特許第6265881号(P6265881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265881
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
   B68G 7/05 20060101AFI20180115BHJP
   B60N 2/60 20060101ALI20180115BHJP
   B68G 7/06 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B68G7/05 B
   B60N2/60
   B68G7/06 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-239357(P2014-239357)
(22)【出願日】2014年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-97276(P2016-97276A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(72)【発明者】
【氏名】長澤 拓
(72)【発明者】
【氏名】上村 知行
(72)【発明者】
【氏名】金子 和之
(72)【発明者】
【氏名】黒部 亮
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 実開平2−40245(JP,U)
【文献】 特開2002−248033(JP,A)
【文献】 特開平5−7672(JP,A)
【文献】 特開2002−65318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 7/05
B60N 2/60
B68G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部の表面カバーと周囲カバーとを着脱自在な第1締結部を介して連結してなるシートにおいて、
前記表面カバーの端末と、前記シート部を形成するクッション材の前記表面カバーの端末に対向する箇所とに、傾斜パイルを設け、前記クッション材の傾斜パイルは着座者の荷重が生じる方向とは反対方向に傾斜させ、前記表面カバーの端末の傾斜パイルは着座者の荷重が生じる方向に傾斜させ、前記表面カバーに傾斜パイルを、前記クッション材の傾斜パイルに係合したことを特徴とするシート。
【請求項2】
前記シート部はシートクッションからなり、前記表面カバーと前記周囲カバーとは、前記シートクッションの左右側面と前面とに前記第1締結部を介して着脱可能に連結し、前記表面カバーの後端末と前記シートクッションを形成するクッション材とに係合可能に傾斜パイルを設けたことを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記シート部はシートバックからなり、前記表面カバーと前記周囲カバーとは、前記シートバックの左右側面と上面とに前記第1締結部を介して着脱可能に連結し、前記表面カバーの下端末と前記シートバックを形成するクッション材とに係合可能に傾斜パイルを設けたことを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項4】
前記表面カバーの端末に保持片を取り付け、この保持片に傾斜パイルを形成し、前記表面カバーの傾斜パイルを、前記クッション材の傾斜パイルに係合した請求項1記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面カバーを周囲カバーに対して着脱自在にしたシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、実公平4−39747号公報がある。この公報に記載されたシートは、座席形状にモールド加工した発泡体クッション材と、このクッション材を被覆し且つクッション材側に固定された袋状の被覆体と、この被覆体の前面側を被覆する第1カバーと、被覆体の後側を被覆する第2カバーと、第1カバーと第2カバーとを連結するスライドファスナと、を備えている。そして、スライドファスナをシートバックの側面に配置させることで、着座した際の異物感を無くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平4−39747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この様なシートでは、シートを構成するシートクッションを被覆する表面カバーの後端末と、シートを構成するシートバックを被覆する表面カバーの下端末とは、シートバックとシートクッションとの合わせ部に位置しており、その箇所において、表面カバーと周囲カバーとを連結するには、シートバックを倒して連結しており、手間がかかっていた。
【0005】
本発明は、表面カバーの端末を容易に連結することができ、強固な連結とすることができるシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シート部の表面カバーと周囲カバーとを着脱自在な第1締結部を介して連結してなるシートにおいて、
前記表面カバーの端末と、前記シート部を形成するクッション材の前記表面カバーの端末に対向する箇所とに、傾斜パイルを設け、前記クッション材の傾斜パイルは着座者の荷重が生じる方向とは反対方向に傾斜させ、前記表面カバーの端末の傾斜パイルは着座者の荷重が生じる方向に傾斜させ、
前記表面カバーの傾斜パイルを、前記クッション材の傾斜パイルに係合したことを特徴とする。
【0007】
このシートでは、表面カバーの傾斜パイルが着座者の荷重が生じる方向に傾斜しているので、表面カバーの端末を前記シート部を形成するクッション材の前記表面カバーの端末に対向する箇所に差し込む際には、差し込みが容易に、表面カバーの端末がシート部を形成するクッション材の前記表面カバーの端末に対向する箇所に係合することができ、その後、表面カバーに着座者の荷重が生じても、クッション材の傾斜パイルが着座者の荷重が生じる方向とは反対方向に傾斜しているので、表面カバーの傾斜パイルはシート部を形成するクッション材の前記表面カバーの端末に対向する箇所に設けた傾斜パイルから外れることもない。
【0008】
前記シート部はシートクッションからなり、前記表面カバーと前記周囲カバーとは、前記シートクッションの左右側面と前面とに前記第1締結部を介して着脱可能に連結し、前記表面カバーの後端末と前記シートクッションを形成するクッション材とに係合可能に傾斜パイルを設けることが好適で、また、前記シート部はシートバックからなり、前記表面カバーと前記周囲カバーとは、前記シートバックの左右側面と上面とに前記第1締結部を介して着脱可能に連結し、前記表面カバーの下端末と前記シートバックを形成するクッション材とに係合可能に傾斜パイルを設けることが好適である。
【0009】
前記表面カバーの端末に保持片を取り付け、この保持片に傾斜パイルを形成し、前記表面カバーの傾斜パイルを、前記クッション材の傾斜パイルに係合する。保持片に傾斜パイルを形成すると、表面カバーの端末の保持片を差し込むことにより、表面カバーの端末と、前記シート部を形成するクッション材の前記表面カバーの端末に対向する箇所とを係合でき、特に、シートクッションの表面カバーにあっては、保持片の自重により係合状態が強固となり、着座者からの荷重が生じても表面カバーがクッション材から外れがたくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面カバーを組み付ける際、表面カバーの端末を容易に連結することができ、しかも、連結を強固にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るシートの第1の実施形態を示す斜視図である。
図2図1のII−II線に沿う断面図である。
図3図2のA部分の拡大図である。
図4図2におけるシートバック部分の断面図である。
図5】シートの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るシートの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示されるように、車両用シート1は、フロアパネル上で前後に移動自在なシートクッション(シート部)SCと、シートクッションSCに対してリクライニング可能なシートバック(シート部)SBとを備えている。シートクッションSC及びシートバックSBは、発泡体からなるクッション材2の表面が表皮3で覆われている。そして、表皮3は、表面カバー4と周囲カバー5とで構成されている。表面カバー4、周囲カバー5は、シートクッションSC及びシートバックSBのクッション材2をそれぞれ被覆するように別体から成る。
【0014】
表面カバー4は、シートクッションSCのクッション材2を被覆するクッション用表面カバー41と、シートバックSBのクッション材2を被覆するバック用表面カバー42とで、周囲カバー5は、シートクッションSCのクッション材2を被覆するクッション用周囲カバー51と、シートバックSBのクッション材2を被覆するバック用周囲カバー52から形成されている。
【0015】
このシート1において、シートクッションSC及びシートバックSBには、ライン状の吊り込み部A1乃至A6が設けられている。この吊り込み部A1乃至A6は、シート1の外観を形成すると同時に表皮3の弛みやズレを防止している。
【0016】
シートバックSBにおける吊り込み部A1、A2には、クッション材2とバック用表面カバー42とを着脱自在に連結する第2締結部60が設けられている。着脱自在な第2締結部60は、クッション材2側で吊り込み部A1に沿って上下方向に延在する凹部6内でクッション材2に固定された第3締結半部61と、バック用表面カバー42に設けられて凹部6内に格納されると共に、第3締結半部61に着脱自在に連結される第4締結半部63と、を有する。凹部6は、メインクッション部10とサイドクッション部11との境界部分に沿って所定の深さをもって形成されている。
なお、シートバックSBにおける吊り込み部A3は、クッション材2の左右方向に凹部6が延在し、吊り込み部A1と同様な構成である。また、シートクッションSCにおける吊り込み部A4乃至A6もシートバックSBにおける吊り込み部A1乃至A3と同様な構成である。
【0017】
シートバックSBのクッション材2は、乗員の背中を後方から支持するためのメインクッション部10と、乗員の背中を横から保持するためのサイドクッション部11とを有している。
【0018】
これに対して、バック用表面カバー42は、クッション材2のメインクッション部10上に載置される主面部20と、サイドクッション部11上に載置されるサイド面部21と、によって形成されている。表皮3の主面部20とサイド面部21とは縫合部24によって接合されている。そして、バック用表面カバー42とバック用周囲カバー52とは、サイドクッション部11の外側面11aで第1締結部30によって連結されている。
【0019】
着脱自在な第1締結部30は、バック用表面カバー42の周縁に沿って延在するように設けられた第1締結半部31と、バック用周囲カバー52の周縁に沿って延在するように設けられて、第1締結半部31に着脱自在に連結される第2締結半部32と、を有している。この第1締結部30は線ファスナとして構成され、第1締結半部31のエレメントと呼ばれる歯31aが第2締結半部32のエレメントと呼ばれる歯32aに噛み合うことによりバック用表面カバー42がバック用周囲カバー52に連結する。この第1締結部30は、バック用表面カバー42とバック用周囲カバー52の左右側面と上面、クッション用表面カバー41とクッション用周囲カバー51の左右側面と前面に形成され、バック用表面カバー42とバック用周囲カバー52の下面とクッション用表面カバー41とクッション用周囲カバー51の後面とには形成されていない。
【0020】
バック用表面カバー42の下端末42aとシートバックSBのクッション材2における下面21とには、それぞれ第1傾斜パイル70、第2傾斜パイル80が互いに対向すべく設けられている。第1傾斜パイル70、第2傾斜パイル80は軟質の線状から成る合成樹脂材、例えばプラスチック又は、繊維を起毛状態としたものであれば良い。
バック用表面カバー42の第1傾斜パイル70は、バック用表面カバー42の下端末42aに、左右方向に沿って設けられ、その傾斜は前方向に傾斜している。第1傾斜パイル70は、バック用表面カバー42の下端末42aに直接接合しても良いが、プラスチック板から成る保持片73に第1傾斜パイル70を接合しても良い。保持片73に接合する際は、この保持片73はバック用表面カバー42の下端末42aに縫合することにより設けても良い。
【0021】
バック用表面カバー42の下端末42aには第1傾斜パイル70が設けられているが、シートバックとSBとシートクッションSCとの間に、バック用表面カバー42の下端末42aを差し込みやすくするため、バック用表面カバー42の下端末42aの両端には中央方向に傾斜する傾斜部42bが形成されている。
そして、シートバックSBのクッション材2における下面21、バック用周囲カバー52の端末52aには、第2傾斜パイル80が設けられる。この第2傾斜パイル80は、後方向に傾斜しており、バック用周囲カバー52の端末52aに固定した基板22に接合しても良い。
【0022】
バック用表面カバー42を連結する際は、吊り込み部A1乃至A3の第2締結部60、第1締結部30を締結する。そして、バック用表面カバー42の下端末42aをシートクッションSCとシートバックSBとの間に差し込むと、バック用表面カバー42の下端末42aとシートバックSBのクッション材2における下面21とには、それぞれ第1傾斜パイル70、第2傾斜パイル80が互いに対向すべく設けられているので、バック用表面カバー42の第1傾斜パイル70がバック用周囲カバー52の第2傾斜パイル80に係合する。バック用表面カバー42の第1傾斜パイル70は、その傾斜が前方向に傾斜し、バック用周囲カバー52の第2傾斜パイル80が後方向に傾斜しているので、差し込みやすくなる。
【0023】
バック用表面カバー42の第1傾斜パイル70を差し込んだ後は、バック用表面カバー42に前方向の荷重が生じても、バック用周囲カバー52の後方向に傾斜する第2傾斜パイル80に、バック用表面カバー42の第1傾斜パイル70が係合しているので、外れることがなく、バック用表面カバー42の下端末42aを確実にバック用周囲カバー52の端末52aに連結することができる。
【0024】
シートクッションSCの場合につき説明するが、シートバックSBと構成はほぼ同様なので、要部につき説明する。
【0025】
クッション用表面カバー41の後端末41aとシートクッションSCのクッション材2における後端面2aとには、それぞれ第1傾斜パイル70、第2傾斜パイル80が互いに対向すべく設けられている。
クッション用表面カバー41の第1傾斜パイル70は、クッション用表面カバー41の後端末41aに、左右方向に沿って設けられ、その傾斜は前方向に傾斜している。第1傾斜パイル70は、クッション用表面カバー41の後端末41aに直接接合しても良いが、プラスチック板から成る保持片73に第1傾斜パイル70を接合しても良い。保持片73に接合する際は、この保持片73はクッション用表面カバー41の後端末41aに縫合することにより設けても良い。
【0026】
クッション用表面カバー41の後端末41aには第1傾斜パイル70が設けられているが、シートバックとSBとシートクッションSCとの間に、クッション用表面カバー41の後端末41aを差し込みやすくするため、クッション用表面カバー41の後端末41aの両端には中央方向に傾斜する傾斜部43が形成されている。
そして、シートクッションSCのクッション材2における上面22、クッション用周囲カバー51の端末51aには、第2傾斜パイル80が設けられる。この第2傾斜パイル80は、後方向に傾斜しており、クッション用周囲カバー51の端末51aに固定した基板22に接合している。
【0027】
クッション用表面カバー41を連結する際は、吊り込み部A4乃至A6の第2締結部60、第1締結部30を締結する。そして、クッション用表面カバー41の後端末41aをシートクッションSCとシートバックSBとの間に差し込むと、クッション用表面カバー41の後端末41aとシートクッションSCのクッション材2における後端面2aとには、それぞれ第1傾斜パイル70、第2傾斜パイル80が互いに対向すべく設けられているので、クッション用表面カバー41の第1傾斜パイル70がクッション用周囲カバー51の第2傾斜パイル80に係合する。クッション用表面カバー41の第1傾斜パイル70は、その傾斜が前方向に傾斜し、クッション用周囲カバー51の第2傾斜パイル80が後方向に傾斜しているので、差し込みやすくなる。
【0028】
クッション用表面カバー41の第1傾斜パイル70を差し込んだ後は、クッション用表面カバー41に前方向の荷重が生じても、クッション用周囲カバー51の後方向に傾斜する第2傾斜パイル80に、クッション用表面カバー41の第1傾斜パイル70が係合しているので、外れることがなく、クッション用表面カバー41の後端末41aを確実にクッション用周囲カバー51の端末51aに連結することができる。
【0029】
また、クッション用表面カバー41の後端末41aには、プラスチック板から成る保持片73が設けられているので、クッション用表面カバー41の後端末41aを差し込む際、保持片73を差し込めば良く、差し込み作業がやりやすくなる。クッション用表面カバー41の後端末41aはその左右に傾斜部43が形成されているので、その左右箇所が引っ掛かることなく差し込むことができる。
【0030】
本発明に係るシートは、自動車用シート、航空機のシート、電車、バス、旅客船のシートに用いることができる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施例に限るものではないことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1…シート 2…クッション材 3…表皮 4…表面カバー 5…周囲カバー 30…第1締結部 31…第1締結半部 32…第2締結半部 60…第2締結部 A1〜A6…吊り込み部 SB…シートバック(シート部) SC…シートクッション(シート部) 70・・・第1傾斜パイル 80・・・第2傾斜パイル
図1
図2
図3
図4
図5