(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)について説明をするが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。なお、両実施形態で重複する記載については、第一実施形態においてのみ説明するものとし、第二実施形態の説明においては適宜記載を省略する。また、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」及びそれに対応する「メタクリロイル」を意味する。
【0017】
[第一実施形態]
<画像表示装置用粘着シートI>
本実施形態の画像表示装置用粘着シートは、粘着層と、粘着層を挟むように積層された一対の基材層と、を備えている。基材層の外縁は、粘着層の外縁よりも外側に張り出していることが好ましい。
【0018】
すなわち、
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る粘着シート1(3層品)は、透明なフィルム状の粘着層2と、粘着層2を挟む重剥離セパレータ3(一方の基材層)及び軽剥離セパレータ4(他方の基材層)とを備えている。この粘着層2は、例えば、携帯端末用のタッチパネル式ディスプレイ等の画像表示装置において、透明保護板とタッチパネルとの間、又はタッチパネルと液晶表示ユニットとの間に配置される透明なフィルムである。
【0019】
粘着層2は、ステアリル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を主成分として含む粘着性樹脂組成物から形成される。このため、粘着力に加え、表面平坦性がより優れ、誘電率を適度な値にできる効果を奏する。
【0020】
粘着層2において、ステアリル(メタ)アクリレートに由来する構造単位は、粘着性樹脂組成物を構成するポリマー成分に起因するものであってもよいし、モノマー成分に起因するものであってもよい。すなわち、該ポリマー成分中にステアリル(メタ)アクリレートに由来する骨格を含有させることによって、粘着性樹脂組成物に当該構造単位を付与してもよいし、モノマー成分中にステアリル(メタ)アクリレートを含有させることで、当該構造単位を付与してもよい。ただし、当該構造単位は、ポリマー成分とモノマー成分の両者に起因するものであることが、粘着層2の透明性を向上する観点から好ましい。
【0021】
ステアリル(メタ)アクリレートに由来する構造単位は、粘着層2の主成分である。本発明において主成分とは、粘着層2を構成する成分中で最も多い成分を意味する。
ステアリル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有量は、表面平坦性及び低誘電率化の観点から、全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。同様の観点から、同含有量は95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0022】
粘着層2は、下記のような物性を有することが好ましい。すなわち、粘着層2は画像表示装置に用いるため、ヘーズ(Haze)が1.5%以下である必要がある。視認性の観点からは、ヘーズは、1.0%以下が好ましく、0.8%以下がより好ましく、0.5%以下が更に好ましい。ヘーズの下限値については0%に近いことが好ましいが、通常は0%より大きく、実用的な観点からは0.1%以上である。
【0023】
ヘーズは、後述する(A)成分、(B)成分、及び(C)成分間の相溶性に依存する。(A)成分、(B)成分、及び(C)成分間の相溶性が良好であればヘーズを低くすることができる。ヘーズを1.5%以下とする方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
1)後述する(A)成分の主成分としてステアリル(メタ)アクリレートを構造単位に含む場合、(B)成分として水酸基含有(メタ)アクリレート、アルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリレート等の極性基を有する化合物を選択しない、又は選択したとしても含有量は少なくする。
2)後述する(A)成分の主成分としてステアリル(メタ)アクリレートを構造単位に含み、(C)成分として高分子量成分(重量平均分子量が2.0×10
3以上)を用いる場合、(C)成分には炭素数が9〜18であるアルキル基又はアルキレン基を主に含むものを選択する。
3)後述する(A)成分の主成分としてステアリル(メタ)アクリレートを構造単位に含む場合、(C)成分として低分子量成分(重量平均分子量が2.0×10
3未満)を選択する。
【0024】
ヘーズ(Haze)とは、濁度を表わす値(%)であり、ランプにより照射され、試料中を透過した光の全透過率Tと、試料中で拡散され散乱した光の透過率Dより、(D/T)×100として求められる。これらはJIS K 7136により規定されており、市販の濁度計、例えば、日本電色工業(株)製NDH−5000により容易に測定可能である。
【0025】
また、粘着層2は、段差埋め込み性及び表面平坦性を向上させる観点から、40℃〜80℃でのtanδが1.2以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.4以上であることが更に好ましい。一方、フィルム形成性を良好にする観点から、粘着層2は、40℃〜80℃でのtanδが2以下であることが好ましく、1.9以下であることがより好ましく、1.8以下であることが更に好ましい。
【0026】
ここで、tanδとは、損失弾性率を剪断貯蔵弾性率で除した値であり、損失弾性率、剪断貯蔵弾性率は、広域動的粘弾性測定装置により測定した値である。ガラス転移温度(Tg)、損失弾性率及び剪断貯蔵弾性率は、具体的には、以下の方法で測定したものである。
【0027】
(ガラス転移温度、損失弾性率及び剪断貯蔵弾性率の測定)
ガラス転移温度、損失弾性率、及び剪断貯蔵弾性率は、厚み0.5mm、幅10mm、長さ10mmの粘着層を作製し、広域動的粘弾性測定装置(Rheometric Scientific製、Solids Analyzer RSA−II)を用いて、条件「シェアサンドイッチモード、周波数1.0Hz、測定温度範囲−20℃〜100℃で昇温速度5℃/分」にて測定できる。
【0028】
粘着層2は、25℃における剪断貯蔵弾性率が5.0×10
4Pa以上であることが好ましく、8.0×10
4Pa以上であることがより好ましい。さらに、粘着層2は、25℃における剪断貯蔵弾性率が5.0×10
5Pa以下であることが好ましく、3.5×10
5Pa以下であることがより好ましい。25℃における剪断貯蔵弾性率をこの範囲内とすることで、段差埋め込み性及び染み出し性をより向上することができる。
【0029】
また、粘着層2のガラス転移温度は、0℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることが更に好ましい。ガラス転移温度が0℃以上であると、染み出し性をより抑制することができ、かつ後述する軽剥離セパレータ4を剥離する際に、良好に剥離し易くなるため、フィルム形成性が良好に保たれる傾向がある。一方、粘着層2のガラス転移温度は、50℃以下であることが好ましく45℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が50℃以下であると、粘着性及び段差埋め込み性を向上できる傾向がある。なお、本願におけるガラス転移温度は、上記測定温度範囲において、tanδがピークを示す温度とする。ただし、この温度範囲に2つ以上のtanδピークが観測されるときは、最もtanδの値が大きい値を示す温度をガラス転移温度とする。
【0030】
粘着層2の厚さは、使用用途及び方法により適宜調整されるため特に限定されないが、1.0×10
2μm以上であることが好ましく、1.2×10
2μm以上であることがより好ましく、1.3×10
2μm以上であることが更に好ましい。さらに、5.0×10
2μm以下であることが好ましく、3.5×10
2μm以下であることがより好ましく、3.0×10
2μm以下であることが更に好ましい。この範囲で使用した場合、ディスプレイ上に光学部材を貼合せるための透明な粘着シートとして特に優れた効果を発揮する。
また、粘着層2をタッチパネルと透明保護板の間に用いる場合、粘着層の室温(25℃)における100kHzでの誘電率は、タッチパネルの応答性を確保する観点から、2以上であることが好ましい。一方、応答性が高くなりすぎて誤作動する可能性を低減する観点から、4以下であることが好ましく、3.5以下であることがより好ましく、3.2以下であることが更に好ましい。
【0031】
また、粘着層2は、例えば、重剥離セパレータ3上に、上記ステアリル(メタ)アクリレート成分及び必要に応じて添加される(メタ)アクリロイル基を有する成分を含む粘着性樹脂組成物を任意の厚さで塗工し、これに活性エネルギー線を照射して硬化させた後に所望の大きさに切断することで形成される。活性エネルギー線の光源としては、波長400nm以下に発光分布を有するものが好ましく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ及びマイクロウェーブ励起水銀灯が使用できる。また照射エネルギーは特に限定されないが、1.6×10
2mJ/cm
2以上であることが好ましく、1.8×10
2mJ/cm
2以上であることがより好ましく、2.0×10
2mJ/cm
2以上であることが更に好ましい。さらに、6.5×10
2mJ/cm
2以下であることが好ましく、6.0×10
2mJ/cm
2以下であることがより好ましく、5.0×10
2mJ/cm
2以下であることが更に好ましい。
【0032】
粘着性樹脂組成物は、(A)アクリル酸誘導体ポリマー、(B)アクリル酸誘導体、(C)架橋剤、及び(D)光重合開始剤を含有することが好ましい。
以下、粘着性樹脂組成物について説明する。
【0033】
[(A)成分:(A)アクリル酸誘導体ポリマー]
(A)アクリル酸誘導体ポリマーとは、(メタ)アクリロイル基を分子内に1つ有するモノマーを1種で重合したもの又は2種以上組み合わせて共重合したものをいう。なお、本実施形態の効果を損なわない範囲であれば、(A)成分は、(メタ)アクリロイル基を分子内に2個以上有する化合物、又は(メタ)アクリロイル基を有していない重合性化合物(アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン等の重合性不飽和結合を分子内に1個有する化合物、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物)を、(メタ)アクリル酸系誘導体ポリマーと共重合させたものであってもよい。
【0034】
(A)成分を形成する(メタ)アクリロイル基を分子内に1つ有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリロイルモルホリン;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(n−ラウリル(メタ)アクリレート)、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式基を有する(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート;アルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0035】
(A)成分は、モノマー成分として、ステアリル(メタ)アクリレートが含まれていることが好ましい。(A)成分が共重合体である場合には、ステアリル(メタ)アクリレートの含有割合は、共重合体全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。さらに、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましい。ステアリル(メタ)アクリレートの含有割合がこのような範囲であると、粘着層と透明保護板(ガラス基板、プラスチック基板等)との密着性、及び表面平坦性がより向上し、且つ誘電率をより低減できる。このような共重合体は、一般に、各モノマーを上記含有割合と同じ割合で配合し、共重合させることで得ることができる。また、重合率は、実質的に100%に近づくようにすることがより好ましい。
【0036】
ステアリル(メタ)アクリレートとしては、n−ステアリル(メタ)アクリレート(オクタデシル(メタ)アクリレートともいう)、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、その中でもイソステアリル(メタ)アクリレートがより好ましい。イソステアリル(メタ)アクリレートにおけるイソステアリル基の分岐数は多い方が特に好ましい。これらのステアリル(メタ)アクリレートは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
ステアリル(メタ)アクリレートと共重合する他のモノマーとしては、上記に記載したものに限定されないが、水酸基、モルホリノ基、アミノ基、カルボキシル基、シアノ基、カルボニル基、ニトロ基、アルキレングリコール由来の基等の極性基を有するモノマーが好ましい。これらの極性基を有する(メタ)アクリレートによって、粘着層と透明保護板との粘着性が向上し、高温高湿条件下での信頼性も向上する。
【0038】
特に、ステアリル(メタ)アクリレートと、下記式(x)で示されるアルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
CH
2=CXCOO(C
pH
2pO)
qR ・・・(x)
式(x)中、Xは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又は炭素数が1〜10であるアルキル基を示し、pは2〜4の整数を示し、qは1〜10の整数を示す。
【0039】
式(x)で表されるアルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ジブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシオクタエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシノナエチレングリコール(メタ)アクリレート等のメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシヘプタプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうち、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートがより好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが更に好ましい。また、これらのアルキレングリコール鎖含有(メタ)アクリレートは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値が、1.5×10
4以上であることが好ましく、2.0×10
4以上であることがより好ましく、2.5×10
4以上であることが更に好ましい。同成分の重量平均分子量が1.5×10
4以上であると、透明保護板等に対してより剥がれの発生しにくい粘着力を有する粘着層を得ることができる。一方、同成分の重量平均分子量は、3.0×10
5以下であることが好ましく、2.0×10
5以下であることがより好ましく、1.0×10
5以下であることが更に好ましい。同成分の重量平均分子量が3.0×10
5以下であると、粘着性樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎず、シート状の粘着層にする際の加工性がより良好になる。
【0041】
(A)成分の重合方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の既知の重合方法を用いることができる。
【0042】
(A)成分を重合する際の重合開始剤としては、熱によりラジカルを発生する化合物を用いることができる。具体的には、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等のような有機過酸化物;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のようなアゾ系化合物などが挙げられる。
【0043】
(A)成分の含有量は、粘着性樹脂組成物の全質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることが更に好ましい。さらに、同成分の含有量は、粘着性樹脂組成物の全質量に対して、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。(A)成分の含有量がこの範囲であると、粘着性樹脂組成物の粘度が粘着層を作製する際の適正粘度範囲に入り、加工性がより良好となる。また、得られた粘着層は、ガラス基板、プラスチック基板等の透明保護板への粘着性、及び表面平坦性がより良好となる。
【0044】
[(B)成分:アクリル酸誘導体]
(B)アクリル酸誘導体は、(メタ)アクリロイル基を分子内に1つ有する(メタ)アクリル酸系誘導体モノマーであり、(A)成分を形成する(メタ)アクリロイル基を分子内に1つ有するモノマーとして例示した化合物と同様のものが挙げられる。
【0045】
なお、本実施形態においては、粘着性、透明性、段差埋め込み性及び染み出し性の観点から、(B)成分は、ステアリル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、表面平坦性及び低誘電率化の観点からは、イソステアリル(メタ)アクリレートがより好ましい。また、粘着性、透明性及び高温高湿条件下での信頼性の観点から、(B)成分は、水酸基含有(メタ)アクリレートを含有することが更に好ましい。上記水酸基含有(メタ)アクリレートの中でも特に、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0046】
(B)成分の含有量は、粘着性樹脂組成物の全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましい。さらに、同成分の含有量は、粘着性樹脂組成物の全質量に対して、65質量%以下であることが好ましく、55質量%であることがより好ましく、45質量%以下であることが更に好ましい。(B)成分の含有量がこの範囲であると、粘着性樹脂組成物の粘度が粘着層を作製する際の適正粘度範囲に入り、加工性がより良好となる。また、得られた粘着シートの粘着性及び透明性にもより優れるものとなる。そして、得られた粘着層が段差埋め込み性にもより優れるものとなる。
(B)成分としてステアリル(メタ)アクリレートを用いる場合、ステアリル(メタ)アクリレートの含有量は、粘着性、透明性、段差埋め込み性及び表面平坦性をバランス良く向上できる観点から、粘着性樹脂組成物の全質量に対して5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましい。同様の観点から、(B)成分としてステアリル(メタ)アクリレートを用いる場合、その含有量は60質量%以下であることが好ましく、50質量%であることがより好ましく、45質量%以下であることが更に好ましい。
(B)成分として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いる場合、水酸基含有(メタ)アクリレートの含有量は、粘着性をより向上でき、且つヘーズをより小さくできる観点から、粘着性樹脂組成物の全質量に対して1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが更に好ましい。同様の観点から、(B)成分として水酸基含有(メタ)アクリレートを用いる場合、その含有量は15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることが更に好ましい。
【0047】
[(C)成分:(C)架橋剤]
(C)成分は、2官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、(C)成分の具体例としては、下記式(c)〜(e)で表される化合物、ウレタン結合を有するウレタンジ(メタ)アクリレート、側鎖(メタ)アクリル変性(メタ)アクリレートポリマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好適に示される。ただし、式(c)、(d)及び(e)中、sは1から20の整数を示す。
【0050】
【化3】
上記式(c)で表される化合物を用いる場合、ヘーズをより低減できる観点から、sが6以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。同様の観点から、上記式(c)で表される化合物を用いる場合、sが18以下であることが好ましい。また、上記式(d)及び式(e)で表される化合物を用いる場合、ヘーズをより低減できる観点から、sが1以上であることが好ましい。同様の観点から、上記式(d)及び式(e)で表される化合物を用いる場合、sが10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。
【0051】
上記ウレタン結合を有するウレタンジ(メタ)アクリレートが、炭素数が2〜4であるポリアルキレングリコールを用いて合成された重量平均分子量が1.0×10
3以上のものである場合、ステアリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートを主成分とする共重合体との相溶性に劣る傾向がある。このような傾向から、ヘーズを1.5%以下にするためには、炭素数が2〜4であるポリアルキレングリコールを用いて合成されたウレタン結合を有するウレタンジ(メタ)アクリレートは実質的に含まない、又はその含有量を減らして他の(C)成分と併用することが好ましい。
【0052】
上記側鎖(メタ)アクリル変性(メタ)アクリレートポリマーは、側鎖を(メタ)クリロイル基により変性した(メタ)アクリレートポリマーであればよいが、段差埋め込み性及び表面平坦性の観点から、下記一般式(1)で示される構造単位、及び下記一般式(2)で示される構造単位を有することが好ましく、ヘーズ、段差埋め込み性及び表面平坦性の観点からは、下記一般式(1)中のR
1が炭素数9〜18のアルキル基であることが好ましい。このような観点から、側鎖(メタ)アクリル変性(メタ)アクリレートポリマーは、変性前の(メタ)アクリレートポリマーが(A)成分であることがより好ましい。(A)成分の側鎖を(メタ)アクリル変性して(C)成分とすることにより(A)成分と(C)成分の相溶性がより優れるためヘーズが小さく、且つ表面平坦性にもより優れる粘着シートを得ることができる。
【0053】
側鎖を(メタ)アクリル変性する方法としては、(A)成分に、例えば下記一般式(3)で示される水酸基を有する構造単位、又はカルボキシル基を有する構造単位を、ポリマーの主鎖中に持たせておいて、下記一般式(4)で示される2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを付加する方法がある。また、別の方法として、例えば、下記一般式(5)で示されるようなグリシジル基を有する構造単位をポリマーの主鎖中に持たせておき、これに(メタ)アクリル酸を付加する方法が挙げられる。さらに、ジブチル錫ジラウレート等を用いたグラフト重合により(メタ)アクリル側鎖を形成する方法も挙げられるが、下記一般式(3)で示されるような水酸基に2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを付加する方法、又は下記一般式(5)で示されるようなグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加する方法がより好ましい。
【0054】
下記一般式(3)で示されるような水酸基にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを付加する場合、水酸基1当量に対して、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを0.01当量以上0.9当量以下になるように付加するのが好ましい。同様に下記一般式(5)で示されるようなグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加する場合、グリシジル基1当量に対して、(メタ)アクリル酸を0.01当量以上0.9当量以下になるように付加するのが好ましい。
【0055】
これらの方法によれば、側鎖の(メタ)アクリロイル基が、ウレタン結合又はエステル結合を介して主鎖に結合した構造が得られる。これらの構造を有すると段差埋め込み性の観点で好ましい。
【0057】
【化5】
(式中、Rは水素又はメチル基を表し、R
1は炭素数が4〜18であるアルキル基を表し、Xは、−CH
2CH
2−、−(CH
2CH
2O)
pCH
2CH
2−{pは1〜500までの整数}、−R
2−OCONH−R
3−又は−R
4−CH(OH)CH
2−を表し、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に炭素数が1〜10であるアルキレン基を表す。)
R
1は、表面平坦性及びヘーズをより低減できる観点から、炭素数が9以上であることが好ましく、12以上であることがより好ましい。同様の観点から、炭素数が18以下であるアルキル基が好ましい。ここで、アルキル基は、直鎖状アルキル基、分枝鎖状アルキル基又は脂環式アルキル基とすることができ、アルキレン基は、上記アルキル基からさらに水素原子を1つ除いて形成される基とすることができる。
【0058】
【化6】
(式中、Rは水素又はメチル基を表し、R
2は炭素数が1〜10であるアルキレン基を表す。)
【0059】
【化7】
(式中、Rは水素又はメチル基を表し、R
3は炭素数が1〜10であるアルキレン基を表す。)
【0060】
【化8】
(式中、Rは水素又はメチル基を表し、R
4は炭素数が1〜10であるアルキレン基を表す。)
【0061】
次に、(C)成分として側鎖(メタ)アクリル変性(メタ)アクリレートポリマーを用いる場合、(C)成分の最適な含有量は、側鎖の変性割合によって変化するが、含有量が多すぎると粘着力が低下し、剥がれが発生したり、気泡が入りやすくなるなどの問題が発生しやすく、一方少なすぎると保持力が低くなり信頼性が低下する傾向にある。
【0062】
(C)成分は、高温又は高温高湿下における気泡及び剥がれの発生をより抑制できる観点から、3.0×10
2以上であることが好ましく、5.0×10
2以上であることがより好ましい。同様の観点から、同成分の重量平均分子量は1.0×10
5以下であることが好ましい。
また、(C)成分として側鎖(メタ)アクリル変性(メタ)アクリレートポリマーを用いる場合の重量平均分子量は、(A)成分と同程度が好ましいが、側鎖変性するため多少重量平均分子量が低くても使用することができる。具体的には、1.0×10
4以上であることが好ましく、1.5×10
4以上であることがより好ましく、2.0×10
4以上であることが更に好ましく、2.5×10
4であることが特に好ましい。さらに、3.0×10
5以下であることが好ましく、1.0×10
5以下であることがより好ましく、8.0×10
4以下であることが更に好ましく、7.0×10
4以下であることが特に好ましい。
【0063】
(C)成分の含有量は、粘着性樹脂組成物の全質量に対して、15質量%以下であることが好ましい。該含有量が15質量%以下であると架橋密度が高くなり過ぎないため、より充分な粘着性を有し、かつ弾性が高く、脆さのない粘着層を得ることができるさらに、段差埋め込み性をより向上できる観点から、(C)成分の含有量は、10質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが更に好ましい。
【0064】
(C)成分の含有量の下限については特に制限はないが、フィルム形成性をより良好にする観点から、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更に好ましい。
【0065】
[(D)成分:(D)光重合開始剤]
(D)成分は、活性エネルギー線の照射により硬化反応を促進させる成分である。ここで活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等をいう。
【0066】
(D)成分は特に限定されるものではなく、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイル系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩などの公知の材料を使用することが可能である。
【0067】
具体的には、ベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N,N’,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等の芳香族ケトン化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンジル、ベンジルジメチルケタール等のベンジル化合物;β−(アクリジン−9−イル)(メタ)アクリル酸等のエステル化合物;9−フェニルアクリジン、9−ピリジルアクリジン、1,7−ジアクリジノヘプタン等のアクリジン化合物;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メチルメルカプトフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリホリノフェニル)−1−ブタノン;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパン;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド;オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)などが挙げられる。これらの化合物は複数を組み合わせて使用してもよい。
【0068】
特に、ヘーズ低減の観点からは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物;オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)が好ましい。
【0069】
また、特に厚いシート(粘着層)を作製するためには、(D)成分は、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系化合物を含むことが好ましい。
【0070】
本実施形態における(D)成分の含有量は、粘着性樹脂組成物の全質量に対して、実用的な観点から、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。さらに、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。(D)成分の含有量を5質量%以下とすることで、光透過率が高く、また色相も黄味を帯びることがなく、且つ段差埋め込み性にもより優れる粘着層を得ることができる。
【0071】
[その他添加剤]
粘着性樹脂組成物には、必要に応じて上記の(A)、(B)、(C)、及び(D)成分とは別に、各種添加剤を含有させてもよい。含有可能な各種添加剤としては、例えば、粘着性樹脂組成物の保存安定性を高める目的で添加するp−メトキシフェノール等の重合禁止剤、粘着性樹脂組成物を光硬化させて得られる粘着層の耐熱性を高める目的で添加するトリフェニルホスファイト等の酸化防止剤、紫外線等の光に対する粘着性樹脂組成物の耐性を高める目的で添加するHALS(Hindered Amine Light Stabilizer)等の光安定化剤、ガラス等に対する粘着性樹脂組成物の密着性を高めるために添加するシランカップリング剤などが挙げられる。
【0072】
なお、画像表示装置用粘着シートを得る際に、粘着層はポリエチレンテレフタレートフィルム等の重合体フィルムの基材(重剥離セパレータ3)と同素材のカバーフィルム(軽剥離セパレータ4)で挟まれる構成となる。このとき、粘着層と、それらのポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材及びカバーフィルムとの剥離性を制御するために、粘着性樹脂組成物には、ポリジメチルシロキサン系、フッ素系等の界面活性剤を含有させることができる。
【0073】
これらの添加剤は、単独で用いてもよく、また複数の添加剤を組み合わせて用いてもよい。なお、これらのその他添加剤の含有量は、通常、上記の(A)、(B)、(C)、及び(D)の含有量の合計と比較すると少量であり、一般に粘着性樹脂組成物の全質量に対して0.01質量%〜5質量%程度である。
また、粘着層の可視光領域(波長:380〜780nm)の光線に対する光透過率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0074】
重剥離セパレータ3としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムが好ましく、中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」という場合もある)であることがより好ましい。重剥離セパレータ3の厚みは、作業性の観点から、50μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることが更に好ましい。同様の観点から、重剥離セパレータ3の厚みは、2.0×10
2μm以下であることが好ましく、1.5×10
2μm以下であることがより好ましく、1.3×10
2μm以下であることが更に好ましい。重剥離セパレータ3の平面形状は、粘着層2の平面形状よりも大きく、重剥離セパレータ3の外縁は粘着層2の外縁よりも外側に張り出していることが好ましい。重剥離セパレータ3の外縁が粘着層2の外縁よりも張り出す幅は、取り扱い易さ、剥がし易さ、埃等の付着をより低減できる観点から、2mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましい。同様の観点から、重剥離セパレータ3の外縁が粘着層2の外縁よりも張り出す幅は、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。粘着層2及び重剥離セパレータ3の平面形状が略長方形等の略矩形状である場合には、重剥離セパレータ3の外縁が粘着層2の外縁よりも張り出す幅は、上記の観点から、少なくとも1つの辺において2mm以上であることが好ましく、少なくとも1つの辺において4mm以上であることがより好ましく、全ての辺において2mm以上であることが更に好ましく、全ての辺において4mm以上であることが特に好ましい。同様の観点から、少なくとも1つの辺において20mm以下であることが好ましく、少なくとも1つの辺において10mm以下であることがより好ましく、全ての辺において20mm以下であることが更に好ましく、全ての辺において10mm以下であることが特に好ましい。
【0075】
軽剥離セパレータ4としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムが好ましく、中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることがより好ましい。軽剥離セパレータ4の厚みは、作業性の観点から、25μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることが更に好ましい。同様の観点から、軽剥離セパレータ4の厚みは、1.5×10
2μm以下であることが好ましく、1.0×10
2μm以下であることがより好ましく、75μm以下であることが更に好ましい。軽剥離セパレータ4の平面形状は、粘着層2の平面形状よりも大きく、軽剥離セパレータ4の外縁は粘着層2の外縁よりも外側に張り出していることが好ましい。軽剥離セパレータ4の外縁が粘着層2の外縁よりも張り出す幅は、取り扱い易さ、剥がし易さ、埃等の付着をより低減できる観点から、2mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましい。同様の観点から、軽剥離セパレータ4の外縁が粘着層2の外縁よりも張り出す幅は、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。粘着層2及び軽剥離セパレータ4の平面形状が略長方形等の略矩形状である場合には、軽剥離セパレータ4の外縁が粘着層2の外縁よりも張り出す幅は、上記の観点から、少なくとも1つの辺において2mm以上であることが好ましく、少なくとも1つの辺において4mm以上であることがより好ましく、全ての辺において2mm以上であることが更に好ましく、全ての辺において4mm以上であることが特に好ましい。同様の観点から、少なくとも1つの辺において20mm以下であることが好ましく、少なくとも1つの辺において10mm以下であることがより好ましく、全ての辺において20mm以下であることが更に好ましく、全ての辺において10mm以下であることが特に好ましい。
【0076】
軽剥離セパレータ4と粘着層2との間の剥離強度は、重剥離セパレータ3と粘着層2との間の剥離強度よりも低いことが好ましい。これにより、重剥離セパレータ3は軽剥離セパレータ4よりも粘着層2から剥離し難くなる。また、後述するように、粘着層2には、重剥離セパレータ3側に向かってブレードBが通されるため、粘着層2の外縁部が重剥離セパレータ3に押し付けられることとなる。これにより、重剥離セパレータ3は軽剥離セパレータ4よりも更に粘着層2から剥離し難くなり、重剥離セパレータ3に剥離が生じる前に軽剥離セパレータ4を剥離させることが可能となる。従って、セパレータ3,4を片方ずつ剥離させることができ、セパレータ3,4を剥離して粘着層2を別々の被着物に貼り付ける作業を、片方ずつ確実に行うことができる。なお、重剥離セパレータ3と粘着層2、及び軽剥離セパレータ4と粘着層2との剥離強度は、例えば、重剥離セパレータ3、軽剥離セパレータ4の表面処理を施すことによって調整することができる。表面処理方法としては、例えば、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物で離型処理することが挙げられる。
【0077】
<画像表示装置用粘着シートの製造方法I>
以上に説明した粘着シート1(3層品)は、次のように製造される。まず、
図3に示されるように、重剥離セパレータ3上に粘着層2が形成され、粘着層2上に仮セパレータ6が形成された母材フィルム10を準備する。仮セパレータ6は、例えば、軽剥離セパレータ4と同じ素材からなる層である。
【0078】
続いて、
図4に示されるように、ブレードBを備えた打抜装置(不図示)により、仮セパレータ6及び粘着層2を所望の形状に切断する。打抜装置は、クランク式の打抜装置であってもよいし、レシプロ式の打抜装置であってもよいし、ロータリー式の打抜装置であってもよい。また、上記切断にはレーザーカッターを用いることもできる。各基材の剥離性の観点からは、ロータリー式の打抜装置が好ましい。この工程では、重剥離セパレータ3に到達する深さでブレードBを仮セパレータ6及び粘着層2に通し、仮セパレータ6及び粘着層2を切断することが好ましい。これにより、重剥離セパレータ3には切込部3cが形成され、粘着層2からの重剥離セパレータ3の剥離が容易になる。
【0079】
続いて、
図5に示されるように仮セパレータ6及び粘着層2の外側部分を除去し、
図6に示されるように粘着層2から仮セパレータ6を剥離し、
図7に示されるように粘着層2に軽剥離セパレータ4を貼付する。以上の工程で粘着シート1(3層品)が完成する。
【0080】
<画像表示装置>
次に、粘着シート1を用いて作製される画像表示装置について説明する。粘着シート1が備える粘着層2は、各種画像表示装置に適用することができる。画像表示装置としては、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管(CRT)、電界放出ディスプレイ(FED)、有機ELディスプレイ(OELD)、3Dディスプレイ、電子ペーパー(EP)等が挙げられる。本実施形態の粘着層2は、画像表示装置の反射防止層、防汚層、色素層、ハードコート層等の機能性を有する機能層、透明保護板などを組み合わせて貼り合わせるために使用することもできる。
【0081】
反射防止層は、可視光反射率が5%以下となる反射防止性を有している層であればよく、透明なプラスチックフィルム等の透明基材に既知の反射防止方法で処理された層を用いることができる。
【0082】
防汚層は、表面に汚れがつきにくくするためのもので、表面張力を下げるためにフッ素系樹脂又はシリコーン系樹脂等で構成される既知の層を用いることができる。
【0083】
色素層は、色純度を高めるために使用されるもので、液晶表示ユニット等の画像表示ユニットから発する光の色純度が低い場合に不要な光を低減するために使用される。不要な部分の光を吸収する色素を樹脂に溶解させ、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム等の基材フィルムに製膜又は積層して得ることができる。
【0084】
ハードコート層は、表面硬度を高くするために使用される。ハードコート層としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリル樹脂;エポキシ樹脂などをポリエチレンフィルム等の基材フィルムに製膜又は積層したものを使用することができる。同様に表面硬度を高めるために、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート等の透明保護板にハードコート層を製膜又は積層したものを使用することもできる。
【0085】
粘着層2は、偏光板に積層して使用することができる。この場合、偏光板の視認面側に積層することもでき、その反対側に積層することもできる。
【0086】
偏光板の視認面側に使用する場合には、粘着層2のさらに視認面側に反射防止層、防汚層及びハードコート層を積層することができ、偏光板と液晶セルの間に使用する場合には、偏光板の視認面側に機能性を有する層を積層することができる。
【0087】
このような積層体とする場合、粘着層2は、ロールラミネート、真空貼合機又は枚葉貼合機を用いて積層することができる。
【0088】
粘着層2は、画像表示装置の画像表示ユニットと視認側最前面の透明保護板の間であって、視認側の適切な位置に配置されることが好ましい。具体的には、画像表示ユニットと透明保護板の間に応用(use)されることが好ましい。
【0089】
また、タッチパネルを画像表示ユニットに組み合わせた画像表示装置においては、タッチパネルと画像表示ユニットの間及び/又はタッチパネルと透明保護板の間に、本実施形態の粘着層2が応用(use)されることが好ましいが、画像表示装置の構成上、本実施形態の粘着層2が適用可能であれば、上記に記載した位置に限るものではない。
【0090】
以下、画像表示装置の一つである液晶表示装置を例として、
図8及び
図9を用いて詳細に説明する。
【0091】
図8は、本発明の液晶表示装置の一実施形態を模式的に示す側面断面図である。
図8に示す液晶表示装置は、バックライトシステム50、偏光板22、液晶表示セル12及び偏光板20がこの順で積層されてなる画像表示ユニット7と、液晶表示装置の視認側となる偏光板20の上面に設けられた透明樹脂層32と、その表面に設けられた透明保護板(保護パネル)40とから構成される。透明保護板40の表面に設けられた段差60は、透明樹脂層32により埋め込まれている。なお、透明樹脂層32が、基本的に本実施形態の粘着層に相当する。段差60の厚さは、液晶表示装置の大きさ等により異なるが、厚さが40μm〜1.0×10
2μmである場合、本実施形態の粘着層を用いることが特に有用である。
【0092】
図9は、本発明の液晶表示装置の一実施形態である、タッチパネルを搭載した液晶表示装置を模式的に示す側面断面図である。
図9に示す液晶表示装置は、バックライトシステム50、偏光板22、液晶表示セル12及び偏光板20がこの順で積層されてなる画像表示ユニット7と、液晶表示装置の視認側となる偏光板20の上面に設けられた透明樹脂層32と、透明樹脂層32の上面に設けられたタッチパネル30と、タッチパネル30の上面に設けられた透明樹脂層31と、その表面に設けられた透明保護板40とから構成される。透明保護板40の表面に設けられた段差60は、透明樹脂層31により埋め込まれている。なお、透明樹脂層31及び透明樹脂層32が、基本的に本実施形態の粘着層に相当する。
【0093】
なお、
図9の液晶表示装置においては、画像表示ユニット7とタッチパネル30との間、及びタッチパネル30と段差60を有する透明保護板40との間の両方に透明樹脂層が介在しているが、透明樹脂層はこれらの少なくとも一方に介在していればよく、特に本実施形態の粘着層2を用いる場合はタッチパネル30と段差60を有する透明保護板40との間に介在することが好ましい。また、タッチパネルがオンセルとなる場合は、タッチパネルと液晶表示セルが一体化される。その具体例としては、
図8の液晶表示装置の液晶表示セル12が、オンセルで置き換えられたものが挙げられる。
また、近年、インセル型タッチパネルと呼ばれる、タッチパネル機能が組み込まれた液晶表示セルの開発が進んでいる。このような液晶表示セルを備えた液晶表示装置は、透明保護板、偏光板、及び液晶表示セル(タッチパネル機能付き液晶表示セル)で構成されており、本発明の本実施形態の粘着層2は、このようなインセル型タッチパネルを採用している液晶表示装置にも好適に用いることができる。
【0094】
図8及び
図9に示す液晶表示装置によれば、本実施形態の粘着層を透明樹脂層31又は32として備えるので、耐衝撃性を有し、二重映りがなく鮮明でコントラストの高い画像が得られる。
【0095】
液晶表示セル12は、当技術分野で周知の液晶材料から構成されるものを使用することができる。また、液晶材料の制御方法によって、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super−Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In−Place−Switching)方式等に分類されるが、本発明では、いずれの制御方法を使用した液晶表示セルであってもよい。
【0096】
偏光板20及び22としては、当技術分野で一般的な偏光板を使用することができる。それら偏光板の表面は、反射防止、防汚、ハードコート等の処理がなされていてもよい。このような表面処理は、偏光板の片面に対して、又はその両面に対して実施されていてよい。
【0097】
タッチパネル30としては、表面に指又は物体が触れた圧力で電極が接触する抵抗膜方式、表面に指又は物体が触れた時の静電容量の変化を感知する静電容量方式、電磁誘導方式等があるが、本発明の粘着層2は、静電容量方式のタッチパネルを採用している液晶表示装置に用いることが特に好適である。上記タッチパネル30は、当技術分野で一般的に用いられているものを使用することができるが、上記静電容量方式のタッチパネルとしては、例えば、基板上に透明電極を形成した構造を有するものが挙げられる。上記基板としては、例えば、ガラス基板、ポリエチレンテレフタレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム等が挙げられる。また透明電極としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物が挙げられる。上記基板の厚さは、20μm〜1.0×10
3μm程度である。また、上記透明電極の厚さは、10nm〜5.0×10
2nm程度である。
【0098】
透明樹脂層31又は32は、例えば0.02mm〜3mm程度の厚さで形成することができる。特に、本実施形態の粘着層2においては厚膜にすることでより一層優れた効果を発揮させることができ、1.0×10
2μm以上5.0×10
2μm以下の透明樹脂層31又は32を形成する場合に好適に用いることができる。
【0099】
透明保護板40としては、一般的な光学用透明基板を使用することができる。その具体例としては、ガラス基板、石英板等の無機物の板;アクリル樹脂基板、ポリカーボネート板、シクロオレフィンポリマー板等のプラスチック基板;厚手のポリエステルシート等の樹脂シートなどが挙げられる。高い表面硬度が必要とされる場合にはガラス基板、アクリル樹脂基板が好ましく、ガラス基板がより好ましい。これらの透明保護板の表面には、反射防止、防汚、ハードコート等の処理がなされていてもよい。そのような表面処理は、透明保護板の片面に対して、又は両面に対して実施されていてもよい。透明保護板は、その複数枚を組み合わせて使用することもできる。
【0100】
バックライトシステム50は、代表的には反射板等の反射手段とランプ等の照明手段とから構成される。
【0101】
<画像表示装置の製造方法I>
粘着シート1(3層品)は、画像表示装置の組み立て等において次のように使用される。まず、
図10に示されるように、軽剥離セパレータ4を粘着シート1(3層品)から剥離して粘着層2の粘着面2bを露出させる。続いて、
図11に示されるように、粘着層2の粘着面2bを被着物A1に貼り付け、ローラーR等で押し付ける。この際、被着物A1の表面に設けられた段差60は、粘着層2により埋め込まれる。被着物A1は、例えば画像表示ユニット、透明保護板又はタッチパネルである。続いて、
図12に示されるように、重剥離セパレータ3を粘着層2から剥離して粘着層2の粘着面2cを露出させる。続いて、
図13に示されるように、粘着層2の粘着面2cを被着物A2に貼り付け、加熱加圧処理(オートクレーブ処理)をする。被着物A2は、例えば画像表示ユニット、透明保護板又はタッチパネルである。このようにして、粘着層2を介して被着物同士を貼り合わせることができる。なお、この時の加熱加圧処理条件は、温度が40℃以上80℃以下であり、圧力が0.3MPa以上0.8MPa以下であるが、被着物表面の段差が30μm〜1.0×10
2μmである場合は、段差近傍の気泡をより除去できる観点から、温度が50℃以上70℃以下であり、圧力が0.4MPa以上0.7MPa以下であることが好ましい。また、上記の観点から、処理時間は、5分以上であることが好ましく、10分以上であることがより好ましい。同様の観点から、60分以下であることが好ましく50分以下であることがより好ましい。
【0102】
また、上記製造方法は、オートクレーブ処理の前又は後に、粘着層2に対して、両被着物(例えば、透明保護板、タッチパネル)のいずれか一方の側から紫外線を照射する工程を含むことが好ましい。これにより、高温高湿下における信頼性(気泡の発生低減及び剥がれの抑制)及び接着力をより向上できる。高温高湿下における信頼性を更に向上できる観点からは、段差部を有しない被着物(例えば、タッチパネル)側から紫外線を照射することが好ましい。
【0103】
紫外線の照射量は、特に制限がないが、5.0×10
2mJ/cm
2〜5.0×10
3mJ/cm
2程度であることが好ましい。なお、紫外線を照射する工程は、高温高湿下における信頼性を向上する観点から、オートクレーブ処理後に行うことが好ましい。このようにして得られた構造体において、被着物としてガラス基板(ソーダライムガラス)又はアクリル樹脂基板を採用した場合、粘着層2とこれらの基板との間の剥離強度は、画像表示装置における粘着層の剥離を抑制する観点から、5N/10mm以上であることが好ましく、8N/10mm以上であることがより好ましく、10N/10mm以上であることが更に好ましい。実用的な観点から、粘着層2と上記基板との間の剥離強度は30N/10mm以下であることが好ましい。なお、剥離強度は、引張試験機((株)オリエンテック製「テンシロン RTC−1210」)を用いて、180度ピール(剥離速度300mm/分で3秒間、測定温度25℃)として測定することができる。
【0104】
以上の工程で、被着物A1と被着物A2との間に粘着層2が配置される。粘着層2は、特に、透明保護板とタッチパネルとの間、又はタッチパネルと画像表示ユニットとの間に配置されて使用されることが好ましい。
【0105】
上述の
図8の液晶表示装置は、画像表示ユニット7と透明保護板40との間に上記本実施形態の粘着層2を介在させて積層体を得ることにより製造することができる。すなわち、
図8に記載の画像表示装置において、偏光板20の上面に本実施形態の粘着層2をラミネート法によって積層することができる。
【0106】
上述の
図9の液晶表示装置は、画像表示ユニットとタッチパネルとの間、又はタッチパネルと透明保護板との間に本実施形態の粘着層2を介在させて積層体を得ることにより製造することができる。
【0107】
[第二実施形態]
<画像表示装置用粘着シートII>
本実施形態の画像表示装置用粘着シート1(4層品)は、フィルム状の粘着層と、粘着層を挟むように積層された第1及び第2の基材層と、第2の基材層に更に積層されたキャリア層と、を備えており、第1の基材層及びキャリア層の外縁は、粘着層の外縁よりも外側に張り出している。
【0108】
すなわち、
図14及び
図15に示されるように、本実施形態に係る粘着シート1(4層品)は、透明なフィルム状の粘着層2と、粘着層2を挟むように積層された軽剥離セパレータ4(第1の基材層)及び重剥離セパレータ3(第2の基材層)と、重剥離セパレータ3に更に積層されたキャリアフィルム5(キャリア層)とを備えている。
【0109】
キャリアフィルム5の外縁5aは、粘着層2の外縁2aよりも外側に張り出している。これにより、外側に張り出したキャリアフィルム5の外縁部をつまむことで、キャリアフィルム5を第2の基材層から容易に剥離させることができる。また、キャリアフィルム5の外縁5aは、軽剥離セパレータ4の外縁4aよりも外側に張り出していることが好ましい。これにより、キャリアフィルム5の外縁部が更につまみ易くなっているため、キャリアフィルム5をより容易に剥離させることができる。キャリアフィルム5の外縁5aが軽剥離セパレータ4の外縁4aよりも張り出す幅は、取り扱い易さ、剥がし易さ、埃等の付着をより低減できる観点から、0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがより好ましい。同様の観点から、キャリアフィルム5の外縁5aが軽剥離セパレータ4の外縁4aよりも張り出す幅は、10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。キャリアフィルム5、粘着層2、重剥離セパレータ3及び軽剥離セパレータ4の平面形状が略長方形等の略矩形状である場合には、キャリアフィルム5の外縁5aが軽剥離セパレータ4の外縁4aよりも張り出す幅は、上記の観点から、少なくとも1つの辺において0.5mm以上であることが好ましく、少なくとも1つの辺において1mm以上であることがより好ましく、全ての辺において0.5mm以上であることが更に好ましく、全ての辺において1mm以上であることが特に好ましい。同様の観点から、キャリアフィルム5の外縁5aが軽剥離セパレータ4の外縁4aよりも張り出す幅は、少なくとも1つの辺において10mm以下であることが好ましく、少なくとも1つの辺において5mm以下であることがより好ましく、全ての辺において10mm以下であることがさらに好ましく、全ての辺において5mm以下であることが特に好ましい。
【0110】
重剥離セパレータ3は、直前の工程までキャリアフィルム5によって保護されているため、重剥離セパレータ3の表面の傷が少なくなる。これにより、粘着層2の傷を容易に視認でき、傷が生じている粘着層2を被着物に貼り付ける前に容易に排除できる。
【0111】
キャリアフィルム5は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の重合体フィルムであり、中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。キャリアフィルム5の厚みは、作業性の観点から、15μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。同様の観点から、キャリアフィルム5の厚みは、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。
【0112】
軽剥離セパレータ4と粘着層2との間の剥離強度は、重剥離セパレータ3と粘着層2との間の剥離強度よりも低くなっている。キャリアフィルム5と重剥離セパレータ3との間の剥離強度は、重剥離セパレータ3と粘着層2との間の剥離強度よりも低くなっている。ここで、キャリアフィルム5と重剥離セパレータ3との間の剥離強度は、軽剥離セパレータ4と粘着層2との間の剥離強度より低いことがより好ましいが、高くても本願の効果を損なうことはない。
【0113】
キャリアフィルム5と重剥離セパレータ3との剥離強度は、例えばキャリアフィルム5及び重剥離セパレータ3の間に形成させる接着剤層の種類及び接着剤の厚みによって調整される。キャリアフィルム5及び重剥離セパレータ3の間に形成させる接着剤の種類としては、例えば、アクリル系接着剤が挙げられる。キャリアフィルム5及び重剥離セパレータ3の間に形成させる接着剤層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましい。さらに、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。
【0114】
このように、本実施形態の粘着シート1(4層品)によれば、粘着層2を保護しつつ、各セパレータ3,4及びキャリアフィルム5を確実に所定の順序で剥離不良無く容易に剥離させることができる。
【0115】
<画像表示装置用粘着シートの製造方法II>
本実施形態の粘着シート1(4層品)は、次のように製造される。まず、
図16に示されるように、キャリアフィルム5上に、重剥離セパレータ3、粘着層2、及び仮セパレータ6が順に積層された母材フィルム10を準備する。重剥離セパレータ3は、上記接着剤層を介してキャリアフィルム5に接着される。仮セパレータ6は、例えば、軽剥離セパレータ4と同じ素材からなる層である。
【0116】
続いて、ブレードBを備えた打抜装置(不図示)により、仮セパレータ6、粘着層2、及び重剥離セパレータ3を所望の形状に切断する。この工程では、
図17に示されるように、仮セパレータ6、粘着層2、及び重剥離セパレータ3に、キャリアフィルム5に到達する深さでブレードBを通すことが好ましい。これにより、キャリアフィルム5の粘着層2側の面5bには、切込部5cが形成される。このように、仮セパレータ6からキャリアフィルム5にブレードBを到達させることにより、粘着層2及び重剥離セパレータ3を完全に切断することができる。
【0117】
続いて、
図18に示されるように仮セパレータ6、粘着層2及び重剥離セパレータ3の外側部分を除去する。この時、キャリアフィルム5の外縁が重剥離セパレータ3の外縁よりも外側に張り出さないよう、
図19に示されるように重剥離セパレータ3の外縁は、キャリアフィルム5の外縁と略面一となっていることが好ましい。すなわち、仮セパレータ6及び粘着層2の外側部分のみを除去し、重剥離セパレータ3の外側部分は除去せずにキャリアフィルム5上に残し、切断後の重剥離セパレータ3はそのままキャリアフィルム5に付いた状態であることが好ましい。これにより、表面露出したキャリアフィルム5が他の部分へ接着するという問題を効果的に防ぐことができる。
【0118】
図18に示されるように仮セパレータ6、粘着層2及び重剥離セパレータ3の外側部分を除去した後、続いて
図20に示されるように粘着層2から仮セパレータ6を剥離し、
図21に示されるように粘着層2に軽剥離セパレータ4を貼付する。以上の工程で本実施形態の粘着シート1(4層品)が完成する。このように、重剥離セパレータ3の外縁を、粘着層2の外縁と略面一とするように切断されたフィルムであれば、軽剥離セパレータ4と重剥離セパレータ3との剥離し易さの差がより顕著となるため、重剥離セパレータ3を剥離する前に、軽剥離セパレータ4をより容易に剥離することができる。更に、重剥離セパレータ3の外縁と粘着層2の外縁とが揃うことで、粘着層2の外縁の位置が明確になるため、粘着層2と被着物との位置合わせが容易となる。
【0119】
<画像表示装置の製造方法II>
本実施形態の粘着シート1(4層品)は、最初に、
図22に示されるように、キャリアフィルム5を重剥離セパレータ3から剥離してから用いることを除いては、第一実施形態の粘着シートと同様にして使用することができる。
【0120】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【実施例】
【0121】
以下、実施例を示して、本発明をより詳細に説明する。本実施例では、第一実施形態及び第二実施形態に係る粘着シートを作製しているが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0122】
合成例1(アクリル酸誘導体ポリマー(A−1)の合成)
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び窒素導入管を取り付けた反応容器に、初期モノマーとして、イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ISTA」)96.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「HEA」)24.0gとメチルエチルケトン150.0gを取り、100mL/分の風量で窒素置換しながら、15分間で常温(25℃)から80℃まで加熱した。その後、温度を80℃に維持しながら、追加モノマーとして、イソステアリルアクリレート24.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート6.0gを使用し、これらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5.0gを溶解した溶液を準備し、この溶液を120分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間反応させた。
続いて、メチルエチルケトンを留去することにより、イソステアリルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体(重量平均分子量3.0×10
4)を得た。
【0123】
合成例2(アクリル酸誘導体ポリマー(A−2)の合成)
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び窒素導入管を取り付けた反応容器に初期モノマーとして、イソステアリルアクリレート108.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート12.0gとメチルエチルケトン150.0gを取り、100mL/分の風量で窒素置換しながら、15分間で常温(25℃)から80℃まで加熱した。その後、温度を80℃に維持しながら、追加モノマーとして、イソステアリルアクリレート27.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート3.0gを使用し、これらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5.0gを溶解した溶液を準備し、この溶液を120分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間反応させた。
続いて、メチルエチルケトンを留去することにより、イソステアリルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体(重量平均分子量3.0×10
4)を得た。
【0124】
合成例3(アクリル酸誘導体ポリマー(A−3)の合成)
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び窒素導入管を取り付けた反応容器に初期モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート96.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート24.0gとメチルエチルケトン150.0gを取り、100mL/分の風量で窒素置換しながら、15分間で常温(25℃)から80℃まで加熱した。その後、温度を80℃に維持しながら、追加モノマーとして、2−エチルヘキシルアクリレート24.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート6.0gを使用し、これらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5.0gを溶解した溶液を準備し、この溶液を120分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間反応させた。
続いて、メチルエチルケトンを留去することにより、2−エチルヘキシルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体(重量平均分子量3.0×10
4)を得た。
【0125】
合成例4(側鎖メタクリル変性アクリレートポリマー(C−1)の合成)
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び酸素導入管を取り付けた反応容器に合成例1のアクリル酸誘導体ポリマー(A−1)100.0gと2−イソシアネートエチルメタクリレート2.0g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.05g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03gを取り、100mL/分の風量で空気を流しながら、15分間で常温(25℃)から75℃まで加熱した。その後、温度を75℃に維持しながら、2時間反応を継続した後にIR測定を行った結果、イソシアネート基の消失が確認された。この時点で反応を終了し、重合性不飽和結合を有する側鎖メタクリル変性アクリレートポリマー(重量平均分子量3.0×10
4)を得た。
なお、IRの測定には、(株)堀場製作所製フーリエ変換赤外分光光度計(FT−710)を使用した。
【0126】
合成例5(側鎖メタクリル変性アクリレートポリマー(C−2)の合成)
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び空気導入管を取り付けた反応容器に合成例2のアクリル酸誘導体ポリマー(A−2)100.0gと2−イソシアネートエチルメタクリレート2.0g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.05g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03gを取り、100mL/分の風量で空気を流しながら、15分間で常温(25℃)から75℃まで加熱した。その後、温度を75℃に維持しながら、2時間反応を継続した後にIR測定を行った結果、イソシアネート基の消失が確認された。この時点で反応を終了し、重合性不飽和結合を有する側鎖メタクリル変性アクリレートポリマー(重量平均分子量3.0×10
4)を得た。
【0127】
合成例6(側鎖メタクリル変性アクリレートポリマー(C−3)の合成)
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び空気導入管を取り付けた反応容器に合成例3のアクリル酸誘導体ポリマー(A−3)100.0gと2−イソシアネートエチルメタクリレート2.0g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.05g、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03gを取り、100mL/分の風量で空気を流しながら、15分間で常温(25℃)から75℃まで加熱した。その後、温度を75℃に維持しながら、2時間反応を継続した後にIR測定を行った結果、イソシアネート基の消失が確認された。この時点で反応を終了し、重合性不飽和結合を有する側鎖メタクリル変性アクリレートポリマー(重量平均分子量3.0×10
4)を得た。
【0128】
合成例7(側鎖メタクリル変性アクリレートポリマー(C−4)の合成)
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び窒素導入管を取り付けた反応容器に初期モノマーとして、ラウリルアクリレート(アルキル基の炭素数が12であるアルキルアクリレート)96.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート24.0gとメチルエチルケトン150.0gを取り、100mL/分の風量で窒素置換しながら、15分間で常温(25℃)から80℃まで加熱した。その後、温度を80℃に維持しながら、追加モノマーとして、ラウリルアクリレート24.0gと2−ヒドロキシエチルアクリレート6.0gを使用し、これらにt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート5.0gを溶解した溶液を準備し、この溶液を120分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間反応させた。
続いて、メチルエチルケトンを留去することによりラウリルアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体(重量平均分子量3.0×10
4)を得た。
次に、冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び空気導入管を取り付けた反応容器に、得られた共重合体、2−イソシアネートエチルメタクリレート2.0g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.05g、及び触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03gを取り、100mL/分の風量で空気を流しながら、15分間で常温(25℃)から75℃まで加熱した。その後、温度を75℃に維持しながら、2時間反応を継続した後にIR測定を行った結果、イソシアネート基の消失が確認された。この時点で反応を終了し、重合性不飽和結合を有する側鎖メタクリル変性アクリレートポリマー(重量平均分子量3.0×10
4)を得た。
【0129】
合成例8(ポリウレタンジアクリレート(C−5)の合成)
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗及び空気導入管を取り付けた反応容器にポリプロピレングリコール(数平均分子量2.0×10
3)285.3g、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエステル修飾ε−カプロラクトン(ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルFA2D」)24.5g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.13g及び触媒としてジブチル錫ジラウレート0.5gを取り、100mL/分の風量で空気を流しながら、15分間で常温(25℃)から75℃まで加熱した。その後、温度を75℃に維持しながら、イソホロンジイソシアネート39.6gを2時間かけて均一に滴下し、反応を行った。
滴下終了後、6時間反応させた。イソシアネート基が消失したことをIR測定により確認して反応を終了し、ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアネートを構造単位として有し、両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタンアクリレート(重量平均分子量3.0×10
4)を得た。
【0130】
なお、重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して測定し、下記の装置及び測定条件を用いて標準ポリスチレンの検量線を使用して換算することによって決定した値である。検量線の作成にあたっては、標準ポリスチレンとして5サンプルセット(PStQuick MP−H, PStQuick B[東ソー(株)製、商品名])を用いた。
装置:高速GPC装置 HLC−8320GPC(検出器:示差屈折計)
(東ソー(株)製、商品名)
使用溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム:カラムTSKGEL SuperMultipore HZ−H
(東ソー(株)製、商品名)
カラムサイズ:カラム長が15cm、カラム内径が4.6mm
測定温度:40℃
流量:0.35mL/分
試料濃度:10mg/THF5mL
注入量:20μL
【0131】
粘着性樹脂組成物の原料となる以下の各成分を準備した。
A成分:アクリル酸系誘導体ポリマー(A−1)〜(A−3)
B成分:イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「ISTA」)
:n−ステアリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名「STA」)
:2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)
:4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)
C成分:側鎖メタクリル変性アクリレートポリマー(C−1)〜(C−4)
:ポリウレタンジアクリレート(C−5)
:1,9−ノナンジオールジアクリレート(C−6、共栄社化学(株)製)
D成分:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(I−184、BASFジャパン(株)製、商品名「Irgacure−184」)
【0132】
<実施例1>
[粘着シート1の作製(3層品)]
重剥離セパレータ3として厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(藤森工業(株)製)、並びに軽剥離セパレータ4及び仮セパレータ6として厚み50μmのポリエチレンテレフタレート(藤森工業(株)製)を用いて、以下の(I)〜(V)の手順で粘着シート1を作製した。
【0133】
(I)アクリル酸誘導体ポリマー(A−1)60g、イソステアリルアクリレート(ISTA)30.9g、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)5.0g、側鎖メタクリル変性アクリレートポリマー(C−1)4.0g、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(I−184)0.1gを秤量し、これらを撹拌混合することで、常温で液状の粘着性樹脂組成物を得た。
【0134】
(II)この粘着性樹脂組成物を重剥離セパレータ3上に塗工して塗膜を形成した後、上記塗膜上に仮セパレータ6を積層し、紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射(4.0×10
2mJ/cm
2)することで重剥離セパレータ3と仮セパレータ6とで粘着層2を挟んだ積層体を得た。なお、粘着層2の厚みは1.5×10
2μmとなるように調整して塗工した。
【0135】
(III)220mm×180mmの大きさになるように、上記積層体を直径72mmのロータリーブレードにより切断した。
【0136】
(IV)切断した積層体における粘着層2及び仮セパレータ6を205mm×160mmの大きさになるように直径72mmのロータリーブレードにより切断した。この時、重剥離セパレータ3の長辺側の両辺が、粘着層2の長辺側の両辺より7.5mm張り出すように、また、重剥離セパレータ3の短辺側の両辺が、粘着層2の短辺側の両辺より10mm張り出すように切断した。なお、(III)及び(IV)の切断には、直径72mmのロータリーブレードを備えるロータリー式打抜装置を用いた。
【0137】
(V)仮セパレータ6を剥離し、215mm×170mmの大きさの軽剥離セパレータ4を粘着層2上に積層した。このようにして、粘着シート1を得た。この時、軽剥離セパレータ4の長辺側の両辺が、粘着層2の長辺側の両辺より5mm張り出すように、また軽剥離セパレータ4の短辺側の両辺が、粘着層2の短辺側の両辺より5mm張り出すように積層した。
【0138】
<実施例2〜11及び比較例1〜4>
配合及び露光量を表1に示す条件としたこと以外は、実施例1と同様にして粘着シート1を得た。なお、表1中、配合量を表す数値の単位は、グラム(g)である。
【0139】
[各種評価]
各実施例及び比較例で得られた粘着シートについて、以下の(1)〜(6)の評価を行った。
【0140】
(1)ガラス転移温度(Tg)、剪断貯蔵弾性率、損失弾性率及びtanδの測定
上記手順(II)で得られた、厚さ1.5×10
2μmの粘着層を3枚重ねて約4.5×10
2μm厚さにし、幅10mm、長さ10mmの寸法に裁断してサンプルを作製した。このサンプルを2つ準備し、
図23に示すように、治具100を用いて両端のプレートP1と中央のプレートP2との間でサンプルSをはさみ込み測定サンプルとした。そして、広域動的粘弾性測定装置(Rheometric Scientific製、商品名「Solids Analyzer RSA−II」)を用いて、サンプルのガラス転移温度(Tg)、剪断貯蔵弾性率、損失弾性率及びtanδを測定した。測定条件は「シェアサンドイッチモード、周波数1.0Hz、測定温度範囲−20℃〜100℃で昇温速度5℃/分」とした。
【0141】
(2)段差埋め込み性
作製した粘着シートを幅50mm、長さ80mmの寸法に切り出し、該粘着シートの片側面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、56mm×86mm×0.1mm(厚さ)の寸法のシクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン(株)製、商品名「ゼオノアフィルムZF16」)にハンドローラーを用いて(25℃、荷重:4.9N(500gf))貼合せた。次いで、粘着シートのシクロオレフィンポリマーフィルムを貼合せていないもう一方の面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、外周部に幅9mm、厚さ80μmの寸法の印刷層(段差)を設けた56mm×86mm×0.7mm(厚さ)の寸法のガラス基板を、粘着層を挟み込むように真空貼合装置((株)タカトリ製、商品名「TPL−0512MH」)を用いて60℃、0.5MPa、真空度50Paの条件で60秒間貼合せた。その後、オートクレーブ処理(45℃、0.5MPa)を10分間行い、次いで、紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製)を用いてシクロオレフィンポリマーフィルム面側から紫外線を2.0×10
3mJ/cm
2照射して評価サンプルとした。
この評価サンプルを用いて、光学顕微鏡にて印刷層(段差)周辺部の外観評価(気泡、剥離)を行い、以下の評価基準に従って段差埋め込み性を判定した。
(評価基準)
A:気泡及び剥離なし
B:1辺のみに気泡又は剥離がある
C:2辺以上に気泡又は剥離がある
【0142】
(3)表面平坦性
作製した粘着シートを幅50mm、長さ80mmの寸法に切り出し、該粘着シートの片側面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、56mm×86mm×0.1mm(厚さ)の寸法のシクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン(株)製、商品名「ゼオノアフィルムZF16」)にハンドローラーを用いて(25℃、荷重:4.9N(500gf))貼合せた。次いで、粘着シートのシクロオレフィンポリマーフィルムを貼合せていないもう一方の面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、外周部に幅9mm、厚さ80μmの寸法の印刷層(段差)を設けた56mm×86mm×0.7mm(厚さ)の寸法のガラス基板を、粘着層を挟み込むように真空貼合装置を用いて60℃、0.5MPa、真空度50Paの条件で60秒間貼合せた。その後、オートクレーブ処理(45℃、0.5MPa)を10分間行い、次いで、紫外線照射装置を用いてシクロオレフィンポリマーフィルム面側から紫外線を2.0×10
3mJ/cm
2照射して評価サンプルとした。
この評価サンプルを用いて、表面粗さ測定機((株)小坂研究所製、商品名「SE3500」)にてシクロオレフィンポリマーフィルム側の印刷層(段差)周辺部の表面形状を以下の条件で測定した。
ダイヤモンド材質の先端部の形状:円錐形
先端半径:2μm
頂角:60°
測定速度:0.15mm/秒
測定力:0.75mN
カットオフ値:0.8mm
基準長さ:0.8mm
評価長さ:10mm
測定は、印刷層表面5mm及び未印刷部表面5mmを連続して行い、以下の評価基準に従って、印刷層表面と未印刷部表面の測定値差(
図25におけるΔt)から表面平坦性を判定した。
(評価基準)
A:20μm未満
B:20μm以上40μm未満
C:40μm以上
【0143】
(4)染み出し性
作製した粘着シートを幅50mm、長さ80mmの寸法に切り出し、該粘着シートの片側面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、56mm×86mm×0.1mm(厚さ)の寸法のシクロオレフィンポリマーフィルムにハンドローラーを用いて(25℃、荷重:4.9N(500gf))貼合せた後、粘着シート部分の対角線長を測定した。次いで、シクロオレフィンポリマーフィルムを貼合せていないもう一方の面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、外周部に幅9mm、厚さ80μmの寸法の印刷層(段差)を設けた56mm×86mm×0.7mm(厚さ)の寸法のガラス基板を、粘着材を挟み込むように真空貼合装置を用いて60℃、0.5MPa、真空度50Paの条件で60秒間貼合せ、25℃で30分間静置した後に評価サンプルとした。
この評価サンプルの粘着シート部分の対角線長を測定し、以下の評価基準に従って、ガラス基板との貼合前後における粘着シート部分の対角線長の変化量(増加量)から染み出し性を判定した。
(評価基準)
A:1.5mm未満
B:1.5mm以上3mm未満
C:3mm以上
【0144】
(5)光学特性
(A)L*、a*、b*の測定
作製した粘着シートを幅40mm、長さ100mmの寸法に切り出し、該粘着シートの片側面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、50mm×100mm×3mm(厚さ)の寸法のガラス基板(ソーダライムガラス)に、ハンドローラーを用いて(25℃、荷重:4.9N(500gf))貼合せた。次いで、粘着シートの反対面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、粘着層面を光源側として分光測色計(日本電色工業(株)製、商品名「SQ−2000」)を用いて測定した。
(B)濁度(ヘーズ)の測定
作製した粘着シートを幅40mm、長さ100mmの寸法に切り出し、該粘着シートの片側面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、50mm×100mm×3mm(厚さ)の寸法のガラス基板(ソーダライムガラス)に、ハンドローラーを用いて(25℃、荷重:4.9N(500gf))貼合せた。次いで、粘着シートの反対面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、粘着層面を光源側として濁度計(日本電色工業(株)製、商品名「NDH−5000」)を用いて、JIS K 7136に準じて測定した。
ヘーズ(%)=(Td/Tt)×100
Td:拡散透過率 Tt:全光線透過率
【0145】
(6)誘電率測定
作製した粘着シートに紫外線照射装置を用いて紫外線を2.0×10
3mJ/cm
2照射した後、幅50mm、長さ50mmの寸法に切り出し、該粘着シートの片側面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、100mm×100mm×18μm(厚さ)の寸法の銅箔(日本電解(株)製、商品名「SLP−18」)の光沢面側を粘着シートがはみ出さないように貼合せた。次いで、粘着シートのもう一方の面のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、20mm×20mm×18μm(厚さ)の寸法の銅箔(日本電解(株)製、商品名「SLP−18」)の光沢面側を粘着シートがはみ出さないように貼合せた。100mm×100mmの寸法の銅箔及び20mm×20mmの寸法の銅箔のそれぞれのほぼ中央部に端子を接触させて、誘電率測定装置(Agilent Technologies製、商品名「LCR meter E4980」)により、25℃、周波数100kHzの条件で静電容量(C)を測定し、次式に代入することで誘電率ε
rを求めた。ここで、ε
0は真空の誘電率、dは粘着層の厚さである。各実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
C=ε
0×ε
r×(20mm×20mm)/d
【0146】
【表1】
【0147】
<実施例12>
[粘着シート1の作製(4層品)]
(I)実施例1と同様の方法で液状の粘着性樹脂組成物を得た。
(II)この粘着性樹脂組成物を重剥離セパレータ3の一方の面上に塗工して塗膜を形成した後、上記塗膜上に仮セパレータ6を積層し、紫外線を照射(400mJ/cm
2)し、さらにその後、重剥離セパレータ3の他方の面に、アクリル系接着剤(日立化成(株)製、商品名「ヒタレックスK−6040」)をラミネートし、その上にキャリアフィルム5を積層した。
(III)220mm×180mmになるように重剥離セパレータ3、粘着層2、仮セパレータ6及びキャリアフィルム5を切断した。
(IV)粘着層2、重剥離セパレータ3及び仮セパレータ6を205mm×160mmの大きさになるように、直径72mmのロータリーブレードにより切断した。切断には、直径72mmのロータリーブレードを備えるロータリー式打抜装置を用いた。この時、キャリアフィルム5の長辺側の両辺が、粘着層2の長辺側の両辺より7.5mm張り出すように、また、キャリアフィルム5の短辺側の両辺が、粘着層2の短辺側の両辺より10mm張り出すように切断した。
(V)仮セパレータ6を剥離し、215mm×170mmの大きさの軽剥離セパレータ4を粘着層2上に積層した。このようにして、粘着シート1(4層品)を得た。この時、軽剥離セパレータ4の長辺側の両辺が、粘着層2の長辺側の両辺より5mm張り出すように、又軽剥離セパレータ4の短辺側の両辺が、粘着層2の短辺側の両辺より5mm張り出すように積層した。
【0148】
粘着シート1(4層品)について上記粘着シート1(3層品)と同様の評価を行ったところ、所望の形状を備える粘着シートを作製することができ、なおかつ実施例1と同様に段差埋め込み性、表面平坦性、低誘電率及び外観のいずれにも優れる結果となった。