【0018】
[式中、R
1は、1〜4の炭素数を有するアルキルである;R
2は、水素原子、ハロゲン原子、または所望によりハロゲン原子もしくはヒドロキシル基により置換されていてもよい1〜4の炭素数を有するアルキルである;R
3は、ハロゲン原子、所望によりハロゲン原子、1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシもしくはシアノにより置換されていてもよいフェニル、−NR
5−(CH
2)
m−R
6(ここで、R
5は水素原子または1〜4の炭素数を有するアルキルであり、mは0〜4の整数であり、R
6は、所望によりハロゲン原子により置換されていてもよいフェニルまたはピリジルである)または−NR
7−CO−(CH
2)
n−R
8(ここで、R
7は水素原子または1〜4の炭素数を有するアルキルであり、nは0〜2の整数であり、R
8は、所望によりハロゲン原子により置換されていてもよいフェニルまたはピリジルである)である;そしてR
4は−(CH
2)
a−CO−NH−R
9(ここで、aは1〜4の整数であり、R
9は、1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するヒドロキシアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ、または所望により、1〜4の炭素数を有するアルキル、1〜4の炭素数を有するアルコキシ、アミノもしくはヒドロキシ基により置換されていてもよいフェニルもしくはピリジルである)または−(CH
2)
b−COOR
10(ここで、bは1〜4の整数であり、R
10は、1〜4の炭素数を有するアルキルである)である]またはその医薬上許容される塩またはそれらの水和物もしくは溶媒和物により表される。
【実施例】
【0038】
実施例1:リンパ腫細胞増殖に対する式2の効果
22個のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、8個の未分化大T細胞リンパ腫(ALCL)、4個のマントル細胞リンパ腫(MCL)、および3個の脾臓周辺帯リンパ腫(SMZL)樹立ヒト細胞系において、式2の抗増殖活性を評価した。10% ウシ胎児血清、1% L−グルタミンおよびペニシリン−ストレプトマイシン−ネオマイシン(〜5,000単位のペニシリン、5mg/mLのストレプトマイシン、10mg/mLのネオマイシン)で補足されたRPMI−1640(GIBCO Invitrogen,Basel,Switzerland)またはDMEM(GIBCO Invitrogen,Basel,Switzerland)培地内で細胞系を培養した。
【0039】
増殖アッセイのために、96ウェルプレート内に10
4細胞/ウェルの密度で細胞を播いた。式2の化合物(OncoEthix SA,Lausanne,Switzerland)を10mMのストック溶液としてDMSOに溶解し、ついで幾つかのアリコートに分割し、−80℃で保存した。各実験のために、ストック溶液のアリコートを解凍し、培地内に系列希釈し、2〜3日以内に使用した。細胞をDMSO(対照)または漸増量の式2の化合物(5回の重複実験)で37℃で72時間処理した。細胞増殖を検出するために、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)(Sigma,Buchs,Switzerland)をリン酸緩衝食塩水(PBS)中の5mg/mLのストック溶液として調製し、濾過滅菌した。ついで0.5mg/mLと同等のMTT溶液の量を各ウェルに加え、暗所で37℃で4時間インキュベートした。ついで細胞を25% ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)細胞溶解バッファーで細胞溶解し、Beckman−Coulter AD340装置で570nmの吸光度を測定した。R統計パッケージ(R:A Language and Environment for Statistical Computing,R Foundation for Statistical Computing,Vienna,Austria)を使用して、用量反応曲線によりS字形モデルをフィットさせることにより、50%の成長抑制(GI
50)をもたらす濃度に対応する用量を評価した。
【0040】
表1に要約されている結果は、感受性がGI
50<500nMにより定義された場合、DLBCL系の68%(15/22)、SMZL系の100%(3/3)、ALCL系の62%(5/8)およびMCL系の0%(0/3)が式2の化合物による成長抑制に対して感受性であることを示した。興味深いことに、胚中心型のDLBCLに由来する細胞系(GBC−DLBCL)と活性化B細胞様型のDLBCLに由来する細胞系(ABC−DLBCL)との間で感受性における見掛け上の相違は認められなかった。
【表1】
【0041】
DLBCL細胞系に対する式2の化合物の考えられうる細胞毒性効果を調べるために、100〜1500nMの範囲(GI
50値の範囲を含む)の用量の化合物への72時間の曝露の後、細胞死の度合を評価した。細胞死を評価するために、細胞をDMSOまたは種々の用量の式2の化合物で72時間処理し、回収し、PBSで1回洗浄し、ついでPBS中のヨウ化プロピジウム(1μg/mL,Sigma)で染色した。Beckman−Coulter AD340で535nmで吸光度を測定した。CellQuest Proソフトウェア(Becton Dickinson)を使用して、細胞死の百分率の分析を行った。式2の化合物は低いGI
50値でDLBCL系の僅かな比率のみにおいて(SU−DHL−2、TMD8、OCI−Ly3)細胞死を誘導することを、結果(表1)は示した。
【0042】
また、4個のDLBCL細胞系(Karpas 422、SU−DHL−2、SU−DHL−6、U2932)および4個のALCL細胞系(FE−PD、K299、L82、SU−DHL−1)において、アポトーシスの誘導に対する式2の化合物の効果を評価した。細胞をDMSO(対照)または種々の用量の式2の化合物で72時間処理し、ついでClick−iT EdUフローサイトメトリーアッセイキット(Flow Cytometry Assay Kits)(Invitrogen)および7−ADD(BD Pharmingen)で染色し、FACScanフローサイトメーター(Flow Cytometer)を使用してDNA含量に関して分析した。FlowJo 7.6.3ソフトウェア(Cytek Development,Fremont,California,USA)を使用して、アポトーシス率の分析を行った。結果はDLBCLまたはALCL細胞系のいずれにおいてもアポトーシスの誘導を示さなかった。
【0043】
式2の化合物は、細胞生存性の顕著な低減にもかかわらず、著しい細胞死もアポトーシスも誘導しなかったため、5つのDLBCL細胞系(DohH2、Karpas 422、SU−DHL−6、VAL、U−2932)において、細胞周期に対する式2の化合物の効果を評価した。細胞をDMSO(対照)または種々の用量の式2の化合物で24時間処理し、ついで回収し、PBS中で1回洗浄し、80% エタノール中で4℃で少なくとも1時間固定した。固定細胞を、RNアーゼA(75kU/mL,Sigma)を含有するPBS中のヨウ化プロピジウム(50μg/mL,Sigma)で染色し、FACScanフローサイトメーター(Becton Dickinson)を使用してDNA含量に関して分析した。ModFit LTソフトウェアパッケージ(Verity Software House,Inc.,Topsham,Maine,USA)を使用して、細胞周期分析を行った。
図1に示されているとおり、結果は、式2の化合物がG1停止を用量依存的に誘導することを示した。
【0044】
式2の化合物は、アポトーシスの誘導を伴うことなく、細胞生存性の顕著な低減およびG1停止を誘導したため、代表的なDLBCLおよびALCL細胞系において細胞老化の誘導を評価した。細胞を式2の化合物で48時間処理し、ついでガラクトシダーゼに関して染色した。
図2に示されているとおり、結果は、DLBLCおよびALCL細胞系の両方において老化細胞の顕著な増加を示した。このことは、式2の化合物が、主として、リンパ腫細胞に静細胞効果を及ぼすことを示唆している。
【0045】
実施例2:c−MYC癌遺伝子のダウンレギュレーションに対する式2の化合物の効果
米国特許出願公開第20100286127号(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)に開示されているとおり、式2の化合物はBETブロモドメインタンパク質2、3および4(BRD2、BRD3、BRD4)の競合的インヒビターであることが既に示されている。BRD4の阻害はc−MYC癌遺伝子のダウンレギュレーションを引き起こすことが示されている[Delmore JE,Issa GC,LemieuxMEら:BET bromodomain inhibition as a therapeutic strategy to target c−Myc.Cell 2011;146:1−14]。したがって、BRD2、BRD3およびBRD4のmRNAおよびタンパク質の基底レベル、ならびにc−MYCのmRNAおよびタンパク質レベルに対する式2の化合物の効果を、選択されたDLBCLおよびALCL細胞系において評価した。
【0046】
タンパク質レベルを評価するために、ウエスタンブロット分析を以下のとおりに行った。細胞を熱SDS細胞溶解バッファー(pH 7.4のTris−HCl中の2.5% SDS)中で可溶化し、15秒間にわたって超音波処理した。種々のサンプルにおけるタンパク質含量を、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイ(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois,USA)を用いて決定した。予想分子量に基づいて、8% ポリアクリルアミドゲルを使用するSDS−PAGEにより、ライセート(40μg)を分画した。分離されたタンパク質を電気的転移によりニトロセルロース膜上にブロットした。該膜をTBS−Tバッファー(137mM NaCl、0.1% Tween 20および5%ウシ血清アルブミンを含有する20mM Tris−HCl(pH7.6))中で1時間ブロッキングした。ついで膜を、TBS−T中で希釈された一次抗体と共に一晩インキュベートした。以下の抗体を使用した:抗BRD2(ab37633,AbCam,Cambridge,UK)、抗BRD3(ab56342,AbCam)、抗BRD4(ab75898,AbCam)および抗GAPDH(MAB374,Millipore,Billerica,Massachusetts,USA)。膜をTBS−T中で3回(それぞれ10分間)洗浄し、ついで、適当なホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗マウスまたは抗ウサギ二次抗体(Amersham Life Sciences,Arlington Heights,Massachusetts,USA)を含有するTBS−T中で1時間インキュベートした。該膜をTBS−T中で3回(それぞれ10分間)洗浄し、ついで、製造業者の説明(Amersham Life Science)に従い、化学発光検出の増強のために処理した。サンプルの同等なローディングがGAPDHに関するプローブにより確認された。
【0047】
mRNA分析を以下のとおりに行った。RNAイージーキット(easy kit)(Qiagen AG,Hombrechtikon,Switzerland)を使用して、細胞からRNAを抽出した。NanoDrop分光光度計(NanoDrop Technologies,Wilmington,Deleware,USA)を使用して、全RNAの濃度を260nmで分光光度的に決定した。リアルタイムPCRキット(Invitrogen,Karlsruhe,Germany)用のスーパースクリプト第1鎖合成系(Superscript First−Strand Synthesis System)を該製造業者の説明に従い使用して、1μgの全RNAを逆転写した。StepOnePlusリアルタイムPCR系(Applied Biosystems,Foster City,California,USA)のFast SYBR Green Master Mixを使用して、PCR増幅を行った。Primer3ソフトウェア・パケージ(Rozen S,Skaletsky H:Primer3 on the WWW for general users and for biologist programmers.In:Misener S,Krawetz SA(編)Methods in Molecular Biology,Vol 132:Bioinformatics Methods and Protocols.Towota,New Jersey,USA;Humana Press,Inc.,2000,pp 365−386)を使用して、BRD2、BRD3およびBRD4のためのプライマーセット(表2)を設計した。c−MYCのためのプライマーセットを、公開されている研究成果から得た。全てのサンプルを三重に分析した。各サンプルの特異的mRNAの相対量を、平均サイクル閾値(Ct)値に基づいて、ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対する標準化による実験的変動に関する補正と共にデルタ−デルタCtを用いて計算した。
【表2】
【0048】
それぞれ
図3および4に示されているとおり、BRD2のmRNAおよびタンパク質の基底レベルはDLBCL細胞系およびALCL細胞系において広範に変動し、一方、試験した全ての細胞系は低レベルのBRD4のmRNAおよびタンパク質ならびにごく僅かなレベルのBRD3のmRNAおよびタンパク質を示すことを、結果は示した。興味深いことに、BRD2のmRNAおよびタンパク質の基底レベルは式2の化合物による成長阻害に対する感受性に相関しなかった。試験したDLBCL系においては、最高のBRD2 mRNAレベル(SU−DHL−6 GI
50=110nM)および最低のBRD2 mRNAレベル(DoHH2 GI
50=90nM)を示す系に関して、類似したGI
50値が得られた。同様に、試験したALCL系においては、最高のBRD2 mRNAレベル(L82 GI
50=36nM)および最低のBRD2 mRNAレベル(FE−PD GI
50=158nM)を示す系に関して、類似したGI
50値が得られた。
【0049】
それぞれ
図5および6に示されているとおり、mRNA分析の結果は、試験した6個中5個(5/6)のDLBCL細胞系および試験した4個中4個(4/4)のALCL細胞系において、式2の化合物への24時間の曝露がc−MYC mRNAの顕著なダウンレギュレーションをもたらすことを示した。興味深いことに、c−MYCの最小ダウンレギュレーションを示したDLBCL系は式2の化合物による非常に感受性な成長阻害を示した(SU−DHL−6 GI
50=110nM)。
【0050】
式2の化合物により誘導される、c−MYCのダウンレギュレーションが可逆的であったかどうかを評価するために、3個のDLBCL系(DoHH2、Karpas 422、SU−DHL−2)を式2の化合物で2時間処理し、ついで、式2の化合物を含有する培地を、式2の化合物を含有しない培地と交換した(「洗い落とし」)。洗い落とし後、
図7に示されているとおり、種々の速度論で、3個全ての細胞系においてc−MYC mRNA発現の時間依存的回復が観察された。関連実験において、
図8に示されているとおり、GI
50濃度の式2の化合物で24時間処理されたDLBCL細胞は「洗い落とし」後に再増殖し始めた。
【0051】
実施例3:NFκBのダウンレギュレーションに対する式2の化合物の効果
式2の化合物は、米国特許出願公開第20100286127号に開示されているとおり、BETブロモドメインタンパク質2、3および4(BRD2、BRD3、BRD4)の競合的インヒビターであることが既に示されており、BRD4は、ある状況において腫瘍抑制因子として作用しうる転写因子NFκBの調節に関与すると報告されている[Huang B,Yang XD,Zhou MM,Ozato K,Chen LF:Brd4 coactivates transcriptional activation of NF−κB via specific binding to acetylated RelA.Mol Cell Biol 2009;29:1375−1387]。したがって、NFκB標的(IRF4、A20、BIRC3)のmRNA発現に対する式2の化合物の効果を5個のDLBCL(DoHH
2、Karpas 422、SU−DHL−2、SU−DHL−6、U2932)細胞系において評価した。結果は、式2の化合物がNFκB標的のダウンレギュレーションを誘導することを示した。代表的な結果を
図9に示す。
【0052】
本開示は、該開示の精神または必須属性から逸脱することなく、他の特定の形態において具体化されうる。したがって、該開示の範囲を示すものとしては、前記明細書ではなく、添付の特許請求の範囲が参照されるべきである。前記説明は該開示の好ましい実施形態に向けられているが、他の変更および修飾が当業者に明らかであり、本開示の精神または範囲から逸脱することなく施されうることが注目される。