(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば上記特許文献1の加煙試験機によれば、試験油が焦げて異臭がしたり、油煙が煙感知器の表面及び天井面に付着してこれらを汚したり、付着した油に更に塵埃類が付着したりして、煙感知器及び天井面を汚すおそれがあるという問題があった。また更に、煙感知器への油煙や塵埃類の付着により該煙感知器の感度を低下させるおそれがあるという問題があった。
また、例えば特許文献2の加煙試験機によれば、発煙体としてガスボンベを使用しているため製造コストが嵩むという問題があった。
また、ガス噴射量の制御が容易でないため、擬似煙を高濃度に噴射した場合には、試験で噴射した擬似煙を除去して通常の検知可能状態に復旧させるのに時間が掛かり、また、擬似煙を低濃度に噴射した場合には、煙感知器による検知に時間が掛かり、いずれの場合であっても、点検の作業効率が悪いという問題があった。
また、工業用線香を用いた加煙試験機もあるが、かかる加煙試験機はにおいが強いため、多数の人が集まる建物内での使用は敬遠され、また、火種を使うため、周囲のものを焦がしてしまうおそれがあり、或いは試験対象の煙感知器に煙跡を付けて汚してしまうおそれがあるという問題があった。
そこで、本発明は、上記の課題に鑑み、煙感知器や天井面を汚すことなく、的確、迅速、かつ低製造コストで煙感知器の動作試験を行うことのできる加煙試験器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、建物内に設置された煙感知器の動作試験に用いられ、先端部から煙
を放出する発煙体と、前記発煙体を支持する支持棒と、を備えた加煙試験器具において、前記発煙体は、先端に煙の放出口を有する筒体と、該筒体内に配置されたヒータと、該ヒータの熱により気化する水溶性液体を保持しかつ該水溶性液体を前記ヒータに供給する液体供給部とを備え、前記発煙体には、前記筒体内に空気を送り、前記ヒータにより気化した前記水溶性液体を霧化して疑似煙とし、該疑似煙を前記放出口から前記煙感知器に向けて放出させる送風手段が連結され、前記送風手段からの気流を検知する気流センサが設けられ
、前記気流センサが検知した前記気流の大きさによって前記ヒータに供給する電流を制御可能に構成し、前記ヒータの加熱量を調整可能としたことを特徴とする。
本発明では、支持棒が具備されていることで加煙試験器具が可搬に構成され、水溶性液体を霧化した煙を発生させるものであるため、建物内に設置された煙感知器や天井面に付着して汚したり、更に塵埃類を付着させたりすることを回避することができる。
また、送風手段によって疑似煙が前記放出口から前記煙感知器に向けて放出されることで、疑似煙が煙感知器に吹き付けられ、煙感知器の迅速な発動及び動作確認が行われる。
また、安価な成分の水溶性液体及び安価な部材により発煙体を製造することができるため、加煙試験器具の製造コストを抑えることができる。
また、発煙体のうち消耗しやすい部分を効率的に交換することができる
。
請求項
2の発明は、請求項
1に記載の加煙試験器具において、前記送風手段は前記疑似煙の放出を促進させるように回転可能に、且つ放出された前記疑似煙を吸引するように逆回転可能に構成されていることを特徴とする。
請求項
3の発明は、請求項1
又は2に記載の加煙試験器具において、前記送風手段とは別に、ファンが設けられ、前記ファンは前記疑似煙の放出を促進させるように回転可能に、且つ放出された前記疑似煙を吸引するように逆回転可能に構成されていることを特徴とする。
請求項
4の発明は、請求項1から
3のいずれか1項に記載の加煙試験器具において、前記送風手段は、ゴム製の手動式ブロア又はふいごにより形成されていることを特徴とする。
請求項
5の発明は、請求項1から
3のいずれか1項に記載の加煙試験器具において、前記送風手段は、前記発煙体に向けて送風する羽根車を備えた手動回転式ブロアにより形成され、前記羽根車はギアによって変速可能に構成されていることを特徴とする。
請求項
6の発明は、請求項1から
5のいずれか1項に記載の加煙試験器具において、前記ヒータは、前記筒体の基端と先端との間に配された導電性を有する金属線により形成され、該金属線に沿って前記液体供給部が配置されていることを特徴とする。
請求項
7の発明は、請求項1から
6のいずれか1項に記載の加煙試験器具において、前記ヒータは、棒状体又は板状の導電性部材により形成され、このヒータに沿って前記液体供給部が配置されていることを特徴とする。
請求項
8の発明は、請求項1から
7のいずれか1項に記載の加煙試験器具において、前記発煙体は、加煙部に着脱自在に設けられていることを特徴とする。
請求項
9の発明は、請求項1から
8のいずれか1項に記載の加煙試験器具において、前記液体供給部が前記筒体から着脱自在とされていることを特徴とする。
請求項
10の発明は、請求項1から
9のいずれか1項に記載の加煙試験器具において、前記水溶性液体は、前記発煙体に着脱自在に設けられた液体保持容器に貯留され、該液体保持容器から前記液体供給部に前記水溶性液体が供給されることを特徴とする。
請求項
11の発明は、請求項1から
10のいずれか1項に記載の加煙試験器具において、前記水溶性液体は、プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又はグリコールのうち少なくとも一の成分を含むものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水溶性液体を霧化した煙を発生させるものであるため、煙感知器や天井面に粘性のある油煙等を付着させて汚したり、更に塵埃類を付着させたりすることを回避して、建物内に設置された煙感知器を好適に動作確認することができるという効果を奏する。また、水溶性液体を用いた煙は蒸発するものであるため、煙感知器に付着したままとなって感度に影響を与えることを回避することができるという効果を奏する。
また、安価な成分の水溶性液体及び安価な部材により発煙体を製造することができるため、加煙試験器具の製造コストを抑えることができるという効果を奏する。
また更に、水溶性液体を気化した後に霧化して煙を発生させ、送風手段で放出する構成であるため、煙の濃度及び放出量の制御が容易であり、的確かつ作業効率よく煙感知器を動作確認することができるという効果を奏する。
また、水溶性液体として匂いの少ない成分もしくは無臭の成分、又は人に好まれやすい匂いの成分を選択的に用いることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、図を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態である加煙試験機(加煙試験器具)1Aは、発煙体2を備え煙感知器Kに対して加煙する加煙部3と、加煙部3を支持する支持棒4と、加煙部3を操作する操作部5とを備えている。
【0010】
図1に示すように、加煙部3は、天井材W等に設置された煙感知器Kを覆い、発煙体2から放出された煙を内部に充満させるカバー11と、カバー11の内部に設置された発煙体2とを備えている。
カバー11は、合成樹脂製材料等により形成され、一方向に拡径するテーパ部11aと、該テーパ部11aの外縁に連設された筒状部11bとを備えている。また、テーパ部11aの小径部側の中心には開口部12が形成されており、支持棒4の先端部を開口部12に挿入配置された状態でカバー11が支持棒4に必要に応じて着脱できるように固定されている。筒状部11bは、一部が蛇腹状になっており、これによりカバー11は、軸線L方向に所定の伸縮性を有している。カバー11は、試験対象の煙感知器K近傍に、空調機等による外因性の気流が存在する場合に、この気流を遮断して擬似煙を確実に煙感知器Kに到達させ、安定して確実に試験できるようにするためのものであり、このような気流が存在しない場合には取り外してもよい。
支持棒4の先端、かつ、テーパ部11aの開口部12近傍には、発煙体2が取り付けられており、後に詳述するように、操作部5を操作することによってカバー11内に加煙することができるようになっている。
【0011】
図2に示すように、発煙体2は、筒体6と、該筒体6内に配置されたヒータ7と、ヒータ7の近傍に備えられ、該ヒータ7の熱により気化する水溶性液体を保持しかつ該水溶性液体をヒータ7に供給する液体供給部8とを備えている(なお、
図2は、発煙体2の筒体6及び液体供給部8を軸線Lを含む一平面上で切断した状態を正面視している(
図8,
図9も同様))。この発煙体2には、一端側から空気を吹き込み、気化した水溶性液体を霧化して疑似煙とし、該疑似煙を他端側の放出口9から放出させる送風手段10が通気可能に連結されている。
【0012】
筒体6は、両端が開口した断面円形の筒状に形成され、一端側に煙の放出口9が形成されている。筒体6の断面形状、直径及び長手方向の寸法は特に限定されない。
【0013】
ヒータ7は、ニクロム線、白金線等の金属線を用いて筒体6よりも小径のコイル状に形成されており、筒体6と軸線Lを略一致させて長手方向に配置されている。ヒータ7の一端部7aは筒体6の底部に固定されたヒータ用コネクタ15の端子に接続されており、同他端部7bはコイルの終端(先端)で折り返されてヒータ用コネクタ15に向けて直線状に延び、一端部7aと同様にコネクタ15の他の端子に接続され、コネクタ15を介して制御部21に電気的に接続されるようになっている。制御部21は、電源スイッチ23及び駆動スイッチ24のON/OFFに応じてヒータ7に所定の電流を流し、これによりヒータ7を加熱/加熱停止できるようになっている。
【0014】
コイル状のヒータ7の内側及び外側には、液体供給部8として例えばガラス繊維等の繊維系不燃性フィルタ又は発泡樹脂製の不燃性フィルタが配されている。液体供給部8のフィルタには、その表面のあらゆる方向に向かって通気可能に開口した多数の空隙孔が内部に形成されており、この空隙孔内に発煙剤となる水溶性液体を保持可能となっている。液体供給部8は、内部に水溶性液体を含浸した状態でヒータ7に沿って、すなわちヒータ7に当接し又は近接配置されて発煙剤をヒータ7に供給してヒータ7の熱によって霧化できるように設置されている。
【0015】
水溶性液体の成分としては、親水性を有し保水性が高い成分、例えば、グリセリン、プロピレングリコール等の成分のうち少なくとも一の成分を含む人体に無害な水溶性液体が用いられている。なお、水溶性液体は、保湿性が高く揮発しにくい成分であることが好ましく、更に煙感知器K及び建物の天井材W(
図1参照)を変質させない成分であることが好ましい。
【0016】
筒体6の基端側(支持棒4側)には、ヒータ用コネクタ15と気流センサ19を内部に備えた容器20が連結されている。そして、容器20には中空の棒状体を介して送風手段10が通気可能に連結され、容器20の内部空間を経由して送風手段10からの空気流を筒体6内に吹き込み、ヒータ7により気化した水溶性液体を霧化して擬似煙(エアロゾル)Sとするとともに生成された擬似煙Sを放出口9から放出させるようになっている。送風手段10としては、例えば、送風ポンプ、ファン等が用いられる。
【0017】
気流センサ19は、容器20内の気流を検知する装置であり、送風手段10により空気が吹き込まれた場合には、気流を検知し制御部21に信号を送ってヒータ7へ所定の電流を流して加熱し、気流が検知されない場合にはヒータ7への電流を制限或いは遮断するようにして、加熱しないようになっている。この気流センサ19によって、気流がないにも関わらずヒータ7が加熱されて温度が異常に上昇することを回避し、気流を検知したときのみ所定の電流でヒータ7を加熱するように構成されている。ヒータ7が加熱されて所定の温度に達すると、水溶性液体が気化される。気流センサ19以外にも適宜のセンサを設け、制御部21は更に、これらの信号に基づきヒータ7の温度制御、過熱防等の制御を行うようにしてもよい。また、気流の変化や強弱、ヒータ7の温度の変化や高低等に応じてヒータ7への供給電流値を連続的或いは段階的に可変するようにしても良い。
【0018】
図1に示すように、支持棒4は、使用者が加煙部3のカバー11上端部を下方から天井材Wに押し当てることが出来るよう所定の長さ寸法を有しており、上述したように先端側に加熱部3を設け、基端側に発煙体2や送風手段10を操作する操作部5が設けられている。支持棒4は中空形状で、その内部には、ヒータ7及び送風手段10に電力を供給するための配線(不図示)が配置されている。また、支持棒4は、短い中空の棒状部材がスライド可能に連結された構造を有しており、内部の通気を維持しつつ、必要に応じ支持棒4の全体長さを伸縮できるように構成されている。試験時には棒状部材をスライドさせて支持棒4の全体長さを調節し、棒状部材同士の連結部を固定してこの長さを保持して使用する。
【0019】
また、操作部5は、支持棒4の基端側に設けられており、加煙部3のカバー11を煙感知器Kに被せた状態で、使用者が手元で発煙体2や送風手段10を作動できるようになっている。
図2、
図3に示すように、操作部5には、気流センサ19による気流の検知に応じてヒ
ータ7の加熱/加熱停止を制御する制御部21と、電力供給部22と、制御部21と電力供給部22とを接続する電源スイッチ23と、電源スイッチ23がONの状態で制御部21を経由して送風手段10に電力を供給し、送風手段10を駆動する駆動スイッチ24とが備えられている。
電源供給部22としては、動作電力を供給し得るものであればどのようなものであってもよく、例えば、乾電池、充電式電池、AC電源を用いることができる。
【0020】
煙感知器Kには、検出原理として散乱光式を採用した煙感知器が用いられる。
【0021】
次に、加煙試験機1Aの使用方法について説明する。
図1,
図2に示すように、加煙試験機1Aにより煙感知器Kの動作試験を行うには、操作部5の電源スイッチ23をONにして、加煙部3を煙感知器Kが設置された例えば天井材Wに向け、カバー11を煙感知器Kに被せてカバー11の周端縁を天井材Wに密着させる。
そして、駆動スイッチ24をONにし、
図2に示す送風手段10を駆動すると、気流が容器20内を流通する。すると、気流センサ19が気流を検知して制御部21に信号を送り、制御部21がヒータ7に給電し該ヒータ7を加熱する。このヒータ7の加熱により液体供給部8のフィルタに含浸された発煙剤である水溶性液体が気化し、更に送風手段10により吹き込まれた空気によって霧化して筒体6の先端方向に流動し、筒体6の放出口9から水溶性液体が霧化した擬似煙(エアロゾル)Sが放出される。擬似煙がカバー11内に充満した際、煙感知器Kが正常に作動可能であれば、擬似煙Sに煙感知器Kが反応し、警告音を発し及び/又は警告ランプを点灯するので、煙感知器Kが正常に作動することを確認することができる。一方、煙感知器Kに不具合がある場合には、煙感知器Kは擬似煙Sに反応せず、警報音を発せず及び/又は警告ランプを点灯しないので、煙感知器Kに不具合があることを確認することができる。
【0022】
以上のように、加煙試験機1Aによれば、煙感知器Kを試験的に動作させるための煙として水溶性液体を霧化した擬似煙Sを発生させるため、煙感知器Kや天井材Wに粘性のある油煙等を付着させて感知器K等を汚したり、更に塵埃類を付着させたりすることを回
避して、煙感知器Kを好適に動作確認することができる。特に、水溶性液体はプロピレングリコール、グリセリン等の親水性を有するとともに保水性が高い成分を含んでいるため
、これらの成分が水と共にヒータにより蒸発し、噴出口にてこれらの成分が核となって霧化する。これらの成分は、保水性が高いことから、水のみが蒸発する場合と異なり、空気中で暫く漂い擬似煙としての役割を良好に果たすことができる。このことは、本願発明者らの実験によっても確認されている。一般には、プロピレングリコール又はグリセリンが水と共に蒸発した後霧化して放出された後に冷えて核となり、これに水蒸気が凝集して白い煙状になるものと考えられている。そして、プロピレングリコールやグリセリンは親水性が高く、蒸発した水分を取り込むと共に、取り込んだ水分の蒸発を防ぐ効果が高いために、白い煙が比較的長時間空気中に浮遊することになる。
【0023】
一方、水溶性液体を用いた煙は試験後間もなく環境中で蒸発するため、煙感知器Kに付着したままとなってその感度に影響を与えることを回避することができる。
また、安価な成分の水溶性液体及び安価な樹脂製の部材を用いたシンプルな構造により発煙体2を製造することができるため、加煙試験機1Aの製造コストを抑えることができる。また、フロンガス等の環境に悪影響を与えるガスを排出することがないため、環境負荷も小さい。
【0024】
また更に、水溶性液体を気化した後に霧化して擬似煙を発生させ、送風手段10で放出する構成であるため、煙の濃度及び放出量の制御が容易であり、的確かつ作業効率よく煙感知器Kを動作確認することができる。
また、水溶性液体として無臭の成分もしくは匂いの少ない成分、又は人に好まれやすい匂いの成分を選択的に用いることができ、加煙試験機1Aを病院その他、人がたくさん集まる場所でも使用しやすいという効果が得られる。又は、人に不快感を与えない匂いを水溶性液体に付加した場合には、加煙試験機1Aによる煙感知器Kの動作試験後に、煙の残存状態を認識することができる。
【0025】
また、筒体6の軸線Lに沿ってコイル状のヒータ7が配され、このヒータ7のコイルの内側及び外側に水溶性液体を含浸させた液体供給部8が配置されているため、液体供給部8の水溶性液体をコイル状ヒータ7によって広範囲で効率的に気化することができるとい
効果が得られる。なお、ヒータ7は、コイルの巻回ピッチを狭めたり拡げたりすることで、またコイルの内径を調整することで、擬似煙Sの発生濃度を適宜調整することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、加煙試験機1Bについて
図4,
図5を用いて説明する。なお、以降の実施形態において、第1の実施形態と構成が共通する箇所には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
図4に示すように、加煙試験機1Bは、第1の実施形態の加煙試験機1Aの電源スイッチ23、気流センサ19、制御部21、および電力供給部22すなわちバッテリが内蔵された小型のケース25が、支持棒4の先端外周面上に外付けされている。
発煙体2は、コネクタ(
図4では不図示)を介して制御部21に接続されている。また、中空形状の支持棒4の基端側に手動式の送風手段10が設けられている。送風手段10は、例えば、ゴム製の手動式ブロアにより形成されている。この送風手段10は、ゴム製の手動性ブロアに代えてふいご等が用いられてもよい。
【0028】
または、送風手段10は、
図5に示すように、回転ハンドル26を回すことにより羽根車27を回転させ空気を流動させ、中空形状の支持棒4内を通過して、発煙体2に向けて送風する手動回転式ブロアであってもよい。この手動回転式ブロアは、羽根車27にギア(不図示)を設け、羽根車27の回転を変速できるようにしてもよい。
【0029】
以上、本発明の実施形態について、加煙試験機1A,1Bを用いて説明したが、本発明は上記した第1〜第2の実施形態において示した態様のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部分を適宜変更してより好ましい態様で使用することができる。
【0030】
具体的には、ヒータ7及び水溶性液体を含浸させた液体供給部8を備えた筒体6は、カバー11及び容器20に対して、例えば螺着構造や嵌合構造等により着脱自在に構成することができる。
このような構成とすることによって、水溶性液体やヒータ7が消耗した場合であっても液体供給部8及びヒータ7を筒体6ごと簡便に交換することができ、加煙試験機1Aを経済的に使用することができるという効果が得られる。
【0031】
また、水溶性液体を含浸させた液体供給部8は、筒体6から着脱自在に構成してもよい。また、上記第1〜第2の実施形態で示した発煙体2のヒータ7は、交換可能とされていてもよい。水溶性液体を含浸させた液体供給部8及び/又はヒータ7を着脱自在にすることによって、加煙試験機1Aのうち最も消耗しやすい部分を効率的に交換することができるという効果が得られる。
【0032】
また、発煙体2の筒体6内に空気を吹き込む送風手段10とは別に、発煙体2の近傍又は、
図6に例示するように操作部5内にファン35及びファン35用スイッチ36及びファン35の変速機(不図示)を設けることにより、擬似煙Sの放出を必要に応じて促進し得る構成とすることができる。このようなファン35を設けることによって、発煙体2の放出口9から放出された擬似煙Sを放出口9の近傍で滞留させずにカバー11内全体又は筐体31内の全体にすばやく充満させることが可能となるという効果が得られる。
【0033】
また更に、上記の構成に加え、ヒータ7への電流の通電又は遮断(ON/OFF)を切り替える切換えスイッチを設けてもよい。
ヒータ7のON/OFFを切り替えられるようにして送風手段10又は前記ファン35を使用できるようにすることにより、煙感知器Kの動作試験を行う際にはヒータ7へ通電(ONに)して擬似煙Sを発生させるとともに、上述したように送風手段10又は前記ファン35によって擬似煙Sをすばやく充満させることができる。また、動作試験が完了した際には、ヒータ7への通電を遮断(OFFに)して擬似煙Sの発生を停止させ、この状態で送風手段10又はファン35を駆動することにより、煙感知器Kに向かって空気を送り、放出された煙Sを煙感知器K及びその周辺から速やかに除去することができる。これによって、煙感知器Kの動作試験の終了後、速やかに通常の煙の感知状態に復旧することが可能となる。
なお、送風手段10又はファン35に代えて、圧縮空気を充填したボンベを利用してもよい。
また、送風手段10又はファン35には、ファンの回転を逆回転させる切換えスイッチ(不図示)が設けられていてもよい。かかる切換えスイッチを設け、ファンを逆回転させることにより、動作試験完了後に放出された煙を吸引し、煙感知器K周辺の煙をすばやく除去することができる。
【0034】
また、水溶性液体を含浸させた液体供給部8は、ヒータ7のコイル形状の内周側にのみ配し、その外側には水溶性液体を含浸させずに空気の流路を形成するスポンジフィルタを配してもよい。また、ヒータ7及び液体供給部8を筒体6内に位置決めして固定でき、適量の空気が流動できるようになっている限り、外側のスポンジフィルタは、必ずしも配置されていなくてもよい。また、水溶性液体を含浸させた液体供給部8は、コイル状ヒータ7の外側にのみ配してもよい。
【0035】
また、上記の実施形態において、ヒータ7はコイル状に形成されているが、
図7に示すように、直線上に配された金属線を筒体6の基端部6a側から先端6b側に向かって直線状に延在させ、先端6b近傍で折り返して基端部6a側に直線状に延在させるようにして金属線の両端をヒータ用コネクタ15の各端子に接続したものであってもよい。
また、ヒータ7は、
図8に示すように、金属線を一平面上に櫛形に曲げて形成し、平板上に形成されたヒータ7を2枚の平板状フィルタ(液体供給部)8(
図8では一方(紙面奥側)の平板状フィルタのみを図示)で挟み込むことにより、ヒータ7を液体供給部8に接触又は近接配置させ、発煙させてもよい。
【0036】
図9〜
図11は、発煙体2を軸線L及びヒータ7を含む面で断面視した図である。これらの図に示すように、ヒータ7は必ずしも金属線である必要はなく、セラミック又は金属により形成された棒状体又は板状体であってもよい。この場合、セラミック又は金属により形成された棒状体又は板状体のヒータ7は、
図9(a)に示すように、1の棒状体又は板状体のヒータ7を筒体6内に配し、棒状体又は板状体のヒータ7の表面7a,7b等を覆うように水溶性液体を含浸させた液体供給部8を配してもよく、又は同図(b)に示すように、互いに間隔を隔てて複数の棒状他体又は板状体のヒータ7,7・・を配置するとともに、これらのヒータ7,7・・同士の間及びヒータ7と筒体6との間に通気可能に水溶性液体を含浸させた液体供給部8を配してもよい。この場合にも、上記の実施形態と略同様の効果が得られる。
【0037】
なお、
図9(a),(b)に示された金属製又はセラミック製の棒状体又は板状体のヒータ7の表面7a,7b等は、
図10に示されたヒータ7のように表面が波型となるように形成してもよい。このような構成とすることにより、ヒータ7と水溶性液体を含浸させたスポンジフィル8タとの接触面積をさらに大きくし、効率的に発煙させることができる。
【0038】
また、
図11に示すように、発煙体2には、水溶性液体を貯留させ、液体供給部8に少量ずつ発煙剤を供給させる液体保持容器40が外付けされていてもよい。
この場合、液体保持容器40は、液体供給部8に対して貯留している水溶性液体を供給するため、外部から空気を流入のみさせる微細な孔41を有するとともに、開口部に水溶性液体を流動させる管43が接続されたものが用いられる。管43は液体供給部8に連結されている。容器本体44の形状は、直方体形状、円柱形、その他どのようなものであってもよい。そして、発煙体2の筒体6に設けられた開口部に管43が接続されている。
加煙試験機1A,1Bは、上記の構成とすることで長期間に亘り液体供給部8を交換することなく使用することができる。
【0039】
また、第1および第2の加煙試験機1A,1Bにあっては、例えば、減光式濃度計、散乱光式濃度計等の煙濃度センサと、煙濃度センサにより検出された結果によりヒータ7への印加電力を加減する制御装置を備えたものであってもよい。
このような構成とすることで、発煙量を一定濃度に保つように自動制御することができる。
【0040】
加煙試験機1A,1Bの制御部21は、煙感知器Kに加煙試験機1A,1Bのカバー11を被せると信号を検出し、この検出信号によりヒータ7の加熱を開始し、その所定時間後に送風手段により送風を開始し、加煙試験機1A,1Bを煙感知器Kから離すと加熱及び送風を停止するものであってもよい。
また、制御部21は、発煙体2の装着を検知した場合にのみ送風手段10が動作するように設定されたものであってもよい。
このような設定とすることで、発煙体2の装着忘れを防止することができる。
【0041】
また、発煙体2は、操作部5内またはその近傍に設けてもよい。このような構成とすることで発煙体2の交換作業を容易にすることができる。
【0042】
また、第1の実施形態又は第2の実施形態で示した加煙試験機1A,1Bのカバー11内に、小型の煙濃度計を設置し、加煙試験機1A,1Bの動作時にカバー11内の擬似煙の濃度が測定され、表示されるように構成されていてもよい。