特許第6265945号(P6265945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6265945
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】内燃機関の可変動弁機構
(51)【国際特許分類】
   F01L 13/00 20060101AFI20180115BHJP
【FI】
   F01L13/00 303A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-140852(P2015-140852)
(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-20469(P2017-20469A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】平松 直樹
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】山口 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】弓削 元宏
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−064116(JP,A)
【文献】 特開2004−308480(JP,A)
【文献】 特開2007−146693(JP,A)
【文献】 特開2007−332886(JP,A)
【文献】 特開2007−138782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の軸線上に揺動可能に設けられた入力部材(20)と出力部材(30)とを備え、カム(10)により入力部材(20)が駆動されると出力部材(30)にてバルブ(7)を駆動する構成であり、
入力部材(20)及び出力部材(30)と係合するスライダ(40)を備え、入力部材(20)及び出力部材(30)に対してスライダ(40)が前記軸線の長さ方向である軸線方向(p,q)に相対変位をすると、入力部材(20)に対して出力部材(30)が前記係合により揺動方向に相対回動をする構成であり、
スライダ(40)を変位させる変位装置(60)を備え、変位装置(60)でスライダ(40)を軸線方向(p,q)の一方である増加用方向(p)に変位させることで、前記相対変位及び前記相対回動をそれぞれ一方にさせてバルブ(7)のリフト量を増加させ、軸線方向(p,q)の他方である減少用方向(q)に変位させることで、前記相対変位及び前記相対回動をそれぞれ他方にさせてバルブ(7)のリフト量を減少させる可変動弁機構(1A)において、
スライダ(40)が所定の境界位置(X)よりも増加用方向(p)側の通常区間(P)にくると、可変状態になり、可変状態は、スライダ(40)が軸線方向(p,q)に変位しても、それと一緒に入力部材(20)及び出力部材(30)が軸線方向(p,q)に変位しないことで、前記相対変位及び前記相対回動をしてバルブ(7)のリフト量が変更される状態であり、
スライダ(40)が前記境界位置(X)よりも減少用方向(q)側の空走区間(Q)にくると、リフト保持状態になり、リフト保持状態は、スライダ(40)が軸線方向(p,q)に変位すると、それと一緒に入力部材(20)及び出力部材(30)も軸線方向(p,q)に変位することで、前記相対変位及び前記相対回動をしないでバルブ(7)のリフト量が保持される状態であることを特徴とする内燃機関の可変動弁機構。
【請求項2】
支持シャフト(50)を備え、支持シャフト(50)に入力部材(20)及び出力部材(30)が、支持シャフト(50)と一緒に軸線方向(p,q)に変位する形で揺動可能に支持され、
可変状態は、スライダ(40)が軸線方向(p,q)に変位しても、それと一緒に支持シャフト(50)が軸線方向(p,q)に変位しない状態であり、
リフト保持状態は、スライダ(40)が軸線方向(p,q)に変位すると、それと一緒に支持シャフト(50)も軸線方向(p,q)に変位する状態である請求項1記載の内燃機関の可変動弁機構。
【請求項3】
支持シャフト(50)は、パイプ状のシャフトであって、内周面から外周面にまで貫通した軸線方向(p,q)に延びる長孔(56)を備え、支持シャフト(50)を増加用方向(p)に付勢するスプリング(52)が設けられ、
変位装置(60)は、支持シャフト(50)の内側に挿入された制御シャフト(64)を備え、制御シャフト(64)にスライダ(40)が、長孔(56)を通過して延びる係合ピン(65)を介して、制御シャフト(64)と一緒に軸線方向(p,q)に変位する形で係合し、
可変状態は、支持シャフト(50)がスプリング(52)の付勢力により所定の基本位置(O)に配され、制御シャフト(64)で係合ピン(65)を介してスライダ(40)を軸線方向(p,q)に変位させても、係合ピン(65)が長孔(56)の減少用方向(q)側の内端面(56x)に当接しない状態であり、
リフト保持状態は、係合ピン(65)が前記内端面(56x)に当接して押圧することで、支持シャフト(50)が前記付勢力に抗して前記基本位置(O)よりも減少用方向(q)側の変位用区間(V)に配され、制御シャフト(64)で係合ピン(65)を介してスライダ(40)を軸線方向(p,q)に変位させても、前記付勢力により前記内端面(56x)が係合ピン(65)に付勢され続ける状態である請求項2記載の内燃機関の可変動弁機構。
【請求項4】
内燃機関の各気筒(6A,6B)毎に可変動弁機構(1A,1B)を備え、
各可変動弁機構(1A,1B)は、同一の軸線上に揺動可能に設けられた入力部材(20)と出力部材(30)とを備え、カム(10)により入力部材(20)が駆動されると出力部材(30)にてバルブ(7)を駆動する構成であり、各可変動弁機構(1A,1B)は、入力部材(20)及び出力部材(30)と係合するスライダ(40)を備え、入力部材(20)及び出力部材(30)に対してスライダ(40)が前記軸線の長さ方向である軸線方向(p,q)に相対変位をすると、入力部材(20)に対して出力部材(30)が前記係合により揺動方向に相対回動をする構成であり、
各可変動弁機構(1A,1B)の各スライダ(40)を一斉に変位させる変位装置(60)を備え、変位装置(60)で各スライダ(40)を軸線方向(p,q)の一方である増加用方向(p)に一斉に変位させることで、前記相対変位及び前記相対回動をそれぞれ一方にさせてバルブ(7)のリフト量を増加させ、軸線方向(p,q)の他方である減少用方向(q)に一斉に変位させることで、前記相対変位及び前記相対回動をそれぞれ他方にさせてバルブ(7)のリフト量を減少させる内燃機関の可変動弁機構群(1)において、
可変動弁機構(1A,1B)には、所定の気筒(6B)以外の気筒(6A)に対して設けられた第一可変動弁機構(1A)と、前記所定の気筒(6B)に対して設けられた第二可変動弁機構(1B)とがあり、
第一可変動弁機構(1A)は、スライダ(40)が所定の境界位置(X)よりも増加用方向(p)側の通常区間(P)にくると、可変状態になり、可変状態は、スライダ(40)が軸線方向(p,q)に変位しても、それと一緒に入力部材(20)及び出力部材(30)が軸線方向(p,q)に変位しないことで、前記相対変位及び前記相対回動をしてバルブ(7)のリフト量が変更される状態であり、スライダ(40)が前記境界位置(X)よりも減少用方向(q)側の空走区間(Q)にくると、リフト保持状態になり、リフト保持状態は、スライダ(40)が軸線方向(p,q)に変位すると、それと一緒に入力部材(20)及び出力部材(30)も軸線方向(p,q)に変位することで、前記相対変位及び前記相対回動をしないでバルブ(7)のリフト量が保持される状態であり、
第二可変動弁機構(1B)は、スライダ(40)が通常区間(P)及び空走区間(Q)のいずれの区間にきても、可変状態になり、
変位装置(60)で各スライダ(40)を通常区間(P)に配することで、第一及び第二のいずれの可変動弁機構(1A,1B)も可変状態になる通常状態にし、
変位装置(60)で各スライダ(40)を空走区間(Q)内の第二可変動弁機構(1B)のリフト量が零になる減筒区間(Qo)に配することで、第一可変動弁機構(1A)はバルブ(7)を駆動し、第二可変動弁機構(1B)はバルブ(7)を駆動しない減筒状態にすることを特徴とする内燃機関の可変動弁機構群。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のバルブを駆動すると共に、その駆動状態を内燃機関の運転状況に応じて変更する可変動弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
可変動弁機構の中には、本出願人が開発した図9に示す従来例(特許文献1等)の可変動弁機構群90がある。その可変動弁機構群90は、内燃機関の各気筒6,6・・毎に可変動弁機構90B,90B・・を備えている。
【0003】
そして、各可変動弁機構90Bは、同一の軸線上に揺動可能に設けられた入力部材92と出力部材93,93とを備えている。そして、カムにより入力部材92が駆動されると出力部材93,93にてバルブ7,7を駆動する。
【0004】
また、各可変動弁機構90Bは、入力部材92及び出力部材93,93と係合するスライダ94を備えている。そして、入力部材92及び出力部材93,93に対してスライダ94が軸線方向p,qに相対変位をすると、入力部材92に対して出力部材93,93が前記係合により揺動方向に相対回動をする。
【0005】
そして、この可変動弁機構群90は変位装置96を備えている。その変位装置96で、各可変動弁機構90B,90B・・のスライダ94,94・・を軸線方向p,qに一斉に変位させることで、前記相対変位及び前記相対回動をさせて各気筒6,6・・のバルブ7,7・・のリフト量を増減させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−263015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この可変動弁機構群90は、変位装置96で各可変動弁機構90B,90B・・のスライダ94,94・・を軸線方向p,qに一斉に変位させるため、各可変動弁機構90Bを個別に制御することができない。そのため、所定の気筒6のみを休止することはできない。しかしながら、燃費やエンジン性能の更なる向上のためには、所定の気筒のみを休止できることが好ましい。
【0008】
そこで、所定の気筒のみを休止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の内燃機関の可変動弁機構は、次のように構成されている。即ち、同一の軸線上に揺動可能に設けられた入力部材と出力部材とを備え、カムにより入力部材が駆動されると出力部材にてバルブを駆動する構成であり、入力部材及び出力部材と係合するスライダを備え、入力部材及び出力部材に対してスライダが前記軸線の長さ方向である軸線方向に相対変位をすると、入力部材に対して出力部材が前記係合により揺動方向に相対回動をする構成であり、スライダを変位させる変位装置を備え、変位装置でスライダを軸線方向の一方である増加用方向に変位させることで、前記相対変位及び前記相対回動をそれぞれ一方にさせてバルブのリフト量を増加させ、軸線方向の他方である減少用方向に変位させることで、前記相対変位及び前記相対回動をそれぞれ他方にさせてバルブのリフト量を減少させる可変動弁機構において、スライダが所定の境界位置よりも増加用方向側の通常区間にくると、可変状態になり、可変状態は、スライダが軸線方向に変位しても、それと一緒に入力部材及び出力部材が軸線方向に変位しないことで、前記相対変位及び前記相対回動をしてバルブのリフト量が変更される状態であり、スライダが前記境界位置よりも減少用方向側の空走区間にくると、リフト保持状態になり、リフト保持状態は、スライダが軸線方向に変位すると、それと一緒に入力部材及び出力部材も軸線方向に変位することで、前記相対変位及び前記相対回動をしないでバルブのリフト量が保持される状態であることを特徴とする。
【0010】
このような本発明の可変動弁機構と従来例の可変動弁機構とを組み合わせて、本発明の可変動弁機構で所定の気筒以外の気筒を駆動し、従来例の可変動弁機構で所定の気筒を駆動するようにすれば、所定の気筒のみを休止することができるからである。その具体的な態様としては、次に示す可変動弁機構群を例示する。
【0011】
即ち、内燃機関の各気筒毎に可変動弁機構を備え、各可変動弁機構は、同一の軸線上に揺動可能に設けられた入力部材と出力部材とを備え、カムにより入力部材が駆動されると出力部材にてバルブを駆動する構成であり、各可変動弁機構は、入力部材及び出力部材と係合するスライダを備え、入力部材及び出力部材に対してスライダが前記軸線の長さ方向である軸線方向に相対変位をすると、入力部材に対して出力部材が前記係合により揺動方向に相対回動をする構成であり、各可変動弁機構の各スライダを一斉に変位させる変位装置を備え、変位装置で各スライダを軸線方向の一方である増加用方向に一斉に変位させることで、前記相対変位及び前記相対回動をそれぞれ一方にさせてバルブのリフト量を増加させ、軸線方向の他方である減少用方向に一斉に変位させることで、前記相対変位及び前記相対回動をそれぞれ他方にさせてバルブのリフト量を減少させる可変動弁機構群において、可変動弁機構には、所定の気筒以外の気筒に対して設けられた第一可変動弁機構と、前記所定の気筒に対して設けられた第二可変動弁機構とがあり、第一可変動弁機構は、スライダが所定の境界位置よりも増加用方向側の通常区間にくると、可変状態になり、可変状態は、スライダが軸線方向に変位しても、それと一緒に入力部材及び出力部材が軸線方向に変位しないことで、前記相対変位及び前記相対回動をしてバルブのリフト量が変更される状態であり、スライダが前記境界位置よりも減少用方向側の空走区間にくると、リフト保持状態になり、リフト保持状態は、スライダが軸線方向に変位すると、それと一緒に入力部材及び出力部材も軸線方向に変位することで、前記相対変位及び前記相対回動をしないでバルブのリフト量が保持される状態であり、第二可変動弁機構は、スライダが通常区間及び空走区間のいずれの区間にきても、可変状態になり、変位装置で各スライダを通常区間に配することで、第一及び第二のいずれの可変動弁機構も可変状態になる通常状態にし、変位装置で各スライダを空走区間内の第二可変動弁機構のリフト量が零になる減筒区間に配することで、第一可変動弁機構はバルブを駆動し、第二可変動弁機構はバルブを駆動しない減筒状態にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定の気筒のみを休止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例の可変動弁機構群を示す斜視図である。
図2】同動弁機構の第一可変動弁機構を示す斜視図である。
図3】同第一可変動弁機構を示すaは側面断面図(bに示すIIIa−IIIa断面図)、bは正面断面図(aに示すIIIb−IIIb断面図)である。
図4】同動弁機構の第二可変動弁機構を示す斜視図である。
図5】同動弁機構において、スライダを通常区間又は境界位置に配したときを示す正面断面図であり、詳しくは、aはスライダを通常区間内で増加用方向に変位させたときを示す正面断面図であり、bはスライダを通常区間内で減少用方向に変位させて境界位置に変位させたときを示す正面断面図である。
図6】同動弁機構において、スライダを空走区間又は境界位置に配したときを示す正面断面図であり、詳しくは、bはスライダを空走区間内で増加用方向に変位させて境界位置に変位させたときを示す正面断面図であり、cはスライダを空走区間内で減少用方向に変位させて第二可変動弁機構のリフト量を零にしたときを示す正面断面図である。
図7】同動弁機構のリフト量の変化を示すグラフであり、詳しくは、aは図5aの状態でのリフト量を示すグラフであり、bは図5b及び図6bの状態でのリフト量を示すグラフであり、cは図6cの状態でのリフト量を示すグラフである。
図8】変更例の可変動弁機構群の第一可変動弁機構を示す側面断面図である。
図9】従来例の可変動弁機構群を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の可変動弁機構(第一可変動弁機構)の具体的な態様は、特に限定されないが、次のi,iiの態様を例示する。但し、実施し易い点でiiの態様であることが好ましい。
[i]可変動弁機構は、スライダが軸線方向に変位してもそれと一緒に軸線方向に変位しない支持シャフトを備え、支持シャフトに入力部材及び出力部材が揺動可能に支持されている。そして、可変状態は、スライダが支持シャフトに対して軸線方向に変位しても、それと一緒に入力部材及び出力部材が軸線方向に変位しない状態である。そして、リフト保持状態は、スライダが支持シャフトに対して軸線方向に変位すると、それと一緒に入力部材及び出力部材も軸線方向に変位する状態である態様である。
[ii]可変動弁機構は、支持シャフトを備え、支持シャフトに入力部材及び出力部材が、支持シャフトと一緒に軸線方向に変位する形で揺動可能に支持されている。そして、可変状態は、スライダが軸線方向に変位しても、それと一緒に支持シャフトが軸線方向に変位しない状態である。そして、リフト保持状態は、スライダが軸線方向に変位すると、それと一緒に支持シャフトも軸線方向に変位する状態である態様である。
【0015】
上記iiのより具体的な態様としては、次の態様を例示する。即ち、支持シャフトは、パイプ状のシャフトであって、内周面から外周面にまで貫通した軸線方向に延びる長孔を備えている。そして、支持シャフトを増加用方向に付勢するスプリングが設けられている。そして、変位装置は、支持シャフトの内側に挿入された制御シャフトを備えている。そして、制御シャフトにスライダが、長孔を通過して延びる係合ピンを介して、制御シャフトと一緒に軸線方向に変位する形で係合している。そして、可変状態は、支持シャフトがスプリングの付勢力により所定の基本位置に配され、制御シャフトで係合ピンを介してスライダを軸線方向に変位させても、係合ピンが長孔の減少用方向側の内端面に当接しない状態である。そして、リフト保持状態は、係合ピンが前記内端面に当接して押圧することで、支持シャフトが前記付勢力に抗して前記基本位置よりも減少用方向側の変位用区間に配され、制御シャフトで係合ピンを介してスライダを軸線方向に変位させても、前記付勢力により前記内端面が係合ピンに付勢され続ける状態である。
【0016】
入力部材及び出力部材とスライダとの係合は、特に限定されないが、次の1〜3の態様を例示する。
[1]入力部材とスライダとは、増加用方向に進むに従い揺動方向の一方に進む、一方向捩れのヘリカルスプラインの噛み合いで係合している。そして、出力部材とスライダとは、減少用方向に進むに従い揺動方向の前記一方に進む、他方向捩れのヘリカルスプラインの噛み合いで係合している。
[2]入力部材及び出力部材の一方とスライダとは、軸線方向に真っ直ぐ延びるストレートスプラインの噛み合いで係合している。そして、入力部材及び出力部材の他方とスライダとは、軸線方向の一方に進むに従い揺動方向の一方に進むヘリカルスプラインの噛み合いで係合している。
[3]入力部材及び出力部材の一方とスライダとは、軸線方向に真っ直ぐ延びるストレートスプラインの噛み合いで係合している。そして、入力部材及び出力部材の他方は、軸線方向の一方に進むに従い揺動方向の一方に進む傾斜面を備え、その傾斜面にスライダが当接している。
【0017】
次に本発明の実施例を示す。但し、本発明は実施例の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で、適宜変更して具体化することもできる。
【実施例】
【0018】
図1図7に示す実施例の可変動弁機構群1は、内燃機関が備える複数の気筒6A,6B・・の各バルブ7,7・・を駆動するための機構である。各バルブ7,7・・に対しては、図示しない、バルブ7を閉じる方向に付勢するバルブスプリングが取り付けられている。この可変動弁機構群1は、第一可変動弁機構1A,1Aと、第二可変動弁機構1B,1Bとを備えている。
【0019】
[第一可変動弁機構1A]
図2図3等に示す第一可変動弁機構1A,1Aは、所定の気筒6B,6B以外の気筒6A,6Aに対して設けられており、内燃機関の運転状況に応じてバルブのリフト量及び作用角(以下、「リフト量等」という。)を変更する。この第一可変動弁機構1Aは、カム10と、入力部材20と、出力部材30と、スライダ40と、支持シャフト50と、変位装置60とを備えている。なお、以下では、支持シャフト50の長さ方向を軸線方向p,qといい、その軸線方向p,qの一方を増加用方向pといい、他方を減少用方向qという。
【0020】
{カム10}
カム10は、軸線方向p,qに延びるカムシャフト18に突設されている。そのカムシャフト18は、第一及び第二の各可変動弁機構1A,1B・・に共通のシャフトである。そのカムシャフト18は、内燃機関のシリンダヘッドに軸線方向p,qに間隔をおいて並設された複数のカムハウジング9,9・・を、軸線方向p,qに貫通する形で支持されている。そのカムシャフト18は、内燃機関の回転に従い回転し、具体的には、内燃機関が2回転する毎に1回転する。そして、各カム10は、断面形状が円形のベース円11と、ベース円11から突出したノーズ12とを備えている。
【0021】
{入力部材20}
入力部材20は、支持シャフト50に間にスライダ40を挟んで外嵌されることで、揺動可能に支持されている。そして、カム10により駆動されて揺動する。
【0022】
詳しくは、この入力部材20は、内周面に増加用方向pに進むに従い揺動方向の一方(リフト方向)に進む、一方向捩れの入力部側ヘリカルスプライン24を備えている。また、先端部にカム10に当接するローラ21を備えている。また、後端部に突起22を備えている。その突起22に、ロストモーション機構29が当接している。そのロストモーション機構29は、入力部材20の突起22を、揺動方向の他方(戻り方向)に付勢することで、ローラ21をカム10に付勢して追従させるための機構である。このロストモーション機構29は、ボディ29aと、リフタ29cと、それらの間に介装されたロストモーションスプリング29bとを含み構成されている。
【0023】
{出力部材30}
出力部材30,30は、入力部材20よりも増加用方向p側に設けられた一方の出力部材30と、入力部材20よりも減少用方向q側に設けれた他方の出力部材30とからなる。そして、これらの出力部材30,30は、支持シャフト50に間にスライダ40を挟んで外嵌されることで、入力部材20と同一の軸線上に揺動可能に支持されている。そして、カム10により入力部材20が駆動されると、それと一緒に揺動してバルブ7,7を駆動する。
【0024】
詳しくは、各出力部材30は、内周面に減少用方向qに進むに従い揺動方向の一方(リフト方向)に進む、他方向捩れの出力部側ヘリカルスプライン34を備えている。また、先端部にバルブ7を押圧するノーズ33を備えている。そのノーズ33で、ロッカアーム38を介してバルブ7を駆動する。そのロッカアーム38は、ラッシュアジャスタ39によって揺動可能に支持されている。そして、各出力部材30の、入力部材20側とは反対側の端部には、出力部材30の本体とは別体に、端板35を備えている。
【0025】
{スライダ40}
スライダ40は、円筒状の部材であって、支持シャフト50に軸線方向p,qに相対変位が許容され、かつ、周方向にも相対揺動が許容される形で外嵌されている。そして、このスライダ40の内周面には、周方向(揺動方向)に延びる係合溝46が凹設されている。
【0026】
そして、スライダ40には、入力部材20及び出力部材30,30が外嵌され、それらとヘリカルスプラインの噛み合いで係合している。具体的には、スライダ40は、外周面に、入力部側ヘリカルスプライン24と噛み合う入力用ヘリカルスプライン42と、出力部側ヘリカルスプライン34,34と噛み合う出力用ヘリカルスプライン43,43とを備えている。そのため、入力部材20及び出力部材30,30に対してスライダ40が軸線方向p,qに相対変位をすると、入力部材20に対して出力部材30,30が、スライダ40とのヘリカルスプラインの噛み合いで揺動方向に相対回動をする。
【0027】
{支持シャフト50}
支持シャフト50は、第一及び第二の各可変動弁機構1A,1B・・に共通のパイプ状のシャフトである。この支持シャフト50は、複数のカムハウジング9,9・・を軸線方向p,qに貫通する形で、軸線方向p,qに変位可能に支持されている。そして、前述の通り、各可変動弁機構1A,1B・・の入力部材20及び出力部材30,30を、スライダ40を介して揺動可能に支持している。
【0028】
そして、減少用方向q側の出力部材30と、それに隣接するカムハウジング9との間には、スプリング52が介装されている。そのスプリング52は、減少用方向q側の出力部材30の端面(端板35)を増加用方向pに付勢することで、入力部材20及び出力部材30,30を増加用方向pに付勢している。
【0029】
また、増加用方向p側の出力部材30とそれに隣接するカムハウジング9との間には、受部材53が設けられている。その受部材53は、Cリングであり、支持シャフト50の外周面に凹設された周方向に延びる嵌合溝54に嵌合することで、支持シャフト50と一緒に軸線方向p,qに変位する形で取り付けられている。その受部材53に、増加用方向p側の出力部材30の端面(端板35)がスプリング52により付勢されている。
【0030】
よって、これらのスプリング52と受部材53とにより、支持シャフト50に入力部材20及び出力部材30,30が、支持シャフト50と一緒に軸線方向p,qに変位する形で係合している。
【0031】
そして更に、スプリング52は、入力部材20及び出力部材30,30並びに受部材53を介して、支持シャフト50を増加用方向pに付勢している。そして、受部材53に隣接するカムハウジング9は、受部材53に当接することで支持シャフト50が所定の基本位置Oよりも増加用方向pに変位するのを阻止するストッパとなっている。そのため、支持シャフト50は、減少用方向q側に外力が加わらない状態では、スプリング52の付勢力により基本位置Oに配される。その一方、減少用方向q側に外力が加わる状態では、スプリング52が圧縮されることで基本位置Oよりも減少用方向q側の変位用区間Vに配される。
【0032】
また、この支持シャフト50は、第一及び第二の各可変動弁機構1A,1B・・毎に、内周面から外周面にまで貫通した軸線方向p,qに延びる長孔56,56・・を備えている。
【0033】
{変位装置60}
変位装置60は、第一及び第二の各可変動弁機構1A,1B・・に共通の装置である。この変位装置60は、各可変動弁機構1A,1B・・の各スライダ40,40・・を一斉に軸線方向p,qに変位させる。
【0034】
具体的には、変位装置60は、各スライダ40,40・・を増加用方向pに一斉に変位させることで、前記相対変位(入力部材20及び出力部材30,30に対するスライダ40の軸線方向p,qの相対変位)及び前記相対回動(入力部材20に対する出力部材30,30の揺動方向の相対回動)をそれぞれ一方にさせてバルブ7のリフト量等を増加させる。また、変位装置60は、各スライダ40,40・・を減少用方向qに一斉に変位させることで、前記相対変位及び前記相対回動をそれぞれ他方にさせてバルブ7,7・・のリフト量等を減少させる。
【0035】
詳しくは、この変位装置60は、各スライダ40,40・・を軸線方向p,qに一斉に変位させる制御シャフト64を備えている。その制御シャフト64は、支持シャフト50の内側に設けられている。その制御シャフト64に、長孔56を通過して延びる係合ピン65が取り付けられている。その係合ピン65が、ブッシュ66を介してスライダ40の係合溝46に係合している。それにより、制御シャフト64にスライダ40が、係合ピン65とブッシュ66とを介して、軸線方向p,qには一緒に変位し、周方向には相対揺動が許容される形で係合している。
【0036】
{全体構成}
第一可変動弁機構1Aは、図5に示すように、制御シャフト64でスライダ40を所定の境界位置Xよりも増加用方向p側の通常区間Pに配すると、可変状態になる。その可変状態のときには、支持シャフト50がスプリング52の付勢力によりカムハウジング9に付勢されて基本位置Oに配される。そして、制御シャフト64で係合ピン65を介してスライダ40を軸線方向p,qに変位させても、係合ピン65が長孔56の減少用方向q側の内端面56xに当接しない。
【0037】
そのため、制御シャフト64で係合ピン65を介してスライダ40を軸線方向p,qに変位させても、それと一緒に支持シャフト50並びに入力部材20及び出力部材30が軸線方向p,qに変位しない。そのため、入力部材20及び出力部材30に対してスライダ40が軸線方向p,qに相対変位をする。そのため、入力部材20に対して出力部材30,30が、スライダ40とのヘリカルスプラインの噛み合いで揺動方向に相対回動をする。そのため、バルブ7,7のリフト量等が変更される。
【0038】
その一方、第一可変動弁機構1Aは、図6に示すように、制御シャフト64でスライダ40を前記境界位置Xよりも減少用方向q側の空走区間Qに配すると、リフト保持状態になる。そのリフト保持状態のときには、係合ピン65が長孔56の前記内端面56xに当接してこれを押圧することで、支持シャフト50がスプリング52の付勢力に抗して変位用区間Vに配される。そして、制御シャフト64で係合ピン65を介してスライダ40を軸線方向p,qに変位させても、スプリング52の付勢力により長孔56の前記内端面56xは係合ピン65に付勢され続ける。そのため、支持シャフト50は係合ピン65と一緒に軸線方向p,qに変位する。
【0039】
そのため、制御シャフト64で係合ピン65を介してスライダ40を軸線方向p,qに変位させると、それと一緒に支持シャフト50並びに入力部材20及び出力部材30も軸線方向p,qに変位する。そのため、入力部材20及び出力部材30に対してスライダ40が軸線方向p,qに相対変位をしない。そのため、入力部材20に対して出力部材30,30が、スライダ40とのヘリカルスプラインの噛み合いで揺動方向に相対回動をすることもない。そのため、バルブ7,7のリフト量等は保持される。
【0040】
[第二可変動弁機構1B]
図4等に示す第二可変動弁機構1Bは、所定の気筒6B,6Bに対して設けられている。各第二可変動弁機構1Bは、次に示す点で第一可変動弁機構1Aと異なり、その他の点で同様である。
【0041】
即ち、スプリング52及び受部材53を備えていない。そして、各出力部材30,30の、入力部材20とは反対側の端面(端板35,35)が、それぞれに隣接するカムハウジング9,9に(直接又はシムを介して)当接している。そのため、制御シャフト64と一緒に支持シャフト50が軸線方向p,qに変位しても、それと一緒に入力部材20及び出力部材30,30が軸線方向p,qに変位することがない。
【0042】
そのため、第二可変動弁機構1Bは、図5に示すように、スライダ40を通常区間Pに配しても、図6に示すように、スライダ40を空走区間Qに配しても、可変状態になる。但し、スライダ40を空走区間Qに配したときの可変状態は、上記の可変状態と若干メカニズムが異なる。即ち、その空走区間Qに配したときの可変状態では、制御シャフト64で係合ピン65を介してスライダ40を軸線方向p,qに変位させると、それと一緒に支持シャフト50は軸線方向p,qに変位するが、それらと一緒に入力部材20及び出力部材30は軸線方向p,qに変位しないことで、前記相対変位及び前記相対回動をして、バルブのリフト量等が変更される。
【0043】
[可変動弁機構群1]
以上に示した第一及び第二可変動弁機構1A,1Bを備えた可変動弁機構群1は、次のようにして、各気筒6A,6B・・のバルブ7,7・・の駆動状態を切り換える。
【0044】
即ち、図5aに示すように、制御シャフト64で各スライダ40,40・・を通常区間P,P・・に配することで、通常状態にする。その通常状態は、図7aに示すように、第一及び第二のいずれの可変動弁機構1A,1B・・も可変状態になる状態である。
【0045】
その一方、図6cに示すように、制御シャフト64で各スライダ40,40・・を空走区間Q,Q・・内の各第二可変動弁機構1B,1Bのリフト量が零になる減筒区間Qoに配することで、減筒状態にする。その減筒状態は、図7cに示すように、第一可変動弁機構1A,1Aはバルブ7,7・・を駆動し、第二可変動弁機構1B,1Bはバルブ7,7・・を駆動しない状態である。なお、空走区間Q内の、境界位置Xと減筒区間Qoとの間の区間は、スライダ40,40・・を積極的に止めて使用することのない通過用区間Qtである。
【0046】
本実施例の可変動弁機構群1によれば、上記の減筒状態にすることで、所定の気筒6B,6B(第二可変動弁機構1B,1B)のみを休止することができる。
【0047】
なお、本実施例は、例えば次の変更例のようにして実施することもできる。
[変更例]図8に示すように、支持シャフト50に第二受部材53’を、支持シャフト50と一緒に軸線方向p,qに変位するように取り付けてもよい。その第二受部材53’は、減少用方向q側の出力部材30の端面に当接する部材である。そして更に、減少用方向q側の出力部材30の端面(端板35)をスプリング52で付勢する代わりに、その第二受部材53’をスプリング52で付勢するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 可変動弁機構群
1A 第一可変動弁機構
1B 第二可変動弁機構
6A 所定の気筒以外の気筒
6B 所定の気筒
7 バルブ
10 カム
20 入力部材
30 出力部材
40 スライダ
50 支持シャフト
52 スプリング
56 長孔
56x 長孔の減少用方向側の内端面
60 変位装置
64 制御シャフト
65 係合ピン
p 増加用方向(軸線方向の一方)
q 減少用方向(軸線方向の他方)
X 境界位置
P 通常区間
Q 空走区間
Qo 減筒区間
O 基本位置
V 変位用区間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9