【文献】
Ketevan Lomsadze et al.,Comparative high-performance liquid chromatography enantioseparations on polysaccharide based chiral stationary phase prepared by coating totally porous and core-shell sillica particles,Journal of Cheromatography A,2012年 2月 3日,Vol.1234,p.50-55
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<コアシェル型粒子>
本発明の分離剤には、無孔性のコアとその外面に多孔性のシェルを有するコアシェル型粒子を用いる。また、そのコアシェル型粒子の表面の細孔直径は9nm以上である。
コアシェル型粒子の細孔直径が9nm以上であることで、比表面積が大きく、リガンドを多く導入することができることから、目的物質の良好な分離に寄与することが期待される。細孔直径は通常100nm以下である。
コアシェル粒子の細孔直径は水銀圧入法により測定できる。
水銀圧入法は、圧力をかけて水銀を開孔部に侵入させ、圧力値と対応する侵入水銀体積とを用いて、円柱状と仮定した細孔の径をWashburnの式から算出する方法であり、セラミックス成形体について規定されたJIS R1655を準用することができる。
【0012】
ここで本発明でいう無孔性とは、BET法により測定されるコア粒子の表面の比表面積(m
2/g)をAとし、コア粒子の粒子径から求められる表面積(粒子半径rから算出される、4πr
2)から算出できる単位重量あたりの表面積(m
2/g)をBとしたとき、(A−B)/B×100が20未満であるものをいう。
一方、本発明でいう多孔性とは、BET法により測定されるその表面の比表面積が10mm
2/g以上であるものをいう。
コアシェル型粒子のコアとシェルの厚さの比は通常、1:9〜9:1である。この比は、目的物質の良好な分離特性を確保する観点から、4:1〜2:1であることが好ましい。この比については、後述するようにコアシェル粒子のシェルの層の厚さを調整することで、調製可能である。
ここで、コアの厚さとは、コアの直径をいう。
【0013】
コアシェル型粒子を構成するコアの材料は無機物質であり、その具体例としては、ガラス、チタン及びジルコニウムのような金属またはその金属酸化物及びベントナイトや雲母などの粘土鉱物に代表されるものから選ばれるもので無孔性の粒子を好ましく挙げることができる。
【0014】
上記コアの材料となる粒子は、その粒子径が0.1μm以上であるものが好ましく、0.5μm以上であるものがより好ましく、1μm以上であるものが特に好ましい。一方、上記コアの材料となる粒子の粒子径は200μm以下であるものを用いることが好ましく、100μm以下であるものがより好ましく、50μm以下であるものを用いることが特に好ましい。
コアシェル型粒子の粒子径は、通常0.2μm以上、1000μm以下であるものを用いる。なお、本発明で言うコアシェル型粒子の粒子径は、遠心沈降法による平均粒子径の測定方法により測定される粒子径をいう。
【0015】
コアシェル型粒子を構成するシェルの材料としては、アルコキシシランの部分加水分解により得られるポリアルコキシシロキサンをさらに加水分解させたものである。このような材料であることが、コアシェル型粒子を容易に製造できる観点から好ましい。
上記アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシランであることが好ましく、その中でも、テトラメトキシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランを用いることが好ましく、テトラエトキシシランを用いることがより好ましい。
上記コアシェル型粒子の作製に当たっては、特開昭49−36396号公報を参照することができる。具体的には、まず、アルコキシシランについて部分加水分解を行ってポリアルコキシシロキサンを生成させる。そして、それにより得られたポリアルコキシシロキサンをエーテル、アセトン、ジクロロメタンのような溶媒に溶解させてポリアルコキシシロキサンの溶液を調製する。この溶液を上記コアとなる粒子に塗布あるいは上記コア粒子をこの溶液に浸漬させ、その後に溶媒を除去することで、コア粒子の表面にポリアルコキシロキサンをシェルとして積層させる。そしてその後、積層させたポリアルコキシシロキサンについて、水の存在下で重縮合(加水分解)を行わせる。これにより、コアシェル型粒子を得ることができる。
【0016】
コアシェル型粒子を構成するシェルの厚さは、0.1〜100μmの範囲で適宜調整することが可能であり、その方法として、シェルとなるアルコキシシランの粘度を調整することが挙げられ、例えば、シェルの厚さを厚くする場合には、アルコキシシランの粘度を低くすることが挙げられる。
また、シェルの比表面積及び細孔直径の調整方法としては、シェルを積層し、重縮合を行わせる際に用いる水溶液のpHを調整することが挙げられ、例えば、比表面積及び細孔直径を大きくする場合には、pHを増加させることが考えられる。
ここで、シェルの厚さとは、コアシェル型粒子の直径から、コアの直径を引き、その値を2で割った値をいう。
【0017】
上記コアシェル型粒子は、市販品として販売されている「コアシェル型シリカゲル」を用いてもよい。そのような市販品では、カタログ値として上記範囲の細孔直径や比表面積、粒子径を有するものである。また、そのような市販されているコアシェル型シリカゲルでは、コアがガラスからなり、シェルがシリカゲル(ポリアルコキシシロキサンの加水分解物)からなるものを用いることができる。
【0018】
本発明の分離剤の担体として用いるコアシェル型粒子は、表面処理を行ってもよい。表面処理の方法としては、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基を有するシランカップリング剤を用いる方法が挙げられる。
このような表面処理により導入されるアミノ基は、後述するリガンドとの化学結合を行う際の反応基として利用することもできる。
【0019】
<リガンド>
本発明でいう「リガンド」とは、担体となるコアシェル型粒子に担持されるものであって、分離対象とする目的物質に対して、物理的な親和性を示すかまたは不斉認識が可能であるものをいう。
1.光学活性ポリマー
本発明の分離剤に用いることのできるリガンドとして、光学活性ポリマーが挙げられる。本発明でいう光学活性ポリマーは、当該ポリマーを溶解した溶液について、平面偏光を透過させた際、偏光面を回転させる旋光性、すなわちキラリティをもつポリマーのことを言う。
より具体的には、光学活性ポリマーを構成するためのモノマーが光学活性を有するか、光学不活性なモノマーを光学活性な重合触媒を用いて重合させ、分子量が、1,000〜1,000,000である。
【0020】
1−(1)多糖またはその誘導体
本発明で用いるリガンドとなる光学活性ポリマーとして、多糖またはその誘導体が挙げられる。そのような多糖としては、例えばβ−1,4−グルカン(セルロース)、α−1,4−グルカン(アミロース、アミロペクチン)、α−1,6−グルカン(デキストラン)、β−1,6−グルカン(プスツラン)、β−1,3−グルカン(カードラン、シゾフィラン)、α−1,3−グルカン、β−1,2−グルカン(Crown Gall多糖)、β−1,4−ガラクタン、β−1,4−マンナン、α−1,6−マンナン、β−1,2−フラクタン(イヌリン)、β−2,6−フラクタン(レバン)、β−1,4−キシラン、β−1,3−キシラン、β−1,4−キトサン、β−1,4−N−アセチルキトサン(キチン)、プルラン、アガロース、アルギン酸、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ニゲラン、及びアミロースを含有する澱粉等が挙げられる。
【0021】
この中で、好ましくは、高純度の多糖を容易に得ることのできるセルロース、アミロース、β−1,4−キトサン、キチン、β−1,4−マンナン、β−1,4−キシラン、イヌリン、カードラン、プルラン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ニゲランなどであり、さらに好ましくは、セルロース、アミロース、プルラン、ニゲランである。
多糖の数平均重合度(1分子中に含まれるピラノース又はフラノース環の平均数)は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上であり、特に上限はないが、1000以下であることが取り扱いの容易さの点で好ましく、より好ましくは5〜1000、更に好ましくは10〜1000、特に好ましくは10〜500である。
【0022】
これらの多糖について、例えばセルロースやアミロースを化学的に修飾したエステル誘導体やカルバメート誘導体等を本発明のリガンドとして用いることができる。
このような多糖誘導体は、キラル固定相として高い光学分割能を有することが知られている。
エステル誘導体やカルバメート誘導体の具体例として、例えば、特公平4−42371号公報には、フェニルカルバメートの芳香族環の水素の一部がハロゲン(フッ素または塩素)で置換された置換基により、セルロースの水酸基が修飾されてなるセルロース誘導体や、特開2005−315668号公報に記載されている、フェニルカルバメートの芳香族環の水素の一部が、フッ素、アルキル基、またはアルコキシ基で置換された置換基により、セルロースまたはアミロースの水酸基が修飾されたセルロース誘導体及びアミロース誘導体についても本発明のリガンドとして使用可能である。
【0023】
上記の多糖又はその誘導体のうち、分離対象とする光学異性体の分離性能の観点やコアシェル型粒子へ担持させる際の容易さから、上記多糖誘導体を用いることが特に好ましい。
多糖誘導体については、上記のものに限らず、適宜用いることが可能である。
前記多糖又はその誘導体をコアシェル型粒子に化学結合により担持させるには、コアシェル型粒子と多糖誘導体の間での化学結合、第三成分を使用した化学結合、担体上の多糖誘導体への光照射、γ線などの放射線照射、マイクロ波などの電磁波照射などによって引き起こされる反応、ラジカル開始剤などを用いるラジカル反応による化学結合が挙げられる。
【0024】
コアシェル型粒子と多糖誘導体の間での化学結合は、例えば、特開平07−138301号公報に記載されているように、還元末端を有する多糖の還元末端を、表面処理した担体と、例えばアルデヒド基とアミノ基とでシッフ塩基を形成後、還元剤存在下で還元し、2級アミンにする方法(Glycoconjugate J (1986) 3, 311-319 ELISABETH KALLIN ら参照)(以後、還元アミノ化法と略す)により化学結合させた後、多糖を誘導体化して目的の光学異性体分離用充填剤を得る、という方法を用いることができる。
【0025】
コアシェル型粒子上の多糖誘導体を、第三成分を使用して化学結合させる方法としては、例えば、特開2002−148247号公報の実施例に記載されているように、ビニル基等の重合性基を導入した重合性多糖誘導体と、やはりビニル基等の重合性基を導入したコアシェル型粒子とを、ビニル基等を有する第三成分(重合性モノマー)の存在下、共重合させる方法を用いることができる。
【0026】
コアシェル型粒子と多糖誘導体とを光照射によって化学結合させる方法としては、例えば、特表平11−510193号公報の実施例に記載されているように、多糖誘導体をコアシェル型粒子上に塗布して担持させた後、これに浸漬性水銀灯により光を照射して多糖誘導体を光化学的に架橋する方法を用いることができる。
【0027】
コアシェル型粒子上に塗布した多糖誘導体をγ線などの放射線照射、マイクロ波などの電磁波照射によって化学結合させる方法としては、例えば特開2004−167343号公報に記載されているように、多糖誘導体を、表面処理したコアシェル型粒子上に塗布した後、これにγ線を照射して多糖誘導体を化学結合させる方法を用いることができる。
【0028】
その他、コアシェル型粒子と多糖誘導体を化学的に結合させる方法として、例えば、多糖誘導体の水酸基またはアミノ基の一部にアルコキシシリル基を導入した多糖誘導体をコアシェル型粒子上に塗布し、適当な溶媒中でアルコキシシリル基による架橋を形成させることにより、多糖誘導体を化学的に結合させる方法を用いることもできる。
【0029】
上記コアシェル型粒子に対する多糖またはその誘導体の担持量は、コアシェル型粒子100重量部に対して1.0〜25重量部であることが好ましい。
【0030】
1−(2)ポリ(メタ)アクリル酸アミド
本発明では、リガンドとなる光学活性ポリマーとして、ポリ(メタ)アクリル酸アミドが挙げられる。このようなポリ(メタ)アクリル酸アミドは、下記式(I)で示される(メタ)アクリル酸アミドのうち、光学活性なものを重合させて得られるものが好ましく用いられる。
そのような重合反応として、例えば、ルイス酸触媒存在下、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等のラジカル重合開始剤を用いるラジカル重合が挙げられる。
ここで用いられるルイス酸は金属塩(MX)である金属ルイス酸が望ましく、例えば、スカンジウムトリフラート、イットリウムトリフラート、臭化マグネシウム、塩化ハフニウム、イッテルビウムトリフラート、ルテチウムトリフラート等が挙げられる。
重合反応において、(メタ)アクリル酸アミドが常温、常圧で液体の場合、無溶剤条件でも重合反応を行うことができるが、固体である場合に使用する反応溶媒としてはラジカル補捉効果のない通常のいかなる有機溶剤でも使用することができる。より望ましくはテトラヒドロフラン、クロロホルム、メタノールなどである。
その他の重合条件は国際公開第02/088204号を参照して適宜調整することができる。
【0031】
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ異なって、水素原子、炭素数1〜30の1価炭化水素基あるいはヘテロ原子を含有する1価の原子団を示し、R
4は水素原子あるいは炭素数1〜30の1価炭化水素基を示し、R
5は水素原子あるいはメチル基を示す。)
【0032】
上記R
1、R
2及びR
3は、それぞれ異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、アラルキル基、カルボアルコキシ基、カルバモイル基、アミノ置換アルキル基、アミノ基、アルコキシ置換アルキル基、アルコキシ基又はシリル基であり、R
4が水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基又はアラルキル基であることが好ましい。R
4が水素原子であることが特に好ましい。
上記コアシェル型粒子に対するポリ(メタ)アクリル酸アミドの担持量は、コアシェル型粒子100重量部に対して1.0〜25重量部であることが好ましい。
【0033】
上記コアシェル型粒子に上記ポリ(メタ)アクリル酸アミドを化学的結合により担持させるには、コアシェル型粒子に反応性官能基を結合させるとともに、この反応性官能基とポリ(メタ)アクリル酸アミドが有するアミド基と反応させるか、上記反応性官能基と反応しうる官能基を上記ポリ(メタ)アクリル酸アミドに導入し、これを反応させて結合させる方法が挙げられる。
具体的には、エポキシ基を含有するシランカップリング剤などによる表面処理によりコアシェル型粒子にエポキシ基を含有させておき、このエポキシ基とポリ(メタ)アクリル酸アミドが有するアミド基を反応させる方法が挙げられる。
また、ビニル基、(メタ)アクリロイル基のような重合性官能基を含有するシランカップリング剤などによる表面処理によりコアシェル型粒子に重合性官能基を導入させておき、他方で特開2006-177795号公報に記載のように、上記ポリ(メタ)アクリル酸アミドにイソシアン酸エスエルを用いることで、ポリ(メタ)アクリル酸アミドにも(メタ)アクリロイル基のような重合性官能基を導入させ、両者の重合性官能基を反応させて共重合して化学結合を起こさせる方法が挙げられる。
【0034】
1−(3)ポリアミノ酸
本発明に用いられる光学活性ポリマーとして、ポリアミノ酸が挙げられる。本発明で言うポリアミノ酸には、後述するタンパク質は含まない。そのようなポリアミノ酸としては、下記式(II)で表されるものが挙げられる。このようなポリアミノ酸は例えば特開昭60−193538号公報に記載の方法で合成することができる。
【化2】
上記式(II)において、nは5以上であり、R
6は炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基及び炭素数7〜12のアラルキル基及び複素環基から選ばれる基である。これら基には、ヒドロキシル基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基及びメチルチオ基のような置換基を有していてもよい。R
7は炭素数1〜5のアルキル基であり、メチル基またはエチル基であることが好ましい。
複素環基を構成する複素環としては、5−ピラゾロン、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾロン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、ピリドン、ピリジン、ロダニン、ピラゾリジンジオン、ピラゾロピリドン、メルドラム酸およびこれらの複素環にさらに炭化水素芳香環や複素環が縮環した縮合複素環が挙げられる。
上記のようなポリアミノ酸を構成するためのα−アミノカルボン酸を例示すると、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン酸、アスパラギン酸が挙げられる。また、アスパラギン酸ベンジル、グルタミン酸メチル、グルタミン酸ベンジル、カルボベンゾキシリシン、カルボベンゾキシオルニチン、アセチルチロシン、ベンジルセリンのようなアミノ酸誘導体もポリアミノ酸の構成材料として挙げることができる。
上記式(II)において、nは100以下であることが好ましく、10〜40がより好ましい。
上記コアシェル型粒子に対するポリアミノ酸の担持量は、コアシェル型粒子100重量部に対して1.0〜25重量部であることが好ましい。
【0035】
上記コアシェル型粒子に上記ポリアミノ酸を化学的結合により担持させるには、コアシェル型粒子に反応性官能基を結合させるとともに、この反応性官能基とポリアミノ酸が有するアミノ基と反応させるか、上記反応性官能基と反応しうる官能基を上記ポリアミノ酸に導入し、これを反応させて結合させる方法が挙げられる。
コアシェル型粒子に導入させる反応性官能基としては、ポリアミノ酸が有するアミノ基と反応するエポキシ基を導入する方法がある。その具体的方法としては、エポキシ基を含有するシランカップリング剤により、コアシェル型粒子を表面処理することが挙げられる。
また、ビニル基、(メタ)アクリロイル基のような重合性官能基を含有するシランカップリング剤などによる表面処理によりコアシェル型粒子に重合性官能基を導入させておき、他方でポリアミノ酸のアミノ基と反応しうる重合性官能基を有するモノマー、例えばアクリル酸クロリド、グリシジルメタクリレート、クロロメチルスチレンをポリアミノ酸と反応させて、末端にビニル基のような重合性官能基を導入したポリアミノ酸を合成して、コアシェル粒子状の重合性官能基とポリアミノ酸の重合性官能基とを反応させて共重合により化学結合を形成する方法も挙げられる。
【0036】
1−(4)ポリアミド
本発明の分離剤に用いられる光学活性ポリマーとして、ポリアミドが挙げられる。このポリアミドでは、繰り返し単位の主鎖に1の光学活性アミノ酸残基を有するものである。
この光学活性ポリアミドの合成にかかるモノマー成分として、光学活性なジカルボン酸であるN−置換アミノ酸とジアミンと採用したものである。N−置換アミノ酸としては、例えばN−置換グルタミン酸やN−置換アスパラギン酸を用いることができ、ジアミンとしては4,4’−ジアミノジフェニルメタンや1,3−フェニレンジアミンのような芳香族ジアミンを用いることができる。
上記ポリアミドの合成方法の一例を説明する。上記ポリアミドは上記のように、光学活性なジカルボン酸であるN−置換アミノ酸と、ジアミンとを重合させることにより合成することができる。具体的には、N−メチルピロリドン(以下、「NMP」と記載する。)とピリジン(以下、「Py」と記載する。)とを例えば容量比4:1で混合した液に、塩化リチウム(以下、「LiCl」と記載する。)を例えば4重量%加えた液(以下、「NMP−Py混合溶液」と記載する。)、例えば7.5cm
3に、所定量の、例えば3mmolのベンゾイル−L−グルタミン酸(光学活性なジカルボン酸であるN−置換アミノ酸)と、これと等モル量、例えば3mmolの4,4’−ジアミノジフェニルメタン(ジアミン)と、これらの2倍のモル量、例えば6mmolの亜リン酸トリフェニルとを、所定温度、例えば80℃で撹拌しながら所定時間、例えば3時間加熱する。反応終了後、生成物をメタノール中に滴下した後、これをろ過してポリマーを得、減圧乾燥させる。
【0037】
本発明に係るポリアミドの合成方法は上記の方法に限定されるものではなく、上記以外の方法で合成してもかまわない。また、反応に用いる各試薬及びその量によって適する反応温度及び反応時間は異なる。上記に示した反応時間、反応温度、及び試薬の量は本発明に係る光学活性ポリマーを得ることのできる条件の一例であり、適宜変更が可能である。
【0038】
本発明に係るポリアミドは、光学活性なジカルボン酸であるN−置換アミノ酸を用いて合成されているため、そのポリマー内部にD−又はL−光学活性体認識部位を有し、この光学活性体認識部位を利用して光学分割を行うことができる。
上記コアシェル型粒子に対するポリアミドの担持量は、コアシェル型粒子100重量部に対して1.0〜25重量部であることが好ましい。
【0039】
上記コアシェル型粒子に上記ポリアミドを化学的結合により担持させるには、コアシェル型粒子に反応性官能基を結合させるとともに、この反応性官能基とポリアミドが有するアミド基と反応させるか、上記反応性官能基と反応しうる官能基を上記ポリアミドに導入し、これを反応させて結合させる方法が挙げられる。
具体的には、エポキシ基を含有するシランカップリング剤などによる表面処理によりコアシェル型粒子にエポキシ基を含有させておき、このエポキシ基とポリアミドが有するアミド基を反応させる方法が挙げられる。
また、ビニル基、(メタ)アクリロイル基のような重合性官能基を含有するシランカップリング剤などによる表面処理によりコアシェル型粒子に重合性官能基を導入させておき、他方で特開2006-177795号公報に記載のように、上記ポリアミドにイソシアン酸エスエルを用いることで、ポリアミドにも(メタ)アクリロイル基のような重合性官能基を導入させ、両者の重合性官能基を反応させて共重合して化学結合を起こさせる方法も挙げられる。
【0040】
2.光学不活性なポリエステル
本発明で用いるリガンドとして、光学不活性なポリエステルが挙げられる。そのようなポリエステルの具体例として、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン・ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリεカプロラクトン及びポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレン−2,2−イソプロピリデン−1,4−フェニレン){ビスフェノールAのポリカーボネート)等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸またはポリグリコール酸を用いることが好ましい。
上記ポリエステルの重量平均分子量は、ポリマー溶解溶媒粘性増による取扱い易さの観点から1万〜100万が好ましく、2万〜20万であることがより好ましい。
【0041】
上記コアシェル型粒子に上記ポリエステルを化学的結合により担持させるには、コアシェル型粒子に反応性官能基を結合させるとともに、この反応性官能基と反応しうる官能基を上記ポリエステルに導入し、これを反応させて結合させる方法が挙げられる。
具体的には、コアシェル型粒子にエポキシ基などのアミノ基と共有結合を形成する官能基を、エポキシ基を含有するシランカップリング剤などによる表面処理により導入させておき、一方、ポリエステルについては、ポリアミンを用いて化学処理を行い、上記ポリエステルにアミノ基を導入させる。
ポリアミンとしては、炭素数2〜8の(ポリ)アルキレンポリアミンが含まれ、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0042】
これらのポリアミンのうち、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びテトラエチレンペンタミン、特に好ましくはジエチレントリアミンを用いることが好ましい。特に、アミノ基を少なくとも3個含むポリアミンを用いると、上記ポリエステルへのアミノ基の導入が良好になる。また、アミンは低分子量であると、化学処理の後除去が容易であるため好ましい。
【0043】
アミンによる化学処理としては、有機溶媒とアミンとからなる溶液中で、または水及び有機溶媒の混合溶媒とアミンとからなる溶液中で、上記ポリエステルを加熱処理する方法が挙げられる。
【0044】
上記の化学処理を経たポリエステルと表面処理を施されたコアシェル型粒子を真空または空気中で反応を起こさせて、コアシェル型粒子にポリエステルが化学結合した分離剤を得ることができる。
【0045】
3.タンパク質
本発明の分離剤のリガンドとして、タンパク質を用いることができる。本発明で用いることのできるタンパク質は、分子量3〜300kDa、好ましくは30〜150kDaであって、分離対象とする例えば抗体のようなタンパク質に対して親和性のある物質が挙げられる。
これらの中でも、リガンドとしてプロテインA、プロテインG、プロテインL、アルブミン及びこれらの機能性変異体が抗体のタンパク質の分離に用いる際の選択率が高く好ましい。
抗体の分離を主目的とする場合、リガンドとしては免疫グロブリンの一部と特異的に結合可能なものが好ましい。
上記機能性変異体は、天然アミノ酸配列において少なくとも1つの変性を有し、天然配列に伴われている少なくとも1つの機能をなお維持しているタンパク質を指す。天然配列には、本来自然に発生するアミノ酸配列が含まれる。アミノ酸の変化としては、1つ以上のアミノ酸の別のアミノ酸への置換、1つ以上のアミノ酸の削除および/または1つ以上のアミノ酸の追加またはこれらのいずれかの組合せを挙げることができる。天然配列に対して行われる追加、削除および置換の組合せのような態様も挙げられる。機能性変異体は、タンパク質の断片またはドメインを含むこともできる。機能性変異体のアミノ酸配列は、天然アミノ酸配列と少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも98%同一であってもよく、天然配列に伴われている少なくとも1つの機能をなお維持している。
アルブミンとしては、卵アルブミンやヒト血清アルブミン(分子量約66kDa)を挙げることができる。
【0046】
また、本発明で用いることができるタンパク質として、以下に示すセロビオヒドロラーゼI及びIIとして知られるセロビオヒドロラーゼ(CBH)を挙げることができる。セロビオヒドロラーゼI(CBH I)とセロビオヒドロラーゼII(CBH II)はセルラーゼの大部分(両者で80%以上、この他にエンドグルカナーゼ、β−グルコシダーゼなどが少量含まれる)を占める主要酵素であることが知られている。その製造方法としては、遺伝子組換えの技術を用いて、目的のセロビオヒドロラーゼを宿主細胞において大量に発現させる方法を挙げることができる。
【0047】
本発明ではタンパク質としてα
1−酸性糖タンパク質を用いることができる。α
1−酸性糖タンパク質の由来としては、ヒト、ウシ、家兎等の哺乳類、ニワトリ、ハクチョウ、七面鳥等の鳥類を挙げることができる。それらのうち、好ましいα
1−酸性糖タンパク質の具体例としては、ヒトα
1−酸性糖タンパク質(以下、単にh−AGPともいう)やニワトリAGP(以下、単にc−AGPともいう)を挙げることができる。
ヒトα
1−酸性糖タンパク質(h−AGP)は市販品(例えばSigma−Aldrich社)を用いることができ、必要に応じて高速液体クロマトグラフィーにより精製してもよい。
【0048】
本発明で用いることができるニワトリα
1−酸性糖タンパク質(c−AGP)は、ニワトリ粗オボムコイドをカチオン交換担体(例えば、SP−Sepharose)を用いた液体クロマトグラフィーにより、酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.6)によるステップワイズ溶出法を用い、オボムコイドとニワトリα
1−酸性糖タンパク質(c−AGP)とを分離することにより得られる。
さらに、c−AGPを含む画分を分取して、SP−Sepharoseのようなイオン交換クロマトグラフィー用担体により精製を行ってもよい。
【0049】
上記のヒトα
1−酸性糖タンパク質は、183個のアミノ酸残基と5本の糖鎖からなる分子量41000〜43000程度の糖タンパク質である。ニワトリα
1−酸性糖タンパク質は、アミノ酸残基および糖鎖はヒトα
1−酸性糖タンパク質と同じであるが、分子量は約30000である。
【0050】
上記コアシェル型粒子に対するタンパク質の担持量は、コアシェル型粒子100重量部に対して1.0〜25重量部であることが好ましい。
【0051】
上記コアシェル型粒子に上記タンパク質を化学的結合により担持させるには、通常以下のような方法が用いられるが、これに限定されるものではない。
固定化は、コアシェル型粒子に反応性官能基を結合させた上で、この反応性官能基と、タンパク質の有する官能基とを直接反応させる方法や、あるいはコアシェル型粒子に結合させた官能基及び前記タンパク質の有する官能基とそれぞれ反応可能な官能基を分子内にそれぞれ1個以上有する低分子又は高分子化合物(以下このような化合物をまとめて「スペーサー」と記す)を介して結合させる方法が用いられる。
【0052】
例えばプロテインAのようなアミノ基を有するリガンドを固定化する場合、前者の方法としては、コアシェル型粒子にエポキシ基などのアミノ基と共有結合を形成する官能基を、エポキシ基を含有するシランカップリング剤などによる表面処理により含有させておき、これとプロテインAを直接反応させて固定化する方法が例示できる。
また、後者の方法としては、スペーサーとしてアミノ酸(アミンカルボン酸)類を用い、そのアミノ基部位とコアシェル型粒子に導入したエポキシ基とを反応させた上で、他の末端のカルボキシル基によってプロテインAのアミノ基と反応させる方法や、スペーサーとしてジアミンやジオールと(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル等のジグリシジル化合物を逐次的に用いて、コアシェル型粒子に導入したエポキシ基とジアミン又はジオールの一方の末端を結合させ、他の末端にジグリシジル化合物の一方のエポキシ基を結合させて、残る末端のエポキシ基をプロテインAと結合させる方法などが挙げられる。
【0053】
なお、上記方法でスペーサーの一部の成分として用いられるジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン類が挙げられ、ジオールとしては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族ジオールやポリエチレングリコール類が挙げられる。
スペーサーとしてはリガンドとの反応性や固定化時のコアシェル型粒子との立体障害の関係を考慮すると、直鎖状の構造を有していることが好ましい。分岐鎖状の構造のスペーサーを用いると、立体障害が大きくなって、リガンドであるタンパク質と分離対象としての抗体とのアフィニティ結合の形成を抑制することがあり、分離性能が悪くなることがある。
【0054】
また、コアシェル型粒子に導入する官能基としては、3−アミノプロピルトリエトキシシランを用いた3−アミノプロピル基も挙げられ、この場合には、コアシェル型粒子を予め炭酸ジコハク酸ジイミド(N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート:DSC)とを反応させておき、これにタンパク質のアミノ酸残基のアミノ基とを反応させることもできる。
【0055】
4.核酸
本発明の分離剤のリガンドとして、核酸を用いることができる。そのような核酸としては特に制限はないが、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、修飾オリゴヌクレオチドなどが挙げられる。また、DNA及びRNAの誘導体も用いることができ、DNAやRNAは天然型でも人工型でもよいが、分離剤としての安定性を考慮すると、構造的に安定な人工型を使用することが好ましい。人工型においては天然型には存在しない配列を形成することができる。
人工型の核酸の塩基数は50〜200程度であるものが好ましく、効率的な合成を可能にする観点から、100塩基程度のものを用いることが好ましい。人工型の核酸ではチミンの二量体化を防ぐ観点から、チミン同士が隣接しないことが好ましい。
さらに、分離剤としての耐久性を考慮して、上記核酸は保護基により誘導体化されていてもよい。具体的には、5’位、3’位のいずれか一方又は双方にある水酸基をリン酸エステル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ベンジル基、置換ベンジル基、アリル基などを用いて誘導化することができる。
【0056】
上記コアシェル型粒子に対する上記核酸の担持量は、コアシェル型粒子100重量部に対して1.0〜25重量部であることが好ましい。上記核酸の担持量がコアシェル型粒子100重量部に対して1.0重量部に満たない場合は、上記核酸を分離剤中に安定に存在させることができなくなり十分な分離性能が得られなくなる一方、上記核酸の担持量がコアシェル型粒子100重量部に対して25重量部を超える場合には、上記核酸をコアシェル型粒子に担持させきることができなくなって、フリーの核酸が生じ、分離性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0057】
上記コアシェル型粒子に上記核酸を担持させるには、例えば、特開2010−259405号公報に記載のようにキトサン及び該キトサンのアミノ基を介して結合させる方法が挙げられる。この方法ではまず、コアシェル型粒子を3−アミノプロピルトリエトキシシランのようなアミノシラン、グルタルアルデヒド、キトサン、グルタルアルデヒド、アビジンの順で以下のように修飾する。
コアシェル型粒子に3−アミノプロピルトリエトキシシランを蒸着反応させた後、加熱処理する。
3−アミノプロピルトリエトキシシラン処理されたコアシェル型粒子をグルタルアルデヒド溶液に浸漬した後、洗浄し風乾する。
グルタルアルデヒドで処理されたコアシェル型粒子をキトサン溶液に浸漬処理した後、超純水で洗浄する。これにより、グルタルアルデヒドのアルデヒド基にキトサンのアミノ基が共有結合し、コアシェル型粒子の表面上に多数のアミノ基が得られ、核酸を結合させるための表面積が増大する。
次に、キトサンが導入されたコアシェル型粒子をグルタルアルデヒド溶液に浸漬した後、洗浄し風乾する。
得られたコアシェル型粒子にアビジン溶液を滴下し、静置することで、アルデヒド基とアビジンのアミノ基が結合し、アビジンがキトサンを介してコアシェル粒子上に固定される。
そして、アビジンが固定化されたコアシェル粒子上にビオチン標識された核酸溶液を滴下して反応させることにより、キトサンを介して核酸が固定化されたコアシェル型粒子が得られる。
【0058】
5.分子量50〜1000の光学活性な化合物
本発明の分離剤のリガンドとして、分子量50〜1000の光学活性な有機化合物を用いることができる。そのような有機化合物としては、不斉中心を有し、分子量が上記50〜1000であって、コアシェル型粒子と化学結合により結合可能なものであれば特に限定されない。
【0059】
5−(1)ビナフチル構造及びクラウンエーテル様環状構造を有する化合物
分子中にビナフチル構造及びクラウンエーテル様環状構造を有する化合物としては、例えば、特開2003−327675号公報に記載のものが挙げられる。
それ以外にも例えば下記式(III)で表されるものが好ましく例示できる。
【0061】
式(III)中、R
8及びR
9はそれぞれ水素、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基、置換基を有していてもよく任意の非連続のメチレン基が酸素であってもよい炭素数1〜8のアルキル基、又は各アルキル基の炭素数が1又は2のトリアルキルシリル基を表す。また、R
8及びR
9におけるフェニル基等が有していてもよい前記置換基は、クラウンエーテル様環状構造の酸素原子と相互作用しない基であり、このような置換基としては、例えばメチル基及びクロロ基が挙げられる。R
8及びR
9は、分離性能の向上の観点から、フェニル基であることが好ましい。
【0062】
式(III)中、A
1及びA
2はそれぞれ、ビナフチル環の水素に置き換えられた、担体の表面に結合している基を表す。A
1及びA
2の大きさは特に限定されないが、合成の容易さと分離性能の向上との観点から、それぞれの分子量が100〜600であることが好ましい。A
1及びA
2は、炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数6〜30のアリーレン基、エーテル基、カルボニル基、イミノ基、及びアミド基等の種々の基から構成することができる。
A
1及びA
2は、それぞれ式(III)のビナフチルの水素に置き換えられた下記式(IV)で表される構造を含むことが、前記ビナフチル化合物の合成の容易さの観点から好ましい。
【0064】
式(IV)中、oは1〜30の整数を表す。oは、合成の容易さと分離性能の向上との観点から、4〜10であることが好ましい。
式(III)中、lは4〜6の整数を表す。このようなlはアンモニウムイオンの包接の観点から好ましく、4であることがより好ましい。
式(III)中、m及びnはそれぞれ0〜5の整数を表す。ただしm+nは1〜10である。m及びnの両方がそれぞれ1以上であることが、前記ビナフチル化合物の合成の容易さの観点から好ましく、m及びnの一方が1であり他方が0であることがより好ましい。なお、m又はnが0である場合は、担体との結合がないことを意味する。
【0065】
上記式(III)で表される化合物を上記コアシェル型粒子に化学結合させる方法としては、以下のA〜D工程を経て行うことができる。
【0066】
本発明のクロマトグラフィー用分離剤は、下記式(III)で表されるビナフチル誘導体Aのビナフチル環に担体連結基を導入してビナフチル誘導体Bを得るA工程と、ビナフチル誘導体Bの2,2’位のメトキシ基を加水分解して前記メトキシ基が水酸基になったビナフチル誘導体Cを得るB工程と、ビナフチル誘導体Cの前記水酸基のそれぞれをポリエチレングリコール誘導体で架橋してクラウンエーテル様環状構造を有するビナフチル誘導体Dを得るC工程と、ビナフチル誘導体Dの担体連結基を介してビナフチル誘導体Dをコアシェル型粒子の表面に化学結合によって結合するD工程と、を含む方法によって製造することができる。
【0068】
式(V)において、R
8及びR
9は式(III)のR
8及びR
9と同じである。ビナフチル誘導体Aは、市販品として得ることができる。このような市販品としては、例えば2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル及び3,3’−ジブロモ−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチル(共に東京化成工業株式会社の製品)が挙げられる。このような市販品の使用は、前記ビナフチル化合物の合成の容易さの観点から好ましい。
【0069】
またビナフチル誘導体Aは、合成によって得ることができる。例えば、ビナフチル誘導体Aは、3,3’−ジブロモ−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルから合成することによって得ることができる。このように本発明の方法が、3,3’−ジブロモ−2,2’−ジメトキシ−1,1’−ビナフチルのブロモ基をそれぞれR
8及びR
9に置き換えてビナフチル誘導体Aを得るための工程をさらに含むことは、前記ビナフチル化合物のR
8及びR
9の多様性を得る観点から好ましい。
【0070】
A工程では、担体連結基は、コアシェル型粒子上の表面の官能基と結合する基であってもよいし、コアシェル型粒子の表面に直接結合する基であってもよい。担体連結基は一種でも二種以上でもよい。また担体連結基は、少なくとも一つあればよく、二以上あってもよい。さらに担体連結基が二以上ある場合では、担体連結基はビナフチルの二つのナフチル環の一方のみに結合していてもよいし、両方にそれぞれ結合していてもよい。担体連結基は、前記ビナフチル誘導体Dとコアシェル型粒子との結合の容易さの観点から、コアシェル型粒子の表面処理による官能基と結合する基であることが好ましい。
【0071】
このような好ましいA工程としては、例えば、ビナフチル誘導体Aと炭素数4〜33の脂肪族ジカルボン酸モノメチルエステルモノクロライドとを塩化鉄の存在下で反応させてビナフチル誘導体Bを得る工程が挙げられる。
【0072】
前記B工程は、ビナフチルの2,2’位がビナフチル誘導体Bの中でも反応性が高いことから、温和な条件での反応によって行うことができる。このような反応の条件としては、例えば氷冷下から室温中での三臭化ホウ素による脱アルキル反応が挙げられる。このような条件でB工程を行うことは、ビナフチル誘導体Bの他の構造への影響を抑え、より収率よくビナフチル誘導体Cを得る観点から好ましい。
【0073】
前記C工程は、ビナフチル誘導体Cの2,2’位の水酸基にポリオキシエチレンを架橋させられる条件によって行うことができる。このような架橋は、加水分解を利用して行うことができ、例えば、オキシエチレン基の繰り返し数が5〜7のポリオキシエチレングリコールジトシラートをアルカリ条件下で反応させることによって行うことができる。
【0074】
前記D工程は、担体連結基やコアシェル型粒子の表面処理の種類に応じて公知の技術の範疇で適宜に行うことができる。例えば、D工程は、表面処理されたコアシェル型粒子を用いる場合では、ビナフチル誘導体Dの担体連結基とコアシェル型粒子の表面処理による官能基とを化学結合させることによって行うことができる。
【0075】
上記コアシェル型粒子の表面処理剤として、シランカップリング剤を用いることができる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、及び3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシランが挙げられる。
【0076】
上記コアシェル型粒子に対する上記式(III)で表される化合物の担持量は、コアシェル型粒子100重量部に対して1.0〜25重量部であることが好ましい。
【0077】
5−(2)N−アシル化アミノ酸、N−カルバモイルアミノ酸、N−カルバモイル−α−芳香族アミノ酸
本発明の分離剤では、リガンドとしてN−アシル化アミノ酸、N−カルバモイルアミノ酸、N−カルバモイル−α−芳香族アミノ酸(以下、本発明にかかるアミノ酸類という)を化学結合により上記コアシェル型粒子に担持させて、光学異性体用の分離剤とすることができる。
N−アシル化アミノ酸としては、例えばN−ピバロイルーL−バリン、N−3,5−ジニトロベンゾイル−D−フェニルグリシンなどが挙げられる。N−カルバモイルアミノ酸としては、例えばN−カルバモイル−ロイシン、N−カルバモイル−バリンなどが挙げられる。また、N−カルバモイル−α−芳香族アルキルアミンとしては、例えばN−カルバモイル−α−(ノーナフチル)エチルアミンなどが挙げられる。
【0078】
上記本発明にかかるアミノ酸類は、本発明の分離剤においてキラル部位として機能する。
上記本発明にかかるアミノ酸類を上記コアシェル型粒子に化学的に結合させる方法として、以下の方法が挙げられる。具体的な操作としては、特開平5−4045号公報に記載されている。
まず、上記コアシェル型粒子を、3−アミノプロピルトリエトキシシランのようなアミノ基を有するシランカップリング剤を用いて表面処理し、アミノプロピル基をコアシェル型粒子に導入する。導入されたアミノプロピル基はアンカー部位として機能する。3−アミノプロピルトリエトキシシラン以外のシランカップリング剤としては、6−アミノヘキシルアルコキシシラン、6−アミノヘキシルハロゲノシラン、3−アミノプロピルトリハロゲノシランなどが挙げられる。3−アミノプロピルハロゲノシランの好ましい例としては、3−アミノプロピルトリクロロシランが挙げられる。
上記のキラル部位とアンカー部位との間にさらにサブアンカー部位として−NH−(CH
2)n−CO−を導入する。ここで、nは5以上、好ましくは5〜10である。nが5未満であると充填剤の分離能が低下する。一方、nが10を越えると分子識別に不要な疎水基間の相互作用およびキラル部位間の相互作用が増大し分離能が低下する。
上記サブアンカー部位を構成するために用いる化合物として、アミノアルカン酸が挙げられる。このアミノアルカン酸をメチルエステルのようなエステルで保護する操作を行う。
次に上記本発明にかかるアミノ酸類とN−ヒドロキシコハク酸イミドのようなカルボン酸の活性化試薬とを反応させてエステル化を行う。これと、上記でエステル化を行ったアミノアルカン酸のメチルエステルとを反応させ、キラル部位とサブアンカー部位とを結合させる。そして、サブアンカー部位のカルボキシル基とアンカー部位のアミノ基とを反応させることで、上記本発明にかかるアミノ酸類をコアシェル型粒子に化学結合により担持させることができる。
【0079】
上記コアシェル型粒子に対する上記本発明にかかるアミノ酸類の担持量は、コアシェル型粒子100重量部に対して1.0〜25重量部であることが好ましい。
【0080】
本発明の分離剤は、リガンドとして光学活性なものを用いる場合には、光学異性体用の分離剤として用いることができ、リガンドとして光学活性のないものを用いる場合には、アフィニティークロマトグラフィー用の分離剤として用いることができる。これらの分離剤は、ガスクロマトグラフィー用、電気泳動用、特にキャピラリーエレクトロクロマトグラフィー用(CEC用)、CZE(キャピラリーゾーン電気泳動)法、MEKC(ミセル動電クロマト)法のキャピラリーカラムの充填剤としても使用することができる。
【実施例】
【0081】
本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものはない。なお以下の例における理論段数(N)、保持係数(k’)、分離係数(α)は下式で定義される。
【0082】
<理論段数>
N=16×[(保持時間)/(ピーク幅)]
2
<保持係数>
k'=[(対掌体の保持時間)−(デッドタイム)]/(デッドタイム)
<分離係数>
α=(より強く保持される対掌体の保持係数)/(より弱く保持される対掌体の保持係数)
この時、デッドタイムはTri-tert-butylbenzeneの溶出時間をデッドタイムとした。
【0083】
<実施例1>
Cellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)を光架橋固定化により、2重量%担持させた充填剤の製造法及び充填カラムの作製法
【0084】
(1)Cellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(1)の合成
市販品の3,5-dichlorophenylisocyanateとセルロースをピリジン溶媒中で反応させ、白色固体(1)を得た。反応条件は非特許文献2を参考とした。
【0085】
【化6】
【0086】
(2)Cellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(1)が物理的吸着により2重量%担持された充填剤の作製
(1)で得られたセルロース誘導体(1)0.081gを30mLのテトラヒドロフランに溶解させた。その溶液に、コアシェル型シリカゲル(株式会社クロマニックテクノロジース社製特殊カラム φ4.6cm×L15cm(粒子径2.6μm、細孔直径9nm、C4コアシェル)から充填剤を抜き取り、電気炉にて600度まで1時間で昇温、その後5時間維持し放冷後、4N塩酸に分散させ、一晩、攪拌させ、純水で洗浄、乾燥させたもの、粒子径:2.6μm、細孔直径9nm(カタログ値)、コアの直径1.6μm、コアの材質:ガラス;シェルの厚さ0.5μm、シェルの材質:シリカゲル(ポリアルコキシシロキサンの加水分解物))3.9gを加え、数分間の振騰攪拌を行った後に、溶剤を減圧留去させることで、Cellulose tris(3,5-dichloro phenylcarbamate)(1)が2重量%担持された充填剤を作製した。
【0087】
(3)Cellulose tris(3,5-dichloro phenylcarbamate)(1)が固定化により、2重量%担持させた充填剤の作製
Cellulose tris(3,5-dichloro phenylcarbamate)(1)が2重量%担持された充填剤2.76gをアセトニトリル/水=60/40 (vol./vol.) 500mLに懸濁し、撹拌した。懸濁液を浸漬性水銀灯(Philips、HPK-125ワット、石英被包)で10分間照射した。沈澱を濾取し、テトラヒドロフランで洗浄し、乾燥させた。
【0088】
(4)Cellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(1)が固定化により、2重量%担持させた充填剤を用いた充填カラムの作製
(3)で作製された担持型充填剤をφ0.21cm×L15cmのステンレス製カラムにスラリー充填法により、加圧、充填を行いカラムの作製を行った。
【0089】
<応用例1>
<実施例1>で作製された光学異性体分離カラムを用い、液体クロマトグラフィー法により、下記構造を有する化合物(trans-Stylbene oxide)を用いて光学異性体分離カラムのカラム性能(N値)および分離係数の評価を行った。
【0090】
【化7】
【0091】
比較例として、実施例1に記載の方法で全多孔型シリカゲル(粒子径5μm、細孔直径12nm)にCellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(1)を2.0重量%担持させた充填剤を用いた光学異性体分離カラムのカラム性能(k'値、α値、N値)を示した。なお、評価条件は実施例1及び比較例のいずれにおいても移動相としてn−ヘキサン/2−プロパノール=90/10を用い、流速を0.15mL/min.、温度を25℃に設定した。
【0092】
【表1】
【0093】
<実施例2>
Cellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)を光架橋固定化により、10重量%担持させた充填剤の製造法及び充填カラムの作製法
【0094】
(1)Cellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(1)が物理的吸着により10重量%担持された充填剤の作製
実施例1の(1)で得られたセルロース誘導体(1)0.4gを4mLのテトラヒドロフランに溶解させた。その溶液を、コアシェル型シリカゲル(Advanced Materials Technology (AMT)社製、粒子径:2.7μm、細孔直径:16nm(カタログ値)、コアの直径:1.7μm、コアの材質:ガラス;シェルの厚さ:0.5μm、シェルの材質:シリカゲル(ポリアルコキシシロキサンの加水分解物)を電気炉にて600℃まで1時間で昇温、その後5時間維持し放冷後、4N 塩酸に分散させ、一晩、攪拌させ、純水で洗浄、乾燥させたもの)3.5gに均一に塗布した後に、テトラヒドロフランを減圧留去しCellulose tris(3,5-dichloro phenylcarbamate)(1)が10重量%担持された充填剤を作製した。
【0095】
(2)Cellulose tris(3,5-dichloro phenylcarbamate)(1)が固定化により、10重量%担持させた充填剤の作製
Cellulose tris(3,5-dichloro phenylcarbamate)(1)が10重量%担持された充填剤3.6gをアセトニトリル/水=60/40 (vol./vol.)500mLに懸濁し、撹拌する。懸濁液を浸漬性水銀灯(Philips、HPK-125ワット、石英被包)で10分間照射する。沈澱を濾取し、テトラヒドロフランで洗浄し、乾燥させる。元素分析の結果から担持率は9.5%であった。
【0096】
(3)Cellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(1)が固定化により、10重量%担持させた充填剤を用いた充填カラムの作製
(2)で作製された担持型充填剤をφ0.21cm×L15cmのステンレス製カラムにスラリー充填法により、加圧、充填を行いカラムの作製を行った。
【0097】
<実施例3>
アルコキシシリル基を有するCellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate) (2)を固定化させた充填剤の製造法及び充填カラムの作製法
【0098】
(1)アルコキシシリル基を有するCellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate) (2)の合成
セルロースと3,5-dichlorophenylisocyanateおよび3,5-(triethoxysilyl)propyl isocyanateを反応させて、アルコキシシリル基を有するCellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(2)を得た。反応条件は、特許文献1の実施例2に記載された方法を参考に合成した。1H−NMRの結果から3,5-dichlorophenylisocyanateとアルコキシシリル基(エトキシシリル基)の導入率はそれぞれ97.4%、2.6%であった。
【0099】
【化8】
【0100】
(2)アルコキシシリル基を有するCellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(2)が物理的吸着により10重量%担持された充填剤の作製
(1)で得られたアルコキシシリル基を有するセルロース誘導体(2)0.4gを3.2mLのテトラヒドロフランに溶解させた。その溶液を、表面を3−アミノプロピルトリエトキシシランで処理したコアシェル型シリカゲル(Advanced Materials Technology (AMT)社製、粒子径:2.7μm、細孔直径:16nm(カタログ値)、コアの直径:1.7μm、コアの材質:ガラス;シェルの厚さ:0.5μm、シェルの材質:シリカゲル(ポリアルコキシシロキサンの加水分解物)から既知の方法に従い製造)3.6gに均一に塗布した後に、テトラヒドロフランを減圧留去し、アルコキシシリル基を有するCellulose tris(3,5-dichloro phenylcarbamate)(2)が10重量%担持された充填剤を作製した。
【0101】
(3)アルコキシシリル基を有するCellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(2)を固定化させた充填剤の作製
(2)で得られた充填剤3gをエタノール/水/クロロトリメチルシラン(27.5mL/7mL/0.45mL)に分散し、110℃のオイルバスで沸騰させながら10分間反応を行い、シリカゲル上への固定化を行った。メタノールで洗浄し、乾燥させる。元素分析の結果から担持率は5.6%であった。
【0102】
(4)アルコキシシリル基を有するCellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(2)を固定化させた充填剤を用いた充填カラムの作製
(3)で作製された担持型充填剤をφ0.21cm×L15cmのステンレス製カラムにスラリー充填法により、加圧、充填を行いカラムの作製を行った。
【0103】
<実施例4>
Cellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(1)を化学結合した充填剤の製造法及び充填カラムの作製法
【0104】
(1)Cellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(1)を化学結合した充填剤の作製
表面をアミノプロピルトリエトキシシランで処理したコアシェル型シリカゲル(Advanced Materials Technology (AMT)社製、粒子径:2.7μm、細孔直径:16nm(カタログ値)、コアの直径1.7μm、コアの材質:ガラス;シェルの厚さ0.5μm、シェルの材質:シリカゲル(ポリアルコキシシロキサンの加水分解物)を電気炉にて600℃まで1時間で昇温、その後5時間維持し放冷後、4N 塩酸に分散させ、一晩、攪拌させ、純水で洗浄、乾燥させたものから既知の方法に従い製造)にセルロースを化学結合させた物質5gを、特許文献11の実施例1に記載された方法を参考に合成した。但し、このときのセルロース仕込量を、特許文献記載量よりも5倍多くし、セルロースがコアシェル型シリカゲルに化学結合した物質を得た。得られたセルロース結合コアシェル型シリカゲル4gをN,N−ジメチルアセトアミド、ピリジン混合溶剤中に懸濁させ、これに3,5−ジクロロフェニルイソシアネート3.1gを添加し、80℃で48時間の反応を行った。懸濁液をろ過し、メタノールで洗浄し、乾燥させる。元素分析の結果から担持率は0.9%であった。
【0105】
(2)Cellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(1)を化学結合した充填剤を用いた充填カラムの作製
(1)で作製された担持型充填剤をφ0.21cm×L15cmのステンレス製カラムにスラリー充填法により、加圧、充填を行いカラムの作製を行った。
【0106】
<実施例5>
Polybutylene terephthalateを化学結合した充填剤の製造法及び充填カラムの作製法
【0107】
(1)Polybutylene terephthalate(3)が物理的吸着により10重量%担持された充填剤の作製
Polybutylene terephthalate(Duranex300FP)(3)0.4gを4mLの1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIPA)に溶解させた。その溶液を、表面を3−アミノプロピルトリエトキシシランで処理したコアシェル型シリカゲル(Advanced Materials Technology (AMT)社製、粒子径:2.7μm、細孔直径:16nm(カタログ値)、コアの直径:1.7μm、コアの材質:ガラス;シェルの厚さ:0.5μm、シェルの材質:シリカゲル(ポリアルコキシシロキサンの加水分解物)から既知の方法に従い製造)3.6gに均一に塗布した後に、HFIPAを減圧留去し、Polybutylene terephthalate(3)が10重量%担持された充填剤を作製した。
【0108】
(2)Polybutylene terephthalate(3)を化学結合した充填剤の作製
(1)で得られた充填剤2.5gを、200℃のオーブンにて3時間反応を行い、シリカゲル上への固定化を行った。HFIPAで洗浄し、乾燥させる。元素分析の結果から担持率は7.7%であった。
【0109】
(3)Polybutylene terephthalate(3)を化学結合した充填剤用いた充填カラムの作製
(2)で作製された担持型充填剤をφ0.21cm×L15cmのステンレス製カラムにスラリー充填法により、加圧、充填を行いカラムの作製を行った。
【0110】
<実施例6>
Polyethylene terephthalateを化学結合した充填剤の製造法及び充填カラムの作製法
【0111】
(1)Polyethylene terephthalate(帝人化成社製 TR8550FF)(4)が物理的吸着により10重量%担持された充填剤の作製
Polyethylene terephthalate(4)0.4gを1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIPA)2.0mLとジクロロメタン2.0mLの混合溶液に溶解させた。その溶液を、表面を3−アミノプロピルトリエトキシシランで処理したコアシェル型シリカゲル(Advanced Materials Technology (AMT)社製、粒子径:2.7μm、細孔直径:16nm(カタログ値)、コアの直径:1.7μm、コアの材質:ガラス;シェルの厚さ:0.5μm、シェルの材質:シリカゲル(ポリアルコキシシロキサンの加水分解物)から既知の方法に従い製)3.6gに均一に塗布した後に、HFIPAとジクロロメタンを減圧留去し、Polyethylene terephthalate(4)が10重量%担持された充填剤を作製した。
【0112】
(2)Polyethylene terephthalate(4)を化学結合した充填剤の作製
(1)で得られた充填剤2.5gを、200℃のオーブンにて3時間反応を行い、シリカゲル上への固定化を行った。HFIPAで洗浄し、乾燥させる。元素分析の結果から担持率は7.1%であった。
【0113】
(3)Polyethylene terephthalate(4)を化学結合した充填剤用いた充填カラムの作製
(2)で作製された担持型充填剤をφ0.21cm×L15cmのステンレス製カラムにスラリー充填法により、加圧、充填を行いカラムの作製を行った。
【0114】
<実施例7>
(S)-[1,2-[6-(5-Carboxypentanoyl)]-(3-phenylnaphtho)]-[1',2'-(3'-phenylnaphtho)]-1,6,9,12,15,18-hexaoxa-cycloeicosa-2,4-dieneを化学結合した充填剤の製造法及び充填カラムの作製法
【0115】
(1)(S)-[1,2-[6-(5-Carboxypentanoyl)]-(3-phenylnaphtho)]-[1',2'-(3'-phenylnaphtho)]-1,6,9,12,15,18-hexaoxa-cycloeicosa-2,4-diene(5)の合成
キラルクラウンエーテル(5)は、特許文献12の実施例の[0057]〜[0064]に記載された方法で合成した。
【0116】
【化9】
【0117】
(2)(S)-[1,2-[6-(5-Carboxypentanoyl)]-(3-phenylnaphtho)]-[1',2'-(3'-phenylnaphtho)]-1,6,9,12,15,18-hexaoxa-cycloeicosa-2,4-diene(5)を化学結合した充填剤の作製
表面を3−アミノプロピルトリエトキシシランで処理したコアシェル型シリカゲル(Advanced Materials Technology (AMT)社製、粒子径:2.7μm、細孔直径:16nm(カタログ値)、コアの直径:1.7μm、コアの材質:ガラス;シェルの厚さ:0.5μm、シェルの材質:シリカゲル(ポリアルコキシシロキサンの加水分解物)から既知の方法に従い製造)1.97gにキラルクラウンエーテル(5)0.21g、O-(7-Azabenzotriazol-1-yl)-N,N,N',N'-tetramethyluroniumhexafluorophosphate0.16g及び N−メチルモルホリン42μLをN,N−ジメチルホルムアミド15mLに溶解させて加え、室温で4時間反応を行った。希塩酸/メタノール溶液、N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄する。得られた充填剤をN,N−ジメチルホルムアミド15mLに分散し、ピリジン3.2g、無水酢酸1.87gを加え、室温で3時間反応を行った。N,N−ジメチルホルムアミド、メタノールで洗浄し、乾燥させる。元素分析の結果から担持率は7.1%であった。
【0118】
(3)(S)-[1,2-[6-(5-Carboxypentanoyl)]-(3-phenylnaphtho)]-[1',2'-(3'-phenylnaphtho)]-1,6,9,12,15,18-hexaoxa-cycloeicosa-2,4-diene(5)を化学結合した充填剤を用いた充填カラムの作製
(2)で作製された担持型充填剤をφ0.21cm×L15cmのステンレス製カラムにスラリー充填法により、加圧、充填を行いカラムの作製を行った。
【0119】
<実施例8>
Human serum albumin(HSA)を化学結合した充填剤の製造方法及び充填カラムの作製方法
(1)Human serum albumin(HSA)を化学結合した充填剤の作製
表面を3−アミノプロピルトリエトキシシランで処理したコアシェル型シリカゲル(Advanced Materials Technology (AMT)社製、粒子径:2.7μm、細孔直径:16nm(カタログ値)、コアの直径:1.7μm、コアの材質:ガラス;シェルの厚さ:0.5μm、シェルの材質:シリカゲル(ポリアルコキシシロキサンの加水分解物)から既知の方法に従い製造)1.0gおよびN,N‘−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)1.0gをアセトニトリル50mLに溶解させた溶液に懸濁し、30℃で17時間攪拌した。その溶液をろ過して、アセトニトリル、水、メタノール、アセトニトリルの順に洗浄した。ろさいを乾燥してN−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)活性化シリカゲルを得た。
得られたNHS活性化シリカゲル0.5gを20mMリン酸塩緩衝液(pH6.8) 20mLに入れ、HSA(SIGMA−ALDRICH、 純度≧99%)30mgを20mMリン酸塩緩衝液(pH6.8)20mLに溶解した溶液をpH6.8に維持しながら30分かけて掛けて加え、4℃で17時間攪拌した。その溶液をろ過をして、水100mLで洗浄した。ろさいに塩酸グルコサミン 1.4gを20mMリン酸緩衝液(pH6.8)20mLに溶解した溶液を加え、室温で1時間攪拌した。その溶液をろ過して、水、10%エタノール水の順に洗浄することによりHSAを固定化させた充填剤を得た。Bradford法により反応ろ液中のHSAを定量した結果から担持率は3.5%であった。
【0120】
(2)Human serum albumin(HSA)を化学結合した充填剤を用いた充填カラムの作製
(1)で作製された担持型充填剤をφ0.21cm×L15cmのステンレス製カラムにスラリー充填法により、加圧、充填を行いカラムの作製を行った。
【0121】
<応用例2>
実施例2で作製された光学異性体分離カラムを用い、液体クロマトグラフィー法により、上記で構造を示したtrans-Stylbene oxideを用いて光学異性体分離カラムのカラム性能の評価を行った。比較例1として、実施例2に記載の方法で全多孔型シリカゲル(粒子径:3μm、細孔直径:30nm)にCellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(1)を10重量%担持させた充填剤(元素分析の結果から担持率は8.6%であった。)を用いた光学異性体分離カラムのカラム性能(k'値、α値、N値)を示した。なお、評価条件は実施例2及び比較例1のいずれにおいても移動相としてn−ヘキサン/2−プロパノール=90/10を用い、流速を0.15mL/min.、温度を25℃に設定した。
【0122】
<応用例3>
実施例3で作製された光学異性体分離カラムを用い、液体クロマトグラフィー法により、trans-Stylbene oxideを用いて光学異性体分離カラムのカラム性能の評価を行った。比較例2として、実施例3に記載の方法で全多孔型シリカゲル(粒子径:3μm、細孔直径:30nm)にアルコキシシリル基を有するCellulose tris(3,5-dichlorophenylcarbamate)(2)を固定化させた充填剤(元素分析の結果から担持率は4.6%であった。)を用いた光学異性体分離カラムのカラム性能(t値、α値)を示した。なお、評価条件は実施例3及び比較例2のいずれにおいても移動相としてn−ヘキサン/2−プロパノール=90/10を用い、流速を0.15mL/min.、温度を25℃に設定した。
【0123】
【表2】
【0124】
<応用例4>
実施例5、6で作製された光学異性体分離カラムを用い、液体クロマトグラフィー法により、以下のo-terphenyl、m-terphenyl及びp-terphenylを用いてカラム性能(t値、α1値(o-terphenylとm-terphenylの分離係数)、α2値(m-terphenylとp-terphenylの分離係数))の評価を行った。比較例3として、実施例5に記載の方法で全多孔型シリカゲル(粒子径:3μm、細孔直径:12nm)にPolybutylene terephthalate(3)を固定化させた充填剤(元素分析の結果から担持率は8.5%であった。)を用いたカラムのカラム性能(t値、α1値、α2値)を示した。なお、評価条件は実施例5、実施例6及び比較例3のいずれにおいても移動相としてn−ヘキサン/2−プロパノール=100/1を用い、流速を0.15mL/min.、温度を25℃に設定した。
【0125】
【化10】
【0126】
【表3】
【0127】
<応用例5>
実施例7で作製された光学異性体分離カラムを用い、液体クロマトグラフィー法により、以下の化合物(Tyrosine、Alanine、Glutamic acid、α-amino-ε-caprolactam)を用いて光学異性体分離カラムのカラム性能の評価を行った。比較例4として、実施例7に記載の方法で全多孔型シリカゲル(粒子径:3μm、細孔直径:30nm)に(S)-[1,2-[6-(5-Carboxypentanoyl)]-(3-phenylnaphtho)]-[1',2'-(3'-phenylnaphtho)]-1,6,9,12,15,18-hexaoxa-cycloeicosa-2,4-diene(5)を化学結合した充填剤(元素分析の結果から担持率は9.1%であった。)を用いた光学異性体分離カラムのカラム性能(t値、α値)を示した。なお、評価条件は実施例7及び比較例4のいずれにおいても移動相として過塩素酸水溶液(pH1.5)/アセトニトリル=80/20を用い、流速を0.10mL/min.、温度を25℃に設定した。
【0128】
【化11】
【0129】
【表4】
【0130】
<応用例6>
実施例8で作製された光学異性体分離カラムを用い、液体クロマトグラフィー法により、以下に示した化合物(Hexobarbital)を用いて光学異性体分離カラムのカラム性能の評価を行った。比較例5として、実施例8に記載の方法で全多孔型シリカゲル(粒子径:5μm、細孔直径:12nm)にHuman serum albumin(HSA)を化学結合した充填剤(Bradford法により反応ろ液中のHSAを定量した結果から担持率は8.0%であった。)を用いた光学異性体分離カラムのカラム性能(t値、Rs値、N値)を示した。なお、評価条件は実施例8及び比較例5のいずれにおいても移動相として10mM酢酸アンモニウム水溶液(pH7.0)/2−プロパノール=95/5を用い、流速を0.10mL/min.、温度を25℃に設定した。
【0131】
【化12】
【0132】
【表5】