【課題を解決するための手段】
【0036】
この目的は独立請求項によって達成される。有利な実施の形態は従属請求項から導かれる。
【0037】
第1の実施の形態において、本発明は、プローブ領域とメディエーター領域とを含む少なくとも1つの標的分子の検出用のメディエータープローブであって、該メディエータープローブがオリゴヌクレオチドであり、上記プローブ領域が3’末端にあり、上記メディエーター領域が該オリゴヌクレオチドの5’末端にあることを特徴とし、上記領域間に化学的、生物学的及び/又は物理的な切断スポットが存在し、上記プローブ領域が鋳型分子に対して親和性を有し、上記メディエーター領域が検出分子に対して更なる親和性を有し、該メディエータープローブが上記鋳型分子の増幅プロセス中に上記切断部位で切断され、切断された該メディエーター領域と上記検出分子との相互作用が検出可能なシグナルを誘発する、メディエータープローブに関する。
【0038】
メディエータープローブを、従来技術において開示されているプローブ又は系の欠点又は短所なしに、標的分子及び/又は検出分子の検出に利用可能とすることができることは実に驚くべきことであった。放出されたメディエーター領域の存在が検出反応を誘発することが特に有利である。標的分子の存在と検出反応との関連はメディエーター領域及び/又はメディエータープローブの特性のみに依存し、任意の標的分子と任意の検出反応及び/又は検出分子との間の自由な結合が可能になる。
【0039】
このため、メディエータープローブは特に、標的分子及び/又は鋳型分子及び/又は検出分子と相互作用し得る少なくとも2つの機能的領域を有する分子の特徴を示す。メディエータープローブは有利には、任意に補助分子との相互作用を伴って標的分子の存在下で検出反応を誘発する。
【0040】
プローブ領域は鋳型分子及び/又は標的分子の一部と相補的であるのが好ましい。メディエータープローブのプローブ領域が鋳型分子に結合して増幅される。結合は、鋳型分子に対する親和性を有することから、メディエータープローブのプローブ領域のみと起こる。メディエーター領域は鋳型分子に対していかなる親和性も有さず、相補配列セグメントも有しない。したがって、メディエータープローブのこの部分は鋳型分子に結合せず、フラップ構造が形成される。増幅反応において、メディエータープローブが切断部位で切断され、メディエーター領域が放出される。メディエーター領域は遊離する。メディエーター領域は検出分子の一部に相補的な領域を有するのが好ましい。メディエーター領域は検出分子に結合し、検出可能なシグナルが誘発される。鋳型分子の存在に関する推論を検出可能なシグナルから得ることができる。鋳型分子自体が検出対象の標的分子であっても、又はそれと関連していてもよく、標的分子の存在に関する情報が鋳型分子によって生成され得る。
【0041】
メディエータープローブが切り離されることにより、検出分子を除いて相互作用パートナーを有しないメディエーター分子が放出される。このため、従来の核酸ベースのアプローチと比較すると、非対称PCR又はLATE PCRの場合と同様に、プライマー関係の付加的な最適化により検出対象の鎖の再アニーリングを防ぐ必要はない。これにより費やされる労力が大幅に低減する。典型的には20ヌクレオチド〜25ヌクレオチドというその長さのために、メディエーター分子は、例えば増幅機構によって生成する核酸フラグメント及びハイブリダイゼーション反応について生成する核酸フラグメントよりも高い拡散定数を有する。
【0042】
本発明の意味において、「検出分子」という用語又は検出分子は、特にメディエーター領域が直接的又は間接的に相互作用することができ、処理によって任意に検出反応(例えば蛍光シグナルの変化)を誘発することができる分子の特徴を示す。
【0043】
「増幅」という用語は特に核酸分子の複製を表す。
【0044】
補助分子は特に、標的分子及び/又は鋳型分子の存在下でメディエータープローブの状態の変化に寄与する分子を指す。1つ又は複数の物質群に由来する様々な補助分子、例えば酵素(ポリメラーゼ)、核酸(オリゴヌクレオチド)を使用することができる。プローブ領域が標的分子又は鋳型分子に結合し、補助分子によって酵素的に伸長するのが好ましい。
【0045】
メディエータープローブが1個〜70個、好ましくは15個〜60個、とりわけ好ましくは35個〜45個のヌクレオチドを有するのが好ましい。とりわけ好ましい結果は、メディエーター領域が切断後のサイズの小ささのために検出分子へと高い拡散速度で拡散し得ることから、これらのサイズで達成される。したがって、本発明は、標的自体が検出分子に到達しなければならない従来技術による実施の形態と比較して有利である。
【0046】
メディエータープローブが、いかなる技術的に複雑な修飾もなしに安価に合成することができるオリゴヌクレオチド、例えば蛍光ドナー及び/又はアクセプタからなることも特に有利である。
【0047】
標的分子及び/又は鋳型分子がDNA、RNA、タンパク質、アプタマー及び/又はそれらの組合せを含む群から選択される生体分子であるのが好ましい。分子の一部のみ、例えば認識配列又はエピトープが検出対象であり、本発明の意味において標的分子であることが好ましい場合もある。標的分子(複数の場合もあり)はサンプル溶液であるのが好ましい。標的分子の組合せが本発明の意味において混合物と称される場合もある。驚くべきことに、異なる物質群の分子(例えばタンパク質及びDNA、又はDNA及びRNA)を個別に又はバッチ中で並行して検出することができ、普遍的に使用可能な作用物質を利用可能である。
【0048】
本発明の意味において、アプタマーは特に、その構造的特性のために他の物質群の分子(例えばタンパク質)と相互作用及び/又は結合することができるオリゴヌクレオチドを表す。アプタマーは他の分子、例えばタンパク質に対してより大きな結合親和性を有する一本鎖核酸であるのが好ましい。好ましいアプタマーは、互いに相互作用することができる(本発明の意味において閉じた形態と称される)末端領域である「領域i」及び「領域ii」を付加的に有する。標的分子に対して親和性を有する「領域iii」、並びにプライマー分子及びメディエータープローブに対する結合配列である「領域iv」という2つの領域が、これとは区別される。領域iiiが標的分子と相互作用及び/又は結合する場合に、領域ivはプライマー及びメディエータープローブの結合のみを可能にする。
【0049】
標的分子が同時に鋳型分子でもあるのが好ましい。この実施の形態は、例えば標的分子がDNA配列である場合に使用される。この場合、付加的な鋳型分子は増幅反応に必要とされず、標的分子自体が増幅される。
【0050】
標的分子自体を増幅することができない場合、鋳型分子を増幅反応に使用することが有利であり、この場合、増幅反応は、標的分子を検出することができるように、標的分子の存在に関する推論を可能にするものでなくてはならない。これは本発明による様々な方法で達成することができる。このため、鋳型分子が標的分子の存在のみに起因して形成されるか、又は鋳型分子が標的分子と相互作用することにより構造の変化を受けることが好ましい場合もある。
【0051】
例えば、標的分子がタンパク質であり、それぞれの鋳型分子がアプタマーであるのが好ましい。アプタマーはプローブ領域に対する結合部位を有する。ここで、アプタマーがタンパク質に結合し、この結合の間にのみ結合部位にプローブ領域が接近可能であるのが好ましい。これにより、標的分子(タンパク質)の存在に関する任意の推論が得られずにアプタマー単独の存在が検出されることがなくなる。標的分子が存在する場合にのみ、アプタマーが標的分子に結合することができ、プローブ領域に対するその結合部位は、好ましくは二次構造の変化によって接近可能である。次いで、メディエータープローブのプローブ領域がアプタマーに結合し得る。アプタマーの増幅によって、メディエーター領域がプローブ領域から切り離され、それにより検出分子に結合し得る。このため、タンパク質をアプタマーの存在によって検出することができる。
【0052】
検出対象の標的分子がRNA配列である場合、鋳型分子が好ましくは逆転写酵素によって生成する、対応するcDNAであるのが好ましい。このようにして発生するcDNAは続いて増幅の鋳型分子となる。逆転写については、5’配列オーバーハングを有する修飾プライマーを使用することが有利である場合もある。この実施の形態は、メディエータープローブがcDNAのみに結合し、RNAに対する鋳型の元のDNA遺伝子座には結合しないことが確実になるため、元のDNAも存在する場合に特に有利である。この実施の形態のために、遺伝子のDNA及びそれから転写されるRNA(プライマーオーバーハングを有するcDNAによる)を、続いて並行して検出することができることから、様々な遺伝子の遺伝子発現に関する結論付けを可能にする検出を行うことも可能となる。2つの異なるメディエータープローブがかかる方法に使用され、2つのプローブ領域の一方がプライマーオーバーハングの一部を含む領域に結合する。したがって、このプローブ領域はcDNAのみに結合することができ、元のDNAには結合しない。
【0053】
アプタマーと関連の標的分子との複合体又は2つ以上の物質群、例えば核酸及びタンパク質の相互作用生成物を標的分子として使用してもよい。様々な標的分子を個別に又は1つの反応バッチ中で並行して検出することができる。メディエータープローブがオリゴヌクレオチド又は対応する誘導体からなり、標的分子が核酸、対応する誘導体、又はDNA、RNA、タンパク質、アプタマーを含む分子、及び/又はアプタマーと関連のDNA、RNA若しくはタンパク質との複合体であり、検出分子がオリゴヌクレオチド又はその誘導体であるのが好ましい。
【0054】
別の好ましい実施の形態では、本発明は、プローブ領域及びメディエーター領域が機能的及び/又は空間的に、好ましくはヌクレオチドによって重複するメディエータープローブに関する。
【0055】
メディエータープローブがプローブ領域及びメディエーター領域に加えて別の領域を含むのが好ましい。この領域は、メディエーター領域に相補的な又は親和性を有するロック領域であるのが好ましい。ロック領域は有利にはプローブ領域の3’末端に位置する。これにより、3つの領域が機能的かつ空間的に重複し得る。プローブ領域と鋳型分子との直接的又は間接的な相互作用によって、メディエーター領域及び/又はロック領域に変化が生じ、メディエーター領域とロック領域及び/又は完全なメディエータープローブとの間の親和性及び/又は相互作用が変化する。ロック領域を含むメディエーター領域は、このようにして付加的な保護が生じ、メディエーター領域が鋳型分子に結合又はアニーリングしなくなるため有利である。メディエーター領域及びロック領域が互いに親和性を有するか、又は互いに相補的であることから、メディエータープローブは鋳型分子及び/又は標的分子の非存在下でヘアピン構造を形成し得る。
【0056】
メディエータープローブがその3’末端に保護化学基を有することも好ましい。この実施の形態は、非切断メディエータープローブの酵素的に触媒される配列伸長が起こらなくなることから有利である。保護化学基はリン酸基、ビオチン、反転(inverted)ヌクレオチド、標的配列に相補的でないヌクレオチドを含む群から選択され得る。当業者はオリゴヌクレオチド、特に3’末端の伸長を防ぐことができる他の保護化学基に精通している。
【0057】
プローブ領域及びメディエーター領域は、互いに独立して自由に組み合わせることができるのが好ましい。このため、例えば検出分子を、適切なメディエーター領域と任意のプローブ領域とを連結し、それを合成することによって他の標的分子と相関させることもできる。これにより、特に本発明によるメディエータープローブの使用の高い柔軟性が達成される。
【0058】
別の好ましい実施の形態では、本発明はメディエータープローブと検出分子とを含む系であって、上記検出分子がオリゴヌクレオチドであり、少なくとも、
a.蛍光アクセプタ若しくは蛍光ドナー、及び/又は固相に結合する化学基及び/又は保護化学基を有する上記検出分子の5’末端の第1の領域と、
b.上記メディエーター領域と相互作用する第2の領域と、
c.蛍光ドナー若しくは蛍光アクセプタ、及び/又は保護化学基を有する第3の領域と、
を有することを特徴とする、系に関する。
【0059】
普遍的に使用することができ、特に微生物学的検出法における汚染事例の最小化に寄与し得る系を利用可能とすることができたことは全く驚くべきことであった。様々な分子を、生化学的反応を用いて、好ましくは普遍的検出チップ上で標準的検出分子を使用して検出することができる。これは、特に標的分子と検出分子との間の直接的な物理的相互作用が打ち消されることから可能となる。メディエータープローブは、標的分子と検出分子との間のメディエーター(情報担体)として機能する。メディエータープローブは(付加的な補助分子の存在下で)好ましくは標的分子又は鋳型分子との相互作用によって切断され、活性化メディエーター分子を放出し、検出反応が開始される。
【0060】
本発明による系は、標的分子とは独立して設計される検出分子の設計を可能にする。このため、標準的な一連の検出分子を使用することによって、サンプル中の様々な標的分子を検出することが可能となり、メディエータープローブを適合し、好適な補助分子(例えばプライマー)又は鋳型分子(例えばアプタマー)を使用することによって、反応をそれぞれの標的分子に安価に適合させることができる。この有利な特性のために、典型的には従来技術において記載されている、標的分子と固定化された捕捉分子との間の直接相関の問題が解決される。
【0061】
メディエーター領域は有利には切断後に反応溶液中に拡散して存在し、検出分子の領域2、メディエーターハイブリダイゼーション配列と相互作用することができる。検出分子は、好ましくは固相に結合し得るか、又は溶液中に遊離して存在し得る。
【0062】
これらの検出分子はこれらの標的分子とは物理的に相互作用しない。標的分子と検出分子との間の結合は、対応するメディエータープローブによって間接的にのみ起こる。標的分子は、メディエータープローブを使用することによって任意の検出分子に自由に割り当てることができる。
【0063】
検出分子を固相に固定化する場合、普遍的マイクロアレイ又は検出アレイを利用可能にすることができる。それにより作製される普遍的マイクロアレイは、規定の保管条件下で長期間保管することができ、これは特に従来技術のタンパク質アレイと比較して明確な利点である。したがって、計画的実験と独立した保管は重要でない。
【0064】
このため、本発明は、標的分子に対して特異的な液相反応を迅速かつ安価に適合することができることから、標的分子とは独立し、様々な多分析物分析に使用することができる標準的マイクロアレイを初めて利用可能とするものである。
【0065】
したがって、前処理工程及び/又は後処理工程のない反応カートリッジを用いた様々な実験を、標準的マイクロアレイを作製することによって行うことができ、これには経費削減の利点があり、カートリッジは大量に作製することができる(スケール効果)。このため、標準的反応カートリッジの1つのバッチで検出反応(例えば日常分析の領域内)を行うことが可能である。
【0066】
マイクロアレイは、好ましくは好適な固相(典型的には平面)上の固定化した捕捉分子の局所的に分解された少なくとも1次元的な(one-dimensionally)アレイを指す。代替的な方法は、例えば異なる着色により明確な識別を可能にするビーズを用いた固相支持アプローチを可能にする。或る特定の捕捉分子を規定の種類のビーズに固定化することができる。
【0067】
ビーズは、好ましくは特に直径5μm〜100μmのマイクロビーズを指す。これらは、修飾及び/又は官能基化された形態で表面上及び/又は内部に任意に存在し得る。ビーズの使用は、規定の反応容量で大きな表面積を利用可能にすることを可能にする。
【0068】
好適な補助分子、例えば酵素、特にポリメラーゼによりメディエーター領域が伸長し、検出分子の領域1が連続的に分解される。検出分子は好ましくは5’末端及び関連の蛍光アクセプタQが切り離されることによって変化し、それまで抑制されていた蛍光ドナーFの蛍光シグナルが回復する。領域1と領域3との相互作用がこの末端が切り離されることによって抑制される場合、二次構造の構造が排除される。この場合、メディエーター分子は、検出分子の新たに形成される5’末端まで、或る特定の条件下で上記の補助分子によって相補的に伸長し得る。この伸長によって、伸長したメディエーター分子は、検出分子の領域1及び領域2に相補的な配列セグメントを有する。
【0069】
本発明による系は、いかなる処理後の汚染のリスクもなく廃棄することができる閉じた反応容器内での様々な標的分子の検出を可能にする。このことは従来技術と比較して相当な利点となる。
【0070】
さらに、上記検出分子が、
d.固相に結合する化学基及び/又は保護化学基を含む上記検出分子の3’末端の第4の領域、
を有することが有利である。
【0071】
この変形例は、検出分子をこのようにして固定化することができ、例えばマイクロアレイを作製することができるため有利である。オリゴヌクレオチドの固定化に考え得る化学基を例として挙げる。化学基は使用される界面化学及び必要とされ得る任意の結合分子に応じて異なる:OH(ヒドロキシル)、NH
2(アミノ)、Ph(リン酸)、アクリダイト(acrydite)又はシラン。当業者は、オリゴヌクレオチドを表面上に固定化する方法に精通している。特に、5’末端の推定的固定化を可能にするには、検出分子は化学基及び/又は保護化学基を有する。
【0072】
ヘアピン構造が検出分子の5’末端と内部配列セグメントとの相補ハイブリダイゼーションによって設計されるのが好ましく、検出分子の3’末端は不対配列セグメントを含む。メディエーター領域を不対3’配列セグメントの配列領域に付加した後、メディエーター領域をポリメラーゼによって伸長させるのが好ましく、検出分子のヘアピン構造の5’末端のヌクレオチドがポリメラーゼのヌクレアーゼ活性に基づいて除去される。この構造が形成された後、蛍光ドナーF及び蛍光アクセプタQは互いに相互作用し、Fの蛍光シグナルが抑制される(蛍光共鳴エネルギー移動、FRET)。
【0073】
メディエータープローブ及び/又は検出分子は蛍光標識ヌクレオチドを有するのが好ましい。検出分子が5’末端上及び/又はヘアピン構造内に少なくとも1つの蛍光修飾を有するのが特に好ましい。検出分子は、蛍光共鳴エネルギー移動が可能な1つ又は複数の蛍光修飾を有し、切断後に互いに空間的に分離することができ、蛍光シグナルにおける変化の検出が可能となる。
【0074】
配列特異的又は配列非特異的な蛍光プローブ及び/又は発色プローブ又は蛍光色素は、メディエータープローブ及び/又は検出分子の少なくとも1つの領域と有利に相互作用することができる。加えて、検出分子が5’末端領域及び/又はヘアピン構造内に少なくとも1つの蛍光修飾を有し、蛍光修飾が補助分子によるメディエーター領域との反応後に検出分子から切り離され、及び/又は検出分子のヘアピン構造の5’末端が除去され、検出分子上で蛍光シグナルの変化が検出されることが有利であり得る。
【0075】
検出分子が二次構造の変化、蛍光、リン光、質量、吸収、光散乱、電気伝導性、酵素活性及び/又は親和性の変化を含むメディエーター領域との直接的又は間接的な相互作用の結果として変化するのが好ましい。
【0076】
メディエーター領域と検出分子の第2の領域との直接的又は間接的な相互作用による検出分子の変化が存在し、この変化は好ましくは物理的又は化学的に測定することができる。
【0077】
検出分子の第2の領域に結合したメディエーター領域が少なくとも1つの補助分子によって酵素的に伸長し、補助分子が好ましくは結合したメディエーター領域の3’末端に結合することが有利であることも判明した。
【0078】
補助分子は触媒、タンパク質、核酸、天然物質、酵素、酵素系、細胞溶解物、細胞構成要素、細胞構成要素に由来する誘導体及び/又は合成分子を含む群から選択される。
【0079】
補助分子が核酸増幅系及び/又は制限酵素系の分子であることも好ましい。
【0080】
好ましい実施の形態では、検出分子は5’末端領域上及び/又はヘアピン構造内に1つ又は複数の蛍光修飾を有していてもよく、好適な酵素によるハイブリダイズしたメディエーター領域の処理後に、5’末端ヌクレオチドが好適な酵素によってこの検出分子から切り離され、検出分子上で蛍光シグナルの変化を検出することができる。このようにして放出されたメディエーター分子は、溶液中に遊離して存在するか又は固相に固定化されている少なくとも1つの検出分子複合体と相互作用するのが好ましい。検出分子複合体は1つ又は複数の異なる又は同様の化学的修飾を有し、メディエーター領域との相互作用後に検出可能なシグナルを生成し得る。検出分子の物理的又は化学的に測定可能な変化が、メディエーター領域と検出分子の第2の領域との直接的又は間接的な相互作用によって起こるのが好ましい。この領域は、メディエータープローブが切り離された場合にのみシグナルを誘発することができる。メディエータープローブのメディエーター領域は、依然としてメディエータープローブと結合しているため、好ましくはシグナルを直接的(例えばハイブリダイゼーション)又は間接的(例えばポリメラーゼによる処理)に誘発せず、そうでなければ標的分子とは独立して生じるシグナルの場合であり得る。この測定可能な変化は補助分子(例えばポリメラーゼ)によっても生じ得る。
【0081】
メディエーター領域の直接的な検出反応では、メディエーター領域は検出分子を直接的に変化させる。間接的な検出反応では、メディエーター領域は、メディエーター領域を伸長させる補助検出分子、特にポリメラーゼとの相互作用によって検出分子の変化を誘導する。メディエーター領域は、有利には検出反応中の検出分子の変化を引き起こし、それ自体が好適な補助検出分子による変化を受ける。この実施の形態は、検出反応において変化したメディエーター分子とメディエータープローブ切断に直接由来するメディエーター分子との間の明らかな区別を可能にするため有利である。
【0082】
補助検出分子は、特にメディエーター領域及び検出分子と有利に相互作用し、好ましくは検出反応を誘発する分子を表す。1つ又は様々な物質群の様々な補助検出分子を使用することができる。
【0083】
補助検出分子は好ましくは触媒、タンパク質、核酸、天然物質、酵素、酵素系、細胞溶解物、細胞構成要素、それに由来する誘導体若しくは合成分子等の様々な物質群、又はこれらの物質群の様々な分子の混合物から選択される。
【0084】
さらに、補助検出分子が構造的に特異的な形で切り離されるのが好ましい。補助分子が核酸増幅系及び/又は制限酵素系の分子を含むのが好ましい。メディエータープローブのプローブ領域は、好ましくは標的分子及び/又は鋳型分子と塩基対合によって相互作用することができ、補助分子はメディエータープローブを切断することができ、メディエーター領域は検出分子と塩基対合によって相互作用し、補助検出分子は検出分子の成分を切り離す。この切断反応は標的分子の間接的な保護となる。切り離される検出分子の成分は好ましくは蛍光ドナー又は蛍光アクセプタであり得る。
【0085】
しかしながら、補助検出分子によって配列特異的切断を行い、補助分子が核酸増幅系であり、補助検出分子が制限酵素系又は核酸増幅系と制限酵素系との混合物であることが好ましい場合もある。検出分子はオリゴヌクレオチド又は誘導体であり、対応する制限酵素系の認識配列を含有し、検出分子上のメディエーター領域が相補的部分に結合し、核酸増幅系によって伸長する。このため、それにより生成する配列二重鎖は、それを少なくとも2つの部分へと切り離す制限酵素系の少なくとも1つの認識配列パターンを含有する。配列二重鎖の切断の後、シグナル、例えば蛍光又は質量の変化を好ましくは検出することができる。しかしながら、配列二重鎖を切り離した後に、存在する相補的な又は部分的に相補的な核酸配列によって少なくとも1つの切断フラグメントが増幅反応を開始することが有利である場合もある。該核酸配列は溶液中に遊離して存在していても、又は固相に固定化されていてもよい。
【0086】
好ましい実施の形態では、増幅は蛍光プローブ若しくは別の形で標識したヌクレオチドの組込み、又は配列特異的な蛍光プローブ若しくは発色プローブの付加、又は配列非特異的な蛍光色素の付加によって検出することができる。増幅産物は有利には直接的又は間接的に検出することができ、検出により標的分子の間接的な証拠がもたらされる。
【0087】
それにより放出されるメディエーター領域は、好ましくは好適な核酸の存在下で1つ又は複数の異なる酵素、例えばポリメラーゼによって、好ましくは酵素的に触媒される増幅反応又は重合反応を開始することができる。好適な核酸は一本鎖形態又は二本鎖形態で存在することができ、リバースプライマーを検出反応に付加的に使用してもよい。
【0088】
検出分子が固相に結合するか、又は溶液中に遊離して存在するのが好ましい。
【0089】
さらに、検出分子が好ましくはヘアピン構造を有する一本鎖核酸分子又は核酸誘導体であることが有利である。ここで、検出分子の5’末端が内部配列セグメントと相補的にハイブリダイズし、検出分子の3’末端が不対配列セグメントを含むようにヘアピン構造を設計することが有利である。
【0090】
検出分子は1つ又は複数の同様の又は異なる修飾(例えば脱塩基ヌクレオチド及び/又はホスホチオエート、及び/又は蛍光色素等の官能基)を有するのが好ましい。有利には、メディエーターとの直接的又は間接的な相互作用による検出分子の変化が存在し、変化を物理的に検出することができるように蛍光、リン光、質量、吸収、光散乱、電気伝導性、酵素活性又は親和性の1つ又は複数の変化を含み得る。メディエーターの存在下で、検出分子は好ましくは、例えばリン酸化、脱リン酸化、アミド化、化学基の結合若しくは切断、又は蛍光、リン光若しくは発光の変化等の化学的修飾を受けることができる。
【0091】
本発明の意味において、脱塩基ヌクレオチドは特に、デオキシリボースが塩基に連結せず、単なるリン酸−糖骨格であるDNAの構成単位を表す。DNA二重鎖では、この位置で水素架橋結合の形成は起こらない。この修飾は、テトラヒドロフラン(THF)を使用することによって合成することができる。
【0092】
検出分子が5’末端上及び/又はヘアピン構造内に少なくとも1つの蛍光修飾を含有することが好ましい場合もある。
【0093】
別の好ましい実施の形態では、本発明は、少なくとも1つの標的分子を検出する方法であって、本発明によるメディエータープローブ及び/又は本発明による系を含み、
e.上記メディエータープローブのプローブ領域を、鋳型分子及び/又は標的分子の配列に結合させる工程と、
f.上記鋳型分子及び/又は上記標的分子を増幅する工程と、
g.上記メディエータープローブを少なくとも1つの補助分子によって切断部位で切り離す工程と、
h.上記メディエータープローブの切断したメディエーター領域を検出分子に結合させる工程と、
を含む、方法に関する。
【0094】
上記メディエータープローブを切り離すことが、分子量、酵素活性、親和性若しくは結合力を含む結合特性、化学的反応性、化学基の存在、伝導性、分極率若しくは電荷を含む電気特性、及び/又は光の吸収及び放出を含む光学的特性を含む群から選択される、上記メディエータープローブの少なくとも1つの領域の物理的特性及び/又は化学的特性の変化を誘導することが好ましい。
【0095】
特に有利な実施の形態では、標的分子の核酸ベースの増幅によって、鋳型分子(例えばアプタマー)を直接的に増幅することができ、これにより感度が増大する。増幅反応及び検出反応を組み合わせて、並行して行うことができる。これにより、本発明と、検出を線形シグナル増幅及び/又は連続的な増幅及び検出によって行う従来技術に記載のInvader(商標)反応とが明らかに区別される。
【0096】
標的分子及び/又は鋳型分子とメディエータープローブとの相互作用により、好ましくはメディエータープローブが直接的又は間接的に切り離され、好ましくは以下のフラグメントが生じる:
メディエーター領域のフラグメント及びプローブ領域のフラグメント、又は、
メディエーター領域及びプローブ領域のフラグメント、又は、
メディエーター領域、及び連続したフラグメントとしてのプローブ領域の一部分、及びプローブ領域のフラグメント、又は、
メディエーター領域のフラグメント、ロック領域及び/又はロック領域のフラグメント、並びにプローブ領域のフラグメント、又は、
メディエーター領域、並びにロック領域及び/又はロック領域のフラグメント、並びにプローブ領域のフラグメント、又は、
メディエーター領域、並びに連続したフラグメントとしてのプローブ領域の一部分、並びにロック領域及び/又はロック領域のフラグメント、並びにプローブ領域のフラグメント。
【0097】
切断されたメディエーター又はフラグメントが、検出分子の第2の領域に結合するメディエーター領域の一部を含有することがとりわけ好ましい。
【0098】
メディエーター分子は検出反応を用いて検出される。反応機構は記載の標的分子及び/又は鋳型分子の増幅と並行して起こり得る。
【0099】
本発明による方法は、標的分子及び検出分子の依存関係を解消し(decouples)、標準的マイクロアレイと併用した場合に大抵の標的分子を検出することが可能な新規の液相反応が開発されたことから有利である。様々な標的分子の並行検出が、新規の液相反応と普遍的マイクロアレイとの組合せによって可能となる。
【0100】
鋳型分子及び/又は標的分子の増幅がPCR、好ましくはリアルタイムPCRによって行われるのが好ましい。
【0101】
PCRは特にポリメラーゼ連鎖反応、すなわちプライマー分子に隣接する核酸セグメントを指数関数的に増幅する方法を意味する。反応バッチを周期的に加熱及び冷却する。
【0102】
プライマーは好ましくは、典型的には増幅対象の核酸のセグメントと相補的であり、このセグメントに隣接するオリゴヌクレオチドを意味する。アンプリコンを規定する2つのプライマーは、典型的にはフォワードプライマー及びリバースプライマーと称される。重合は5’末端から3’末端の方向へと行われるため、三量体はポリメラーゼが他のヌクレオチドを共有結合する3’−OH末端を必要とする。
【0103】
本発明の意味において、リアルタイムPCR中にメディエータープローブを使用することが特に好ましい。リアルタイムPCRをモニタリングする確立された技法の大半は、個々の標的特異的な蛍光プローブを使用する。これにより合成コストが跳ね上がり、これらの系の主な欠点となる。したがって、配列特異性と低コストとを両立する、増幅反応のモニタリングに用いることができる普遍的方法に長いこと関心が持たれていた。本発明は、好ましくは増幅反応、特に好ましくはリアルタイムPCR中に使用され得る本発明によるメディエータープローブによってこの問題を解決することを可能とした。この使用においては、標的分子は、通常のオリゴヌクレオチドプライマー及びポリメラーゼで増幅されるDNA核酸である。配列特異的な検出、好ましくはリアルタイム検出が、標的配列との相互作用後の増幅の際に切断される本発明による二官能性メディエータープローブによって実行される。この切断はポリメラーゼによって触媒される。メディエーター領域は、好ましくは標的配列と相補的でないように設計される。次いで、メディエーター領域は、固定化されるか又は溶液中に存在する検出分子へと拡散する。検出分子は閉じた単位であり、標的とは独立している。したがって、検出分子は普遍的に使用することができ、特異的標的には結合しない。これにより、検出分子を各々の反応及び各々の標的分子に合わせる必要がないため、このタイプの検出のコストが大幅に低減する。
【0104】
検出分子はヘアピン構造を有し、好ましくは互いに空間的に近接して配置されたフルオロフォア及びクエンチャーを含有するのが好ましい。FRETによる特に効率的な検出がこの配置によって可能となる。不対3’末端では、検出分子はメディエーター領域に相補的なメディエーターハイブリダイゼーション部位も含有する。
【0105】
FRETは好ましくは蛍光(fluorescence)共鳴エネルギー移動、特にドナー分子からアクセプタ分子へのエネルギー移動を指す。
【0106】
リアルタイムPCRでは、標的増幅及び検出は協調反応で同時に行われる。DNA鋳型の変性工程において、それらは2つの単一鎖へと分けられる。アニーリング温度に達するまで冷却すると、プライマー及びメディエータープローブのプローブ領域の両方がハイブリダイゼーションを受ける。5’領域(メディエーター領域)は標的DNAに結合しない。したがって、フラップ構造が形成される。プライマーの伸長において、メディエーター領域がポリメラーゼのヌクレアーゼドメインに取り込まれ、それにより切断される。切断された領域(メディエーター領域)はここで3’−OH基を有する。次いで、プローブ領域がプライマーの伸長時に分解される。標的の任意の重複において、メディエーター領域がそれにより放出される。メディエーター領域は検出分子へと拡散し、それらのメディエーターハイブリダイゼーション部位にハイブリダイズする。ポリメラーゼは好ましくはメディエーター領域の3’末端を伸長し、蛍光発光(fluorescent dequenching)がもたらされる。ここでは2つの異なったシグナル経路が好ましい。検出分子の5’末端がポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性によって分解され、クエンチャーラジカルが切り離される。しかしながら、ポリメラーゼが検出分子の親二重鎖を不安定化し、5’末端を分解することなくヘアピン構造がアンフォールドすることも好ましい。どちらの経路も最終的にフルオロフォアの発光をもたらす。これら2つの経路は、例えばTaqポリメラーゼが種々のエキソヌクレアーゼ活性について既知であるため並行して行うことができる。本発明の1つの利点は、蛍光放射が各々の増幅サイクルによって連続的に蓄積することにより、特に標的分子の開始量が少量であっても検出が成功し得ることである。
【0107】
メディエータープローブを検出手段として使用するリアルタイムPCRは、従来技術により既知の系(例えばSISAR又はInvader系)と比較して有利である。検出と増幅反応とを組み合わせることによって、標的分子の高感度検出が可能となり、分析がより正確となる。本発明による系はその両方、すなわち重合活性及びTaqポリメラーゼ活性を必要とする。プライマーの誤った結合による不完全な増幅が、プローブ領域に対する相補領域を有さず、また結合することができない切り離されたメディエーター領域において生じないことから、偽陽性結果が排除される。さらに、メディエータープローブを多重PCR系及び/又は二重PCR系において使用することができ、幾つかの異なるフルオロフォアを使用して複数の異なる検出分子に作用させることが可能である。このようにして多数の標的分子を並行して検出することができることから、これは現行の技術水準の系と比較して大きな利点である。このため、本発明による多重PCR系を例えば診断試験に使用することができ、ここで検出プロセスを加速及び単純化することができ、最終的に労力、材料及びコストを低減することができる。
【0108】
多重バッチにおいては、様々な群の複数の分析物を同じ群の異なる検出分子によって検出することができる。ここで、多重バッチを同じ群の異なる検出分子を用いて行うことができることが有利である。これはこれまでの従来技術においては可能ではなかった。
【0109】
本発明の別の大きな利点は、増幅反応の検出との分離(decoupling)である。これにより標準的検出分子を使用することが可能となり、これを大量に生産することができ、したがって生産コストが最小限に抑えられる。
【0110】
検出分子が、少なくとも1つの補助検出分子によるメディエーター領域との相互作用を変化させる(切断、消化、鎖二重化(strand doubling)、内部ハイブリダイゼーション、リン酸化、脱リン酸化、アミド化、化学基の結合若しくは切断、又は蛍光、リン光若しくは発光の変化を含む)ことも好ましい。ここで、検出分子が5’末端領域上及び/又はヘアピン構造内に少なくとも1つの蛍光修飾を有し、メディエーター領域との反応後に、蛍光修飾が補助検出分子によって検出分子から切り離され、及び/又は検出分子のヘアピン構造の5’末端が除去され、検出分子において蛍光シグナルの変化が検出されることがとりわけ好ましい。
【0111】
少なくとも1つの標的分子がRNAである方法も好ましい。この場合、RNAは好ましくは逆転写によって初めにcDNAへと転写される。次いで、得られるcDNAはメディエータープローブのプローブ領域が結合し、増幅される鋳型分子となる。検出を可能にするのに僅かなRNAしか必要とされないことから、cDNAへの転写によってRNA標的分子も増幅し得ることがとりわけ有利である。
【0112】
配列オーバーハングを有するプライマーが転写反応、好ましくは逆転写に使用されることも好ましい。これにより、cDNAに結合することができるが、遺伝子の元のDNAには結合しないメディエータープローブを使用することが可能となる。メディエータープローブをこれに使用すると、そのプローブ領域はcDNAとオーバーハング配列とを含む領域に結合する。元のDNAはオーバーハング配列を有しないため、メディエータープローブによってDNAとcDNAとを区別することができる。これにより、DNAの存在のみが検出され、DNAが対応するシグナルを誘発しないことが確実となる。
【0113】
さらに、この方法を用いて、同じ遺伝子のRNA(オーバーハング配列を有する対応するcDNAによる)及びDNAを並行して検出することができる。2つの異なる検出分子及び2つの異なるメディエータープローブをこの目的で使用するのが好ましい。
【0114】
真核細胞のサンプルを分析する場合、同じ遺伝子のRNAとDNAとの区別にイントロン/エクソン配列を使用してもよい。このため、2つの転写エクソンの領域がカバーされるようにプローブ領域をcDNAへの結合に選択することができる。これらの領域は遺伝子のDNA中のイントロンによって分離されるため、メディエーター領域は同様にDNAに結合することができず、cDNAのみに結合する。
【0115】
別の好ましい方法では、少なくとも1つの標的分子はペプチド又はタンパク質である。鋳型分子は好ましくはアプタマーであり、アプタマーはペプチド又はタンパク質に結合し、したがってメディエータープローブのプローブ領域に対する結合部位が接近可能となる。アプタマー単独ではプローブ領域が接近可能な結合部位を有しないのが好ましい。アプタマーが標的分子(ペプチド又はタンパク質)と相互作用した場合にのみ、結合部位が解放され、接近可能となる。これは二次構造の変化によって起こるのが好ましい。次いで、メディエータープローブのプローブ領域はアプタマーに結合し得る。同時に、アプタマーは増幅反応に利用可能である。アプタマーの増幅によって、メディエーター領域がプローブ領域から切り離され、それにより検出分子に結合し得る。このため、タンパク質をアプタマーの存在によって検出することができる。
【0116】
アプタマーが増幅するため、シグナルも増幅し、非常に少数のペプチド及び/又はタンパク質であっても検出することができる。
【0117】
複数の標的分子、例えばDNA及びタンパク質、又はタンパク質及びRNAを同時に検出することが好ましい場合もある。
【0118】
反応条件に応じて、本発明は、多分析物分析を用いた一工程でのタンパク質及び核酸等の様々な分子及び分子群の並行検出を可能にし、組み合わせたDNA−RNAタンパク質プロファイルをまとめることが可能となる。
【0119】
したがって、本発明による方法は、混合物中の1つ又は複数の同様の又は異なる生体分子の検出にも用いることができる。
【0120】
これは、好ましくは制限酵素の活性を用いることによって行われ、検出分子が3’末端領域に保護化学基を有することを特徴とし、保護化学基はメディエーター領域との反応後に補助分子によって検出分子から切り離され、それにより3’末端OH基が形成される。
【0121】
本発明による方法を多重分析に用いることも好ましい。多重分析は、特に1つの反応バッチでの幾つかの標的分子の並行検出を表す。
【0122】
従来技術に記載のもののようなPCR反応の多重化度を数桁超える可能性のある様々な異なる標的分子を、標準的アレイレイアウトでメディエータープローブを特に低コストで適合して検出することができる。長さ20ヌクレオチドの核酸分子からなるメディエーター領域は、例えば4
20(およそ1×10
12)個の考え得る異なるヌクレオチド配列を推定すると算出され得る。
【0123】
標的分子及び/又は鋳型分子とメディエータープローブとの直接的な相互作用では、標的分子及び/又は鋳型分子の存在によってメディエータープローブから活性化メディエーター領域が生じる。間接的な相互作用では、標的分子及び/又は鋳型分子、特に核酸は、メディエータープローブ及びメディエータープローブと構造的に相互作用しない補助分子、特にオリゴヌクレオチドとの相互作用を誘導する。本明細書に記載の補助分子はプライマーとして機能し、種々のタイプの補助分子、特に好適なポリメラーゼによって伸長し、その際にメディエータープローブがポリメラーゼとの構造的相互作用によりメディエーター領域及びプローブ領域へと切断される。このため、メディエーター領域は標的分子の存在下でメディエータープローブから(from)形成される。これらの補助分子は好ましくは触媒、タンパク質、核酸、天然物質、酵素、酵素系、細胞溶解物、細胞構成要素、それに由来する誘導体若しくは合成分子、又はそれらの混合物を含む群から選択される。
【0124】
メディエータープローブが切り離されることで、分子量(メディエータープローブが切り離された後、それから切り離されたフラグメントはメディエータープローブとは異なる)、酵素活性(メディエータープローブは、新たな遊離3’末端の存在により検出反応を開始することが可能であるというその特性を有利に変化させる)、親和性若しくは結合力を含む結合特性、化学的反応性(メディエータープローブが切り離された後、メディエータープローブのメディエーター領域を含有する切断フラグメントは、3’末端に補助分子(例えばポリメラーゼ)によって伸長し得るヒドロキシル基を有し、これは非切断プローブでは不可能である)、化学基の存在、伝導性、分極率若しくは電荷を含む電気特性、及び/又は光の吸収及び放出を含む光学的特性(メディエータープローブを少なくとも1つの蛍光色素で標識した場合、蛍光シグナルの変化は好ましくは切断後に検出され得る)を含む群から選択される、メディエータープローブの少なくとも1つの領域の物理的及び/又は化学的な特性の変化が生じることは驚くべきことであった。
【0125】
好ましい実施の形態では、メディエーター領域と複数の同様の検出分子との連続的な相互作用が存在し、それによりシグナル増幅がもたらされる。これにより検出反応の感度が増大する。この実施の形態では、修飾ヌクレオチドが検出分子の合成に有利に使用され、検出反応中に限られた5’末端分解のみが可能となる。これは、分子の合成中の例えば5’末端の最後から2番目のヌクレオチドへの1つ又は複数のホスホチオエート(PTO)修飾の組込みによって起こり得る。PTO修飾の位置は好ましくは領域1、とりわけ好ましくは蛍光ドナーFと蛍光アクセプタQとの間に位置する。
図6は修飾ヌクレオチドの好ましい位置を示す。好ましい補助検出分子はPTO結合を切り離さないか、又は低効率でしか切り離すことができず、5’末端(領域1)はこのヌクレオチドを越えて分解することができない。その結果として、メディエーター分子は更に伸長しない。反応条件の好適な調節によって、補助検出分子及びメディエーター分子は検出分子から解離し、別の検出分子の活性化に再び利用可能となり得る。
【0126】
特に好ましい実施の形態では、メディエーター分子は、各々の反応サイクル及び/又は経時的反応セグメントにおいて複数の同一な特異的検出分子と相互作用し、それによりシグナル生成検出反応を誘発することができる。標的分子の増幅により累積効果が生じるため、反応の感度は顕著に増大する。
【0127】
好適なデバイスをリアルタイムで使用して検出を行い、及び/又はエンドポイント測定が検出可能であることも好ましい。どちらの場合も、本発明による実施の形態は有利には、例えば洗浄工程又はインキュベーション工程等の任意の後処理を必要としない。
【0128】
上記のPTO修飾に適合するが、併用に限定されない別の好ましい実施の形態では、相補ヌクレオチドと任意の水素架橋を形成することができない脱塩基ヌクレオチド(テトラヒドロフランTHF修飾)が領域cに組み込まれる。これにより、脱塩基ヌクレオチドの反対の位置でのメディエーター領域の伸長反応が抑制され、この際に補助検出分子及び伸長したメディエーター領域が検出分子から解離する(
図7を参照されたい)。好ましい修飾のいずれかの使用は、メディエーター分子と複数の検出分子との連続的相互作用を可能にし、これを本発明の意味において特にメディエーターリサイクルと称することができる。メディエーター領域は、検出分子との最初の相互作用及び後続の処理において補助検出分子によって伸長し、この伸長状態で付加的な検出分子とも相互作用することができ、好適な補助検出分子(例えば、5’ヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ)による5’末端(したがって、更には蛍光アクセプタQ)の分解を可能にし得る。標的分子の増幅に関わらずシグナルが生成し、増幅することから、この反応機構によってシグナル増幅が可能になる。標的分子を好適な補助分子を用いて増幅させ、このプロセスをメディエータープローブ切断と組み合わせる場合、標的分子増幅とシグナル増幅とが組み合わされ、検出反応における検出限界を数桁低下させるメディエーターの蓄積が起こる。このことは実に驚くべきことであり、従来技術には記載されていない。さらに、このことは当該技術分野における慣例からの脱却となる。このプロセスを行った後、例えば反応温度を上昇させることによって反応条件を有利に変化させ、酵素、例えばポリメラーゼ及び伸長したメディエーター領域を検出分子から解離させてもよい。当業者は、本発明の特に好ましい実施の形態において反応条件を周期的に変化させ、メディエーター分子を複数の同様の検出分子と相互作用させることができることを認識している。驚くべきことに、これにより反応感度を顕著に増大するシグナル増幅がもたらされる。
【0129】
検出反応は、メディエーター領域とは対照的に、非切断メディエータープローブがいかなるシグナル生成反応も誘発せず、偽陽性結果が生成しないように設計するのが好ましい。メディエータープローブが切り離されることによって生じるメディエーター領域は、ポリメラーゼ媒介伸長反応に特に有利な3’−OH末端を有する。この切断が起こらない場合、メディエーター配列がメディエータープローブのハイブリダイゼーション配列に共有結合することから、メディエーターの伸長は不可能である(
図8を参照されたい)。加えて、メディエータープローブの3’末端の非特異的な伸長は、例えばリン酸基又は幾つかの他の化学基によって保護することができる。
【0130】
局所的な検出可能な(蛍光)シグナルは、好ましくはメディエーター領域と検出分子との相互作用事象によって生じる。得られる5’末端の切断による好ましいメディエーター伸長によって十分な検出分子が活性化されると、シグナルが増幅し、好適な検出装置(特に光学装置)を用いて検出することができる。これにより反応混合物の存在下での検出が可能となり、いかなる処理工程も必要とされない。好ましい実施の形態は、反応を行った後に開放する必要なしに好適な反応空間内での検出を可能にするという有利な特性を有する。これにより、付加的な労力及び高リスクの汚染を伴うハイブリダイゼーション工程、染色工程及び/又は洗浄工程に起因するマイクロアレイ分析と関連する、従来技術に記載されている問題が回避される。したがって、この好ましい実施の形態は新たな技術分野を開拓し、従来技術において長らく存在する問題を解決するため、当該技術分野の慣例からの脱却とみなすことができる。
【0131】
上記の利点に加えて、好ましい実施の形態は得られるシグナルを反応の任意の時点で読み取ることを可能にする。これにより、例えば核酸増幅の定量化又はタンパク質相互作用の結合動態の決定に必要とされる反応のリアルタイムのモニタリングが可能となる。このため、好ましい実施の形態は、典型的にはエンドポイント決定のみが行われ、したがってシグナル検出を任意の時点で行うことができない従来技術とは区別される。
【0132】
多重分析によって、反応混合物中の複数の異なる分析物の検出が決定される。好ましい反応の多重化度を増大させるためには、「n個の」異なる標的分子に対する「n個の」異なるメディエータープローブの使用が好ましい。好ましい実施の形態では、領域1が標的分子と特異的に相互作用するメディエータープローブを検出対象の各々の標的分子に割り当てることができる。切断が成功した後のメディエーターを表す、それぞれのメディエータープローブの領域2は、標的分子に対する親和性を有さず、相補的でもないが、代わりに規定の検出分子に対する特異的な相互作用粒子となる。したがって、検出分子が各々の標的分子に間接的に割り当てられ、その割当てはメディエータープローブによって行われる。様々な標的分子の検出には様々な検出分子が必要とされる。好ましい構造に基づいて、これらの分子が領域5でのみ異なっていれば十分である。任意の配列系列が可能であり、多重パラメーター分析の検出方法が利用可能となることから、実質的に任意の並列度が可能である。したがって、多重パラメーター分析の検出方法として上記系を使用するのが好ましい。系は好ましくは混合物中の1つ又は複数の同様の又は異なる生体分子の検出に使用することができる。さらに、系は少なくとも1つ又は特に複数の標的分子の増幅に有利に使用することができ、これらは有利には同一な標的分子ではない。加えて検出分子が3’末端領域に化学保護基を有し、それがメディエーター領域との反応後に補助分子を用いて検出分子から切り離され、3’末端OH基が生成するように、制限酵素の活性を利用した上で系を使用するのが好ましい場合もある。
【0133】
本発明による問題に対する解決策では、メディエータープローブが分析対象のサンプルとともに、使い捨ての反応カートリッジに固定化された検出分子に適用された後、好適な方法によって処理され、検出される。次いで、その後の汚染をもたらすことなく反応カートリッジを廃棄することができる。加えて、増幅工程を検出前に又は検出と並行して反応容器内で行うことができ、任意に標的分子の特異的な濃縮を達成することができる。したがって、標的分子濃度の高い反応バッチ(例えばPCR後のバッチ)を増幅領域から検出領域へと移すことにより、関連の工程及び汚染リスクが取り除かれる。
【0134】
本発明は、上記方法又は系を用いる処理機及びマイクロ流体反応カートリッジにも関する。カートリッジは、特に普遍的検出アレイが存在し、好ましくは1つ又は複数の検出分子の局所的に分解された配置からなる少なくとも1つの反応チャンバを有する。
【0135】
処理機は、好ましくはカートリッジ及び反応液を一定の温度及び/又は規定の温度プロファイル(加熱及び/又は冷却)に供するものである。処理機は好ましい系又は方法により検出分子の変化を検出することができる。例えば、蛍光シグナルをこのようにして使用してもよい。加えて、処理機は能動素子又は受動素子を用いた反応カートリッジ内の液体輸送を可能にする。先の論考はメディエータープローブ、系及び方法にも適用される。
【0136】
考え得る一実施の形態において、分析対象のサンプル及び必要な試薬の適用を使い捨てのカートリッジで自動的に行うことができるため、本発明による方法を行うコストを低減することができる。これにより、これらの工程に訓練された人材を使用する必要性が排除される。
【0137】
別の好ましい実施の形態では、本発明は少なくとも1つの検出分子、本発明の意味においてポリメラーゼ及びdNTPを含むキットに関する。それにより提供されるキットは任意の検出反応に使用することができ、したがって普遍的検出キットに有利である。
【0138】
本発明及び従来技術を、図及び例示的な実施形態を参照して下記に更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。