(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本発明が、以下でより完全に記述される。しかしながら、本発明は、相異なる形態において実施され得、本明細書に記載された実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなるように提供され、当業者に本発明の範囲を完全に伝えるだろう。
【0013】
本明細書において本発明の記述の中で使用された用語は、特定の実施形態を記述するためのものにすぎず、本発明の限定となることを意図していない。本発明の実施形態についての記述および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」という単数形は、そうでないと文脈が明確に指し示していない限り、複数形も同様に含むことが意図されている。
【0014】
そうでないと規定されていない限り、本明細書において使用された(専門用語および科学用語を含めた)すべての用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般的に使用される辞書において規定されている用語等の用語は、本願および関連技術に関する文脈におけるそれらの意味と矛盾しない意味を有すると解釈すべきであり、かつ、本明細書において明示的にそのように規定されていない限り、理想化した意味または過度に形式的な意味に解釈すべきでないと理解されよう。本明細書において本発明の記述の中で使用された用語は、特定の実施形態を記述するためのものにすぎず、本発明の限定となることを意図していない。本明細書において言及されたすべての公報、特許出願、特許およびその他の参考文献は、それらの全部分を参照により本明細書の一部をなすものとする。用語が対立する場合、本明細書で規制する。
【0015】
同様に、本明細書において使用されるとき、「および/または」は、列挙されている関連物品のうちの1つまたは複数に関して可能な任意の組合せおよびすべての組合せについて言及し包含するだけでなく、選択肢(「または」)として解釈した場合は、組合せの欠落についても言及し包含する。
【0016】
そうでないと文脈が指し示していない限り、本明細書において記述された本発明の様々な特質が任意の組合せにおいて使用され得ることが特に意図されている。さらに、本発明は、本発明のいくつかの実施形態では、本明細書において記述されたあらゆる特質または特質の組合せが排除または省略され得ることも企図されている。例示すると、複合体が構成要素A、BおよびCを備えることを本明細書に記載されている場合、A、BもしくはCのいずれかまたはこれらの組合せが省略および放棄され得ることが特に意図されている。
【0017】
本明細書において使用されるとき、移行句「から本質的になる」(および文法的変形体も含む)は、特許請求の範囲に記載の発明に関する列挙されている材料またはステップ「および基本的かつ新規な特徴(複数可)に実質的に影響しないもの」を包含すると解釈すべきである。In re Herz、537F.2d 549、551〜52、190 U.S.P.Q.461、463(CCPA1976)(原文の中の強調箇所)を参照されたく、MPEP第2111.03節も参照されたい。したがって、本明細書において使用されるときの「から本質的になる」という用語は、「含んでいる」と等価と解釈すべきではない。
【0018】
化合物の量または濃度、用量、時間、温度等のような測定可能な値に言及する場合に本明細書において使用されるときの「約」という用語は、明示された量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、またはさらには±0.1%の変化を包含することを意味する。測定可能な値に関して本明細書において提供された範囲は、その他のあらゆる範囲および/またはその中の個々の値を含み得る。
【0019】
本発明は、局所的に投与され得る医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、疎水性ベースおよび両親媒性化合物を含み得、これらから本質的になり得、またはこれらからなる。本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、水分活性化医薬品有効成分をさらに含む。本発明の医薬組成物は、軟膏、膏薬および/またはクリーム等を含み得る。
【0020】
本明細書において使用されるときの「疎水性ベース」は、天然脂肪および/もしくは合成脂肪、ワックスならびに/または油等を指す。任意の適切な疎水性ベースは、本発明の医薬組成物中に使用され得る。本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、2つ以上の疎水性ベース、限定されるわけではないが例えば2つ、3つ、4つまたは5つ以上の疎水性ベースを含み得る。例示的な疎水性ベースは、限定されるわけではないが、分岐状および無分岐状の炭化水素、分岐状および無分岐状の炭化水素ワックス、ワセリン、炭化水素ゲル、流動パラフィン、白色ワセリン、ペトロラタム、微結晶性ワックス、カンデリアワックス、カルナウバワックス、ラノリン(ウールワックス)、ウールワックスアルコール、アフリカハネガヤワックス、コルクワックス、グアルマワックス(guaruma wax)、米ぬかワックス、サトウキビワックス、ベリーワックス、オウリキュリーワックス(ouricury wax)、大豆ワックス、ホホバ油、尾腺グリース、セレシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、植物油、動物油、カルナウバワックス、蜜蝋、カカオバター、ハードファット、鉱油、植物油、アボカド油、ボラージ油、キャノーラ油、ヒマシ油、カモミール油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、菜種油、マツヨイグサ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、大豆油、スイートアーモンド、パーム油、パーム核油、ゴボウ種子油、ゴマ油、ルリジサ種子油、アブラナ油、メンヘーデン油(brevoortia oil)、牛脚油、ロックローズ油、アブラヤシ油、アーモンド油、松根油、オリーブ油、ピーナッツ油、小麦胚芽油、ブトウ種子油、アザミ油、ラード、獣脂、パームオレイン、イリッペバター、シアバター、ココアバター、コクムバター(kokum butter)、サルバター、レシチン、木蝋ラノリン、部分水素化植物油、疎水性ポリマー、ならびにこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態では、疎水性ベースは、疎水性ポリマーを含み得る。任意の適切な疎水性ポリマーは、本発明の医薬組成物中に使用され得る。例示的な疎水性ポリマーは、限定されるわけではないが、炭化水素ポリマーおよび/またはコポリマー、芳香族ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリビニルクロリド、ポリエチレン、ポリ−L−ラクチド、ポリ−DL−グリコリド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド、ポリイミドおよびポリビニルアセテートが挙げられる。本発明の特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の炭化水素ポリマーおよび/またはコポリマーを含む。特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の炭化水素ポリマーおよび/または炭化水素コポリマー、限定されるわけではないが、例えば商標Versagel(登録商標)という商標でCalumet Specialty Products Partners of Indianapolis、INから市販されているものおよび/またはCrodabase SQという商標でCroda International Plc of East Yorkshire、United Kingdomから市販されているもの等を含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態では、疎水性ポリマーは、医薬組成物中で増粘剤および/またはゲル化剤として作用し得る。特に、疎水性ポリマーは、粘弾性物質として作用し得、施用箇所に組成物を、組成物の中に分散されたあらゆる化合物(例えば、医薬品有効成分等)と一緒に保持し得る。疎水性ポリマーは、約30重量%から約60重量%までの濃度、または、限定されるわけではないが、例えば約35重量%〜約55重量%もしくは約40重量%〜約50重量%等、その中の任意の範囲の濃度で本発明の医薬組成物中に存在し得る。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、疎水性ベースは、1つまたは複数の植物油および/または鉱油を含む。任意の適切な油は、本発明の医薬組成物中に使用され得る。例示的な鉱油は、限定されるわけではないが、軽質鉱油、白色鉱油、パラフィン系油、ナフテン系油、芳香油、およびこれらの任意の組合せが挙げられる。油(例えば、植物油および/または鉱油)は、約1重量%から約30重量%までの濃度、または、限定されるわけではないが例えば約5重量%〜約20重量%もしくは約5重量%〜約15重量%等、その中の任意の範囲の濃度で本発明の医薬組成物中に存在し得る。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、限定されるわけではないが、油(例えば、植物油および/または鉱油)等の疎水性ベースは、医薬組成物の粘度および/または展延性(spreadability)を調整するのに使用され得る。例えば、軽鉱物等の低粘度の疎水性ベースは、高粘度の疎水性ベースを含む医薬組成物等の医薬組成物を薄める(すなわち、粘度を低下させる)のに使用され得る。これは、幅広い面積にわたって本発明の医薬組成物の施用を可能にし得、医薬組成物の中に分散されたあらゆる化合物(例えば、医薬品有効成分等)を施用箇所で維持するように働き得る。本発明の特定の実施形態では、疎水性ベースは、鉱油および疎水性ポリマーを含む。
【0025】
疎水性ベースは、約35重量%から約90重量%までの濃度、または、限定されるわけではないが例えば約40重量%〜約80重量%もしくは約50重量%〜約70重量%等、その中の任意の範囲の濃度で本発明の医薬組成物中に存在し得る。本発明の特定の実施形態では、疎水性ベースは、約45重量%から約55重量%までの濃度で本発明の医薬組成物中に存在する。
【0026】
本明細書において使用されるときの「両親媒性化合物」は、親水性および疎水性を備える化合物を指す。両親媒性化合物は、2つ以上の化合物を含み得、それらのそれぞれは、親水性および/または疎水性を提供することができる。いくつかの実施形態では、両親媒性化合物は、親水性および疎水性を有する1つの化合物を含む。本発明の特定の実施形態では、両親媒性化合物は、蒸気状の水分を実質的に吸収することなく水分を吸収することができる。水分の吸収は、本発明の医薬組成物中の水分活性化医薬品有効成分の活性化を、水分と接触したときには可能にし得るが、蒸気状の水分と接触したときには可能にし得ない。本明細書において使用されるときの「実質的に吸収する」(およびその文法的変形を含む)は、吸収される蒸気状水分の量が、両親媒性化合物の2重量%超であることを意味する。したがって、本発明の両親媒性化合物は、蒸気状水分を、両親媒性化合物の約2重量%未満、1.5重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%未満またはその中の任意の範囲だけ吸収する。本発明のいくつかの実施形態では、両親媒性化合物は、本発明の医薬組成物が蒸気状水分を実質的に吸収するのを予防および/または最小化し得、それにより水分が、本発明の医薬組成物中に約2%未満だけ存在し得る。
【0027】
本明細書において使用されるときの「水分」は、限定されるわけではないが血液、汗、粘液、唾液、皮脂、涙、滲出液および/もしくは子宮分泌物等の体液、水、脱酸素水、生理食塩水、酸性もしくはアルカリ性の緩衝液、ならびに/またはこれらの任意の組合せ等の液体を指すが、限定されるわけではない。本明細書において使用されるときの「蒸気状の水分」は、気相中の水分を指す。例えば、蒸気状の水分は、限定されるわけではないが、水蒸気が挙げられる。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、両親媒性化合物は、水蒸気の吸収を予防および/または最小化し得、それにより、医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredient、API)が水分活性化医薬成分を含む場合、本発明の医薬組成物中のAPIは、蒸気状水分(例えば、水蒸気)により活性化されない。対照的に、両親媒性化合物は、本発明の医薬組成物が水分と接触する場合、水分(例えば、水、体液等)を吸収し得、かつ/または、水分を吸収できるようにし得、それにより、APIが水分活性化医薬品有効成分を含む場合にAPIを活性化する。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、両親媒性化合物は、水蒸気を約2重量%未満または約1重量%未満だけ吸収する。これにより、本発明の医薬組成物による水蒸気の吸収を最小化および/または予防され得、したがって、水は、本発明の医薬組成物中に、約2重量%未満または約1重量%未満の水だけ存在し得る。本発明の特定の実施形態では、両親媒性化合物は、約0.5重量%未満の水蒸気を吸収し、したがって、本発明の医薬組成物は、約0.5重量%未満の水を含み得る。
【0029】
両親媒性化合物は、12から20、または、限定されるわけではないが15から20もしくは18から20等、その中の任意の範囲の親水親油バランス(hydrophilic−lipophilic balance、HLB)値を有し得る。本発明の特定の実施形態では、両親媒性化合物は、19のHLB値を備える。
【0030】
例示的な両親媒性化合物は、限定されるわけではないが、脂肪酸エステルが挙げられる。1つまたは複数の、例えば2つ、3つまたは4つ以上の脂肪酸エステル(複数可)は、本発明の医薬組成物中に存在し得る。例示的な脂肪酸エステルは、限定されるわけではないが、メチルラウレート、エチルラウレート、エチルミリステート、エチルパルミテート、エチルリノレート、プロピルイソブチレート、イソプロピルラウレート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、オレイルミリステート、オレイルステアレートおよびオレイルオレエート等のC
6〜C
22アルキルおよび/またはアルケニル脂肪酸エステル、エトキシ化脂肪アルコールの脂肪酸エステル等のエーテル−エステル、エチレングリコールモノ−およびジ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ−およびジ脂肪酸エステル等の多価アルコールエステル、PEG−6−ラウレート、PEG−6−ステアレート、PEG−8−ジラウレート、PEG−8−ジステアレート等のようなポリエチレングリコール(6−2000)脂肪酸モノエステルおよび/またはジエステル、PEG−20−グリセリルラウレート、PEG−20−グリセリルステアレートおよびPEG−20−グリセリルオレエート等のポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ−およびジ脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール2000モノオレエート、ポリプロピレングリコール2000モノステアレート、エトキシ化プロピレングリコールモノステアレート、グリセリルモノ−およびジ脂肪酸エステル、ポリグリセリル−10ラウレート等のようなポリグリセロール脂肪酸エステル、エトキシ化グリセリルモノステアレート、1,3−ブチレングリコールモノステアレート、1,3−ブチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステル、ソルビタントリオレエートおよびソルビタンモノラウレートを含むソルビタン脂肪酸エステル、PEG−6ソルビタンモノオレエート等のポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、サッカロースモノパルミテートおよびサッカロースモノステアレート等のスクロース脂肪酸エステル、蜜蝋、鯨蝋、ミリスチルミリステート、ステアリルステアレートおよびアラキジルベヘネート等のワックスエステル、PEG−10オレイルエーテルまたはPEG−9セチルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル、PEG−10−100ノニルフェノール等のポリエチレングリコールアルキルフェノール、ポロキサマー188等のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、コレステロール脂肪酸エステル等のステロールエステル、ならびにこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0031】
脂肪酸エステルは、ポリエチレングリコール(PEG)グリセリドを含み得る。PEGグリセリドのポリエチレングリコール部分は、両親媒性化合物の親水性を実現し得、限定されるわけではないが、PEG5〜1000、またはその中の任意の範囲、およびこれらの任意の組合せを挙げることができる。PEGグリセリドのグリセリド部分は、両親媒性化合物の疎水性を実現し得、限定されるわけではないがヒマシ油、水素化ヒマシ油、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、植物油(例えば、トウモロコシ油、オリーブ油、ピーナッツ油、パーム核油、杏仁油、アーモンド油等)、ならびにこれらの任意の組合せ等の天然油および/または水素化油を挙げることができるが、限定されるわけではない。例示的なポリエチレングリコール(PEG)グリセリドは、限定されるわけではないが、PEG−20ヒマシ油、PEG−20水素化ヒマシ油、PEG−20トウモロコシグリセリド、PEG−20アーモンドグリセリド、PEG−23トリオレエート、PEG−40パーム核油、PEG−8カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG−6カプリル酸/カプリン酸グリセリド、ラウロイルマクロゴール−32グリセリド、ステアロイルマクロゴールグリセリド、トコフェリルPEG−1000スクシネート、およびこれらの任意の組合せが挙げられる。本発明のいくつかの実施形態では、脂肪酸エステルは、PEG5〜30(すなわち、PEG5、6、7、8、9、10等)およびカプリル酸/カプリン酸グリセリドを含む。本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、PEG−5−カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG−6−カプリル酸/カプリン酸グリセリド、PEG−7−カプリル酸/カプリン酸グリセリド、および/または、PEG−8−カプリル酸/カプリン酸グリセリドを含む。本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数の脂肪酸エステル、限定されるわけではないが例えばSOFTIGEN(登録商標)という商標でSasol of Hamburg、Germanyから市販されている脂肪酸エステルを含む。
【0032】
両親媒性化合物は、約1重量%から約30重量%までの濃度、または、限定されるわけではないが約2重量%〜約20重量%または約5重量%〜約15重量%等、その中の任意の範囲の濃度で本発明の医薬組成物中に存在し得る。本発明の特定の実施形態では、両親媒性化合物は、本発明の医薬組成物中に約10重量%の濃度で存在する。
【0033】
本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の添加剤をさらに含み得る。医薬組成物中への使用のための添加剤は、当分野において周知であり、例としては、the Handbook of Pharmaceutical Excipients(Rowe,R.C.ら、APhA Publications、第5版、2005年)の中に見出すことができる。添加剤の種類は、限定されるわけではないが、エモリエント、保湿剤、共溶剤、pH調整剤、撥水化剤、消泡剤、界面活性剤、溶解補助剤、湿潤剤、透過促進剤、抗酸化剤、および/または溶剤を挙げることができる。添加剤は、任意の適切な濃度で本発明の医薬組成物中に存在し得る。
【0034】
本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、共溶剤をさらに含み得る。共溶剤は、約1重量%から約30重量%までの濃度、または、限定されるわけではないが約2重量%〜約20重量%もしくは約5重量%〜約15重量%等、その中の任意の範囲の濃度で本発明の医薬組成物中に存在し得る。本発明の特定の実施形態では、共溶剤は、約10重量%から約15重量%までの濃度で本発明の医薬組成物中に存在する。
【0035】
例示的な共溶剤は、限定されるわけではないが、脂肪酸エステル、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコールが挙げられる。本発明のいくつかの実施形態では、共溶剤は、中性油を含み得る。本発明の特定の実施形態では、共溶剤は、カプリル酸および/またはカプリン酸トリグリセリド、限定されるわけではないがMIGLYOL(登録商標)という商標でSasol of Hamburg、Germanyから市販されているもの等を含む。
【0036】
本発明の医薬組成物は、保湿剤を含み得る。任意の適切な保湿剤または保湿剤の組合せを使用することができる。保湿剤は、約1重量%から約25重量%までの濃度、または、限定されるわけではないが約2重量%〜約20重量%もしくは約5重量%〜約15重量%等、その中の任意の範囲の濃度で本発明の医薬組成物中に存在し得る。本発明の特定の実施形態では、保湿剤は、約10重量%から約15重量%までの濃度で本発明の医薬組成物中に存在する。
【0037】
例示的な保湿剤は、限定されるわけではないが、多価アルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびメトキシポリエチレングリコール等のグリコール、プロピレングリコール、グリセロール、イソプロパノール、エタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコールまたはこれらの混合物等のグリセロール、ソルビトール、キシリトールおよびマルチトール等の糖ポリオール、ポリデキストロース等のポリオール、ジメチルイソソルビド、キラヤ、尿素、ならびにこれらの任意の組合せが挙げられる。本発明の特定の実施形態では、保湿剤は、ヘキシレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、およびこれらの任意の組合せ等のアルキレングリコールを含む。
【0038】
本発明の医薬組成物は、医薬品有効成分(API)を含み得る。APIは、任意の適切な濃度で本発明の医薬組成物中に存在し得る。本発明の特定の実施形態では、APIは、水分活性化医薬品有効成分、限定されるわけではないが例えば一酸化窒素放出性化合物および/または水溶性APIを含む。本発明のいくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、医薬組成物により吸収される水分の量を制御することにより、APIの徐放および/または持続的放出を実現し得る。本発明の特定の実施形態では、水分活性化APIは、約0.1重量%から約70重量%までの濃度、または、限定されるわけではないが約1重量%〜約50重量%もしくは約2重量%〜約30重量%等、その中の任意の範囲の濃度で本組成物中に存在する。
【0039】
本発明の医薬組成物中でザラザラした感じになるのを回避するために、APIの最大粒径は、約100μm未満であり得、いくつかの実施形態では約20μm未満であり得、さらなる実施形態では約10μm未満であり得る。
【0040】
任意の適切な医薬品有効成分(API)またはAPIの組合せは、本発明の実施形態による組成物の中に含まれ得る。APIの例は、限定されるわけではないが、抗菌剤、抗座瘡剤、抗炎症剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗ヒスタミン剤、防腐剤、免疫抑制剤、止血剤、血管拡張剤、創傷治癒剤、抗バイオフィルム剤およびそれらの混合物が挙げられる。
【0041】
抗菌剤の例は、限定されるわけではないが、ペニシリンおよび関連した薬物、カルバペネム、セファロスポリンおよび関連した薬物、エリスロマイシン、アミノグリコシド、バシトラシン、グラミシジン、ムピロシン、クロラムフェニコール、チアンフェニコール、フジシン酸ナトリウム、リンコマイシン、クリンダマイシン、マクロライド、ノボビオシン、ポリミキシン、リファマイシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、バノマイシン、テイコプラニン、ストレプトグラミン、スルホンアミド、トリメトプリムおよびその組合せならびにピリメタミンを含めた抗葉酸剤、ニトロフラン、マンデル酸メテナミンおよびヒプル酸メテナミンを含めた合成抗細菌薬、ニトロイミダゾール、キノロン、フルオロキノロン、イソニアジド、エタンブトール、ピラジナミド、パラ−アミノサリチル酸(PAS)、シクロセリン、カプレオマイシン、エチオナミド、プロチオナミド、チアセタゾン、バイオマイシン、エベミノマイシン、グリコペプチド、グリクリクリクリン、ケトライド、オキサゾリジノン、イミペネン、アミカシン、ネチルミシン、ホスホマイシン、ゲンタマイシン、セフトリアキソン、ジラシン(Ziracin)、リネゾリド(Linezolid)、シナシッド(Synercid)、アズトレオナム(Aztreonam)、およびメトロニダゾール(Metronidazole)、エピロプリム(Epiroprim)、サンフェトリネムナトリウム(Sanfetrinem sodium)、、ビアペネム(Biapenem)、ジネミシン(Dynemicin)、セフルプレナム(Cefluprenam)、セフォセリス(Cefoselis)、サンフェトリネムセレキセチル(Sanfetrinem celexetil)、セフピロム(Cefpirome)、メルサシジン(Mersacidin)、リファラジル(Rifalazil)、コサン(Kosan)、レナペネム(Lenapenem)、ベネプリム(Veneprim)、スロペネム(Sulopenem)、リチペナムアコキシル(ritipenam acoxyl)、シクロチアリジン(Cyclothialidine)、ミカコシジンA(micacocidin A)、カルモナム(carumonam)、セフォゾプラン(Cefozopran)ならびにセフェタメットピボキシル(Cefetamet pivoxil)が挙げられる。
【0042】
局所用抗座瘡剤の例は、限定されるわけではないが、アダパレン、アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、クリンダマイシンおよびリン酸クリンダマイシン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、サリチル酸およびレチノイン酸(レチン−A”)等の角質溶解薬、ノルゲスチメート、有機過酸化物、イソトレチノインおよびトレチノイン等のレチノイド、スルファセタミドナトリウム、ならびにタザロテンが挙げられる。特定の抗座瘡剤としては、アダパレン、アゼライン酸、過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン(例えば、リン酸クリンダマイシン)、ドキシサイクリン(例えば、ドキシサイクリン一水和物)、エリスロマイシン、イソトレチノイン、ノルゲスチメート、スルファセタミドナトリウム、タザロテン、エトレチネートおよびアセトレチンが挙げられる。
【0043】
抗ヒスタミン剤の例は、限定されるわけではないが、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸クロルフェニラミン、クロルフェニラミンマレエート イソチペンジルヒドロクロリド、塩酸トリペレナミン、塩酸プロメタジン、塩酸メトジラジン等が挙げられる。局所麻酔剤の例は、塩酸ジブカイン、ジブカイン、塩酸リドカイン、リドカイン、ベンゾカイン、p−ブチルアミノ安息香酸2−(ジエ−エチルアミノ)エチルエステルヒドロクロリド、塩酸プロカイン、テトラカイン、塩酸テトラカイン、塩酸クロロプロカイン、塩酸オキシプロカイン、メピバカイン、塩酸コカイン、塩酸ピペロカイン、ジクロニンおよび塩酸ジクロニンが挙げられる。
【0044】
防腐剤の例は、限定されるわけではないが、アルコール、第四級アンモニウム化合物、ホウ酸、クロルヘキシジンおよびクロルヘキシジン誘導体、ヨウ素、フェノール、テルペン、殺細菌剤、消毒薬が挙げられ、チメロサール、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポビドンヨード、塩化セチルピリジニウム、オイゲノールおよび臭化トリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0045】
抗炎症剤の例は、限定されるわけではないが、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、イブプロフェンおよびナプロキセン等のプロピオン酸誘導体、インドメタシン等の酢酸誘導体、メロキシカム、アセトアミノフェン等のエノール酸誘導体、サリチル酸メチル、サリチル酸モノグリコール、アスピリン、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナク、アルクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、フェノプロフェン、スリンダク、フェンクロフェナク、クリダナク、フルルビプロフェン、フェンチアザク、ブフェクサマク、ピロキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ペンタゾシン、メピリゾール、塩酸チアラミド、プロピオン酸クロベタゾール、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プロプリオン酸ハルベタゾール、二酢酸ジフロラゾン、フルオシノニド、ハルシノニド、アムシノニド、デソキシメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フランカルボン酸モメタゾン、プロプリオン酸フルチカゾン、ジプロプリオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸フルチカゾン、デソニド、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾンブラエレート、プレドニカルベート、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾンおよび当分野において公知なその他のもの等のステロイド、プレドニソロン、デキサメタゾン、フルオシノロンアセトニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニソロン、メチルプレドニソロン、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フルメタゾン、フルオロメトロン、ジプロプリオン酸ベクロメタゾン、フルオシノニド、局所用コルチコステロイドが挙げられ、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン−21−モノエステル(例えば、ヒドロコルチゾン−21−アセテート、ヒドロコルチゾン−21−ブチレート、ヒドロコルチゾン−21−プロピオネート、ヒドロコルチゾン−21−バレレート等)、ヒドロコルチゾン−17,21−ジエステル(例えば、ヒドロコルチゾン−17,21−ジアセテート、ヒドロコルチゾン−17−アセテート−21−ブチレート、ヒドロコルチゾン−17,21−ジブチレート等)、アルクロメタゾン、デキサメタゾン、フルメタゾン、プレドニゾロン、もしくはメチルプレドニゾロン等の効力がより弱いコルチコステロイドのうちの1つであってもよく、または、プロピオン酸クロベタゾール、安息香酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、二酢酸ジフロラゾン、フルオシノニド、フランカルボン酸モメタゾン、トリアムシノロンアセトニド等の効力がより強いコルチコステロイドのうちの1つであってもよい。
【0046】
鎮痛剤の例は、限定されるわけではないが、アルフェンタニル、ベンゾカイン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ブタムベン、カプサイシン、クロニジン、コデイン、ジブカイン、エンケファリン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、インドメタシン、リドカイン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、ニコモルフィン、アヘン、オキシブプロカイン、オキシコドン、オキシモルフォン、ペンタゾシン、プラモキシン、プロパラカイン、プロポキシフェン、プロキシメタカイン、スフェンタニル、テトラカインおよびトラマドールが挙げられる。
【0047】
麻酔剤の例は、限定されるわけではないが、フェノール等のアルコール、安息香酸ベンジル、カラミン、クロロキシレノール、ジクロニン、ケタミン、メントール、プラモキシン、レゾルシノール、トロクロサン、ベンゾカイン、ブピバカイン、クロロプロカイン等のプロカイン薬物、シンコカイン、コカイン、デキシバカイン、ジアモカイン、ジブカイン、エチドカイン、ヘキシルカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、オキセサザイン、プリロカイン、プロカイン、プロパラカイン、プロポキシカイン、ピロカイン、リソカイン、ロドカイン、ロピバカイン、テトラカイン、ならびに、ブピバカインHCl、クロロプロカインHCl、シクラミン酸ジアモカイン、ジブカインHCl、ジクロニンHCl、エチドカインHCl、レボブピバカインHCl、リドカインHCl、メピバカインHCl、プラモキシンHCl、プリロカインHCl、プロカインHCl、プロパラカインHCl、プロポキシカインHCl、ロピバカインHCl、およびテトラカインHClを含めた、医薬として許容される塩およびエステル等の誘導体が挙げられる。
【0048】
止血剤の例は、限定されるわけではないが、トロンビン、フィトナジオン、硫酸プロタミン、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、カルバキソクロムクロムナトリウムスルファネート、ルチンおよびヘスペリジンが挙げられる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態では、医薬品有効成分(API)は、一酸化窒素(NO)を放出する化合物を含み、この化合物から本質的になり、またはこの化合物からなる。任意の適切なNO放出性(NO−releasing)化合物は、本発明の医薬組成物中に使用され得る。本発明のいくつかの実施形態では、NO放出性化合物は、NO供与体基を含む小分子化合物を含む。本明細書において使用されるときの「小分子化合物」は、500ダルトン未満の分子量を有する化合物を指し、有機小分子および/または無機小分子を含む。本発明のいくつかの実施形態では、NO放出性化合物は、NO供与体基を含む高分子を含む。本明細書において使用されるときの「高分子」は、500ダルトン以上の分子量を有する化合物を指す。任意の適切な高分子は、使用され得、架橋ポリマーもしくは非架橋ポリマー、デンドリマー、金属化合物、有機金属化合物、無機物ベース化合物、およびその他の高分子骨格が挙げられる。いくつかの実施形態では、高分子は、約0.1nm〜約100μmの範囲の公称直径を有し、かつ2つ以上の高分子の集合体を含み得、これにより、高分子構造は、NO供与体基によってさらに改質される。
【0050】
本発明の特定の実施形態では、NO放出性化合物のNO供与体は、光、熱、水、酸、塩基等のような外部条件にさらされたときに一酸化窒素を放出する。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、NO放出性化合物は、NO供与体としてジアゼニウムジオレート官能基を含む。ジアゼニウムジオレート官能基は、水にさらされたとき等の特定の条件下で、一酸化窒素を生成し得る。別の例として、本発明のいくつかの実施形態では、NO放出性化合物は、限定されるわけではないが、NO供与体としてニトロソチオール官能基を含み得る。NO供与体は、光にさらされたとき等の特定の条件下で、一酸化窒素を生成し得る。その他のNO供与体基の例は、限定されるわけではないが、ニトロソアミン、ヒドロキシルニトロソアミン、ヒドロキシルアミンおよびヒドロキシ尿素が挙げられる。NO供与体および/またはNO放出性化合物の任意の適切な組合せを、本発明の医薬組成物において使用することができる。さらに、NO供与体は、共有結合による相互作用および/または共有結合によらない相互作用を介して、小分子および/もしくは高分子の中に組み込む、ならびに/または、小分子および/もしくは高分子の上に備え付けることができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態では、NO放出性化合物は、その開示の全部分が参照により本明細書の一部となされる米国特許出願公開第2009/0214618号において記述されたもののような、NO放出性粒子の形態であってよい。このような粒子は、本明細書中で記述された方法により調製することができる。
【0052】
NO放出性化合物は、水との反応および/または熱分解を用いることを含めた任意の適切な機構により、一酸化窒素を放出することができる。NO放出性化合物の中に含まれ得るNO放出性官能基の例は、限定されるわけではないが、ジアゼニウムジオレート、ニトロソアミン、ヒドロキシルニトロソアミン、ニトロソチオール、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシ尿素、および金属ニトロシル錯体が挙げられる。酸性化された亜硝酸塩等の、治療的に一酸化窒素を放出することが可能なその他のNO放出性官能基もまた利用され得る。
【0053】
NO放出性化合物は、小分子化合物、オリゴマーおよび/またはポリマーであってよく、限定されるわけではないが粒子、コーティング、フィルム、液体、溶液等のような、任意の適切な物理的な形態であり得る。いくつかの実施形態では、一酸化窒素放出性化合物は、上述されたような、ジアゼニウムジオレートにより官能化されたポリシロキサン高分子を含む。NO放出性化合物のその他の非限定的な例は、米国特許出願公開第2006/0269620号または米国特許出願公開第2010/0331968号において記述されたようなNO放出性ゼオライト、米国特許出願公開第2010/0239512号または米国特許出願公開第2011/0052650号において記述されたようなNO放出性金属有機構造体(metal organic framework、MOF)、「Tunable Nitric Oxide−Releasing Macromolecules Having Multiple Nitric Oxide Donor Structures」という発明の名称の米国仮特許出願第61/526,918号において記述されたようなNO放出性多重供与体化合物、米国特許出願公開第2009/0214618号において記述されたようなNO放出性デンドリマーまたは金属構造、米国特許出願公開第2011/0086234号において記述されたような一酸化窒素放出性コーティング、および米国特許出願公開第2010/0098733号において記述されたような化合物が挙げられる。この段落中の参考文献のそれぞれの開示は、それらの全部分が参照により本明細書の一部となされる。さらに、NO放出性高分子は、その開示の全部分が参照により本明細書の一部となされる2012年1月20日に出願された「Temperature Controlled Sol−Gel Co−Condensation」という発明の名称の国際出願第2012/022048号において記述されたように作製することができる。
【0054】
一例として、本発明のいくつかの実施形態では、NO放出性粒子は、NOが充填された沈殿シリカ(NO−loaded precipitated silica)が挙げられる。NOが充填された沈殿シリカは、一酸化窒素供与体により改質されたシランモノマーから、共縮合(co−condensed)シロキサンネットワーク中に形成し得る。本発明の一実施形態では、一酸化窒素供与体は、N−ジアゼニウムジオレートである。
【0055】
いくつかの実施形態では、一酸化窒素供与体は、事前帯電(pre−charging)法によりアミノアルコキシシランから形成され得、共縮合シロキサンネットワークは、アルコキシシランおよびアミノアルコキシシランを含むシラン混合物が縮合して合成され、一酸化窒素供与体により改質された共縮合シロキサンネットワークを形成する。本明細書において使用されるとき、「事前帯電法」は、アルコキシシランとの共縮合の前にアミノアルコキシシランが一酸化窒素によって「前処理されること」または「事前帯電されること」を意味する。いくつかの実施形態では、一酸化窒素の事前帯電は、化学的方法により達成され得る。別の実施形態では、「事前帯電」法は、NO−供与体によってより濃密に官能化された共縮合シロキサンネットワークおよび材料を生成するのに使用され得る。
【0056】
共縮合シロキサンネットワークは、均一なサイズを有したシリカ粒子、種々のサイズを有したシリカ粒子の集積体、非晶質シリカ、ヒュームドシリカ(fumed silica)、ナノ結晶性シリカ、セラミックシリカ、コロイドシリカ、シリカコーティング、シリカフィルム、有機的に改質されたシリカ、メソ多孔質シリカ、シリカゲル、生物活性ガラス、または、任意の適切な形態もしくは状態のシリカであってよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、アルコキシシランは、式Si(OR)4を有するテトラアルコキシシランであり、式中、Rはアルキル基である。R基は、同じであってもよいし異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、テトラアルコキシシランは、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)またはテトラエチルオルトシリケート(TEOS)として選択される。いくつかの実施形態では、アミノアルコキシシランは、R”−(NH−R’)n−Si(OR)3という式を有し、式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレンであり、分岐状アルキレンまたはアラルキレンであり、nは1または2であり、R”は、アルキル、シクロアルキル、アリールおよびアルキルアミンからなる群より選択される。
【0058】
いくつかの実施形態では、アミノアルコキシシランは、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン(AHAP3)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAP3)、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジ−エチレントリアミン(DET3)、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン(AEMP3)、[3−(メチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン(MAP3)、N−ブチルアミノ−プロピルトリメトキシシラン(n−BAP3)、t−ブチルアミノ−プロピルトリメトキシシラン(t−BAP3)、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン(EAiB3)、N−フェニルアミノ−プロピルトリメトキシシラン(PAP3)、およびN−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン(cHAP3)から選択され得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、アミノアルコキシシランは、NH[R’−Si(OR)3]2という式を有し、式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレンである。いくつかの実施形態では、アミノアルコキシシランは、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、bis−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミンおよびbis−[(3−トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミンから選択され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書において上述したように、アミノアルコキシシランは、NO放出のために事前帯電され、アミノ基は、ジアゼニウムジオレートにより置換される。したがって、いくつかの実施形態では、アミノアルコキシシランは、R”−N(NONO−X+)−R’−Si(OR)3という式を有し、式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレンまたはアラルキレンであり、R”はアルキルまたはアルキルアミンであり、X+は、Na+、K+およびLi+からなる群より選択されるカチオンである。
【0061】
シロキサンネットワークの組成(例えば、アミノアルコキシシランの量または化学的組成)、および一酸化窒素の帯電条件(例えば、溶剤および塩基)は、一酸化窒素放出の量および持続時間を最適化するために変更され得る。したがって、いくつかの実施形態では、シリカ粒子の組成は、シリカ粒子からのNO放出の半減期を調節するために変更され得る。
【0062】
別の実施形態では、アミノアルコキシシランのアミノ基は、ジアゼニウムジオレートにより置換されており、かつ、このアミノアルコキシシランは、R”−N(NONO−X+)−R’−Si(OR)3の式を有し、式中、Rはアルキルであり、R’はアルキレンまたはアラルキレンであり、R”はアルキルまたはアルキルアミンであり、X+は、Na+およびK+からなる群より選択されるカチオンである。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態では、NO放出性粒子の粒径は、20nmから10μmまでの範囲である。この粒径は、毒性および表皮(または易感染性の真皮)を介した血管中への浸透を最小化または阻止するように調整することができる。特定の実施形態では、粒径は、粒子が濾胞に入ることを可能にするために、約10μm未満の平均粒径付近に分布している。さらなる実施形態では、粒径は、約8μm未満の平均粒径付近に分布している。その他の実施形態では、粒径は、粒子が濾胞に入ることを阻止するために、約10μm超の平均粒径付近に分布している。
【0064】
なおさらなる実施形態では、2つ以上の平均粒径に大体分布している平均粒径を有した粒子の混合物は、提供され得る。例えば、粒子が濾胞に入ることを可能にするために約10μm未満の平均粒径付近に分布している粒径を有する粒子の混合物は、粒子が濾胞に入ることを阻止するために約10μm超の平均粒径付近に分布している粒径を有する粒子を混合することができる。これらの粒子は、同じ一酸化窒素放出プロファイルを有し得、または異なる一酸化窒素放出プロファイルを有し得る。例えば、より小さな粒子は、皮脂産生および/または異常な角質化を緩和するそれらの能力を増強するように調整された放出プロファイルを有し得、より大きな粒子は、細菌を殺滅し、創傷治癒を促進し、瘢痕を抑制するそれらの能力、または一酸化窒素により提供されるその他の望ましい治療効果を増強するように調整された放出プロファイルを有し得る。その他の組合せおよび複数の組合せもまた、提供され得る。
【0065】
本発明の医薬組成物は、任意の適切な方法により調製することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、それらの全部分が参照により本明細書の一部となされる、2011年7月5日および2012年3月13日にそれぞれ出願された両方とも「Methods of Manufacturing Topical Compositions and Apparatus For Same」という発明の名称の米国仮特許出願第第61/504,626号および米国仮特許出願第61/610,179号(代理人整理番号9729−26PR2)において記述された方法によって製造することができる。
【0066】
本発明の特定の実施形態では、本発明の医薬組成物を調製する方法は、疎水性ベース、両親媒性化合物、および任意選択により共溶剤を含む第1の添加剤組成物を均質化することを含む。機械的な上方式撹拌用のデバイスを使用して、所望の均一性および/または稠度が達成されるまで第1の添加剤組成物を混合することができる。均質化の速力および/または速度は、所望の均一性および/または稠度を達成するように、一定であり得、変更され得、増大され得、かつ/または低下され得る。本発明の特定の実施形態では、本発明の第1の添加剤組成物は、組成物が目視により均一になるまで混合される。本発明のいくつかの実施形態では、本方法は、疎水性ベース、医薬品有効成分、および任意選択により保湿剤を含む第2の添加剤組成物を別々に均質化することをさらに含む。第1の添加剤組成物および第2の添加剤組成物を次いで合わせると、本発明の医薬組成物を形成することができる。
【0067】
図1は、本発明の例示的な実施形態についての操作のフローチャートである。
図1に見られるように、操作は、プロセスに使用するための原材料を投入することにより始まる(ブロック100)。次いで、混合容器の温度を設定する(ブロック110)。疎水性ベースおよび両親媒性化合物を容器(ブロック120)に加え、任意選択により共溶剤も一緒に加えて(ブロック125)、第1の添加剤組成物を形成する。次いで、均質化変数(homogenization parameter)(例えば、均質化速度、時間等)を設定し、第1の添加剤組成物の均質化を始める(ブロック130)。本発明の特定の実施形態では、第1の添加剤組成物の成分を加えた後、均質化速力を初期速力と比較して増大させ、目視により均一な組成物が得られるまで維持する。別個の容器の中で、疎水性ベースおよび医薬品有効成分(API)、限定されるわけではないが例えば水分活性化APIを、任意選択により保湿剤と合わせて(ブロック140)、第2の添加剤組成物を形成する(ブロック145)。次いで、均質化変数(例えば、均質化速度、時間等)を設定し、第2の添加剤組成物の均質化を始める(ブロック150)。次に、第1の添加剤組成物と第2の添加剤組成物を合わせて、所望の均一性が得られるまで均質化する(ブロック160)。
【0068】
任意の適切な均質化機構を使用することができる。均質化デバイスの例は、プロペラ、アンカー、ピッチ翼、ローター−ステーター、回転翼、超音波デバイス、インライン式および高圧式のホモジナイザー等の機械的な上方式撹拌が挙げられる。これらの方法のいずれかを使用することもできるし、いくつかの実施形態においては複数の方法を組み合わせて使用することもできる。プリミックス組成物の均質化により、望ましいAPI安定性およびブレンド均質性を有する、最終的な局所用組成物を提供することができる。本発明のいくつかの実施形態では、インライン式ホモジナイザーが使用され得る。本発明の特定の実施形態では、医薬品有効成分が分解し得る温度未満に医薬品有効成分(例えば、水分活性化医薬品有効成分)を維持する均質化方法および/またはデバイスを使用され得る。医薬品有効成分は、ある特定の持続時間の時間にわたってある特定の温度に維持されたならば、その温度において分解し得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、ある特定の温度に医薬品有効成分が維持される時間の持続時間は、活性成分がその温度において分解し得る期間より短い。本発明の特定の実施形態では、均質化プロセス全体の期間において、医薬品有効成分は、医薬品有効成分が分解し得る温度を超えない温度に保持される。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、均質化は、約−15℃から約30℃までの範囲の温度、またはその中の任意の範囲の温度で実施される。本発明の特定の実施形態では、均質化は室温において実施される。本発明のいくつかの実施形態では、均質化は、乾燥した不活性雰囲気中で実施されるので、水および酸素は均質化容器に実質的に存在しない。
【0070】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物を局所的に投与することにより、対象の皮膚を処置するのに使用され得る。したがって、本発明の別の態様は、対象の皮膚を処置する方法を含み、その方法は、本発明の医薬組成物を対象の皮膚に局所的に投与することを含む。本発明のいくつかの実施形態では、水分活性化医薬品有効成分が本発明の医薬組成物中に存在する場合、本方法は、組成物を局所的に投与するステップの前、後および/または間に、水分(例えば、水)を組成物および/または施用箇所に接触させることをさらに含み得る。本発明のいくつかの実施形態では、水分、限定されるわけではないが水および/または体液等は、本発明の医薬組成物の投与前に施用箇所にすでに存在する。
【0071】
対象の皮膚のあらゆる部分は、処置され得、限定されるわけではないが、対象の粘膜(体腔を含む)、爪および/または頭皮が挙げられる。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態では、対象の付属器官のうちの1つまたは複数は、本明細書において記述された方法により処置される。さらに、本発明のいくつかの実施形態では、対象の胴体が、本明細書において記述された方法により処置される。
【0072】
本発明は、獣医学的用途と医学的用途の両方への使用が見出されている。本発明の方法の実施形態によって処理されるのに適した対象は、限定されるわけではないが、鳥類および哺乳類の対象が挙げられる。本発明の哺乳類は、限定されるわけではないが、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、げっ歯類(例えば、ラットおよびマウス)、ウサギ、霊長類(例えば、類人猿およびヒト)、ヒト以外の霊長類(例えば、サル、ヒヒ、チンパンジー、ゴリラ)等、および子宮内の哺乳類が挙げられる。本発明に従って処置される必要がある、あらゆる哺乳類の対象が適している。あらゆる発達の段階(すなわち、新生児、幼児、若年、青年、成人)における男女のヒト対象が、本発明に従って処置され得る。本発明のいくつかの実施形態では、対象は哺乳類であり、特定の実施形態では、対象はヒトである。ヒト対象は、胎児、新生児、幼児、若年、青年、成人および老年の対象ならびに妊娠している対象を含むすべての年齢の男性と女性の両方を含む。本発明の特定の実施形態では、対象は、ヒトの青年および/または成人である。
【0073】
本発明による例示的な鳥類は、ニワトリ、アヒル、シチメンチョウ、ガチョウ、ウズラ、キジ、走鳥類(例えば、ダチョウ)および飼育用の鳥(例えば、オウムおよびカナリヤ)、ならびに卵内の鳥が挙げられる。
【0074】
本発明の方法は、動物の対象にも実施することができ、特に、獣医学的目的ならびに/または薬物スクリーニングおよび薬物開発の目的のために、マウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜およびウマ等の哺乳類の対象にも実施することができる。
【0075】
本発明の特定の実施形態では、対象は、本発明の方法を「必要としており」、例えば、対象は、本発明の方法を用いて処置され得る疾患または障害と診断されており、これらの疾患または障害のリスクがあり、かつ/または、これらの疾患または障害を有すると考えられている。本発明のいくつかの実施形態では、対象は、皮膚障害、限定されるわけではないが座瘡、アトピー性皮膚炎および/または乾癬等を有する。その他の本発明の実施形態では、対象は、創傷、限定されるわけではないが床ずれ、火傷および/または糖尿病性足部潰瘍等を有する。本発明のいくつかの実施形態では、対象は、炎症性皮膚状態または障害を有する。
【0076】
本明細書において使用されるときの「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」または「の処置(treatment of)」(およびこれらの文法的変形を含む)は、対象に利益を与えるあらゆる種類の処置を指し、対象の状態の深刻度が減じられ、少なくとも部分的に改善され、もしくは回復されることを意味し得、かつ/または、少なくとも1つの臨床症状のある程度の軽減、緩和もしくは減少が達成されること、および/または疾患または障害の進行の遅延があることを意味し得る。本発明の特定の実施形態では、対象の皮膚障害の深刻度は、本発明の方法が存在しないときの皮膚障害の深刻度に比較して減じられる。その他の本発明の実施形態では、本発明の方法は、創傷治癒を改善し、かつ/または感染を予防する。
【0077】
本発明は、下記の非限定的な実施例においてより詳細に説明する。
【実施例1】
【0078】
表1および表2には、本発明の実施形態に従って調製された様々な医薬組成物が記載されている。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【実施例2】
【0081】
米国特許出願公開第2009/0214618号および2012年1月20日に出願された「Temperature Controlled Sol−Gel Co−Condensation」という発明の名称の国際出願第2012/022048号において記述されたようなMAP3を含む、2%Nitricil(商標)を含んだ軟膏配合物を調製した。表3〜表6に、生成した軟膏およびゲルの配合物を示す。表4および表5中の軟膏配合物を、本明細書において記述されたように調製した。表4中の様々な軟膏もまた調製し、有効成分が鉱油および軽質鉱油によって代替された、Nitricil(商標)有効成分を含んでいないヴァージョンの軟膏も調製した。表3において記述された軟膏を、米国特許出願第12/860,457号において記述されたように調製した。表6中の局所用ゲルを、米国仮特許出願第61/504,628号において記述されたように生成した。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
表4および表5の中の軟膏配合物の効能を、表6に示したアルコールゲル配合物(シュードモナス・アエルギノサに対して殺菌性であると知られている)および表3に示したより早期の軟膏配合物に対して比較した。すべての配合物は、上述されたように2%Nitricil(商標)を含有しており、試験用のPBS中の50mg/mlの希釈液(1mg/mlのNitricil(商標)濃度と等価)において試験された。
図2は、試験の結果を示す。軟膏配合物T0−005は、1時間以内ではP.アエルギノサ(シュードモナス・アエルギノサ)に対して殺菌性だった。
図3は、Nitricil(商標)を含んだT0−005配合物を、Nitricil(商標)を含んでいないT0−005配合物の殺滅時間と比較している。T0−005溶媒配合物は、抗菌活性を示さなかった(
図3、底部)。
【実施例3】
【0087】
Nitricil(商標)を、実施例2において記述されたように生成した。表7において記述されたような配合物を、本明細書において記述されたように調製した。
【0088】
【表7】
T0−2配合物の溶媒ヴァージョンを、Nitricil(商標)を軽質鉱油で代替することにより調製した。
【0089】
すべての配合物は、上述されたように2%Nitricil(商標)を含有しており、P.アエルギノサの殺滅時間について、試験用のPBS中の50mg/mlの希釈液(1mg/mlのNitricil(商標)濃度と等価)において試験した。
図4は、試験の結果を示す。軟膏配合物T0−2は、1時間以内ではP.アエルギノサに対して殺菌性だったが、溶媒ヴァージョンでは殺菌性はなかった。
【実施例4】
【0090】
創傷中のシュードモナス・アエルギノサを減少させるときの本発明の構想による局所用軟膏の効能を、ブタ動物モデルにおいて評価した。軟膏を、表1に記載されたような2%配合物および4%配合物に関して、記述されたように調製した。Nitricil(商標)を含んでいない軟膏を、溶媒対照として使用した。
【0091】
10mm×7mm×深さ0.5mmの寸法の長方形の創傷を、3匹の動物の脊椎傍領域および胸部領域の中に作り出した。創傷は、15mmの無傷の皮膚により相互に隔てられていた。10
6cfu/mlのシュードモナス・アエルギノサを含有する25μlの懸濁液を、それぞれの創傷の中に播種した。次いで、すべての創傷を、30分の播種の間にポリウレタンフィルム包帯材(テガダーム(商標)、3M、st.Paul、MN)によって被覆し、48時間所定位置に静置しておいた。
【0092】
48時間後、ポリウレタンフィルム包帯材を除去し、創傷のうちの3つは、ベースラインの細菌数用に再被覆した。残存の創傷は、それぞれ8つの創傷がある4つの群に分け、約200mgで処置して、負傷した領域(wounded area、創傷領域)および周囲の無傷の皮膚を被覆した。処置は、無菌テフロン(登録商標)製スパチュラによって緩やかに広げていき、フィルム包帯材を再着用した。
【0093】
包帯材は、処置施用後毎日取り換えた。それぞれの群の4つの創傷を、負傷から4日目に始めた下記の「回収の部」において記述されたような毎日の包帯材の変更の前に、再被覆した。
【0094】
3つの創傷は、細菌のベースライン絶対数測定(enumeration、計数)のために、播種後に48時間培養した。それぞれの処置群の4つの創傷を、処置から4日目および7日目に再被覆した。創傷から細菌を回収するために、無菌外科用鋼鉄製シリンダー(内径22mm)を創傷領域の周りに置いた。1mlの汎用中和剤溶液をシリンダーの中にピペットで移し、その箇所を無菌テフロン製スパチュラによって30秒間スクラブした(scrub)。
【0095】
系列希釈液をすべての培養試料から作製し、微生物汚染の程度を、Spiral Plater System(Spiral Biotech、Norwood、MA)を用いて評価した。CN供給剤を含んだシュードモナス寒天培地を用いて、創傷からP.アエルギノサを単離した。すべてのプレートを一晩(24時間)37℃において好気的にインキュベートした後、生存コロニーの数をカウントした。
【0096】
表8に、2%軟膏配合物および4%軟膏配合物、溶媒対照および無処置対照についての、4日目および7日目における計測数の結果を示す。表8に見られるように、2%軟膏と4%軟膏の両方が、7日目までに有意な病原体減少を達成した。
【0097】
【表8】
【実施例5】
【0098】
実施例4の配合物もまた、2匹の動物を利用した同じブタ動物モデルにおけるスタフィロコッカス・アウレウスMRSA(staphylococcus aureus MRSA)に対する効能について試験した。実験手順は、チャレンジ病原体(challenge pathogen)の変更を除いて実施例4において記述された通りである。表9に、2%軟膏、4%軟膏、溶媒対照および無処置対照についての4日目および7日目の結果を示す。表9に見られるように、2%軟膏と4%軟膏の両方が、病原体の成長を予防し、7日目までに計測数を低下させた。
【0099】
【表9】
【実施例6】
【0100】
MAP3を含む一酸化窒素放出性高分子化合物(Nitricil(商標) NVN1)を、それらの開示がそれらの全部分が記載されたかのように参照により本明細書の一部となす、米国特許出願公開第2009/0214618号および2012年1月20日に出願された「Temperature Controlled Sol−Gel Co−Condensation」という発明の名称の国際特許出願第12/22048号において記述されたように作製した。得られた高分子粒子は、8μm〜10μmの平均粒径を実現するようにボールミルで粉砕し、医薬品有効成分(API)を生成した。
【0101】
図5は、第1の200分の放出における、pH7.4かつ37℃でのNitricil(商標)のNVN1およびNVN4についての放出プロファイルのグラフである。Nitricil(商標)NVN4は、1:1の比においてAEP3/TEOSを含む一酸化窒素放出性高分子化合物であり、米国特許出願公開2009/0214618号および2012年1月20日に出願された「Temperature Controlled Sol−Gel Co−Condensation」という発明の名称の国際特許出願第12/22048号において記述されたように作製して、APIを生成した。Nitricil(商標)のNVN1の全体的な放出動態(kinetic)を、下記の表10に示す。
【0102】
【表10】
【0103】
Nitricil(商標)のNVN1を、表11に記載されたような軟膏の2つの仕上げ済み剤形の中に配合した。
【0104】
【表11】
プラセボ軟膏を、鉱油の量を増大させることによりAPIの重量を代替して配合した。
【実施例7】
【0105】
22±2gの重量のBALB/c由来の雄マウスを、(Charles River Laboratories Technology Licenseeに基づき)BioLasco Taiwanから調達した。動物は、実験を通して清潔な領域において個別換気ケージ型ラック(IVC Racks、36 Mini Isolator systems)の中に収容した。5匹ずつのマウスを、オートクレーブによって滅菌した動物用ケージ(cmにおいて、長さ26.7×幅20.7×高さ14.0)の中で飼育し、12時間の明/暗サイクルによって制御された温度下(20〜24℃)および湿度下(50%〜80%)に維持した。動物は、滅菌した標準的な実験室用固形飼料[MF−18(Oriental Yeast Co.,Ltd.Japan)]および無菌水道水を常時自由に利用できるようにしておいた。本作業のすべての態様、すなわち動物の収容、実験および処分は、the Guide for the Care and Use of Laboratory Animals(National Academy Press、Washington,D.C.、2010年)に全般的に従って実施した。
【0106】
22±2gの重さの5匹のBALB/cの雄マウスの群を使用した。動物は、あらかじめ除毛したそれらの腹部表面へのオキサゾロン(100μL、アセトン中1.5%)の施用により感作(sensitize)した。7日後、試験物質(20mg/耳)および溶媒(20μL/耳)を、オキサゾロン(1%、20μL/耳)チャレンジの30分前および15分後に、右耳の前面および後面に局所的に施用した。耳介腫脹を、炎症の指標として、オキサゾロンチャレンジから24時間後に、Dyer型マイクロメートルゲージを用いて測定した。耳の浮腫を、右耳(処置された耳)の厚さから左耳(正常対照群)の厚さを差し引くことにより計算した。%阻害率は、式:(Ic−It)/Ic×100に従って計算した。式中、IcおよびItは、それぞれ対照マウスおよび処置マウスにおける耳の厚さ(mm)の増大を指す。一元配置分散分析法(one−way ANOVA)およびダネット検定(Dunnett’s test)を使用して、溶媒対照群と処置群との間での統計学的有意性を測定した。有意性を、P<0.05に設定した。
【0107】
実施例6において記述された試験品(0.2%および2%のNitricil(商標)のNVN1軟膏)を、アレルギー性接触皮膚炎のモデルであるBALB/cマウスでのオキサゾロン誘導性耳介腫脹分析において可能な抗炎症活性について評価した。試験物質および溶媒のそれぞれを、2回目のオキサゾロン施用によるチャレンジの30分前および15分後に局所的に投与した(TOP)。耳介腫脹への試験物質の影響を24時間後に測定し、結果を下記の表12に要約している。
【0108】
【表12】
【0109】
0.2%および2%のNitricil(商標)のNVN1軟膏の局所投与には、溶媒対照A(アセトン/エタノール:1/1)およびプラセボ軟膏と対比して有意な阻害は伴わなかった。プラセボ軟膏処置は、オキサゾロン誘導性耳介腫脹への有意な影響を示さなかった。陽性対照であるデキサメタゾン(0.1mg/耳×2)には、オキサゾロン誘導性耳介腫脹の有意な阻害が伴った。
【実施例8】
【0110】
コールドプロセスを用いて、軟膏配合物を、表13に記載されたように調製した。これらの配合物は、スケールアップ用に選択した。
【0111】
【表13】
表13に示す配合物の開発中に用いたラボスケールのプロセスを、8L混合容器付きのRoss Dual Shaft Mixer、型番:CDA−2を用いて5.5kgのスケールにスケールアップした。撹拌および均質化用のシステムは、下記に記述されているような、独立に駆動される2つの頂部導入式撹拌器を内蔵していた。
1.約23〜225rpmの速力範囲において駆動される三枚羽根型アンカー撹拌器。アンカーは三角形断面を有するように設計されており、混合缶の側壁および底部を拭くための固定式テフロン製スクレーパーを備える。
2.高速ディスペンサー、約1,000〜10,000rpmの速力範囲において駆動される5.08cm(2インチ)径ブレード。
4つの軟膏バッチを製造して、材料添加の程度、ならびに、小規模プロセス用に適した混合速力(アンカー撹拌器および高速ディスペンサー)および混合時間を測定した。開発用バッチ配合物の概要を表14に提供し、製造のプロセスフロー図を
図6に提供する。
【0112】
【表14】
【0113】
バッチの分析結果を、表15および表16に提供する。
【0114】
【表15】
【0115】
【表16】
【実施例9】
【0116】
Nitricil(商標)軟膏をBALB/cマウスにおいて評価して、インビボでのNitricil(商標)軟膏の潜在的な抗炎症性を測定した。22±2gの重量のBALB/c由来の雄マウスを、(Charles River Laboratories Technology Licenseeに基づき)BioLasco Taiwanから調達した。動物は、実験を通して清潔な領域の下で個別換気ケージ型ラック(IVC Racks、36 Mini Isolator systems)の中に収容した。5匹ずつのマウスを、オートクレーブによって滅菌した動物用ケージ(cmにおいて、長さ26.7×幅20.7×高さ14.0)の中で飼育し、12時間の明/暗サイクルで、制御された温度下(20〜24℃)および湿度下(50%〜80%)に維持した。動物は、滅菌した標準的な実験室用固形試料[MF−18(Oriental Yeast Co.,Ltd.Japan)]および無菌水道水に常時自由に利用できるようにしておいた。本作業のすべての態様、すなわち動物の収容、実験および処分は、the Guide for the Care and Use of Animals(National Academy Press、Washington,D.C.、2011年)に全般的に従って実施した。
【0117】
Nitricil(商標)局所用軟膏(1%および4%)およびプラセボ軟膏を本研究において試験した。Nitricil(商標)局所用軟膏配合物およびプラセボ軟膏の組成物を、表17に示す。デキサメタゾン(0.1mg/耳)を陽性対照として使用した。デキサメタゾンは、様々な炎症性障害および自己免疫障害を処置するのに使用される、効力のある糖質コルチロイドステロイドである。
【0118】
【表17】
【0119】
使用した試験方式は、7日間のオキサゾロン誘導性耳介腫脹分析だった。オキサゾロン誘導性耳介腫脹は、炎症のモデルとして有用である。オキサゾロンは、遅延型過敏症を誘導するアレルゲンであり、したがって、適応免疫応答(例えば、アレルギー性接触皮膚炎、乾癬等)が動因となる炎症のモデルとして最も有用である。この分析において、マウス(1群当たり5匹)を、あらかじめ除毛したそれらの腹部表面にオキサゾロンを1回局所施用することにより、オキサゾロン(100μL、アセトン中1.5%)に対して感作した。7日後、動物は、耳へのオキサゾロンの2回目の施用によってチャレンジされた。試験品(20mg/マウス)および溶媒(20μL/耳)を、第2のオキサゾロン(1%、20μL/耳)チャレンジ(惹起相)の、30分前および15分後に右耳の前面および後面に局所的に投与した(TOP)。耳介腫脹を、炎症の指標として、オキサゾロンチャレンジから24時間後に、Dyer型マイクロメートルゲージを用いて測定した。耳の浮腫は、右耳(処置された耳)の厚さから左耳(正常対照群)の厚さを差し引くことにより計算した(表18)。さらなる群を、公知の抗炎症剤(陽性対照)であるデキサメタゾンによって処置して、分析の妥当性を確認した。
【0120】
%阻害率は、式:(Ic−It)/Ic×100に従って計算した。式中、IcおよびItは、それぞれ対照マウスおよび処置マウスにおける耳の厚さ(mm)の増大を指す。一元配置分散分析法およびダネット検定を使用して、溶媒対照と処置群との間の統計学的有意性を測定した。有意性を、P<0.05に設定した。
【0121】
【表18】
【0122】
1%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏と4%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏の局所投与は両方とも、溶媒対照(アセトン/エタノール:1/1)とプラセボ軟膏の両方と対比して、オキサゾロン誘導性耳介腫脹の有意な(P<0.05)阻害が伴った。1%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏は、耳介腫脹を、アセトン/エタノール溶媒と対比して57%阻害し、プラセボ軟膏と対比して58%阻害した。4%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏は、耳介腫脹を、アセトン/エタノール溶媒と対比して59%阻害し、プラセボ軟膏と対比して60%阻害した。プラセボ軟膏は、アセトン/エタノール溶媒に比べて耳介腫脹に影響を与えなかった。デキサメタゾン(陽性対照)は、アセトン/エタノール溶媒に比べて耳介腫脹を86%阻害した。
【0123】
1%および4%のNitricil(商標)局所用軟膏の局所投与は、プラセボ軟膏対照または溶媒(アセトン/エタノール:1/1)と比較して、マウスにおけるオキサゾロン誘導性耳介腫脹の有意な(P<0.05)阻害を生じた。したがって、1%と4%の両方のNitricil(商標)局所用軟膏は、アレルギー性接触皮膚炎のインビボモデルにおける炎症を有意に阻害した。4%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏は、本試験の条件下では、1%Nitricil(商標)のNVN1局所用軟膏より有意な効果はなかった。プラセボ軟膏群は、溶媒対照(アセトン/エタノール:1/1)に比べて影響を全く与えなかった。陽性対照であるデキサメタゾン(0.1mg/マウス×2)には、マウスにおいてオキサゾロン誘導性耳介腫脹の有意な阻害が伴った。表19に、エタノール/アセトン溶媒配合物またはプラセボ配合物に対する、本研究、実施例7において記述された研究、および、実施例8において記述されたようなNitricil(商標)軟膏配合物を用いた後続研究での、オキサゾロン誘導性耳介腫脹の結果に関する%阻害率の比較を示す。Nitricil(商標)のNVN4軟膏配合物の場合、配合物は、実施例8において提供されたものと同様であり、その提供されたものは、Nitricil(商標)のNVN1軟膏配合物において、配合物中のNitricil(商標)の量の差異を構成する軽質鉱油でわずかな調整がなされている。
【0124】
【表19】
【実施例10】
【0125】
[ブタの部分層(partial−thickness)創傷モデルにおける創傷治癒研究]
実施例8において記述されたTO−007軟膏配合物等のNitricil(商標)のNVN1軟膏を用いて、部分層創傷をブタモデルにおいて処置した。部分層創傷を、下記の配合物によって処置した。すなわち、0.1%、0.5%、1%もしくは4%のNitricil(商標)のNVN1を含有する軟膏配合物、溶媒軟膏、陽性対照としての標準的な吸蔵用(occlusion)のテガダーム(商標)、または、陰性対照として大気暴露で放置した。
【0126】
8匹の動物での創傷治癒研究の結果を、
図7に示す。0.1%および0.5%というより低い用量のNitricil(商標)のNVN1軟膏は、はるかに速い上皮再形成速度を実証した。最低の用量(0.1%)における20個すべての創傷は、6日目までに完全に治り、対応する軟膏溶媒またはテガダーム(商標)を吸蔵可能な標準治療より丸2日速かった。このデータは、熱損傷モデルにおいて収集されていないとはいえ、より速い治癒を刺激する一酸化窒素の能力を明確に実証している。
【0127】
2つの生検用組織を、負傷から2日目、4日目および7日目に、各処置群の中のすべての動物から採った。組織診用のくさび状生検用組織を、隣接した両側の正常な皮膚を含めて創傷の中心の中から得た。パンチ生検用組織を、RNA単離および後続するRT−PCR分析のために、創傷の残り半分から採った。
【0128】
上皮の厚さの差異は、処置群のいずれについても観察されず、治癒プロセスが調節されたこと、および上皮における細胞の過剰増殖がなかったことを示していた。0.5%Nitricil(商標)のNVN1軟膏によって処置された創傷は、他の処置群と比較して、2日目に高レベルのIL−8mRNAを発現した(
図8)。好中球化学誘因物質であるIL−8の発現は、0.5%Nitricil(商標)のNVN1軟膏による処置(p≦0.05)の2日後、創傷で有意に誘導された。一酸化窒素は、IL−8プロモーターを活性化することができ、一方でIL−8は、好中球の中でのiNOSの発現を抑制することができる。このシグナリング効果は、治癒を促進するのには十分であるが、好中球の補充を容易にさせず、かつ、持続的炎症応答を起こさなかった(
図9)。組織診により測定された白色細胞浸潤物は、処置のいずれについても統計学的に異なっていなかった。
【0129】
前記は、本発明についての例示であり、本発明の限定と解釈すべきでない。本発明は、下記の特許請求の範囲により規定され、ここで、特許請求の範囲の等価物もその中に含められる。本明細書において引用されたすべての公報、特許出願、特許、特許公報およびその他の参考文献は、参考文献が提示されている文および/または段落に関連した教示に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれている。