特許第6266010号(P6266010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266010
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】防眩可能なミラー装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/04 20060101AFI20180115BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180115BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20180115BHJP
【FI】
   B60R1/04 D
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   H01L31/02 D
【請求項の数】19
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-546950(P2015-546950)
(86)(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公表番号】特表2016-507409(P2016-507409A)
(43)【公表日】2016年3月10日
(86)【国際出願番号】EP2013075582
(87)【国際公開番号】WO2014090666
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2015年7月6日
(31)【優先権主張番号】102012222760.1
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514272140
【氏名又は名称】オスラム オーエルイーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OSRAM OLED GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ポップ
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン クラウス クルムマッハー
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−520632(JP,A)
【文献】 特表2012−513079(JP,A)
【文献】 特開2009−241812(JP,A)
【文献】 特開昭60−244644(JP,A)
【文献】 特開2007−125963(JP,A)
【文献】 特開2002−283915(JP,A)
【文献】 実開平01−172027(JP,U)
【文献】 実開平02−021627(JP,U)
【文献】 特開2001−322494(JP,A)
【文献】 特開昭60−202429(JP,A)
【文献】 米国特許第05253109(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/04
H01L 31/0232
H01L 51/50
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防眩可能なミラー装置であって、
制御可能な透明度を有するエレクトロクロミック材料を含んだ基板(101)を備え、それにより、前記基板(101)は、エレクトロクロミック材料の1つの状態においては透明に見え、エレクトロクロミック材料の別の状態では透明度が低くなるか又は暗く見え
前記基板(101)上に、少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス素子(100)を備え、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)は、2つの電極(102,104)の間に少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層を有する有機機能層スタック(103)を含み、前記有機オプトエレクトロニクス層は、有機受光層として構成され、かつ、前記ミラー装置の第1の動作状態において前記基板(101)を通った周辺光(3)を検出しており、それによって、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)は、前記第1の動作状態において有機受光素子として機能し、前記基板(101)の透明度は、前記第1の動作状態における前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の測定信号に依存して制御可能であり、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の、前記基板(101)に対向するように設けられた電極(102)は透過的であり、さらに、
反射層(120)を備え、前記反射層(120)は、前記有機機能層スタック(103)の、前記基板(101)とは反対側に設けられていることを特徴とする、防眩可能なミラー装置。
【請求項2】
防眩可能なミラー装置であって、
制御可能な透明度を有するエレクトロクロミック材料を含んだ基板(101)を備え、それにより、前記基板(101)は、エレクトロクロミック材料の1つの状態においては透明に見え、エレクトロクロミック材料の別の状態では透明度が低くなるか又は暗く見え
前記基板(101)上に、少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス素子(100)を備え、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)は、2つの電極(102,104)の間に少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層を有する有機機能層スタック(103)を含み、前記有機オプトエレクトロニクス層は、有機受光層として構成され、かつ、前記ミラー装置の第1の動作状態において前記基板(101)を通った周辺光(3)を検出しており、それによって前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)は、前記第1の動作状態において有機受光素子として機能し、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の、前記基板(101)に対向するように設けられた電極(102)は透過的であり、さらに、
反射層(120)を備え、前記反射層(120)は、前記有機機能層スタック(103)の、前記基板(101)とは反対側に設けられており、
前記基板(101)の透明度は、前記第1の動作状態における前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の測定信号に依存して制御可能であり、
前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の1つの電極(102)は、前記基板(101)と直接コンタクトするように形成され、
前記基板(101)の、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)とは反対側の底面は、前記ミラー装置の外面を形成し、
前記反射層(120)は、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の、前記基板(101)とは反対側に電極(104)を有していることを特徴とする、防眩可能なミラー装置。
【請求項3】
前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の1つの電極(102)は、前記基板(101)と直接コンタクトするように形成され、前記基板(101)の、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)とは反対側の底面は、前記ミラー装置の外面を形成している、請求項1記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項4】
前記基板(101)上に、前記エレクトロクロミック材料の電気的な制御のための複数のコンタクト素子(111)が配設されており、前記複数のコンタクト素子(111)は、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)に対して横方向に離間されている、請求項1又は2記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項5】
前記反射層(120)は、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の、前記基板(101)とは反対側に電極(104)を有している、請求項1記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項6】
前記反射層(120)は、制御可能な反射率を有するミラー層(115)を、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の前記基板(101)に対向している側に含んでおり、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の前記基板(101)とは反対側の電極(104)は、透明に構成されている、請求項1又は2記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項7】
前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)は、有機フォトダイオード、有機フォトコンバータ、及び/又は、有機フォトレジストとして構成されている、請求項1から6いずれか1項記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項8】
前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の前記少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層は、付加的に、前記ミラー装置の第2の動作状態において光を放射する有機発光層として構成されている、請求項1から7いずれか1項記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項9】
前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)は、前記第2の動作状態において有機発光ダイオードとして機能する、請求項8記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項10】
前記基板(101)上で前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)に対して横方向に隣接するように少なくとも1つの有機発光素子(200)が配設されており、前記少なくとも1つの有機発光素子(200)は、2つの電極(202,204)の間に少なくとも1つの有機発光層を有する有機機能層スタック(203)を含んでいる、請求項1から9いずれか1項記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項11】
前記反射層(120)は、前記有機発光素子(200)の、前記基板(101)とは反対側に電極(204)を有している、請求項10記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項12】
前記基板(101)上で前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)に対して横方向に隣接するように少なくとも1つの有機受光素子(300)が配設されており、前記少なくとも1つの有機受光素子(300)は、前記ミラー装置の、前記基板(101)に対向している側から当該ミラー装置へ入射する周辺光(4)を検出する、請求項1から11いずれか1項記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項13】
前記基板(101)側から見て前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の上側に、有機受光素子(300)及び/又はさらなる有機オプトエレクトロニクス素子(100)が配設されており、前記有機受光素子(300)及び/又はさらなる有機オプトエレクトロニクス素子(100)は、前記ミラー装置の、前記基板(101)に対向している側から当該ミラー装置へ入射する周辺光(4)を検出している、請求項1から12いずれか1項記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項14】
前記有機受光素子(300)は、2つの電極(302,304)の間に少なくとも1つの有機受光層を有する有機機能層スタック(303)を含み、前記電極のうちの1つ(304)は、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の前記電極のうちの1つ(1
04)によって形成され、さらに前記基板(101)に対向している側に配置された電極(304)は透明に構成されている、請求項13記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項15】
前記基板(101)は、エレクトロクロミックガラス及び/又はエレクトロクロミックフィルムを有している、請求項1から14いずれか1項記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項16】
前記反射層(120)は、前記有機オプトエレクトロニクス素子(100)の電極(104)によって形成されている、請求項1から15いずれか1項記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項17】
前記基板(101)上に、前記エレクトロクロミック材料の電気的な制御のための複数のコンタクト素子(111)が配設されており、
前記コンタクト素子(111)は、前記基板(101)と直接コンタクトするように形成される、請求項1から16いずれか1項記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項18】
前記ミラー装置は、自動車のバックミラーとして構成されている、請求項1から17いずれか1項記載の防眩可能なミラー装置。
【請求項19】
前記基板(101)は、前記ミラー装置の観察側を形成している、請求項1から17いずれか1項記載の防眩可能なミラー装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩可能なミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車のルームミラーにおいて、後続する交通車両のヘッドライトによる眩しさをドライバーが感じてしまうことを軽減するために、防眩タイプの鏡面をバックミラーに具備させることが可能である。このような鏡面は、その近傍かルームミラーの設置領域にある輝度センサからの測定信号に依存して制御される。さらにミラーの輝度を制御するための大規模な多結晶検出器や太陽電池も公知である。
【0003】
しかしながら通常それらの部品は、ミラー輝度の制御は別としてそれ以上の機能を持ち合わせていない別個の外部センサである。
【0004】
本発明による所定の実施形態の少なくとも1つの課題は、より改善された防眩可能なミラー装置を提供することにある。
【0005】
前記課題は、独立請求項に記載の本発明によって解決される。本発明の有利な実施形態及び改善構成は、従属請求項に記載されており、さらに、以下の説明及び図面からも明らかにされる。
【0006】
少なくとも1つの実施形態によれば、防眩可能なミラー装置は、エレクトロクロミック材料を含んだ基板を備え、この基板は、制御可能な透明度を有している。この目的のために、前記基板は、例えばエレクトロクロミック材料、例えばエレクトロクロミックガラス、例えばWLiO3、及び/又は、1つ以上のエレクトロクロミックポリマーを含むエレクトロクロミックフィルム又はそれらを複数備えた若しくは複数のそれらかなる積層構造体であってもよい。さらに前記基板は、付加的に1つ以上の透明なガラス層及び/又はプラスチック層を有していてもよい。この基板は、例えば、エレクトロクロミック材料の1つの状態においては、可及的に透明でとりわけ明るく見え、エレクトロクロミック材料の別の状態では、この基板の透明度が低くなってとりわけ暗く見えるようなものであってもよい。エレクトロクロミック材料は、基板の主延在面全体に亘って配置されていてもよいし、1つの部分領域または複数の部分領域に配置されていてもよい。その際にはこの基板は、その主延在面全体に亘ってエレクトロクロミック材料を含まず、例えば不変の透明度を有する1つ又は複数の部分領域を有し得る。
【0007】
なお前記した「透明」との表現は、ここ及び以下の明細書では、可視光に対する透過性全般を指すものと理解されたい。そのため、透明な層とは、明るく見える層であってもよいし、少なくとも部分的に光の散乱及び/又は光の吸収がなされる層であってもよい。また透明と称する層には、拡散的なものや乳白色のものが含まれていてもよい。ここで透明と称する層は、特に有利には、可視光に対する透過性が可能な限り次のように形成されているもの、すなわち、特に有機発光素子において生成された光の吸収が可能な限り少なくなるように形成されているものを指すものであってもよい。
【0008】
さらに前記ミラー装置は、観察者側から見て基板の後方、特にエレクトロクロミック材料の後方に反射層を備えている。基板のエレクトロクロミック材料は、例えばこの反射層の領域に配置されていてもよい。このことは、エレクトロクロミック材料が、観察者側から見て前記反射層を覆っていることを意味し、そのため外部から入射する光、つまり反射層において反射される周辺光は、エレクトロクロミック材料を通過することになる。電気的コンタクト素子によって駆動されるエレクトロクロミック材料を用いた基板の透明度の変更により、当該ミラー装置のミラー作用は制御可能になる。特にこのミラー装置は、エレクトロクロミック材料の相応の制御によって、基板の透明度を連続的に低下させて暗くすることも可能である。
【0009】
例えば、前記ミラー装置は、自動車、例えばトラック又は乗用車のバックミラー、とりわけルームミラーとして構成されていてもよい。この場合はエレクトロクロミック材料によって、例えば後続する交通車両のヘッドライトによって引き起こされる眩しさの低減が達成できる。
【0010】
さらに前記ミラー装置は、少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス素子を基板の上に備え、この素子は、2つの電極間に少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層を有する有機機能層スタックを備えている。なお、前述の「基板の上に備え」との記載は、ここ及び特に以下の明細書では、少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス素子が、観察者とは反対側の基板のカバー面に配置され、このカバー面と前記有機オプトエレクトロニクス素子とが少なくとも領域毎に直接接触していることを意味する。
【0011】
少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層は、ミラー装置の第1の動作状態において、基板周囲の周辺光を検出する少なくとも有機受光層として構成され得る。そのためこの有機オプトエレクトロニクス素子は、第1の動作状態においては、有機受光素子として機能する。それと共にこの有機オプトエレクトロニクス素子は、第1の動作状態において、周辺光が入射した場合に、電気的に測定可能な信号、例えば光電圧、光電流又は光依存性の電気的抵抗へ変換することができるように構成されていてもよい。
【0012】
なお、前述の「周辺光」とは、ここ及び特に以下の明細書では、次のような光を指す。すなわち外部からミラー装置内へ入射し得る光であって、ミラー装置の内部では、内部散乱や光誘導作用に起因して、発光素子から有機オプトエレクトロニクス素子まで伝達させることのできない光である。
【0013】
さらに前記有機オプトエレクトロニクス素子は、周辺光の入射方向で見て、エレクトロクロミック材料の後方に配置してもよい。それにより少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層は、エレクトロクロミック材料を貫通した周辺光を検出することができる。これについては代替的に、前記有機オプトエレクトロニクス素子を、エレクトロクロミック材料に対して横方向にずらして配置することも可能である。それにより少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層は、その透明度がエレクトロクロミック材料によって制御可能であり、したがって基板の部分的に透明な領域は、周辺光を連続的に検出することができる。
【0014】
なお、前述した「横方向」とは、ここ及び特に以下の明細書では、基板の主延在面に平行な方向を指す。それにより1つの横方向は、例えば少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス素子の有機機能層スタックと電極の積層方向に対して垂直方向に配向される。
【0015】
基板と特にエレクトロクロミック材料の透明度は、第1の動作状態における有機オプトエレクトロニクス素子の測定信号に依存して制御可能である。この第1の動作状態は、ミラー装置の構成に応じて当該ミラー装置の唯1つの動作状態であってもよい。さらに前記ミラー装置は、以下で説明するさらなる動作状態を有していてもよい。このさらなる動状態では、有機オプトエレクトロニクス素子が、有機受光素子としてではなく、有機発光素子として機能してもよいし、動作しなくてもよい。
【0016】
反射層は、有機機能層スタックの基板とは反対側に少なくとも部分的に配置されていてもよいし全体的に配置されていてもよい。それにより、少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層が、有機オプトエレクトロニクス素子の層の配列方向で、基板と反射層との間に存在する。この反射層は、関連していてもよいし、複数の部分領域に分離されていてもよい。
【0017】
さらに前記基板は、光電子素子の製造のための支持体として構成してもよい。このケースでは、機能層スタックと有機オプトエレクトロニクス素子の電極を、基板のカバー面に相前後して連続的に被着させることも可能である。それによりこの基板は、有機オプトエレクトロニクス素子を作成するために設けられた基板となる。換言すれば、有機発光素子と有機受光素子は、固有の基板上で作成されるのではなく、共通の基板上で作成される。
【0018】
特に有機オプトエレクトロニクス素子の少なくとも1つの電極は、基板に直接接していてもよい。すなわち、前記電極は、基板のカバー面と直接コンタクトできる。観察者側に向いている基板の底面は、当該ミラー装置の外面を形成し、大半は材料から解放されたままである。この底面は、有利には、周辺光の光入射面として使用される。さらに前記基板は、当該ミラー装置の唯一の基板であってもよい。しかしながらこのミラー装置は、それぞれ1つのエレクトロクロミック材料を有する複数の基板を含むものであってもよい。その場合には、複数の基板の各々に、2つの電極の間に少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層を有している、それぞれ1つの有機オプトエレクトロニクス素子が一義的に対応付けられてもよい。
【0019】
前記基板は、とりわけ関連する有機オプトエレクトロニクス素子を機械的に支持する構成要素を形成している。
【0020】
さらなる実施形態によれば、前記反射層は、基板とは反対側の有機オプトエレクトロニクス素子の電極を有しているか又はそれから形成される。換言すれば、前記有機オプトエレクトロニクス素子は、反射電極を備えることも可能である。この反射電極は、基板から見て有機機能層スタック上に配置され、反射層の少なくとも一部を形成する。
【0021】
さらなる実施形態によれば、前記防眩可能なミラー装置は、ミラー層を有する鏡面を備えており、この鏡面は、例えば有機オプトエレクトロニクス素子の横に隣接して基板上に配置され、反射層の一部を形成している。
【0022】
さらなる実施形態によれば、前記防眩可能なミラー装置は、有機オプトエレクトロニクス素子の基板に対向している側に、制御可能な反射率を有するミラー層を備え、それに対して、前記有機オプトエレクトロニクス素子の基板とは反対側に配置された電極は、透明か又は少なくとも部分的に又は領域毎に光透過的に形成されている。前記ミラー装置の反射層は、制御可能な反射率を有するミラー層を備えているか、当該ミラー層からなっている。特に制御可能な反射率を有する前記ミラー層はまた、制御可能な透過性も有し得る。そのためこのミラー層は、選択的に反射または透過の切り替えが可能である。例えば、制御可能な反射率を有するミラー層は、エレクトロクロミック材料及び/又は液晶材料及び/又は切り替え可能なミラー素子を有している。制御可能な反射率を有する前記ミラー層は、当該ミラー装置の基板に対向している側が、所望の測定間隔で、反射状態から少なくとも部分的に透明な状態に切り替えられ、その間に、有機オプトエレクトロニクス素子は、周辺光も当該ミラー装置の基板とは反対側で検出できるように構成されていてもよい。そのような測定は、一般的な輝度、例えば昼光を検出できる基準測定として適切であり得る。そのため前記ミラー装置のエレクトロクロミック材料は、例えば一般的な輝度が所定の値を下回った場合にのみ、すなわち例えば夜間の間や周辺環境が暗いときにだけ、その透明度が制御される。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、有機オプトエレクトロニクス素子の基板に向いている電極が透明に形成されている。例えば透明電極は、透明導電酸化物(“transparent conductive oxide”;TCO)からなっていてもよいし、そのようなものを有していてもよい。さらに透明電極は、付加的又は代替的に、透明な金属、ネットワーク構造、及び/又はグラフを有していてもよい。反射電極は、例えば反射性の金属を含んでいてもよい。
【0024】
さらなる実施形態によれば、有機オプトエレクトロニクス素子の有機機能層スタックの少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層は、付加的に有機発光層として形成されており、当該有機発光層は、前記ミラー装置の第2の動作状態において、有機発光ダイオード(OLED)として作用し、基板を通して光を放射する。当該ミラー装置は、そのような第1の動作状態又は第2の動作状態への切り替えによって、防眩可能なミラー装置として、又は、照明装置として、選択的に動作する。
【0025】
さらなる実施形態によれば、前記ミラー装置は、基板上で、有機オプトエレクトロニクス素子に横方向で隣接するように、有機発光素子を備えている。この有機発光素子は、基板を通して光を放射することができる。特にこの有機発光素子は、有機オプトエレクトロニクス素子と同じ基板側に配置されている。前記有機発光素子は、好ましくは第1の動作状態とは異なる動作状態で動作され得る。それにより前記ミラー装置は、防眩ミラーとして、あるいは照明装置として、交互に動作させることが可能になる。前記有機発光素子は、2つの電極の間に、少なくとも1つの有機発光層を有する有機機能層スタックを備えている。前記有機オプトエレクトロニクス素子と前記有機発光素子は、自身の構造に関して、すなわち電極及び/又はそれぞれの有機機能層スタックに関して、同じ構成であってもよい。あるいは代替的に、前記素子は、異なって構成されてもよい。例えば、前記有機発光素子は、基板と反対側に反射的に構成されている電極を備えていてもよい。この反射電極は、当該ミラー装置の反射層の一部であってもよいし、あるいは前記ミラー装置の反射層は、前記有機発光素子の反射電極からなっていてもよい。
【0026】
さらなる実施形態によれば、前記ミラー装置は、基板上で前記有機オプトエレクトロニクス素子に横方向に隣接するように有機受光素子を備えている。この有機受光素子は例えば、前記ミラー装置の基板に対向している側から当該ミラー装置へ入射する周辺光を検出するように構成されていてもよい。既に前述したように、これによって、例えば一般輝度、すなわち例えば日中光が、基準光として測定される。それにより、当該ミラー装置と、特に基板のエレクトロクロミック材料並びにそれに伴う調光機能とが、一般輝度に依存して作動される。
【0027】
さらなる実施形態によれば、前記防眩可能なミラー装置は、基板から見て有機オプトエレクトロニクス素子上に有機受光素子及び/又はさらなる有機オプトエレクトロニクス素子を備えており、このさらなる有機オプトエレクトロニクス素子は、基板に対向する側から当該ミラー装置へ入射するそのつどの周辺光を検出し得る。順次連続して配置された1つ又は複数の有機オプトエレクトロニクス素子とその上に配置された有機受光素子は、例えば同じように構成されていてもよい。前記有機受光素子及び/又は前記さらなる有機オプトエレクトロニクス素子は、それぞれ2つの電極の間に、少なくとも1つの有機受光層ないし有機オプトエレクトロニクス層を有する有機機能層スタックを備えていてもよい。この場合前記電極の1つは、前記有機オプトエレクトロニクス素子の電極の1つによって基板上に形成される。換言すれば、前記基板上の有機オプトエレクトロニクス素子及びその上に配置された有機受光素子又は光電子素子は、共通の電極を有していてもよい。
【0028】
さらなる実施形態によれば、前記ミラー装置の有機受光素子、すなわち有機オプトエレクトロニクス素子と、場合によってはさらなる有機受光素子ないし有機オプトエレクトロニクス素子とが、有機フォトダイオードとして、及び/又は、有機フォトコンダクタとして、及び/又は、有機フォトレジスタとして、形成され、使用され得る。
【0029】
前記有機フォトダイオードは、特に、2つの電極間に有機機能層スタックを備え、この有機機能層スタックは、有機受光層として、電荷キャリア生成のための少なくとも1つのpn接合部を有する。例えば、前記有機フォトダイオードは、電極及び有機機能層スタックに関して、有機発光素子すなわちOLEDと同じ構造を有し、それとは反対の、つまり逆の電気的極性で動作される。これにより、例えば、前記ミラー装置の全ての有機受光素子と有機発光素子とを、同じように構成することも可能である。それにより、例えばOLEDのような従来の面発光素子に比べて、製造の際の余分な手間や追加費用なしでそのままのプロセス制御を行うことが可能になる。これについては代替的に、前記有機フォトダイオードは、電極及び/又は有機機能層スタックに関して、有機発光素子とは別の材料及び/又は別の層構造を有していてもよい。これにより、製造における付加的なコストは必要になるが、有機フォトダイオードの感度が所期のように適合化可能になる。
【0030】
有機フォトコンダクタは、光の入射のもとで電荷を発生する有機フォトコンダクタ材料を含んでいる。有機フォトコンダクタ材料は、導電層、例えば電極上で単層で形成されてもよい。さらに前記有機フォトコンダクタ材料は、例えば有機電荷担体を生成する少なくとも1つの層と、有機電荷担体を輸送する少なくとも1つの層とを備えた少なくとも二層で形成されていてもよい。さらに有機フォトコンダクタとして形成される有機オプトエレクトロニクス層及び/又は有機受光層が、有機発光素子と同様の構造、例えばOLEDと同じ構造を有していてもよい。
【0031】
材料や構造に応じて、有機フォトコンダクタは、有機フォトダイオードとして構成されてもよい。このような有機素子は、電気的バイアスを伴うフォトダイオードとして及び電気的バイアスなしのフォトコンダクトとして使用可能である。さらに使用される材料及び構造に応じて、付加的若しくは代替的に、電気抵抗が測定されてもよい。
【0032】
別の実施形態によれば、前記ミラー装置は、複数の有機オプトエレクトロニクス素子及び/又は複数の有機受光素子および/または複数の有機発光素子を、基板上で横方向に隣接して備える。
【0033】
この基板は、当該ミラー装置の特に有機オプトエレクトロニクス素子のための及び場合によっては他の有機素子のための唯一の基板であってもよい。1つ又は複数の有機素子の層は、特にこの場合、連続的に基板上に被着される。そのためこの基板は、1つまたは複数の有機素子の作製に必要なために設けられている基板である。換言すれば、前記有機オプトエレクトロニクス素子及び任意のさらなる有機発光及び/又は受光素子は、固有の基板に作製されて、エレクトロクロミック材料を有する基板に配置されるのではなく、エレクトロクロミック材料を有する基板上に作製される。したがって、この場合、特に基板と、有機素子の有機機能層との間に、さらなる基板は配置されない。
【0034】
本明細書に記載の防眩可能なミラー装置では、少なくとも1つのセンサ素子が次のように形成された有機オプトエレクトロニクス素子の形態で使用される。すなわち、少なくとも1つの動作状態において、有機フォトダイオード、有機フォトコンバータまたは有機フォトレジストの形態の有機受光素子として、当該ミラー装置の観察側を形成している基板を通った周辺光が検出可能であり、場合によっては対向している側でも検出が可能である。この周辺光の入射の際、特に例えば自動車のヘッドライトのように所定の最低輝度を有する周辺光の入射の際には、当該ミラー装置の自動減光が可能であってもよい。その際には、前面側若しくは背面側の照明を検出する少なくとも1つのセンサ素子の信号が、基板のエレクトロクロミック材料の制御のために直接使用される。この有機オプトエレクトロニクス素子と任意のさらなる有機受光素子若しくは光電子素子は、例えば、反射層の広範囲な領域にわたって、別個のセンサ素子として組み込まれてよいし、あるいは反射層が、1つ又は複数の有機素子の一部であってもよい。前記有機オプトエレクトロニクス素子は、さらなる動作状態において、本来の光検出機能に加えて、照明源としても利用され得るように構成されていてもよい。
【0035】
例えば、付加的な有機受光素子若しく有機発光素子のケースでは、それらは有機オプトエレクトロニクス素子と同じような層構造を有し得るので、モノリシックな集積化によって、同じ層構造を有する分離された平面領域を、センサ及び/又は光源として用いることができるようになる。これにより、従来の防眩ミラーのように、別個の照明素子やセンサ素子は不要となり、前記有機素子は、付加的なコストを生じさせることなく、例えば大規模なセンサ素子及び/又は照明素子を形成し得る。これにより、防眩可能なミラー装置自体において、防眩素子、特に基板内のエレクトロクロミック材料を切り替えるモノリシックに集積化された少なくとも1つのセンサによる信号生成が、例えば眩しさの回避を可能にさせる。
【0036】
本発明のさらなる利点、有利な実施形態、改善形態は、以下の図面に基づく実施例の詳細な説明からも明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】防眩可能なミラー装置の第1実施例の概略図
図2A】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の光特性も含めた概略図
図2B】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の光特性も含めた概略図
図3】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図4】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図5】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6A】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6B】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6C】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6D】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6E】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6F】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6G】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6H】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6I】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6J】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6K】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6L】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図6M】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図7】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図8】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
図9】防眩可能なミラー装置のさらなる実施例の概略図
【0038】
実施例
これらの実施例並びにその図面において、同一、類似または同じ機能の構成要素には、それぞれ同じ参照番号が付されている。図面に示されている種々の構成要素とそれらの相互のサイズ比の関係は必ずしも縮尺通りではない。それどころか、個々の要素、例えば層、部品、素子、領域は、より良い描写及び/又はより良い理解のために、誇張的に拡大される場合もある。
【0039】
図1には、本発明の一実施例による防眩可能なミラー装置が示されており、この実施例は、例えば自動車のバックミラーとして、あるいは自家用車やトラックのリアビューミラーとして形成されていてもよい。なおリアビューミラーや他のミラー装置に対する例示的な実施形態であるので、ここでは通常のケーシング部分に関しては分かり易くする理由から示していない。
【0040】
このミラー装置は、基板101を有している。この基板101上には有機オプトエレクトロニクス素子100と反射層120が設けられている。ここでの基板側は、当該ミラー装置の観察者側に面し、そのため前記反射層120は、観察方向で見て、基板101の後方に位置している。
【0041】
基板101は、制御可能な透明度を有するエレクトロクロミック材料を含んでいる。この基板101は、エレクトロクロミック材料として例えば、エレクトロクロミックガラス、例えばWLiO3、及び/又は、エレクトロクロミックポリマーを含んだエレクトロクロミックフィルム、あるいは、これらの複数のもの若しくはこれらの積層体からなる材料を含み得る。さらに前記基板101は、1つ以上の透明なガラスまたはプラスチック層を有していてもよい。例えば、基板101と保護ガラスと代替的若しくは付加的にさらに別の保護層を含んでいてもよい。特に前記基板101は、可撓性を有していてもよい。そのため当該ミラー装置も可撓性を有し得る。
【0042】
この基板101は、エレクトロクロミック材料の1つの状態において可及的に透明であり、特に光のために明るく見える。エレクトロクロミック材料の別の状態では、前記基板101は、透明度が減少し、特に暗く見える。特に、前記エレクトロクロミック材料は、前記基板101の透明度の連続的な低下と共にミラー装置の連続的な防眩を達成することができるように構成することができる。基板101のエレクトロクロミック材料の、制御のために、すなわち、特に電気的なコンタクト形成と透明度の制御のために、基板101上に複数のコンタクト素子111が設けられている。これらのコンタクト素子111は、例えば、有機オプトエレクトロニクス素子100に対して横方向に離間され、前記基板101のカバー面と直接コンタクトするように形成される。
【0043】
エレクトロクロミック材料は、基板101の主延在面において基板全体101に亘って延在していてもよい。それにより、基板101によって形成される全体面を、エレクトロクロミック材料の制御によって暗くすることができる。それに対しては代替的に、前記エレクトロクロミック材料を1つ以上の部分領域に配設することも可能である。それにより、前記前記基板101は、その主延在面に沿って、エレクトロクロミック材料を含んでいない例えば透明度が不変である1つ又は複数の部分領域を有することができる。いずれのケースにおいても、エレクトロクロミック材料は、観察者側から見てエレクトロクロミック材料の後方に反射層120が存在するように配置される。
【0044】
さらに前記基板101と前記ミラー装置は、硬性若しくは可撓性を有するものであってもよいし、例えば拡大効果のために凹面状に湾曲したものであってもよい。
【0045】
有機オプトエレクトロニクス素子100は、基板101上に電極102,104を有し、これらの電極の間に、少なくとも1つの有機機能層を有する有機機能層スタック103が配置されている。
【0046】
前記電極102,104の間の有機機能層スタック103は、有機機能層を有しており、この有機機能層は、有機受光層として形成され、前記ミラー装置の第1の動作状態において基板101を通った周辺光を検出することができる。これにより、前記有機オプトエレクトロニクス素子100は、第1の動作状態において、有機受光層として機能する。従って前記有機オプトエレクトロニクス素子100は、第1の動作状態において、周辺光が入射した場合に、それを電気的に測定可能な信号に、例えばフォト電圧、フォト電流、又は光依存性の電気抵抗に変換するように構成される。この目的のために、前記有機オプトエレクトロニクス素子は、冒頭の従来技術でも述べたように、有機フォトダイオード、有機コンバータ及び/又は有機フォトレジスタとして構成されてもよい。
【0047】
周辺光が入射した場合、例えば自動車のヘッドライのように特に所定の輝度を有する周辺光が入射した場合に、第1の動作状態において、ミラー装置の自動的な防眩が可能であってもよい。そのときには適切な制御回路を用いて前記有機オプトエレクトロニクス素子100の信号が、前記基板101のエレクトロクロミック材料を直接制御するために使用される。
【0048】
さらに図示の実施例では、有機オプトエレクトロニクス素子100の有機機能層スタック103の少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層は、付加的に有機発光層として形成されている。この有機発光層は、当該ミラー装置の第2の動作状態において、光を放射することができる。それにより、前記有機オプトエレクトロニクス素子100は、第2の動作状態において、有機発光ダイオード(OLED)として機能し、基板101を介して光を放射することができる。この目的のために、有機機能層スタック103は、異なる極性により、すなわち阻止方向又は導通方向への動作により、光を検出するように又は光を放出するように、動作可能である適切なダイオード層構造を有し得る。第1の動作状態若しくは第2の動作状態への切り替えにより、当該ミラー装置は、防眩可能なミラー装置として又は照明装置として、選択的に動作可能である。適切な実施例に対する代替例として、前記有機オプトエレクトロニクス素子100は、有機受光素子としてのみ形成されてもよい。それにより、図示のミラー装置は、このケースでは第1の動作状態においてのみ動作し付加的な照明機能なしでも動作させることができる。
【0049】
下方の電極102、すなわち基板101に対向するように設けられた電極は、透過的に形成され、例えば、透明な導電性酸化物Oxidを含む。この透明な導電性酸化物(“transparent conductive oxide;単にTCOとも称する”)は、透明な導電性材料であって、通常は金属酸化物、例えば酸化亜鉛、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化インジウムスズ酸化物(ITO)などであり得る。二元の金属−酸素化合物、例えばZnO、SnO2又はIn23の他に、三元の金属−酸素化合物、例えば、Zn2SnO4、CdSnO3、ZnSnO3、MgIn24、GaInO3、Zn2In25またはIn4Sn312、又は異なる透明導電性酸化物の混合物もTCOのグループに属している。さらに、前記TCOは必ずしも化学量論的な組成に相応しておらず、p形ドープ又はn形ドープされてもよい。代替的にまたは付加的に、下方の電極102は、グラフ、金属ワイヤ及び/又は金属メッシュを有していてもよい。これらの材料は、とりわけ、電極を形成するTCO材料からなる層と組み合わせてもよく、その際には電極の横方向の導電率が増加する。
【0050】
さらに、透過的な電極102は、透過性の金属、すなわち光に対して少なくとも部分的に透過的となる位に十分な薄さの厚みを有する、前記電極に適した金属を有し得る。さらに前記透過的な電極102は、金属性のネットワーク構造及び/又はグラフ、あるいは上記透過性材料の組み合わせを有し得る。
【0051】
有機機能層スタック103上のさらなる電極104は、反射的に構成され、アルミニウム、バリウム、インジウム、銀、金、マグネシウム、カルシウム、リチウム、並びにそれらの化合物、組合せ、合金から選択され得る金属を含む。特に前記電極104は、例えば、グラファイト、グラフェン、銀、アルミニウム、またはこれらの合金若しくは層スタックであって、例えば、銀/マグネシウム、銀/カルシウム、マグネシウム/アルミニウム、又は、モリブデン/アルミニウム/モリブデン若しくはクロム/アルミニウム/クロムを有していてもよい。代替的に又は付加的に、前記電極104は、上記TCO材料を有するか、又は、少なくとも1つのTCOと少なくとも1つの金属とを有する層スタックを有していてもよい。
【0052】
図示の実施例によれば、ミラー装置の反射層120は、有機オプトエレクトロニクス素子100の電極104を有している。特に、図示の実施例では、反射層120は、電極104によって形成される。
【0053】
前記電極102及び104の電気的コンタクト形成のために、図1に示すように、複数の電極接続片105が設けられていてもよい。これらの電極接続片105は、後述する封入部107の下方を通って前記電極102,104から外方へ達している。電気的なコンタクトリード導体を形成している電極接続片105は、透明若しくは非透明に形成されてもよく、例えばTCO及び/又は金属を有するか、それらからなっていてもよい。例えば前記電気接続片105は、金属層若しくは金属層スタック、例えばモリブデン/アルミニウム/モリブデン(Mo/Al/Mo)、クロム/アルミニウム/クロム(Cr/Al/Cr)またはアルミニウム(Al)によって形成されていてもよい。
【0054】
前記電極102,104は、有利には互いに関連して広範囲に形成されている。それにより、有機オプトエレクトロニクス素子100は、大面積なセンサ素子として、及び広範囲な光源、特に面発光源として形成される。なお、ここでの「大面積」ないし「広範囲」とは、有機オプトエレクトロニクス素子100が、可能な限り、当該ミラー装置の全反射面を形成していることを意味する。これについては代替的に、さらに付加的に、ミラー層を有する鏡面が、有機オプトエレクトロニクス素子100に対して横方向に隣接して設けられてもよい。このことはミラー装置の鏡面の拡大に結びつく。さらに、例えば有機オプトエレクトロニクス素子100の下方電極102をパターン化して形成し、それによって、第2の動作状態において、パターン化された光の印象を与えるようにすることも可能である。
【0055】
有機機能層スタック103は、切り替えに応じて発光又は受光作用する少なくとも1つの有機オプトエレクトロニクス層に対してさらに付加的に、正孔ないし電子を有機オプトエレクトロニクス層に移送若しくは導出するのに適した、あるいはそれぞれの輸送を阻止するのに適したさらなる有機層、例えば正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層(“charge generation layer”;CGL)のうちの1つ以上から選択されるさらなる有機層を含んでいてもよい。前記有機機能層スタック103の複数の層は、有機ポリマー、有機オリゴマー、有機モノマー、有機非ポリマー小分子(“small molecules”)、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。なお有機オプトエレクトロニクス素子、特に有機受光素子や有機発光素子の層構造に適した材料および層の組み合わせは、当業者には周知であるので、ここではこれ以上詳述しない。
【0056】
さらに、図1に示すように、例えば電極102,104を相互に電気的に絶縁する、例えばポリイミドを有するかポリイミドからなる絶縁層106が設けられていてもよい。但し前記絶縁層106は、有機オプトエレクトロニクス素子100の個々の層の態様に応じて必ずしも必要不可欠なものではなく、場合によってはそのような層の被着のための相応のマスクプロセスのもとでは存在し得ないこともあり得る。
【0057】
基板から見て、前記有機機能層スタック103と電極102,104の上方には、当該有機機能層スタック103と電極102,104を保護するための封入部107が設けられている。この封入部107は特に有利には薄膜封入部として実施される。
【0058】
この薄膜封入部として形成された封入部とは、本明細書では、大気中の物質、特に湿度や酸素に対するバリア、及び/又は、例えば硫化水素のような腐食性ガス等のさらなる有害物質に対するバリアを形成するのに適した装置と理解されたい。換言すれば、前記薄膜封入部は、最大でも大気中の物質の極僅かな成分しか浸透することができないように形成される。この薄膜封入部のバリア機能は、実質的に薄膜で実施され、当該薄膜封入部の部材であるバリア層及び/又はパッシベーション層によってつくられる。この薄膜封入部の層の厚さは、通常は数100nm以下である。
【0059】
特に、前記薄膜封入部は、当該封入部のバリア効果の責任を果たす複数の薄い膜を有していてもよいし、そのような薄い膜からなっていてもよい。そのような薄膜は、例えば、原子層堆積法(“atomic layer deposition”;ALD)、分子層堆積法(“molecular layer deposition”;MLD)を用いて被着され得る。前述の薄膜封入装置の層に適した材料は、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ランタン、酸化タンタルなどである。好ましくは、前記薄膜封入部は、それぞれが単原子層〜数100nmの間の厚さを有する複数の薄膜を有する積層体を含んでいる。
【0060】
前記ALD法またはMLD法を用いて形成された前記薄膜に対して代替的又は付加的に、前記封入部は、少なくとも1つのさらなる層又は複数のさらなる層、すなわち特に複数のバリア層及び/又はパッシベーション層を有していてもよい。これらの層は、熱蒸着によって又はプラズマ支援プロセスを用いて、例えばスパッタリング、化学気相成長(“chemical vapor deposition”;CVD)又はプラズマ促進化学気相成長(“plasma-enhanced chemical vapor deposition”;PECVD)によって堆積される。それらのために適した材料は、先に挙げた材料並びにシリコン窒化物、シリコン酸化物、シリコン酸窒化物、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化アルミニウム並びに前記材料の混合物や合金であってもよい。1つ以上の前記さらなる層は、例えばそれぞれが1nm〜5μmの間の厚さ、好ましくは1nm〜400nmの間の厚さを有し、この場合は境界値も含まれる。
【0061】
前記薄膜封入部に対して代替的若しくは付加的に、前記封入部107は、ガラスカバーを有していてもよい。このガラスカバーは、例えば、キャビティを有するガラス基板の形態で、接着剤層を用いて基板101上に被着される。前記キャビティ内に、さらに湿度を吸収する材料(ゲッタ)、例えばゼオライトからなる材料を接着して、湿度、酸素、または接着剤を介して浸透し得る他の有害なガスを排除してもよい。さらに、基板上にカバーを固定するための接着剤層自体が有害物質に対する吸収性を有していてもよいし、及び/又は、接着剤層構造部が存在していてもよい。
【0062】
さらに前記基板101から見て、前記封入部107の上には、図1に示すように、接着層108を用いて接着されたカバー109が配置されていてもよい。このカバー109は、その配置構成に関し前記基板101と対比させて「スーパーストレート」と称することも可能であって、例えばガラス層ないしガラス板、プラスチック、グラファイト、金属、またはこれらの材料の組み合わせ若しくは層スタックによって形成されてもよいし、特に、薄膜封入部として形成された封入部107と結合することで、特に前記カバー109自体が封入部として機能しなければならない必要性を強いることなく、機械的な保護部材として、特に引っ掻き保護部材として用いられてもよい。さらに代替的または付加的に、前記封入部107には、保護レジストが(例えばスプレー式の噴霧レジストが)被着されていてもよい。
【0063】
以下に示す防眩可能なミラー装置の実施例は、それぞれ1つの有機オプトエレクトロニクス素子100を備えている。この有機オプトエレクトロニクス素子100は、図1の実施例に従って構成されていてもよいし、これに対する変更または変化を伴うものであってもよい。電気的なコンタクト形成と、基板101のエレクトロクロミック材料の制御のためのコンタクト素子111は、明確化のために以降の図面には示されていない。
【0064】
図2(A)は、防眩可能なミラー装置の別の実施例を示している。この実施例では、純粋に例示的なものとして基板101の透明度を制御する有機受光素子としてのみ形成されている有機オプトエレクトロニクス素子100の他に、有機発光素子200が備えられている。この有機発光素子200は、基板101上に有機オプトエレクトロニクス素子100と一緒に設けられている。それにより基板101は、有機オプトエレクトロニクス素子100と有機発光素子200のための共通の基板を形成している。特に前記有機オプトエレクトロニクス素子100と、有機発光素子200とは、共通の基板101の同じ側で、横に隣接する表面領域に配置されている。
【0065】
図示の実施例では、有機発光素子200は、電極202,204間に少なくとも1つの有機機能層を有する有機機能層スタック203を含んだ有機発光ダイオードとして形成されている。特にこの有機発光素子200は、図示の実施例では、電極202,204及び有機機能層スタック203に関して、有機オプトエレクトロニクス素子100の電極102,104及び有機機能層スタック103と同様の構造を有し、当該有機オプトエレクトロニクス素子100と逆の動作が可能であり、つまり反対の電気的極性を有するように接続されて動作することが可能である。これにより、図示のミラー装置の製造は、図1の実施例のミラー装置と比較してまったく若しくはほとんど追加コストを発生させない。これについては代替的に、前記有機発光素子200は、電極202,204及び/又は有機機能層スタック203に関して有機オプトエレクトロニクス素子100とは別の材料及び/又は別の層構造を有していてもよい。
【0066】
ミラー装置は、さらに封入部107を含み、この封入部107は薄膜封入部として形成され、さらに前記有機光電子素子100と有機発光素子200の共通の封入部107を形成している。換言すれば、前記封入部107は、有機オプトエレクトロニクス素子100と有機発光素子200の機能層に広範囲に亘って関連するように延在している。前記共通の封入部107には、共通のカバー109が接着層108を用いて固定されている。
【0067】
さらに前記電極202,204の電気的なコンタクト形成に用いられる電極接続片205が設けられており、これは前記有機オプトエレクトロニクス素子100の電極接続片105のように形成されていてもよい。これらの電極接続片105,205は、前記素子100,200から、及び前記封入部107から突出しており、そのため前記素子100,200は、外部からコンタクト形成可能である。前記電極202,204は、絶縁層206によって相互に電気的に絶縁されている。
【0068】
有機オプトエレクトロニクス素子100と有機発光素子200との間においては、前記基板101上に電気絶縁層112が配置されており、この層は、共通の封入部107で覆われている。電気絶縁層112、例えば、ポリイミドまたはその他の絶縁材料を有するかまたはその他の絶縁材料からなる電気絶縁層112は、有機発光素子200を有機オプトエレクトロニクス素子100から電気絶縁するのに使用される。そのため、前記素子100,200の電極接続片105,205は、前記素子100,200間で電気的なクロストークを生じさせることなく、互いに僅かな間隔を空けて共通の基板101上に配置することができる。
【0069】
図2Bには、図2Aのミラー装置に対する光特性が示されている。この図2Bにおいて、並びに以下の図面においても、それぞれの場合に示されている個々の層及び構成要素の参照番号は、図を見易くする理由から、主にこれまでに説明してきた実施例との相違点に関してのみ表示するものとする。
【0070】
図2Aおよび図2Bの有機発光素子200は、動作中に基板101を通って光1を放射する。そのため、特にミラー装置の第2の動作状態において、当該ミラー装置は照明のために使用することが可能である。このミラー装置の基板側は、放射側を形成している。透明な基板101を通って、有機発光素子200によって生成された光の一部も散乱と導波路効果に基づき、符号2で示すように有機オプトエレクトロニクス素子100へ誘導され得る。さらに電極と絶縁層の構成に応じて、可及的に光も、共通の封入部を通って有機発光素子200から有機オプトエレクトロニクス素子100まで達する。有機発光素子200と有機オプトエレクトロニクス素子100との間の距離の所期の適合化、特にこの場合共通の基板内での吸収に関する、電極、絶縁層及び封入部に関する適切な材料選択により、並びに、例えば基板やカバー内の全反射の回避のための適切な屈折率に関し、適切な少なくとも局所毎の不透明な材料により、有機発光素子200から有機オプトエレクトロニクス素子100まで誘導される内部の光2が、低減されるか又は完全に抑圧される。
【0071】
参照符号3によって表される周辺光は、基板側に入射され、及び/又は、参照符号4で表される周辺光は、基板に対向している側に、すなわちカバーのある側に入射され得る。これらの周辺光3,4は、自然光源からの光であってもよいし、人工光源からの光であってもよい。ミラー装置を自動車内のバックミラーとして使用することを考慮すれば、周辺光4は、特に一般的な周辺光とすることができ、これは一般に、例えば日中時間に依存した輝度の測定が可能であり、それに対して周辺光3は、後続する交通車両のヘッドライトの光も伴う可能性があり、この光は、基板101のエレクトロクロミック材料による防眩ないし暗化なしでは、ミラー装置の観察者に眩しさを感じさせる可能性がある。
【0072】
以下の実施例によれば、防眩可能なミラー装置のさらなる変化例及び改善例が示されており、それらはとりわけ構造においてと光検出に対してバリエーションを有している。ここで変更ができるのは、例えば、有機オプトエレクトロニクス受光及び/又は発光素子の、構造と機能形態に係る種類、及び/又は電気配線、素子の数、1つ以上の有機受光素子若しくは有機オプトエレクトロニクス素子の位置、有機発光素子の発光面に関する位置、ミラーまたは他の要素の位置、及び/又は、有機受光素子若しくは有機オプトエレクトロニクス素子の例えば、幾何学的態様、スタッキング及び/又は配線における環境への適応化に関係した位置などである。さらに複数の有機オプトエレクトロニクス受光及び/又は発光素子を、異なる側での周辺光の検出のために、及び/又は、発光の変更のために、設けることも可能である。さらにまた、追加のミラー層若しくは追加のエレクトロクロミックレンズ、フィルム及び/又は層を設けてもよい。
【0073】
図3には、図1の実施例と比較して、1つの有機オプトエレクトロニクス素子100と1つの有機発光素子200とを備えたミラー装置の実施例が例示的に示されている。図2Aおよび図2Bの実施例に比べて、図3の有機発光素子200は、有機オプトエレクトロニクス素子100よりも大きい面積を有している。それにより、第2の動作状態における動作のための発光面は、第1の動作状態における動作のためのセンサ面よりも格段に大きくなる。特に、ミラー装置の反射層は、有機発光素子200の反射電極によって形成されるか、少なくともそれを含む。
【0074】
例えば、そのような構成では、有機オプトエレクトロニクス素子100は、基板のエレクトロクロミック材料に対して横方向にオフセットされてもよい。それにより、有機オプトエレクトロニクス素子100は、基板を通って入射する周辺光を、基板の透明度に依存することなく測定することができるようになる。
【0075】
図2A乃至3の実施例では、有機発光素子100は、有機オプトエレクトロニクス素子100と同時に動作可能である。
【0076】
図4には、前述の実施例との比較において、図1の実施例における受光及び発光可能に構成されていた有機オプトエレクトロニクス素子100に対してさらに付加的に、有機受光素子300を備えている、ミラー装置に対するさらなる実施例が示されている。
【0077】
図示の実施例では、この有機受光素子300が有機フォトダイオードとして構成され、使用されている。この有機受光素子300は、2つの電極302,304の間に有機機能層スタック303を含み、この有機機能層スタック303は、少なくとも1つの有機受光層を有している。図示の実施例では、前記少なくとも1つの有機受光層が、電荷担体を生成するためのpn接合部として形成されている。
【0078】
特に前記有機受光素子300は、図示の実施例では、例えば、有機機能層スタック303に関して、有機機能層スタック103に関する有機オプトエレクトロニクス素子100と同じ構造を有していてもよい。これにより、図示のミラー装置の製造は、図1に示すような1つだけの有機オプトエレクトロニクス素子しか持たないミラー装置に比べてまったく若しくはほとんど追加コストを発生させない。これについて代替的に前記有機受光素子300は、有機機能層スタック303に関し前記有機発光素子100とは別の材料及び/又は別の層構造を有していてもよい。
【0079】
さらに電極接続片305が設けられており、この電極接続片305は、電極302,304の電気的コンタクト形成に用いられ、これは前記有機オプトエレクトロニクス素子100の電極接続片105と同じように構成されていてもよい。これらの電極接続片105,305は、封入部107の素子100,300から突出するように延在しており、そのため、前記素子100,300は外部からコンタクト形成可能である。前記電極302,304は、絶縁層306によって相互に電気的に絶縁されている。
【0080】
有機オプトエレクトロニクス素子100とは異なって、前記有機受光素子300の場合は、下方電極302が、すなわち基板側に配置され、斜線で強調されているように不透明に例えば反射的に形成されている電極であり、それに対して上方にある、基板に対向している側に配置された電極304は、透明であるか又は少なくとも一部領域において光透過的に形成されている。この上方電極304は、例えばTCOなどの透明な材料を含み得る。代替的または付加的に、前記上方電極304は、破線で示されているようにリング状の接点として形成されていてもよく、例えば、基板側から見て、有機受光素子300の有機機能層スタック303の上に1つの開口部を有するようにしてもよい。そのような開口部は、横方向では電極材料によって完全に取り囲まれていてもよく、それによって、前記電極304は、完全なリングとして構成され得る。さらにまた、リング状の接点として形成された前記電極304は、横方向でその開口部が一部領域のみを取り囲み、それによって例えばU字形に形成することも可能である。さらにまた、前記電極304は、代替的にまたは付加的に、上記したのとは別の透明な電極材料を含んでいてもよい。
【0081】
透明な上方電極304と、不透明な下方電極302とによって、有機受光素子300は、当該実施例では、基板に対向する側から当該有機オプトエレクトロニクス構成素子に入射した周辺光4を検出するように構成されている。それに対して有機オプトエレクトロニクス素子100は、基板側からの周辺光3を検出している。それにより有機受光素子300は、全般的な輝度を測定する基準センサを形成し得る。この測定値に応じて、特に例えば夜間など低照度の周辺輝度が検出された場合には、有機オプトエレクトロニクス素子100は、第1の動作状態で動作される。例えば、止まっている車両の自動車用ミラー装置の場合には、有機オプトエレクトロニクス素子100は、有機受光素子300の測定に依存することなく第2の動作状態において光源として動作させることができる。
【0082】
また、図示の実施例に対して代替的に、前記有機受光素子300は、基板を通った周辺光をあるいは基板の両側で周辺光を検出するように構成してもよい。
【0083】
図5には、これまでに示されてきた実施例に比べて、絶縁層106,306,112が存在していない、ミラー装置のさらなる実施例が示されている。図示の実施例に示された電極102,104及び302,304は、例えば製造時の適切なマスク工程によって、絶縁層106,306並びに部分的に開口している有機層なしでも、短絡が生じないように形成されている。相応の構造は、有機オプトエレクトロニクス素子100の他に、有機発光素子200の場合にも可能である。
【0084】
また以降の図面に示すように、複数の有機オプトエレクトロニクス素子、有機受光及び/又は発光素子を相互に組み合わせてもよい。
【0085】
図6A図6Mには、観察者側、つまり基板側から見た、ミラー装置の、複数の実施例に係る有機オプトエレクトロニクス素子100、有機発光素子200及び有機受光素子300の配置構成、数及び位置に関する変化例が平面図で示されている。なおそこでは、見易くするために、発光面とコンタクトリード導体の正確な描写なしで素子の位置のみが示されている。そこでは有機受光素子300は、ミラー装置の基板とは反対側の周辺光を検出するために純粋に例示的に設けられ、それに対して有機オプトエレクトロニクス素子100は、第1の動作状態においては基板を通った周辺光を検出し、第2の動作状態においては基板を介して光を放射するために純粋に例示的に設けられている。
【0086】
図6A及び図6Bに示すように、例えば大面積の有機オプトエレクトロニクス素子100を広範囲に設け、特にミラー装置の反射層も提供されるようにしてもよい。それに対して1つ以上の有機受光素子300が、縁部領域若しくはコーナー領域に設けられる。
【0087】
それについては代替的に、例えば大面積の有機オプトエレクトロニクス素子100に代えて、ミラー装置の反射層の少なくとも一部を形成する反射電極を備えた大面積の有機発光素子200を設けてもよい。それに対して1つまたは複数の有機オプトエレクトロニクス素子100並びに1つ又は複数の有機受光素子300は、図6C及び図6Dに示すように設けられていてもよい。
【0088】
少なくともミラー装置の一部の領域には、例えば図6E及び図6Fに示されるように、基板上で前記複数の素子100,200,300に隣接して横方向に配置され得る鏡面400が設けられていてもよい。
【0089】
図6Gから図6Mには、前記素子100,200,300と前記鏡面400の複数のさらなる配置構成が示されており、ここではそれらの素子は例えば帯状または枠状に構成されてもよい。
【0090】
図示の実施例に対してはさらに付加的に、これまでに示してきた前記複数の素子100,200,300と前記鏡面400の図示の配置構成の組み合わせや変化例も可能である。特に、前記有機オプトエレクトロニクス素子100及び/又は有機発光素子200の発光面と鏡面400の任意の組み合わせ、基板側と対向側における周辺光の検出の任意の組み合わせも可能である。図示の実施例に示された有機発光素子200は、有機オプトエレクトロニクス素子として形成されてもよいし、及び/又は、有機受光素子として形成されてもよい。
【0091】
さらに図7から図8Bの実施例に示されるように、両面タイプの層構造も可能である。
【0092】
図7には、図2Aおよび図2Bの実施例と比較して、基板側から見て有機オプトエレクトロニクス素子100の上方に、基板に対向する側から当該ミラー装置へ入射する周辺光を検出する有機受光素子300を備えたミラー装置が示されている。
【0093】
有機受光素子300は、前述の実施例に関連して説明したように、2つの電極302,304の間に、少なくとも1つの有機受光層を有する有機機能層スタック303を含んでいる。この場合前記電極のうちの一方304は、図示の実施例では同時にミラー装置の反射層120も形成し、有機オプトエレクトロニクス素子100の電極104によって形成される。換言すれば、有機オプトエレクトロニクス素子100とその上方に配置されている有機受光素子は、共通の電極104,304を有する。上方の電極302は、透明か又は少なくとも半透明に形成される。前記電極302のための電極接続片は、図平面から突出するため示されていない。
【0094】
図8A及び図8Bには、図3の実施例による素子が倍増されて形成された純粋に例示的なミラー装置が示されており、それらは互いに対向するように上下に被着され、それによって防眩可能なツインミラー、つまり両側が反射的なミラー装置を形成し、前記両側はエレクトロクロミック材料を含んだ各基板によって防眩作用する。特に図8A及び図8Bの実施例のミラー装置は、それぞれの側に純粋に例示的に有機オプトエレクトロニクス素子100,100′と大面積の有機発光素子200,200′とを有する。上下に順次連続して被着された素子が各カバー109,109′と共に上下に配置されている、図8Aの実施例とは異なり、図8Bの実施例は、唯1つのカバー109しか接続要素として有していない。
【0095】
図9には、先の実施例と比較して、基板とは反対側に透明に若しくは領域毎に光透過的に形成された電極104を有する1つの有機オプトエレクトロニクス素子100を含んだミラー装置に対するさらなる実施例が示されている。このミラー装置はさらに、有機オプトエレクトロニクス素子の基板に対向している側に、制御可能な反射率を有するミラー層115を備えている。このミラー装置の反射層120も少なくとも一部は、制御可能な反射率を有するミラー層115によって形成されている。
【0096】
特に、制御可能な反射率を有する反射層115は、制御可能な透明度も有しており、それによって当該ミラー層115は選択により反射的にも透明にも切り替えることが可能となる。例えば、前記ミラー層115は、その反射率及び/又は透明度が、例えば印加電圧に依存するエレクトロクロミック材料及び/又は液晶材料を有していてもよい。また前記反射層115は、一貫した層の代わりに、部分的にのみ存在するか又は部分的にのみその反射率と透明度に関する切り換えが可能なものであってもよい。
【0097】
制御可能な反射率と制御可能な透明度とを有する前記ミラー層115は、特に、ミラー装置の基板に対向している側が所望の測定間隔で少なくとも部分的に透明度を切り替え、その間、有機オプトエレクトロニクス素子100は、当該ミラー装置の基板とは反対側の周辺光も検出できるように構成されて設けられていてもよい。そのような測定は、上述したような例えば基準測定として適しており、これによって全般的な輝度、例えば日中光が検出できるようになり、それによって当該ミラー装置は、例えば全般的な輝度が所定値を下回ったときにのみ、つまり例えば夜間やうす暗い周辺環境にいるときにだけ動作する。
【0098】
迅速な切り替え、つまりとりわけ肉眼の知覚感覚よりも早い、例えば3ms未満の切り替え時間によって、ミラー装置の基板とは反対側の周辺光の短時間の検出と共に、両側での周辺光の非同期的な検出が達成可能になる。基板に対向する側に入射する周辺光は、この場合、所望の測定持続時間と所望の測定間隔とに従って短時間だけしかスイッチングしない。
【0099】
図示のミラー装置は、唯1つの有機オプトエレクトロニクス素子100のみを用いた選択により、両側での周辺光の検出を伴う防眩ミラーとしても動作するし、例えば図1との関連で説明したように光源としても動作し得る。
【0100】
図面に関連して説明した前記特徴並びに前記実施例は、たとえそのような組み合わせが個々の図面と共に明示的に示されていない場合であったとしても、さらなる実施例に従って相互に組み合わせることが可能である。さらに図面に示されている実施例は、一般的な記述に従ってさらなる特徴や代替的な特徴も備え得る。
【0101】
本出願は、独国特許出願第102012222760.1号明細書の優先権を主張するものであり、それに伴ってその開示内容も本明細書中に援用される。
【0102】
本発明は、実施例に基づいて説明してきたが、このことは本発明がこれらの実施例に限定されることを意味するものではない。むしろ、本発明は、たとえそれらの特徴若しくはそれらの組み合わせ自体が明示的に特許請求の範囲や実施例において示されていなかったとしても、あらゆる新規な特徴、並びにそれらの特徴のあらゆる組み合わせを、特許請求の範囲に包含するものであることを最後に述べておく。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図6L
図6M
図7
図8A
図8B
図9