特許第6265874号(P6265874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265874
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】普通型コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 57/03 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   A01D57/03
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-197166(P2014-197166)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-67222(P2016-67222A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】小林 宜泰
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−039026(JP,A)
【文献】 特開2011−167162(JP,A)
【文献】 実開平04−097525(JP,U)
【文献】 特開2013−236599(JP,A)
【文献】 特開平01−257410(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0242938(US,A1)
【文献】 米国特許第7650737(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/00−57/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されて植立穀稈を掻き込む回転リールが備えられ、
前記回転リールに、左右一対のリールフレームと、前記左右一対のリールフレームに亘って架け渡され、左右方向に沿って延びる複数の支持フレームと、前記支持フレームに左右方向に沿って並ぶ状態で支持される複数のタインと、が備えられ、
前記複数のタインに、前記支持フレームの左右方向端部側に位置し、前記支持フレームに連結された取付フレームに取り付けられるタインと、前記支持フレームの左右方向中央部側に位置し、前記支持フレームに直接取り付けられるタインと、が含まれ
前記取付フレームが、前記支持フレームの下部に支持され、
前記取付フレームに取り付けられるタインが、前記取付フレームよりも下方部分に形成されて植立穀稈に掻き込み作用する作用部を備え、
前記支持フレームに直接取り付けられるタインが、前記取付フレームに対応する部分よりも下方部分に形成されて植立穀稈に掻き込み作用する作用部を備え、
前記取付フレームに取り付けられるタインの作用部と、前記支持フレームに直接取り付けられるタインの作用部とが、同じ高さ位置に揃えられ、かつ、側面視で同一形状とされている普通型コンバイン。
【請求項2】
前記支持フレームの左端部側の2つのタイン、及び、前記支持フレームの右端部側の2つのタインが、前記取付フレームに取り付けられている請求項1に記載の普通型コンバイン。
【請求項3】
前記複数のタインのうち最も左右方向端部に位置するタインが、前記取付フレームに取り付けられている請求項1または2に記載の普通型コンバイン。
【請求項4】
前記取付フレームに取り付けられるタインが、前記取付フレームと面接触した状態で前記取付フレームに取り付けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の普通型コンバイン。
【請求項5】
前記タインに、前記支持フレームまたは前記取付フレームに連結される連結部と、前記連結部から延出されるとともに、前記作用部を延出させたバネ部とが備えられ、
前記タインが貫通する状態で前記支持フレームと前記取付フレームとを覆うカバーが備えられ
前記カバーを前記支持フレームに取り付けるバンド状の留め具が、左右方向に隣接する一対のタイン間にそれぞれ備えられ、
前記留め具は、側面視において、前記支持フレームと前記バネ部との間で前記カバーに貫通されている請求項1〜のいずれか一項に記載の普通型コンバイン。
【請求項6】
前記タインに、前記支持フレームまたは前記取付フレームに連結される連結部と、前記連結部から延出されるとともに、前記作用部を延出させたバネ部とが備えられ、
前記取付フレームが、内部に空間を形成する溝型状の形状とされると共に、前記取付フレームの下部にスリットが形成され、
前記取付フレームに取り付けられるタインは、前記バネ部が前記空間に位置すると共に前記作用部が前記スリットを貫通して下方へ延出する状態で前記連結部が前記空間において前記取付フレームに連結されることで、前記取付フレームに取り付けられている請求項1〜のいずれか一項に記載の普通型コンバイン。
【請求項7】
前記タインに、前記支持フレームまたは前記取付フレームに連結される連結部と、前記連結部から延出されるとともに、前記作用部を延出させたバネ部とが備えられ、
前記支持フレームに直接取り付けられるタインは、前記バネ部が前記支持フレームの下部に隣り合っている状態で前記連結部が前記支持フレームの上部に連結されることで、前記支持フレームに取り付けられている請求項1〜のいずれか一項に記載の普通型コンバイン。
【請求項8】
前記タインに、前記支持フレームまたは前記取付フレームに連結される連結部と、前記連結部から延出されるとともに、前記作用部を延出させたバネ部とが備えられ、
前記複数のタインのうち最も左右方向端部に位置するタインは、前記作用部が前記バネ部よりも左右方向端部側に位置する状態で設けられている請求項1〜のいずれか一項に記載の普通型コンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動されて植立穀稈を掻き込む回転リールが備えられた普通型コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1に、従来の普通型コンバインが記載されている。この普通型コンバインには、回転駆動されて植立穀稈を掻き込む回転リールが備えられている。回転リールには、左右一対のリールフレーム(特許文献1では「リール枠」)と、左右一対のリールフレームに亘って架け渡され、左右方向に沿って延びる複数の支持フレーム(特許文献1では「タイン支持部」)と、支持フレームに左右方向に沿って並ぶ状態で支持される複数のタインと、が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−39026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、普通型コンバインでは、例えば凹凸のある圃場を走行する場合等に、回転リールが地面に対して傾くことがあり、回転リールの左右方向端部側に位置するタインが、地面に対して比較的接触しやすくなっている。上記特許文献1に示されている技術では、回転リールの支持フレームに支持される複数のタインの全てが、支持フレームに直接取り付けられているので、回転リールの左右方向端部側に位置するタインが地面に接触した際に、支持フレームの左右方向端部側の箇所に大きな負荷が掛かる構造となっていた。一方、支持フレームの全幅に亘って補強用の取付フレームを取り付け、支持フレームに支持される複数のタインの全てを、その取付フレームに取り付ける構造も考えられるが、そのような構造であると、取付フレームが大型化する等して、回転リールの製造コストが大幅に増加するおそれがあった。
【0005】
上記実状に鑑み、製造コストの増加を抑えながら、回転リールの耐久性を良好なものにできる普通型コンバインの提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る普通型コンバインの特徴構成は、
回転駆動されて植立穀稈を掻き込む回転リールが備えられ、
前記回転リールに、左右一対のリールフレームと、前記左右一対のリールフレームに亘って架け渡され、左右方向に沿って延びる複数の支持フレームと、前記支持フレームに左右方向に沿って並ぶ状態で支持される複数のタインと、が備えられ、
前記複数のタインに、前記支持フレームの左右方向端部側に位置し、前記支持フレームに連結された取付フレームに取り付けられるタインと、前記支持フレームの左右方向中央部側に位置し、前記支持フレームに直接取り付けられるタインと、が含まれ
前記取付フレームが、前記支持フレームの下部に支持され、
前記取付フレームに取り付けられるタインが、前記取付フレームよりも下方部分に形成されて植立穀稈に掻き込み作用する作用部を備え、
前記支持フレームに直接取り付けられるタインが、前記取付フレームに対応する部分よりも下方部分に形成されて植立穀稈に掻き込み作用する作用部を備え、
前記取付フレームに取り付けられるタインの作用部と、前記支持フレームに直接取り付けられるタインの作用部とが、同じ高さ位置に揃えられ、かつ、側面視で同一形状とされている点にある。
【0007】
本発明によると、支持フレームに支持される複数のタインのうち地面に対する接触が比較的生じ易い支持フレームの左右方向端部側に位置するタインは、支持フレームに連結された取付フレームに取り付けられている。よって、回転リールが傾いて支持フレームの左右方向端部側に位置するタインが地面に接触したとしても、取付フレームにより衝撃が吸収され、支持フレームの左右方向端部側に大きな負荷が掛からず、支持フレームの破損等を好適に抑止できる。一方、支持フレームに支持される複数のタインのうち地面に対する接触が比較的生じ難い支持フレームの左右中央側に位置するタインは、支持フレームに直接取り付けられるので、取付フレームがない分、製造コストを抑えることができる。
したがって、本発明であれば、製造コストの増加を抑えながら、回転リールの耐久性を良好なものにできる。
また、本発明によれば、回転リールを回転駆動する際に、支持フレームに直接取り付けられるタインの掻き込み作用と、取付フレームを介して支持フレームに支持されるタインの掻き込み作用とに、差異が生じないようにできる。つまり、回転リール全体において植立穀稈の掻き込み作用が左右方向に均一化され、回転リールにより植立穀稈を安定して掻き込むことができる
【0008】
本発明において、前記支持フレームの左端部側の2つのタイン、及び、前記支持フレームの右端部側の2つのタインが、前記取付フレームに取り付けられていると好適である。
【0009】
本構成によれば、回転リールが地面に対して左右のどちらに傾いたとしても、支持フレームの左端部側に支持されるタインと支持フレームの右端部側に支持されるタインとが、いずれも取付フレームにより補強されているので、支持フレームの左端部及び右端部のいずれにも大きな負荷がかかりにくい構造にできる。
【0010】
本発明において、前記複数のタインのうち最も左右方向端部に位置するタインが、前記取付フレームに取り付けられていると好適である。
【0011】
本構成によれば、支持フレームに支持される複数のタインのうち最も地面に対する接触が生じやすい左右方向端部に位置するタインが、取付フレームを介して支持フレームに支持されているので、地面に対するタインの接触により支持フレームに大きな負荷がかかることを確実に抑止できる。
【0012】
本発明において、前記取付フレームに取り付けられるタインが、前記取付フレームと面接触した状態で前記取付フレームに取り付けられていると好適である。
【0013】
本構成によれば、取付フレームに取り付けられるタインが、取付フレームに対して広い範囲で接触した状態で取り付けられているので、回転リールの掻き込み時にタインに作用する力が取付フレームにより好適に吸収され、支持フレームに伝達されにくいようにできる。
【0014】
【0015】
【0016】
本発明において、前記タインに、前記支持フレームまたは前記取付フレームに連結される連結部と、前記連結部から延出されるとともに、前記作用部を延出させたバネ部とが備えられ、
前記タインが貫通する状態で前記支持フレームと前記取付フレームとを覆うカバーが備えられ
前記カバーを前記支持フレームに取り付けるバンド状の留め具が、左右方向に隣接する一対のタイン間にそれぞれ備えられ、
前記留め具は、側面視において、前記支持フレームと前記バネ部との間で前記カバーに貫通されていると好適である。
【0017】
本構成によれば、支持フレームまたは取付フレームに対するタインの支持部がカバーによって覆われるので、タインの支持部に藁が絡み付くことが防止され、掃除等のメンテナンス作業を省力化できる。
【0018】
本発明において、前記タインに、前記支持フレームまたは前記取付フレームに連結される連結部と、前記連結部から延出されるとともに、前記作用部を延出させたバネ部とが備えられ、
前記取付フレームが、内部に空間を形成する溝型状の形状とされると共に、前記取付フレームの下部にスリットが形成され、
前記取付フレームに取り付けられるタインは、前記バネ部が前記空間に位置すると共に前記作用部が前記スリットを貫通して下方へ延出する状態で前記連結部が前記空間において前記取付フレームに連結されることで、前記取付フレームに取り付けられていると好適である。
【0019】
本構成によれば、取付フレームに取り付けられるタインは、緩衝作用を有するバネ部を有しているので、作用部から伝達される力をバネ部により好適に吸収できる。そして、溝型状の取付フレームによりタインのバネ部を囲い、取付フレームのスリットからタインの作用部を下方へ延出させた状態で、タインの連結部を取付フレームに連結しているので、取付フレームにより、タインに伝達される力が好適に吸収され、支持フレームに大きな負荷が掛からない構造にできる。
【0020】
本発明において、前記タインに、前記支持フレームまたは前記取付フレームに連結される連結部と、前記連結部から延出されるとともに、前記作用部を延出させたバネ部とが備えられ、
前記支持フレームに直接取り付けられるタインは、前記バネ部が前記支持フレームの下部に隣り合っている状態で前記連結部が前記支持フレームの上部に連結されることで、前記支持フレームに取り付けられていると好適である。
【0021】
本構成によれば、支持フレームに直接取り付けられるタインは、緩衝作用を有するバネ部を有しているので、作用部から伝達される力をバネ部により好適に吸収できる。そして、支持フレームに直接取り付けられるタインは、バネ部が支持フレームの下部に隣り合っている状態で連結部が支持フレームの上部に連結されているので、支持フレームに対する接触面積が広く確保され、支持フレームに安定して支持されるものにできる。
【0022】
本発明において、前記タインに、前記支持フレームまたは前記取付フレームに連結される連結部と、前記連結部から延出されるとともに、前記作用部を延出させたバネ部とが備えられ、
前記複数のタインのうち最も左右方向端部に位置するタインは、前記作用部が前記バネ部よりも左右方向端部側に位置する状態で設けられていると好適である。
【0023】
本構成によれば、回転リール全体における掻き込み作用範囲が左右方向に広くなるので、支持フレームの左右方向端部に対応する箇所の植立穀稈をしっかりと掻き込むことが可能となり、植立穀稈の刈り残しの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】全稈投入型コンバインの全体側面図である。
図2】全稈投入型コンバインの全体平面図である。
図3】刈取部を示す側面図である。
図4】回転リールを示す正面図である。
図5】カバーを外した状態の回転リールを示す正面図である。
図6】タインの周辺を示す側面視の断面図であって、(A)は、図4におけるVI−VI断面図であり、(B)は、図4におけるVI−VI断面図である。
図7】支持アームを示す側面視の断面図である。
図8】支持アームを示す平面図である。
図9図8におけるIX−IX断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一例である実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1図2等に示される普通型コンバインは、稲、麦、大豆等の作物を収穫するように構成されている。普通型コンバインには、左右一対のクローラ式の走行装置11に機体フレーム12が支持された自走式の走行機体が備えられている。そして、この普通型コンバインには、植立穀稈を刈り取る刈取部13、刈取穀稈の全稈を脱穀処理する脱穀装置14、脱穀処理された穀粒を貯留する穀粒貯留部15、操縦者が運転操作を行う運転部16等が備えられている。
【0026】
脱穀装置14は、走行機体の後部側に配置され、刈取部13の後方側、且つ、運転部16の横側部側に位置している。穀粒貯留部15は、走行機体の後部側に配置され、運転部16の後方側、且つ、脱穀装置14の横側部側に位置している。
【0027】
刈取部13は、走行機体の前部側に配置されている。刈取部13は、油圧シリンダからなる刈取昇降シリンダ17の駆動により、刈取作業を行う下降作業位置と、刈取作業を行わない上昇非作業位置との間で、刈取昇降軸心P1周りに上下昇降可能に構成されている。
【0028】
図2に示されるように、刈取部13の刈幅(刈取部13の左右方向の幅)は、左右の走行装置11の横外端部間の距離よりも大きくなっている。つまり、刈取部13による植立穀稈が刈り取られた後に形成される走行装置11の踏みしろが、左右方向に大きく確保されるので、走行装置11による未刈穀稈の踏みつけが生じにくくなっている。
【0029】
図1図3に示されるように、刈取部13には、刈取フレーム18と、植立穀稈を梳き分ける左右一対のデバイダ19と、回転駆動されて植立穀稈を掻き込む回転リール20と、植立穀稈の株元を切断する刈刃装置21と、刈取穀稈を寄せ集める横送りオーガ22と、刈取穀稈を掻き上げ搬送するフィーダ23と、が備えられている。左右のデバイダ19、回転リール20、刈刃装置21、横送りオーガ22は、刈取フレーム18に支持されている。刈取フレーム18の左右中心から左右一方側に偏倚した箇所にフィーダ23の前端部が連結されている。
【0030】
刈取部13による植立穀稈の刈り取り動作は、おおむね次のようになる。まず、走行機体の走行に伴い、左右のデバイダ19により植立穀稈を梳き分ける。そして、左右のデバイダ19の間に位置する植立穀稈を、回転駆動される回転リール20により掻き込みながら、刈刃装置21により植立穀稈の株元を切断する。そして、横送りオーガ22の回転駆動により機体左右中央側へ刈取穀稈を寄せ集めながら後方へ送る。そして、フィーダ23により、横送りオーガ22から供給された刈取穀稈を、脱穀装置14へと掻き上げ搬送する。
【0031】
[回転リールについて]
図1図3に示されるように、回転リール20は、側面視で略六角形の形状を呈している。回転リール20は、刈取フレーム18の上端部に支持される支持アーム24の前端部に支持されている。支持アーム24には、刈取フレーム18に一端が連結される油圧シリンダからなるリール昇降シリンダ25の他端が連結されている。つまり、回転リール20は、リール昇降シリンダ25の駆動によりリール昇降軸心P2周りに揺動可能となっており、刈取フレーム18に対して上下昇降可能に構成されている。
【0032】
図1図3図5に示されるように、回転リール20には、左右方向に沿って延びる駆動軸26と、左右一対のリールフレーム28と、左右方向に沿って延びる複数の支持フレーム29と、下方に向けて延びる複数のタイン30と、中間フレーム31と、姿勢保持機構32と、が備えられている。
【0033】
図1図3図5に示されるように、駆動軸26は、左右両端部が、夫々、左右の支持アーム24の前端部に回動自在に支持され、ベルト式の動力伝達機構33から伝達された動力により回転駆動されるように構成されている。左右のリールフレーム28は、夫々、六角形状の形状を呈している。左右のリールフレーム28の6つの頂部間に、夫々、支持フレーム29が左右方向に亘って掛け渡されている。各支持フレーム29は、左右のリールフレーム28に回動自在に支持されている。中間フレーム31は、左右のリールフレーム28の間に配置され、左右のリールフレーム28と略同様の構造とされている。中間フレーム31は、駆動軸26の左右中間部分に連結され、各支持フレーム29の左右中間部分を挿通支持している。複数のタイン30は、支持フレーム29毎に設けられ、支持フレーム29の左右方向に沿って並ぶ状態で支持されている。
【0034】
図3図5に示されるように、姿勢保持機構32は、左右のリールフレーム28のいずれか一方の近傍に配置されている。姿勢保持機構32には、略六角形状の形状を呈した補助回転フレーム34と、補助回転フレーム34の6つの頂部毎に設けられ、補助回転フレーム34の各頂部と各支持フレーム29とを夫々連結するリンク35と、が備えられている。左右のリールフレーム28が、横向きの第一横軸心X1周りに回転駆動される際に、補助回転フレーム34が、第一横軸心X1とは位置ずれした横向きの第二横軸心X2周りに回転駆動される。これにより、タイン30が下向き姿勢を保ったまま、第一横軸心X1周りに回転移動するようになっている。
【0035】
[支持フレームについて]
図3図5に示されるように、複数の支持フレーム29には、第一フレーム29Aと、第二フレーム29Bと、が含まれている。第一フレーム29Aと第二フレーム29Bとは、夫々、断面が円形状のパイプフレームにより構成されている。第一フレーム29Aと第二フレーム29Bとは、回転リール20の回転駆動方向に交互に並ぶように配置されている。
【0036】
図4図5に示されるように、第一フレーム29Aと第二フレーム29Bとは、タイン30の並び間隔が互いに異なっている。具体的には、第一フレーム29Aにおけるタイン30の並び間隔と、第二フレーム29Bにおけるタイン30の並び間隔とは、半ピッチずれた関係となっている。説明を加えると、左右両端部に位置するタイン30を除いて、第一フレーム29Aにおけるタイン30の掻き込み軌跡と、第二フレーム29Bにおけるタイン30の掻き込み軌跡とが、左右方向に略等しい間隔で並ぶようになっている。これにより、回転リール20の回転駆動時に、第一フレーム29Aに支持されるタイン30と、第二フレーム29Bに支持されるタイン30とにより、刈取部13の刈幅内に位置する植立穀稈を万遍なく掻き込むことができる。
【0037】
[タインについて]
図4図6に示されるように、支持フレーム29に支持される複数のタイン30には、支持フレーム29の左右方向端部側に位置し、支持フレーム29に連結された取付フレーム36に取り付けられる第一タイン30A(「タイン」の一例)と、支持フレーム29の左右方向中央部側に位置し、支持フレーム29に直接取り付けられる第二タイン30B(「タイン」の一例)と、が含まれている。この実施形態では、支持フレーム29に支持される複数のタイン30として、支持フレーム29の左右方向端部側に位置し、支持フレーム29に連結された取付フレーム36に取り付けられるタイン30と、支持フレーム29の左右方向中央部側に位置し、支持フレーム29に直接取り付けられるタイン30のみが備えられている
【0038】
図4図5に示されるように、支持フレーム29の左端部側の2つの第一タイン30A、及び、支持フレーム29の右端部側の2つの第一タイン30Aは、いずれも取付フレーム36に取り付けられている。つまり、複数のタイン30のうち最も左右方向端部に位置する第一タイン30Aが、取付フレーム36に取り付けられている。
【0039】
図4図5図6(A)に示されるように、取付フレーム36は、支持フレーム29における左端部、及び、右端部の夫々に配置されている。取付フレーム36は、支持フレーム29の下部に支持されている。取付フレーム36は、側面視で略U字形状の溝型状の部材により構成されている。取付フレーム36には、縦向きの縦部37と、縦部37の上端部に連設される横向きの上フランジ部38と、縦部37の下端部に連設される横向きの下フランジ部39と、が備えられている。上フランジ部38の上端部は、支持フレーム29の下端部に溶接等により固定されている。取付フレーム36の下端部には、縦部37の下端部から下フランジ部39の前端部に亘るスリット40が形成されている。取付フレーム36は、縦部37、上フランジ部38、下フランジ部39により囲まれる空間Sを有している。すなわち、取付フレーム36は、内部に空間Sを形成する溝型状の形状とされると共に、取付フレーム36の下部にスリット40が形成されているものとされている。
【0040】
図5図6(A)に示されるように、取付フレーム36に取り付けられるタイン30である第一タイン30Aには、取付フレーム36の縦部37に連結される第一連結部41(「連結部」の一例)と、第一連結部41から延出される第一バネ部42(「バネ部」の一例)と、第一バネ部42から延出され、植立穀稈に掻き込み作用する第一作用部43(「作用部」の一例)と、が備えられている。第一バネ部42は、第一連結部41と第一作用部43との間に備えられる2回巻の弦巻状のねじりバネとされ、回転リール20の回転駆動に伴う植立穀稈や地面等からの掻込み反力による第一作用部43の曲げ変位を、縮径方向(または拡径方向)の弾性変形によって吸収できるように構成されている。第一作用部43は、第一バネ部42から下方に延出されてから、後方に向けて屈曲し、斜め後ろ下がりに延出される形状となっている。
【0041】
取付フレーム36に取り付けられるタイン30である第一タイン30Aは、第一バネ部42が空間Sに位置すると共に第一作用部43がスリット40を貫通して下方へ延出する状態で第一連結部41が空間Sにおいて取付フレーム36に連結されることで、取付フレーム36に取り付けられている。
【0042】
図6(A)に示されるように、第一タイン30Aの第一連結部41は、ボルトとナットの組み合わせ等からなる第一連結具44により、取付フレーム36に取り付けられており、第一連結部41と取付フレーム36の縦部37とが面接触した状態となっている。
【0043】
図4図5図6(B)に示されるように、支持フレーム29に支持される複数のタイン30のうち最も左右方向端部に位置する第一タイン30Aは、第一作用部43が第一バネ部42よりも左右方向端部側に位置する状態で設けられている。第一タイン30Aのうち左右一方側の端部に位置する第一タイン30Aは、他の第一タイン30Aとは左右対称の構造となっている。これにより、この左右方向端部に位置する第一タイン30Aの第一作用部43が、デバイダ19側に近付いて配置されるものとなる。その結果、回転リール20による掻き込み作用範囲が左右方向に広くなり、倒伏穀稈の掻き起こし漏れが少なくなり、刈取部13の刈残しの発生を好適に抑止できる。
【0044】
図6(A)に示されるように、第二タイン30Bには、L字状に屈曲形成されて先端が環状になった第二連結部45(「連結部」の一例)と、第二連結部45から延出される弦巻状の第二バネ部46(「バネ部」の一例)と、第二バネ部46から延出され、植立穀稈に掻き込み作用する第二作用部47(「作用部」の一例)と、が備えられている。第二バネ部46は、第二連結部45と第二作用部47との間に備えられる2回巻の弦巻状のねじりバネとされ、回転リール20の回転駆動に伴う植立穀稈や地面等からの掻込み反力による第二作用部47の曲げ変位を、縮径方向(または拡径方向)の弾性変形によって吸収できるように構成されている。第二作用部47は、第二バネ部46から下方に延出されてから、後方に向けて屈曲し、斜め後ろ下がりに延出される形状となっている。
【0045】
支持フレーム29には、第二タイン30Bを取り付けるための貫通孔部48が形成されている。第二タイン30Bの第二連結部45は、支持フレーム29の貫通孔部48に、ボルトとナットの組み合わせ等からなる第二連結具49の締結により連結されている。このように、第二タイン30Bは、支持フレーム29に直接取り付けられている。また、支持フレーム29に直接取り付けられる第二タイン30Bは、第二バネ部46が支持フレーム29の下部に隣り合っている状態で第二連結部45が支持フレーム29の上部に連結されることで、支持フレーム29に取り付けられている。
【0046】
図6(A)、図6(B)に示されるように、取付フレーム36に取り付けられる第一タイン30Aのうち取付フレーム36よりも下方部分の形状と、支持フレーム29に直接取り付けられる第二タイン30Bのうち取付フレーム36に対応する部分よりも下方部分の形状とは、側面視で同一形状とされている。
【0047】
[カバーについて]
図4図6に示されるように、タイン30が貫通する状態で支持フレーム29及び取付フレーム36を外側から覆うカバー50が備えられている。カバー50は、可撓性を有する板状部材により構成されている。カバー50は、第一タイン30Aの第一作用部43及び第二タイン30Bの第二作用部47を夫々貫通させてから、支持フレーム29の上側において端部を重ね、左右方向に所定間隔毎に配置される複数のバンド状の留め具51を外側から巻き付けることにより、支持フレーム29に取り付けられている。カバー50は、第一タイン30Aの第一バネ部42、第二タイン30Bの第二バネ部46をも外側から覆っている。これにより、第一バネ部42や第二バネ部46に藁の絡み付きが生じ難くなっている。
【0048】
このように、支持フレーム29に支持される複数のタイン30のうち左右方向端部側に位置する第一タイン30Aを取付フレーム36を介して支持フレーム29に支持し、支持フレーム29に支持される複数のタイン30のうち左右中央側に位置する第二タイン30Bを支持フレーム29に直接支持するようにしている。これにより、回転リール20が傾いて、第一タイン30Aが地面に接触したとしても、取付フレーム36による補強がなされているので、支持フレーム29の左右方向端部側に大きな負荷が掛かることがなく、支持フレーム29の耐久性を良好なものにでき、しかも、第二タイン30Bを支持フレーム29に直接支持する構造としているので、回転リール20全体の構成がそれ程複雑化しない簡素な構造にできる。
【0049】
[支持アームの具体構造について]
図3に示されるように、支持アーム24は、全体として、刈取フレーム18の後部側における上端部から真っ直ぐ前方に延びてから、前後中間部において下方に向けて「く」の字状(ドッグレッグ状)に屈曲された前下がりの形状となっている。支持アーム24をこのように前下がりの形状としているので、支持アーム24の前端部に支持される回転リール20の位置を低くして、タイン30の回転軌跡Tを、刈刃装置21の位置よりも所定高さHだけ下方に下げることが可能な構造となっている。これにより、回転リール20のタイン30により、倒伏穀稈を効率的に掻き起こし、刈刃装置21により刈ることができる。
【0050】
図3図7図9に示されるように、支持アーム24には、角パイプからなる第一アーム部材52と、角パイプからなる第二アーム部材53と、折り曲げ形状のチャンネル材からなる接続部材54と、平板からなる第一補強部材55と、平板からなる第二補強部材56と、屈曲された平板からなる第三補強部材57と、平板から鳴る第四補強部材58と、が備えられている。第一アーム部材52は、刈取フレーム18側に連結されている。第二アーム部材53は、回転リール20側に連結されている。
【0051】
接続部材54の内部に、第一アーム部材52の前端部と第二アーム部材53の後端部とを突き合わせた状態で、接続部材54と第二アーム部材53と第二アーム部材53とが互いに溶接固定されている。第一補強部材55は、第一アーム部材52と第二アーム部材53の接続箇所の下方に位置した状態で、第一アーム部材52と第二アーム部材53とに溶接固定されている。第二補強部材56は、第一アーム部材52の略全長に亘る長さとされ、第一アーム部材52の下方に位置する状態で、第一アーム部材52の下面と第二アーム部材53の下面とに溶接固定されている。第三補強部材57は、第一アーム部材52の下方に位置し、第二補強部材56と横並びに位置する状態で、第一アーム部材52の下面に溶接固定されている。第四補強部材58は、第一アーム部材52の下方において、第二補強部材56と第三補強部材57の間に位置する状態で、第一アーム部材52の下面、第二補強部材56の側面、第三補強部材57の側面に溶接固定されている。第二補強部材56と第三補強部材57とにはピン孔59が形成されている。このピン孔59に連結ピン60を挿入することにより、リール昇降シリンダ25の他端が支持アーム24に回動自在に連結されている。
【0052】
このような前下がりに屈曲する支持アーム24を、角パイプ、チャンネル材、平板等の汎用部材の組み合わせのみで製作可能であるので、製造コストを低く抑えることができる。
【0053】
[別実施形態]
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態について説明する。以下の各別実施形態は、説明している事項以外は上記実施形態と同様である。また、上記実施形態及び以下の各別実施形態は、矛盾が生じない限り適宜組み合わせることができる。尚、本発明の範囲は、上記実施形態及び以下の各別実施形態に限定されるものではない。
【0054】
(1)上記実施形態では、支持フレーム29に支持される複数のタイン30として、支持フレーム29の左右方向端部側に位置し、支持フレーム29に連結された取付フレーム36に取り付けられるタイン30と、支持フレーム29の左右方向中央部側に位置し、支持フレーム29に直接取り付けられるタイン30のみが備えられているものが一例に示されているが、これに限られない。支持フレーム29に支持される複数のタイン30として、支持フレーム29の左右方向端部側に位置し、支持フレーム29に連結された取付フレーム36に取り付けられるタイン30と、支持フレーム29の左右方向中央部側に位置し、支持フレーム29に直接取り付けられるタイン30以外の他のタインが備えられていてもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では、支持フレーム29の左端部側及び右端部側において、夫々、2つのタイン30を、取付フレーム36に取り付けているものが例示されているが、これに限られない。例えば、支持フレーム29の左端部側または右端部側の夫々において取付フレーム36に取り付けられるタイン30の数は、1つ、または、3つ以上であってもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、支持フレーム29の左端部側のタイン30、及び、支持フレーム29の右端部側のタイン30の両方が、取付フレーム36に取り付けられているものが例示されているが、これに限られない。例えば、支持フレーム29の左端部側のタイン30、及び、支持フレーム29の右端部側のタイン30のいずれか一方のみが、取付フレーム36に取り付けられていてもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では、複数のタイン30のうち最も左右方向端部に位置するタイン30が、取付フレーム36に取り付けられているものが例示されているが、これに限られない。例えば、支持フレーム29の左右方向端部側において、取付フレーム36に取り付けられるタイン30の左右外側に、さらに支持フレーム29に直接取り付けられる他のタインが備えられていてもよい。
【0058】
(5)上記実施形態では、取付フレーム36に取り付けられるタイン30が、取付フレーム36と面接触した状態で取付フレーム36に取り付けられているものが例示されているが、これに限られない。例えば、取付フレーム36に取り付けられるタイン30が、取付フレーム36と面接触ではなく、点接触した状態で取付フレーム36に取り付けられていてもよい。
【0059】
(6)上記実施形態では、取付フレーム36に取り付けられるタイン30の第一連結部41が、取付フレーム36の縦部37に連結されるものが例示されているが、これに限られない。例えば、タイン30の第一連結部41が、取付フレーム36の上フランジ部38や下フランジ部39に連結されていてもよい。
【0060】
(7)上記実施形態では、側面視で略U字形状の溝型状の取付フレーム36が例示されているが、これに限られない。例えば、側面視でI字状の取付フレームや、側面視で逆L字型の取付フレーム、側面視で矩形状の取付フレームであってもよい。
【0061】
(8)上記実施形態では、取付フレーム36に取り付けられるタイン30のうち取付フレーム36よりも下方部分の形状と、支持フレーム29に直接取り付けられるタイン30のうち取付フレーム36に対応する部分よりも下方部分の形状とが、側面視で同一形状とされているものが例示されているが、これに限られない。例えば、取付フレーム36に取り付けられるタイン30のうち取付フレーム36よりも下方部分の形状と、支持フレーム29に直接取り付けられるタイン30のうち取付フレーム36に対応する部分よりも下方部分の形状とが、側面視で異なる形状とされていてもよい。
【0062】
(9)上記実施形態では、タイン30が貫通する状態で支持フレーム29と取付フレーム36とを覆うカバー50が備えられているものが例示されているが、このようなカバー50が備えられていなくてもよい。
【0063】
(10)上記実施形態では、支持フレーム29に直接取り付けられるタイン30は、第二バネ部46が支持フレーム29の下部に隣り合っている状態で第二連結部45が支持フレーム29の上部に連結されることで、支持フレーム29に取り付けられているものが例示されているが、これに限られない。第二バネ部46が第二連結部45と離間した位置に備えられる他のタインや、第二バネ部46が備えられていない他のタインであってもよい。
【0064】
(11)上記実施形態では、複数のタイン30のうち最も左右方向端部に位置するタイン30として、第二作用部47が第二バネ部46よりも左右方向端部側に位置する状態で設けられているものが例示されているが、これに限られない。複数のタイン30のうち最も左右方向端部に位置するタインは、第二バネ部46が第二作用部47よりも左右方向端部側に位置する状態で設けられていてもよい。
【0065】
(12)上記実施形態では、側面視で略六角形状の回転リール20が例示されているが、これに限られず、側面視で略四角形、略五角形等の多角形の形状の他の回転リールであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、回転駆動されて植立穀稈を掻き込む回転リールが備えられている普通型コンバインにおいて利用できる。
【符号の説明】
【0067】
20 :回転リール
28 :リールフレーム
29 :支持フレーム
30 :タイン
30A :第一タイン(タイン)
30B :第二タイン(タイン)
36 :取付フレーム
40 :スリット
41 :第一連結部(連結部)
42 :第一バネ部(バネ部)
43 :第一作用部(作用部)
45 :第二連結部(連結部)
46 :第二バネ部(バネ部)
47 :第二作用部(作用部)
50 :カバー
51 :留め具
S :空間
図1
図2
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図5
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図9