(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半導体ナノ結晶が、所定の波長の光を吸収した後、別個な波長の光を発することが可能であり、前記感光性素子が該別個な波長の光に感光性である、請求項1〜4のいずれか一項記載の分光器。
前記半導体ナノ結晶が、特定の検出器位置で入射する前記所定の波長の光を実質的に全て吸収するように、且つ別個な波長の光を発することが実質的に不可能であるように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項記載の分光器。
前記複数の検出器位置がフィルターを含み、該フィルターが、前記感光性素子の前に光が通る第一の半導体ナノ結晶を含み、該感光性素子が第二の半導体ナノ結晶を含む、請求項8記載の分光器。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(詳細な説明)
現在の分光器はかさばり、重く、高価で、精密で、使用するには複雑である。プリズム又は格子などの壊れやすい光学要素が必要なため、分光器は重く高価である。要素は、非常にきれいにして完全に位置合わせをしなければならず、そのために製造には費用がかかり装置は非常に壊れやすい。光学要素の位置が狂うと、修理するのは非常に複雑であり、メンテナンス費用が高くなる。該装置は、使用者にとって操作が非常に複雑であり得る。したがって、分光器は多くの用途にとって実用的ではない。全ての分野の全ての労働条件の人々が使用可能な、高価でなく、携帯可能で、使用が容易な分光器の必要性がある。例えば、小型で単純な分光器があれば、個人用紫外線曝露モニタリング装置の基礎を形成できるだろう。
【0029】
異なる波長の光の強度を同時に測定する、カメラなどの携帯可能な高価でない装置が存在するが、異なる波長のスペクトル分解能は非常に低く、そのためそのような装置は分光器とはみなされない。典型的な実験室等級の分光光度計は、1〜10nm台のスペクトル分解能を有するだろう。用途によっては、より低い分解能が許容され得る。多くの場合、分解能の要件が高いほど、装置はより高価になるだろう。
【0030】
そのような問題を克服する分光器は、ナノ結晶の物性及び光学的性質に基づき得る。直径が小さいナノ結晶は、物体の分子形態とバルク形態の中間の性質を有することがある。例えば、直径の小さい半導体材料に基づくナノ結晶は、3つの次元全てにおいて電子及びホールの両方の量子閉じ込めを示すことがあり、クリスタライトの大きさの低下と共に材料の有効バンドギャップの増加をもたらす。したがって、クリスタライトの大きさが低下するにつれて、ナノ結晶の光吸収及び発光のどちらも、青色へ、すなわち高エネルギーへシフトする。半導体ナノ結晶がフォトンを吸収すると、励起した電子-ホールペアが生じる。いくつかの場合、電子-ホールペアが再結合すると、半導体ナノ結晶はより長波長のフォトンを発する(ホトルミネセンス)。
【0031】
一般に、半導体ナノ結晶の吸収スペクトルは、量子閉じ込め半導体材料の有効バンドギャップに関連する波長での顕著なピークを特徴とする。バンドギャップは、ナノ結晶の大きさ、形状、材料、及びコンフィグレーションの関数である。フォトンの吸収及びバンドギャップ波長は、狭いスペクトル範囲におけるフォトンの放出につながり得る。言い換えると、ホトルミネセンススペクトルは、狭い半値全幅(FWHM)を有し得る。半導体ナノ結晶の吸収スペクトルは、バンドギャップよりも高いエネルギー(紫外へ)へ延びる強い幅広い吸収特徴も示す。
【0032】
種々の光学効果を利用して多様性を増やすのを助けることができ、これらの効果には、吸収、透過、反射率、光散乱、〜d増加、干渉、プラズモン効果、消光効果があり得るが、これらに限定されない。これらの効果を、上述の材料の全て又はそれらのサブセットと組み合わせることができる。これらの効果を、個別若しくは集合的に、全体として、又は部分的に利用できる。ナノ結晶分光器において、光を成分波長に分離するプリズム、格子、又は他の光学要素を含むことは不要である。むしろ、異なる波長に応答するナノ結晶が光検出器に使用されて、対応する波長の強度が測定される。各ナノ結晶は特定の狭い範囲の波長にのみ応答するだろうから、装置中の全ナノ結晶が入射光のスペクトル全体に照らされ得る。異なる応答プロファイルを有する多くの光検出器が、例えば光検出器アレイにおいて一緒に使用される場合、異なる波長又は波長領域の光強度についての情報を収集することができる。
【0033】
例えば、ナノ結晶構造から出てくる光が構造依存性になるように、各構造が同じ光を異なるように変えるようにさせることにより、ナノ結晶構造を多様化するには、ナノ結晶材料、形状、外面的形態、大きさ、コアシェル構造を変え、且つ/又は表面を化学修飾し、構造をドーピングし、膜厚、材料の濃度を変え、ナノ結晶と相互作用し得るか若しくはしないかもしれないが何らかの方法で、及び/又は他の吸収・発光修飾方法により生じる光を変えるだろう他の材料を加えることができる。構造は、最初に共に事前組立して次いで検出器に組み合わせても、直接検出器上に組み合わせてもよい。材料は、それ自体単独で又はポリマーなどのいくつかのカプセル化材料に埋め込まれて、薄膜にすることができる。
【0034】
図1Aに関して、装置10は、ハウジング110並びに光検出器120、130、及び140を含む分光器100を含む。第一の光検出器120は第一の複数のナノ結晶125を含み、それらは第一の波長の光に応答する。第二の光検出器130は第二の複数のナノ結晶135を含み、それらは第二の波長の光に応答する。第三の光検出器140は第三の複数のナノ結晶145を含み、それらは第三の波長の光に応答する。この点で「ある波長の光に応答する」は、複数のナノ結晶がピーク応答性を有する波長を意味し得る。例えば、それは、複数の物が吸収スペクトルに特徴的なバンドギャップ吸収特性を示す波長を意味し得る。
【0035】
第一、第二、及び第三の波長の光のうち少なくとも2つは、互いに異なっている。いくつかの場合で、複数のナノ結晶は、ある範囲の波長の光に応答性であり得る。先に議論された通り、ナノ結晶は、典型的には、特徴的なバンドギャップ吸収特性及びより広く、より高エネルギーの吸収特性を有する。ナノ結晶の2つの集団は、別個のバンドギャップ吸収波長を有するが、より広くより高エネルギーの吸収特性の波長において著しい重複を有することがある。そのため、第一の複数125及び第二の複数135は、重複する波長に応答性であることがある。いくつかの実施態様において、第一の複数125及び第二の複数135は、重複しない波長に応答性であることがある。
【0036】
半導体ナノ結晶の2つの集団が重複する波長の光を吸収する場合でも、異なる集団の応答性は、ある波長で異なることがある。特に、ある波長での吸光係数は、異なる集団で異なることがある。この点で、半導体ナノ結晶の異なる集団の例示的なスペクトルを示し、幅広く高エネルギーの吸収特性の(
図1B中、約450nm未満)吸光計数が異なる様子を表す
図1Bを参照されたい。特に、挿入図は、350での吸光係数が約5倍異なる2つの集団を表す。
【0037】
分光器100は追加の光検出器を含み得る。追加の光検出器は、光検出器120、130、若しくは140の複製でよく(すなわち、同じ波長又は波長範囲の光に応答性がある)、又は光検出器120、130、若しくは140と異なっていてよい(すなわち、異なる波長又は波長範囲(例えば、重複する波長範囲)の光に応答性がある)。
【0038】
分光器は、データ収集の間の種々の条件及び因子を考慮する1つ以上の計算アルゴリズムを利用して較正できる。アルゴリズムのある重要な役割は、異なる光検出器の応答をデコンボリュートすることである。ある例示的な実施態様において、分光器は500nm又はそれより短い波長に応答する第一の光検出器及び450nm又はそれより短い波長に応答する第二の光検出器を含む。この分光器を、400nmと500nmの光が同時に照らす場合を考えられたい。第一の光検出器からの信号は、入射光の両波長に対する応答からの寄与を含む。第二の光検出器からの信号は、400nmの光のみに対する応答からの寄与を含む。そのため、400nmの入射光の強度は、第二の光検出器の応答から直接決定できる。500nmの入射光の強度は、最初に400nmの入射光の強度を決定し、第一の光検出器の応答への400nmの入射光の寄与に基づいて第一の光検出器の応答を補正して(例えば、400nmの光に対する応答を差し引いて)決定することができる。
【0039】
アルゴリズムは、より多数の重複する波長範囲に応答する、より多数の光検出器に対して同様に作用する。あるナノ結晶の集団の吸収プロファイルより狭い、狭い波長範囲での強度が決定できる。より多くの光検出器が異なる重複する波長範囲に応答するほど、達成可能な波長分解能が高くなる(従来の格子系の分光器におけるスペクトル分解能に類似)。
【0040】
アルゴリズムが考慮できる他の条件及び因子には、光検出器応答プロファイル(例えば、異なる波長で、光がどれだけ効率的に検出器信号に変換されるか);特定の光検出器に存在するナノ結晶の数;異なるナノ結晶の吸収、発光、量子収率、及び外部量子効率(EQE)プロファイル;並びに種々の誤差及び/又は損失があるが、これらに限定されない。異なるナノ結晶を有する検出器の数が増加するほど、波長分解能が増加する。
【0041】
いくつかの光検出器構成を利用してナノ結晶分光器を製造できる。可能性のある構成の中には、光電池;光導電体;ダウンコンバージョン構成(down-conversion configuration);又はフィルタリング構成がある。これらのそれぞれは順番に記載される。一般に、ナノ結晶を光検出器の活性層に隣接して、且つ/又はその中に配置することにより、ナノ結晶は入射光プロファイルを変更する。ナノ結晶の吸収プロファイル及び入射光の強度プロファイルに応じて、入射するフォトンのいくらか又は全てがナノ結晶により吸収され得る。そのため、分光器中の個別の光検出器は、異なる波長範囲の入射光に異なるように応答できる。
【0042】
光電池構成において、各光検出器は光起電力セルを含み、そこで半導体ナノ結晶が活性層及び中心検出器要素として作用する。適切な波長の光が光起電力セルにより吸収されると光電流が生じる。ナノ結晶の有効バンドギャップより高いエネルギーを持つフォトンのみが光電流を生み出すだろう。したがって、光電流の強度は、バンドギャップより高いエネルギーを持つ入射光の強度が増すにつれて増加する。各光検出器の光電流は増幅及び分析されて、出力が生み出される。或いは、測定は、光電流の代りに光起電力セルで発生する光電圧に基づいてよい。例えば、引用により全体として組み込まれるWO2009/002305を参照されたい。
【0043】
光起電力セルは、異なる重複する周波数範囲に応答するナノ結晶の集団を含み得る。異なる光起電力セルの光起電力応答(例えば、光電流又は光電圧)は、スペクトル全体にわたる入射光の強度の変動により変わるだろう。上述の通り、これらの異なる応答から、アルゴリズムは、異なる波長範囲の入射光の強度をデコンボリュートできる。
【0044】
光起電力素子は、装置の2つの電極を分離する2つの層を含み得る。1つの層の材料は、ホールを輸送する材料の能力に基づいて選択でき、すなわちホール輸送層(HTL)である。その他の層の材料は、電子を輸送する材料の能力に基づいて選択でき、すなわち電子輸送層(ETL)である。電子輸送層は、典型的には吸収層を含み得る。電圧が印加され装置が照らされると、1つの電極がホール輸送層からホールを受け取り(正電荷キャリア)、他の電極は電子輸送層から電子を受け取る;ホール及び電子は、吸収性材料中で励起子として発生する。該装置は、HTLとETLの間に吸収層を含み得る。吸収層は、吸収波長又は線幅などのその吸収性に関して選択される材料を含み得る。
【0045】
光起電力素子は、
図2に示されるものなどの構造を有し得るが、ここで第一の電極2、電極2と接触している第一の層3、層3と接触している第二の層4、及び第二の層4と接触している第二の電極5。第一の層3はホール輸送層であり得るが、第二の層4は電子輸送層であり得る。少なくとも1層は非ポリマー性である。層は、無機材料を含み得る。構造の電極の1つは、基材1に接触している。各電極は電源に接触して、構造の両端に電圧を与えることができる。適切な極性及び大きさの電圧が装置の両端に印加される時、吸収層により光電流が生じ得る。第一の層3は複数の半導体ナノ結晶、例えば、ナノ結晶の実質的に単分散の集団を含み得る。
【0046】
ナノ結晶の実質的に単分散の集団は、単一の特性バンドギャップ吸収波長を有し得る。いくつかの実施態様において、1つ以上のナノ結晶の集団(例えば、異なるサイズ、異なる材料、又はその両方の)を組み合わせて、どちらの集団も単独で有するのとは異なる吸収プロファイルを有する、得られる集団を生み出すことができる。
【0047】
或いは、別な吸収層(
図2に示さず)を、ホール輸送層と電子輸送層の間に含ませることができる。別な吸収層は複数のナノ結晶を含み得る。ナノ結晶を含む層は、ナノ結晶の単層でも、ナノ結晶の多層でもよい。いくつかの場合において、ナノ結晶を含む層は、不完全な層、すなわちナノ結晶層に隣接する層が部分的に接触するように材料が無い領域を有する層でよい。ナノ結晶及び少なくとも1つの電極は、ナノ結晶から第一の電極又は第二の電極に電荷キャリアを移動させるに十分なバンドギャップオフセットを有する。電荷キャリアは、ホールでも電子でもよい。電極が電荷キャリアを移動させる能力により、光誘起電流が、光検出を容易にする方法で流れることができる。
【0048】
いくつかの実施態様において、光起電力素子は、例えば、HTLもETLもなく2つの電極及びナノ結晶を含む活性領域を有する単純なショットキー構造を有し得る。他の実施態様において、ナノ結晶は、HTL材料及び/又はETL材料とブレンドされて、バルクヘテロ接合装置構造を与え得る。
【0049】
半導体ナノ結晶を含む光起電力素子は、スピンキャスティング、ドロップキャスティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、又は半導体ナノ結晶を表面に適用する他の方法により製造することができる。堆積の方法は、用途のニーズに応じて選択できる。例えば、スピンキャスティングが大きい装置にとって好ましい一方で、マスキング技術又は印刷方法はより小型の装置の製造に好ましいことがある。特に、HTL有機半導体分子及び半導体ナノ結晶を含む溶液をスピンキャストすることができるが、その場合、HTLが相分離により半導体ナノ結晶単層の下に形成した(例えば、それぞれ引用により全体として組み込まれる米国特許第7,332,211号及び同第7,700,200号を参照されたい)。この相分離技術は、再現性よく、半導体ナノ結晶の単層を有機半導体HTLとETLの間に配置し、それにより半導体ナノ結晶の好都合な光吸収性を効果的に利用すると同時に、電気的性能へのその影響を最低限にした。この技術により製造された装置は、半導体ナノ結晶と同じ溶媒に可溶性である有機半導体分子を使用する必要性により、溶媒中の不純物により制限を受けた。相分離技術は、半導体ナノ結晶の単層をHTL及びHILの両方の上に堆積するには不適であった(溶媒が、下にある有機薄層を破壊するため)。相分離方法は、同じ基材上で異なる色を発する半導体ナノ結晶の位置の制御も不可能であった。同じ基材上で異なる色を発するナノ結晶のパターニングも不可能であった。
【0050】
さらに、輸送層(すなわち、ホール輸送層、ホール注入層、又は電子輸送層)に使用される有機材料は、吸収層に使用される半導体ナノ結晶より安定性が低くなり得る。その結果、有機材料の作動寿命が装置の寿命を限定する。輸送層中により長寿命の材料を持つ装置を使用して、より長持ちする発光装置を形成できる。
【0051】
基材は不透明でも透明でもよい。透明な基材を透明な装置の製造に使用できる。例えば、それぞれ引用によりその全体として組み込まれるBulovic, V.らの文献、Nature 1996, 380, 29;及びGu, G.らの文献、Appl. Phys. Lett. 1996, 68, 2606-2608を参照されたい。基材は剛直でも柔軟性でもよい。基材は、プラスチックでも、金属でも、ガラスでもよい。第一の電極は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)層などの仕事関数の高いホール注入伝導体であり得る。他の第一の電極材料は、ガリウムインジウムスズオキシド、亜鉛インジウムスズオキシド、窒化チタン、又はポリアニリンを含み得る。第二の電極は、例えば、Al、Ba、Yb、Ca、リチウム-アルミニウム合金(Li:Al)、又はマグネシウム-銀合金(Mg:Ag)などの、仕事関数の低い(例えば、4.0eV未満)、電子注入金属であり得る。Mg:Agなどの第二の電極は、不透明な保護金属層、例えば、カソード層を大気による酸化から保護するAgの層、又は実質的に透明なITOの比較的薄い層により覆われていてよい。第一の電極は、約500オングストローム〜4000オングストロームの厚さを有し得る。第一の層は、100オングストローム〜100nm、100nm〜1マイクロメートル、又は1マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲の厚さなど、約50オングストローム〜約5マイクロメートルの厚さを有し得る。第二の層は、100オングストローム〜100nm、100nm〜1マイクロメートル、又は1マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲の厚さなど、約50オングストローム〜約5マイクロメートルの厚さを有し得る。第二の電極は、約50オングストローム〜約1000オングストローム超の厚さを有し得る。
【0052】
ホール輸送層(HTL)又は電子輸送層(ETL)は無機半導体などの無機材料を含み得る。無機半導体は、発光材料の発光エネルギーより大きいバンドギャップを有する任意の材料でよい。無機半導体は、金属酸化物、金属硫化物、金属セレニド、金属テルリド、金属窒化物、金属リン化物、金属ヒ化物、又は金属ヒ化物などの金属カルコゲニド、金属プニクチド、又は元素半導体を含み得る。例えば、無機材料は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化インジウムスズ、酸化銅、酸化ニッケル、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化アルミニウム、酸化タリウム、酸化ケイ素、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化カドミウム、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、酸化オスミウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、テルル化亜鉛、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、テルル化カドミウム、硫化水銀、セレン化水銀、テルル化水銀、炭化ケイ素、ダイアモンド(炭素)、ケイ素、ゲルマニウム、窒化アルミニウム、リン化アルミニウム、ヒ化アルミニウム、アンチモン化アルミニウム、窒化ガリウム、リン化ガリウム、ヒ化ガリウム、アンチモン化ガリウム、窒化インジウム、リン化インジウム、ヒ化インジウム、アンチモン化インジウム、窒化タリウム、リン化タリウム、ヒ化タリウム、アンチモン化タリウム、硫化鉛、セレン化鉛、テルル化鉛、硫化鉄、セレン化インジウム、硫化インジウム、テルル化インジウム、硫化ガリウム、セレン化ガリウム、テルル化ガリウム、セレン化スズ、テルル化スズ、硫化スズ、硫化マグネシウム、セレン化マグネシウム、テルル化マグネシウム、又はこれらの混合物を含み得る。金属酸化物は、例えばITOなどの混合金属酸化物でよい。装置の中で、純粋な金属酸化物(すなわち、単一の実質的に純粋な金属の金属酸化物)の層は、時間とともに結晶性の領域を生じさせて装置の性能を低下させることがある。混合金属酸化物はそのような結晶性の領域を形成する傾向が少なく、純粋な金属酸化物により利用可能なよりも長い装置寿命を与えることができる。金属酸化物はドープされた金属酸化物でよく、この場合、ドーピングは、例えば、酸素欠乏、ハロゲンドーパント、又は混合金属である。無機半導体はドーパントを含み得る。一般に、ドーパントは、p型又はn型ドーパントでよい。HTLはp型ドーパントを含み得る一方で、ETLはn型ドーパントを含み得る。
【0053】
装置中の半導体ナノ結晶への電荷輸送のために単結晶無機半導体が提案されてきた。単結晶無機半導体は、被覆すべき基材を高温に加熱することを要する技術により堆積される。しかし、最上層半導体はナノ結晶層上に直接堆積されなければならないが、ナノ結晶層は高温プロセスに対して強固でなく、手軽なエピタキシャル成長に好適でもない。エピタキシャル技術(化学気相成長)は製造にコストがかかることがあり、一般に、大きい面積(すなわち、直径12インチより大きいウェハ)を覆うのに利用することはできない。
【0054】
好都合には、無機半導体は、例えばスパッタリングにより低温で基材に堆積できる。スパッタリングは、低圧ガス(例えばアルゴン)に高電圧を印加して、高エネルギー状態の電子とガスイオンのプラズマを作り出すことにより実施される。エネルギーが与えられたプラズマイオンは所望の被膜材料のターゲットに当たり、そのターゲットから、基材まで移動して基材と結合するのに充分なエネルギーと共に原子を放出させる。
【0055】
製造されている基材又は装置は、成長プロセスの間温度制御のために冷却又は加熱される。温度は、堆積される材料の結晶性並びにそれが堆積しつつある表面とどのように相互作用するかに影響を与える。堆積される材料は多結晶でも非晶質でもよい。堆積される材料は、10オングストローム〜1マイクロメートルの範囲の大きさの結晶性領域を有し得る。ドーピング濃度は、スパッタリングプラズマに使用されるガス又はガスの混合物を変えることにより制御できる。ドーピングの性質及び程度は、堆積された膜の伝導度並びに近傍の励起子を消光させるその能力に影響し得る。ある材料を他の材料の上で成長させることにより、p-n又はp-i-nダイオードを作り出すことができる。装置は、半導体ナノ結晶単層への電荷の伝達に対して最適化できる。
【0056】
層は、スピンコーティング、ディップコーティング、蒸着、スパッタリング、又は他の薄膜堆積法により電極の1つの表面に堆積できる。第二の電極は、固体層の露出表面にはさみ、スパッタリングし、又は蒸発させることができる。電極の一方又は両方はパターニングできる。装置の電極は、導電性経路により電圧源に接続することができる。電圧を印加すると同時に、装置から光が発せられる。
【0057】
マイクロコンタクトプリンティングは、基材上の定義済みの領域に材料を適用する方法を提供する。定義済みの領域は、材料が選択的に適用される基材上の領域である。材料及び基材は、材料が定義済みの領域内に実質的に全体に留まるように選択できる。パターンを形成する定義済みの領域を選択することにより、材料がパターンを形成するように材料を基材に適用できる。パターンは規則正しいパターンでも(アレイ又は一連の線など)、不規則なパターンでもよい。材料のパターンが基材上に形成されると、基材は材料を含む領域(定義済みの領域)及び実質的に材料のない領域を有し得る。いくつかの状況で、材料は基材上に単層を形成する。定義済みの領域は、不連続な領域でよい。言い換えると、材料が基材の定義済みの領域に適用される場合、材料を含む位置は、実質的に材料を含まない他の位置により分離されていてよい。
【0058】
一般に、マイクロコンタクトプリンティングは、パターン化された型を形成することで始まる。型は、隆起及びくぼみのパターンを持つ表面を有する。例えば、型のパターン化された表面を液体ポリマー前駆体で被覆し、パターン化された型の表面と接触している間に硬化させることにより、隆起及びくぼみの相補的なパターンを持つスタンプが形成される。次いで、スタンプにインクを付けることができる。すなわち、スタンプを、基材上に堆積させる材料と接触させる。材料は、スタンプに可逆的に付着するようになる。次いで、インクの付いたスタンプを基材と接触させる。スタンプの隆起した領域は基材と接触できるが、スタンプのくぼんだ領域は基材とは離れていることができる。インクの付いたスタンプが基材に接触した場所では、インク材料(又は少なくともその一部)がスタンプから基材に移る。このようにして、隆起とくぼみのパターンがスタンプから基材に、基材上で材料を含む領域及び材料のない領域として移動する。マイクロコンタクトプリンティング及び関連技術は、例えば、それぞれ引用により全体として組み込まれている米国特許第5,512,131号;同第6,180,239号;及び同第6,518,168号に記載されている。いくつかの状況では、スタンプは、インクがスタンプに適用される時にパターンが形成される、インクのパターンを有する特色のない(featureless)スタンプであり得る。引用により全体として組み込まれている米国特許出願公開第2006/0196375号を参照されたい。さらに、インクは、スタンプから基材へのインクの移動の前に処理(例えば、化学的又は熱的に)できる。このようにして、パターン化されたインクは、基材とは不適合な条件に曝露させることができる。
【0059】
個別の装置を、単一の基材上で多数の位置で形成して、光電池アレイを形成することができる。いくつかの用途において、基材はバックプレーンを含み得る。バックプレーンは、個別のアレイ要素に出入りする電力の制御又は切り替えのための能動又は受動電気回路を含む。バックプレーンを含めることは、ディスプレイ、センサー、又はイメージャーなどの用途に有用になり得る。特に、バックプレーンは、アクティブマトリックス、単純マトリックス、固定フォーマット、ダイレクトドライブ(directly drive)、又はハイブリッドとして構成することができる。引用によりその全体として組み込まれる米国特許出願公開第2006/0196375号を参照されたい。
【0060】
装置を形成するために、例えば、NiOなどのp型半導体を、酸化インジウムスズ(indium time oxide)(ITO)などの透明電極上に堆積できる。透明電極を、透明基材上に配置できる。次いで、半導体ナノ結晶が、マイクロコンタクトプリンティング又はラングミュア・ブロジェット(LB)技術などの大面積適合性の単一単層堆積技術を利用して堆積される。その後に、n型半導体(例えば、ZnO又はTiO
2)が、例えばスパッタリングによりこの層の上に適用される。金属又は半導体電極をこの上に適用して、装置を完成させることができる。より複雑な装置構造も可能である。例えば、軽くドープした層を、ナノ結晶層に隣接して含ませることができる。
【0061】
2つの輸送層を別々に成長させ、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのエラストマーを使用して電気接点を物理的に適用することにより、装置を組み立てることができる。これにより、ナノ結晶層上に材料を直接堆積させる必要が回避される。
【0062】
装置は、輸送層全てを適用した後熱処理することができる。熱処理は、ナノ結晶からの電荷の分離をさらに増大させ、並びにナノ結晶上の有機キャッピング基をなくすことができる。キャッピング基の不安定性は、装置の不安定性の一因になり得る。
図3A〜3Eは、可能な装置の構造を示す。それらは、標準的なp-nダイオードデザイン(
図3A)、p-i-nダイオードデザイン(
図3B)、透明装置(
図3C)、反転した装置(
図3D)、及び柔軟な装置(
図3E)である。柔軟な装置の場合、すべり層、すなわち金属酸化物/金属/金属酸化物型の3層構造を、単層金属酸化物層のそれぞれに対して組み込むことが可能である。これは、透明性を保ちながら、金属酸化物薄膜の柔軟性を増加させ、導電性を増加させることが示された。これは、金属層、典型的には銀が非常に薄く(それぞれおよそ12nm)、そのために光を多く吸収しないためである。
【0063】
光導電体構成において、ナノ結晶自体は活性層及び中心の検出器要素である。フォトンがナノ結晶バンドギャップより高いエネルギーを有する場合、励起子が形成され、電荷分離が起こる。分離した電荷キャリアはナノ結晶層(複数可)の伝導性を増加させる。ナノ結晶層(複数可)の両端に電圧を印加することにより、装置の伝導性を測定できる。光導電体により吸収されるナノ結晶バンドギャップより高いエネルギーを有するフォトンの数に伴い、伝導性は増加する。例えば、引用により全体として組み込まれる米国特許出願公開第2010/0025595号を参照されたい。
【0064】
光導電体セルは、異なる、重複する波長範囲に応答するナノ結晶の集合を含み得る。異なる光導電体の光伝導性応答は、スペクトル全体の入射光の強度の変動によって異なるだろう。上述の通り、これらの異なる応答から、アルゴリズムは、異なる波長範囲の入射光の強度をデコンボリュートできる。
【0065】
電気光学素子は、
図2又は
図4Aに示されるものなどの構造を有し得るが、第一の電極2、電極2に接触する第一の層3、第一の層3に接触する第二の層4、及び第二の層4に接触する第二の電極5。第一の層3はホール輸送層のことがあり、第二の層4は電子輸送層のことがある。少なくとも1層は非ポリマー性でよい。層は、有機材料を含んでも、無機材料を含んでもよい。構造の電極のうち1つは、基材1と接触している。各電極は、電源に接触して、構造の両端に電圧を与えることができる。適切な極性及び大きさの電圧が層の両端に印加され、適切な波長の光が装置を照らす時、装置により光電流(すなわち、放射の吸収に応答して生じた電流)が生じ得る。第二の層4は、複数の半導体ナノ結晶、例えば、実質的に単分散のナノ結晶の集団を含み得る。任意に、電子輸送層6が、電極5と第二の層4の間に配置される(
図4A参照)。
【0066】
或いは、別な吸収層(
図2に示さず)を、ホール輸送層と電子輸送層の間に含めてよい。別な吸収層は複数のナノ結晶を含み得る。ナノ結晶を含む層は、ナノ結晶の単層でも、ナノ結晶の多層でもよい。いくつかの場合に、ナノ結晶を含む層は、不完全な層、すなわちナノ結晶層に隣接する層が部分的に接触するように材料が無い領域を有する層でよい。ナノ結晶及び少なくとも1つの電極は、ナノ結晶から第一の電極又は第二の電極に電荷キャリアを移動させるに十分なバンドギャップオフセットを有する。電荷キャリアは、ホールでも電子でもよい。電極が電荷キャリアを移動させる能力により、光誘起電流が、光検出を容易にする方法で流れるようになる。
【0067】
他の実施態様において、光導電体は、半導体ナノ結晶を含む活性領域により分離された2つの電極を有する、
図4Bに示される平面構造を有し得る。同様に、装置は、HTL及び/又はETL材料を省略でき、単純に2つの電極及び半導体ナノ結晶を含む活性領域を含み得る。他の実施態様において、ナノ結晶は、HTL材料及び/又はETL材料とブレンドできる。
【0068】
基材は不透明でも透明でもよい。基材は、剛直でも柔軟性でもよい。第一の電極は、約500オングストローム〜4000オングストロームの厚さを有し得る。第一の層は、100オングストローム〜100nm、100nm〜1マイクロメートル、又は1マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲の厚さなど、約50オングストローム〜約5マイクロメートルの厚さを有し得る。第二の層は、100オングストローム〜100nm、100nm〜1マイクロメートル、又は1マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲の厚さなど、約50オングストローム〜約5マイクロメートルの厚さを有し得る。第二の電極は、約50オングストローム〜約1000オングストローム超の厚さを有し得る。電極のそれぞれは、金属、例えば、銅、アルミニウム、銀、金、若しくは白金、又はこれらの組み合わせ、酸化インジウム若しくは酸化スズなどのドープされた酸化物、又はドープされた半導体、例えば、p-ドープシリコンなどの半導体でよい。
【0069】
電子輸送層(ETL)は分子マトリックスであり得る。分子マトリックスは非ポリマー性であり得る。分子マトリックスは、小分子、例えば、金属錯体を含み得る。例えば、金属錯体は、8-ヒドロキシキノリンの金属錯体であり得る。8-ヒドロキシキノリンの金属錯体は、アルミニウム、ガリウム、インジウム、亜鉛、又はマグネシウム錯体、例えば、アルミニウムトリス(8-ヒドロキシキノリン)(Alq
3)であり得る。ETL中の他のクラスの材料は、金属チオキシノイド(thioxinoid)化合物、オキサジアゾール金属キレート、トリアゾール、セキシチオフェン誘導体、ピラジン、及びスチリルアントラセン誘導体を含み得る。ホール輸送層は有機発色団を含み得る。有機発色団は、例えば、N,N'-ジフェニル-N,N-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジアミン(TPD)などのフェニルアミンであり得る。HTLは、ポリアニリン、ポリピロール、ポリ(フェニレンビニレン)、銅フタロシアニン、芳香族第三級アミン、又は多核芳香族第三級アミン、4,4'-ビス(9-カルバゾリル)-1,1'-ビフェニル化合物、又はN,N,N',N'-テトラアリールベンジジンであり得る。いくつかの場合、HTLは2つ以上のホール輸送材料を含み得るが、それらは混ざり合っていても、別個の層にあってもよい。
【0070】
いくつかの実施態様において、装置は、別な電子輸送層なしに製造できる。そのような装置において、半導体ナノ結晶を含み得る吸収層は電極に隣接している。吸収層に隣接した電極は、好都合には、充分に伝導性であり電極としても有用な半導体材料であり得る。酸化インジウムスズ(ITO)は好適な一材料である。
【0071】
装置は、制御された(酸素がなく湿気のない)環境で製造でき、それは製造プロセスの間の装置材料の完全性維持に役立ち得る。他の多層構造を利用して、装置性能を高めることができる(例えば、それぞれ引用により全体として組み込まれる米国特許出願公開第2004/0023010号及び同第2007/0103068号参照)。電子ブロッキング層(EBL)、ホールブロッキング層(HBL)、又はホール電子ブロッキング層(eBL)などのブロッキング層を構造に導入できる。ブロッキング層は、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-tert-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール(TAZ)、3,4,5-トリフェニル-1,2,4-トリアゾール、3,5-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-1,2,4-トリアゾ、バソクプロイン(BCP)、4,4',4''-トリス{N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ}トリフェニルアミン(m-MTDATA)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、1,3-ビス(5-(4-ジフェニルアミノ)フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼン、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、1,3-ビス[5-(4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン、1,4-ビス(5-(4-ジフェニルアミノ)フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)ベンゼン、又は1,3,5-トリス[5-(4-(1,1-ジメチルエチル)フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼンを含み得る。
【0072】
ダウンコンバージョン構成において、ナノ結晶は中心コンバージョン要素ではないが、入射光プロファイルを変化させるのに重要な要素である。先に議論された通り、半導体ナノ結晶は特定波長の光を吸収し、その後より長波長の光を発する。発光は、ナノ結晶の大きさ及び組成に対する固有波長であり、ナノ結晶集団の性質によって狭いFWHMを有し得る。
【0073】
ナノ結晶を光検出器(例えば、広い範囲の波長に応答し得る光検出器)の活性層に隣接して配置することにより、ナノ結晶は入射光プロファイルを変更する。入射フォトンの一部又は全てがナノ結晶により吸収されることがあり(ナノ結晶の吸収プロファイル及び入射光の強度プロファイルによって)、光検出器に到達する前に固有波長で発せられる。このようにして、光検出器に入射するフォトンは、装置に一般的に入射するフォトンとは異なる波長プロファイルを有する。異なるナノ結晶は、入射フォトンが同じであると仮定して、その結果得られる異なるプロファイルを生み出し得る。例えば、引用により全体として組み込まれるWO2007/136816を参照されたい。
【0074】
装置は、ダウンコンバージョン構成において、以下のようなピクセル構造を有し得る:ナノ結晶の薄層が、従来の検出器ピクセルの透明面の上に配置される。入射フォトン(例えば、紫外フォトン)はナノ結晶により吸収され、それは、より長波長(ダウンコンバートされた波長)の光(例えば、可視光又は赤外線波長)を発する。発光の強度は、ナノ結晶層により吸収されるべき適切なエネルギーの入射フォトンの強度に関連する(入射強度とダウンコンバートされた強度の関係における重要な因子は、ナノ結晶の量子効率である)。ダウンコンバートされたフォトンは従来の光検出器により検出され、入射フォトンの強度が測定される。
【0075】
装置の個々のピクセルは従来の集積回路装置上に配置できる;各ピクセルは、選択された波長の光に応答するナノ結晶を有する。異なるピクセルが異なる波長の光に応答するナノ結晶を有する複数のピクセルを与えることにより、より大きな装置が、電磁スペクトルの所望の部分、例えば、スペクトルの紫外、可視、又は赤外領域内のスペクトルの所望の部分にわたる入射フォトンの強度を測定できる。
【0076】
フィルタリング構成において、ナノ結晶は中心的なコンバージョン要素ではないが、入射光プロファイルを変更するのに重要な要素である。この構成において、ナノ結晶は、ナノ結晶からの発光が抑制されるような方法で製造される。ナノ結晶の吸収性は、実質的に変化しないままである。装置構造はダウンコンバージョン構成の物に類似であるが、各ピクセルは、ダウンコンバージョン構成に使用されるものより、ナノ結晶の薄い層を有し得る。
【0077】
ナノ結晶層は、特定のエネルギー以上で入ってくるナノ結晶の大部分を吸収する。エネルギーレベルは、ナノ結晶の吸収プロファイル及び膜の厚さに依存する。他の構成と同様に、異なる光学的性質(本明細書では、異なる吸収プロファイル)を有する異なるナノ結晶を、異なるピクセル上に堆積させることができる。ナノ結晶膜はフィルターのように作用し、入射光のスペクトルの異なる部分を遮る。このようにして、ピクセルは、スペクトルの異なる部分を測定できる。
【0078】
半導体ナノ結晶は、その発光性において量子閉じ込め効果を示す。半導体ナノ結晶が一次エネルギー源により照らされる場合、二次的なエネルギー放出が、ナノ結晶に使用されている半導体材料のバンドギャップに関連する周波数で起こる。量子閉じ込めされた粒子において、該周波数は、ナノ結晶の大きさにも関連する。
【0079】
ナノ結晶を形成する半導体は、II-VI族化合物、II-V族化合物、III-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、I-III-VI族化合物、II-IV-VI族化合物、又はII-IV-V族化合物、例えば、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、Cd
3As
2、Cd
3P
2、又はこれらの混合物を含み得る。
【0080】
一般に、ナノ結晶を製造する方法は、コロイド成長プロセスである。例えば、それぞれ引用により全体として組み込まれる米国特許第6,322,901号、同第6,576,291号、及び同第7,253,452号、2010年8月24日に出願された米国特許出願第12/862,195号を参照されたい。M-含有化合物及びXドナーが、熱い配位溶媒に急速に注入される時、コロイド成長が起こり得る。配位溶媒はアミンを含み得る。M-含有化合物は、金属、M-含有塩、又はM-含有有機金属化合物であり得る。注入により核ができ、それが制御された方法で成長してナノ結晶を形成できる。反応混合物を穏やかに加熱して、ナノ結晶を成長及びアニールすることができる。試料中のナノ結晶の平均サイズとサイズ分布は両方とも成長温度に依存する。いくつかの状況において、定常的な成長を維持するのに必要な成長温度は、平均結晶サイズの増加と共に増加する。ナノ結晶はナノ結晶の集団の一員である。別個の核形成及び制御された成長の結果として、得られるナノ結晶の集団は、狭い単分散の直径分布を有する。直径の単分散分布は、サイズとも称され得る。核形成の後の配位溶媒中でのナノ結晶の制御された成長及びアニーリングのプロセスは、均一な表面誘導体化及び規則的なコア構造も生み出すことがある。サイズ分布が鋭くなるにつれて、温度を上げて定常的な成長を維持することができる。より多くのM-含有化合物又はXドナーを加えることにより、成長期間を短縮できる。初期の注入の後により多くのM-含有化合物又はXドナーを加える場合、添加は、例えば、間隔をあけて加えられるいくつかの個別な量で比較的ゆっくりと、又はゆっくりとした連続的な添加になり得る。導入は、配位溶媒及びM-含有化合物を含む組成物の加熱、第一の量のXドナーの組成物への急速な添加、及び第二の量のXドナーのゆっくりとした添加を含み得る。第二の量をゆっくり添加することは、第二の量の実質的に連続的なゆっくりとした添加を含み得る。例えば、引用により全体として組み込まれる2012年1月11日に出願された米国特許出願第13/348,126号を参照されたい。
【0081】
M-含有塩は非有機金属化合物、例えば、金属-炭素結合がない化合物であり得る。Mは、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、又は鉛でよい。M-含有塩は、金属ハライド、金属カルボキシレート、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、又は金属アセチルアセトネートなどの金属ジケトネートでよい。M-含有塩は、金属アルキルなどの有機金属化合物を使用するよりも高価でなく、より安全である。例えば、M-含有塩は空気中で安定であるが、金属アルキルは一般的に空気中で不安定である。M-含有塩、例えば、2,4-ペンタンジオネート(すなわちアセチルアセトネート(acac))、ハライド、カルボキシレート、水酸化物、酸化物、炭酸塩は空気中で安定であり、対応する金属アルキルよりも過酷でない条件でナノ結晶を製造できるようにする。いくつかの場合で、M-含有塩は、長鎖カルボキシレート塩、例えば、C
8以上の(C
8〜C
20、又はC
12〜C
18)、直鎖又は分岐鎖の、飽和又は不飽和のカルボキシレート塩であり得る。そのような塩は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、又はアラキドン酸のM-含有塩を含む。
【0082】
好適なM-含有塩は、カドミウムアセチルアセトネート、ヨウ化カドミウム、臭化カドミウム、塩化カドミウム、水酸化カドミウム、炭酸カドミウム、酢酸カドミウム、ミリスチン酸カドミウム、オレイン酸カドミウム、酸化カドミウム、亜鉛アセチルアセトネート、ヨウ化亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、酸化亜鉛、マグネシウムアセチルアセトネート、ヨウ化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水銀アセチルアセトネート、ヨウ化水銀、臭化水銀、塩化水銀、水酸化水銀、炭酸水銀、酢酸水銀、ミリスチン酸水銀、オレイン酸水銀、アルミニウムアセチルアセトネート、ヨウ化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、ガリウムアセチルアセトネート、ヨウ化ガリウム、臭化ガリウム、塩化ガリウム、水酸化ガリウム、炭酸ガリウム、酢酸ガリウム、ミリスチン酸ガリウム、オレイン酸ガリウム、インジウムアセチルアセトネート、ヨウ化インジウム、臭化インジウム、塩化インジウム、水酸化インジウム、炭酸インジウム、酢酸インジウム、ミリスチン酸インジウム、オレイン酸インジウム、タリウムアセチルアセトネート、ヨウ化タリウム、臭化タリウム、塩化タリウム、水酸化タリウム、炭酸タリウム、酢酸タリウム、ミリスチン酸タリウム、又はオレイン酸タリウムを含む。
【0083】
M-含有塩をXドナーと組み合わせる前に、M-含有塩を配位溶媒と接触させて、M-含有前駆体を形成できる。典型的な配位溶媒は、アルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド、アルキルホスホン酸、又はアルキルホスフィン酸を含む。しかし、ピリジン、フラン、及びアミンなどの他の配位溶媒も、ナノ結晶製造に好適になり得る。好適な配位溶媒の例は、ピリジン、トリ-n-オクチルホスフィン(TOP)、及びトリ-n-オクチルホスフィンオキシド(TOPO)を含む。工業グレードのTOPOを使用できる。配位溶媒は、1,2-ジオール又はアルデヒドを含み得る。1,2-ジオール又はアルデヒドは、M-含有塩とXドナーの間の反応を促進し、成長プロセス及び該プロセスで得られるナノ結晶の質を高めることができる。1,2-ジオール又はアルデヒドは、C
6-C
201,2-ジオール又はC
6-C
20アルデヒドであり得る。好適な1,2-ジオールは、1,2-ヘキサデカンジオール又はミリストール(myristol)であり、好適なアルデヒドは、ドデカナール、ミリスチン酸アルデヒドである。
【0084】
Xドナーは、M-含有塩と反応して、一般式MXの物質を形成することができる化合物である。典型的には、Xドナーは、ホスフィンカルコゲニド、ビス(シリル)カルコゲニド、ジオキシジェン、アンモニウム塩、又はトリス(シリル)プニクチドなどのカルコゲニドドナー又はプニクチドドナーである。好適なXドナーは、ジオキシジェン、元素状硫黄、ビス(トリメチルシリル)セレニド((TMS)
2Se)、(トリ-n-オクチルホスフィン)セレニド(TOPSe)又は(トリ-n-ブチルホスフィン)セレニド(TBPSe)などのトリアルキルホスフィンセレニド、(トリ-n-オクチルホスフィン)テルリド(TOPTe) などのトリアルキルホスフィンテルリド、又はヘキサプロピルホスホラストリアミドテルリド(HPPTTe)、ビス(トリメチルシリル)テルリド((TMS)
2Te)、硫黄、ビス(トリメチルシリル)スルフィド((TMS)
2S)、(トリ-n-オクチルホスフィン)スルフィド(TOPS)などのトリアルキルホスフィンスルフィド、トリス(ジメチルアミノ)アルシン、アンモニウムハライド(例えば、NH
4Cl)などのアンモニウム塩、トリス(トリメチルシリル)ホスフィド((TMS)
3P)、トリス(トリメチルシリル)アルセニド((TMS)
3As)、又はトリス(トリメチルシリル)アンチモニド((TMS)
3Sb)を含む。特定の実施態様において、Mドナー及びXドナーは、同じ分子内の部分であり得る。
【0085】
Xドナーは、式(I)の化合物であり得る:
X(Y(R)
3)
3(I)
(式中、Xは、V族元素であり、YはIV族元素であり、各Rは、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールであり、各Rは、独立に、水素、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシ、アシル、チオ、チオアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールから独立に選択される1〜6個の置換基により任意に置換されている)。例えば、引用により全体として組み込まれる2011年9月16日に出願された米国仮特許出願第61/535,597号を参照されたい。
【0086】
いくつかの実施態様において、Xは、N、P、As、又はSbであり得る。Yは、C、Si、Ge、Sn、又はPbであり得る。各Rは、独立に、アルキル又はシクロアルキルであり得る。いくつかの場合において、各Rは、独立に、非置換のアルキル又は非置換のシクロアルキル、例えば、C
1〜C
8非置換のアルキル又はC
3〜C
8の非置換のシクロアルキルであり得る。いくつかの実施態様において、Xは、P、As、又はSbであり得る。いくつかの実施態様において、Yは、Ge、Sn、又はPbであり得る。
【0087】
いくつかの実施態様において、Xは、P、As、又はSbであり得る。Yは、Ge、Sn、又はPbであり得るが、各Rは、独立に、非置換のアルキル又は非置換のシクロアルキル、例えば、C
1〜C
8非置換のアルキル又はC
3〜C
8非置換のシクロアルキルであり得る。各Rは、独立に、非置換のアルキル、例えば、C
1〜C
6非置換のアルキルであり得る。
【0088】
アルキルは、分岐鎖又は分岐していない1〜30個の炭素原子の飽和炭化水素基であり、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。任意に、アルキル基は、水素、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコキシ、アシル、チオ、チオアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールから独立に選択される1〜6個の置換基により置換されていてよい。任意に、アルキル基は、-O-、-S-、-M-、及び-NR-から選択される1〜6個の連結を含み得るが、式中、Rは、水素、又はC
1-C
8アルキル又は低級アルケニルである。シクロアルキルは、3〜10個の炭素原子の環式飽和炭化水素基であり、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどである。シクロアルキル基は、アルキル基と同様に、任意に置換されていても、連結を含んでもよい。
【0089】
アルケニルは、分岐鎖又は分岐していない少なくとも1つの二重結合を含む2〜20個の炭素原子の不飽和炭化水素基であり、ビニル、プロペニル、ブテニルなどである。シクロアルケニルは、少なくとも1つの二重結合を含む3〜10個の炭素原子の環式不飽和炭化水素基である。アルケニル又はシクロアルケニル基は、アルキル基と同様に、任意に置換されていても、連結を含んでもよい。
【0090】
アルキニルは、分岐鎖又は分岐していない少なくとも1つの三重結合を含む2〜20個の炭素原子の不飽和炭化水素基であり、エチニル、プロピニル、ブチニルなどである。アルキニル基は、アルキル基と同様に、任意に置換されていても、連結を含んでもよい。
【0091】
ヘテロシクリルは、O、N、又はSから選択される少なくとも1つの環ヘテロ原子を含む3員から10員の飽和又は不飽和環式基である。ヘテロシクリル(heterocylyl)基は、アルキル基と同様に、任意に置換されていても、連結を含んでもよい。
【0092】
アリールは、縮合していても非縮合でもよい1個以上の環を有し得る6員から14員の炭素環式芳香族基である。いくつかの場合において、アリール基は非芳香族環に縮合した芳香環を含み得る。例示的なアリール基には、フェニル、ナフチル、又はアントラセニルがある。ヘテロアリールは、縮合していても非縮合でもよい1個以上の環を有し得る6員から14員の芳香族基である。いくつかの場合において、ヘテロアリール基は、非芳香族環に縮合した芳香環を含み得る。アリール又はヘテロアリール基は、アルキル基と同様に、任意に縮合されていても、連結を含んでもよい。
【0093】
X及びRのある値に対して、Yを変えると、さまざまな反応性、例えば、半導体ナノ結晶の形成における異なる反応速度を有するXドナーを製造できる。そのため、ナノ結晶の形成におけるトリス(トリメチルシリル)アルシンの反応性は、他の点では類似の反応におけるトリス(トリメチルスタンニル)アルシン又はトリス(トリメチルプルンビル)アルシンの反応性とは異なり得る。同様に、X及びYのある値に対して、Rの違いは、反応性の違いを生み出し得る。ナノ結晶の形成において、反応性(及び特に反応速度)は、生じるナノ結晶の集団のサイズ及びサイズ分布に影響を与え得る。そのため、適切な反応性を有する前駆体の選択は、特定の所望のサイズ及び/又は狭いサイズ分布など所望の性質を有するナノ結晶の集団の形成に役立つことがある。
【0094】
式(I)のXドナーの例には、トリス(トリメチルゲルミル)ニトリド、N(Ge(CH
3)
3)
3;トリス(トリメチルスタンニル)ニトリド、N(Sn(CH
3)
3)
3;トリス(トリメチルプルンビル)ニトリド、N(Pb(CH
3)
3)
3;トリス(トリメチルゲルミル)ホスフィド、P(Ge(CH
3)
3)
3;トリス(トリメチルスタンニル)ホスフィド、P(Sn(CH
3)
3)
3;トリス(トリメチルプルンビル)ホスフィド、P(Pb(CH
3)
3)
3;トリス(トリメチルゲルミル)アルシン、As(Ge(CH
3)
3)
3;トリス(トリメチルスタンニル)アルシン、As(Sn(CH
3)
3)
3;トリス(トリメチルプルンビル)アルシン、As(Pb(CH
3)
3)
3;トリス(トリメチルゲルミル)スチビン、Sb(Ge(CH
3)
3)
3;トリス(トリメチルスタンニル)スチビン、Sb(Sn(CH
3)
3)
3;及びトリス(トリメチルプルンビル)スチビン、Sb(Pb(CH
3)
3)
3がある。
【0095】
配位溶媒は、ナノ結晶の成長の制御を助けることができる。配位溶媒は、例えば、成長するナノ結晶の表面に配位するのに利用可能な孤立電子対を有する、ドナー孤立電子対を有する化合物である。溶媒配位は、成長するナノ結晶を安定化することができる。典型的な配位溶媒には、アルキルホスフィン、アルキルホスフィンオキシド、アルキルホスホン酸、又はアルキルホスフィン酸があるが、ピリジン、フラン、及びアミンなどの他の配位溶媒も、ナノ結晶製造に好適になり得る。好適な配位溶媒の例には、ピリジン、トリ-n-オクチルホスフィン(TOP)、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド(TOPO)、及びトリス-ヒドロキシルプロピルホスフィン(tHPP)がある。工業グレードのTOPOを使用できる。
【0096】
M-含有塩から製造されたナノ結晶は、配位溶媒がアミンを含む場合、制御された方法で成長できる。配位溶媒中のアミンは、M-含有塩及びXドナーから得られるナノ結晶の質に寄与し得る。配位溶媒は、アミンとアルキルホスフィンオキシドの混合物でよい。合わせた溶媒は、サイズ分散を低下させることができ、ナノ結晶のホトルミネセンス量子収率を向上させることができる。アミンは、一級アルキルアミンでも一級アルケニルアミンでもよく、C
2-C
20アルキルアミン、C
2-C
20アルケニルアミン、好ましくはC
8-C
18アルキルアミン又はC
8-C
18アルケニルアミンである。例えば、トリ-オクチルホスフィンオキシド(TOPO)と組み合わせるのに好適なアミンには、l-ヘキサデシルアミン又はオレイルアミンがある。1,2-ジオール又はアルデヒド及びアミンがM-含有塩との組み合わせで使用されてナノ結晶の集団が形成される場合、ホトルミネセンス量子効率及びナノ結晶サイズの分布は、1,2-ジオール又はアルデヒド又はアミンなしで製造されたナノ結晶と比較して向上している。
【0097】
ナノ結晶は、狭いサイズ分布を有するナノ結晶の集団の一員であり得る。ナノ結晶は、球体、ロッド、ディスク、又は他の形状であり得る。ナノ結晶は、半導体材料のコアを含み得る。ナノ結晶は、式MX(例えば、II-VI半導体材料の場合)又はM
3X
2(例えば、II-V半導体材料の場合)を有するコアを含み得るが、式中、Mは、カドミウム、亜鉛、マグネシウム、水銀、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、又はこれらの混合物であり、Xは、酸素、硫黄、セレン、テルル、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、又はこれらの混合物である。
【0098】
ナノ結晶からの発光は、ナノ結晶のサイズ、ナノ結晶の組成、又はその両方を変えることにより、スペクトルの紫外、可視、又は赤外領域の完全な波長範囲全体に整調できる狭いガウシアン発光帯であり得る。例えば、CdSeとCdSの両方は紫外領域に整調され、InAsは赤外領域に整調され得る。Cd
3As
2は、紫外から赤外に整調され得る。
【0099】
ナノ結晶の集団は、狭いサイズ分布を有し得る。集団は単分散であり得て、15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満のナノ結晶の直径のrms偏差を示し得る。10から100nmの半値全幅(FWHM)の狭い範囲のスペクトル発光が観察され得る。半導体ナノ結晶は、発光量子効率(すなわち量子収量、QY)が、2%、5%、10%、20%、40%、60%、70%、80%、又は90%超になり得る。いくつかの場合において、半導体ナノ結晶は、QYが少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%になり得る。
【0100】
反応の成長段階の間のサイズ分布は、粒子の吸収線幅をモニタリングすることにより評価できる。粒子の吸収スペクトルの変化に応じて反応温度を変更すると、成長の間の鋭い粒子サイズ分布を維持できる。反応物を結晶成長の間に核形成溶液に加えて、より大きな結晶を成長させることができる。特定のナノ結晶平均直径で成長を停止させ、半導体材料の適切な組成を選択することにより、ナノ結晶の発光スペクトルは、300nm〜5ミクロン、又はCdSe及びCdTeでは400nm〜800nmの波長範囲にわたって連続的に整調可能である。ナノ結晶は、直径が150Å未満である。ナノ結晶の集団は、平均直径が15Å〜125Åの範囲である。
【0101】
コアはコアの表面にオーバーコーティングを有し得る。該オーバーコーティングは、コアの組成とは異なる組成を有する半導体材料であり得る。ナノ結晶の表面上の半導体材料のオーバーコートは、II-VI族化合物、II-V族化合物、III-VI族化合物、III-V族化合物、IV-VI族化合物、I-III-VI族化合物、II-IV-VI族化合物、及びII-IV-V族化合物、例えば、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgO、MgS、MgSe、MgTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、TlN、TlP、TlAs、TlSb、TlSb、PbS、PbSe、PbTe、Cd
3As
2、Cd
3P
2、又はこれらの組み合わせを含み得る。例えば、ZnS、ZnSe、又はCdSオーバーコーティングは、CdSe又はCdTeナノ結晶上で成長し得る。オーバーコーティングプロセスは、例えば、米国特許第6,322,901号に記載されている。オーバーコーティング中の反応混合物の温度を調整し、コアの吸収スペクトルをモニターすることにより、高い発光量子効率及び狭いサイズ分布を有するオーバーコートされた材料を得ることができる。オーバーコーティングは、1〜10の単層の厚さであり得る。
【0102】
シェル前駆体を、既存のナノ結晶の表面に材料が加わるが新しい粒子の核形成が阻止される温度で導入することにより、シェルがナノ結晶上に導入される。ナノ結晶の核形成及び異方性合成(anisotropic elaboration)の阻止を助けるために、選択的イオン層密着及び反応(selective ionic layer adhesion and reaction)(SILAR)成長技術を適用することができる。例えば、引用により全体として組み込まれる米国特許第7,767,260号を参照されたい。SILAR手法において、金属及びカルコゲニド前駆体が、別々に又は交互に、ナノ結晶表面の利用可能な結合部位を飽和させるように計算された分量で加えられ、各分量で単層の2分の1が加わる。そのような手法の目標は、(1)等方性のシェル成長を実施するために各半サイクルにおいて利用可能な表面結合部位を飽和させること;及び(2)シェル材料の新しいナノ粒子の均質な核形成の速度を最小限にするために、溶液中に両前駆体が同時に存在することを避けることである。
【0103】
SILAR手法において、各工程できれいに完了まで反応する反応物を選択することが有益になり得る。言い換えると、選択された反応物は、反応副生成物を全く又はわずかしか生み出すべきではなく、加えた反応物の実質的に全てが反応してナノ結晶にシェル材料を加えなければならない。反応の完了は、準化学量論的な量の反応物を加えることにより、有利になり得る。言い換えると、1当量未満の反応物が加えられる場合、未反応の出発物質が残存する可能性が低下する。
【0104】
製造されるコア-シェルナノ結晶の質(例えば、サイズの単分散性及びQYの点で)は、一定で低めのシェル成長温度を利用することにより向上させることができる。或いは、高温を利用することもできる。さらに、シェル成長の前のコア材料の合成又は精製の間に、低温又は室温「維持」工程を利用することができる。
【0105】
ナノ結晶の外部表面は、成長プロセスの間に使用された配位剤から誘導された化合物の層を含み得る。表面を、過剰な競合配位基に繰り返し曝露することにより修飾して、オーバー層を形成することができる。例えば、キャッピングされたナノ結晶の分散体を、ピリジンなどの配位有機化合物により処理して、ピリジン、メタノール、及び芳香族には容易に分散するが、脂肪族溶媒にはもはや分散しない結晶を製造できる。そのような表面交換プロセスは、ナノ結晶外部表面に配位又は結合できる任意の化合物、例えば、ホスフィン、チオール、アミン、及びホスフェートなどにより実施できる。表面に対して親和性を示し、懸濁又は分散媒体に対して親和性を有する部分を末端に持つ短鎖ポリマーにナノ結晶を曝露させることができる。そのような親和性は、懸濁液の安定性を向上させ、ナノ結晶の凝集を妨げる。ナノ結晶配位化合物は、例えば、引用により全体として組み込まれる米国特許第6,251,303号に記載されている。
【0106】
単座アルキルホスフィン(及びホスフィンオキシド;以下で用語ホスフィンは両方を指す)は、ナノ結晶を効率的に不動態化できる。従来の単座リガンドを持つナノ結晶が非不動態化環境(すなわち過剰なリガンドが全く存在しない環境)で希釈又は埋め込まれる場合、それれは、その高い発光を失う傾向がある。突然の発光の消滅、凝集、及び/又は相分離が典型的である。これらの制限を克服するために、多座オリゴマー化ホスフィンリガンドのファミリーなどの多座リガンドを使用できる。多座リガンドは、リガンドとナノ結晶表面の間に高い親和性を示す。言い換えると、それらは、その多座特性のキレート効果から予測されるとおり、より強いリガンドである。
【0107】
一般に、ナノ結晶用のリガンドは、ナノ結晶の表面に親和性を有する第一の部分を含む第一のモノマーユニット、高い水溶性を有する第二の部分を含む第二のモノマーユニット、及び選択的に反応性のある官能基又は選択的に結合性のある官能基を有する第三の部分を含む第三のモノマーユニットを含み得る。この文脈において、「モノマーユニット」は、単一分子のモノマーから誘導されたポリマーの一部である。例えば、ポリ(エチレン)のモノマーユニットは-CH
2CH
2-であり、ポリ(プロピレン)のモノマーユニットは-CH
2CH(CH
3)-である。「モノマー」は、重合前の「化合物」自体を意味し、例えば、エチレンは、ポリ(エチレン)のモノマーであり、プロピレンはポリ(プロピレン)のモノマーである。
【0108】
選択的に反応性のある官能基は、選択された条件下で選択された試薬と共有結合を形成できるものである。選択的に反応性のある官能基の一例は、一級アミンであり、例えば、水中でスクシンイミジルエステルと反応してアミド結合を形成できる。選択的に結合性のある官能基は、選択的に結合性のある対応物と非共有結合性の錯体を形成できる官能基である。選択的に結合性のある官能基及びその対応物のいくつかの周知の例には、ビオチンとストレプトアビジン;核酸と配列相補性核酸;FK506とFKBP;又は抗体とその対応する抗原がある。例えば、引用により全体として組み込まれる米国特許第7,160,613号を参照されたい。
【0109】
高い水溶性を有する部分は、典型的には、1つ以上の電離した基、電離可能な基、又は水素結合基、例えば、アミン、アルコール、カルボン酸、アミド、アルキルエーテル、チオール、又は当分野において公知である他の基を含む。高い水溶性を有さない部分には、例えば、アルキル基又はアリール基などのヒドロカルビル基、ハロアルキル基などがある。高い水溶性は、わずかに可溶性な基を多数例使用することにより達成でき、例えば、ジエチルエーテルは水溶性が高くないが、CH
2OCH
2アルキルエーテル基を多数例有するポリ(エチレングリコール)は、水溶性が高くなり得る。
【0110】
例えば、リガンドは、ランダムコポリマーを含むポリマーを含み得る。ランダムコポリマーは、カチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合、メタセシス重合、又は縮重合、例えば、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合、開環メタセシス重合、グループ移動重合、フリーラジカルリビング重合、リビングチーグラーナッタ重合、又は可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合を含む任意の重合方法を利用して製造できる。
【0111】
いくつかの場合において、生じる半導体ナノ結晶がII-VI半導体材料を含むように、MはII族に属し、XはVI族に属する。例えば、生じる半導体ナノ結晶がそれぞれセレン化カドミウム半導体材料又は硫化カドミウム半導体材料を含むように、M-含有化合物はカドミウム-含有化合物のことがあり、Xドナーはセレンドナー又は硫黄ドナーのことがある。
【0112】
粒径分布は、米国特許第6,322,901号に記載の通り、メタノール/ブタノールなどのナノ結晶の貧溶媒によるサイズ選択的沈殿によりさらに改良することができる。例えば、ナノ結晶は、10%ブタノールのヘキサン溶液に分散させることができる。乳白色が持続するまで、この撹拌している溶液にメタノールを滴加することができる。遠心分離により上澄みと凝集塊を分離すると、試料中の最大のクリスタライトに富む沈殿物が生じる。光吸収スペクトルのさらなる先鋭化が全く認められなくなるまで、この手順を繰り返すことができる。サイズ選択性沈殿は、ピリジン/ヘキサン及びクロロホルム/メタノールを含む種々の溶媒/非溶媒ペアで実施できる。サイズ選択されたナノ結晶集団は、平均直径からの15%以下のrms偏差、好ましくは10%以下のrms偏差、より好ましくは5%以下のrms偏差を有し得る。
【0113】
より具体的には、配位リガンドは以下の式を有し得る:
【化1】
(式中、k-nが零未満でないように、kは、2、3、又は5であり、nは、1、2、3、4、又は5であり;Xは、O、S、S=O、SO
2、Se、Se=O、N、N=O、P、P=O、As、又はAs=Oであり;Y及びLのそれぞれは、独立に、アリール、ヘテロアリール、又は少なくとも1つの二重結合、少なくとも1つの三重結合、若しくは少なくとも1つの二重結合及び1つの三重結合を任意に含む直鎖又は分岐鎖のC
2-12炭化水素鎖である)。炭化水素鎖は、1つ以上のC
1-4アルキル、C
2-4アルケニル、C
2-4アルキニル、C
1-4アルコキシ、ヒドロキシル、ハロ、アミノ、ニトロ、シアノ、C
3-5シクロアルキル、3員〜5員のヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C
1-4アルキルカルボニルオキシ、C
1-4アルキルオキシカルボニル、C
1-4アルキルカルボニル、又はホルミルにより任意に置換されていてよい。炭化水素鎖は、任意に、-O-、-S-、-N(R
a)-、-N(R
a)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(R
a)-、-N(R
a)-C(O)-N(R
b)-、-O-C(O)-O-、-P(R
a)-、又は-P(O)(R
a)-が途中に入っていてもよい。R
aとR
bのそれぞれは、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ヒドロキシルアルキル、ヒドロキシル、又はハロアルキルである。
【0114】
好適な配位リガンドは、商業的に購入するか、例えば、引用により全体として組み込まれるJ. Marchの文献、Advanced Organic Chemistryに記載の通り、通常の有機合成技術により製造できる。
【0115】
透過型電子顕微鏡法(TEM)は、ナノ結晶集団のサイズ、形状、及び分布についての情報を与えることができる。粉末X線回折(XRD)パターンは、ナノ結晶の結晶構造の種類及び質に関する最も完全な情報を与えることができる。粒子の直径が、X線可干渉距離によりピーク幅と反比例しているので、サイズの評価も可能である。例えば、ナノ結晶の直径は、透過型電子顕微鏡法により直接測定できるか、又は例えばシェーラーの式を利用してX線回折データから評価できる。それは、紫外/可視吸収スペクトルからも評価できる。
【0116】
(多重化分光器)
分光器は、近代科学の発展及び進歩にとって重要なツールであると信じられている。例えば、Harrison, G. R.の文献「回折格子の製造I。支配的な技術の開発(The production of diffraction gratings I. Development of the ruling art.)」(J. Opt. Soc. Am. 39, 413-426 (1949))を参照されたい。場所をとり高価な従来の分光器の力の及ばない分野及び用途へ分光器の使用を拡大するために、近年、より小さく安価な小型分光器(又はマイクロ分光器)の開発に莫大な労力が与えられ、期待の持てるスペクトル分解能を有するものもある前例がないほど小さい分光器が生み出されてきた。例えば、それぞれ引用により全体として組み込まれるWolffenbuttel, R. F.の文献「一体型光学マイクロ分光器の技術現状(State-of-the-art in integrated optical microspectrometers.)」(IEEE Trans. Instrum. Meas. 53, 197-202 (2004))及びWolffenbuttel, R. F.の文献「可視及び赤外スペクトル範囲用のMEMS系光学ミニ分光器及びマイクロ分光器(MEMS-based optical mini- and microspectrometers for the visiable and infrared spectral range.)」(J. Micromech. Microeng. 15, S145-S152 (2005))を参照されたい。しかし、今まで示されてきたほとんどのマイクロ分光器は、その固有の特性により制限を受け、必要とされる性能及びコスト面の利益の全てを満たすことは不可能であり、大いに改良の余地があった。分散又は反射光学要素も走査機構も全く必要とせず、むしろ多重化した方法で、単にコロイド量子ドット吸収フィルター及び光検出器のアレイを使用する分光器を製造する新しい方法が示される。そのような分光器のデザインは、性能が本質的に限定されていない、広いスペクトル範囲、高い分解能、及び高いスループットのマイクロ分光器への道を提供する。種々の量子ドット印刷技術(例えば、それぞれ引用により全体として組み込まれるKim, L. らの文献「量子ドット発光装置のコンタクトプリンティング(Contact printing of Quantun dot light-emitting devices)」(Nano Lett. 8, 4513-4517 (2008))、Wood, V.らの文献「フルカラーAC駆動ディスプレイのためのインクジェット印刷された量子ドットポリマーコンポジット(Inkjet-printed quantum dot-polymer composites for full-color AC-driven displays)」(Adv. Mater. 21, 1-5 (2009))、及びKim, T. らの文献「転写により製造されたフルカラー量子ドットディスプレイ(Full-colour quantum dot displays fabricated by transfer printing)」(Nat. Photon. 5, 176-182 (2011))を参照されたい)及び光学センサーアレイと組み合わせると、そのような溶液プロセスによる量子ドットフィルターは、設計及び組立上の複雑さが著しく低減されたシングルチップマイクロ分光器に一体化できるだろう。
【0117】
本明細書に開示される半導体ナノ結晶フィルターは、サイズを小さくすることができ、検出器アレイに組み合わせることができる。該システムは、光源、回路基板、電源ユニット、及び出力システムも含み得る。これらのユニットは、システム全体がコンパクトで、携帯可能で、頑丈であるように組み立てることができる。
【0118】
光が物質と相互作用するほとんど全ての分野で分光器がますますたくさん使用されるにつれ、より小さく安価な分光器の必要性がより強くなる。ボードカメラとコストが類似だが従来の格子系分光器として機能する一体型シングルチップマイクロ分光器は、1グラムといえども重要である宇宙開発、サイズと価格がどちらも非常に重要な外科及び臨床手法並びに個人用医療診断薬、並びに低減されたユニットサイズ、コスト、及び複雑さが、分光器と結像装置の一体化に重要である種々の分光結像用途などの用途に大いに利益を与えられるだろう。例えば、それぞれ引用により全体として組み込まれるGat N.の文献「同調可能なフィルターを使用するイメージング分光法(Imaging spectroscopy using tunable filters)」(A review. Proc. SPIE 4056, 50-64 (2000))、Bacon, C. P., Mattley, Y. 及びDeFrece, R.の文献「小型分光装置:生物学及び化学への応用(Miniature Spectroscopic instrumentation: Applications to biology and chemistry)」(Rev. Sci. Instrum. 75, 1-16 (2004))、並びにGarini, Y., Young, I. T. 及びMcNamara, G.の文献「分光結像:原理と応用(Spectral imaging: Principles and applications)」(Cytometry Part A 69A, 735-747 (2006))を参照されたい。現在のマイクロ分光器のデザインは、ほとんどが、微細加工された格子系及び一体化干渉フィルター系の2つの分類に入るが、そのどちらも、測定の前に干渉系光学素子により、光スペクトルの異なる波長要素を時間的又は空間的に分離する。干渉系光学要素による限定されたスループット及びスペクトル領域を有する一方、格子系マイクロ分光器は、マイクロシステム中の固有の短い光路長及び散乱のない表面を微細加工する困難さのため、非常に低いスペクトル分解能しか与えることができないだろう。他方で、現在開発されつつある主要な干渉フィルター手法が3つあり、すなわち同調可能なファブリー・ペロー、ディスクリートなフィルターアレイ、及びリニア可変フィルターである。これらのマイクロ分光器ははるかに高いスペクトル分解の性質を与えることができるが、それらのスループット及びスペクトル範囲は、それでも、組立及び操作の点で性能を限定する実際面の問題点に加えて、それらの干渉性により限定されている。
【0119】
分散光学素子又は干渉系フィルターによる時間的又は空間的分離の後で個別に異なる光要素を測定する代わりに(
図5)、光スペクトルは、多重化された方法で分析できる。例えば、引用により全体として組み込まれるJames, J. F. 及びSternberg, R. S.の文献「光学分光器の設計(The Design of Optical Spectrometers)」Ch. 8 (Chapman & Hall, London, 1969)を参照されたい。それは、光スペクトルが測定後の計算により再構成できるようにコード化された方法で、多数の光要素を同時に検出することである。ほとんどの強度を捨てるのではなく、異なる光要素を同時に利用できるので、多重化分光器ははるかに高いスループットを与えることができるだろう。フーリエ変換分光器とアダマール変換分光器はどちらも、多重化設計に基づいている。例えば、引用により全体として組み込まれるHarwit, M. 及びSloane, N. J. A.の文献「アダマール変換光学(Hadamard Transform Optics)」(P.3. (Academic Press, New York. 1979))を参照されたい。しかし、そのような分光器設計は、特に走査機構を含む場合、種々の組み立て及び操作の困難さのために充分に小型化されない。したがって、ほとんどの小型化分光器はこの範囲から外れる。例えば、引用により全体として組み込まれるCrocombe, R. A. の文献「小型化光学分光器:原子レベルには発展の余地がある、第I部、背景及び中赤外分光器(Miniature optical spectrometers: There's plenty of room at the bottom Part I, Background and mid-infrared spectrometers)」(Spectroscopy. 23, 38-56 (2008))を参照されたい。或いは、多重化分光器は、ブロードスペクトル吸収カラーフィルターに基づいて製造することもできる。干渉系光学素子とは異なり、原子、分子、又はプラズモン共鳴に基づく吸収フィルターは、スペクトル範囲と分解能の間の固有な相反を持たず、潜在的に、高いスループット、広いスペクトル範囲、及び高い分解能を同時に与えることができるだろう。さらに、組み合わせてアレイにすると、そのような吸収カラーフィルターは、速写でスペクトル測定を行う走査不要の分光器を与えることができる。
【0120】
図5を参照すると、異なる分光器手法の動作原理の比較が示されている。分散光学素子系分光器デザイン(最上の経路に示される)では、光スペクトルの異なる波長要素を、最初に空間的に分離又は分散することができ、次いで、異なる要素の強度が個別に測定される。異なる波長の強度が測定値から直接生じ得るので、光スペクトルはさらに処理せずに読みだすことができる。干渉フィルター系分光器デザイン(中央の経路に示される)では、同じ光スペクトルが、空間的又は時間的に互いに分離したある種類の干渉フィルターにわたって均一に分布され得る(中央の経路に示されているのは、空間的に分離した1セットの個別な干渉フィルターである)。各干渉フィルターは非常に狭い波長帯のみを通過させるので、装備全体では光スペクトルの異なる波長を、空間的又は時間的のいずれかで効果的に分離する。第一の手法と同様に、光スペクトルは、さらに処理せずに直接読むことができる。ブロードスペクトルフィルター多重化デザイン(最下の経路に示される)では、光スペクトルは、ある種類の異なるフィルターにわたってやはり均一に分布され得る。しかし、全てのフィルターが、波長範囲のほとんどで、しかし異なるレベルで透過するので、波長分離は全く含まれ得ない。それでも、元の光スペクトルに関するスペクトル的に識別された情報が、透過された強度に埋め込まれている。フィルター透過スペクトル及び記録されたスペクトル的に識別された強度に基づく最小二乗線形回帰により、元の光スペクトルを再構成できる。
【0121】
吸収多重化分光器手法の成功に重要なのは、システム統合適合性が経済的な状態で、多様だが連続的に同調可能な吸収フィルターの豊かでスケーラブルな集団の利用可能性である。染料及び顔料などの従来の吸収フィルター材料によりそのような要件を満たすことは困難であるので、この分光器手法は普及できなかった。しかし、量子ドット(QD又は半導体ナノ結晶)は、新しい種類のフィルタリング材料として、良好に適合するものであることが分かり、期待の持てる解決法を与える。半導体ナノ結晶は、半径が典型的にはバルク励起子ボーア半径より小さい半導体ナノ結晶であって、3次元全てに電子及びホールの量子閉じ込めを起こすものである。したがって、サイズが低下するにつれ、より強い量子閉じ込めが、より大きな有効バンドギャップ並びに光吸収及び蛍光発光の両方で青色シフトを生み出す。過去30年にわたって、莫大な労力が、それらの製造及び理解にささげられてきた。例えば、それぞれ引用により全体として組み込まれるAlivisatos, A. P.の文献「半導体クラスター、ナノ結晶、及び量子ドット(Semiconductor clusters, nanocrystals, and quantum dots)」(Science 271, 933-937 (1996))、Murray, C. B., Kagan, C. R. 及びM. G. Bawendi.の文献「単分散ナノ結晶及び密充填されたナノ結晶アセンブリーの合成と特性化(Synthesis and characterization of monodisperse nanocrystals and close-packed nanocrystal assemblies)」(Annu. Rev. Mater. Sci. 30, 545-610 (2000))、並びにPeng, X.の文献「コロイドナノ結晶の合成化学に関するエッセイ(An essay on synthetic chemistry of colloidal nanocrystals)」(Nano Res. 2, 425-447 (2009))を参照されたい。これらの労力がライブラリーを確立し、そのような材料のサイズ、形状、及び組成を単に調整するだけで、深紫外線から遠赤外線の幅広い範囲の波長にわたって、吸収スペクトルが連続的かつ微細に同調可能である半導体ナノ結晶の大きな集団を利用可能にした。例えば、それぞれ引用により全体として組み込まれるSteigerwald, M. L. 及びBrus, L. E.の文献「半導体クリスタライト:ある種の大分子(Semiconductor crystallites: a class of large molecules)」(Acc. Chem. Res. 23, 183-188 (1990))、Murray, C. B., Norris, D. J. 及びBawendi, M. G.の文献「ほぼ単分散のCdE(E=硫黄、セレン、テルル)半導体ナノクリスタライトの合成及び特性化(Synthesis and characterization of nearly monodisperse CdE (E = sulfur, selenium, tellurium) semiconductor nanocrystallites)」(J. Am. Chem. Soc. 115, 8706-8715 (1993))、Peng, X.らの文献「CdSeナノ結晶の形状制御(Shape control of CdSe nanocrystals)」(Nature 404, 59-61 (2000))、並びにEl-Sayed, M. A.の文献「小さいことは異なることだ:いくつかのコロイド半導体ナノ結晶の形状-、サイズ-、及び組成依存性の性質(Small is different: shape-, size-, and composition-dependent properties of some colloidal semiconductor nanocrystals)」(Acc. Chem. Res. 37, 326-333 (2004))を参照されたい。さらに、多くの実証が、半導体ナノ結晶が、充分に開発され広く利用されている技術により、非常に微細なパターンに容易に印刷可能であることを示すのに成功してきた。これらの事実により、半導体ナノ結晶は、フィルター系分光器の完璧な候補になる。
【0122】
図6を参照すると、半導体ナノ結晶分光器のための光学的測定装備が示されている。異なる光源は、重水素タングステンハロゲン光源及び種々の無作為に選択された市販の光学フィルターにより発生させることができる。ビームスプリッター及びシリコンフォトダイオードを使用して、測定全体にわたる光源強度の変動をモニターし、統一性を確実にできる。示された半導体ナノ結晶分光器は、単純に、1セットの半導体ナノ結晶吸収フィルター及び各半導体ナノ結晶フィルターの後で光強度を測定するための光検出器から構成され得る。
【0123】
半導体ナノ結晶分光器の基本的操作は、異なるフィルターの後の光源スペクトルのスペクトル的に識別された強度の直接測定及びこのデータの集団からのスペクトル再構成を含み得る。この実演において具体的には、スペクトル(Φ(λ))が半導体ナノ結晶分光器により特性化されるべき一連の光源は、図(
図6)に示されるとおり、種々の市販の光学フィルターを重水素タングステンハロゲン(DTH)光源の出力に適用することにより摸される。測定の間、光源は、1つずつ1セットの半導体ナノ結晶吸収フィルター(F
i、式中、iはフィルター番号であり、合計でn
iになる)を通して送られて、透過した光強度(I
i)は各フィルターの後で光検出器により記録される。記録される強度は以下の式に従う:
Σ
λΦ(λ)T
i(λ)R(λ)=I
i (1)
(式中、R(λ)は、使用した光検出器の応答性であり、T
i(λ)は、フィルターセットから出た半導体ナノ結晶フィルター(F
i)の透過スペクトルであり、Φ(λ)は、調査中の光源スペクトルである)。各フィルターが異なる透過スペクトル(T
i(λ))を有する半導体ナノ結晶フィルターセット全体(全フィルター数はn
i)は、測定全体で総数n
iの強度(I
i)を生じ、そのため式(1)の形態のn
i個の式を生じる。各半導体ナノ結晶フィルターの透過スペクトル(T
i(λ))及び光検出器の応答性R(λ)が、どちらも特性化によりあらかじめ決められ得るので、式のセット全体は、共通の未知数を1つだけΦ(λ)として有するが、これは、個別のλ値(合計でn
λ、スペクトル領域及び波長間隔に依存する)での変数のセットから構成されたスペクトルである。あるスペクトル領域内のより大きいn
λをシステムが決定できるほど、スペクトル分解能もより大きくなり得る。しかし、本質的に、n
λは、異なる式の数に、したがって、測定中に使用される異なるフィルター(I
i)の数により制限される。
【0124】
光スペクトル(Φ(λ)を再構成するために、R(λ)、T
i(λ)、及びI
iが必要である。例えば、半導体ナノ結晶フィルターが連続的に同調可能な単色光源及びシリコンフォトダイオードなどの光検出器により特性化される場合、シリコンフォトダイオードは、透過光強度の測定のための光検出器としても直接使用可能である。典型的なシリコンフォトダイオードが強度測定のために分光器の代りに使用される場合、その応答性を考慮に入れて、スペクトル積分は、以下の式により、較正されたシリコンフォトダイオードからとられた検出器応答性関数(R(λ))(R(λ)は
図7Aに示されている。各光源のI
iは
図7Cに示されている)により重みづけされた:
I
i=Σ
λΨ
i(λ)R(λ) (2)。
【0125】
スペクトル再構成の間の式(1)に使用された応答性関数(R(λ))は、式(2)に示されているものと同じである。
言及に値することは、異なる手順により製造された半導体ナノ結晶が異なるレベルの蛍光量子収率を有することである。発光は、安定化されて良好に較正してある場合、フィルター間の差を増幅する方法として有益になり得る。他方で、発光はさらなる複雑さを導入することがある。その結果、これらの半導体ナノ結晶の発光は、p-フェニレンジアミンによりクエンチされた。例えば、引用により全体として組み込まれるChen, O.らの文献「二酸化セレンをセレン前駆体として使用する金属-セレニドナノ結晶の合成(Synthesis of metal-selenide nanocrystals using selenium dioxide as the selenium precursor)」(Angew. Chem. Int. Ed. 47, 8638-8641 (2008))を参照されたい。さらに、半導体ナノ結晶フィルターと光検出器の間にある距離が保たれ、最大の発光影響が十分に0.1%未満であることを確実にした。したがって、吸光のみが実験及び計算で考慮された。
【0126】
Siフォトダイオードの応答性(R(λ))が
図7Aにプロットされている。それは、式(1)及び(2)のR(λ)に相当している。両プロットは、同じ応答性を表しているが、単位が異なる。195個の半導体ナノ結晶フィルター(F
i、式中、iはフィルター番号である)の個別の透過スペクトル(T
i(λ))が
図7Bでプロットされている。各サブプロットにおいて、横軸の単位はnmであり、縦軸の単位は透過率(100%)である。半導体ナノ結晶フィルターを通過した後の光源の透過した光の強度(I
i)は
図7Cに示されている。赤の実線で6個のサブプロットに示されているのは、6個の光源スペクトルである。その右にある緑のドットで示した対応するプロットにおいて、発明者らは、光源が195個の半導体ナノ結晶フィルター(F
i)を通った後の195の光強度(I
i)をプロットした。緑の各ドットは、半導体ナノ結晶フィルターを通り(Ψ
i(λ)のスペクトルを生み出す)それ自体積分された対応する光源から生じる強度を表す:I
i=Σ
λΨ
i(λ)R(λ)(式中、R(λ)はSiフォトダイオードの応答性を表す(
図7A))。最も右の欄は、それぞれ対応する光源からの再構成されたスペクトルを表す。各サブプロットの縦軸は互いに全く同じであり、各列の左側の軸の表示により表される。各サブプロットの横軸は、各欄の一番下にある対応する軸の表示により表される。
【0127】
測定誤差が全く含まれない理想的な場合には、n
λはn
iと等しいが、その理由は、唯一の解を持つ1セットの線形方程式を解くことと等価であるからである。しかし、常に測定誤差があるので実際にはそうならず、典型的にはシステムが不整合になり方程式は解をなくすだろう。しかし、おおよその解は、最小二乗線形回帰に基づいて誘導することができる。そのような変数誤差条件下では、ある数の異なるフィルター(n
i)は、等しい数のスペクトルデータポイントを効果的かつ正確に与えることはもはやできず(n
λ<n
i)、誤差が大きいほど、意味のあるスペクトルデータポイントのそれぞれに対してより多くのフィルターが必要となる。
【0128】
図8A及び8Bを参照すると、半導体ナノ結晶フィルターは、構成成分ナノ結晶の透過スペクトルを維持するカバーガラス上に調製できる。
図8Aにおいて、カバーガラス上の195個の半導体ナノ結晶フィルターは、各フィルターが、カバーガラスに支持された薄いポリビニルブチラール膜に埋め込まれたCdS又はCdSe半導体ナノ結晶ででき得ることを示す。
図8Bにおいて、
図8Aに示されたフィルターのいくつかの選ばれた透過スペクトルが表されている。各サブプロットにおいて、横軸の単位はnmであり、縦軸の単位は透過率(100%)である。
【0129】
この実証において、230nmのスペクトル範囲(390nm〜620nm)が一般性を失わずに選択され、使用される195個の異なる半導体ナノ結晶フィルター(
図8A)は、サイズも組成も互いに異なる195個の異なる種類の半導体ナノ結晶から製造される。フィルターの特性化(
図8B、フィルターの個別の透過スペクトルは
図7Bに示される)は、DTH光源及びOcean Optics分光器(〜0.8nmスペクトルデータポイント間隔)により、標準偏差σ=0.022の測定誤差で実施される(誤差レベルは、二乗平均平方根で、式(2)から積分した195個のI
iと式(3)から計算した195個のI
iの差と、
図9の上のサブプロットに示されている測定されたΦ(λ)を比べて評価した)。上記の状況を仮定すると、線形回帰アルゴリズムは、1.6nmごとに、総計147データポイントになる未知のスペクトル(Φ(λ))のスペクトルデータポイントを与えるように求められた。図(
図9)に示されるのは、6つの異なる光源の直接再構成されたスペクトルである。実証された半導体ナノ結晶分光器が、試験された波長範囲全体にわたって異なる強度レベル及び異なるスペクトル幅で、試験された各スペクトルの主な特徴を全て忠実に再現できることが示される。Ocean Optics 分光器により測定された光源スペクトルと半導体ナノ結晶分光器の間の、鋭いピーク及び微妙な特徴での不一致は、システム測定誤差及び使用された半導体ナノ結晶フィルターの限定された数によるものである。使用されるフィルターの数の増加及び測定誤差の低下により、スペクトル分解能の向上が達成できることが予測される(測定誤差は、例えば、光検出器の非線形の較正、低減した測定時間、及び完全一体化分光器による機械的なフィルター切り替え手順の排除により低下させることができる)。追加のシミュレーションの証拠は、付録のセクションII及びIIIに示されている。
【0130】
図9を参照すると、光源スペクトルは半導体ナノ結晶分光器により再構成できる。上のサブプロット中の上の実線に示されるのは、種々の市販光学フィルターを重水素タングステンハロゲン光源に適用し、QE65000分光器により測定して生成した6つの光源スペクトルである。半導体ナノ結晶分光器測定値及び最小二乗線形回帰に基づく直接再構成されたスペクトルデータポイントは、下のサブプロット中の×印で示されており、それぞれ各光源のサブプロットに対応している。横軸はnmでの波長を表す。縦軸は光検出器からのフォトンカウントを表す。
【0131】
分光器の動作原理及び非常に広いスペクトル範囲にわたる半導体ナノ結晶の利用可能性により示唆されるとおり、半導体ナノ結晶分光器は、光検出器のスペクトル範囲のみにより限定されるスペクトル範囲で高いスペクトル分解能を潜在的に与えることができるだろう。さらに、一体化された半導体ナノ結晶分光器は、溶液により処理可能な半導体ナノ結晶を分光器用の検出器アレイ上に印刷して製造でき、デザインの簡単さ及び光学素子及び配列の必要性が最低限であることからさらに利益を得るだろう。プラズモンナノ構造、カーボンナノチューブ、及びフォトニック結晶、並びに半導体ナノ結晶に基づく他の分光器デザインなどの種々の材料が利用できる。例えば、それぞれ引用により全体として組み込まれるJain, P. K., Huang, X., El-Sayed, I. H. 及びEl-Sayed, M. A.の文献「ナノスケールの貴金属:光学的性質及び光熱性質並びにイメージング、検出、生物学、及び医薬におけるいくつかの用途(Noble metals on the nanoscale: optical and photothermal properties and some applications in imaging, sensing, biology, and medicine)」(Acc. Chem. Res. 41, 1578-1586 (2008))、Laux, E., Genet, C., Skauli, T. 及びEbbesen, T. W.らの文献「スペクトル及び旋光分析イメージングのためのプラズモンフォトンソーター(Plasmonic photon sorters for spectral and polarimetric imaging)」(Nat. Photon. 2, 161-164 (2008))、Xu, T., Wu, Y., Luo, X. & Guo, J.の文献「高分解能カラーフィルタリング及び分光結像のためのプラズモンナノ共振器(Plasmonic nanoresonators for high-resolution colour filtering and spectral imaging)」(doi:10.1038/ncomms1058 (2010))、Baughman, R. H., Zakhidov, A. A. 及びde Heer, W. A.の文献「カーボンナノチューブ-応用への道(Carbon nanotubes-the route toward applications)」(Science 297, 787-792 (2002))、Joannopoulos, J. D., Villeneuve, P. R. 及びFan, S.の文献「フォトニック結晶:光に新しいひねりを加える(Photonic crystals: putting a new twist on light)」(Nature 386, 143-149 (1997))、Xu, Z.らの文献「フォトニック結晶を使用するマルチモードの多重分光法(Multimodal multiplex spectroscopy using photonic crystals)」(Opt. Exp. 11, 2126-2133 (2003))、Momeni, B., Hosseini, E. S., Askari, M., Soltani, M. 及びAdibi, A.の文献「検出用途用の一体型フォトニック結晶分光器(Integrated photonic crystal spectrometers for sensing applications)」(Opt. Comm. 282, 3168-3171 (2009))、並びにJimenez, J. L. らの文献「量子ドット分光器(The quantum dot spectrometer)」(Appl. Phys. Lett. 71, 3558-3560 (1997))を参照されたい。プラズモンナノ構造、カーボンナノチューブ、又はフォトニック結晶を、単独でも、半導体ナノ結晶と組み合わせても使用できる。フォトニック結晶及びリニア可変フィルターなどの他の材料を半導体ナノ結晶と組み合わせて使用すると、向上した性能を達成でき、特殊化された用途に使用できる他の分光器を作ることができる。各材料は、さらなる改善及び専用の目的のための実証されたデザインと組み合わせて使用でき、より良いアルゴリズムも追加の精度を与え得る。さらに、そのような半導体ナノ結晶分光器は、異なる応答性プロファイルを持つ半導体ナノ結晶光検出器と共に直接製造でき、それは光フィルタリングと検出の一体化した機能を発揮する。そのような半導体ナノ結晶検出器は、分光器全体が1つのイメージングピクセルの空間しかとらないように、直列セルフォーマットと同様に互いの上に垂直にさらに重ねることができる。そのようにして、撮像レンズの焦点面に配置されたそのようなピクセルサイズの分光器のマトリックスは、決して走査をせずに速写によりスペクトルイメージをとる分光結像装置を可能にする。
【0132】
いくつかの例において、量子ドットの形態の半導体ナノ結晶をもっぱら使用する代わりに、変化する吸収、反射、量子収率などの形態で種々の検出器応答プロファイルを潜在的に生み出す、又は検出器応答プロファイルの種類を増やすことができる、種々の他の材料を、これらの原理又はこれらの原理のサブセットにおいて、分光器として使用し、操作することもできる。これらの材料は、半導体ナノ結晶ナノロッド、ナノスター、ナノプレート、三角形、トライポッド、他の形状及び外面的形態;カーボンナノチューブ;染料分子;連続的に同調可能なバンドギャップを生み出すことができる任意の材料;金/銀、又は他の金属ナノロッド、ナノ粒子、並びに他の任意の形状及び外面的形態;現在光関連作用に使用されているフィルタリング材料及び着色材料;並びに、検出器の応答プロファイルの変更を生じるこれらの材料のスペクトルの変更を支援できる任意の化学物質を含み得るが、これらに限定されない。半導体ナノ結晶を他の材料と混合して、その吸収/蛍光性質を修飾することができる。例えば、半導体ナノ結晶をp-フェニレンジアミンと混合できるが、その蛍光発光が著しくクエンチされる。例えば、引用により全体として組み込まれるSharma, S. N., Pillai, Z. S. 及びKamat, P. V.の文献「CdSe量子ドットとp-フェニレンジアミンの間の光誘起された電荷移動(Photoinduced charge transfer between CdSe quantum dots and p-pehynylelediamine)」(J. Phys. Chem. B 107, 10088-10093 (2003))を参照されたい。半導体ナノ結晶をカーボンナノチューブとも混合できるが、混合物の吸収及び発光の両方が変わり得る。例えば、引用により全体として組み込まれるAdv. Funct. Mater. 2008, 18, 2489-2497; Adv. Mater. 2007, 19, 232-236を参照されたい。半導体ナノ結晶は金属ナノ粒子とも混合できる。例えば、引用により全体として組み込まれるJ. Appl. Phys. 109, 124310 (2011); Photochemistry and Photobiology, 2002, 75(6): 591-597を参照されたい。半導体ナノ結晶は、吸収と蛍光のどちらも変えられ得るように半導体ナノ結晶-金属ヘテロ構造を形成し得る。例えば、引用により全体として組み込まれるNature Nanotechnology 4, 571 - 576 (2009)を参照されたい。他の材料には、染料、顔料、及びアミン、酸、塩基、及びチオールなどの分子剤(molecular agents)がある。例えば、引用により全体として組み込まれるNanotechnology 19 (2008) 435708 (8pp);J. Phys. Chem. C 2007, 111, 18589-18594; J. Mater. Chem., 2008, 18, 675-682を参照されたい。上述の材料は、独立にも、どのような種類の組み合わせでも使用できる。例えば、元のスペクトル及び応答プロファイルが添加の後に変化するように、1種以上の材料を他の材料に加えることができる。それは、異なる材料又は材料の組み合わせが互いの上に重なるような方法で使用することもできる。
【0133】
これらの材料は、CCD及びCMOS、又は他のものなどのもう1つの光検出器へのカプラーとして使用される場合、検出器又は検出器ピクセルの上に直接印刷することができ、その場合、異なる検出器/ピクセルは異なる材料/材料組み合わせを受け取り、又はこれらの異なる材料/材料組み合わせは、事前製造した検出器又は検出器アレイへの追加の要素としてマスク、フィルム、又はパターンに事前製造することができ、そのため、効果的に、設計された方法で2つのパターンが1つに配列され得る。別々に、又は検出器アレイとして集合的に、どのような数の検出器を使用することもできるだろう。これらの検出器には、イメージ増倍管;炎検出器(UVtron(登録商標));暗視カメラ/ICCD、イメージセンサーとしての能動ピクセルセンサー、例えば、携帯電話のカメラ、ウェブカメラ、及びいくつかのDSLRに通常使用されているCMOS APS、及び電荷結合素子(CCD)センサーの代替としてのCMOSセンサーとしても知られているCMOSプロセスにより製造されたイメージセンサー;天文学、デジタル写真、及びデジタル映画撮影において画像を記録するのに使用される電荷結合素子(CCD);ハロゲン化銀分子が、金属銀の原子及びハロゲン原子に分裂する、写真乾板などの化学検出器;単一のx-線、可視光線、及び赤外線フォトンのエネルギーを測定するのに充分に感度がある極低温検出器;フォトダイオードとして機能するように逆バイアスされたLED;個々のフォトンが別個の効果を生み出すほとんど量子的な素子である光検出器;光強度に応じて抵抗を変えるフォトレジスター又は光依存抵抗器(LDR);照らされると電圧を生じて電流を供給する光起電力セル又はソーラーセル;光電池モード又は光伝導モードで操作できるフォトダイオード;照らされると電子を放出し、電子が次いで一連のダイノードにより増幅される、光電陰極を含む光電子倍増管;照らされると、管が光強度と比例する電流を伝えるように電子を放出する、光電陰極を含む光電管;増幅フォトダイオードのように作用するフォトトランジスター;並びに紫外、可視、及び赤外スペクトル領域の波長を取り扱うことができる半導体ナノ結晶光導電体又はフォトダイオードがあるが、これらに限定されない。
【0134】
個別の検出器ピクセル及び全体の検出ユニットサイズは、製造で可能な任意のサイズでよい。例えば、電荷結合素子検出器の場合、それらは3μm×3μmピクセルと1mm×1mmセンサー(例えば、NanEye Camera)を有し得る。それは、14×500μm及び28.6×0.5mm(例えば、Hamamatsu社により販売されているCCD)、又はさらには0.9m
2センサーになり得る。
【0135】
図10Aを参照すると、半導体ナノ結晶分光器は一体化することができる。異なる半導体ナノ結晶を、種々の方法で(インクジェット印刷又は接触転写など)検出器アレイ上に(CCD/CMOSセンサーなど)印刷でき、又は別々に製造して独立したフィルタリングフィルムにし、次いで検出器アレイ上に組み入れることができる。半導体ナノ結晶パターンは、検出器ピクセルと正確に合致してもしなくてもよい。例えば、1つの検出器ピクセルが2種類以上の半導体ナノ結晶の領域を覆うことができ、又は2つ以上の検出器ピクセルが1種の半導体ナノ結晶の領域を覆うことができる。組立は、多数のプリンターヘッド(それぞれ、1つ以上の異なるナノ結晶を含む材料)を使用するなどのインクジェット印刷を利用して同時若しくは連続的に印刷でき、又は多数のナノ結晶材料を有する1つのプリンターヘッドを使用して連続的に印刷できる。基材若しくはプリンターヘッド/複数のヘッドのいずれかが動くことができ、又はそれらは調和した方法で一緒に動くことができる。或いは、アセンブリーは、大きな塊から小さい構造を切り出し、それを基材に貼って、他のナノ結晶材料から生まれた構造と組み合わせることにより、カットアンドペースト方法で作ることができる。
図10Bは、約150個の異なる半導体ナノ結晶及びPMMAポリマーにより製造した半導体ナノ結晶フィルターアレイがCCDカメラ(Sentech社製、STC-MB202USB)に一体化される例を示す。
図10B中の分光器を使用して、
図10Cに示されるとおり、400nm、450、500、550、410、411、412、413、及び414nmの単色光を測定した。
【0136】
半導体ナノ結晶システムと同様に、材料の吸収が、高い波長領域では比較的低く、低い波長領域では高いことが常にあてはまる。したがって、量子ドットシステムとは完全に反対な、低い波長領域では比較的低い吸収を、高い波長領域では高い吸収を有する一連の吸収プロファイルを有する他の種類の材料と組み合わせる場合、それは追加の利益を与えることができるだろう。ある方法で調和され結合されて一緒に使用される場合、それらは、検出器又は検出器ピクセルの応答プロファイルを非常に狭くすることができ、他の波長領域全体を妨害する。このようにして、検出器/検出器ピクセルは、非常に特異的に狭い領域のみに応答するように作ることができる。一連の検出器又は検出器ピクセルを、このようにして、異なる波長領域で、所望の分解能又は強度などで製造すると、分光器の性能及び分解能はさらなる利益を受け得る。
【0137】
半導体ナノ結晶はロングパスフィルターとして使用することができ、例えば、着色ガラスフィルターなどのショートパスフィルター材料と組み合わせることができる。具体的には、フィルタリング材料及びフィルタリング機能として使用される半導体ナノ結晶が非常に関与している場合(発光作用スキームなど)、そのような検出器の有効な応答プロファイルは、上述のものと同様に、高波長領域よりも低波長領域に抑えられている(surprised)。他方で、半導体ナノ結晶が、PVモード又は光伝導モードのいずれかで運転する光検出器自体に製造される場合、有効な応答プロファイルは、高波長領域よりも低波長領域においてより増大される。これらの2つの作用スキームを組み合わせれば、スペクトルデータが生まれ得る。具体的には、例えば、(わずかに短いピーク吸収波長の)半導体ナノ結晶フィルターを、(わずかに長いピーク吸収波長の半導体ナノ結晶を有する)半導体ナノ結晶光検出器の上に配置できる。したがって、ショートパスフィルターとロングパスフィルターを組み合わせるのと類似のように、波長領域のより小さいウィンドウのみが、2つの半導体ナノ結晶ピーク吸収波長の差から生じる。
【0138】
半導体ナノ結晶分光器原理を利用する他の方法は、これらの検出器にのみ頼る代りに、それが既存の分光器に加えて使用できることであり、より複雑なレンズ及び光学素子を導入せずに分光器の分解能を向上することができ、そのため分光器の複雑さ及びコストが拡大しないで分解能が増加する。具体的には、典型的な分光器において、各/少数のピクセルが、光スペクトルのある波長領域の強度を読めるように、異なる波長の光が光検出器ピクセルのアレイ上で広がる。ある軸(x)上の各ピクセルが異なる波長領域の光を得るように、これらの検出器ピクセルが、他の軸(y)で他の次元でアレイに作られている場合、各ピクセルは同じ波長領域から光を得る。その場合、異なる半導体ナノ結晶フィルター、検出器、又は上述の他の構造のアレイはy軸に配置され、次いでこの軸の各ピクセルが、この波長領域の異なる波長要素を区別できる。
【0139】
ナノ結晶分光器を、分光結像装置にさらに発展させることができる。例えば、これをする一方法は、複数の検出器位置をつくることである。各検出器位置は、所定の波長の光を吸収可能な光吸収性材料、光吸収性材料を含み得る。各検出器位置は、入射光の異なる強度に基づいて、特異的応答を与えることが可能な感光性素子を含み得る。次いで、データ記録システムが感光性素子のそれぞれに結合することができる。感光性素子は、半導体ナノ結晶系光伝導性要素を含み得る。データ記録システムは、検出器位置が入射光により照らされている時に、検出器位置のそれぞれで特異的応答を記録するように構成され得る。例えば、二次元分光器は、
図12に表されるとおり、二次元アレイに形成できる。検出器ピクセルは、二次元アレイ分光器の二次元アレイ(すなわちパッチ)に製造され、各パッチが異なる光吸収特性を有する吸収性パッチの水平プレートを形成することができる。各パッチは、分光器の設計が目指す用途に応じて、同じでも異なっていてもよい。
図12はそのような例を示すが、二次元アレイの第一のレベルのピクセルの数が、スペクトル画像のスペクトル範囲及びスペクトル分解能を決定し(ピクセルが多くあるほど、良好な分解能及びより大きいスペクトル範囲を有する)、二次元アレイの第二のレベルにおける二次元アレイの数が、画像分解能を決定する(より多数の二次元アレイがあるほど、より高い画像分解能を有する)。
【0140】
或いは、そのような半導体ナノ結晶分光器は、異なる応答性プロファイルを有する半導体ナノ結晶光検出器により直接製造でき、それは、光フィルタリングと検出の一体化した機能を発揮する。そのような半導体ナノ結晶検出器は、分光器全体が1つのイメージングピクセルの空間しかとらないように、直列セルフォーマットと同様に、互いの上に垂直にさらに重ねることができる。それにより、撮像レンズの焦点面に配置されたそのようなピクセルサイズの分光器のマトリックスは、決して走査をせずに速写によりスペクトルイメージをとる分光結像装置を可能にする。
【0141】
例えば、半導体ナノ結晶により吸収されない光がほとんど透過するように透明な電極及び/又は構造を持つ半導体ナノ結晶検出器(
図11A)。検出器は、光要素が連続的に検出されるように互いの上に重ねることができる。青色要素は、最初に最上層/複数の層により吸収及び検出され、より赤い要素はその後で吸収及び検出される(より青い半導体ナノ結晶により形成された半導体ナノ結晶検出器は、より赤い半導体ナノ結晶によるものよりも上に配置される)。全体的に、垂直に積み重なった検出器は光スペクトル要素を区別し/スペクトルを分離することができる(
図11B)。スタックは、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、又はそれより多くの検出器を含み得る。積み重ねられた検出器は繰り返されてセンサーのマトリックスが形成され得る(
図11C)。マトリックスは、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、又はそれより多くのスタックを含み得る。マトリックスは、zeiss-campus.magnet.fsu.edu/tutorials/spectralimaging/lambdastack/index.htmlに記載されているスペクトルイメージングラムダスタックに類似の分光結像装置を形成し得る(
図11D)。
【0142】
紫外線は、ヒトの健康及び安全に多くの有害な作用を起こす。毎年350万人の米国人が皮膚癌と診断され、国の人口全体の20%が一生のうちに皮膚癌になるだろう。毎年、乳癌、前立腺癌、肺癌、及び結腸癌の発生を合わせたものより、皮膚癌の新しい症例のほうが多かった。過去31年にわたって、皮膚癌になった人は、他の癌になった人を合わせたより多い。約90パーセントの非メラノーマ性皮膚癌は、太陽からの紫外(UV)線への曝露に関連している。メラノーマは、皮膚癌の症例の5%未満の原因であるが、それは、皮膚癌死の75パーセント超を起こす。メラノーマに見られる突然変異の大多数は、紫外線により起こる。
【0143】
通常加齢のせいにされる目に見える変化の最大90パーセントは、太陽により起こる。皮膚の加齢の問題を防ぎ修復するのを助ける化粧品及びスキンケア製品は、それ自体数十億ドルの産業である。
【0144】
白内障は、眼のレンズの透明性喪失が視界を曇らせる、眼の損傷の一形態である。治療しないままでいると、白内障は失明につながることがある。研究により、紫外線が特定の白内障の可能性を高めることが示された。現在の眼科手術により治癒可能であるが、白内障は数百万人の米国人の視力を低下させ、医療に毎年数十億ドルかかる。他の種類の眼の損傷には、翼状片(視界を妨げることがある組織増殖)、眼の周囲の皮膚癌、黄斑(視覚が最も鋭い網膜の部分)の変性がある。これらの問題は全て、目の適切な保護により低減することができる。
【0145】
したがって、特に太陽からの有害なレベルの紫外線への個人の曝露を予防する必要性がある。特に、個人が簡便且つ費用をかけずに、紫外線への自身の曝露をモニターし、記録し、追跡することを可能にする必要がある。
【0146】
特に測定する必要がある紫外線曝露の3つの因子:曝露の強度、期間、及び作用スペクトル。作用スペクトルは、異なる波長で受け取った同じ量のエネルギーによる損傷効果の変動をいう(240nm光として送られたある量のエネルギーは、400nmの光として送られた同じ量のエネルギーより、著しく有害である(例えば、皮膚に対して))。紫外線による損傷は波長依存性が高いので、異なる波長での曝露の強度及び期間を測定することが重要である。これらの性質の3つ全てを測定でき、消費者にとって手頃なままである装置を提供することは困難であった。好ましくは、該装置は、価格が手頃で、携帯性が高いか、着用可能ですらあり、耐水性であり(個人は、ウォータースポーツに参加しているときに紫外線に曝露されることが多い)、使用が容易で、使用者にとって邪魔にならない。
【0147】
逆に、ある程度の紫外線曝露は有益になり得る。体には、ビタミンD産生のために紫外線曝露が必要である。さらに、人々は日光を楽しみ、それは人々の精神的な健康及び幸福にとって重要になり得る。
【0148】
紫外線曝露追跡装置は、リアルタイムで使用者にフィードバックを与えるか、又は個人の経時的な紫外線曝露の履歴を記録できる。リアルタイムのフィードバックにより、使用者が、紫外線曝露を受けるにつれ、その活動を適合させることができる。紫外線曝露は、時間帯、天気、影、日光が主に拡散しているか又は反射しているかなどの多くの因子により影響を受け得る。リアルタイムのフィードバックにより、例えば、海岸に行く人は、自身が受け取る紫外線曝露の測定されたレベルに基づいて、海岸での時間を制限することを選択し得る。
【0149】
紫外線曝露追跡装置は、紫外領域の異なる波長を識別できる紫外線検出器を含み得る。紫外線検出器は、紫外光に対して感光性の半導体光検出器であり、異なる紫外波長に対する異なる応答を有し得る。他の実施態様において、紫外線光検出器は光検出器アレイであり、これは波長に基づいて光を空間的に分離して別々に測定できる光分散性光学要素を含み得る。或いは、アレイは、光に、最初に、異なる波長に対して異なる速度を有する結晶を通過させ、次いで、ストリークカメラを使用して異なる波長を測定することにより、光を時間的に分離できる。他の実施態様において、紫外線検出器はナノ結晶分光器であり得る。
【0150】
曝露の履歴は、従来のデータ記録システムに記録できる。携帯性のためには、フラッシュメモリが好適な選択になり得る。オンボードデバイスメモリーに代わって、又はそれと組み合わせて、曝露の履歴は、外部記憶装置(例えば、コンピューター、スマートフォンなど)に(例えば、無線通信により)送ることができる。
【0151】
個人の紫外線曝露履歴に基づいて、個人は長期にわたる曝露レベルに気付くことができ、それに応じて彼らの習慣及び状況を変えることができる。居住地の局地的な天気、個人の習慣、仕事の種類など、数多くの因子が個人の長期の紫外線曝露に影響を与える。紫外線曝露は多くの状況で起こり得るので(仕事場で、公園で散歩している間に、海岸で、日焼けマシンの使用など)、紫外線曝露追跡装置が、コンパクトで、邪魔にならず、頑丈であることにより、これらの多くの状況に好適になることが重要であり得る。
【0152】
物理的形態では、紫外線曝露追跡装置は独立型装置のことがあり、万歩計と同様に使用者により着用され得る。紫外線曝露追跡装置は、望ましくは、人々が日常的に持ち歩く常用の物品、例えば、メガネ及びサングラスのフレーム;万歩計;リストバンド;時計バンド;ブレスレット、イアリング、ブローチ、又はネックレスペンダントなどの宝石;ベルトバックル;ハンドバッグ;携帯電話;又は他の物品若しくは装置があるがこれらに限定されない物品に一体化されるほど充分にコンパクトである。いずれの形態においても、装置は、好ましくは、内部電気要素と外部環境との間にむき出しの接触を全く持たないように、且つ防水性であるように作りだされる。
【0153】
紫外線曝露追跡装置は、紫外線曝露データをコンピューター又はスマートフォンなどの他の装置に送ることができるように、無線通信を備えていてよい。無線通信は、汚れ、汚染、リーク、又は他の損傷を受けやすくなり得る、他の装置への物理的な接続の必要を回避する。好ましくは、装置は、電池及び電子素子に電力を供給する太陽電池を備えている。これも、装置が開けられる(例えば、電池交換のため)必要性を回避する。装置は、好ましくは、電力消費が非常に低くなるように、且つスイッチ、ボタン、又はキーがほとんど又は全くないように、又は装置の内部が外部環境からしっかりと密閉されることが確実であるようにそのようなものを提供するように作り出される。
【0154】
紫外線曝露追跡装置は、異なる紫外波長を識別することができる。日射は、UVA(およそ315〜400nm)、UVB(およそ280〜315nm)、及びUVC(およそ100〜280nm)帯を含む。UVB及びUVCは、高エネルギーであり、一般的にヒトの健康により有害な帯である。分光器はそのような波長識別を与える一方法であるが、先に議論された通り、典型的な分光器は、高価で、重く、かさばり、傷つきやすく、デリケートな装置であり、個人用紫外線曝露追跡装置のニーズには全く適していない。さらに、各波長領域において、損傷効果は劇的に異なることがある。そのため、総紫外線曝露量だけでなく、UVA、UVB、及びUVC帯のそれぞれにおける曝露量も知ることが重要である。好ましくは、これらの帯内のより狭い波長領域での曝露も測定可能である。現在、いくつかの装置がUVA/UVB曝露を識別できるが、より完全で微細な波長の識別が必要である。ナノ結晶分光光度計は、小型、良好な波長識別、及び低コストを含む、個人用紫外線曝露追跡装置にとって非常に好適な設計パラメーターを有する。
【0155】
装置の操作自体は非常に簡単にすることができ、ソフトウェアユーザーインターフェース(UI)と一緒に使用すると容易になり得る。ソフトウェアUIは、スマートフォンアプリ、コンピューターソフトウェアプログラム、オンラインプラットフォーム、又はこれらの組み合わせとして供給され得る。UIは、紫外線曝露追跡装置により記録されたデータをさらに処理して、例えば、使用者の紫外線曝露履歴を表又はグラフで表すことができる。位置情報サービス(例えば、GPS)と共に使用される場合、UIは、使用者に、いつ及びどこで高レベル又は低レベルの紫外線曝露が起こったかに関する情報を提供できる。UIは、使用者の曝露レベルを分析し、選択されたチャネルにより(例えば、テキスト、プッシュ通知、電子メールなど)リアルタイムの通知及び提案を送ることができる。UIは、使用者のデータを統計的に保存及び処理し、使用者の長期の曝露に基づいて使用者分析結果及び提案を送る。使用者が高レベルの有害紫外線曝露に遭遇するらしい時に、使用者が変わり得るように、UIは、天気予報及び/又は他の使用者により収集された紫外線曝露と一体化又は接続されていてよい。UIは、任意に、使用者の紫外線曝露データを他者に、例えば、使用者が紫外線曝露の有害作用に特に敏感である場合医療従事者に通信するように構成できる。
【0156】
データ収集、処理、及び共有のための他の用途があり得る。使用者が自身の記録された紫外線曝露データに他の装置(例えば、ウェブ接続されたコンピューター及びスマートフォン)からアクセスできるように、UIはオンラインサービスと一体化され得る。
【0157】
典型的には、プレートリーダーは分光器を1つだけ有するので、試料のウェルは連続的に測定される。大量の試料を処理する場合、待ち時間が非常に長くなり得る。Perkin Elmerから入手可能なプレートリーダー(例えばEnSpire、EnVision、VICTOR、又はViewLux Plate Readers)に関する背景情報を参照されたい。
【0158】
しかし、各ウェルに専用の半導体ナノ結晶分光器が備わっていれば、プレートリーダー(plate read)は全てのウェルを同時に読み取ることができる。この構成は、従来の分光光度計に匹敵するサイズ及びコストをもたらすだろう。半導体ナノ結晶分光光度計は、個人がどこでも容易にそれにアクセスできるように、医療装置、プレートリーダー、又は個人用装置(例えば、スマートフォン)若しくはスマートフォン付属品などの装置に一体化できる。例えば、
図1Aに示される分光器100を含む装置10を参照されたい。用途には、食品の安全、薬の識別及び認証;疾病の診断及び分析(例えば、WO2010146588参照);空調又は環境条件モニタリング;個人用紫外線モニター;色合わせ(color matching)パルス酸素モニタリング;スペクトル画像;工業生産モニタリング及び品質管理;実験室用研究ツール;軍隊/警備のための化学薬品及び物質の検出及び分析;法医学分析;並びに農業用の分析ツールがあるが、これらに限定されない。
【0159】
上述のものなどの(〜1mm×1mm面積、Awaiba社製)超小型検出器アレイを使用すると、半導体ナノ結晶分光器は、ほとんど同じくらい小型に作ることができる。促進用(facilitating)電子素子は、分光器と共にパッケージできるが、これは装置の全体のサイズを大きくすることがあり、又は別にパッケージして有線若しくは無線接続により検出ユニットと接続できる。例えば、Awaiba社製ナノアイカメラが配線により外部電子装置と接続しているように。これらの分光器を生検用プローブに搭載して、非侵襲性又は最低限に侵襲性の診断及び容易にする外科手法を有することができる。分光器は、Medigus System又はCapsule内視鏡などの内視鏡にも一体化されて診断を支援し得る。分光器は、他の診断又は手術道具(例えば、癌のための)にも一体化されて、これらの手法を支援し得る。診断をするための分光学的な情報の使用を示す多くの研究結果がある。例えば、引用により全体として組み込まれる「組織診断のための定量的な光学分光法(Quantitative Optical Spectroscopy for Tissue Diagnosis)」(Annual Review of Physical Chemistry, Vol. 47: 555-606, 1996)を参照されたい。引用により全体として組み込まれるWO2010146588も参照されたい。
他の実施態様は、以下の請求項の範囲内にある。