ70Aの小形部72の直径は、区画部材30の筒状部31の内径よりも小さく構成されている。このため、区画部材30の環状部32が位置する側の軸方向端部寄りの部分は、フィルタ70Aの小形部72に外挿されており、当該環状部32が、フィルタ70Aの上述した段差形状を構成する段差面(すなわち、大形部71の点火器22側の表面)に当接している。また、フィルタ70Aの小形部72の先端面は、カップ状部材40の頂壁部42に当接している。
【0051】
図1ないし
図5に示すように、区画部材30の筒状部31には、第1連通孔34および第2連通孔35がそれぞれ筒状部31の周方向および軸方向に沿って複数設けられている。複数の第1連通孔34は、区画部材30の内部に配置されたカップ状部材40の頂壁部42よりもハウジングの上述した一端部側(すなわち、点火器組立体20Aが位置する方のハウジングの端部側)に位置しており、複数の第2連通孔35は、区画部材30の内部に配置されたカップ状部材40の頂壁部42よりもハウジングの上述した他端部側(すなわち、閉塞部12が位置する方のハウジングの端部側)に位置している。これら複数の第1連通孔34および複数の第2連通孔35は、いずれもガス発生剤60が燃焼することによって発生したガスを通過させるためのものである。
【0052】
複数の第1連通孔34は、いずれもカップ状部材40の側壁部41に対面しており、複数の第2連通孔35は、いずれもフィルタ70Aの小形部72の周面に対面している。ここで、フィルタ70Aの小形部72は、区画部材30の筒状部31から距離をもって配置されており、これによりフィルタ70Aの小形部72の周面と区画部材30の筒状部31の内周面とは、非接触となっている。そのため、複数の第2連通孔35とフィルタ70Aとの間にも所定の間隙が形成されることになる。
【0053】
一方、
図1および
図3に示すように、フィルタ70Aに対面する部分のハウジングの周壁部11には、ガス噴出口13が当該周壁部11の周方向および軸方向に沿って複数設けられている。これら複数のガス噴出口13は、フィルタ70Aを通過した後のガスをハウジングの外部に導出するためのものである。
【0054】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、上述した区画部材30とカップ状部材40の一部である仕切り部としての頂壁部42とによってハウジングの内部の空間が燃焼室S1とガス通路室S2とフィルタ室S3と区画されることになり、当該区画部材30および仕切り部としての頂壁部42が、これら区画された空間を相互に隔てる圧力隔壁として機能することになる。
【0055】
具体的には、
図1ないし
図5に示すように、仕切り部としての頂壁部42よりもハウジングの上述した一端部側(すなわち、点火器組立体20Aが位置する方のハウジングの端部側)の空間であってかつ区画部材30の筒状部31よりも径方向内側の空間の少なくとも一部を含む空間が、ガス発生剤60が収容された燃焼室S1として機能することになる。より詳細には、区画部材30の筒状部31およびスカート部33と、カップ状部材40の頂壁部42と、ハウジング本体10の周壁部11と、点火器組立体20Aとによって規定される空間が、燃焼室S1として機能することになる。
【0056】
また、区画部材30の筒状部31よりも径方向外側の空間であってかつ区画部材30の環状部32が位置する側の軸方向端部よりもハウジングの上述した一端部側の空間を含む空間が、燃焼室S1とフィルタ室S3とを繋ぐガス通路室S2として機能することになる。より詳細には、区画部材30の筒状部31、環状部32およびスカート部33と、ハウジング本体10の周壁部11とによって規定される空間が、ガス通路室S2として機能することになる。
【0057】
さらに、区画部材30の環状部32が位置する側の軸方向端部よりもハウジングの上述した他端部側(すなわち、閉塞部12が位置する方のハウジングの端部側)の空間である上記第1空間S3Aと、仕切り部としての頂壁部42よりもハウジングの上述した他端部側の空間であってかつ区画部材30の筒状部31よりも径方向内側の空間である上記第2空間S3Bとを含む空間が、フィルタ70Aが収容されたフィルタ室S3として機能することになる。より詳細には、区画部材30の筒状部31および環状部32と、カップ状部材40の頂壁部42と、ハウジング本体10の周壁部11および閉塞部12とによって規定される空間が、フィルタ室S3として機能することになる。
【0058】
図6は、
図1に示すシリンダ型ガス発生器の作動時におけるガスの流れを模式的に表わした図である。次に、この
図6を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aの作動時における動作について説明する。
【0059】
本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器22が作動する。
【0060】
図6に示すように、カップ状部材40に収容されたガス発生剤60は、点火器22が作動することによって生じた火炎によって着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。これに伴い、カップ状部材40の内部の圧力および温度が上昇してカップ状部材40の側壁部41が破裂または溶融する。
【0061】
これにより、燃焼室S1とガス通路室S2とが第1連通孔34を介して連通した状態となり、燃焼室S1にて発生したガスは、当該第1連通孔34を介してガス通路室S2へと流れ込む。その際、ガス通路室S2に流れ込んだガスは、ハウジングの径方向に沿ってハウジング本体10の周壁部11の内周面に吹き付けられることになり、その際、ガス中に含まれるスラグは当該周壁部11の内周面に付着することで相当程度除去される。
【0062】
ハウジング本体10の周壁部11の内周面に吹き付けられたガスは、その後、ガス通路室S2をハウジングの軸方向に沿って流動する。その際、ガスがハウジング本体10の周壁部11に接触することで熱が奪われて冷却される。その後、ガス通路室S2を流動したガスは、第2連通孔35を介してフィルタ室S3へと流れ込む。
【0063】
フィルタ室S3に流れ込んだガスは、フィルタ70Aの内部を通過し、その際に、フィルタ70Aによってさらに熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ70Aによってさらに除去される。フィルタ70Aを通過した後のガスは、ガス噴出口13を介してハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、シリンダ型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。
【0064】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにおいては、上述したように、区画部材30とカップ状部材40の一部である仕切り部としての頂壁部42との合計2つの部品のみによって、ハウジングの内部の空間を燃焼室S1とガス通路室S2とフィルタ室S3とに区画することを可能にしている。そのため、非常に簡素な構成にて高い冷却効率を得ることが可能となり、高性能のシリンダ型ガス発生器を安価に提供することが可能になる。また、ガス通路室S2を設けることにより、よりスムーズにかつ効率よく燃焼室S1にて発生したガスをフィルタ室S3に導入することができ、この意味においても高性能のシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0065】
特に、これら区画部材30と頂壁部42との間および区画部材30とハウジングとの間に溶接等を施さずとも、これらの間に隙間が生じてガスが漏れ出すこともないため、組付け作業が煩雑化することもなく、意図した動作が安定的に実現できることになる。
【0066】
ここで、区画部材30と頂壁部42との間に隙間が生じない理由は、上述したように頂壁部42が十分に厚く形成されているとともに、当該頂壁部42に連続して側壁部41が設けられているためである。加えて、図示するように、頂壁部42の外周縁部に側壁部41側に向けて傾斜する傾斜面が形成されていれば、燃焼室S1の内圧上昇を受けて上記傾斜面に圧力が作用することで頂壁部42が区画部材30の筒状部31の内周面に密着して隙間が生じなくなり、より確実にガスの漏れ出しを防止することができる。なお、フィルタ室S3の第2空間S3Bにフィルタ70Aの小形部72が位置していることにより、頂壁部42がフィルタ70Aの小形部72の先端面に接触することで当該頂壁部42が燃焼室S1の圧力上昇を受けてもそれ以上移動しないことになるため、この点においても区画部材30と頂壁部42との間の隙間の発生がより確実に防止できることになる。
【0067】
一方、区画部材30とハウジングとの間に隙間が生じない理由は、区画部材30の環状部32およびスカート部33がハウジングに圧入固定されているためであり、さらには、区画部材30の環状部32がフィルタ70Aの大形部71に当接しているため、区画部材30のハウジングの軸方向に沿った移動が防止されているためでもある。
【0068】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、区画部材30の環状部32がフィルタ70Aの大形部71に当て留めされているとともに、カップ状部材40の頂壁部42がフィルタ70Aの小形部72に当て留めされているため、製造の際にこれら部品の位置決めが比較的容易に行なえることにもなり、組付け作業がこの点においても容易化するメリットも得られる。ただし、これらの当て留めは、必ずしも必須の構成ではなく、これらの間に隙間が生じるように構成することとしても当然によい。
【0069】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、カップ状部材40の一部である頂壁部42によって燃焼室S1とフィルタ室S3とを仕切る仕切り部が構成されているため、カップ状部材に加えて別途仕切り部を設ける必要もなく、この点においても部品点数の削減が可能であり、製造コストを削減することができる。
【0070】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、上述したように複数の第2連通孔35とフィルタ70Aとの間に所定の間隙が形成されているため、当該部分においてガスが滞留することになり、フィルタ70Aの小形部72の側面の全体からフィルタ70Aの内部にガスが流入することになる。そのため、当該間隙が設けられていない場合に比べ、ガスの冷却およびスラグの除去に寄与するフィルタ70Aの実効体積を大きくすることができ、フィルタ70Aの利用効率を高めることができる。したがって、この点においても、ガスの冷却効率の向上が図られることになり、さらにはフィルタ70Aの小型化にも寄与できることになる。
【0071】
なお、上述した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Aにあっては、複数の第2連通孔35のすべてがフィルタ70Aの小形部72に対面するように構成した場合を例示したが、必ずしもそのように構成する必要はなく、複数の第2連通孔35のうちの少なくとも1つに対面する程度にまで、フィルタ70Aの小形部72が上述した第2空間S3Bに達するように構成されていればよい。このように構成すれば、フィルタ70Aの冷却効率の向上に少なからず寄与することができる。
【0072】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2におけるシリンダ型ガス発生器の概略図である。
図8および
図9は、それぞれ
図7に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図およびフィルタ近傍の拡大断面図である。また、
図10は、
図9中に示すX−X線に沿った断面図である。以下、これら
図7ないし
図10を参照して、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bについて説明する。
【0073】
図7ないし
図10に示すように、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bは、上述した実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aと比較した場合に、異なる構成の点火器組立体20Bを備えている点、カップ状部材に代えて仕切り部材50を備えている点、異なる構成のフィルタ70Bを備えている点において、主としてその構成が相違している。
【0074】
具体的には、
図7および
図8に示すように、点火器組立体20Bは、点火器22と、ホルダ25と、一対のシール部材26,27とを含んでいる。
【0075】
ホルダ25は、ハウジング本体10の軸方向と同方向に沿って延びる貫通部25aを有する筒状の部材からなり、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。ホルダ25は、ハウジングの内部の空間に面する側の端部に後述する点火器22のかしめ固定のためのかしめ部25bを有している。また、ホルダ25は、その外周面の所定位置にハウジング本体10をかしめ固定するための環状溝部25cを有しており、当該環状溝部25cは、ホルダ25の外周面に周方向に沿って延びるように形成されている。さらに、ホルダ25の外周面には、上述した環状溝部25cとは異なる他の環状溝部25dが設けられている。加えて、ホルダ25の外部に露出する部分には、上述した雌型コネクタ部となる凹部25eが設けられている。
【0076】
点火器組立体20Bは、ハウジング本体10の開口端を閉塞するようにハウジング本体10に固定されている。具体的には、ハウジング本体10の開口端に点火器組立体20Bの一部が内挿された状態で、当該点火器組立体20Bのホルダ25の外周面に設けられた環状溝部25cに対応する部分のハウジング本体10の周壁部11を径方向内側に向けて縮径させて当該環状溝部25cに係合させることにより、点火器組立体20Bがハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の一端部が、点火器組立体20Bによって構成されることになる。なお、ハウジングの軸方向の他端部は、ハウジング本体10の閉塞部12によって構成されている。
【0077】
また、点火器22は、ホルダ25の貫通部25aに内挿されてかしめ固定されている。より詳細には、点火器22が貫通部25aに内挿されてホルダ25に当て留めされた状態で上述したかしめ部25bをかしめることにより、点火器22がホルダ25に挟持されて固定されている。
【0078】
環状溝部25dには、Oリング等からなるシール部材26が収容されている。これにより、ホルダ25に設けられた環状溝部25d内に収容されたシール部材26が、当該ホルダ25とハウジング本体10の周壁部11とによって挟み込まれることになり、当該部分における気密性が確保されることになる。
【0079】
さらに、点火器22とホルダ25との間には、Oリング等からなるシール部材27が介装されている。シール部材27は、点火器22とホルダ25との間に隙間が生じることを防止するためのものであり、これによってハウジングの内部の空間が気密に封止されることになる。
【0080】
図7および
図9に示すように、区画部材30の筒状部31の内側には、仕切り部材50が配置されている。仕切り部材50は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されており、平板状の仕切り部51と、当該仕切り部51の外周縁からハウジングの軸方向に沿って立設された短尺円筒状の固定部52とを有している。固定部52は、区画部材30の筒状部31の内周面に当接している。
【0081】
仕切り部材50は、区画部材30の筒状部31の軸方向における途中位置に配置されるように構成されており、これにより区画部材30の筒状部31の内側の空間が軸方向に沿って仕切られている。仕切り部材50は、固定部52が区画部材30の筒状部31に圧入されることによって区画部材30に固定されている。これにより、仕切り部材50は、区画部材30に対して容易には移動しないように構成されている。
【0082】
図7および
図9に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、区画部材30よりもハウジングの上述した他端部側(すなわち、閉塞部12が位置する方のハウジングの端部側)の空間である第1空間S3Aおよび区画部材30の内側の空間であって上記仕切り部材50の仕切り部51よりもハウジングの上述した他端部側の空間である第2空間S3Bには、フィルタ70Bが配置されている。
【0083】
フィルタ70Bは、ハウジングの軸方向と直交する断面の外形が相対的に大きい(すなわち直径が大きい)大形部71と、ハウジングの軸方向と直交する断面の外形が相対的に小さい(すなわち直径が小さい)小形部72とを含む段差形状を成した略円柱状の外形を有しており、さらに大形部71の小形部72が位置する側とは反対側の端部には、環状段差部71aが設けられている。当該環状段差部71aは、ハウジング本体10の周壁部11に設けられたガス噴出口13とフィルタ70Bとの間に間隙を形成するために設けられたものであり、これにより当該部分においてガスが滞留することになり、フィルタ70Bの利用効率を高めることができる。
【0084】
このうちの大形部71は、ハウジングの上述した他端部側に位置しており、小形部72は、当該大形部71よりもハウジングの上述した一端部側(すなわち、点火器組立体20Bが位置する方のハウジングの端部側)に位置している。なお、フィルタ70Bの小形部72の先端面は、仕切り部材50仕切り部51に当接している。
【0085】
また、ハウジング本体10の周壁部11のフィルタ70B側に位置する主面には、上記ガス噴出口13を閉塞するようにシールテープ15が貼付されている。このシールテープ15としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、ハウジングの内部の空間の気密性が確保されている。
【0086】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにあっては、上述した区画部材30と仕切り部材50とによってハウジングの内部の空間が燃焼室S1とガス通路室S2とフィルタ室S3と区画されることになり、当該区画部材30および仕切り部材50が、これら区画された空間を相互に隔てる圧力隔壁として機能することになる。
【0087】
具体的には、
図7ないし
図10に示すように、仕切り部材50よりもハウジングの上述した一端部側(すなわち、点火器組立体20Bが位置する方のハウジングの端部側)の空間であってかつ区画部材30の筒状部31よりも径方向内側の空間の少なくとも一部を含む空間が、ガス発生剤60が収容された燃焼室S1として機能することになる。より詳細には、区画部材30の筒状部31およびスカート部33と、仕切り部材50の仕切り部51と、ハウジング本体10の周壁部11と、点火器組立体20Bとによって規定される空間が、燃焼室S1として機能することになる。
【0088】
また、区画部材30の筒状部31よりも径方向外側の空間であってかつ区画部材30の環状部32が位置する側の軸方向端部よりもハウジングの上述した一端部側の空間を含む空間が、燃焼室S1とフィルタ室S3とを繋ぐガス通路室S2として機能することになる。より詳細には、区画部材30の筒状部31、環状部32およびスカート部33と、ハウジング本体10の周壁部11とによって規定される空間が、ガス通路室S2として機能することになる。
【0089】
さらに、区画部材30の環状部32が位置する側の軸方向端部よりもハウジングの上述した他端部側(すなわち、閉塞部12が位置する方のハウジングの端部側)の空間である上記第1空間S3Aと、仕切り部材50よりもハウジングの上述した他端部側の空間であってかつ区画部材30の筒状部31よりも径方向内側の空間である上記第2空間S3Bとを含む空間が、フィルタ70Bが収容されたフィルタ室S3として機能することになる。より詳細には、区画部材30の筒状部31および環状部32と、仕切り部材50の仕切り部51と、ハウジング本体10の周壁部11および閉塞部12とによって規定される空間が、フィルタ室S3として機能することになる。
【0090】
ここでは、その詳細な説明は省略するが、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいても、上述した実施の形態1におけるシリンダ型ガス発生器1Aと同様に、その作動時において、燃焼室S1にて発生したガスは、第1連通孔34を介してガス通路室S2へと流れ込み、その際、ハウジングの径方向に沿ってハウジング本体10の周壁部11の内周面に吹き付けられ、さらにその後、ガス通路室S2をハウジングの軸方向に沿って流動して第2連通孔35を介してフィルタ室S3へと流れ込むことになる。
【0091】
以上において説明した本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにおいても、上述した実施の形態1の場合とほぼ同様に、区画部材30と仕切り部材50との合計2つの部品のみによって、ハウジングの内部の空間を燃焼室S1とガス通路室S2とフィルタ室S3とに区画することが可能に構成されている。そのため、非常に簡素な構成にて高い冷却効率を得ることが可能となり、高性能のシリンダ型ガス発生器を安価に提供することが可能になる。また、ガス通路室S2を設けることにより、よりスムーズにかつ効率よく燃焼室S1にて発生したガスをフィルタ室S3に導入することができ、この意味においても高性能のシリンダ型ガス発生器とすることができる。
【0092】
特に、これら区画部材30と仕切り部材50との間および区画部材30とハウジングとの間に溶接等を施さずとも、これらの間に隙間が生じてガスが漏れ出すこともないため、組付け作業が煩雑化することもなく、意図した動作が安定的に実現できることになる。
【0093】
ここで、区画部材30と仕切り部材50との間に隙間が生じない理由は、仕切り部材50の固定部52が区画部材30の筒状部31に圧入固定されているためであり、さらには、仕切り部材50の仕切り部51がフィルタ70Bの小形部72に当接しているため、仕切り部材50のハウジングの軸方向に沿った移動が防止されているためでもある。
【0094】
一方、区画部材30とハウジングとの間に隙間が生じない理由は、区画部材30の環状部32およびスカート部33がハウジングに圧入固定されているためであり、さらには、区画部材30の環状部32がフィルタ70Bの大形部71に当接しているため、区画部材30のハウジングの軸方向に沿った移動が防止されているためでもある。
【0095】
また、本実施の形態におけるシリンダ型ガス発生器1Bにあっては、区画部材30の環状部32がフィルタ70Bの大形部71に当て留めされているとともに、仕切り部材50の仕切り部51がフィルタ70Bの小形部72に当て留めされているため、製造の際にこれら部品の位置決めが比較的容易に行なえることにもなり、組付け作業がこの点においても容易化するメリットも得られる。ただし、これらの当て留めは、必ずしも必須の構成ではなく、これらの間に隙間が生じるように構成することとしても当然によい。
【0096】
上述した本発明の実施の形態1および2においては、いずれも燃焼室S1が区画部材30よりも点火器組立体20A,20B側に位置する空間を含むように構成した場合を例示したが、必ずしもこのように構成する必要はない。すなわち、点火器組立体20A,20Bが、区画部材30に内挿された状態で固定されていてもよく、その場合には燃焼室S1は、仕切り部材50よりもハウジングの上述した一端部側(すなわち、点火器組立体20A,20Bが位置する方のハウジングの端部側)の空間であってかつ区画部材30の筒状部31よりも径方向内側の空間の一部によって構成されることになる。
【0097】
また、上述した本発明の実施の形態1および2においては、点火器22の点火部22a内に点火薬のみまたは点火薬と伝火薬とが装填された場合を例示して説明を行なったが、伝火薬を装填する場合にこれが点火器22の点火部22a内に装填されている必要は必ずしもなく、点火器22の点火部22aとガス発生剤60との間の位置にたとえばカップ状の部材や容器等を用いてこれが装填されていてもよい。
【0098】
また、上述した本発明の実施の形態1および2においては、ハウジング本体10と点火器組立体20A,20Bとをかしめ固定することで連結した場合を例示して説明を行なったが、ハウジング本体10と点火器組立体20A,20Bとの固定に溶接等を利用することも当然に可能である。
【0099】
加えて、上述した本発明の実施の形態1および2においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、助手席用エアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状の外形を有するいわゆるT字型ガス発生器にもその適用が可能である。
【0100】
さらには、上述した本発明の実施の形態1および2において示した特徴的な構成は、装置構成上、許容される範囲で当然に相互にその組み合わせが可能である。
【0101】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。