(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層であって、それぞれのローカル光軸が、該第1の層および第2の層のそれぞれの厚さにわたってそれぞれのねじれ角で回転されており、該第1の層と第2の層との間の界面に沿って整列されている、第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層を備え、
前記それぞれのねじれ角は、0度から、前記第1の積層複屈折層と前記第2の積層複屈折層のそれぞれの位相遅延角までの範囲であり、前記それぞれのねじれ角および/または前記それぞれの厚さは異なっており、前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層の前記それぞれのローカル光軸は、それらの間の前記界面に沿った方向において非周期的であり変化する、光学素子。
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層は、それぞれ、通過する光の伝播方向を実質的に変更することなく偏光を変更するように構成されている光学リターダ層を備える、請求項1に記載の光学素子。
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層の前記それぞれのねじれ角および/または厚さは、約200nm以上の広帯域波長範囲にわたって実質的に無彩色である2分の1波長遅延を提供するように構成されている、請求項1に記載の光学素子。
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層の前記それぞれのねじれ角および/または厚さは、約200nm以上の広帯域波長範囲にわたって実質的に無彩色である4分の1波長遅延を提供するように構成されている、請求項1に記載の光学素子。
第3の液晶層を、そのそれぞれの分子配向が、前記第2の複屈折層と前記第3の液晶層と間の界面に沿って前記第2の複屈折層の前記それぞれの分子配向に従って整列されるように、前記第2の複屈折層の上に直接、形成するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以降、本発明の実施形態を図示する添付の図面を参照して、本発明をより十分に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載する実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が詳細および完全なものになり、本発明の範囲を当業者に十分に伝達することになるように提供される。図面において、層および領域のサイズおよび相対サイズは、明瞭にするために誇張されている場合がある。全体を通じて同様の参照符号は同様の要素を指す。
【0048】
第1の、第2の、第3の、などの用語が、本明細書において様々な要素、構成要素、領域、層および/または区画を説明するために使用されている場合があるが、これらの要素、構成要素、領域、層および/または区画はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層または区画を別の領域、層または区画から区別するために使用されているに過ぎない。したがって、第1の要素、構成要素、領域、層または区画が、本発明の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層または区画と称され得る。
【0049】
「〜の真下(beneath)」、「〜より下(below)」、「下側(lower)」、「〜の下(under)」、「〜の上(above)」、「上側(upper)」などのような空間的に相対的な用語が、本明細書において、図面に示されているような1つの要素または特徴の、別の要素(複数の場合もあり)または特徴(複数の場合もあり)に対する関係を説明するための記述を容易にするために使用されている場合がある。空間的に相対的な用語は、図面に描画されている向きに加えて、使用または動作中のデバイスの異なる向きを包含するように意図されている。たとえば、図面内のデバイスが反転される場合、他の要素または特徴「より下」または「の真下」または「の下」として説明されている要素は、他の要素または特徴「の上」を向くことになる。したがって、例示的な用語「〜より下」および「〜の下」は、上および下の両方の向きを包含する可能性がある。デバイスは、他の様態で方向づけられる(90度または他の向きに回転される)場合があり、本明細書で使用される空間的に相対的な記述は、それに従って解釈され得る。加えて、層が2つの層「の間(between)」にあるものとして参照されている場合、これは、それら2つの層の間にある唯一の層であることも、1つまたは複数の介在する層が存在してもよい。
【0050】
本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、本発明に対する限定であるようには意図されない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明瞭に別途指示していない限り、複数形も含むように意図されている。「備える(comprises)」および/または「comprising」という用語は、本明細書で使用されるとき、記述されている特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを規定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群が存在することまたはそれらが加わることを除外するものではないことがさらに理解されよう。本明細書で使用される場合、「および/または(and/or)」という用語は、列挙されている関連項目の1つまたは複数のあらゆる組合せを含む。
【0051】
要素または層が別の要素または層「上にある(on)」、「に接続されている(connected to)」、「に結合されている(coupled to)」、または「に隣接する(adjacent to)」ものとして参照されているとき、これは、直接、他の要素または層の上にあり、それに接続されており、それに結合されており、またはそれに隣接している可能性があり、または介在する要素または層が存在してもよいことが理解されよう。対照的に、要素が別の要素または層「の直接上にある(directly on)」、「に直接接続されている(directly connected to)」、「に直接結合されている(directly coupled to)」、または「に直に隣接する(immediately adjacent to)」として参照されているとき、介在する要素または層は存在しない。
【0052】
本発明の実施形態を、本明細書において、本発明の理想化された実施形態(および中間構造)を概略的に示す断面図を参照して説明する。そのため、たとえば、製造技法および/または許容誤差の結果として図示されている形状から変形していることが予測されることになる。したがって、本発明の実施形態は、本明細書に示す領域の特定の形状に限定されるものとして解釈されるべきではなく、たとえば、製造から生じる形状の逸脱を含むべきである。したがって、図面に示す領域は本質的に概略的であり、それらの形状は、デバイスの領域の実際の形状を示すようには意図されておらず、本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【0053】
別途規定しない限り、本明細書で使用するすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているところと同じ意味を有する。一般的に使用されている辞書において定義されているもののような用語は、関連技術および/または本明細書の文脈におけるそれらの意味と一致した意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明確にそのように規定されていない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味においては解釈されないことがさらに理解されよう。
【0054】
本明細書において、液晶(LC)材料を参照して本発明の実施形態を説明する。LCは、分子の秩序配置が存在する液体を含み得る。一般的に、LC分子は異方性であり得るし、細長い(棒状)または平坦な(円盤状)形状のいずれかを有する。異方性分子が秩序化されている結果として、大量のLCは、その機械的、電気的、磁気的、および/または光学的特性における異方性のような、その物理的特性における異方性を呈することが多い。本明細書で使用される場合、LCは、ネマティック相、キラルネマティック相、スメクティック相、キラルスメクティック相(強誘電体LCを含む)、および/または別の相を有することができる。棒状または円盤状の性質の結果として、LC分子の配向の分布が、液晶ディスプレイ(LCD)のような光学用途において重要な役割を果たし得る。これらの用途において、LC配列は配向面によって決定づけられ得る。配向面は、LCがその面に対して予測可能かつ制御可能に整列するように処理され得る。いくつかの実施形態において、配向面はLC層を通じて単一ドメインを保証し得る。他の実施形態において、配向面はLC層全体を通じて多くのドメインおよび/または多くの不連続性を提供し得る。
【0055】
ラビングしたまたは光重合可能ポリマーのようないくつかのポリマーが、本明細書に記載する光学層を作成するための配向層として使用され得る。これらのポリマーは、LCに対して不活性であり得るし、LCデバイスの動作温度の範囲(たとえば、約−50℃〜約100℃)にわたって安定した配列をもたらすものであり、本明細書に記載する製造方法に適合するものである。本明細書における配向層として使用され得るポリマーのいくつかの例は、ポリイミド、ケイ皮酸エステル、カルコン−エポキシ材料、およびクマリン側鎖ポリイミドを含む。液晶配向の方法のさらなる例は、Crawford et al.に対する米国特許第7,196,758号においても説明されている。さらに、本明細書に記載されているいくつかの構造は、スピンコーティングプロセスおよび液晶材料の調和を通した精密な製造を含み得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「重合可能液晶」とは、重合することができる、相対的に分子量が小さい液晶材料を指すことができ、本明細書においては「反応性メソゲン」として記載されている場合もあることが当業者には理解されよう。対照的に、「非反応性液晶」は、重合することができない、相対的に分子量が小さい液晶材料を指すことができる。また、「透過性(transmissive)」または「透明(transparent)」な基板または要素とは、入射光の少なくとも一部が通過することが可能なものであり得る。言い換えれば、本明細書に記載される透過性または透明な要素は、完全に透明である必要はなく、等方性または2色吸収特性を有してもよく、および/または、他の様態で入射光の一部を吸収してもよい。透明基板は、いくつかの実施形態においてはガラス基板であってもよい。対照的に、「反射性(reflective)」基板または要素とは、入射光の少なくとも一部を反射するものであり得る。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態は、広帯域偏光変換を達成することができ、それによって、特定の偏光を有する入力光が目標または所望の偏光に変化することができる、方法およびデバイスを提供する。これは、所望の偏光が通過することを許容し、望ましくない光が吸収または方向転換される、従来の偏向器素子によって達成される偏光変換とは対照的なものである。広帯域光の精密な偏光変換は、LCD、光ストレージ、複屈折性光学機器、光学的リモートセンシング、および光ファイバ網を含む多くの用途に使用することができる。別個に形成されてその後組み立てられる、単純な複屈折素子の個々の複数のスタックを使用する従来の方法は、所望の広帯域偏光変換性能を達成することが不可能であり得るし、および/または、大きい開口、小さい厚さ、および/または許容可能な費用を容易にもたらすことができない。
【0058】
特に、本明細書に記載する本発明の実施形態は、広帯域偏光変換の効率的制御を可能にする、本明細書においてマルチツイストリターダ(MTR)と称する2つ以上の複屈折層を含む光学素子を提供する。たとえば、MTRは、単一の実質的に均一な配向面上の少なくとも2つの一般ネマティック液晶層から成る配列を含んでもよく、それらの層のうちの少なくとも1つは、層の厚さにわたってねじられているネマティックディレクタ(すなわち、ローカル光軸)を有し、後続の層は先行する層の露出面によって直接整列される。これによって、製造をより単純にすることが可能になり、自動的な層間位置合わせが達成され、結果として、その厚さにわたって連続的に変化するローカル光軸を有する一体的なフィルムがもたらされる。対照的に、多くの従来の手法において、層は一般的に別個に形成されてその後組み立てられ、1つの層の端部におけるねじれ角は一般的に、次のねじれ層の開始角と整列されていないか、またはそれに平行である。
【0059】
加えて、本発明の実施形態による構造は、中心波長(たとえば、550nm)に対して約15%(たとえば、100nm)、約35%(たとえば、200nm)、またはそれ以上大きい波長範囲にわたる広帯域(すなわち、無彩色)4分の1波長および2分の1波長遅延を含む、所望のほぼすべての波長、帯域幅、または入射角範囲について良好に制御された偏光変換を達成する一体型複屈折板を形成する。特定の実施形態において、2つまたは3つの層を使用して、優れた性能および潜在的に非常に低い費用で、広帯域4分の1波長および2分の1波長遅延を達成することができる。追加の層が、フーリエ級数の追加の項と同様の態様で、波長または視野角の関数としての偏光変換プロファイルにわたるさらに精細な制御を可能にすることができる。いくつかの実施形態において、そのような追加の層を使用することによって、真の光軸、すなわち、それに沿って直線偏光が維持される方向を有するMTR設計が可能になり得る。入力偏光と出力偏光との間で所望される正確な関係は、(本明細書に記載する広帯域4分の1波長および2分の1波長の実施例におけるように)波長とは無関係であり得るか、または、(本明細書に記載する補償フィルムおよび電気通信の実施例におけるように)用途に依存する、波長の、何らかの一定でなく自明でない関数であり得る。製造がより単純であり、自由度が大きいことに起因して、本明細書に記載のMTRは、パターン化アクロマティックリターダに特に良好に適することができ、大きい帯域幅および/または可視〜赤外線波長内での遅延の低変動を達成することができる。しかしながら、概して、相対的に広い波長範囲にわたる無彩色(またはほぼ一定の)遅延スペクトルを参照して本明細書に記載するが、本発明の実施形態によるMTRはそのように限定され得ず、所与のスペクトルの異なる領域にわたる異なる遅延を提供するように構成することができることが理解されよう。たとえば、非無彩色遅延スペクトルの一実施形態は、緑色波長(たとえば、緑色に対応する可視スペクトルの範囲内に入る波長)についてほぼ2分の1波長の遅延を提供するが、赤色および青色波長についてはほぼゼロの遅延を提供するように構成されたMTRである。非無彩色遅延スペクトルの別の実施形態において、MTRは、より長い波長(たとえば、赤外線)についてほぼ2分の1波長の遅延を提供し、より短い波長(たとえば、可視)については異なる遅延を提供するように構成され得る。
【0060】
関連の米国特許出願第60/912,044号も、配向面上の単一のフィルムまたは一体型素子を画定する2つのねじれ層を使用した無彩色偏光変換を記載している。当該特許文献に記載されているいくつかの実施形態において、配向面は、空間的に不均一な周期的パターンが存在するよう、偏光ホログラムによってパターン化され得る。それゆえ、それらの実施形態において達成される、入射光に対する光学的効果は、本明細書に記載する本発明の実施形態によって達成されるような遅延(すなわち、偏光の変化)ではなく、回折(すなわち、伝播方向の変化)である。
【0061】
本明細書に記載のリターダは、電磁波の直交する電場成分の間の複数の異なる位相シフトを誘起することによって、伝播方向に実質的に影響を与えることなく偏光を変換することができる複屈折素子であり、波長板とも称される。いくつかの基本的なリターダは、厚さdでの一様な一軸複屈折Δnによって規定されてもよく、波長λによって大きく変化する位相遅延Γ=2πΔnd/λを有し得る。
【0062】
広範囲の波長にわたって精密に制御することができる広帯域(無彩色を含む)偏光変換は、人間の知覚、または、複数の異なる波長における複数の同時のチャネルを含む用途において特に重要であり得る。不都合なことに、多くの光学材料の複屈折Δn(λ)のスペクトル分散は、一般的に、1つの板の中での広帯域偏光変換を可能にすることができない。代わりに、遅延補償の原理によって広帯域挙動を達成する、複数の複屈折板を含むいくつかの技法が開発されており、1つの板の遅延における不足が後続の板によって少なくとも部分的に補正されるが、これらの技法は、個々に製造されその後整列される複数の要素を使用することに起因して、以前の手法と同様に製造が複雑であるという問題があり得る。製造が複雑であることは、各LC要素が2つの基板および2つのLC配向層(それら自体に配向問題がある)を含む場合にさらに拡大され得る。
【0063】
対照的に、本発明のいくつかの実施形態による光学フィルムまたは素子は、単一の配向面を含み、その上に少なくとも2つのねじれ複屈折光学リターダ層(たとえば、一般ねじれネマティック液晶層)が配置され、これは本明細書においては概して多層ねじれリターダまたはマルチツイストリターダ(MTR)と称され得る。図面に示す円筒形によって表されるローカル光軸(たとえば、液晶のネマティックディレクタ)は、(任意の層の底部で)それより下にある表面の配向方向によって確立され、フィルムの厚さにわたって連続的に変化する光軸を有する一体型フィルムがもたらされる。
【0064】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による光学素子またはフィルム(本明細書においてはMTRと称する)を、断面において示す。
図1に示すように、第2の光学リターダ層102が、第1の光学リターダ層101上に形成されて多層構造を形成している。第1の層101および第2の層102は、同じまたは互いに対して反対のねじれ方向に従って、それぞれの厚さd
1およびd
2にわたって回転されている分子構造を有し得る。たとえば、第1の層101および第2の層102は、同じまたは反対の掌性のキラル分子(すなわち、異なる左形および右形(left-handed and right-handed forms)を有する非対称分子)を含むことができる。そのため、いくつかの実施形態において、第2の層102は、厚さd
1にわたる第1の層101のものと異なる、および/または反対である、厚さd
2にわたってそのローカル異方性パターンの位相シフトを有し得る。
図1において、第1の層101および第2の層102は、キラル液晶(LC)層として示されている。厚さd
1およびd
2はそれぞれ、第1の光学層101および第2の光学層102の対向する面の間で規定され、厚さd
1およびd
2は、いくつかの実施形態において異なってもよい。より一般的には、本明細書に記載する実施形態において、光学フィルムは、2つ以上の層を含んでもよく、これらの層のうちの少なくとも2つは、異なるねじれ角(異なるねじれ方向を含む)および/または異なる厚さを有する。
【0065】
特に、
図1に示すように、第2の層102の分子は、第1の層101の分子(たとえば、左)と比較して掌性が反対(たとえば、右)である。たとえば、第1の層101は、その中の分子の配向が層101の厚さd
1にわたってねじれ角φ
1で回転され、または「ねじれ」得るように、キラル分子でドープされてもよく、第2の層102は、その中の分子の配向が層102の厚さd
2にわたってねじれ角φ
2で回転され、または「ねじれ」得るように、別のキラル分子でドープされてもよい。第1のねじれ角φ
1または第2のねじれ角φ
2は、いくつかの実施形態においては0°であってもよい。第1の層101および第2の層102の製造において、ネマティックLC混合物が、実質的に欠陥のないそれぞれのねじれ角をその中に生じさせるように構成されているキラルLC分子でドープされ得る。それぞれのねじれ角φ
1およびφ
2は、キラルドーパントの量を変えること、および/または光学リターダ層の厚さを変えることによって変更されてもよい。各光学層101、102内の分子の「ねじれ」によって、そのそれぞれの厚さd
1、d
2にわたるローカル異方性パターンにおける連続した位相シフトがもたらされ得る。
【0066】
図1にさらに示すように、第1の光学層101および第2の光学層102の分子は、それらの間の界面109において整列され、または同相にある。特に、第1の光学層101および第2の光学層102のそれぞれの分子的分子は、界面109の平面または方向に沿った方向において実質的に均一な(たとえば、空間的に変化しない)配向を有している。そのため、第1の光学層101および第2の光学層102は、そのそれぞれの厚さに沿った方向において連続的に変化する分子配向を有し、それらの間の界面に沿った方向において変化しないまたは実質的に均一な分子配向を有する、一体型光学素子またはフィルム100を規定する。
【0067】
図1に示す実施例において、第1の光学層101および第2の光学層102は配向面115上に設けられ、配向面は、配向面115の平面内で、ある方位角(本明細書においては開始角φ
0とも称する)における実質的に均一な左から右への配向方向を有する。第1の層101内のネマティックディレクタ配向は、配向面115との界面におけるこの方位角φ
0から開始し、その後、その厚さd
1全体にわたって、第1の層101内に利用されているねじれネマティック液晶材料の対掌性によって生じるねじれ角φ
1でねじれ、何らかの最終方位角φ
0+φ1に至り、これによって、第2の層102に対する整列がもたらされる。第1の層101との界面109における第2の層102内のネマティックディレクタ配向は、φ
1の値に応じて、配向面115上の配向状態に対応する場合もあるし、または対応しない場合もある。第2の層102のネマティックディレクタ配向は、第1の層101との界面109における角度φ
0+φ
1から開始し、その厚さd
2全体を通じてねじれ角φ
2でねじれ、何らかの最終的φ
0+φ
1+φ
2に至る。これは第2の層102上に形成される場合がある後続のねじれネマティック層について同様に継続しており、これは以下の概括的な原理、すなわち、第1の層101が配向面115によって整列され、すべての後続の層が先行する表面によって整列されて、単一の分割できない薄膜が形成されるという原理を採用している。
【0068】
いくつかの実施形態において、第1の層101および第2の層102は、液晶プレポリマーおよび溶媒の混合物を使用して形成されてもよい。たとえば、第1の層101は第1のキラルネマティックLC材料(すなわち、所定の掌性またはねじれ方向をもたらすためにキラル液体でドープされた非キラルネマティック液晶層)を配向面115上に、所望の厚さd
1に達するように回転成形することによって形成されてもよい。いくつかの実施形態において、配向面115は、本明細書においてさらには説明しない技法によって、ガラス基板のような透明基板上に形成される、ラビングしたポリイミド配向層または光配向層であってもよい。第1のキラルLC材料の分子は、(たとえば、方位角φ
0に沿って)配向面115によってもたらされる均一な配向状態によって整列されてもよいし、第1のキラルLC材料が、たとえば、ブランケット紫外線(UV)露光を使用して重合され、その中の光学異方性が永続的に固定されて第1の光学層101が形成されてもよい。同じまたは反対の掌性/ねじれ方向をもたらすようにドープされた第2のキラルネマティックLC混合物は、同じく所望の厚さd
2に達するまで第1の層101上に回転成形または他の様態で直接被着されてよく、第2のキラルLC材料の分子は、第1の層101の分子に従って、それらの間の界面109において整列されてよい。言い換えれば、第1の層101の表面は、第2のキラルLC混合物のための配向面として作用し得る。第2のキラルLC混合物は、その後、重合されて、第2の層102が形成され得る。二色性もしくは蛍光染料またはナノ粒子のような、他のドーパントも、ねじれ液晶層101および102のいずれかの中に含まれてもよい。
【0069】
他の実施形態において、切替可能液晶光学フィルムが形成されてもよい。より詳細には、第1の層101は、第1の配向面上に所定の掌性またはねじれ方向および所望の厚さd
1を有して、上述のように形成され得る。その上に第2の配向面を含む反対の透過性基板(ガラス基板など)が、所望の厚さd
2に対応するセルギャップをもって第1の層101に積層され得る。第2の配向面は、第1の光学層101のねじれ方向に基づいて第1の光学層101の表面の配向状態に対してずれている配向状態を含み得る。第2の配向面と第1の層101との間の間隙に、反対のねじれ方向を有するキラルネマティックLC材料が充填されて、第2の層102としての液晶層が設けられ、それによって、切替可能液晶光学フィルムが画定され得る。第2の層102の分子の配向は、それを通って進行する光の偏光に実質的に影響を与えない第1の状態と、第2の層102に印加される電圧に応答してそれを通って進行する光の偏光を変更する第2の状態との間で切り替えることができる。
【0070】
いくつかの実施形態において、ラビングしたポリマーまたは直線光重合可能ポリマー(LPP)が、配向面115を形成するのに使用されてもよい。レーザ、またはいくつかのランプを含む任意の狭帯域光源(時としてUV波長範囲内の)が使用されて、空間的に均一な方位角および傾斜角境界条件を有する配向状態が光配向面115上に露光または形成され得る。露光後、第1の光学層101および第2の光学層102は、スピンコーティングによって配向面115上に堆積され得る。第1の層101は、RMS03−001C(Merck Ltd、589nmにおいてΔnが〜約0.16)と小量(〜約0.3%)のキラルドーパントCB15(Merck Ltd、右掌性)とから成る混合物であってもよい。第2の層102は、第1の層101の上に直接堆積されてもよく、異なる厚さ、ねじれ方向、および/またはねじれ角を受ける、小量(〜約0.3%)の異なるキラルドーパントZLI−811(Merck Ltd、左掌性)でドープされたRMS03−001Cから成ってもよい。しかしながら、それだけに限らないが、ラビングしたポリマー(たとえば、ポリイミドまたはPVA)、延伸ポリマーフィルム、偏光子として作用する配向分子、先行する液晶層(たとえば、コレステリック液晶)、および/または基板自体(これらに限られない)を含む、多くの他の配向面がいくつかの実施形態で使用されてもよいことが理解されよう。
【0071】
本明細書に記載の本発明の実施形態は、数値計算方法(Berreman 4x4転送行列法)を使用してシミュレートされ、その後、理論方程式を使用して分析され、実験的に試験されている。単純にするために、上記のすべてを参照して本発明の実施形態の機能原則を説明する。
【0072】
本明細書に記載する光学フィルムまたは他の複屈折素子の構成は、偏光変換器として機能するため、その光学的ふるまいを観察するための様々な方法があり、それらのうちのいくつかは変換のタイプに依存し得る。たとえば、遅延(Δnd、長さ単位)は、複屈折層からの偏光出力の2つの直交成分の間の相対位相差を説明する。同様であるが正規化された、遅延特性と称される量(Δnd/λ、波長単位)を広範囲の波長にわたる分析に使用することができる。加えて、いくつかの場合において、特定化された量を分析に使用してもよい。そのような特定化された量は、入力直線偏光を出力円偏光に変換する量の測度である、ストークスパラメータ、または、楕円率e=tan((asin
−1(−S
3)/2)のような、それによって計算される何らかの関数のうちの1つを含んでもよい。
【0073】
本明細書に記載する実施例および実施形態について、波長(すなわち、色分散)にいくらか依存する現実的な複屈折(Δn(λ)=0.128+8340/λ
2、波長はnm単位)を仮定することができる。この特定の複屈折分散は、液晶ポリマーRMS03−001C(Merck Ltd)に対応する。本明細書において、特定の材料およびその特性を参照して実施例が説明されているが、本発明の実施形態は、そのような特定の材料には決して限定されないことは理解されよう。
【0074】
図2Aおよび
図2Bはそれぞれ、
図1に示す多層ねじれリターダ構成100についての出力S
3パラメータおよび楕円率を示すグラフである。特に、
図2Aおよび
図2Bは、代表的な事例として、水平直線偏光入力光(すなわち、S
1=1)に対して広帯域4分の1波長遅延(すなわち、目標S
3=+1.0)をもたらす、本発明の実施形態による2つの設計を特定している。
図1に示すように、表1(下記)において一覧にされている角度および厚さを有する2つのねじれ層101および102が利用されており、本明細書において、実施形態1aおよび1bと称される。
図2A〜
図2Bにおいて実施形態1a(実線)および実施形態1b(破線)について示す出力楕円率およびS
3パラメータは、両方とも、実質的により広い帯域幅または波長範囲にわたって、目標または所望のS
3=+1.0により近くなっている。楕円率はこれをさらにより強調する、すなわち、実施形態1a(実線)は、より広い帯域幅の楕円率>0.9を有し、実施形態1b(破線)は、スペクトルの中心におけるより広い領域にわたってより高い楕円率(>0.95)を有する。
【0075】
上述の実施形態による光学フィルムは、商用の液晶および配向材料を使用して実験的に製造されており、その結果は
図3に示されている。キラル濃度およびスピンコータ処理条件はわずかに変化させた。特に、本発明の実施形態による3つの異なる試料光学フィルム300a、300b、300cについての測定楕円率を
図4に示し、曲線は、実施形態1の構成と一致する広帯域楕円率を示す。加えて、
図4A〜
図4Cは、商用の広帯域4分の1波長基準フィルムである「AQW2」フィルム(供給元、ColorLink Japan Ltd)と比較した、異なる偏光子構成の間の3つの試料フィルム300a、300b、300cを示す写真である。特に、
図4Aは、平行偏光子の間の3つのフィルム300a、300b、300cを示しており、
図4Bは、45度の角度で配置された偏光子の間の3つのフィルム300a、300b、300cを示しており、
図4Cは、交差した(90度の角度で配置された)偏光子の間の3つのフィルム300a、300b、300cを示している。平行(
図4A)および交差(
図4C)の事例の外観はほぼ同一であり、結果の質を強調している。
【0076】
図5Bおよび
図5Cは、それぞれ、
図5Aに示し本明細書においては実施形態2と称する、本発明の実施形態による3つの積層複屈折層501、502、503を含む光学リターダ構成500についての出力S
3パラメータおよび楕円率を示すグラフである。実施形態2は、実施形態1よりもさらにより広い広帯域4分の1波長遅延を達成する多層ねじれリターダ500を提供する。特に、表1に示すようなねじれ角(φ
1、φ
2、φ
3)および厚さ(d
1、d
2、d
3)を有する3つのねじれ層501、502、503が配向面515上に形成されている。
図5Bおよび
図5Cに示すように、実施形態2(実線)は、400〜800nm範囲全体について+1に近い出力ストークスパラメータS
3および楕円率e>0.95を明示しており、これは、実施例1(一点鎖線)および実施例2(点線)にまさる実質的な改善をもたらす。
【0077】
本発明のさらなる実施形態は、直線偏光子695と、それぞれ、
図6Aおよび
図6Bに示す実施形態1または2のいずれかに従って形成される広帯域4分の1波長リターダとを組み合わせることによって形成される円偏光器を提供し得る。特に、
図6Aは、直線偏光子695上の、配向面615上に積層されている2つの複屈折層601、602を含む構成600aを示しており、各層601および602は、異なる厚さd
1およびd
2ならびに反対のねじれ方向を有するねじれ角φ
1およびφ
2を有する。同様に、
図6Bは、直線偏光子695上の、配向面615上に積層されている3つの複屈折層601、602、603を含む構成600bを示しており、層601は、層602および603の厚さd
2およびd
3とは異なる厚さd
1を有し、層601および603は、層602のねじれ角φ
2のねじれ方向と反対の、同じねじれ方向を有するねじれ角φ
1およびφ
3を有する。しかしながら、いくつかの実施形態において、光学層が製造された後に配向面615は除去されてもよく、かつ/または、接着剤を使用して偏光子695上に光学層を積層してもよいことは理解されよう。
【0078】
光ストレージデバイスのようないくつかの事例において、様々な波長を有する複数のレーザが利用され、したがって、それらの波長において、またはそれらの波長付近でのみ偏光変換が指定または必要とされてもよい。たとえば、一体型BR/DVD/CDプレーヤの光路に使用される4分の1波長リターダは、405nm(BR)、650nm(DVD)、および780nm(CD)付近で1.0に近い楕円率を必要とし得る。
図7Aおよび
図7Bは、それぞれ、本明細書において実施形態3と称する、2つの積層光学層を含む別の多層ねじれリターダ構成についての出力S
3パラメータおよび楕円率eを示すグラフである。実施形態3において、2つの積層ねじれ層は、表1に示す、異なるねじれ角および厚さを有し、これらの波長帯域の各々について0.9に近い楕円率を達成する。特に、
図8Bは、実施形態3の構成の楕円率(実線)が、405nm、650nm、および780nmにおいて0.9に近いことを示している。本明細書に記載する他の実施形態と同様に、実施形態3は自己整合層を用いて単一の基板上に形成されているため、いくつかの現行の製品と比較して製造複雑度(およびそれゆえ、費用)を実質的に低減することができる。
【0080】
本明細書に記載する実施形態3による光学フィルムも、商用の液晶および配向材料を使用して実験的に製造されており、その結果は
図8に示されている。キラル濃度およびスピンコータ処理条件はわずかに変化させた。特に、いくつかの異なる試料800a、800bについての測定楕円率が
図8に示されており、曲線は、実施形態3に一致する、BR/DVD/CDデバイスのレーザ波長付近で0.9に近い楕円率を示している。
【0081】
いくつかの層、厚さ、およびねじれ角の特定の組合せを参照して上述したが、これらのパラメータのうちの1つまたは複数は、所望の結果を達成するために本発明の実施形態に従って変更されてもよいことは理解されよう。たとえば、4分の1波長遅延を参照して上述したが、いくつかの実施形態は、広帯域2分の1波長遅延、または、波長に対して相対的に一定である任意の他の遅延特性を提供するように構成されている2つのねじれ層を含む多層ねじれリターダ構成を提供してもよい。
【0082】
本発明のさらなる実施形態は、たとえば、層の数、ねじれ角、および/または各層の厚さを変更することによって、広い視野のための広帯域遅延を提供するように構成されている2つまたは3つのねじれ層を含む、多層ねじれリターダ構成を提供し得る。特に、本発明のいくつかの実施形態は、広帯域特性の増強に加えて、視野角特性の増強をもたらすように設計することができる。たとえば、光学アセンブリは、いくつかの極角および方位角において光が入射する、直線偏光子と、4分の1波長多層ねじれリターダと、ミラーとを含むことができる。このアセンブリは基本的に、ミラーと組み合わせた円偏光子を提供し、いくつかの用途の中でも、OLEDディスプレイのコントラスト比の増強をもたらすのに使用することができる。特に、直線偏光子は入射光を直線偏光に(たとえば、水平直線偏光に)変換し、4分の1波長リターダは直線偏光をある掌性(たとえば、右掌性)の円偏光に変換し、ミラーは円偏光を反射するとともにその掌性を逆に(たとえば、左掌性に)し、この光はその後、戻って4分の1波長リターダを通過して直線偏光に(たとえば、垂直直線偏光に)なり、その後、偏光子によって吸収される。
【0083】
そのようなアセンブリは、リターダが4分の1波長遅延を提供するときは、偏光されていない入射光を反射せず(すなわち、暗く見え)、遅延が4分の1波長でないとき(たとえば、リターダが4分の1波長遅延以外の遅延、たとえば、2分の1波長遅延を提供するとき)は、灰色または有色に見える。さらに、法線方向(すなわち、0°の極角)に沿って4分の1波長遅延条件が満たされているときであっても、より大きい角度(すなわち、30°以上)においてはより大きい光もれが発生し得る。この2つの比較例を
図11Aおよび
図11Bに示し、
図11Aは、狭帯域位相差板の反射特性を示し、
図11Bは3層ねじれなし広帯域位相差板の反射特性を示し、これらはそれぞれ、
図2Aおよび
図2Bを参照して上述した実施例1および2の4分の1波長リターダと同様である。
図11Cに示し本明細書において実施例3と称する第3の比較例は、4分の1波長リターダが(たとえば、米国特許第7,187,424号に記載のタイプの)単一のねじれ層である、反射特性を示している。各々の構成の層についての特定の特性を凡例に示す。3つすべての比較例において、何らかの波長および何らかの角度において実質的な光もれがある。
【0084】
多層ねじれリターダ構成が視野角特性を改善することができることを実証するために、本発明の実施形態による2つの設計の結果を
図12Aおよび
図12Bに示す。
図12Aに示すグラフは、本明細書において実施形態4aと称する、2つのねじれ層を有するMTRの反射特性を示し、その具体的詳細は上記表1に示されている。
図12Bに示すグラフは、本明細書において実施形態4bと称する、3つのねじれ層を有するMTRの反射特性を示し、その具体的詳細は上記表1にある。
図12Aおよび
図12Bに示すように、両方の実施形態4aおよび4bについて、ほぼすべての波長および角度について
図11A〜
図11Cの比較例と比較して反射性が低減されている。
【0085】
上述した本発明の実施形態に従って形成されたパターン化広帯域リターダは、複数の個別のドメインを提供するために同一平面内にまたは隣り合って配置することもできる。より詳細には、配向面を複数の(すなわち、2つ以上の)別個のドメインに分けてパターン化することができ、方位角φ
0は各ドメイン内では一定であるが、ドメイン間では異なり、これらのドメインのすべての側方寸法は、回折を避けるために光の波長(および複屈折層の厚さ)よりもはるかに大きい(>100λ)。
【0086】
図9Aは、各々の中に、実質的に均一であるが異なっている配向状態を有する2つの隣接するドメインまたは領域915aおよび915bを含む配向面915上の2つの層901および902を含む、多層ねじれリターダ構成900を示す。第1の層901がパターン化マルチドメイン配向面915上に形成されると、第1の層901の分子は、各ドメイン915aおよび915bの方位角φ
0a、φ
0bに従って整列され均一に配向され得るし、第2の層902は第1の層901によって整列され得る。後続の追加の層(図示せず)も、それより下の層によって形成および整列され得る。また、1つまたは複数の追加のおよび/または交互のドメイン/領域が、第2のドメイン/領域915bに隣接して配向面915内に設けられてもよい。したがって、本発明の実施形態は、空間的変動を有する偏光変換、たとえば、直線偏光を受け入れて、これを、各ドメインが異なる掌性を有する円偏光に変換し、またはその逆を行う4分の1波長遅延を提供することができる。そのようなパターン化リターダは、3D LCD、偏光イメージングカメラ、および偏光変換システム(PCS)を含む他の光学系で使用することができる。本明細書に記載の実施形態は、下記の実験結果に示すように1Dルーバとして使用することもでき、配向面があるドメイン内で均一な配向を提供する、2D格子パターンとすることもできる。
【0087】
図9Aの実施形態による光学フィルムも、商用の液晶および配向材料を使用して実験的に製造されており、その結果は
図9Bの写真に示されている。最初に、配向面915(ここでは、光配向ポリマー)がクロムマスクを通じた偏光フォトリソグラフィを使用してパターン化された。クロムマスクは、複数の隣接する領域またはドメイン915a、915bを画定するために使用されており、これらの領域またはドメインの各々は、空間的に均一な配向状態を有する。本明細書に述べたように、空間的に均一な配向または境界条件は、各ドメイン915a、915b内で均一であるものとして理解されるものであり、回折を避けるために波長よりもはるかに大きい寸法を有する。その後、配向面915が、
図1および/または実施形態1を参照して上述したものと同様な態様で、液晶材料でコーティングされた。
図9Bの写真は試料を示しており、2つのドメイン1、2がそれらの間に鮮明な境界9を有して作成されており、両方のドメイン1、2は広帯域4分の1波長特性を有するが、ドメイン1の有効光軸(および表面方位角φ
0a)は、ドメイン2の有効光軸(および表面方位角φ
0b)に直交している。
【0088】
上述した本発明の実施形態に従って形成されたパターン化広帯域リターダは、連続的に変化する光軸をも提供することができる。より詳細には、配向面は、方位角φ
0が、1つまたは複数の横断寸法において(たとえば、配向面の平面によって画定されるように、x方向またはy方向のみにおいて、またはx方向およびy方向の両方において)、配向面にわたって連続的に変化するように、パターン化されることができる。
【0089】
特に
図10Aは、基板1010上の配向面1015上に積層されている2つの複屈折層1001、1002を含む多層ねじれリターダ構成1000aを示す。配向面1015は、連続可変配向状態を含み、各層1001および1002は、同じまたは異なる厚さd
1およびd
2、ならびに、同じまたは反対のねじれ方向を有するそれぞれのねじれ角φ
1およびφ
2を有する。いくつかの実施形態において、配向パターンまたは配向状態は、方位角φ
0(x)またはφ
0(x,y)によって制御され、一方で、各層1001、1002内のねじれφ
1、φ
2は、各厚さd
1、d
2の中で同じであってもよい。同様に、
図10Bは、連続的に変化する配向状態を含む配向面1015上に積層されている3つの複屈折層1001、1002、1003を含む構成1000bを示しており、層1001、1002および1003のうちの1つまたは複数は同じまたは異なる厚さd
1、d
2、d
3を有し、層1001、1002、1003は、同じまたは反対のねじれ方向を有するそれぞれのねじれ角φ
1、φ
2、φ
3を有する。したがって、本発明の実施形態は、1つまたは複数の寸法において連続的な空間的変動を有する偏光変換を提供することができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態による偏光変換素子の具体的な非限定例をさらに、下記により詳細に説明する。特に、本発明のいくつかの実施形態は、本明細書においてマルチツイストリターダ(MTR)と称する、単一の配向層および基板上の複数のねじれLC層を使用する、広帯域リターダを提供する。各MTRにおいて、後続のLC層は先行するものによって直接整列され、結果として、より低い製造複雑度で生成することができ、ほぼ任意の帯域幅および形状について遅延制御が可能である一体型フィルムがもたらされる。本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態は、明白に、1つの可能なねじれ層としてゼロねじれ角(すなわち、一様な層)を可能にする。言い換えれば、本発明のいくつかの実施形態によるMTRは、2つ以上の自己整合層を含み、2つの層のうちの少なくとも1つは非ゼロねじれを有する。
【0091】
MTRによって提供される自由度を使用して、いくつかの従来の手法と比較して、偏光変換性能を向上させることができる。本発明の実施形態によるMTRのさらなる特徴は、それらがルーバ付き位相差板、ベクトルボルテックスプレート、および/または広帯域偏光格子を含むパターン化基板上において、より容易に被着されることである。
【0092】
本発明の実施形態によるMTRは少なくとも2つのねじれ複屈折層を含むため、高分子網目に形成することができるLC(たとえば、「重合可能」LC)が使用され得る。反応性メソゲンとも称されるLCポリマー(LCP)は、最初は低分子量のLCである。このLCは、表面(および固有のキラリティ)によって複雑なプロファイルに配向され、その後、光重合によって固体ポリマーフィルムに直され(cured)、結果として「重合」LC層になり得る。本発明の実施形態によるMTRの1つの特徴は、先行する層から後続の層へと伝播する配向、すなわち、自己クローニング配向である。言い換えれば、本明細書に記載する製造プロセスに従って形成されるMTRは、後続の層がその上に形成される先行する層が秩序立っていて重合されていることを条件として、後続の層の自発的な配向を可能にし得る。ほぼ任意のLCPが本明細書に記載のMTRに利用され得る一方で、いくつかの実施形態は、Δn(λ)=0.128+8390/λ
2の報告されている複屈折分散を有するRMS10−025(Merck Chemicals Inc.)を参照して説明されている。この現実世界の複屈折分散は、本明細書に記載するシミュレーションについて想定されている。
【0093】
図13に示すように、本発明の実施形態によるMTR1300のユニットセルは、2つ以上の複屈折層1301、1302、...130mを含み、層1301、1302、...130mのうちの少なくともいくつかは、異なるねじれ角φ
1、φ
2、...φ
mおよび/または異なる厚さd
1、d
1、...d
mを有する。層1301、1302、...、130mの各々の分子配向はそれより下の層によって確立され、それによって、層1301、1302、...、130Mの各々のそれぞれの分子配向はそれらの間のそれぞれの界面において整列される。本明細書に記載する場合、異なるねじれ角φ
1、φ
2、...φ
mとは、大きさの差および/または方向/ねじれ方向の差(たとえば、符号の正/負)を指し得る。複数のねじれの全体的な効果は、転送行列技法を使用して計算することができる。所与の材料について、合計M個の層を有するMTR1300は、2M+1個のパラメータを有する。すなわち、各層mがそれ自体のねじれφ
mおよび厚さd
mに加えて、基板1310上の配向層1315によって設定される第1のねじれ層の開始角φ
0を有する。これらの制約を使用して、任意の特定の層のミュラー行列Tmは以下のように書くことができる。
【数1】
上記において、各層は正規化遅延ζ
m=Γ
m(λ)/2=πΔn(λ)d
m/λ、パラメータ
【数2】
およびバイアス平均
【数3】
を有する。関数sineX
m=(sinX
m)/X
mである。本明細書に記載する場合、光軸は正Δn材料についてはLCネマティックディレクタに平行であり、これは遅軸である。それゆえ、MTR全体のミュラー行列は
T
MTR=T
M...T
2T
1 (6)
であり、出力偏光はS
o=T
MTRS
iとして求めることができ、ここで、S
o(λ)およびS
i(λ)はそれぞれ各波長についての入力偏光および出力偏光のストークスベクトルである。S=(S
0,S
1,S
2,S
3)
Tは、いくつかの手法を使用して測定することができる。MTRは一様でないプロファイルの一軸複屈折性を有し得るため、それらは、概して全体的に見ると一軸でも二軸でもないものであり得る。それにもかかわらず、有効遅延および光軸方向は、ストークス出力を、同じ入力偏光に対する、標準の一様なリターダから予測されるものと比較することによって、構造全体について計算することができる。
【0094】
MTRの設計は、一般的に、2M+1個のパラメータを選択することを含む。原則として、これは、行列T
MTRを使用し直接行うことができる。一般偏光変換問題が、N個の特定の設計波長についての既知の入力および所望の出力偏光のセットを含む場合、式(6)から生じる連立方程式を解いて、存在するときには実行可能な正確なMTR解を見つけることが可能であり得る。高いレベルにおいて、1つの設計プロセスは以下の通りである、すなわち、費用関数fを設定し、その大域的最小値(そして、時としては極小値)を求める。この費用関数は、特定の解の目標S
t(λ)および出力S
o(λ)偏光スペクトルの関数であり得るし(既知の入力S
i(λ)が与えられた場合)、または、T
MTR[row,col]の成分の1つの関数であり得る。例は、
【数4】
を含む。多くの場合、探索がより迅速に収束するように、
【数5】
のような、さらにより非線形的である費用関数を適用することが望ましい場合がある。ここで、
【数6】
は楕円率である。なお、fは、他の制約、たとえば、製造の嗜好または制限を含むように設定される場合もある。
【0095】
dおよびφに対する保守的な制約内であっても、この計算は、多数の極小値をもたらす可能性があり、それらの多くはほぼ同一のfの結果を有する均等な大域的最小値である。この劣決定の状況において、好都合な解がランク付けおよび選択され得る。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態は、4分の1波長および2分の1波長位相リターダの改善されたまたは最適な設計をさらに提供する。単純および明瞭にするために、これらの実施形態は、可視波長の光を参照して説明されているが、本発明の実施形態の機能は可視波長には限定されず、赤外線および/または紫外線波長にわたっても同様に動作可能であり得ることは理解されよう。さらに、いくつかの実施形態において、ねじれ角を変更することなく個々の層の厚さをスケーリングすることによって、複数の異なる波長範囲の設計を得ることができる。
【0097】
4分の1波長(QW)リターダは、直線偏光(たとえば、Si=(1,1,0,0)
T)および円偏光(たとえば、S
t=(1,0,0,1)
T)への入力光/からの入力光を変換する。したがって、本明細書において説明するように、特定の波長について正確にT
MTR[2,2]=0、T
MTR[3,2]=0、およびT
MTR[4,2]=1であるか、または所与の帯域幅についてほぼこのようになる。下記に説明する例は、2つの事例、すなわち、約200nmの帯域幅範囲(たとえば、450〜650nm)にわたるM=2層を有するアクロマティックQW MTR、および、約400nmの帯域幅範囲(たとえば、400〜800nm)にわたるM=3層を有するスーパーアクロマティックQW MTRをカバーしている。便宜上、これらの設計をそれぞれ2TR設計および3TR設計と称し、表2に要約する。
【0099】
図14Aは、本発明のいくつかの実施形態による2層MTR設計1400を示す。多数の2TRアクロマティックQW設計が可能であり得るが、
図14の断面図は概して、そのような設計のために変更され得るパラメータを示す。特に、MTR1400は、それぞれ異なるねじれφ
1およびφ
2で、および/または異なる厚さd
1およびd
2にわたって回転されている分子配向を有する第1の複屈折層1401および第2の複屈折層1402を含み、第1の層1401のそれぞれの分子配向は、基板1410上の配向面1415内の実質的に均一な配向状態(開始角φ
0を提供する)によって確立され、第2の層1402のそれぞれの分子配向は、第1の層1401の表面でその上に提供される実質的に均一な分子配向によって確立される。1つの特定の解を、
図21A〜
図21Bを参照して下記に説明する。それにもかかわらず、約450〜650nmの帯域幅の中で費用関数
【数7】
の数値的な最適化を使用してこの解および他の解を求めることができる。
【0100】
表2に示す一例の実施形態(2TR QW−A)において、第1の層1401は、約0度のねじれ角を有し得るし(たとえば、「ゼロねじれ」層)、かつ第2の層1402は非ゼロねじれ角を有し得る(たとえば、「非ゼロねじれ」層)。表2に示すような他の例の実施形態(2TR QW−Bおよび2TR QW−C)は、それぞれ同じおよび反対のキラル掌性を有する、2つの非ゼロねじれ層を含む。2TR QW−Bおよび2TR QW−C構成は、いくつかの態様においてそれぞれ実施形態1aおよび1bの構成と同様であり得る。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態による直線(水平)入力偏光に対する2TR QW設計の出力を、2TR QW−A(実線)、2TR QW−B(破線)、および2TR QW−C(一点鎖線)についての
図16A〜
図16Dに示す。特に、
図16Aは、出力ストークス成分S
3が450nm〜650nmの波長範囲にわたって1にほぼ等しいことを示している。同様に、450nm〜650nmの波長範囲にわたって、
図16Bは、いくつかの実施形態による2TR MTRが約90°の実効的な正味遅延を提供することを示しており、一方で
図16Cは、MTRから出力される光の楕円率eが約0.95〜約1であることを示している。
図16Dは、光軸が450nm〜650nmの波長範囲にわたって約45度の角度に配向していることを示している。それぞれ厚さ1.75および0.88μmを有し、それらの光軸が15度および74度を向いている2つの均質な板を含む、従来のアクロマティックQW設計から比較結果も(破線で)示されている。
図16A〜
図16Dに示すように、本発明のいくつかの実施形態によるMTRによって提供される出力ストークス成分S
3、正味遅延、出力楕円率e、および有効光軸配向角は、従来のQW設計によって提供されるものと実質的に同様である。
【0102】
図14Bは、ポアンカレ球上の、本発明のいくつかの実施形態による、MTRによって提供される出力ストークス成分S
1 S
2 S
3を示す。ポアンカレ球は、2TR QWがどのように機能するかを説明する一助となる。特に、
図14Bは、450nm〜650nmのスペクトルにわたる2TR QW−Aの厚さを通じた偏光の展開を示す。2TR QW設計1400の第1の層1401は、入力直線偏光を重大な(nontrivial)楕円偏光に変換し、これはその後、第2の層1402によって目標円偏光に変換される。これは、その第1の層が赤道への、その後赤道から極に至るまでの偏光をとる、
図16A〜
図16D内の比較として示す従来の設計によってとられる経路とは異なる。そのため、いくつかの従来の手法とは対照的に、MTR1400によってもたらされるさらなる自由度によって、より可能性のある偏光軌道に対するアクセスが可能になり、それによって、最終的な偏光スペクトル分布の調節をより柔軟に行うことが可能になる。
【0103】
QWリターダの実際の帯域幅は、S
3≧0.995、および同等にe≧0.9であるおおよその波長範囲を、中心波長で除算したものとして定義され得る。したがって、本発明の実施形態によるいくつかの2TR QW設計は、約37%の帯域幅を有し得る。これは多くの用途にとって有用であるが、実質的により広い帯域幅が、
図15Aに示すように、追加の層を加えることによってもたらされ得る。
【0104】
図15Aは、本発明のいくつかの実施形態による3層MTR設計1500を示す。
図15Aは、概して、いくつかの3TRスーパーアクロマティックQW設計の変化している場合があるパラメータを含む断面図を示し、
図14Aの2TRアクロマティックQW設計よりも動作帯域幅が広くなっている。
図14Aの実施形態におけるものと同じ数値最適化手法およびfが使用されたが、こちらは400〜800nmの増大した波長範囲にわたっている。特に、MTR1500は、それぞれ異なるねじれφ
1、φ
2、およびφ
3で、および/または異なる厚さd
1、d
2、およびd
3にわたって回転されている分子配向を有する第1の複屈折層1501、第2の複屈折層1502、および第3の複屈折層1503を含み、第1の層1501のそれぞれの分子配向は、基板1510上の配向面1515内の、開始角φ
0を提供する実質的に均一な配向状態によって確立され、第2の層1502のそれぞれの分子配向は、その上の第1の層1501の表面で提供される実質的に均一な分子配向によって確立され、第3の層1503のそれぞれの分子配向は、その上の第2の層1502の表面で提供される実質的に均一な分子配向によって確立される。
【0105】
表2に示す一例の実施形態(3TR QW−A)において、第1の層1501はゼロねじれを有することができ、他の2つの層1502および1503は、任意の非ゼロねじれを有し得る。別の実施形態(3TR QW−B)において、ゼロねじれ制限は除去された。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態によるいくつかの3TR QW設計の出力が、2TR設計に対する多くの類似性があるが、帯域幅がより広くなっている3TR QW−A(実線)および3TR QW−B(一点鎖線)についての
図17A〜
図17Dに示されている。特に、
図17Aは、出力ストークス成分S
3が400nm〜800nmの波長範囲にわたって1にほぼ等しいことを示している。同様に、400nm〜800nmの波長範囲にわたって、
図17Bは、いくつかの実施形態による2TR MTRが約90°の実効的な正味遅延を提供することを示しており、一方で
図17Cは、MTRから出力される光の楕円率eが約0.94〜約1であることを示している。
図17Dは、光軸が400nm〜800nmの波長範囲にわたって約45度の角度に配向していることを示している。それぞれ厚さ1.6、1.6、および0.8μmを有し、それらの光軸が7°、27°、および65°を向いている3つの均質な板を含む従来のスーパーアクロマティックQW設計から比較結果も(破線で)示されている。
図17A〜
図17Dに示すように、本発明のいくつかの実施形態によるMTRによって提供される出力ストークス成分S
3、正味遅延、出力楕円率e、および有効光軸配向角は、従来のスーパーアクロマティックQW設計によって提供されるものと実質的に同様である。
【0107】
図15Bは、ポアンカレ球上の、本発明のいくつかの実施形態によるMTRによって提供される出力ストークス成分S
1 S
2 S
3を示す。特に、
図15Bは、425nm〜775nmのスペクトルにわたる3TR QW−Aの厚さを通じたポアンカレ球上の偏光の展開を示す。3TR QW設計の第1の層1501は、入力直線偏光付近で偏光を緩やかに扇状に展開させる。その後、これらの偏光は第2の層1502によって半球にわたって変換され、最終的には第3の層1503によって極に至る。これは、従来の3板設計によってとられる経路とは異なっている。従来の経路では、最初の2つの均質なHWリターダは、水平入力を、45°に整列した子午線に沿って第3の均質なリターダに入る3つの偏光状態まで回転させるように、特定の角度に整列されており、3つの偏光状態は、赤道の周囲に分散して、それらを極に送る第3の均質なリターダの分散に正確に一致する。
【0108】
本発明の実施形態による3TR QW設計は、約75%の帯域幅を有することができ、これは
図14Aに示す2TRよりも2倍大きいファクターである。そのため、特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載の本発明のいくつかの実施形態は、より多くの複屈折層を加えることによってより広い帯域幅を達成することができることを示している。
【0109】
本発明の実施形態によって提供される別の偏光素子が、1つの直線偏光を別の(回転した)直線偏光に/別の(回転した)直線偏光を1つの直線偏光に変換(lin−lin)する2分の1波長(HW)リターダであり、旋光を達成するのに使用することができる。同様に、HWリターダは、円偏光を直交する円偏光に変換(cir−cir)するのに使用することができる。下記に説明する例は、両方の変換を達成する2つのHW MTR設計をカバーしている。それぞれ450〜650nmおよび400〜800nmの帯域幅のための特定の2TRおよび3TR設計を表3に示す。以下の結果は、2TR HW設計および3TR HW設計の帯域幅が、上述の類似のQW MTRと同様である(すなわち、アクロマティック2TRおよびスーパーアクロマティック3TRについて、それぞれ37%および75%である)ことを示している。このHWの事例において、類似の帯域幅の定義は、|S
(1 or 3)|≧0.99に対する波長範囲を中心波長で除算したものである。
【0111】
単一ねじれLC層は中程度の帯域幅にわたる直線偏光の回転を達成することができる一方、MTRを使用して、相対的により小さい厚さでより広い帯域幅を達成することができる。表3に示すlin−lin HW MTR(たとえば、2TR HW−Aおよび3TR HW−A設計)について、水平直線偏光を有する入力光が使用され、目標出力偏光は垂直直線として設定された(たとえば、S
t=(1,−1,0,0)
T)。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態による2および3MTR HW−A(lin−lin)設計の出力を、2TR QW−A(破線)、3TR QW−A(実線)についての
図18A〜
図18Bに示す。特に、
図18Aおよび
図18Bは、それぞれ、出力ストークス成分S
1が−1にほぼ等しく、実効的な正味遅延が約180°であることを示している。両方とも厚さが1.77μmであり、光軸が22.5°および67.5°にある2つの均質な板を含むアクロマティックHW設計(点線)、およびそれぞれ厚さが3.2、1.6、および1.6μmであり、光軸が19°、93°、および48°にある3つの均質な板を含む設計(一点鎖線)からの比較結果も示されている。したがって、本発明のいくつかの実施形態による2TR HW−Aおよび3TR HW−A設計は、lin−lin変換に対するアクロマティックおよびスーパーアクロマティックHW挙動を達成することができる。
【0113】
単一ねじれLC層は円偏光についてはHWリターダを模倣しないという事実があるにもかかわらず、本発明の実施形態によるMTRは、cir−cir HW変換を提供するのに使用することもできる。表3に示すcir−cir HW MTR(たとえば、2TR HW−Bおよび3TR HW−B設計)について、円偏光を有する入力光(たとえば、S
i=(1,0,0,1)
T)が使用され、目標出力偏光は入力円偏光に直交するものとして設定された(たとえば、S
t=(1,0,0,−1)
T)。本発明のいくつかの実施形態による2および3MTR HW−B(cir−cir)設計の出力を、2TR QW−B(破線)、3TR QW−B(実線)についての
図18C〜
図18Dに示す。特に、
図18Cおよび
図18Dは、それぞれ、出力ストークス成分S
3が−1にほぼ等しく、実効的な正味遅延が約180°であることを示している。それぞれ厚さが0.83、1.66、および0.83μmであり、光軸が16°、59.3°、および16°にある3つの均質な板を含むアクロマティック設計(点線)、および、それぞれ厚さが0.81、3.22、および0.81μmであり、光軸が19.7°、74.1°、および19.7°にある3つの均質な板を含む別の設計(一点鎖線)の比較結果も示されており、その両方が2TR HW−Bおよび3TR HW−B設計との実質的に同様の重なりを有する。したがって、本発明のいくつかの実施形態による2TR HW−Bおよび3TR HW−B設計は、cir−cir変換に対するアクロマティックおよびスーパーアクロマティックHW挙動を達成することができる。
【0114】
図19A〜
図19Dは、本発明のいくつかの実施形態による、MTRを形成するのに使用することができる例示的な製造プロセスを示す。
図19A〜
図19Dの製造プロセスは、標準的なツールおよび材料を利用して、優れた光学的特性を有するMTRを提供することができる。
図19A〜
図19Dに示すように、MTR製造は、少なくとも3つのポリマー層をコーティングすることを含む。特に、
図19Aに示すように、配向層1915が基板1910に被着される。
図19Bにおいて、LCPの層1901’が配向層1915上に、その分子が、下の配向層1915内の配向状態に整列するように配向されるようにコーティングされる。
図19Cにおいて、LCP層1901’が、たとえば、(UV)光重合1990によって硬化されて、LCP1901内の架橋高分子網目が形成される。
図19Dにおいて、MTR1900全体が完成するまで、1つまたは複数の追加の層LCP1902’が層1901上に、層1902’の分子が直前のLCP層1901の上面にある分子の配向によって整列されて、それらのそれぞれの開始角を配向するようにコーティングされて、硬化される。実際には、
図19A〜
図19Dの製造プロセスは相対的に迅速で(たとえば、数分)、反復可能であり、大きい面積(たとえば、5.08〜15.24cm(2〜6インチ)径の素子)に拡大可能であり得る。保護および反射防止効果のために、露出したLCP最終層(本実施例では層1902)の上にガラスエンドキャップも積層されてもよい。
【0115】
特定の実施例において、光配向材料LIA−C001(DIC Corp)が配向層1915に使用され、基板1910としてのborofloatガラス(PG&O)上に設けられた。1500rpmのスピン工程、その後の100°Cにおける1分間のホットプレート焼成を使用して配向層1915を堆積して、配向層はその後、配向層1915内で所望の開始角φ
0を設定するように構成された直線偏光器を用いてUV LED光源(0.5J/cm
2、365nm、Clearstone Technologies)に曝露された。後続のLCP層1901、1902は、溶剤PGMEA(Fisher Scientific)とともに、それぞれ正および負のねじれ方向を有する、様々な小量のキラル剤CB−15およびMLC−6247(Merck Chemicals Inc)でドープしたRMS10−025をベースとした。LCP層1901、1902は乾燥窒素環境下で、光配向層1915と同じ非偏光UV光源およびフルエンスを用いて(ただし、上述の偏光器は用いずに)光重合された。表5に示すスピン方法を使用して、表4にリストされているようないくつかの混合物が開発された。
【0118】
精密回転ステージ(Thorlabs Ltd)内に取り付けられた直線偏光器(Edmund Optics Ltd)を使用した測定ツール、および、
図5A〜
図5Cに示すような高品質アクロマティックQWリターダ(AQW2、Colorlink Japan, Ltd)が使用されて、他の参考サンプルとともに、本発明の実施形態による例示的なMTRが特性化された。所望の波長範囲にわたって分光計(Ocean Optics Ltd)によって収集された一連の強度測定値によってストークスパラメータが測定され、MATLABにおいてデータが後処理されて、ストークスパラメータが推定され、その後、有効遅延、有効光軸配向、および楕円率を含む関連パラメータが計算された。既知のリターダを使用して測定ツールが較正されて、商用の測定ツール(Axoscan)を使用して一連のリターダに対して測定値が確認された。
【0119】
本発明の実施形態に従って製造されるQW MTRからの出力を
図20A〜
図20Bに示す。QW−A設計からの測定遅延は、
図16Bおよび
図17B内のスペクトルに対応する。最小二乗最良適合によって、表2内の目標値±4%以内である推定厚さおよびねじれがもたらされる。商用のAQW2リターダに対する遅延測定値および商用のスーパーアクロマティックQWリターダ(AQWO05M−600, Thorlabs)の供給元提供の遅延がベースラインとして使用された。
【0120】
図20Aに示すように、2TR QW−Aサンプルについての測定遅延は、450〜650nmの無彩色波長範囲にわたって90°の所望の値に近い。水平偏光入力について、この素子からの出力の平均楕円率は
【数8】
として測定されており、これは、発現している/出力光がほぼ完璧に円偏光し得ることを示しており、商用のAQW2リターダに対する測定値と実質的に同じであった。
【0121】
図20Bは、3TR QW−Aサンプルについての測定遅延を示しており、これは同様に、400〜800nmのより大きい波長範囲にわたって90°の所望の値に近い。水平偏光について、平均出力楕円率は
【数9】
として測定された。
図20Bに示す例に使用された製造プロセスは、2TR QWPのものと同じであり、1つ追加のねじれ層が加わっただけであった。3TR QWAサンプルも、その遅延スペクトルが同じ波長範囲にわたってより広い偏差を有する商用のAQWO05M−600リターダの性能を改善する。
【0122】
本発明の実施形態によるMTRは、一般的な偏光操作向けに設計することができ、より単純な方法を使用して製造することができる位相リターダを提供する。
図21は、本発明のいくつかの実施形態による、MTRの性能動向を比較した棒グラフ図である。
図22に示し、また上述したように、MTRの動作帯域幅は、層の数Mが増大するとともに増大し得る。そのため、4つまたは5つ以上の層を含むMTRは、さらにより広い帯域幅を提供することができ、短、中、および長波長赤外線の波長に特によく適し得る。本発明の実施形態によるMTRは、材料自体の負分散を明示するLC混合物を使用して形成することもできる。そのようなLC混合物は単独で、単一層内である程度の帯域幅増強(すなわち、ほぼすべての他の材料と比較して)を達成し得るし(たとえば、約15%)、したがって、さらに性能が改善されたリターダを達成するために、本明細書に記載するMTRに利用することができる。
【0123】
それらの不均質な性質に起因して、一般的なMTR設計(および、上述した比較例の多く)は、それに沿った方向で直線偏光が確保される真の光軸を有することができないことは理解されよう。しかしながら、実際にそのような挙動が所望される場合、本発明のいくつかの実施形態による追加の層を使用したMTRにおいてこれを達成することが可能である。
【0124】
遅延Γおよび良好に定義された光軸を有する位相差板としてMTRを設計するために、いくつかの設計条件を以下のミュラー行列成分に関して記しておく。すなわち、T
MTR[2,2]=1、T
MTR[3,3]=cosΓ、およびT
MTR[4,3]=−sinΓ。一例として、450〜650nmの波長範囲にわたって真の光軸を有するアクロマティック4分の1波長板(Γ=π/2)を達成するために、3層MTR設計がシミュレートされた。この3TR QW−C設計は、φ
0=23.9°、d
1=0.92μm、φ
1=0°、d
2=0.7μm、φ
2=93.2°、d
3=1.85μm、φ
3=−146°の設計パラメータを有する。比較のために、d
1=1.08μm、θ
1=15.4°、d
2=1.66μm、θ
2=70.1°、d
3=d
1、θ
3=θ
1の設計パラメータを有する、互いの上に積層される3つの均質な位相差板から成るQHQ−QW設計がシミュレートされた。これらの位相差板の真の光軸特性は、2つの事例の下で検証することができる。
図22Aおよび
図22Bにおいて、3TR QW−C(太線)およびQHQ−QW(破線)は、水平入力(S
1=1)の右円出力(S
3=1、e=1)への広帯域変換を達成することができる。加えて、同じ側から、両方の設計は、それぞれ
図22Cおよび
図22Dに示すように、左円入力(S
3=−1)を水平偏光出力(S1=1、e=0)に変換し戻すことが可能である。説明されている原理を使用して任意の遅延および波長にわたって同様の結果を得ることができる。
【0125】
MTRの別の特性は、それらの受光角(すなわち、開口角)である。本明細書に記載する予備シミュレーションおよび実験的観察は、本発明の実施形態によるQWおよびHW MTRが、少なくとも30°以上の入射角を有する入力光について均一に振る舞うことを示唆している。したがって、本発明の実施形態において、入力光は、任意の偏光、任意の波長、および/または、約20度以上までの角度発散で、完全にまたは部分的に偏光し得る。
【0126】
自己整合挙動に起因して、本明細書に記載するMTRの層は、複雑な複屈折光学を可能にするためにパターン化基板上に被着することができる。本発明の実施形態によるMTRは、たとえば、その開示が引用することにより本明細書の一部となすものとする、「Polarization Conversion Systems With Polarization Gratings And Related Fabrication Methods」と題する共同所有の米国仮特許出願第61/544,888号に記載のような、より効率的なポータブルプロジェクタを提供する偏光変換システム内の位相差板としても使用することができる。
【0127】
本明細書に記載するように、本発明の実施形態は、マルチツイストリターダ(MTR)とも称する、単一の基板上の複数のねじれ複屈折層を使用する、広帯域リターダを提供する。キラルLCを用いて形成されるとき、これらの層は自己整合性であり、単一の配向層を使用し、かつ複数の均質なリターダを使用する手法と比較して製造するのがより安価およびより容易である。さらに、本発明の実施形態によるMTRは、そのような他の手法と比較して(たとえば、帯域幅、遅延の効率、および配向角に関して)改善された性能を提供することができる。
【0128】
本明細書に記載する実施形態は、上記の実施形態のいずれかを反転したものも含むことができることは理解されよう。たとえば、本発明の実施形態によれば、配向面は別の側に設けられてもよく、および/または、層の順序は逆になってもよい。また、本明細書に記載する特定のMTR設計の入力側と出力側とは逆になってもよいが、そうする際には、所望の偏光変換を提供するように注意が払われるべきである。たとえば、表2に示す2TR QW−A設計は、入力側が層1401であるときは直線偏光を円偏光に変換し、入力側が層1402であるときは円偏光を直線偏光に変換する。しかしながら、円偏光が層1401内に入力されるようにMTRが構成されるとき、層1402から出力される偏光は直線にはならない。さらに、上述した任意の特定のねじれ層は、いくつかの事例においてより容易な、または費用のより低い薄膜コーティングを可能にするために、同じ材料の部分層を介して製造されてもよい。
【0129】
本明細書に記載するように、光学デバイスに使用される複屈折素子の説明において、「板(plate)」という用語は、フィルム、スラブ、シート、または層と同義である。また、偏光変換効果は2つのカテゴリ(リターダおよび回転子)を参照して説明され得るが、「リターダ(retarder)」という用語は、本明細書においては概して、たとえば、旋光および複屈折遅延の両方を包含する、何らかの方法で偏光を変化させる複屈折素子を記載するために使用されている。本明細書に記載する場合、「複屈折リターダ(birefringent retarder)」、「リターダ」、「遅延板(retardation plate)」、および「補償フィルム(compensation film)」という用語は、均質な位相差板を含む、任意の複屈折板を指すために交換可能に使用され得る。そのような複屈折板はまた、一軸、二軸、または不均質であってもよい。本明細書に記載のリターダは、広帯域(すなわち、アクロマティック)または狭帯域(すなわち、クロマティック)であってもよい。本明細書に記載のリターダは、それゆえ、旋光もしくは複屈折遅延またはそれらの任意の組合せを介して偏光の変更を達成し得るが、それを通過する光の伝播方向に実質的に影響を与えず、またはそれを変化させないものであり得る。
【0130】
本発明は、本明細書において、すべての層が同じ複屈折性を有する同じ材料から形成されるいくつかの実施形態を参照して記載されているが、本発明の実施形態はそれらには限定されず、異なる液晶材料が各層に使用され得ることは理解されよう。また、本明細書に記載する場合、「ねじれネマティック(twisted nematic)」という語句は、限定なしに使用されているときは、正、負、またはさらにはゼロであるすべてのねじれ角を含む、任意の一般ねじれネマティック(GTN)液晶を指すことができる。一般ねじれネマティック(GTN)層は、層の総ねじれΦおよび位相遅延角Γによって特性化することができる。単一の層に対する4つの一般的な型、すなわち、断熱導波、複屈折、ブラッグ、形状複屈折がある。Φ<<Γであるとき、単一のねじれ層において旋光が発生し(断熱導波、またはMauguin型と称される)、Φ≒Γであるとき、複屈折遅延が発生し、Φ>Γかつn
o<(λ/P)<n
eであるとき、ここで、Pはらせんピッチであるが、円偏光ブラッグ反射が発生し、最後に、Φ>>Γであるとき、形状複屈折が発生する。上述の実施形態は0≦Φ≒Γの範囲内のねじれ層を含み、主な光学的効果は、複屈折遅延および旋光の両方の重ね合わせであり、任意のGTN型が、本明細書に記載する層の1つまたは複数で使用されてもよい。
【0131】
本発明の実施形態は、実質的に一軸である、二軸である(三重屈折とも称される)、またはいずれでもない(すなわち、全体としての光軸を有しない複雑なリターダ)複屈折フィルムを提供することができる。
【0132】
本明細書において、ネマティック液晶材料から形成される光学リターダ層を参照して主に説明したが、光学原理は同じままであり得るため、本発明の実施形態による他の材料(たとえば、形状複屈折、メタマテリアル、および/またはナノ粒子/ワイヤ/チューブを含む)が、本明細書に記載する光学的効果を達成するのに使用されてもよいことは理解されよう。たとえば、サブ波長構造を有する等方性材料が、上述と同じまたは同様に構築され得る形状複屈折を生成することができる。そのため、本発明の実施形態は、本明細書に記載する特定の材料には限定されず、本明細書に記載するように機能するあらゆる材料層を使用して実装されてもよい。
【0133】
上記の説明および図面に関連して多くの異なる実施形態が本明細書に開示されている。これらの実施形態のすべてのコンビネーションおよびサブコンビネーションの言葉で説明しおよび例示した場合、過度に反復的および不明瞭となるかもしれないことは理解されよう。したがって、図面を含む本明細書は、本明細書に記載する実施形態の、および、それらを作成および使用する方法およびプロセスのすべてのコンビネーションおよびサブコンビーネーションの完全な書面での説明を構成するように解釈されるべきであり、任意のそのようなコンビネーションまたはサブコンビネーションに対する特許請求をサポートするものである。
【0134】
本開示の実施形態が開示されている図面および明細書において、特定の用語が利用されているが、それらは一般的および記述的な意味で使用されているに過ぎず、限定を目的とするものではない。それゆえ、上記は本発明の例示であり、開示されている具体的な実施形態に限定されるように解釈されるべきではないこと、および、開示されている実施形態に対する変更および他の実施形態が、本発明の範囲内に含まれるように意図されていることは理解されたい。
なお、出願当初の特許請求の範囲の記載は以下の通りである。
請求項1:
第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層であって、それぞれのローカル光軸が、該第1の層および第2の層のそれぞれの厚さにわたってそれぞれのねじれ角で回転されており、該第1の層と第2の層との間の界面に沿って整列されている、第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層を備え、
前記それぞれのねじれ角および/または前記それぞれの厚さは異なっており、前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層の前記それぞれのローカル光軸は、それらの間の前記界面に沿った方向において非周期的である、光学素子。
請求項2:
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層は、それぞれ、通過する光の伝播方向を実質的に変更することなく偏光を変更するように構成されている光学リターダ層を備える、請求項1に記載の光学素子。
請求項3:
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層の前記それぞれのローカル光軸は、それらの間の前記界面に沿った方向において実質的に均一である、請求項1に記載の光学素子。
請求項4:
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層は、互いの上に直接、積層されており、一体構造を画定している、請求項3に記載の光学素子。
請求項5:
実質的に均一な配向状態を内部に有する配向面をさらに備え、
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層のうちの一方は、その前記それぞれのローカル光軸が前記配向状態に従って整列されるように、前記配向面の直接上にある、請求項4に記載の光学素子。
請求項6:
前記それぞれのねじれ角は同じねじれ方向を有する、請求項4に記載の光学素子。
請求項7:
前記それぞれのねじれ角は大きさが実質的に等しく、ねじれ方向が反対である、請求項4に記載の光学素子。
請求項8:
前記それぞれのねじれ角は異なっており、前記ねじれ角の一方は非ゼロである、請求項4に記載の光学素子。
請求項9:
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層の前記それぞれのローカル光軸は、それらの間の前記界面に沿った方向において連続的に変化する、請求項1に記載の光学素子。
請求項10:
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層は、それぞれ第1の隣接領域および第2の隣接領域を含んでおり、
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層の前記それぞれのローカル光軸は、それらの間の前記界面に沿って前記第1の領域および第2の領域の各々において実質的に均一であり、前記第1の領域および第2の領域内の前記それぞれのローカル光軸は異なっている、請求項1に記載の光学素子。
請求項11:
前記第1の積層複屈折層および第2の積層複屈折層は、第1の液晶層およびその上に積層されている第2の液晶層を備え、
前記第1の液晶層および第2の液晶層のそれぞれの分子配向は、それらの間の前記界面に沿って整列され、前記第1の液晶層および第2の液晶層のすくなくとも一方はキラル層である、請求項1に記載の光学素子。
請求項12:
前記第1の液晶層および第2の液晶層のうちの少なくとも一方は、重合液晶層である、請求項11に記載の光学素子。
請求項13:
前記第1の液晶層および第2の液晶層のうちのもう一方は、切替可能液晶層である、請求項12に記載の光学素子。
請求項14:
前記第2の液晶層上に積層されている第3のキラル液晶層をさらに備える、請求項12に記載の光学素子。
請求項15:
直線偏光子をさらに備え、
前記第1の光学層および第2の光学層は、それらの間の配向層または接着層によって、前記直線偏光子上に積層されている、請求項1に記載の光学素子。
請求項16:
前記第1の光学層および第2の光学層の前記それぞれのねじれ角および/または厚さは、約200nm以上の広帯域波長範囲にわたって実質的に無彩色である2分の1波長遅延を提供するように構成されている、請求項1に記載の光学素子。
請求項17:
前記第1の光学層および第2の光学層の前記それぞれのねじれ角および/または厚さは、約200nm以上の広帯域波長範囲にわたって実質的に無彩色である4分の1波長遅延を提供するように構成されている、請求項1に記載の光学素子。
請求項18:
第1の複屈折層を提供するステップと、
前記第1の複屈折層上に第2の複屈折層を提供するステップと
を含み、
前記第1の複屈折層および第2の複屈折層は、それらのそれぞれの厚さにわたってそれぞれのねじれ角で回転されており、それらの間の界面に沿って整列されているそれぞれのローカル光軸を有し、
前記それぞれのねじれ角および/または前記それぞれの厚さは異なっており、
前記第1の複屈折層および第2の複屈折層の前記それぞれのローカル光軸は、それらの間の前記界面に沿った方向において非周期的である、光学素子を製造する方法。
請求項19:
前記第1の複屈折層および第2の複屈折層は、それぞれ、通過する光の伝播方向を実質的に変更することなく偏光を変更するように構成されている光学リターダ層を含む、請求項18に記載の方法。
請求項20:
前記第1の複屈折層および第2の複屈折層の前記それぞれのローカル光軸は、それらの間の前記界面に沿った方向において実質的に均一である、請求項18に記載の方法。
請求項21:
前記第1の複屈折層および第2の複屈折層は、一体構造を画定している、請求項18に記載の方法。
請求項22:
前記第1の複屈折層および第2の複屈折層は液晶層を含み、
前記第2の複屈折層を提供するステップは、前記第2の複屈折層のそれぞれの分子配向が、それらの間の前記界面に沿って前記第1の複屈折層のそれぞれの分子配向に従って整列されるよう、前記第2の複屈折層を前記第1の複屈折層の上に直接、形成するステップを含む、請求項21に記載の方法。
請求項23:
前記第2の複屈折層を形成するステップの前に、
非周期的な配向状態を有する配向面を形成するステップと、
前記第1の複屈折層の前記それぞれの分子配向が、前記配向状態に従って前記配向面との界面に沿って整列されるように、前記第1の複屈折層を前記配向面の上に直接、形成するステップと
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
請求項24:
前記第1の複屈折層および第2の複屈折層のうちの少なくとも一方は、キラル液晶層である、請求項22に記載の方法。
請求項25:
前記第1の複屈折層は重合液晶層を含み、
前記方法は、前記第1の複屈折層の上に前記第2の複屈折層を形成する前に、前記第1の複屈折層を前記配向面上に光重合するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
請求項26:
第3の液晶層を、そのそれぞれの分子配向が、前記第2の複屈折層と前記第3の液晶層と間の界面に沿って前記第2の複屈折層の前記それぞれの分子配向に従って整列されるように、前記第2の複屈折層の上に直接、形成するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
請求項27:
前記配向面を形成するステップは、連続的に変化する配向状態を含むように前記配向面を形成するステップを含む、請求項23に記載の方法。
請求項28:
前記配向面を形成するステップは、前記配向面を、その隣接する第1の領域および第2の領域において実質的に均一な配向状態を含むように形成するステップを含み、
前記配向面の前記第1の領域および第2の領域内の前記実質的に均一な配向状態は異なっている、請求項23に記載の方法。