(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハウジングと、前記ハウジングにより保持されるアクチュエータと、前記ハウジングにより保持されるコンタクトとを備え、接続対象物である基板を外部から挿入して前記コンタクトに形成された挟持部間で保持する基板用コネクタであって、
前記アクチュエータは、前記基板の挿入時に前記基板により押動される前力点部と、前記前力点部の押動に伴って前記コンタクトを押し上げることにより、前記挟持部間を広げるコンタクト押し上げ部と、前記コンタクト押し上げ部を支持するばね部とを備え、
前記コンタクト押し上げ部は、前記コンタクトを押し上げる際に前記コンタクトと接触する部分を覆う絶縁体を備え、
前記ハウジングの基板挿入口の開口の少なくとも一部の高さを下げる突起を備え、
前記突起により下がった開口の下端とハウジング下面との間の高さを第1の高さH1とし、前記コンタクト押し上げ部の上端とハウジング下面との間の高さを第2の高さH2とするとき、H1<H2である基板用コネクタ。
前記アクチュエータは、金属からなる金属層と絶縁体からなる絶縁層とを積層してなる積層体を折り曲げてなる請求項1及び請求項2のいずれかに記載の基板用コネクタ。
前記アクチュエータは、ハウジングに固定するためのビーム部、前記ビーム部により支持されるばね部、前記ばね部により支持される前記コンタクト押し上げ部、前記コンタクト押し上げ部から下方に向かって突出する前記前力点部を備え、
前記アクチュエータは、前記ビーム部、前記ばね部、前記前力点部からなる組を二組備え、
前記二組それぞれの前記ばね部は前記コンタクト押し上げ部の両端を支持する
請求項1乃至4のいずれかに記載の基板用コネクタ。
前記アクチュエータは、ハウジングに固定するためのビーム部、前記ビーム部により支持されるばね部、前記ばね部により支持される前記コンタクト押し上げ部、前記コンタクト押し上げ部から下方に向かって突出する前記前力点部を備え、
前記ビーム部、前記ばね部、前記前力点部からなる組を一組備え、
前記ばね部は前記コンタクト押し上げ部の中央に配置される
請求項1乃至4のいずれかに記載の基板用コネクタ。
【背景技術】
【0002】
様々な電気機器等において、FPC、FFC等の平板状の信号伝送媒体を電気的に接続するため、アクチュエータを備える電気コネクタが広く利用されている。以下、本明細書では、電気コネクタを単にコネクタと記すものとする。また、信号伝送媒体を挿入するための開口(基板挿入口と記す)を有する向きをコネクタの前方とし、その反対側を後方とする。また、コネクタを基板に実装するとき、基板側の面が向く方向をコネクタの下方とし、その反対側を上方とする。
【0003】
コネクタの中には、装着した信号伝送媒体に対して、コネクタから抜去する方向、即ち、コネクタ前方に力を加えると、信号伝送媒体とアクチュエータとが互いに干渉して、その力の一部がアクチュエータに伝達されるものがある。
【0004】
例えば特許文献1には
図26のようなコネクタ200が記載されている。
図26は信号伝送媒体201の挿入途中の状態であり、信号伝送媒体201の先端が案内係止部204に突き当たって、アクチュエータ203を押し上げている。こののち信号伝送媒体201が最終接続位置まで挿入されると、アクチュエータ203の案内係止部204が位置規制部205の段差部分に落ち込むことにより、信号伝送媒体201は絶縁ハウジング206から抜け出すことなく保持される。
【0005】
保持された状態にある信号伝送媒体201に対して、解除操作部202を押し下げることなくコネクタ前向きの力を加えると、アクチュエータ203の案内係止部204と信号伝送媒体201の位置規制部205とが干渉する。その結果、信号伝送媒体201に加えられた力の一部が、アクチュエータ203に伝達される。このとき瞬間的に大きな力が加えられると、アクチュエータ203が絶縁ハウジング206から外れる恐れがある。
【0006】
絶縁ハウジング206からアクチュエータ203が外れた状態にあるコネクタ200は、破損した状態にあり、正常な動作を行うことができない。また、この状態は、単にコネクタ200が正しく動作しないという問題だけではなく、別の問題を引き起こす恐れがある。即ち、コネクタ200から外れ、どこにも固定されていないアクチュエータ203は、コネクタ200を内蔵した装置においては異物であり、本来必要がないだけではなく、例えば、その装置の他の可動部に侵入して、他の故障を誘発する恐れがある。
【0007】
このように、従来のコネクタでは、装着した信号伝送媒体に対して、信号伝送媒体を抜去する向きの力(コネクタ前向きの力)を加えると、その力の一部がアクチュエータに作用して、アクチュエータがハウジングから外れてしまうことがあった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施の形態であるコネクタ1について説明する。コネクタ1は例えば不図示のプリント基板の上に実装されて、接続対象物である基板(FPCやFFC等の平板状の信号伝送媒体6)を、プリント基板上の配線と電気的に接続するためのコネクタである。
【0021】
本明細書において座標系を次のように定めるものとする。
図1を参照すると、コネクタ1に信号伝送媒体6を挿入する方向をX軸とする。コネクタ1を載置する不図示のプリント基板と平行な仮想的な平面をX−Y平面とし、X−Y平面においてX軸と直交する直線をY軸とする。X−Y平面に直交する方向をZ軸方向とする。図中のX軸、Y軸、Z軸の矢印の方向はそれぞれの正の方向を示すものとする。特に、X軸において、未装着の信号伝送媒体6をコネクタ1に挿入する向きを挿入方向と呼び、装着済みの信号伝送媒体6をコネクタ1から抜き去る向きを抜去方向と呼ぶものとする。
【0022】
図1〜
図5を参照してコネクタ1について説明する。コネクタ1は、ハウジング2、第1コンタクト3A〜3E、第2コンタクト4A〜4F、アクチュエータ5を備える。特に、
図4では、アクチュエータ5のうち、後述する下ビーム部52A、下ビーム部52B、および片持ち梁状の上ビーム部54A、上ビーム部54Bと下ビーム部52A、52Bを連結したU字型のばね部53A、ばね部53Bの一部がハウジング2の基板挿入口から見えている。後述するように、ハウジング2は、その開口を下向きに狭める開口凸部21を備え、
図4には図示されていないが、開口凸部21の背後にコンタクト押し上げ部55が隠れている。
【0023】
ハウジング2は絶縁性の樹脂を成形したものである。ハウジング2は概略直方体の外形を有する中空の筐体である。正面に基板挿入口を有し、基板挿入口は内部の中空部に通じている。内部の上面及び下面には、第1コンタクト3A〜3E、第2コンタクト4A〜4F、アクチュエータ5を嵌め込み、支持するための溝が図中X方向に沿って設けられている。
【0024】
第1コンタクト3A〜3Eは同一の部品であり、ここではまとめて第1コンタクト3と呼んで説明する。第1コンタクト3は、例えばリン青銅等の金属板を所定の形状に打ち抜いて形成したものである。
【0025】
図6を参照して第1コンタクト3について説明する。下ビーム部31は、ハウジング2内部下面に設けられた凹部に嵌め込まれて、第1コンタクト3をハウジング2に対して固定する。下ビーム部31の一端である端子部32は、
図2、
図3に示すようにハウジング2の後部(基板挿入口の反対側)から突出し、不図示のプリント基板上の配線と例えば半田付けにより電気的に接続される。下ビーム部31の略中央の凸部は下挟持部33である。端子部32と下挟持部33との間には、連結部34が直立する。このように連結部34の下端が下ビーム部31に接続される一方、連結部34の上端は、抜去方向に曲がって片持ち梁となっている。この梁を上ビーム部35とする。上ビーム部35には、下挟持部33に対応する位置に上挟持部36が設けられている。また、上挟持部36よりも先には、アクチュエータ5と接触し、アクチュエータ5の動作に応じて、アクチュエータ5によって押し上げられるアクチュエータ接触部37を備える。つまり、片持ち梁である上ビーム部35はアクチュエータ5によって押し上げられる。尚、以下の説明において、第1コンタクト3A〜3Eそれぞれの下ビーム部31、端子部32、下挟持部33、連結部34、上ビーム部35、下挟持部36、アクチュエータ接触部37について言及する際には、第1コンタクト3A〜3Eの表記と同様に、参照符号の番号の末尾にアルファベットA〜Eを付して表記するものとする。
【0026】
第2コンタクト4A〜4Fは同一の部品であり、ここではまとめて第2コンタクト4と呼んで説明する。第2コンタクト4は、例えばリン青銅等の金属板を所定の形状に打ち抜いて形成したものである。
【0027】
図7を参照して第2コンタクト4について説明する。下ビーム部41は、ハウジング2内部下面に設けられた凹部に嵌め込まれて、第2コンタクト4をハウジング2に対して固定する。下ビーム部41の前端に位置する端子部42は、ハウジング2の前部において、ハウジング2の下部から突出し、不図示のプリント基板上の配線と例えば半田付けにより電気的に接続される。下ビーム部41の略中央の凸部は下挟持部43である。下ビーム部41の後端手前には連結部44が直立する。このように連結部44の下端が下ビーム部41に接続される一方、連結部44の上端は、抜去方向に曲がって片持ち梁となっている。この梁を上ビーム部45とする。上ビーム部45には、下挟持部43に対応する位置に上挟持部46が設けられている。また、上挟持部46よりも先には、アクチュエータ5と接触して、アクチュエータ5の動作に応じて、アクチュエータ5によって押し上げられるアクチュエータ接触部47を備える。つまり、片持ち梁である上ビーム部35は、アクチュエータ5によって押し上げられる。尚、以下の説明において、第2コンタクト4A〜4Fそれぞれの下ビーム部41、端子部42、下挟持部43、連結部44、上ビーム部45、下挟持部46、アクチュエータ接触部47について言及する際には、第2コンタクト4A〜4Fの表記と同様に、参照符号の番号の末尾にアルファベットA〜Eを付して表記するものとする。
【0028】
アクチュエータ5は金属製であり例えば銅合金やステンレスからなる。
図8、
図9、
図10からも分かるように、アクチュエータ5は、一枚の金属板の一方の面に絶縁体からなる絶縁層を形成した上で、所定の形に打ち抜いた後、折り曲げることにより形成されたものである。
図8において絶縁層の各部は絶縁層51A、51B、51Cとして図示されている。
【0029】
アクチュエータ5は、下ビーム部52A、52B、ばね部53A、53B、上ビーム部54A、54B、コンタクト持ち上げ部55、前力点部56A、56B、後力点部57A、57Bを備える。
【0030】
下ビーム部52Aは、ハウジング2内部下面に設けられた溝に嵌め込まれて、アクチュエータ5をハウジング2に対して固定する。下ビーム部52Bについても同様である。
【0031】
ばね部53Aは、下ビーム部52Aと上ビーム部54Aとを連結し、ばねとして作用する。同様に、ばね部53Bは、下ビーム部52Bと上ビーム部54Bとを連結し、ばねとして作用する。
【0032】
前力点部56Aは、コネクタ2の前方から後方に向かって下る傾斜部を有する。この傾斜部と、外部から挿入された信号伝送媒体6とが接触した状態から、信号伝送媒体6を更にコネクタ2に押し込むと、傾斜部によって前力点部56Aは信号伝送媒体6の上に乗り上げる。同様に、前力点部56Bは、コネクタ2の前方から後方に向かって下る傾斜部を有する。この傾斜部と、外部から挿入された信号伝送媒体6とが接触した状態から、信号伝送媒体6を更にコネクタ2に押し込むと、傾斜部によって前力点部56Bは信号伝送媒体6の上に乗り上げる。
【0033】
図11の信号伝送媒体6を参照して説明する。信号伝送媒体6をコネクタ2に押し込むと、信号伝送媒体6の端部61Aは前力点部56Aに接触する。この状態から更に信号伝送媒体6を押し込むと、前力点部56Aは端部61Aから信号伝送媒体6の表面に乗り上げ、その表面上を滑って進む。信号伝送媒体6の左右脇(X軸方向に沿った辺)には、それぞれ、切欠き62A、62Bが設けられている。信号伝送媒体6の表面を滑り進んだ前力点部56Aが、切欠き61Aの端部63Aに到達すると、前力点部56A、後力点部57Aは切欠き62Aに収まる。このとき、信号伝送媒体6がコネクタ2に装着された状態となる。前力点部56Bについても同様である。
【0034】
後力点部57Aは、前力点部56Aの下端から斜め上に上る傾斜部を有する。コネクタ2に装着された状態にある信号伝送媒体6に対して、ある程度よりも強い力で引っ張ると、後力点部57Aは切欠き端部63Aにて信号伝送媒体6の表面に乗り上げて、その表面上を滑って進み、端部61Aにて信号伝送媒体6の表面から滑り落ちる。後力点部57Bについても同様である。
【0035】
上述した、第1コンタクト3、第2コンタクト4、アクチュエータ5は、ハウジング2の内部において
図12のような位置関係で配置される。第1コンタクト3、第2コンタクト4と、アクチュエータ5との接触は、絶縁層51Cを介して行われることに注意されたい。第1コンタクト3A〜3Eのアクチュエータ接触部37A〜37E、第2コンタクト4A〜4Fのアクチュエータ接触部47A〜47Fは、いずれも、金属板50に直接触れておらず、絶縁層51Cを介して接触している。このため、金属製のアクチュエータ5に接触しても、第1コンタクト3A〜3E、第2コンタクト4A〜4Fが、アクチュエータ5を介して互いに電気的に接続されることはない。
【0036】
次に、コネクタ1の組み立て工程について説明する。まず、第1コンタクト3、第2コンタクト4、アクチュエータ5のいずれも組み込まれていない状態のハウジング2を用意して、
図13に示すように、ハウジング2の背面から第1コンタクト3A〜3Eを挿入する。次に、
図14に示すように、第1コンタクト3A〜3Eを組み込んだハウジング2の前面から、第2コンタクト4A〜4Fを挿入する。次に、
図15に示すように、第1コンタクト3A〜3E及び第2コンタクト4A〜4Fを組み込んだハウジング2の前面から、アクチュエータ5を挿入する。
【0037】
ここで、コネクタ1の組み立て工程のうち、アクチュエータ5を挿入する工程について
図16、
図17を参照して更に説明する。
【0038】
図16は4行3列のマトリクス状になっている。各行にハウジング2の3か所の断面図が記載されている。1行目「挿入前」はアクチュエータ5をハウジング2に挿入する直前における断面である。2行目「挿入中1」はアクチュエータ5のコンタクト持ち上げ部55が基板挿入口に達したときの断面である。3行目「挿入中2」はコンタクト持ち上げ部55が後述する開口凸部21の下を滑って移動する過程の断面である。4行目「挿入後」はアクチュエータ5がハウジング2に完全に挿入されたときの断面である。また、1列目「ACT 断面」は、
図8のアクチュエータ5、コンタクト持ち上げ部55において、金属板の折り返しにより絶縁層51Cが上に向いている部分における断面である。2列目「SMT 断面」は、
図8において下ビーム部52B、ばね部53B、上ビーム部54Bの外側の端面における断面である。3列目「力点部 断面」は、前力点部56B及び後力点部57Bをなす下向きの凸部の外側の面における断面である。斜視断面図である点を除いて
図17も同様である。
【0039】
図16、
図17に示すように、ハウジング2の基板挿入口付近には、基板挿入口の開口の高さを下げるために内部の上面から下面に向かって突出する突起である開口凸部21が設けられている。開口凸部21も第1コンタクト3A〜3E、第2コンタクト4A〜4F、アクチュエータ5を嵌め込み、支持するための溝を備える。
【0040】
開口凸部21の前方には斜面22が設けられている。アクチュエータ5をハウジング2に挿入していくと、コンタクト持ち上げ部55は斜面22に接触する。その状態から更にアクチュエータ5をハウジング2に押し込んでいくと、
図16の2行目「挿入中1」に示すように、コンタクト持ち上げ部55は、斜面22に沿って下方に移動し、ばね部53A、53Bは弾性変形する。更にアクチュエータ5をハウジング2に押し込んでいくと、ばね部53A、53Bが弾性変形して、コンタクト持ち上げ部55は、斜面22に接しながらハウジング2の奥に向かって移動する。
【0041】
同
図3行目「挿入中2」に示すように、コンタクト持ち上げ部55が開口凸部21の下端に到達した後、更にアクチュエータ5をハウジング2に押し込んでいくと、ばね部53A、53Bが弾性変形して、コンタクト持ち上げ部55は、開口凸部2の下端に接しながらハウジング2の奥に向かって移動する。
【0042】
開口凸部21の後方には、ハウジング2の内部上面から略垂直下方に向かって延びる面がある。この面をアクチュエータ抑止面23と呼ぶものとする。2行目「挿入中1」、3行目「挿入中2」において、開口凸部21は、弾性変形したアクチュエータ5を垂直下方に押さえつけていたが、コンタクト持ち上げ部55がアクチュエータ抑止面23に到達すると、開口凸部21による押さえつけがなくなる。このため、コンタクト持ち上げ部55がアクチュエータ抑止面23を超えてハウジング2の奥に移動すると、ばね部53A、53Bは元の形状に戻り、同
図4行目「挿入後」に示すように、コンタクト持ち上げ部55はハウジング2の中空部で跳ね上がるように動作する。この後、コンタクト持ち上げ部55は、アクチュエータ抑止面23の下端よりも上に位置するようになる。後述するように、コンタクト持ち上げ部55とアクチュエータ抑止面23下端のこのような位置関係により、アクチュエータ5がハウジング2から抜け落ちるのを防止することができる。
【0043】
ここで、開口凸部21の下端とハウジング2の下面との間の高さ、特に、アクチュエータ抑止面23の下端とハウジング2の下面との間の高さを第1の高さH1とし、外力が加えられていないときのコンタクト持ち上げ部55の上端とハウジング2の下面との間の高さを第2の高さH2とすると、H1<H2の関係が成り立つように構成される。
【0044】
以上の組み立て工程を経て、第1コンタクト3、第2コンタクト4、アクチュエータ5は、ハウジング2の内部に
図12の位置関係になるように配置されて、コネクタ1が完成する。
【0045】
次に、信号伝送媒体6を装着する際のコネクタ1の動作について
図18、
図19を参照して説明する。
【0046】
図18は3行2列のマトリクス状になっている。各行にハウジング2の2か所の断面図が記載されている。1行目「初期状態」は信号伝送媒体6をコネクタ1に挿入する直前における断面である。2行目「基板(FPC)挿入過程」は、信号伝送媒体6の先端が開口凸部21を通過してアクチュエータ5の前力点部56Bと接触し、前力点部56Bが信号伝送媒体6の上に乗り上げた状態における断面である。3行目「嵌合完了」は、更に信号伝送媒体6を押し込み、後力点部57Bが切欠き端部63Bを滑り落ちて、切欠き62Bに引っ掛かった状態における断面である。また、1列目「ACT 断面」は、
図8のアクチュエータ5、コンタクト持ち上げ部55において、金属板の折り返しにより絶縁層51Cが上に向いている部分における断面である。2列目「接点部 断面」は、第2コンタクト4Fの外側の面に沿った断面である。斜視断面図である点を除いて
図19も同様である。尚、
図18の1行目「初期状態」には、開口凸部21の下端とハウジング2の下面との間の高さH1と、外力が加えられていないときのコンタクト持ち上げ部55の上端とハウジング2の下面との間の高さをH2が図示されている。
【0047】
図18、
図19の1行目(初期状態)に示すように、コネクタ1にまだ装着していない状態にある信号伝送媒体6を、コネクタ1の基板挿入口から挿入する。コネクタ1の基板挿入口は開口凸部21により狭まっているが、斜面22が信号伝送媒体6の先端を誘導して、挿入しやすくしている。斜面22の誘導に沿って、信号伝送媒体6をコネクタ1の奥に押し込んでいくと、信号伝送媒体6の先端は、開口凸部21と、ハウジング2の下面との間の空間を通過し、アクチュエータ抑止面23の下を通過して、アクチュエータ5の前力点部56Bに接触する。
【0048】
この状態から、更に信号伝送媒体6を押し込んでいくと、信号伝送媒体6の先端は、前力点部56Bに設けた傾斜を押し上げる。それに伴って、コンタクト持ち上げ部55は上向きに移動し、ばね部53Bは弾性変形する。
【0049】
コンタクト持ち上げ部55は、絶縁層51Cを介して、第1コンタクト3A〜3Eのアクチュエータ接触部37A〜37Eの下面と接触する。同様に、コンタクト持ち上げ部55は、絶縁層51Cを介して、第2コンタクト4A〜4Fのアクチュエータ接触部47A〜47Fの下面と接触する。コンタクト持ち上げ部55が上向きに動くと、それに伴って、第1コンタクト3A〜3E、第2コンタクト4A〜4Fの弾性変形が生じ、アクチュエータ接触部37A〜37E、アクチュエータ接触部47A〜47Fは押し上げられる。このとき、第1コンタクト3、第2コンタクト4とアクチュエータ5との間の接触は、絶縁層51Cを介して行われるため、第1コンタクト3、第2コンタクト4の間が電気的に接続されることはない。
【0050】
更に信号伝送媒体6を押し込んでいくと、
図18、
図19の2行目(基板(FPC)挿入過程)に示すように、前力点部56Bは信号伝送媒体6に完全に乗り上げる。このとき、第1コンタクト3の上挟持部36の先端は、前力点部56Bの先端よりも高い位置となるように構成される。第2コンタクト4の上挟持部46についても同様である。このように構成することにより、基板(FPC)挿入過程において、上挟持部36、46が信号伝送媒体6に接触するのを避けることができる。コネクタ1から信号伝送媒体6を抜去する際の対応する過程でも、上挟持部36、46と信号伝送媒体6との間を非接触に保つことができる。これにより、信号伝送媒体6をコネクタ1に装着する際、或いは、抜去する際に、上挟持部36、46が信号伝送媒体6の表面を傷めるのを回避することができる。
【0051】
更に信号伝送媒体6をコネクタ1の奥に押し込んでいくと、前力点部56Bの下端は信号伝送媒体6の上面を滑って移動し、切欠き端部63Bに到達すると、前力点部56B及び後力点部57Bは切欠き62Bに滑り落ちて引っ掛かる。このときの状態を
図18、
図19の3行目(嵌合完了)に示す。
【0052】
前力点部56B及び後力点部57Bが切欠き62Bに滑り落ちたことにより、ばね部53Bの弾性変形に抗する力が消失し、ばね部53Bの形は初期状態に戻り、コンタクト持ち上げ部55は下向きに移動する。これに伴って、アクチュエータ接触部37、47を上向きに持ち上げていた力も消失し、第1コンタクト3、第2コンタクト4は下向きに移動するが、上挟持部36、46の下には切欠きはなく、信号伝送媒体6の上面に形成された配線パターンが存在する。このため、上挟持部36、46はそれぞれ信号伝送媒体6の配線パターンの上に下されることとなる。上挟持部36は下挟持部33と対になって信号伝送媒体6を挟み、上挟持部47は下挟持部47と対になって信号伝送媒体6を挟む。
【0053】
このように、嵌合完了の状態では、アクチュエータ5の弾性変形が完全に解除される一方、第1コンタクト3、第2コンタクト4の弾性変形は信号伝送媒体6の支持により一部残留する。残留した弾性変形は、第1コンタクト3、第2コンタクト4のそれぞれに対し、信号伝送媒体6の配線パターンとの接触を維持させる力として作用する。
【0054】
ここで、嵌合完了の状態にある信号伝送媒体6に対して、コネクタ1から引き抜く方向に力を加えた場合を考える。所定の大きさ以上の力を加えると、信号伝送媒体6の切欠き端部63Bは、後力点部57Bを押し上げる。これにより、後力点部57Bが信号伝送媒体6の上面に乗り上げる。この後、更に信号伝送媒体6を引っ張り続けると、信号伝送媒体6をコネクタ1から抜去することができる。このように信号伝送媒体6を抜去する際には、アクチュエータ5に対しても抜去方向の力が作用する。
【0055】
ハウジング2の下面に設けた溝に下ビーム部52A、52Bを取り付けることにより、アクチュエータ5をハウジング2に対して固定している。
【0056】
以上、本発明について実施の形態及びその変形に即して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
アクチュエータ5の変形であるアクチュエータ100を
図20に示す。アクチュエータ5では、一方の面に絶縁層を形成した金属板を折り曲げて、特に、コンタクト持ち上げ部55では絶縁層が上になるように折り返しを設けることにより、コンタクト間のショートを防いだ。これに対して、アクチュエータ100では、コンタクト持ち上げ部55をなす金属板のうち、コンタクトと接触する側の面のみに絶縁層101を備える。
【0058】
このような構造は、例えば、金属板の該当する箇所のみに絶縁層を選択的に形成することにより実現することができる。或いは、金属板の一方の面の全面に絶縁層を形成した後、該当する箇所以外の絶縁層をエッチング等により除去することにより実現することができる。アクチュエータ100では、コンタクト持ち上げ部55の絶縁層を設けるために金属板を折り返す必要がない。
【0059】
アクチュエータ5の他の変形であるアクチュエータ110を
図21に示す。アクチュエータ110は、コンタクト持ち上げ部55となる金属板の周囲を覆うモールド111を有する。モールド111はモールドインにて成形する。
【0060】
アクチュエータ5の他の変形であるアクチュエータ120を
図22に示す。アクチュエータ5は、コンタクト持ち上げ部55の一方の端部に、下ビーム部52A、ばね部53A、上ビーム部54Aからなる一組のSMT部を備え、他方の端部に下ビーム部52B、ばね部53B、上ビーム部54Bからなるもう一組のSMT部を備える構造であるのに対して、アクチュエータ120は、コンタクト持ち上げ部55の中央に、下ビーム部52、ばね部53、上ビーム部54からなるSMT部を一組だけ備える構造である。SMT部を一組にすることにより、アクチュエータ120の幅を狭くすることができるので、コネクタ1の幅を狭くすることができる。アクチュエータ5と同様に、一枚の金属板の一方の面に絶縁層を形成し、コンタクト持ち上げ部55にて折り返すことにより、コンタクト持ち上げ部55の上に絶縁層121A、121Bを設けている。
【0061】
アクチュエータ5の他の変形であるアクチュエータ130について
図23〜
図25を参照して説明する。一枚の金属板の一方の面に絶縁層を形成し、コンタクト持ち上げ部55にて折り返すことにより、コンタクト持ち上げ部55の上に絶縁層51Cを設けている点では、アクチュエータ5と同様である。
【0062】
上述のアクチュエータ5及びその変形は、いずれも、信号伝送媒体6の挿入方向に延びるビーム部を抜去方向に折り返すことにより、ばね部を形成している。これに対して、アクチュエータ130では、コンタクト押し上げ部の端部を折り返すことによりばね部131A、131Bを形成している。
【0063】
アクチュエータ5等の上述のアクチュエータでは、下ビーム部をコンタクト持ち上げ部の位置よりもコネクタの奥に延ばした上で折り返して、ばね部を形成する。ばね部で片持ち梁状に支持した上ビーム部をその折り返しからコネクタの基板挿入口側に延ばす。そして上ビーム部の先端でコンタクト持ち上げ部を支持する。このように、下ビーム部と上ビーム部が奥行方向に折り返すため、アクチュエータにある程度の奥行が必要になり、その結果、アクチュエータを内蔵するコネクタにもある程度の奥行きが必要になる。これに対して、アクチュエータ130では、コンタクト持ち上げ部55の直下で折り曲げた金属板からなるばね部を用いているため、アクチュエータ130の奥行きを短くすることができ、その結果、コネクタ1の奥行きを短くすることができる。
【0064】
また、上述のアクチュエータ5及びその変形では、コンタクト持ち上げ部55の両端部を下方に折り曲げて、逆三角形状の板を垂らしたものを前力点部、後力点部として用いている。前力点部、後力点部として作用する傾斜は、板の折り曲げではなく、板の切断形状によって形成されている。これに対して、アクチュエータ130では、金属板を折り曲げることにより、前力点部132A、132B、後力点部133A、133Bとして作用する傾斜を形成している。