特許第6265898号(P6265898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6265898収差補正光学ユニット及びレーザー顕微鏡
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265898
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】収差補正光学ユニット及びレーザー顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20180115BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   G02F1/13 505
   G02B21/00
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-530574(P2014-530574)
(86)(22)【出願日】2013年8月16日
(86)【国際出願番号】JP2013072028
(87)【国際公開番号】WO2014027694
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2016年4月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-180420(P2012-180420)
(32)【優先日】2012年8月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】松本 健志
【審査官】 岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−085801(JP,A)
【文献】 特開2007−065151(JP,A)
【文献】 特開2002−304762(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0013433(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13,
1/13363,
1/1347,
G02B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系により生じる波面収差を補正する収差補正光学ユニットであって、
光学軸を有し、前記光学系を通る光束のうちの前記光学軸と平行な偏光成分について、前記光学系の波面収差の所定の成分を補正する第1の位相変調素子と、
光学軸を有し、前記光束のうちの前記光学軸と平行な偏光成分について、前記波面収差の前記所定の成分を補正する第2の位相変調素子と、
前記第1の位相変調素子と前記第2の位相変調素子との間に配置され、光学軸を有し、前記光束の偏光特性を変更可能な可変波長板と、
を有し、
前記可変波長板の光学軸が前記第1の位相変調素子の光学軸、または前記第2の位相変調素子の光学軸と所定の角度をなすように前記可変波長板が配置されることを特徴とする収差補正光学ユニット。
【請求項2】
前記第1の位相変調素子の光学軸と前記第2の位相変調素子の光学軸は、平行となるか、または互いに直交するように、前記第1の位相変調素子及び前記第2の位相変調素子は配置され、前記所定の角度が45°である請求項1に記載の収差補正光学ユニット。
【請求項3】
前記可変波長板は、印加される電圧に応じて前記光束に与える位相変調量を変化させる請求項1又は2に記載の収差補正光学ユニット。
【請求項4】
前記第1の位相変調素子の光学軸と前記第2の位相変調素子の光学軸が平行となるように、前記第1の位相変調素子及び前記第2の位相変調素子は配置され、前記可変波長板は、印加される電圧の変化に応じて、1/2波長板として機能するか、前記光束の波長の整数倍に相当する位相差を互いに直交する二つの直線偏光に与える波長板として機能するかが切り替えられる、請求項3に記載の収差補正光学ユニット。
【請求項5】
前記第1の位相変調素子の光学軸と前記第2の位相変調素子の光学軸が互いに直交するように、前記第1の位相変調素子及び前記第2の位相変調素子は配置され、前記可変波長板は、印加される電圧の変化に応じて、1/2波長板として機能するか、前記光束の波長の整数倍に相当する位相差を互いに直交する二つの直線偏光に与える波長板として機能するかが切り替えられる、請求項3に記載の収差補正光学ユニット。
【請求項6】
前記光学系は対物レンズを有し、コヒーレント光源と前記対物レンズの間に配置される、請求項1〜5の何れか一項に記載の収差補正光学ユニット。
【請求項7】
前記第1の位相変調素子と、前記第2の位相変調素子と、前記可変波長板とは、それぞれ液晶素子であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の収差補正光学ユニット。
【請求項8】
コヒーレント光源からの光束で試料を走査する第1の光学系と、
前記光束を前記試料に集光する対物レンズと、
検出器と、
前記光束が前記試料に入射することにより、前記試料から発した前記試料の情報を含んだ第2の光束を前記検出器に伝送する第2の光学系と、
前記コヒーレント光源と前記対物レンズの間に配置された、請求項1〜7の何れか一項に記載の収差補正光学ユニットと、
を有することを特徴とするレーザー顕微鏡。
【請求項9】
観察モードによって、前記可変波長板に印加する電圧を調節することで、前記可変波長板が前記光束に与える位相変調量を制御する制御回路をさらに有する、請求項8に記載のレーザー顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系の収差補正技術に関し、特にレーザー顕微鏡において、試料または観察条件により発生する収差を観察モードまたは顕微鏡の仕様に合わせて制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー顕微鏡は、レーザー光を対物レンズにより試料上に集光し、レーザー光を光軸と垂直な面に沿った、互いに直交する二方向(X方向、Y方向)に沿って試料をスキャンすることにより、試料の平面画像を取得する。一方、対物レンズと試料間の光軸方向(Z方向)の間隔を変えることで、Z方向の複数の断層像が得られ(Zスタック)、これにより、レーザー顕微鏡は試料の3D画像を構築している。
【0003】
ここで、レーザー顕微鏡の主流を成す共焦点レーザー顕微鏡は、試料より発生する反射・散乱光または蛍光を光学系で伝送し、試料上の集光点と光学的に共役な位置に配置したピンホールを透過した光束を検出器で受光している。ピンホールを配置することにより、試料上の集光点以外から発生する光をフィルタリングできるので、共焦点レーザー顕微鏡は、SN比の良好な画像を取得することができる。
【0004】
また、多光子顕微鏡は、レーザー光を開口数NAの大きな対物レンズで集光することで、焦点面の光子密度を上げる。これにより、蛍光分子が複数(N個)の光子を同時に吸収し、通常のN倍のエネルギーで蛍光分子が励起される。例えば、2光子顕微鏡の場合、2つの光子が同時に蛍光分子に当たり、通常の1/2の波長の蛍光が観察される。2光子が同時に蛍光分子に当たる確率は非常に低く、焦点以外の領域からの発光は生じない。したがって、上述のピンホールが無くても、多光子顕微鏡は、焦点の試料情報のみを取得することができる。
【0005】
生体試料を観察する場合、培養液に浸した状態でカバーガラス越しに観察することが多い。また一般に、対物レンズは、所定の厚さのカバーガラス直下で結像性能が最も高くなるように設計されているので、観察面までの光路長が変化すると対物レンズによる収差が発生する。生体試料内部を観察する場合、培養液または生体組織を透過した奥行きに相当する観察位置の画像を取得する必要があり、カバーガラス直下から観察位置までの距離に比例して収差が発生し、その結果として解像度が低下する。
【0006】
この収差について、図2A及び図2Bを参照しつつ詳細に説明する。図2A及び図2Bは、観察する試料の深さにより発生する収差を模式的に示した図である。説明を簡略化するため、対物レンズは、一様な屈折率の媒質を観察する場合に最適になるように設計されるとしている。図2Aは、設計で用いた一様な屈折率の媒質を観察する場合の光束100を示している。図2Aでは、光束100が収差無く1点に集光していることが示されている。これに対し図2Bは、試料深さDの面を観察している場合の光束110を示している。対物レンズに接している媒質と試料との境界面111において、光束110は屈折し、発生する収差により光束110は1点に集光していない。
【0007】
例えば、対物レンズがドライレンズである場合、対物レンズと試料間の空隙は空気で満たされているので、対物レンズと試料間の媒質(空気)の屈折率は1.0であり、生体試料の屈折率(例えば、1.39)と異なっている。そのため、対物レンズと試料間の媒質の屈折率と生体試料の屈折率との差及び生体の観察深さに比例した収差が発生する。一方、対物レンズが水浸レンズである場合、対物レンズと試料間の空隙は水で満たされているので、対物レンズと試料間の媒質(水)の屈折率は1.333であり、その屈折率は空気よりも生体試料の屈折率に近い。そのため、水浸レンズは生体深部を観察するのに適しているが、生体試料の屈折率と水の屈折率は等しくないので、やはり生体試料の屈折率と水の屈折率との差により収差が発生する。そのため、解像度の低下が問題となっている。
【0008】
さらに、カバーガラスの厚さも設計値(例えば0.17mm)から公差の範囲でばらつく。カバーガラス屈折率1.525と生体試料屈折率1.38〜1.39の差により、設計厚さからのカバーガラスの実際の厚さの差に比例して収差が発生する。これらの設計値からのズレにより光軸を中心とする対称的な位相分布を持つ球面収差が発生する。
【0009】
上述した収差による画質の劣化を解決する手段の一つに補正環がある。補正環は、対物レンズに設けられたリング状の回転部材で、補正環を回すことにより、対物レンズを構成するレンズ群の間隔が変更される。これにより、カバーガラスの厚さの誤差または生体深部を観察する場合に発生する収差がキャンセルされる。補正環には、目盛りが振ってあり、例えば、カバーガラス厚さについて、0, 0.17, 0.23の様に大まかに数値が示されている。そして、実際に使用するカバーガラスの厚さに合わせて補正環の目盛りを合わせることで、その厚さにおいて最適化されるようにレンズ群の間隔が調整される(例えば、特許文献1を参照)。
【0010】
また、収差補正デバイスの一例である波面変換素子により、発生する収差を補償することも知られている。この技術は、顕微鏡の光路中にマトリックス駆動可能な形状可変ミラー素子を配置し、その形状可変ミラー素子により、事前に測定した波面変換データに基づいて波面形状を変調し、変調した光波を試料に入射することで、収差の補正された結像性能の高い画像を取得する(例えば、特許文献2を参照)。
【0011】
また、波面変換素子として、マトリックス状に画素が配列された液晶素子の各画素に電圧を印加し、液晶の屈折率を変化させることで波面収差をキャンセルさせる位相分布を表示するLCOS(Liquid Crystal on Silicon)タイプの空間光変調素子が知られている(例えば、特許文献3を参照)。LCOSタイプの空間光変調素子は、CMOS技術を用いて作成されるアドレス部に直接液晶層が形成された反射型の電気光位相変調素子であり、駆動する電圧により、各画素の位相変調量をコントロールする。
【0012】
また、これらの補正手段を用い、対物レンズと試料間の距離に基づいて収差補正量を制御する顕微鏡の制御方法も知られている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3299808号(第4−6頁、図1
【特許文献2】特許第4149309号(第3−5頁、図1
【特許文献3】特開2011−180290号公報(第13頁)
【特許文献4】特許第4554174号(図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、補正環の操作は、対物レンズについているリング状の調整機構を手で回転することで行われる。そのため、その調整機構を調整することによるフォーカスのズレまたは視野のズレが生じる。また、対物レンズの最適位置を決定するためには、補正環の調整とフォーカシングを繰り返す必要があり、最適化のためのプロセスが煩雑であるという問題がある。プロセスが煩雑であるため、最適位置への調整に手間取り、蛍光色素が褪色してしまうという問題もある。蛍光色素の褪色は、励起光を当て続けることにより発生する、蛍光強度が弱くなってしまうという問題である。
【0015】
また、補正環の調整はデリケートであり、その調整結果の判断は画像を目視した人が判断しているのが現状で、最適位置かどうかの判断が非常に難しい。特に、Zスタックの撮影においては、この作業を奥行き方向の取得画像枚数分繰り返す必要があり、非常に煩雑である。そのため、補正環を十分に利用しているユーザーは少ないという現状がある。さらに、試料によっては、手を触れることによる振動が観察位置に影響を与えてしまうため、手を触れずに自動で補正環を調整することが望まれている。
【0016】
また、波面変換素子による収差の補償技術においては、波面変換素子が反射型であることから、既存の顕微鏡光学系に波面変換素子を挿入することができない。そのため、対物レンズの瞳位置と共役な配置を行うためのリレー光学系が必要となり、顕微鏡光学系が複雑化、及び大型化する。さらに、最適な補償波面を得るために、事前に収差を測定することが必要であり、最適な波面を形成するように補正量を収束させるプロセスが必須なため、この技術は、なかなか実用に到っていない。
【0017】
また、LCOSタイプの光変調素子は、偏光特性を有している。一方、光源に用いるレーザー光も、一様な偏光特性を有しているため、その光変調素子の偏光特性とレーザー光の偏光特性を合致させることで、全光量について収差補正が可能となる。しかしながら、試料で発生する蛍光は、試料分子の運動によりほぼランダム偏光となる。そのため、LCOSタイプの光変調素子を用いて発生したランダム偏光の蛍光を補正する場合、その光変調素子は、その光変調素子の偏光特性と一致する偏光成分の収差のみ補正できるので、その他の偏光成分は変調されない。その結果として、変調されなかった偏光成分は、共焦点ピンホールでけられてしまい、検出器で受光される光量が低下する。
【0018】
また、レーザー顕微鏡の光源の偏光特性はメーカーによって異なり、場合によっては、光源から出射される光が円偏光であることもある。このように、光源から出射される光は、必ずしも直線偏光ではない。また、光源から出射される光が直線偏光であったとしても、その偏光軸は一定ではない。そのため、波面変換素子の偏光特性と光源の偏光特性を一致させる必要があり、さらに光学系が複雑になるという問題がある。
【0019】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、既存の光学系に挿入するだけで波面収差を補正できる収差補正光学ユニットを提供することを目的とする。また本発明の他の目的として、対物レンズに手を触れることなく、試料または観察条件に応じて発生する収差を顕微鏡の観察モードまたは仕様に合わせて最適に補正できる収差補正光学ユニットを提供する。また本発明のさらに他の目的として、結像性能の高い画像を取得できる、収差補正デバイスを用いたレーザー顕微鏡を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の収差補正光学ユニットは下記記載の構成を採用するものである。
【0021】
すなわち、本発明の一つの側面によれば、光学系により生じる波面収差を補正する収差補正光学ユニットが提供される。この収差補正光学ユニットは、光学軸を有し、光学系を通る光束のうちの光学軸と平行な偏光成分について、光学系の波面収差の所定の成分を補正する第1の位相変調素子と、光学軸を有し、光学系を通る光束のうちの光学軸と平行な偏光成分について、波面収差の所定の成分を補正する第2の位相変調素子と、第1の位相変調素子と第2の位相変調素子との間に配置され、光学軸を有し、光学系を通る光束の偏光特性を変更可能な可変波長板とを有する。そして可変波長板の光学軸が第1の位相変調素子の光学軸、または第2の位相変調素子の光学軸と所定の角度をなすように可変波長板が配置される。
【0022】
この収差補正光学ユニットにおいて、第1の位相変調素子の光学軸と第2の位相変調素子の光学軸は、平行となるか、または互いに直交するように、第1の位相変調素子及び第2の位相変調素子は配置され、可変波長板の光学軸が第1の位相変調素子の光学軸、または第2の位相変調素子の光学軸となす角度が45°であることが好ましい。
【0023】
またこの収差補正光学ユニットにおいて、可変波長板は、印加される電圧に応じて光束に与える位相変調量を変化させることが好ましい。
【0024】
またこの収差補正光学ユニットにおいて、第1の位相変調素子の光学軸と第2の位相変調素子の光学軸が平行となるように、第1の位相変調素子及び第2の位相変調素子は配置され、可変波長板は、印加される電圧の変化に応じて、1/2波長板として機能するか、光束の波長の整数倍に相当する位相差を互いに直交する二つの直線偏光に与える波長板として機能するかが切り替えられることが好ましい。
【0025】
あるいは、この収差補正光学ユニットにおいて、第1の位相変調素子の光学軸と第2の位相変調素子の光学軸が互いに直交するように、第1の位相変調素子及び第2の位相変調素子は配置され、可変波長板は、印加される電圧の変化に応じて、1/2波長板として機能するか、光束の波長の整数倍に相当する位相差を互いに直交する二つの直線偏光に与える波長板として機能するかが切り替えられることが好ましい。
【0026】
また、光学系は対物レンズを有し、この収差補正光学ユニットは、コヒーレント光源と対物レンズの間に配置されることが好ましい。
【0027】
さらに、この収差補正光学ユニットにおいて、第1の位相変調素子と、第2の位相変調素子と、可変波長板とは、それぞれ液晶素子であることが好ましい。
【0028】
本発明の他の側面によれば、レーザー顕微鏡が提供される。このレーザー顕微鏡は、コヒーレント光源からの光束で試料を走査する第1の光学系と、光束を試料に集光する対物レンズと、検出器と、光束が試料に入射することにより、試料から発した試料の情報を含んだ第2の光束を検出器に伝送する第2の光学系と、コヒーレント光源と対物レンズの間に配置された、上記の何れかの収差補正光学ユニットとを有する。
【0029】
このレーザー顕微鏡は、観察モードによって、可変波長板に印加する電圧を調節することで、可変波長板が光束に与える位相変調量を制御する制御回路をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、収差補正光学ユニット及びその収差補正光学ユニットを用いたレーザー顕微鏡は、生体試料の深部を観察するとき、またはカバーガラス越しに試料を観察するときにカバーガラス厚さの設計値からのずれにより発生する収差を補正し、試料をより高分解能で観察することができる。特に、この収差補正光学ユニット及びレーザー顕微鏡は、試料を照明するレーザー光と試料から発生する蛍光の偏光特性に合わせて、収差補正光学ユニットの偏光特性を最適に制御することで適切に収差を補正できる。さらに、この収差補正光学ユニット及びレーザー顕微鏡は、対物レンズに手を触れることなく、電気的に収差を補正できるため、補正環の調整のような煩わしさが無く、自動で最適化を行う、Zスタック時の観察深さに同期した調整ができる等のメリットがある。
【0031】
また、この収差補正光学ユニット及びレーザー顕微鏡は、共焦点顕微鏡または多光子顕微鏡の様な顕微鏡の観察モードに合わせて、収差補正光学ユニットを制御することで、既存の2倍の大きさの収差まで補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、本発明の一つの実施形態に係るレーザー顕微鏡の概略構成図である。
図2A図2Aは、試料表面を観察する場合と深さDの試料内部を観察する場合に発生する収差を説明するための図である。
図2B図2Bは、試料表面を観察する場合と深さDの試料内部を観察する場合に発生する収差を説明するための図である。
図3図3は、光路計算による位相分布を示した図である。
図4A図4Aは、1次球面収差の位相分布を示す斜視図と断面図である。
図4B図4Bは、1次コマ収差の位相分布を示す斜視図と断面図である。
図5A図5Aは、2次球面収差の位相分布を示す斜視図と断面図である。
図5B図5Bは、2次コマ収差の位相分布を示す斜視図と断面図である。
図6図6は、収差補正光学ユニットの一例である位相変調素子の平面図と側面図である。
図7図7は、収差補正光学ユニットを構成するホモジニアス配向の液晶素子の一部の断面模式図である。
図8図8は、本発明の一つの実施形態に係る位相変調素子の電極構造を決定する方法を説明する図である。
図9図9は、本発明の一つの実施形態に係る位相変調素子において、電極間の接続方法と電極への電圧印加方法について説明する概略図である。
図10A図10Aは、収差補正光学ユニットを構成する位相変調素子と可変波長板の光軸の関係を説明する一例を示す図である。
図10B図10Bは、収差補正光学ユニットを構成する位相変調素子と可変波長板の光軸の関係を説明する別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる収差補正光学ユニット、また、収差補正光学ユニットを用いたレーザー顕微鏡の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の一つの実施形態に係るレーザー顕微鏡100の概略構成図である。コヒーレント光源であるレーザー光源1から出射した光束は、コリメート光学系2により平行光に調整され、その平行光は収差補正光学ユニット3を透過した後、対物レンズ4によって試料5上に集光される。試料5により反射または散乱した光束もしくは試料により発生した蛍光等、試料の情報を含んだ光束は、光路を逆にたどり、ビームスプリッター6で反射され、第2の光学系であるコンフォーカル光学系7で再び共焦点ピンホール8上に集光される。そして、共焦点ピンホール8が、試料の焦点位置以外からの光束をカットするので、検出器9でSN比の良好な信号が得られる。
【0035】
また、詳細な説明は省略するが、レーザー顕微鏡100は、スキャン光学系10により、試料5を光軸に直交する面に沿って光源1からのレーザー光でスキャンすることで、試料5の2次元像を得ている。さらに、レーザー顕微鏡100は、対物レンズ4と試料5間の距離を変えることで、試料5を光軸方向にもスキャンし、その距離ごとに試料5の2次元像を得ることで、試料の3次元像を得ている。
【0036】
ここで、対物レンズ4は、レンズ系内部だけでなく、レンズ先端から観察面までの光路の媒質の屈折率と間隔、例えばカバーガラスの厚さまたはカバーガラスの有無を想定し、それらの想定値で結像性能が最適化されるように設計されている。そのため、観察対象となる生体試料の深さ、またはカバーガラスの製造誤差による厚さのずれ等により収差が発生する。そこで、本実施形態では、光路長の設計値からのずれにより発生する波面収差を見積もり、波面収差をキャンセルするような位相分布を位相変調プロファイルとして収差補正光学ユニット3に表示することで、このレーザー顕微鏡100は、結像性能を向上させる。
【0037】
一般的に、スペースの関係から収差補正光学ユニットを対物レンズの入射瞳位置に配置することができないため、リレー光学系を用いて入射瞳と共役な位置に収差補正光学ユニットは配置される。一方で、顕微鏡の対物レンズは、一般的に、無限系で設計されており、対物レンズに入射する光束は平行光となっている。本実施形態では、光学系の大型化を避けるため、リレー光学系を無くすとともに、収差補正光学ユニット3は、対物レンズ4の光源側、なるべく対物レンズ4に近接して配置されることが好ましい。このように収差補正光学ユニット3を配置することで、レーザー顕微鏡100は、収差補正の効果をより効果的に得ることができる。また、レーザー光源1から出射した光束は、収差補正光学ユニット3を往路と復路との2回通過するので、収差補正光学ユニット3は、往路、復路ともに光束の位相を補正する。
【0038】
次に、試料の深さにより発生する収差とその補正方法について詳しく説明する。試料の深さにより発生する収差は、先の図1Bで説明した通りである。ここで、水浸レンズを用いて試料内部を観察する場合を仮定して、光路長を計算した例を図3に示す。図3に示された曲線300は、試料の深さ及び屈折率をそれぞれ250μm、1.39として、NA1.15の水浸レンズを用いた場合における光路計算による位相分布を示している。図3は、光軸における収差を示しており、球面収差パターンとなっていることが分かる。図3における縦軸は、位相差量をその正の最大値で正規化して得られる位相差量を示し、横軸は、収差補正光学ユニットの有効径の最大値が「1」となるように正規化された光軸からの距離を示している。
【0039】
このように試料表面でなく試料内部を観察するときに収差が発生し、主に対物レンズのNAと試料深さに比例して収差が拡大する。このように発生した収差を対物レンズの入射瞳位置における位相分布として表し、その収差をキャンセルするような位相変調プロファイルを、対物レンズ4の入射瞳位置に配置した収差補正光学ユニット3に表示することで、レーザー顕微鏡100は、光束を試料5の内部に設定される観察位置において1点に集光させること、すなわち、収差を補正することが可能となる。同様に、試料により発生した光束も光路を逆にたどるので、レーザー顕微鏡100は、その光束を平面波に変換することができる。
【0040】
そのために、収差補正光学ユニット3は、二つの位相変調素子3a、3cと、その二つの位相変調素子の間に配置された可変波長板3bとを有する。そして位相変調素子3a、3c及び可変波長板3bは、それぞれ、制御回路11から電圧が印加される。制御回路11は、位相変調素子3a、3c及び可変波長板3bに印加する電圧を制御することで、光束に与える位相変調量を制御する。なお、制御回路11は、例えば、プロセッサと、プロセッサからの駆動信号に応じて出力する電圧を変更可能な駆動回路とを有する。制御回路11から位相変調素子3a、3c及び可変波長板3bに対して印加される駆動電圧は、例えば、パルス高さ変調(PHM)またはパルス幅変調(PWM)された交流電圧である。
【0041】
波面収差補正のための位相変調プロファイルを求める一つの方法について、以下に述べる。
【0042】
波面収差の位相分布を、Zernike多項式のような直交関数に分解し、各項の和として表現することが一般的に行われている。波面収差の位相分布を直交関数に分解することで、各項は独立に制御可能である。収差発生の原因により、発生する収差の項目が異なるため、各項を独立に制御できることは都合が良い。例えば、試料深さにより発生する収差は球面収差となり、試料深さを変化させた場合、球面収差に対応する項が制御されればよい。
【0043】
波面収差は、球面収差に代表される対称性収差と、コマ収差に代表される非対称性収差に大別される。例えば、波面収差を標準Zernike多項式に分解したとき、13番目の係数(Z13)は、1次球面収差を表し、25番目の係数(Z25)は、2次球面収差を表している。すなわち、これらの係数は対称性収差を表している。
【0044】
また、同様に、波面収差を標準Zernike多項式に分解したときの、8番目と9番目の係数(Z,Z)は、1次のコマ収差を表し、18番目と19番目の係数(Z18,Z19)は、2次のコマ収差を表している。すなわち、これらの係数は非対称性収差を表している。
【0045】
それぞれの波面の形状を図に示す。図4A及び図4Bは、それぞれ1次の球面収差と1次のコマ収差を示し、図5A及び図5Bは、それぞれ2次の球面収差とコマ収差を示している。
【0046】
図4Aの上側の立体図401及び図5Aの上側の立体図501は、それぞれ1次の球面収差、及び2次の球面収差における波面の形状を立体的に表しており、図4Aの下側のグラフにおける曲線402及び図5Aの下側のグラフにおける曲線502は、立体図に対応した、光軸を通る平面における、収差の位相分布を示している。それぞれのグラフにおいて、縦軸は、位相差量の正の最大値が「1」となるように正規化された位相差量を表し、横軸は、収差補正光学ユニットの最大有効半径が「1」となるように正規化された光軸からの距離を表す。すなわち、横軸における「0」の位置は、光軸上であることを表す。
【0047】
図4Bの上側の立体図411及び図5Bの上側の立体図511は、それぞれ1次のコマ収差、及び2次のコマ収差における波面の形状を立体的に表しており、図4Bの下側のグラフにおける曲線412及び図5Bの下側のグラフにおける曲線512は、立体図に対応した、光軸を通る平面における収差の位相分布を示している。図4A及び図5Aの下側のグラフと同様に、縦軸は、位相差量の正の最大値が「1」となるように正規化された位相差量を表し、横軸は、収差補正光学ユニットの最大有効半径が「1」となるように正規化された光軸からの距離を表す。
【0048】
高NAの対物レンズを用いて試料深部を観察する場合などに発生する収差は、デフォーカス及び低次、高次の球面収差が複合されたものとなる。したがって、例えば、標準Zernike多項式のZ13項に相当する収差のみを補正しても結像性能の向上は不十分である。また、軸外の特性を考える場合等、非対称性の収差の補正も必要であり、厳密に収差を補正するためには、収差補正光学ユニット3は、高次収差及び非対称性の収差に相当する項目も補正する必要がある。したがって、収差を十分に補正するためには、それぞれの収差の項目に対応した位相変調プロファイルが、収差補正素子の一例である位相変調素子に表示される必要がある。そこで、多様な位相変調プロファイルを表示できるように、それぞれの項目に対応した多数の位相変調素子を用意し、それらの位相変調素子を光軸に沿って重ねて収差補正光学ユニットとして用いることが好ましい。
【0049】
しかし、Zernike多項式の全ての項目に対応する位相変調素子を用意し、それら位相変調素子を光軸に沿って配置すると、複数の位相変調素子を重ねたことに起因して、各素子間の境界での反射による透過率の低下など、少なからずデメリットが生じてしまう。
【0050】
したがって、収差補正光学ユニット3が有する位相変調素子の数を必要最小限にすることが好ましい。例えば、デフォーカスは、顕微鏡のフォーカシングで可変でき、高次の収差は無視できるほど小さいとすると、収差補正光学ユニット3は、1次球面収差に対応するZ13項のみを補正することで、結像性能の向上が図れる。より精密に収差を補正するために、収差補正光学ユニット3は、必要に応じて、高次収差またはチルト、コマ等の非対称性収差を補正すればよい。また、各項に相当する収差の発生割合が一定であれば、収差補正光学ユニット3は、それぞれの項の線形和である複合プロファイルパターンを、位相変調プロファイルとして設定できる。例えば、対称性収差と非対称性収差をそれぞれひとまとめにし、2組の位相変調素子を用いて、波面収差を補正することが考えられる。すなわち、例えば、対称性収差について、収差補正光学ユニット3は、デフォーカスと1次球面収差と3次球面収差の線形和を複合プロファイルパターンとして表してもよい。
【0051】
また、チルトまたはコマ収差のような非対称性収差は、球面収差とは異なり方向性を有する。そこで、例えば、コマ収差について、Zernike係数の直交するパターンであるZ項及びZ項から位相プロファイルが作成される。これらの位相プロファイルを表示する位相変調素子が積層されることで任意の方向性を持つ位相変調プロファイルが表される。
【0052】
上記のように、高NAレンズにより試料深部を観察する場合など、1次の収差の補正だけでは解像度の向上が不十分な場合、1次の収差項に高次の収差項を加えて位相変調プロファイルを作成することが考えられる。例えば、Zernike多項式におけるZ13に加えてZ25を加えた位相変調プロファイルを表示することで、収差補正光学ユニット3は、より高精度で収差を補正できる。すなわち、収差補正光学ユニット3は、Z13項とZ25項の線形和のパターンで位相変調プロファイルを形成する。各次数の比率は、対物レンズのNAやドライ・水浸・液浸等のタイプで決まるので、位相変調プロファイルは、対物レンズ4に合わせて設計されればよい。
【0053】
次に、この収差補正光学ユニットが有する位相変調素子として、液晶素子を採用した場合について図6図9を参照しつつより詳細に説明する。
【0054】
図6は、収差補正光学ユニット3が有する位相変調素子3aまたは位相変調素子3cとして利用できる液晶素子30の平面図及び側面図である。液晶層は、透明基板21、22で挟まれており、シール部材23で、液晶が漏れないように周辺部が封止されている。液晶を駆動するアクティブ領域24のサイズは、対物レンズの瞳径に応じて決定されている。図6では、液晶素子30が対称性収差を補正する位相変調素子として機能する場合の電極パターンが示されている。この例では、対称性収差を補正するために、アクティブ領域24には、光軸を中心とする同心円状の透明な輪帯電極25が複数形成されている。なお、透明基板21、22の一方については、アクティブ領域24全体を覆うように透明電極が形成されていてもよい。そして制御回路11が、透明な輪帯状の輪帯電極により液晶層に印加する電圧を制御することで、液晶素子30は、そのアクティブ領域24に、対称性の波面収差をキャンセルするような位相変調プロファイルを表示する。
【0055】
図7は、図6の液晶素子30のアクティブ領域24の一部における断面模式図を示している。液晶素子30では、透明基板21,22の間に液晶分子34が挟まれている。透明基板21及び22の互いに対向する側の表面には透明電極33,33a,33bが形成されている。図7では、右側半分の電極33aと電極33の間に電圧が印加され、一方、左側半分の電極33bと電極33の間には電圧が印加されていない状態が示されている。液晶分子34は、細長い分子構造を持ち、ホモジニアス配向されている。すなわち、2枚の透明基板21、22に挟まれた液晶分子34は、その長軸方向がお互いに平行となり、かつ、透明基板21、22と液晶層の界面と平行に並んでいる。液晶分子34は、その長軸方向における屈折率と長軸方向に直交する方向における屈折率とが異なり、一般に、液晶分子34の長軸方向に平行な偏光成分(異常光線)に対する屈折率nは、液晶分子の短軸方向に平行な偏光成分(常光線)に対する屈折率nよりも高い。そのため、液晶分子34をホモジニアス配向させた液晶素子30は、1軸性の複屈折素子として振舞う。
【0056】
液晶分子は、誘電率異方性を持ち、一般に液晶分子長軸が電界方向に倣う方向に力が働く。つまり、図7で示したように、液晶分子を挟む2枚の基板に設けられた電極間に電圧が印加されると、液晶分子の長軸方向は、基板に平行となる状態から、電圧に応じて基板の表面に直交する方向に近づくように傾いてくる。このとき、液晶分子長軸に平行な偏光成分の光束を考えると、液晶分子の屈折率nψは、n≦nψ≦nとなる。そのため、液晶層の厚さがdであると、液晶層のうち、電圧が印加された領域を通る光束と印加されていない領域を通る光束の間に、光路長差Δnd(=nψd−nd)が生じる。位相差は、2πΔnd/λとなる。なお、λは、液晶層に入射する光束の波長である。
【0057】
ここで、レーザー顕微鏡100は、波長が互いに異なるレーザー光を照射する複数のレーザー光源を有していてもよい。この場合、レーザー光の波長によって、必要な位相変調量が異なる。そこで、制御回路11は、波長の違いによる位相変調量のずれを、液晶素子30の液晶層に印加する電圧を変化させることで補正することができる。さらに、制御回路11は、温度変化等による位相変調量のずれも、液晶素子30の液晶層に印加する電圧を調整することでキャンセルすることができる。
【0058】
次に、液晶素子として構成された光学収差補正ユニットの位相変調素子を透過する光束に所望の位相分布を与える方法について詳細に述べる。まずは、液晶素子30に表示したい位相変調プロファイルを決めて、そのプロファイルを等位相間隔で分割することで、各輪帯電極のパターンを決定する。
【0059】
図8は、例えば、液晶素子30における対称性収差をキャンセルする位相変調プロファイルの位相分布に応じて決定される電極パターンの一例を示す図である。上側に示された曲線800は、光軸を通る面に対応する位相変調プロファイルの断面を表し、下側には、位相変調プロファイルに合わせて決定された輪帯電極810が示される。図中の太線が輪帯電極間のスペースを表しており、引き出し電極等は、簡略化のために図示していない。液晶素子30を透過する光束に与える位相変調量と印加電圧間の関係がほぼリニアな電圧範囲内で、隣接する輪帯電極間の電圧差が同一ステップとなるように、制御回路11が各輪帯電極に電圧を印加することで、液晶素子30は、所望の位相分布の量子化した位相変調プロファイルを表示することができる。
【0060】
隣接する輪帯電極間の電圧の差が同一ステップとなるように各輪帯電極に電圧を印加するために、位相変調プロファイルから、位相変調量が最大となる位置及び最小となる位置に対応する輪帯電極が決定される。そして制御回路11が、最大位相変調量となる印加電圧と最小位相変調量となる印加電圧を、それぞれに対応する輪帯電極に加える。また、複数の輪帯電極のそれぞれは、隣接する輪帯電極と、同一の電気抵抗を持つ電極(抵抗子)によって接続されているため、抵抗分割により隣接する輪帯電極間の電圧差は同一ステップとなる。また、このように印加電圧を制御することで、各輪帯電極に印加する電圧を独立に制御する際の駆動回路よりも、制御回路11を単純な構成とすることができるというメリットがある。
【0061】
図9は、液晶素子30がn個の輪帯電極を有する場合の、各輪帯電極と印加される電圧との関係を示す図である。図9では、中心電極を輪帯電極1、最外周の輪帯電極を輪帯電極n、最大電圧を印加する輪帯電極を輪帯電極mとする。
【0062】
図9は、2レベル駆動の場合に制御回路11が電圧を印加する輪帯電極を示す。中心電極である輪帯電極1と最外周の輪帯電極である輪帯電極nに同一の電圧V1を、中心からm番目(m=2,...,n−1)の輪帯電極mに電圧V2が印加される。発生した波面収差の位相分布における中心及び端部の位相変調量が等しくなるように、デフォーカス値を選ぶことで、中心電極での位相変調量と最外周電極での位相変調量が一致する。その結果として、図9に示された例のように、中心電極に印加される電圧が最外周の輪帯電極nに印加される電圧と同一となる。また、制御回路11が液晶素子30に対してこのように電圧を印加すれば、PV値を最小にすることができる。このように、2レベル駆動の例では、印加される電圧V1とV2の差で、位相変調プロファイルの相対比を変えずに位相変調量の振幅が可変される。また、この駆動方法では、制御回路11が輪帯電極に直接印加する電圧値のレベルが2種類と少なくてすむが、位相変調プロファイルが単一の形状に固定されてしまうという特徴がある。
【0063】
また、非対称性収差に対する位相変調プロファイルを液晶素子30に表示させる場合も、対称性収差に対する位相変調プロファイルに対して決定される電極構造と同様に、表示される位相変調プロファイルの同一位相面が一つの電極に対応するように、互いに異なる複数の位相面ごとに電極パターンが形成される。そして制御回路11は、例えば、液晶素子30を2レベル駆動する場合、最大位相変調量となる液晶層の領域に対応する電極と最小位相変調量となる液晶層の領域に対応する電極のそれぞれに、その位相変調量に対応する電圧を印加する。そして、位相変調量が最大位相変調量と最小位相変調量の中間となる領域に対応する複数の電極に印加される電圧は、隣接する電極間を接続した抵抗子による抵抗分割によって決定され、各電極に対応する領域には、その印加された電圧に対応する位相変調量が与えられる。これにより、液晶素子30は、非対称性収差に対する位相変調プロファイルを表示できる。
【0064】
また、非対称性収差は方向性を持つため、収差補正光学ユニットが任意の方向性を持った位相変調プロファイルを表すためには直交する2つの位相分布を重ね合わせる必要がある。例えば、チルトについて、光軸に直交する平面をXY平面とすると、X軸方向のチルトに対応する波面収差を補正する位相分布を表示する位相変調素子とY軸方向のチルトに対応する波面収差を補正する位相分布を表示する位相変調素子とを光軸方向に沿って並べ、表示された二つの位相分布の線形和で任意の角度のチルトに対応する波面収差を補正する位相分布が表現される。例えば、制御回路11が、それぞれの位相変調素子に表示される位相分布の振幅の比が1:1となるように各位相変調素子を駆動すれば、収差補正光学ユニットは、X軸及びY軸のそれぞれに対して45度の方向に沿って傾斜したチルトに対応する波面収差を補正する位相分布を表示することができる。最も単純には、このような位相変調素子は、二つの同じ液晶素子を、光軸に垂直な面において各液晶素子の電極パターンが互いに直交するように積層することで実現される。二つの位相変調素子を積層することによる、位相変調素子の厚さの増加または各界面での反射が好ましくない場合には、位相変調素子を一つの液晶素子とし、その液晶素子の液晶層を駆動する二つの電極パターンが互いに直交するように各電極パターンが設けられてもよい。
【0065】
上述のように、もしも収差補正光学ユニットが有する位相変調素子が一つの液晶素子である場合、液晶素子の偏光特性により、位相変調素子は、入射する光束のある一方向の偏光成分の収差しか補正することができない。また、試料を照明するレーザー光は偏光特性を持っている。そのため、レーザー光の偏光特性が位相変調素子の偏光特性と合致すれば、上記の問題を回避することができる。しかし、試料より発生する蛍光や散乱光は、概ねランダム偏光となっているため、位相変調素子として一つの液晶素子が用いられる場合には、補正されない偏光成分が残ってしまう。
【0066】
一方で、位相変調量は前述したようにΔndで決まり、Δnは液晶材料で決まる。そのため、位相変調量を増やすには液晶層の厚さdを大きくする必要がある。しかし、液晶層の厚さdは、液晶の応答速度または透明基板の面精度による制限のために、十分に厚くすることは困難なことがある。そのため、補正可能な収差の位相量には限界がある。
【0067】
そこで、本発明では、図1に示したように、収差補正光学ユニット3は、光軸に沿って、光源側から順に、位相変調素子3aと、可変波長板3bと、位相変調素子3cとを有する。収差補正光学ユニット3をこのような3層構造とし、第1の位相変調素子3aと第2の位相変調素子3cにそれぞれに位相変調機能を分担させることで、本発明は上記課題を解決する。第1の位相変調素子3a及び第2の位相変調素子3cは、対称性収差又は非対称性収差を補正する位相分布を、それらの素子を透過する光束に与える位相変調プロファイルを表示する。また、位相変調素子3aと位相変調素子3cは、同一機能の(すなわち、同じ収差成分を補正可能な)液晶素子とする。例えば、位相変調素子3aと位相変調素子3cのいずれもが対称性収差を補正する位相変調素子として機能するか、あるいは、位相変調素子3aと位相変調素子3cのいずれもが非対称性収差を補正する位相変調素子として機能する。
【0068】
図10Aを参照しつつ、収差補正光学ユニット3の構造とその機能について説明する。この例では、位相変調素子3a、3cは、同一の液晶素子であり、それぞれの光学軸(すなわち、液晶分子の配向方向)が一致するように配置されている。そして、位相変調素子3aと位相変調素子3cの間には、それぞれの位相変調素子の光学軸に対して、45度の角度をなす光学軸を持つ可変波長板3bが挿入されている。
【0069】
本実施形態では、この可変波長板3bも一対の透明基板間に液晶層が挟持されている液晶素子である。例えば、可変波長板3bは、位相変調素子3a、3cに採用した液晶素子と同じ液晶素子とすることができる。しかし、可変波長板3bの液晶層を挟むように形成される二つの透明電極は、両透明基板のそれぞれ全面を覆うように形成されればよい。可変波長板3bも、上述した位相変調素子である液晶素子と同様に、透明基板に設けられた透明電極間に電圧が印加されることにより、図7に示されるように、液晶分子の長軸方向が、透明基板に平行となる状態から、その印加電圧に応じて、透明基板の表面に直交する方向に近づくように傾いてくる。液晶分子の透明基板の表面に対する傾き度合いにより、可変波長板3bは、液晶層を通過する光の位相を変調することができる。
【0070】
制御回路11は、可変波長板3bの液晶層を挟む二つの透明電極間に任意の電圧を印加することによって、可変波長板3bを透過する光束に与える位相変調量を制御できる。例えば、制御回路11は、位相変調量がλ/2となるように印加電圧を制御して、可変波長板3bを1/2波長板として機能させたり(ON)、あるいは、印加電圧を制御して、位相変調量が0またはλ等、波長の整数倍となるようにして、可変波長板3bを1/2波長板として機能させない(OFF)ことができる。このように、制御回路11は、可変波長板3bの波長板としての機能を可変に制御できる。以下では、可変波長板3bが、印加電圧を制御することで、可変波長板3bの光学軸が位相変調素子3a、3cの光学軸に対して45度傾いた状態(ON)と、可変波長板3bの光学軸が位相変調素子3a、3cの光学軸に対して傾かない状態(OFF)との間で切り替え可能な例について説明する。
【0071】
図10Aの一番右端の列1004は、位相変調素子3a、3c、可変波長板3bのそれぞれを光源側から見たときの各素子の光学軸方向を表す。矢印が光学軸を示している。図10Aでは、可変波長板3bが、印加電圧を制御することにより、1/2波長板として機能している状態(ON)と機能していない状態(OFF)における、各素子を透過した光束の偏光方向が示されている。
【0072】
図10Aの左端から順に1番目の列1001、2番目の列1002、3番目の列1003には、それぞれ、可変波長板3bの前後の位置における、収差補正光学ユニット3を通過して往復する光束の偏光状態が示されている。なお、これらの列では、矢印が照明光の偏光方向を表す。例えば、左端の列1001には、位相変調素子3aに入射する前の照明光が紙面に平行な直線偏光であり、かつ、可変波長板3bが1/2波長板として機能している(ON)とき、試料5に照射するまでのそれぞれの位置において、光の偏光状態が示されている。
【0073】
図10Aに示されるように、位相変調素子3aに入射する前の照明光が、紙面に平行な直線偏光I(図では、偏光面は水平方向)とすると、照明光の偏光面が第1の位相変調素子3aの光学軸方向と平行なので、第1の位相変調素子3aを通過する際に照明光は収差補正される。その後、列1001のように、可変波長板3bが1/2波長板として機能していれば(ON)、照明光が可変波長板3bを通過することで、その偏光面が90度回転する(したがって、図では、偏光面は垂直方向となる)。その結果、照明光の偏光面が第2の位相変調素子3cの光学軸方向と直交するので、照明光は、第2の位相変調素子3cを透過しても位相変調されない。
【0074】
そして、照明光が試料5に集光され、試料5からの蛍光などの光Oが生じる。列1003に示されるように、試料5より生じた光Oは、ランダム偏光となる。ここで、第2の位相変調素子3cの光学軸方向が、列1004の一番下の矢印に示された水平方向になっているので、試料5より発生した光のうち、第2の位相変調素子3cの光学軸方向の偏光成分のみが第2の位相変調素子3cで収差補正される。その後、試料5より発生した光は、可変波長板3bを透過することによって偏光方向が90°回転する。そのため、試料5より発生した光の偏光成分のうち、第2の位相変調素子3cで補正されなかった残りの偏光成分が、第1の位相変調素子3aで位相変調される。その結果、試料5より発生した光の全ての偏光成分が収差補正される。また、可変波長板3bを通過した光束の偏光面が90°回転することで、本発明は、第1の位相変調素子3a及び第2の位相変調素子3cとして、光学特性だけでなく外形構造についても同一の素子を用いることができるというメリットがある。
【0075】
また、照明光に着目すると、レーザー光が直線偏光でも、その偏光軸はメーカなどによって異なっている。このような場合、位相変調素子の偏光特性は、各種顕微鏡の光源の偏光特性に合わせなければならず、その調整が煩雑となる。しかしながら、本発明の収差補正光学ユニット3は、可変波長板を用いることにより、収差補正光学ユニット3に入射する光の偏光依存を無くしている。そのため、レーザー顕微鏡100に対する光源の光軸に直交する面内での偏光面の回転角を考慮せずに、収差補正光学ユニット3をレーザー顕微鏡100に取り付けることができる。
【0076】
また、収差補正光学ユニット3は、観察モードが異なっても、全ての機種に対して共通に利用できる。例えば、観察モードとして共焦点モードで観察を行う場合の位相変調量と、多光子モードで観察を行う場合の位相変調量を異ならせることで、収差補正光学ユニット3は、両方の観察モードで使用できる。
さらに、光源に用いるレーザー光は、顕微鏡メーカーまたは機種等の観察モードの違いにより、直線偏光であったり、もしくは円偏光であったり、それぞれ異なった偏光特性を持つことが多い。しかし、本発明の収差補正光学ユニット3は、可変波長板を有しているので、可変波長板を調節することで、レーザー光の偏光特性によらずに、様々な観察モード、例えば、直線偏光をサンプルに照射するモードまたは円偏光をサンプルに照射するモードでサンプルを観察することを可能とする。例えば、光源から入射するレーザー光が所定の方向の直線偏光である場合、収差補正光学ユニット3の可変波長板を1/2波長板として機能させることで、収差補正光学ユニット3は、その入射レーザー光を、所定の方向と直交する方向の直線偏光に変換できる。あるいは、収差補正光学ユニット3の可変波長板を1/4波長板として機能させることで、収差補正光学ユニット3は、その入射レーザー光を、円偏光に変換できる。
【0077】
次に、可変波長板3bを駆動する印加電圧を調整することで、可変波長板3bが1/2波長板として機能していない状態(OFF)について説明する。制御回路11は、可変波長板3bに印加する電圧により、可変波長板3bの複屈折量を入射光の波長λの整数倍にすること、すなわち、可変波長板3bが互いに直交する二つの直線偏光間に与える位相差が、2πの整数倍となるように複屈折量を調節することで可変波長板3bをOFFにすることができる。図10Aにおける列1002に、可変波長板3bがOFFとなるときの、収差補正光学ユニット3を通過した光束の偏光状態が示される。
【0078】
上記と同様に、紙面に平行な直線偏光I(図では、偏光面は水平方向)をもつ照明光が第1の位相変調素子3aを透過することで、照明光は収差補正される。可変波長板3bは1/2波長板として機能していない(OFF)ので、列1002の下側の矢印に示されるように、可変波長板3bを通過した照明光の偏光面は回転せず、偏光面は水平方向のままである。したがって、第1の位相変調素子3aが位相変調できる偏光成分と第2の位相変調素子3cが位相変調できる偏光成分は同一となり、照明光の偏光特性と両方の位相変調素子の偏光特性が一致しているので、結果として、照明光に対する位相変調量は2倍になる。
【0079】
このように可変波長板3bが1/2波長板として機能していない(OFF)と、収差補正光学ユニット3の偏光依存性は解消されないが、収差補正光学ユニット3の収差補正量は2倍となる。そのため、収差補正光学ユニット3は、試料のより深い領域に設定される観察位置に集光される照明光の収差を補正できるので、レーザー顕微鏡100は、そのより深い領域に設定された観察位置の試料を高解像で観察できる。レーザー顕微鏡100が観察モードが共焦点顕微鏡と異なる蛍光顕微鏡である場合、レーザー顕微鏡100は、試料を照明することによりその試料で生じる蛍光を観察しているので、発生した蛍光の偏光成分のうち、位相変調素子の光学軸と一致した偏光成分の収差のみが補正され、位相変調素子の光学軸と直交する偏光成分は補正されない。しかしながら、収差補正されない偏光成分は、共焦点ピンホールでカットされる(もしくは偏光子を光路上に挿入することでカットできる)ので、光量は低下するが、レーザー顕微鏡100は、解像度の高い画像を取得することができる。よって、レーザー顕微鏡100が蛍光顕微鏡である場合には、収差補正光学ユニット3による収差補正効果はより大きくなる。
【0080】
さらに、レーザー顕微鏡100が多光子顕微鏡である場合、収差補正光学ユニット3は、照明光の収差のみを補正すればよく、発生する蛍光に関しては収差の影響が無い。したがって、レーザー顕微鏡100が蛍光顕微鏡である場合には、収差補正光学ユニット3による収差補正はより効果的となる。これは、レーザー密度が高い領域でのみ多光子吸収による蛍光が発生し、共焦点ピンホールを用いなくても、共焦点顕微鏡と同様のセクショニング効果が得られるため、多光子顕微鏡は発生する蛍光を全て取得して画像を形成するという、多光子顕微鏡の光学系と共焦点顕微鏡の光学系の違いによるものである。
【0081】
図10Aに示した収差補正光学ユニット3では、二つの位相変調素子3a、3cの偏光軸(すなわち、光学軸)の方向が一致している。しかしながら、二つの位相変調素子3a、3cの光学軸は互いに直交していてもよい。この場合は、可変波長板3bによる位相変調量を変更することで同様の効果が得られる。
【0082】
本実施例の可変波長板のメリットの一つとして、駆動電圧を変更することで、入射するレーザー光の波長によらずに常に複屈折をλ/2にできる点が挙げられる。可変波長板3bを1/2波長板とすることで、可変波長板3bは波長λの光束の偏光面を90°回転させることができ、収差補正光学ユニット3が収差を補正できない偏光成分をなくすことができる。しかしながら、同時に複数の波長の光束が照明光として収差補正光学ユニット3に入射する場合、一例として、可変波長板3bの位相変調量は、入射する光の平均波長に合わせて決定される。この場合、平均波長からずれた波長のレーザー光に対しては、可変波長板3bは、λ/2から多少ずれた波長板として機能し、その波長のレーザー光の偏光成分の全てを、可変波長板3bに入射する前の偏光方向に対して直交する偏光成分となるように変換できず、その結果として可変波長板3bから出射する光が楕円偏光になる。
【0083】
そのような場合には、二つの位相変調素子3a、3cの光学軸の方向が互いに直交するように、位相変調素子3a、3cを配置する。図10Bは、二つの位相変調素子3a、3cの光学軸を互いに直交させた場合における位相変調素子と可変波長板の光学軸の関係を示す。図10Bにおける列1101、列1102、列1103の各矢印は、図10Aの列1001〜1003の矢印と同様に、収差補正光学ユニット3を通過して試料5に集光される照明光束I及び試料5から発した光束Oについてのそれぞれの位置での偏光方向を示しており、列1104の各矢印は、位相変調素子3a、3cと可変波長板3bの光学軸方向を示している。
【0084】
図10Bの列1102に示されるように、可変波長板3bを1/2波長板として機能させない(OFF)ことで、可変波長板3bを透過する光の偏光特性は何ら変更されない。そのため、収差補正光学ユニット3は、照明光Iが光学軸が互いに直交している位相変調素子3a、3cを通過することで、照明光の全ての偏光成分の位相を変調することができ、そのため、照明光の全ての偏光成分について収差を補正することができる。またこの場合、可変波長板3bは、照明光の位相変調を行わないので、可変波長板3bの波長分散特性は考慮しなくてよい。
【0085】
一方で、収差補正光学ユニット3を通過する光に対する位相変調量を2倍にしたい場合、制御回路11は、可変波長板3bに印加する電圧を調整して、可変波長板3bの複屈折をλ/2にする(ON)(列1101に図示)。その場合は、可変波長板3bの位相変調量についての波長分散特性の問題が生じる。しかし、位相変調量の範囲を大きくとることに対する要望は、多光子顕微鏡で収差補正光学ユニット3を利用する場合に強く、一方、多光子顕微鏡では、複数の波長の照明光で試料を励起することはまれであるので、二つの位相変調素子3a、3cの光学軸を互いに直交させた構成でも十分にメリットがある。
【0086】
以上に説明してきたように、この収差補正光学ユニットは、その収差補正光学ユニットに入射する光の全ての偏光成分について位相変調できる。そのため、この収差補正光学ユニットは、その収差補正光学ユニットを含む光学系で生じる収差を、その光学系を通過する光の偏光成分によらずに補正できる。
【0087】
上記の実施形態では、収差補正光学ユニットの位相変調素子及び可変波長板として液晶素子を用いたが、位相変調素子及び可変波長板は、液晶素子に限られない。例えば、ポッケルス効果に代表される電気光学効果を持つ光学結晶素子を、位相変調素子または可変波長板として用いることもできる。
【0088】
また、以上に説明してきた各実施形態では、本発明の収差補正光学ユニットをレーザー顕微鏡に用いる例を示したが、本発明は、これらの実施例に限られるものではない。また、本実施形態では、対称性収差又は非対称性収差を補正する収差補正光学ユニットを示したが、収差補正光学ユニットは、対称性収差と非対称性収差の両方を補正するように構成されてもよい。その場合には、対称性収差用の収差補正光学ユニットと、非対称性収差用の収差補正ユニットの両方が光路上に配置される。つまり、第1の位相変調素子3a、可変波長板3b、第2の位相変調素子3cの組み合わせが2セット光路上に配置されればよい。または、対称性収差を補正する位相変調素子と非対称性収差を補正する位相変調素子を有する第1の位相変調素子3aと、対称性収差を補正する位相変調素子と非対称性収差を補正する位相変調素子を有する第2の位相変調素子3cとの間に、可変波長板3bが配置されてもよい。
【0089】
さらに、本発明の収差補正光学ユニットはコヒーレント光源と対物レンズを用いた如何なる機器にも採用することができ、高分解能を実現できる。
【符号の説明】
【0090】
100 レーザー顕微鏡
1 レーザー光源
2 コリメート光学系
3 収差補正光学ユニット
3a 第1の位相変調素子
3b 可変波長板
3c 第2の位相変調素子
4 対物レンズ
5 試料
6 ビームスプリッター
7 コンフォーカル光学系
8 共焦点ピンホール
9 検出器
10 スキャン光学系
30 液晶素子
21、22 透明基板
23 シール
33 透明電極
34 液晶分子
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B