(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透過性導電シールドが、前記高電圧電極上に配置されて前記高電圧電極に電気的に接続され、前記制御モジュールが前記高電圧電極内に取り付けられた、請求項1に記載の電子ビーム装置。
前記透過性導電シールドが、前記真空容器の壁または前記高電圧電極の壁のいずれか一方において、真空バリアの一部を形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電子ビーム装置。
流動経路が、前記透過性導電シールドの一方の側から前記透過性導電シールドの他方の側まで提供されて、前記一方の側と前記他方の側との間の圧力を均等化する、請求項1から7のいずれか一項に記載の電子ビーム装置。
請求項1から14のいずれか一項に記載の電子ビーム装置と、ターゲットアセンブリーと、を含み、前記電子ビーム発生器からの電子ビームが前記ターゲットアセンブリーのX線放出ターゲット部を照射するように構成された、X線銃。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、X線源のための高電圧発生器が提供され、発生器は、出力電極と、第1の電圧増倍器と、第2の電圧増倍器と、出力電極を少なくとも部分的に取り囲むように配置されたシールド電極と、を含み、第2の電圧増倍器の出力は出力電極に電気的に接続され、第1の増倍器の出力は第2の電圧増倍器の入力に電気的に接続され、シールド電極は第2の電圧増倍器の入力に電気的に接続される。
【0011】
1つの実施形態において、シールド電極は出力電極を実質的に取り囲む。
【0012】
1つの実施形態において、シールド電極は、出力電極を円周方向に取り囲む。
【0013】
1つの実施形態において、シールド電極は、出力電極に取り付けられた電子放出源から電子の放出を可能とする放出開口部を有する。
【0014】
1つの実施形態において、発生器は、第1の端部および第2の端部を有する細長い絶縁ブッシングをさらに含み、第1及び第2の電圧増倍器がブッシング内に配置され、出力電極がブッシングの第2の端部に提供され、シールド電極が、ブッシングの第1及び第2の端部の間で、ブッシングの中間領域から延設する。
【0015】
1つの実施形態において、発生器は、第3の電圧増倍器と、シールド電極を少なくとも部分的に取り囲むように配置された二次シールド電極と、をさらに含み、第3の電圧増倍器の出力が第1の電圧増倍器の入力に電気的に接続され、二次シールド電極が第1の電圧増倍器の入力に電気的に接続される。
【0016】
1つの実施形態において、発生器は、少なくとも500kV、好適には少なくとも750kVのDC電位差を、発生器の入力と、出力電極との間に発生するように構成される。
【0017】
1つの実施形態において、第1及び第2の、さらに任意選択的に第3の電圧増倍器のそれぞれは、少なくとも150kV、好適には200kV、最も好適には300kVをそれぞれの入力と出力との間に発生させるように構成される。
【0018】
1つの実施形態において、第1及び第2の、さらに任意選択的に第3の電気増倍器のそれぞれは、コッククロフト−ウォルトン型電圧増倍器である。
【0019】
1つの実施形態において、発生器は、第1の電圧増倍器の出力と第2の電圧増倍器の入力との間に提供された1つまたは複数のサージ抵抗をさらに含み、任意選択的に、1つまたは複数のさらなるサージ抵抗が、第3の電圧増倍器の出力と第1の電圧増倍器の入力との間に提供される。
【0020】
1つの実施形態において、発生器は、第2の電圧増倍器の出力と出力電極との間に提供された1つまたは複数のサージ抵抗をさらに含む。
【0021】
第2の態様において、第1の態様の実施形態である高電圧発生器と、出力電極に取り付けられた電子放出源と、を含む、電子ビーム発生器が提供される。
【0022】
1つの実施形態において、電子放出源は、加熱されたフィラメントである。
【0023】
1つの実施形態において、電子ビーム発生器は、出力電極及びシールド電極を取り囲むように配置された真空容器をさらに含む。
【0024】
第3の態様において、第2の態様の実施形態である電子ビーム発生器と、電子ビームによる照射のために配置されたX線放出ターゲットと、を含むX線銃が提供される。
【0025】
第4の態様において、真空容器と、真空容器に設けられた電子ビーム発生器と、を含む電子ビーム装置であって、電子ビーム発生器が、高電圧電極及び電子ビームを発生させるために高電圧電極に取り付けられた電子発生源を含み、電子ビーム発生器が、電子ビーム発生器内に取り付けられた制御モジュールをさらに含み、電子ビーム装置が、真空容器の壁に対して取り付けられた遠隔モジュールをさらに含み、制御モジュールが、光検出器および光放出器のうち一方を含み、遠隔モジュールが、光検出器および光放出器のうちもう一方を含み、光検出器が、光放出器によって放出された光を受け取るように配置され、電子ビーム装置が、光検出器および光放出器の一方を覆うように、光検出器と光放出器との間の光学経路に配置された透明導電性シールドをさらに含む、電子ビーム装置が提供される。
【0026】
1つの実施形態において、透明シールドは、高電圧電極上に配置されて高電圧電極に電気的に接続され、制御モジュールが高電圧電極内に取り付けられる。
【0027】
1つの実施形態において、透明シールドは真空容器の壁上に配置され、真空容器の壁に電気的に接続される。
【0028】
1つの実施形態において、導電性ミラーは、透明シールドと、透明導電性シールドによって覆われていない光検出器および光放出器のうちの他方との間の光学経路に配置される。
【0029】
1つの実施形態において、導電性ミラーは、高電圧電極上または高電圧電極内に配置され、高電圧電極と電気的に接続される。
【0030】
1つの実施形態において、導電性ミラーは、真空容器の壁上または真空容器の壁の外側に配置され、真空容器の壁に電気的に接続される。
【0031】
1つの実施形態において、透明導電性シールドは、真空容器の壁または高電圧電極の壁のいずれか一方において、真空バリアの一部を形成する。
【0032】
1つの実施形態において、流動経路は、透明導電性シールドの一方の側から透明導電性シールドの他方の側まで提供されて、一方の側と他方の側との間の圧力を均等化する。
【0033】
1つの実施形態において、透明導電性シールドは、その上に設けられた透明導電層を有する透明基板を含む。
【0034】
1つの実施形態において、透明導電層はパターニングされた導電層である。
【0035】
1つの実施形態において、透明導電層は導電フィルムである。
【0036】
1つの実施形態において、透明導電層はインジウムスズ酸化物からなる。
【0037】
1つの実施形態において、透明基板はガラスである。
【0038】
1つの実施形態において、遠隔モジュールは、真空容器の壁に取り外し可能に取り付けられる。
【0039】
第5の態様によれば、第4の態様の実施形態である電子ビーム装置と、ターゲットアセンブリーと、を含み、電子ビーム発生器からの電子ビームがターゲットアセンブリーのX線放出ターゲット部を照射するように構成された、X線銃が提供される。
【0040】
第6の態様において、回転するシャフトのための回転真空シールであって、シールが、シャフトを収容し、高圧端及び低圧端のそれぞれにおいてターミナル開口部を有する穴と、高圧端と低圧端との間の中間位置において、穴を取り囲み、穴に円周状に接続するチャンバーと、チャンバーから、真空ポンプに接続するのに適したポートまで延設する流動経路と、を含む、回転真空シールが提供される。
【0041】
1つの実施形態において、穴は、高圧端とチャンバーと、低圧端とチャンバーとのそれぞれの間において、実質的に円筒形である。
【0042】
1つの実施形態において、チャンバーは実質的に円筒形である。
【0043】
1つの実施形態において、チャンバーは、穴の少なくとも120%の、穴の長手方向軸に渡る最小内部寸法を有する。
【0044】
1つの実施形態において、シールは、穴内部でシャフトを回転可能に支持する回転ベアリングを含み、ベアリングは、任意選択的に、穴の高圧端及び低圧端のそれぞれにおいて、一対の回転ベアリング、好適にはローラーベアリングとして提供される。
【0045】
1つの実施形態において、シールは、穴内に収容されたシャフトをさらに含む。
【0046】
1つの実施形態において、シャフトは実質的に円筒形である。
【0047】
1つの実施形態において、穴及びシャフトは、高圧端で1バールに保たれた圧力及びチャンバー内で1ミリバールに保たれた圧力により、高圧端とチャンバーとの間で標準温度において窒素の質量流量率が1ミリバール・l/s未満となるような寸法である。
【0048】
1つの実施形態において、穴及びシャフトは、チャンバー内で1ミリバールに保たれた圧力及び低圧端で10
−5ミリバールの圧力に保たれた圧力により、チャンバーと低圧端との間で窒素の流量率が10
−3ミリバール・l/s未満となるような寸法である。
【0049】
第7の態様において、真空ハウジングと、X線放出ターゲットと、筐体の壁に設けられた、第6の態様の実施形態である回転真空シールと、を含み、X線放出ターゲットがシャフト上に取り付けられた、X線源のためのターゲットアセンブリーが提供される。
【0050】
第8の態様において、X線放出ターゲットと、真空ハウジングと、ターゲットを取り付け、真空ハウジングの壁を横切るシャフトと、スピンドルを回転可能に支持するベアリングと、ベアリングを支持し、真空ハウジングの壁上に取り付けられたベアリングハウジングと、を含み、ベアリングハウジングと真空ハウジングとの間のトルクが所定のトルクを超過したときに、ベアリングハウジングが真空ハウジングに対して回転するように、ベアリングハウジングがトルクリミッターによって取り付けられた、X線源のための回転ターゲットアセンブリーが提供される。
【0051】
1つの実施形態において、トルクリミッターは、真空ハウジングとベアリングハウジングとの間の回転を抑制するように構成され、所定のトルクでずれるように構成された部分を含む。
【0052】
1つの実施形態において、トルクリミッターは、真空ハウジングとベアリングハウジングとの間に摩擦力を加え、真空ハウジングとベアリングハウジングとが所定のトルクで互いに対して摺動することができるように構成された部分を含む。
【0053】
1つの実施形態において、ベアリングハウジング及び真空ハウジングのうち一方はフランジを有し、ベアリングハウジング及び真空ハウジングのうちもう一方はクランピングアセンブリーを有し、クランピングアセンブリーは、フランジに摩擦力を加えるように構成される。
【0054】
1つの実施形態において、クランピングアセンブリーは、フランジの一方の面に接触するように構成されたエネルギー吸収プレートと、エネルギー吸収プレートに対してフランジを押し付けるように構成されたクランプとを含む。
【0055】
1つの実施形態において、エネルギー吸収プレートは環状である。
【0056】
1つの実施形態において、クランプは、クランピング部分として回転または摺動するベアリングを含み、フランジがクランピング部分に対して自由に摺動することができる。
【0057】
1つの実施形態において、クランプは、クランプ手段がエネルギー吸収プレートに押し付けられるクランプ力を調整するためのバイアススプリングを有して提供される。
【0058】
1つの実施形態において、フランジ及びプレートの少なくとも一方は、フランジ及びプレートの少なくとも一方がフランジ及びプレートの他方に接触する経路に沿って、円周方向に連続的である。
【0059】
1つの実施形態において、クランプはエネルギー吸収プレートに取り付けられる。
【0060】
1つの実施形態において、フランジ及びエネルギー吸収プレートは、100℃未満の温度で互いに摩耗しないように選択される。
【0061】
1つの実施形態において、クランピングアセンブリーは、フランジとエネルギー吸収プレートとの間に50kgより大きく、任意選択的に80kgより大きい力を加えるように構成される。
【0062】
1つの実施形態において、所定のトルクが10Nm未満に超過した後に、クランピングアセンブリーが、ベアリングハウジングと真空ハウジングとの間で伝達されるトルクを制限するように構成される。
【0063】
1つの実施形態において、所定のトルクは10Nm未満である。
【0064】
第9の態様によれば、電子ビーム発生器と、電子ビーム発生器からの電子ビームがX線放出ターゲットのターゲット部分を照射するように構成された第8の態様の実施形態である回転ターゲットアセンブリーと、を含むX線銃が提供される。
【0065】
第10の態様によれば、ターゲットの回転の所定の軸を画定するサポートハブと、それぞれがハブによって支持されたターゲット材料からなる複数のターゲットプレートであって、プレートが、回転の軸に対して環状ターゲット領域を提供するように、ハブに配置された、複数のターゲットプレートと、を含む回転X線放出ターゲットが提供される。
【0066】
1つの実施形態において、ターゲット領域のターゲット材料がターゲットプレートの間で遮断されるように、ターゲットプレートが、ターゲット領域の円周方向において互いに対して離隔されて配置される。
【0067】
1つの実施形態において、ターゲット材料におけるターゲット材料の遮断は、ターゲット領域内の全円周経路の10%以下、好適には1%以下、さらに好適には0.1%以下である。
【0068】
1つの実施形態において、ターゲットプレートは、ターゲット材料の実質的に連続なターゲット領域を提供するように、互いに当接しまたは重なる。
【0069】
1つの実施形態において、ターゲットプレートのそれぞれは、プレートの、相対的に半径方向内側位置において、ハブに固定され、ハブの、相対的に半径方向外側に突出する。
【0070】
1つの実施形態において、ターゲットプレートのそれぞれは、環状区画の形態である。
【0071】
1つの実施形態において、ターゲットは、ハブに支持され、ターゲットプレートが当接しもしくは重なる位置におけるターゲット領域の部分、またはターゲット材料が存在しない位置におけるターゲット領域の部分上を覆うように構成された、複数のシールド要素をさらに含む。
【0072】
1つの実施形態において、シールド要素は、ターゲットプレートの円周方向縁部を覆うように構成される。
【0073】
1つの実施形態において、シールド要素は、ターゲット領域内の位置において、ターゲットプレートから軸方向に離隔される。
【0074】
1つの実施形態において、シールド要素は、ターゲット材料よりも主に原子番号が小さい原子またはイオンを有する材料から形成される。
【0075】
1つの実施形態において、シールド要素は、ベリリウム合金またはアルミニウム合金から形成される。
【0076】
1つの実施形態において、ターゲット材料は、タングステンまたはタングステン合金である。
【0077】
1つの実施形態において、ターゲットプレートは、ターゲット領域において、750keVにおけるターゲット材料内への電子侵入深さの200%未満、好適には150%未満、より好適には125%未満の厚さを有する。
【0078】
1つの実施形態において、ハブは、ハブを回転の軸に対する回転のためのベアリングに取り付けるための取付け手段を有する。
【0079】
1つの実施形態において、ハブは、相対的に厚さが小さい第1の半径方向内部領域と、相対的に厚さが大きい第2の半径方向外部領域とを有する。
【0080】
1つの実施形態において、第2の領域は、冷却流体のための複数の半径方向に延設する経路を有して提供され、相対的に小さな厚さの第1の領域は、ハブの軸面において凹部を画定し、複数の経路は、凹部の円周壁部に設けられた対応するポート内で終端する。
【0081】
1つの実施形態において、複数の経路は、凹部の壁部から延設し、凹部の壁部に戻る少なくとも1つの連続的な流動経路を画定するように接続される。
【0082】
1つの実施形態において、ハブは、凹部内に位置する冷却水分配部を含み、冷却液分配部は、冷却液流入ポート及び冷却液流出ポートと、流入ポートに供給するための冷却液のための、少なくとも1つの連続な流動経路への供給経路と、少なくとも1つの連続な流動経路から戻った冷却液のための、少なくとも1つの流出ポートへの帰還経路と、を提供する。
【0083】
1つの実施形態において、冷却液分配部は、凹部内に設けられた中央突出部を含み、中央突出部は、少なくとも1つの流入ポート及び少なくとも1つの流出ポート並びに、任意選択的に、突出部から、凹部の円周壁部に設けられたポートまで延設する複数のパイプを有し、中央突出部は、冷却液を、任意選択的に複数のパイプを介して、流入ポートから、少なくとも1つの連続な流動経路へ、そして少なくとも1つの連続な流動経路から流出ポートへ分配するように構成された内部経路を有する。
【0084】
第11の態様によれば、電子ビーム発生器と、電子ビーム発生器からの電子が、ターゲットが回転する間に環状ターゲット領域の一部を照射するように回転可能に配置された第9の態様の実施形態であるX線放出ターゲットと、を含む、X線銃が提供される。
【0085】
第12の態様によれば、ターゲットに電子ビームを放出するための高電圧発生器に電気的に接続されたカソードと、カソードを取り囲むように配置され、カソードをターゲットに接続する仮想線の方向に開口部を有するシールド電極と、を含み、シールド電極が、ターゲットに対して、カソードと異なる電位差に維持される、X線源が提供される。
【0086】
1つの実施形態において、X線源はカソード及びシールド電極を収容するための容器をさらに含み、シールド電極はカソードと容器との間に配置される。
【0087】
1つの実施形態において、シールド電極は複数の電極要素を有し、電極要素は開口部を有し、カソードを取り囲むように配置される。
【0088】
1つの実施形態において、複数の電極要素のそれぞれは、電極要素のそれぞれとターゲットとの間の相対的な電位が電極要素のそれぞれが容器に近接するにつれ低くなるように異なる電圧に維持される。
【0089】
1つの実施形態において、X線源は、カソードの周囲に配置されたウェーネルト電極をさらに含み、ウェーネルト電極とターゲットとの間の電位差は、カソードとターゲットとの間の電位差よりも大きい。
【0090】
1つの実施形態において、X線源は、カソードとターゲットとの間に電位差を提供するように構成された請求項1から14のいずれか一項に記載の高電圧発生器を含む。
【0091】
1つの実施形態において、シールド電極は、アパーチャに対して異なる位置に存在する第2のアパーチャを有する。
【0092】
本発明をより理解し、これがどのように効果を奏するように実施されるかを示すために、単に例示として、以下の図面を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0094】
[基本構造及び一般原理]
X線は、原子番号の大きな原子またはイオンを大きな割合で含む材料からなるターゲットを、適切な高いエネルギーの電子ビームで照射することによって生成されうる。電子ビームは、大きな電位差に渡って電子を加速することによって生成され、次いでビームをターゲットに導く。電子ビームの電子は、大きな原子番号の原子核の電場と相互作用し、制動放射過程を通してX線光子を放出する。そのため発生したX線は連続スペクトルを有し、入射電子のエネルギーで決定されるエネルギーの上限を有する。
【0095】
しかし、100keVの例示的な電子ビームでは、典型的には入射電子ビームのエネルギーのうち1%しかX線放射に変換されず、残りはターゲットに熱として付与される。電子ビームエネルギーを増加させると、X線放射に変換されるビームエネルギーの比率が増加する一方で、ほとんどの商用用途及び研究用途では、ビームエネルギーの大部分はターゲットに熱として付与される。
【0096】
制動放射過程を通して生成されたX線は、角度分布を有して放出されるので、X線のビームは、反射モードでは、ターゲットの入射ビームと同じ側から得られ、透過モードでは入射ビームに対してターゲットの反対側から得られうる。電子ビームを小さなスポットに集束することができ、小さな寸法のX線源を作ることにつながるため、高分解能撮像法に関しては、透過モードが好適である。しかし、ターゲットは放出されたX線を吸収しない程度に薄くなければならないため、透過モードで使用されるターゲットは、電子の高い線束によって発生する熱エネルギーを容易に散逸させることができない。
【0097】
CT撮像法に適した周知のX線源が、
図1に示されている。
図1のX線源は、真空容器910内に収容され、高真空、典型的には10
−5ミリバールまたはそれより良い真空にポンプ排気されている。そのような真空は、確実に容器が適切に真空シールされることにより、次いで適切な真空ポンプ、例えばターボポンプをポンプポート911に適用することにより、達成される。高真空は、電子ビームを可能にするために必要である。
【0098】
真空容器は接地電位に保持され、高電圧は高電圧発生器920により、高電圧電極923において生成される。高電圧発生器920内では、高電圧電極923が、容器910内に設けられ、電圧増倍器922によって、接地された容器910に対して適切に高い(負の)電位差に引き上げられる。
【0099】
図1の例において、電圧増倍器922はコッククロフト−ウォルトン型電圧増倍器であり、入力絶縁トランス927を通して交流入力電圧を受容し、電極923に高電圧の負のDC電位を出力する、適切に配置されたキャパシタ及び抵抗のネットワークからなる。そのような高電圧発生器は当技術分野で周知であり、電圧増倍因子は、増倍器の各脚部の直列キャパシタの数およびそれらのキャパシタの値によって決定される。しかし、実際には、高電圧電極において達成できる電圧は、高電圧電極923と接地真空容器910との間に存在する高電位差により真空容器910内の残留ガスをイオン化させる電圧によって制限される。そのようなイオン化によって、達成された高電圧は容器910の壁部にアーク放電を通して散逸する。そのため、実際上達成可能な電圧は複数の因子によって制限される。
【0100】
真空がより悪くなれば、すなわち真空の圧力がより高くなれば、より低い電圧で絶縁破壊を発生させることとなるため、第1の因子はチャンバー内で達成可能な真空の程度である。10
−4ミリバールまたはそれより良好な真空では、真空誘電強度は最大に近くなる。
【0101】
第2の因子は高電圧電極923の表面のチャンバーの壁からの距離であり、接近距離が近いほど、関連して絶縁破壊が発生する電圧はより低くなる。そのような距離は、実際上、電圧に対して線形的に大きくはならない。高電圧では、絶縁破壊前の密度で発生しうるイオンが加速され、それら自体が二次イオンを発生させることができる。加速されたイオンの経路に沿った二次イオンの密度は、長い距離に渡っても、放電事象を発生させるのに十分高くなることができる。
【0102】
第3の因子は、高電圧電極923の形状であり、鋭く曲げられた表面は、電位勾配を集中させ、イオン化を促進する。そのため、高電圧電極923の形状は通常、壁910に最も近い高電圧電極923の部分が確実に高い曲率半径を示さないように、円筒形、釣鐘型またはドーナツ形状に設けられる。
【0103】
高電圧電極923が放電する可能性がある別の経路は、電圧増倍器922内で様々な電位を蓄積する構成要素を通るものである。そのため、電圧増倍器自体が、細長い絶縁ブッシング924内に収容され、ブッシング924は容器910の後ろ側の壁から延設し、高電圧電極923を他端側で支持する。ブッシング924の内部は、絶縁性物質、例えば誘電体オイルで満たされ、ブッシング内の放電をさらに防いでもよい。ブッシング924は本明細書では円筒形である。
【0104】
最後の放電経路は、ブッシング924の外部表面に沿って発生しうる。ブッシング924は、ブッシングに沿った電位勾配を低減し、そのような放電を防ぐために十分に長く作らなければならない。前述のように、ブッシング924の最大安全長は、電圧とともに線形的に増大するわけではない。
【0105】
しかし、X線源及び一般的に高電圧システムの設計において、特定の条件では、良好に設計されたシステムでさえ、高電圧電極と、接地電位にある近接した表面との間に意図しないアーク放電が発生することがあることは認識されている。しかし、維持管理のために開ける必要がある真空システムにおいて、真空システムの一部の中の微小なキャビティが、真空誘電強度を低下させ放電を可能にするのに十分な気体を一時的に放出する可能性がある。そのような事象において、非常に大きな電流が、電圧増倍器からグランドまで、もし妨げられなければ電圧増倍器の構成要素に損傷を引き起こすことになるアークを通して流れることになる。そのため、サージ抵抗928が、電圧増倍器922の出力と高電圧電極923の間に配置されて、高電圧増倍器の中に蓄えられた全電位が、意図しない経路に沿って放電する事象において流れるであろう最大電流を制限する。
【0106】
高電圧発生器の機能は、高電圧に保たれた電子源からの電子を加速して電子ビームを形成するための適切な大きな(負の)電圧を提供することである。
図1の周知例の電子源920は、高電圧電極923の部分に設けられた、加熱されたフィラメント921である。高電圧電極923は、電極の前方表面において、フィラメント921が貫通する小さな開口を有する。フィラメントはまた、電圧増倍器922に接続され、そのため高電圧電極923と実質的に同じ電圧に維持される。
【0107】
加熱されたフィラメントは、フィラメント内の電子が熱放出によって解放され、高電圧電極923と接地された真空容器910との間の高電位差の影響下でフィラメントから出て自由空間に進むことができる温度まで加熱される。この高温を達成するために、電圧増倍器922によって既に達成された高電圧の上で、絶縁トランス926によって振動電位がフィラメントに印加され、この絶縁トランスもまた、加熱電流供給を通して高電圧がグランドに放電するのを防いでいる。加熱電流供給のための絶縁トランスもまた、絶縁ブッシング924内に収容される。
【0108】
高電圧電極923は、グランドに対する加速電位の提供に加えて、電極923と真空容器910の壁との間の電位差から、電極内部を遮蔽するファラデーシールドとしても働く。そのため、
図1の構成において、高電圧電極923もまた、当技術分野において「ファラデーハウジング」と呼ばれる。そのためファラデーハウジングはまた、電圧増倍器922の高電圧側において概念的に制御モジュール925として示される任意の制御電子機器も、真空容器910内の電位勾配から遮蔽することができる。高電圧電極923の内部は、ブッシング内の放電の可能性をさらに低減させるために、ブッシング924と共に、誘電体オイル、絶縁性気体または埋め込み樹脂などの絶縁性材料で満たされてもよい。
【0109】
そのため、
図1において、高電圧電極923が適切な高い電位に引き上げられ、フィラメント921が適切な高温に引き上げられると、電子ビームが、高電圧に近い電圧、例えば高電圧から0.1%から1%の差以内の電圧に維持されたフィラメントから加速され、高電圧電極923から前方の容器910のハウジングの方へ向かう。釣鐘型またはドーナツ形状の高電圧電極923は、電子を、広い角度分布を有するのではなく前方に向かうビームに加速させる適切な形状の等電位面を形成する。代替的に、曲面状の縁を有する円筒電極も、高電圧と同じ電位に維持され、フィラメントを囲むように構成され、電子を前方へのビームとして導くような幾何形状を有する平面状またはわずかに凹状のフォーカスカップと共に使用することができる。そのため、
図1に示される電子源と高電圧発生器との組み合わせは、電子ビーム発生器として働く。
【0110】
そのような構成において、フィラメント921に最も近い高電圧電極924の前方表面はいわゆる「ウェーネルト電極」として働き、フィラメント921に対して高電圧電極923の電圧を制御することによって、電子ビームが前方へのペンシル状ビームに徐々に絞られ、続いてウェーネルト電極の反発場によって切り離される。前述のように、フィラメント921と接地された容器との間の加速電圧に対する電極の負のグリッド電圧は、加速電圧の0.1%から1%に設定することができ、0.1%はビームのわずかな量が前方放出する形状となり、1%ではビームを完全に切断する。しかし、異なる幾何形状では、グリッド電圧の加速電圧に対する比は、用途の必要性に適するように選択されてもよい。ファラデーハウジングとウェーネルト電極とは一体化することもできるし、個別のものとすることもできる。いくつかの用途において、ファラデーハウジング及びウェーネルト電極は、フィラメントと同じ電位を有するように設定することもでき、またはウェーネルト電極がフィラメントに対して小さな負の電位を有する一方で、ファラデーシールドはフィラメントと同じ電位を有するように設定することもできる。
【0111】
フィラメントから発生した電子ビームは、集束コイル931を有し、電子ビームをターゲット941上のスポットに集束する働きをする磁気レンズ930内を通過する。ターゲット941は、スポットが生成される領域において、電子ビーム照射下でX線を発生させる材料を含む。例えば、大きな原子番号および高い熱伝導性を有するタングステンまたは類似の材料を使用してもよい。ターゲット941は、接地ポテンシャルなどの、容器と同じまたは類似の電位に維持される。
【0112】
ターゲットを撮像するために使用されるX線源の大きさを決定するのは、ビームのターゲット941との相互作用の体積の大きさであるので、ターゲット941への印加前の電子ビームの集束が有利である。直線的な光線光学系から理解されうるように、照射源の大きさが大きいと、光源と照射平面との間に配置される不透明な物体によって投影される影は、ぼやけた縁を有することとなり、そのため物体の画像の解像度が低くなる。反対に、光源が小さいと、投影される影ははっきりとし、投影される画像は相対的に高い解像度を有することとなる。これは、X線撮像法に関しても同様である。線源が小さいと、生成される画像はよりはっきりとし、倍率が高くなり、そのためより高い解像度及びより多い情報を提供することとなる。そのため、ビームを小さなスポットに集束することは、CTプロセスにおける3D再構成に有利である。
【0113】
しかし、電子ビームが、いわゆるマイクロフォーカスX線システムにおける数ミクロン程度の寸法を有するスポットを含みうる小さなスポットサイズに集束されると、特に電子のエネルギーが高い場合には、ターゲット内のスポットの位置における単位面積あたりに付与されるエネルギーが高くなり、X線光子のエネルギーが高くなり、電子線束が高いと、X線束が高くなる。入射ビームエネルギーの大部分である、放出されるX線に変換されない付与エネルギーは、熱としてターゲット内に散逸される。
【0114】
そのため、強い局所加熱状態で、ターゲットが融解し始め、または変形し始め得るという問題がある。そこで、ターゲットに熱的に応力を加えることを防ぐために、ターゲットは、新しい、冷たいターゲット表面を入射ビームに連続的にさらすことができるように十分に速く集束スポットを通して連続的に動かされる、ターゲット材料の延長された部分として通常形成され、そのため瞬間的な入射エネルギー密度が大きくても、一秒あたり、ターゲット材料の単位面積あたりに付与される平均エネルギーは確実に大きくならないようにする。
図1の構成において、これはターゲットをプレート941として形成し、プレート941をシャフト942によってある軸の周りに回転させることによって達成される。ターゲット941もまた真空容器910内にあるため、シャフトは真空容器の外側へ、真空シール943を通って通過する。
【0115】
フィラメント921からの電子ビームによるターゲットの照射の結果としてターゲットから放出されるX線ビームは、X線ウィンドウ912を通って真空容器から出る。ターゲットの物体はそのためX線ウィンドウ912とX線感光性フィルムのシートなどの適切な検出器との間に介在されてもよく、X線画像が取得されうる。
【0116】
図1の装置において、真空容器910を極端に大きくすることなく、密度の高い、または延設されたターゲット物体に関して、高電圧電極923において十分に高い電圧を達成することは困難である。さらに、ブッシング924を、そのような十分に高い電圧に十分に耐えられるように作ることも困難である。具体的には、500keV、好適には750keVに達し、またはそれを超える電子ビームを達成することが困難である。そのため、本発明者は、
図2に示される改良された構成を考案した。
【0117】
図2のX線源は、多くの構造的、機能的類似点を残しつつ、当業者に明らかなように、いくつかの重要な態様において
図1に示されたものと異なっている。
図2において100番台の参照符号を有する構成要素は、そうでないことが記載された場合を除いて、
図1の900番台の対応する参照符号で示された構成要素と本質的に類似の構造及び機能を有すると解釈すべきである。
【0118】
[高電圧発生器]
まず、
図2の実施形態の高電圧発生器120の構造は、
図1に開示されたものとは異なる。具体的には、
図2の高電圧発生器120は、直列に配置された3つの個別のコッククロフト−ウォルトン型電圧増倍器122a、122b、122cからなる多段電圧増倍器122を有する。個別の電圧増倍器のそれぞれの出力は、高電圧電極に接続される出力を有する最終電圧増倍器を除いて、次の電圧増倍器の入力に接続され、高電圧電極123aが全体として得られる高電圧発生器の出力電極となる。さらに、最終電圧増倍器122aを除く各電圧増倍器の出力は、シールド電極123b、123cに接続される。
【0119】
各シールド電極123b、123cは、高電圧電極123aを取り囲んで、好適には同軸的に取り囲んで配置され、動作時にはそれよりも高い電位に到達するシールド電極の全てを取り囲んで配置される。そのため、シールド電極123cは、シールド電極123b及び高電圧電極123aを取り囲む。
図2に示される多段電圧増倍器には3段階が存在するが、段階の数は変更することができ、例えば、第1段122c及び第1のシールド電極123cを省略してもよい。代替的に、4つまたはそれより多くの段階が提供されてもよく、それぞれがそれ自体のシールド電極と関連付けられる。各シールド電極もまた、前方表面に、フィラメント121から発生した電子ビームを自由に通過させることができる放出アパーチャを有することが有利であり、さらに、各フィールド電極123b、123c及び高電圧電極123aが電子ビームの放出点において、ビーム軌道をかく乱することのないように、同電位線に従うことが有利である。しかし、ほとんどの場合、任意選択的に丸みをつけられた縁を有する円筒形シールド電極は、絶縁破壊を防ぐのに十分であり、その他の幾何形状が、実際的な制約を超える制限がないように採用されてもよい。シールド電極は連続であることができ、または網目状に形成することができる。編み目形状の場合、編み目の開口部によって、画定された放出アパーチャの必要性をなくすことができる。
【0120】
図2に示されたような入れ子状の電極を提供する利点は、各シールド電極と、収容された電極と容器110の壁との間に存在するよりも近くに収容する電極との間に存在する電位差がより小さいということである。この構成の結果、真空中でアーク放電を引き起こし、または所定の距離で隔てられた2つの電極間のブッシングに沿った放電を引き起こすこととなる電位差が、中間的な電圧で動作する電極がこれらの電極の間の中間距離に配置されると、電位差に対する絶縁破壊プロセスの非線形的な挙動のために、アーク放電も放電も引き起こさなくなる。
【0121】
有利には、中間電極またはシールド電極は、高電圧表面と低電圧表面との間でほぼ等距離に配置され、それらの表面間の中間の電位に維持される。そのため、
図2に示されるような発生器において、それぞれ接地された容器110に対して、高電圧電極123aは750kVに維持されてもよく、第1のシールド電極123bは500kVに維持されてもよく、第2のシールド電極123cは250kVに維持されてもよい。しかし、他の実施形態において、シールド電極間の電位は、代替的に少なくとも150kV、少なくとも200kVまたは少なくとも300kVであってもよい。
【0122】
例えば、2つの円筒形電極の間に500kVの電位、1×10
−4ミリバールの圧力、150mmの2つの電極の間の間隔を有するいくつかの構成において、絶縁破壊は1時間ごとよりも多い頻度で発生し得るが、250kVに維持された追加的な中間等距離シールド電極を有する同じ構成は、ほとんど絶縁破壊を発生させないこととなる。
【0123】
そのため、改善された(より高い)電位差を、高電圧電極123aと接地真空容器110との間に維持することができ、その一方装置全体の大きさを比較的小さい状態に保つことができる。高電圧電極123aにおけるそのような高電圧の提供によって、750keVの電子エネルギーが、出力、第1及び第2のシールド電極の開口を通して脱出し、磁気レンズ130に入り、ターゲット500上で集束される電子ビームにおいて達成される。そのため、非常に高いX線光子エネルギー、すなわち500keVにピークを有し、750keVまで延在する電子ビームスペクトルが、ターゲット500から発生したX線ビームにおいて達成される。
【0124】
図2に示される多段電圧増倍器において、増倍器の各段間の電位差よりも高い定格の絶縁トランスの必要性を避け、全ての構成要素を同様の電位においてブッシング124の長さ方向に沿った所定の位置に維持し、そのためブッシング124内にさらなる絶縁を必要とすることを防ぐために、交流加熱電流をフィラメント121に提供する絶縁トランスが、順に3つの絶縁トランス126c、126b及び126aに分割されることも有利である。
【0125】
また、サージ抵抗128a、128b及び128cが、多段電圧増倍器の各段の出力に提供されることも有利である。そのようにすることで、各サージ抵抗には全電圧の一部のみがかかるようにすることができ、より低い値の抵抗を、所定の電圧および最大許容サージ電流に対して使用することができる。例えば、明確性のためにフィラメントに関する駆動トランスを省略し、1つの電圧増倍器の出力と次段の入力との間に各抵抗に対して概念的な値R
Sを使用する
図3に示すように、、値R
S/2を有する終端サージ抵抗128aを提供することにより、各中間抵抗は、全電圧の3分の1だけがかかるようにすることができる。さらに、追加的に、値R
S/2を有するように選択された終端抵抗128aを有することで、電圧増倍器の各段に渡る電圧が、同じ割合で破壊することができるようになる(全てのキャパシタが等しい値を有すると仮定する)。そのため、望まない絶縁破壊が発生したとしても、エネルギーを安全に散逸させることができる。結果として、ブッシング124は250kVを定格とするだけでよいが、これは、絶縁破壊事象の間に持ちこたえることが必要となる最大電位差であるためである。最後に、中間抵抗は、電圧増倍器を、電極の互いに対する自己静電容量に関連した高電流から保護し、可能性のあるすべての放電経路を保護する。
【0126】
実際には、サージ抵抗128a、128b及び128cの値は、所定の位置の必要性に従って選択可能である。サージ抵抗の値を低くすると、上段への駆動電圧の伝送の効率を向上させることができ、その一方サージ抵抗の値を大きくすると、放電事象に対する増倍器の構成要素の保護を改善させることができることになる。
【0127】
図3に示された高電圧発生器の構成の更なる利点は、ブッシング124内の高電圧発生器の要素とブッシングの各区間を取り囲むシールド電極との間に存在する電位差が低くなることである。そのため、ブッシングの厚さを低減させることができ、高電圧電極123aとアースとの間の電位差全てに対する定格を有する必要性がなくなる。むしろ、入れ子となった電極の間の最大電位差、例えば250kVを定格とする必要があるだけで済む。
【0128】
もちろん、
図2に示された構成は純粋に例示的なものであり、X線源に関する工学的必要性に応じて多くの改良をしてもよい。
【0129】
例えば、
図2において、シールド電極123b及び123cは実質的に高電圧電極123aを収容するが、重要な寸法がビーム経路に対する真空容器110の半径であり、追加的な間隔が高電圧電極123aと容器の前面壁110aとの間に、ビーム放出方向に沿って提供されうる構成においては、2つのシールド電極のそれぞれは、高電圧電極の周囲を収容する必要があるだけである。しかし、そのような設計は、ブッシング124を、高電圧電極と接地された真空容器110の間の、その厚さに渡る全電位差に耐えることのできる定格とする必要がある。
【0130】
図2に示された構成を使用することで、非常に高い電子ビームエネルギーが必要でない場合であっても、装置は所定のビームエネルギーに関して寸法的により小型にすることができる。しかし、本発明の実施形態において、少なくとも150kV、好適には250kV、最も好適には300kVが電圧発生器の各段階128a、128b及び128cによって提供されることが、ここでは好適である。そのような構成により、750keVのビームエネルギーを、小さな容器から提供することができる。
【0131】
また、いくつかの実施形態において、例えばブッシングの長さ方向に沿った放電の顕著な可能性が考えられない場合には、前述の発生器の直列構成よりもむしろ、シールド電極はそれぞれ、高電圧電極123aを駆動する発生器とは異なる高電圧発生器によって駆動することができる。
【0132】
[高電圧電極制御システム]
図2の構成において、例えばフィラメント921の状態を監視し、フィラメント921の温度及び相対電位を制御するために、制御信号を、高電圧電極123a内に位置する制御モジュールに、また制御モジュールから提供する必要がある場合がある。しかし、単純にブッシングに沿って制御配線を引くのは、高電圧発生器の各段において絶縁し、制御線に沿った高電圧の放電を防ぐ必要があるため、好適ではない。
【0133】
この問題を解決するために、
図2の構成は、真空容器110の壁に搭載された遠隔モジュールとして働く対応する光発生器202a及び光検出器202bと光学的に通信する、高電圧電極123aに搭載され、高電圧電極123a内に配置された制御モジュールとして働く光発生器201a及び光検出器201b(図示されない)を伴う光学結合された制御機構を採用する。光発生器及び光検出器は互いにアナログ信号及びデジタル信号を、真空を通して、真空容器110の壁から高電圧電極123aの内部まで、またはその逆に、どのような導電経路も設けずに伝達し、有利には通信に使用される波長の光が通過することができる各電極123a、123b及び123cのアパーチャによって可能となる。
【0134】
図2の実施形態において、光発生器201a、202aは、事前に集束された近赤外LEDであり、その一方光検出器201b、202bは近赤外で働くフォトダイオードである。
【0135】
しかし、電子ビーム銃120から放出される電子ビームのために、真空容器110内に残る残留ガスがイオン化し、荷電イオンの電荷によって、高電位または低電位の領域に移動することとなる可能性がある。そのようなイオンは、通常絶縁プラスチックである光発生器及び光検出器の光学表面に堆積する可能性がある。
【0136】
そのため、これらの光学表面を保守または清掃することなく、長い期間に渡って動作させると、時間が経過するにつれ光学表面の汚染に起因して通信が失敗するようになりうる。
【0137】
この問題の1つの解決手段は、それぞれの光発生器及び光検出器の前面に透明シールドを提供し、それらが汚染された場合により容易に清掃でき、シールドを交換することができるようにすることである。しかし、従来の透明なプラスチックまたはガラスがそのようなシールドに使用される場合、本発明者は、依然として光学通信の効率が時間の経過に伴って悪化し、予測できない装置の不具合を引き起こしうる可能性が残ることを発見した。
【0138】
本発明者は、入射イオンから、静電荷を容易に捕捉し維持するプラスチック表面の傾向が、この現象の重要な寄与因子となりうることに気付いた。そのため、
図2の構成において、それぞれ透明導電性コーティングを有する透明シールド203a、203b(図示されない)、203c及び203d(図示されない)が、伝達用光発生器及び光検出器201a、201b、202a及び202bのそれぞれを覆うように提供され、導電性コーティングが、シールドの配置に応じて、高電圧電極またはアースされた壁の真空容器110の何れかに結合される。
【0139】
図2の実施形態において、透明シールドは、高電圧電極123a及び真空容器110の真空シールの一部をそれぞれ構成し、光発生器または光検出器が配置された側に対向するシールドの側であって、真空にさらされた側にこの導電性コーティングを有するように構成されたウィンドウとして提供される。そのため、透明シールドはそうでなければ光発生器または光検出器の上に直接堆積されたであろうあらゆる堆積物を集めるだけでなく、導電性コーティングによって、局所的な静電荷を散逸させ、そのためそのようなコーティングを引き付け、とどまらせる可能性がより低くなる。
【0140】
導電性透明シールドは、当技術分野で従来知られている任意の手段によって提供することができる。
図2の構成は、インジウムスズ酸化物(ITO)の透明導電性コーティングでコートされたホウケイ酸などの透明ガラス基板を採用するが、他の透明基板及び他の透明導電性コーティング、例えば透明プラスチック基板上に堆積された導電性金属パターンなども使用することができる。
【0141】
図2の構成はまた、真空容器110の壁に設けられた光検出器202aとともに示されている、不要な堆積物に対する追加的な対抗手段を採用するが、真空容器の壁における光発生器または高電圧電極123a内の光検出器もしくは光発生器にも同様に適用することができる。この対抗手段の詳細は
図6に最も明確に示されており、
図6は、真空容器110の壁の一部を形成する光検出器202aを含む遠隔モジュールの拡大図である。
【0142】
図6の構成において、光検出器202aを覆い、真空チャンバー110の真空シールの一部を形成する透明導電性シールド203cは、ハウジング205内に提供される流路207の端部に提供され、ハウジング205は真空容器110の取り外し可能な部分を形成する。流路207は、高電圧電極123aを収容する真空容器110の一部に開く一端及びフォトダイオード202aの前に位置するシールド203cに終端する他端を有する。流路207は、
図6の実施形態においてはほぼ直角の屈曲部である屈曲部を有し、ミラー204aが流路207の屈曲部に配置され、高電圧電極123a内に設けられた光発生器201aから光検出器202aに到達する光の方向を変える。
【0143】
流路207及びミラー204aを設けることは、電子ビームの効果によって発生するイオンが流路207に沿って弾道的に飛来し、シールド203cよりむしろミラー204aの表面に堆積する傾向にあるという点で有利である。ミラー204aは、金属などの導電性材料で容易に形成されてもよく、そのため静電荷の存在に起因するミラー204a上に堆積するイオン化した粒子の可能性も減少することになる。しかし、そのような堆積物が発生すると、ミラーは、取り外しハウジング205によって真空容器110から容易に取り外されて交換され、比較的より繊細な導電性透明シールド203cを妨げる必要性なく、ミラーを交換することができる。
【0144】
しかし、装置について通常の保守が予定されている場合は、そのような構成は必要でなくてもよく、これらの対抗手段のいくつかまたはすべてを省略してもよい。例えば、
図5は、高電圧電極123aによって形成された真空シールの一部として提供され、、光検出器201bを覆う透明導電性シールド203bを示しており、光検出器201bは、絶縁性オイルによって取り囲まれて示されている。
【0145】
しかし、
図4に示されるように、透明シールド203aは、そのように真空容器または高電圧電極によって提供される真空シールの一部として提供される必要はなく、真空容器もしくは高電圧電極の位置に、または真空容器もしくは高電圧電極の内部に配置されてもよい。真空容器の壁または高電圧電極の位置に設けられた場合、真空解放流路206が、透明シールド203aのそれぞれの側の空間が等しい圧力となることができるように設けられてもよい(高電圧電極123aの
図4の実施形態に示される)。
【0146】
実際には、透明シールドは光検出器または光発生器の前からある距離に設けることができる。しかし、そのような構成は、光検出器または光発生器に到達する汚染を実際に減少させるために、相対的により大きな面積を有するシールドを必要とする。そのため、
図2に示される、透明シールド203a、203cが高電圧電極及び真空容器110の壁に取り付けられる本構成が好適である。
【0147】
さらに、部品それぞれに対する手の触れやすさ、部品それぞれの清掃の容易さ、及び実験的に決定されたそれぞれへの堆積率に応じて、導電性シールドは、高電圧電極に設けられる光検出器および光発生器に関してのみ、真空容器110の壁に設けられた光検出器および光発生器に関してのみ、光検出器に関してのみ、または光発生器に関してのみ設けられてもよい。
【0148】
好適には、
図6に示されたハウジング205は、使用者がミラー204aを交換し、透明シールド203cを清掃することができるように、真空容器110の残りの部分の壁から取り外し可能であるように取り付けられるが、ハウジング205は、代替的に、必要に応じて真空容器110の壁と一体化して形成されることも可能である。
【0149】
[低摩擦回転真空シール]
電子ビームが、高電圧電極123a内に位置するフィラメント121から放出されると、電子ビームは磁気レンズ131によって集束され、回転ターゲット500と相互作用する。
【0150】
回転ターゲット上のマイクロフォーカス電子ビームのスポットから発生するX線ビームのプロセスは、
図7に概略的に示されている。しかし、
図2の構成で可能な高い電子ビームエネルギー及び優れた信号対雑音比を達成するために必要な高い線束のために、回転ターゲット941においてマイクロフォーカススポットに付与されるエネルギーは非常に高いものになる可能性がある。そのため、ターゲット941に提供される冷却は非常に効率的なものでなければならず、ターゲット941は非常に高い熱容量を有しなければならず、または熱的負荷で変形したり溶融したりしないように、ターゲット材料は電子ビームのマイクロフォーカス位置を十分に速く通過させるように動かさなければならない。
【0151】
回転ターゲットディスクを使用して、ターゲット材料を、マイクロフォーカス点を十分速く通過させることは、高い角速度で駆動される大きな直径のターゲットディスクを必要とする。
図1に示されるような回転ターゲット構成において、ターゲットディスク941は、真空容器910の内部から真空容器910の外部へ回転真空シール943を介して通過するシャフト942によって駆動されてもよく、回転真空シール943は、真空容器910の外部から内部へ気体が流れ込むのを防ぎつつシャフトの回転を可能にする。従来の真空シール構成が
図8aに示されており、ハウジング943aはシャフト942が通る穴943cを画定し、穴943cの一端から他端へ気体が流れるのを防ぐシール要素943bを支持する。シール要素943bは、Oリングシール、リップシールまたは磁性流体シールとしても提供されることができる。しかし、これらの構成の全ては、シャフト942とシール943bとの間の接触がシステムにおいて摩擦を発生させ、実際的な速度を1分間あたり約6000回転(rpm)に制限するという欠点を有する。回転磁場及びターゲット上の追従磁石を使用するターゲットの駆動のような代替的な構成は、大きなターゲットの高速でありながら制御された回転に十分なトルクを伝達することは困難である。
【0152】
そのような機械的シールの既知の代替案が、
図8bに示されており、シール943bは存在せず、穴943cはシャフト942にほぼ一致するような大きさである。穴とシャフトとの間の間隔は
図8bでは寸法Cとして示されており、例えば、長さ60mm、直径20mmの穴に対して20μmであってもよい。シャフト942と穴943cとの間がそのように近接して適合していることにより、高圧側(大気)から低圧側(真空)への気体の流動を防ぐ。
【0153】
図8bの構成は、シール要素が回転するシャフト942と摺動して接触していないため、摩擦を低減させるが、動作のための非常に近接した許容範囲を必要とする。さらに、
図8bの従来のシールの20μmの例示的な間隔は、気体の自由流動を防ぐが、それでも大気側と真空側との間の穴の長さに沿った気体の粘性流動をある程度許すこととなる。そのようなシールを通るコンダクタンス(体積流量率)は、0.0005l/s程度であり、大気から10
−5mbarへの圧力低下からの質量流量率は、0.5mbar・l/s(1000mbar×0.0005l/s)である。
【0154】
そのため、真空側を高電圧発生器及び電子ビーム装置の動作のために十分な高真空に保つために、10
−5mbarのキャビティから0.5mbar・l/sのシールを通して質量流量、すなわち5×10
4l/sの体積流量率を除去することができる、非常に強力なポンプが必要となる。
【0155】
間隔をさらに小さくすることは技術的に困難であり、回転シャフト942と穴943cの壁との間の接触は大きな摩擦熱及び損傷を発生させることとなり、高い角速度で回転する大きな回転ターゲットの場合には、潜在的に、真空ハウジングに大きなトルク伝達をもたらすことになる。そのため、
図2の実施形態は有利には、過剰に小さな間隔を避けることができるが、ベアリングの大気側からベアリングの真空側への気体の流動を効率的に防ぐこともできる、回転シャフトのための改良された真空シールを使用する。
【0156】
図2の実施形態で使用される非接触回転真空シールの実施形態は、
図9に示されている。シールは穴301を画定するハウジング403を有し、それを通してターゲット駆動シャフト401が通過する。穴は真空側端部301a及び大気側端部301bに終端開口をそれぞれ有し、高圧端部と低圧端部との間に提供された中間チャンバー302を有する。チャンバー302は、流動経路303を介してポンプまたはポンプが接続されうるポンプポートと連通する。いくつかの実施形態において、チャンバー302は、穴自体の長手方向軸を横切る最小内部寸法の120%よりも小さな、穴の長手方向軸を横切る最小内部寸法を有する。しかし、いくつかの実施形態において、チャンバーは、穴とシャフトとの間の最小間隔の30倍未満、さらには20倍未満だけ穴に対して大きな最小内径を必要とするのみである。
【0157】
動作において、補助ポンプ(図示されない)が真空ポート303に設けられる。これは、チャンバー302を約3mbarの低圧に維持することができる。シャフト401と穴301の壁との間の間隔は、
図8に示されたものと同程度であるが、低圧に維持された中間チャンバー302の存在により、シールを通る気体の全流動を効果的に制限することができる。
【0158】
チャンバー内で維持される圧力が約3mbarであると仮定すると、気体分子の平均自由行程がシャフトと穴の壁との間の間隔よりも小さい場合に、気体は、約1barに維持された大気側から粘性流の状態で流れる。
【0159】
大気側終端開口301bと中間チャンバー302との間の穴301の部分301cは、例示的に
図8bの穴の長さの約半分である30mmの長さを使用すると、粘性流動コンダクタンスは
図8bのそれの約2倍であり、0.001l/s程度である。そのため、大気から中間チャンバー302への質量流量は、約1mbar・l/sである。中間チャンバー302内で3mbarの場合、これは0.33l/sである。中間チャンバー302内を3mbarの真空に保つ小さな補助ポンプは、一般的に、0.33l/sを排気することによって、中間チャンバー302内の圧力を3mbarに保つことができることとなる。
【0160】
しかし、3mbarの圧力では、例えば室温における、空気の主成分である窒素の平均自由行程はおよそ20μmであり、穴301とシャフト401との間の間隔と同程度である。平均自由行程が間隔と同程度またはそれより大きい場合には、中間チャンバー302と穴301の高真空終端開口301aとの間の、穴301の区間301dに沿った気体分子の流動は、分子流の状態で動作し、中間チャンバー302から穴の区間301dに沿ったコンダクタンスは実質的に中間チャンバー302の圧力に依存しない。
【0161】
30mmの長さに渡って、かつシャフト401と穴301との間の間隔が20μmの場合、穴301の区間301dを通る分子流コンダクタンスは約10
−4l/sであると概算され、または穴301の領域301cの区間を通るそれの10倍であると概算されうる。そのため、チャンバー302から高真空終端開口301aまでの穴301の区間301dを通る質量流量率は、約3×10
−4mbar・l/sである。これは、チャンバー302から流動経路303を通って除去される気体の比率及び粘性流よりむしろ分子流の状態で穴301の区間301dの動作の両方に起因して、穴301の区間301cを通る質量流量よりも10
3以上小さく、
図8aのシールを通る流量よりも10
3超小さい。
【0162】
従って、
図9の構成は、
図8aのシールを設けるのに伴う摩擦損失を被ることなく、
図8bの構成に必要なものよりも工学的許容量を低下させることなく、
図8bの構成よりも効率的な真空シールを提供することができる。
【0163】
図9に示された穴301は、中間チャンバー302と共に、実質的に円筒形であるが、これは、
図9の実施形態の動作には必須ではない。特に、穴301は、限定なく、例えばわずかにテーパー状を有するその他の幾何形状を有してもよい。しかし、円筒形の穴は製造が容易であり、円筒形のシャフトに対して一定の間隔を輸するため、
図9において円筒形の穴が使用されている。さらに、大気側開口301bを中間チャンバー302に接続する穴の部分301cは、中間チャンバー302を真空側開口に接続する穴の部分301dと同じ寸法を有する必要はない。しかし、同様に製造の単純化のために、
図9の実施形態は、穴のこれらの区画を同一の寸法としている。最後に、円筒形チャンバー302は、加工の観点から有利であるが、これは必須ではない。
【0164】
いくつかの実施形態において、寸法は、高圧側端部で1barに維持されチャンバー内で1mbarに維持された圧力によって、標準温度における高真空側端部とチャンバーとの間の窒素の質量流量率が1mbar・l/sよりも小さくなるように選択される。いくつかの実施形態において、寸法は、チャンバー内で1mbarに維持され低圧側端部において10
−5mbarに維持された圧力により、チャンバーと低圧側端部との間の窒素の質量流量が10
−3mbar・l/sよりも小さくなるように選択される。
【0165】
図2の実施形態を実際に使用する場合に、ローラーベアリングが穴301のそれぞれの端部に設けられ、シャフト401を実質的にベアリング内の中心に位置合わせするように維持される。そのような構成では、この構成は、一体化した回転真空シール及び回転シャフトのためのベアリングを提供し、外部ベアリングをシールと位置合わせする困難さが排除される。
【0166】
[ベアリングトルク超過リミッター及び運動エネルギー吸収器]
図9の構成において、1つの、または他のローラーベアリングの故障により、シャフト401が穴301の壁に接触する可能性が残っている。シャフト401は典型的にはギアボックス145を介して働くモーター144によって非常に高速で駆動され、そのような状況では、穴301の壁に対するシャフトの摩擦力は、真空シール及びそれに接続された装置の任意の構成要素に大きなトルクを加えることになる可能性がある。代替的に、シャフト401とローラーベアリングとの間の間隔内への汚染または微粒子の侵入は、同様の摩擦力を引き起こす可能性がある。
図2に示されるような直径の大きな高速回転するターゲットディスクの場合、引き起こされる摩擦力はシャフト401を急速に加熱することとなり、シャフト401がローラーベアリング内で固着することになる可能性がある。フライホイールのように働く回転ターゲット内に蓄積されるエネルギーの全体は、引き起こされるトルクを介してベアリングハウジングに伝達され、全体として装置の実質的な機械的損傷の可能性及び作業者の潜在的な危険性を招くこととなる。
【0167】
そのため、
図2の構成は、
図10に詳細に示される形態の、故障時に超過したトルクがベアリングハウジングから装置の他の部分へ伝達されるのを防ぐためのトルクリミッター及びベアリングハウジングに伝達された運動エネルギーを安全に散逸させる運動エネルギー吸収器を有する回転ターゲットアセンブリーを含んでいる。
図2において、これらの機能的要素は
図10に示されたターゲットアセンブリー400の共通の態様を通して提供される。
【0168】
図10に示されたターゲットアセンブリーにおいて、回転X線ターゲット500は駆動シャフト401に取り付けられ、シャフト401は真空容器110の壁を通り、ベアリングハウジング403に取り付けられたローラーベアリング402a及び402bによって支持される。ベアリングハウジング403は、真空容器110の壁に取り外し可能に取り付けられ、シール409によってシールし、そのため真空容器110の一部を形成する。シャフト401の回転は、ターゲット500を回転駆動させる。
【0169】
図2の実施形態において、ベアリングハウジング403の、シャフト401が通る穴404を通る気体の流動は、
図9に関連して説明された回転真空シールを採用することによって防がれる。しかし、シールの詳細は、トルク制限機能及び運動エネルギー吸収機能の動作には重要ではない。
【0170】
図10において、ベアリングハウジング403は、外部形状がほぼ円筒形であり、ベアリングハウジング403の外形表面から半径方向に延設するフランジ411を有する。フランジ411は環状であり、真空容器110の対応する環状プレート412と摺動するように接触しており、ベアリングアセンブリー403は、穴404によって画定された軸の周りを、真空容器110の残りの部分に対して、フランジ411の表面がプレート412と摺動摩擦的に接触した状態で回転することができる。ベアリングハウジング403の外側の円周は、真空容器110の壁に形成された対応する円形の開口部410に回転可能に挿入され、一体として環状シール要素409によって真空シールを提供する。
【0171】
クランプ420は、フランジ411とプレート412とを摺動摩擦接触状態に押し付けるように提供される。クランプ420は、アーム422のシャフト422aに回転可能に取り付けられたローラーベアリング421を含み、エンドキャップ422bによって保持される。ローラーベアリング421は、穴404の半径である軸の周りに回転するように取り付けられる。ローラーベアリング421は、穴404に対してバネ426によって軸方向に押し付けられ、軸方向の力を、ローラーベアリング421がアーム422を介して取り付けられる環状部423に加える。
【0172】
環状部423は、調整ねじ424のシャフト424a上で、軸方向に摺動するように構成され、調整ねじは、調整ねじ424の頭424bの回転がねじの頭424bと環状部423との間の距離を調整し、そのためねじの頭424bと環状部423との間に介在するバネ426の圧縮を調整し、それによってねじの頭424bと環状部423との間に印加される力を調整するように、それ自体がハウジング110のねじ穴427内に保持される。そのため、フランジ411とプレート412との間でローラーベアリング421を介して印加される力は容易に調整されうる。
【0173】
図10において、クランプの2つの例が、ベアリングの両側に押し付ける力を提供するために、ベアリングハウジング403の両側において直径方向に互いに対向して設けられている。これは、もちろん例示的なものであり、より多くのまたはより少ない数のクランプ420が、穴404の軸に対して円周状に間隔をあけて設けられてもよい。好適には、3つ又はそれより多くのそのようなクランプが、等間隔で設けられる。
【0174】
動作時には、フランジ411と環状プレート412との間に提供される圧縮クランプ力は、フランジ411とプレート412との間の摩擦力が、真空容器110に対してベアリングハウジング403が回転しないようにする程度に十分大きい。しかし、シャフト401が、例えばローラーベアリング402aまたは402bの一方の故障、真空シールの故障、もしくは穴404の汚染、またはシャフト401が穴404内に固着するような穴404に対するシャフト401のずれによって、ベアリングハウジング403に対して固着されるような場合、回転ターゲット500からシャフト401を介してベアリングハウジング403に伝達されるトルクが、フランジ411とプレート412との間の静摩擦力に打ち勝つのに十分であり、そのためベアリングアセンブリー403は全体として真空容器110及び装置の残りの部分に対して回転する。
【0175】
ある程度のトルクはフランジ411とプレート412との間の摺動コンタクトを介して真空容器110に伝達されるが、この伝達されたトルクは実質的にはベアリングの故障またはシャフトの固着によるターゲット500から真空容器110に印加されたであろう全トルクよりも小さい。そのため、真空容器に伝達されるトルクがより小さくなるため、装置に対する損傷の可能性が小さくなり、作業者に対する危険性も小さくなる。
【0176】
伝達されるトルクの差は、プレート412に対して摺動するフランジ411によってなされる仕事の結果としてのものである。なされる仕事は熱を発生させる。そのため、クランプ420、フランジ411及びプレート412が真空容器110に伝達される超過トルクを防ぐトルクリミッターとして働くだけでなく、回転ターゲット500に蓄えられたフライホイールエネルギーをフランジ411とプレート412との間の摩擦接触を介して比較的ゆっくりと熱として散逸させることも可能である。対称的に、クランプ420はローラーベアリング421を介してフランジ411にクランプ力を印加するため、クランプ420にはほとんどエネルギーが散逸されない。
【0177】
図10の実施形態において、プレート412は、100℃未満の動作温度において、フランジ411と圧縮接触している場合には摩耗しない材料であるように選択される。そのため、フランジ411とプレート412との間の経時的な貼り付きの可能性は低減され、機構は設計条件下で動作するうえで信頼性を得ることができる。具体的には、真空容器110がステンレス鋼である場合、プレート412は真鍮からなるものであってよい。
【0178】
もちろん、
図10の構成はトルク制限及び/または運動エネルギー散逸回転ターゲットアセンブリーの1つの実施形態に過ぎない。例えば、トルク制限の特徴のみを設けることができるように、ベアリングハウジングは、ベアリングに所定のトルク伝達下でせん断するように適合されたせん断ピンによって真空容器110の壁に取り付けられて設けることが可能である。一度トルクしきい値を超過し、せん断ピンのせん断が発生すると、ベアリングは装置の残りの部分に対して単に自由に回転することとなる。
【0179】
しかし、そのような構成は、ターゲット500の運動エネルギーがトルクリミッターの動作後に散逸される速度を制御しまたは制限することができず、真空容器110に許容できない熱的または機械的応力が発生する恐れがある。そのような懸念に対処するために、回転ターゲット500から伝達される運動エネルギーを散逸するための追加的なまたは代替的な手段が望ましい場合がありうる。例えば、ベアリングはそれを取り囲む油のような粘性液体のタンク内に入るフィンを有して提供することができ、その粘性液体の中で、フィンを有するベアリングが回転することができる。そのため運動エネルギーはフィンの油との相互作用を介して散逸されることとなる。運動エネルギーを散逸するための他の可能性のある手法も、当業者が理解するように可能である。
【0180】
しかし、
図10の構成は、回転ターゲットアセンブリーの超過トルク伝達の問題に対する特に効果的かつ効率的な解決手段を提供する。
【0181】
図10の構成の1つの特定の実施形態において、1200rpmで回転し、8kgの主質量を有する直径400mmのターゲットは、約130000Jの運動エネルギーを有しうる。押さえつけた状態で、ベアリングハウジングがターゲットが10回転する間にターゲットの速度まで加速されると仮定すると、約2000Nmのトルクが発生する可能性がある。しかし、
図10の構成において、調整ねじ424bがフランジ411とプレート412との間に約80kgの力を提供するように調整され、フランジが約80mmの直径を有すると仮定し、さらにフランジ411とプレート412との間の摩擦係数が0.25であると仮定すると、ターゲットのエネルギーは全体として20秒から30秒の間で散逸することとなり、10kWのピーク熱出力を発生させ、真空容器110にわずか約8Nmのピークトルクを伝達することとなる。しかし、
図10の構成は、調整ねじ424bを適切に調整することによって、必要とされ得るその他のターゲット速度、質量及び任意の最大トルクに応用可能である。例えば、適切な力は、特定の状況において50kgであってもよい。
【0182】
いくつかの変形が
図10の構成において可能であることに注意すべきである。例えば、いくつかの場合において、調整ねじ424bが設けられておらず、トルクリミッターの不注意なまたは不正確な調整を防ぐことができるように、その代わりに所定の固定された力が印加されることが望ましい場合がありうる。いくつかの実施形態において、50kgまさはそれ未満のクランプ力は十分でありえ、伝達を許容される最大連続トルクまたは最大瞬間トルクは10Nmまたはそれ未満であってもよい。
【0183】
図10の実施形態において、ベアリングハウジング403は一般に円筒形であり、真空容器110の壁の対応する円筒形開口部410に挿入される。しかし、これは本質的ではなく、非円筒形ベアリングハウジングと真空容器の壁との間の接触が、フランジをプレートに対してクランプすることのみを通じて提供されることもできる。しかし、好適には、ベアリング開口部に適合する開口部はエネルギー吸収プレート412に形成され、ベアリングの外側の円筒壁と開口部との間のどのような摩擦接触も、制御された状態で摩擦によって発生したエネルギーを散逸させる。
【0184】
エネルギー吸収プレート412はベアリングハウジングに設けられてもよく、フランジ411は真空容器110の外壁に設けられてもよい。運動エネルギー吸収プレートまたはフランジのいずれかは、フランジまたはエネルギー吸収プレートの少なくとも一部が半径方向に突出する筋状部として形成されうるように、断続的であってもよく、すなわち、半径方向にギャップを有してもよい。しかし、連続的なフランジ及び連続的なエネルギー吸収プレートは、2つの構成要素の間の摩擦接触を最大化し、発生した熱をその中へ散逸させるための、より大きな熱的質量を提供する。フランジ自体は存在する必要はなく、摺動接触は、単にベアリングハウジングの端面と真空容器の外壁の表面との間に設けることもできる。
【0185】
環状エネルギー吸収プレート及びフランジは、ベアリングハウジングまたは真空容器110の壁と一体化して形成されてもよく、また、
図10に示されるように、例えばベアリングハウジング及び/または真空容器の残りの部分とは異なる組成を有する個別の構成要素として提供されてもよい。そのような構成により、エネルギー吸収プレートの特性は、フランジとプレートとの間の静摩擦及び摺動摩擦を制御するように選択され、プレート内の運動エネルギー散逸を最適化することが可能となる点で有利である。
【0186】
[回転X線透過ターゲット]
図2の構成は、入射電子ビームからx線を発生させるための回転X線透過ターゲット500を採用する。従来、X線発生源の回転ターゲットは、タングステンなどの適切な原子番号の大きなターゲット材料の層がメッキされた円板として形成される。透過ターゲットに関しては、電子ビームが一方の側から印加され、X線放射が反対側から得られるものであるが、ターゲットを保持する基板はX線吸収を最小化するために薄く、原子番号がより小さいものであるべきであり、X線放射によって生じた熱を散逸させるための熱伝導性、特定の熱容量及び融点などの幾何学的寸法、機械的特性及び物理的特性を有しなければならない。しかし、そのような必要性は矛盾したものとなる可能性がある。
【0187】
約160keVの電子ビームエネルギーに対して、例えば約10μmのタングステンの薄い層が、ベリリウム、炭素またはアルミニウムの基板上に堆積されてもよい。しかし、電子ビームエネルギーが大きくなるにつれて、電子のターゲットへの侵入が大きくなり、より厚いターゲット材料の層が必要となる。例えば、750keVの電子ビームは、タングステンに200μmを超えて侵入することができる。しかし、界面における接合応力のために、必要な原子番号の小さい基板上にそのようなターゲット材料の薄い膜を堆積することは困難である。さらに、温度が上昇し、高速で回転している状態で連続的に動作させる間、接合応力は増大し、ターゲット材料の損傷または剥離を引き起こす可能性がある。相対的に厚いターゲットは、発生したX線を吸収することになるため、透過モードの選択肢ではない。
【0188】
この問題に対する1つの解決手段は、ハブに対して、環状の適切なターゲット材料を機械的に取り付けることである。この手法は、電子線束が低い場合に適しているが、ターゲットに付与される電子線束が高くなると、ターゲットはより高速に回転しなければならず、ターゲットリングの過剰な熱的応力を避けるためにより大きな直径を有しなければならない。そのような構成が高い電子ビーム線束の熱応力及び高速な回転にさらされると、求心力による円周応力、入射電子ビームによる熱応力及びターゲット円環とハブとの間の引張応力がターゲット材料を破砕させることになる可能性がある。破砕が発生すると、ギャップがターゲットリング内に形成される恐れがあり、そのため電子ビームが低密度なハブを通過してX線放出ウィンドウに照射し、ウィンドウの潜在的な損傷につながる可能性がある。
【0189】
これらの問題を解決するために、
図2の実施形態は、複数のターゲットプレートがハブ上に固定されて、ハブの軸の周りに環状ターゲット領域を設けるターゲットを採用する。ターゲット材料の連続したリングではなく、複数の分離したターゲットプレートを設けることにより、各プレートに導入された局所的な応力がターゲット材料の他の領域に伝わらず、プレートは、1つの弱点においてリング破砕の可能性がない状態で、熱的応力下で局所的に接触し、延びることができる。さらに、ターゲットプレートが非連続であり、ターゲット材料の隣接する領域に影響を与えることなく応力に適合するように個別にひずむことができるため、ターゲット領域に導入された円周応力は、ターゲットプレートの損傷につながらない。
【0190】
図11a、11b、12a及び12bは、
図2の実施形態において使用するのに適した回転X線放出ターゲットを示している。
【0191】
図12aにおいて、環状区画の形態のターゲットプレート560は、ターゲットハブ500の外縁部511に固定されて、実質的に環状のターゲット領域を形成する。
図12aの構成において、ターゲットプレート560は各プレートの相対的に半径方向内側の位置においてハブ500にクランプされ、その位置から相対的に半径方向外側に、ハブ500に対してターゲット領域内に突出するターゲット部565を有する。しかし、ハブ材料は、X線を透過させるのに十分薄く設けられており、プレートは、必要に応じて、ハブの外縁部内に置かれるように構成されることもできる。
【0192】
いくつかの実施形態において、ターゲットプレートはターゲット領域において、750keVでターゲット材料に電子が侵入する深さの200%未満、好適には150%未満、より好適には125%未満の厚さのターゲットプレートを有することができる。そのような厚さを選択することで、ターゲット材料によるX線の減衰を低減させることができる。
【0193】
有利には、
図12aの構成において、ターゲットプレート560は、ターゲット領域のターゲット材料を妨げるギャップ561によって離隔されている。
図12aにおいて、ギャップ561はターゲットプレート560の間で半径方向に延設して設けられているが、それに限らず、半径方向に対して他のある程度の角度で設けることもできる。ギャップもまた、ターゲットディスクが動作回転速度で動作されるときに、ターゲットプレートが入射電子ビームに対して実質的に連続的なターゲット表面を呈するのに十分小さいこと以外、その大きさに特に限定はない。例えば、ターゲット材料への遮蔽は、ターゲット領域内の全円周経路の10%未満、1%未満、0.1%未満、または0.05%未満とすることができる。そのため、円周長が50mmのプレートでは、隣り合うプレート間のギャップの円周方向長さが0.1mmから0.2mmの間であることが好適でありうる。
【0194】
代替的に、プレートは、1つのプレートの縁が隣接するプレートの下に摺動できるように、隣接し、または部分的に重なることができる。そのような状況では、プレートが重なって隣接できるように、プレートを面取りされた円周方向の縁を有するように形成することが有利でありうる。
【0195】
そのような構造がターゲット材料に導入された全応力を効果的に低減し、そのため損傷から保護するように働く一方で、特定の高いビーム線束またはエネルギー下では、プレート560の縁それ自体が損傷しやすくなる可能性がある。具体的には、電子ビームがプレート560の縁の領域を照射すると、発生した熱は両方向ではなく1つの円周方向にしか流れることができないので、熱の散逸の可能性がプレートの中央の照射と比較して大きく低下する。そのため、特定の強い照射下では、そのような縁の領域は損傷を受ける恐れがある。
【0196】
そのような損傷を防ぐために、
図12a及び12bに示された構成が採用され、この構成において、シールド要素570が、これらの領域がビーム経路を横切るときに電子ビームを遮断するように隣接するターゲットプレート560の縁の部分に軸方向に重なるように設けられる。シールド要素570のそれぞれは、電子ビームを遮断するがターゲット材料ほど効率的にX線を発生せず、好適には熱を発生するような材料からなる。例えば、電子ビームを完全にまたは部分的に吸収するように選択された厚さを有する、より小さな原子番号の材料がシールド材料として使用されてもよい。小さな原子番号が、シールド要素570内の競合する不要な二次X線源を発生させることを防ぐため、ベリリウムまたはアルミニウムは、それらの中でも適切な材料である。
【0197】
図12a及び12bの構成において、シールド要素570は、シールド要素560の円周方向の縁の部分の上に延設する指部572を含む。指部572のそれぞれはターゲットプレート560のそれぞれに対して軸方向にずらされ、その縁の上を覆っているので、指部572はそれぞれ、その下のターゲットプレート560における電子ビームの集束平面から集束を外されており、より大きな電子ビームスポットの大きさのために、指部572に付与される熱出力密度はより低くなり、そのためより容易に散逸することとなる。特に、
図12bに示されるように、スペーサー580はターゲットプレート560とシールド要素570との間に設けられて、必要なずれ量を提供する。
【0198】
例えば、30mmの焦点長で、直径1mmのビームを直径10μmのスポットに集束する磁気レンズを使用すると、指部がターゲットプレートから6mm離隔している場合、指部におけるビームの直径は約200μmになる。そのような状況において、指部に付与される単位面積当たりの瞬間的な出力は、ターゲットに付与される出力のわずか約20分の1となり、より容易に散逸しうる。
【0199】
図12a及び12bの構成において、シールド要素570及びプレート560の両方が、ハブ500のハブ外縁部511に形成されたねじ穴512に結合されたクランプねじ590によってハブ500にクランプされ、クランプねじ590はターゲットプレート560及びシールド要素570を通過して軸方向のクランプ力を提供するが、動作時に存在する熱的な力及び動的な力の下で、これらの要素のそれぞれにわずかな膨脹及び収縮も可能にする。クランプねじ590がターゲットプレート560を通過することができるように、穴563がターゲットプレートに設けられ、その一方クランプねじ590がシールド要素570を通過できるように、穴573がシールド要素に設けられる。
【0200】
有利には、各シールド要素570は、突出する指部572に加えて、穴573を有し、丈夫なアンカー点を提供する、相対的に円周方向により幅広く、軸方向により深い取付け部571を有し、これを通してクランプねじ590のシャフト592が通過することができ、クランプねじ590の頭591がクランプ力を印加することができ、電子ビームが通過する際にシールド要素570に発生する熱を吸収するための熱的質量を提供する。
【0201】
図12a及び12bの構成は動作時の瞬間的な熱及び機械的応力の結果としてのターゲット材料への損傷を効果的に防ぐことができるが、さらに、ターゲットの外縁部から離れたターゲット領域に発生した熱を信頼性良く散逸させるのに使用することができる。
図11a及び11bに示されたハブの設計は、これを達成することができる。
【0202】
図11aに示されたハブ500は、ターゲット材料の適合するプレート560のための平坦なビームに面する表面を有する外縁部511を有し、外縁部511の半径方向内側に、より大きな厚さ及び適合する冷却経路515を有する中間環状部513を有し、
図11bの断面図に示されている。中間環状部513は、外縁部511からの熱の吸収及び移送を可能にする。冷却経路515は、枝分かれした形で中間環状部513を通って延設し、中間環状部513から熱を導く冷却流体を搬送する働きをし、この熱は周縁部511から中間環状部513に導かれる。
【0203】
冷却流体が冷却経路515に容易に供給され、冷却経路515から取り除かれることができるように、突出部520が、中央凹部514内から軸方向に突出するようにハブ500に設けられ、この凹部はハブ500の面内に、中間環状部513の半径方向内側に形成される。
図11aにおいて、ハブ500等の突出部520は円板形状の幾何学的形状を有する。突出部520は、ハブの外側円周部表面に、凹部514の内側円周部表面に向かって向けられた供給開口521a及び帰還開口521bを設け、対応する開口515a、515bが形成される。供給パイプ530a及び帰還パイプ530bは、ハブ内の開口521a、521bと、凹部の壁の開口515a及び515bとの間に延設する。
【0204】
凹部の壁の開口515a及び515bは、流体経路515と連通し、経路515内を流れる流体のための供給ポート及び帰還ポートをそれぞれ提供する。ポート521a及び521bはそれぞれ、ハブ520から流れ、ハブ520に戻る流体のための供給ポート及び帰還ポートを提供する。ハブ520の内部には供給ポート521aと連通する供給経路521及び帰還ポート521bと連通する帰還経路522が存在する。突出部520の内部で、同軸に配置された流体経路に終端する供給経路521及び帰還経路522は、シャフト401内の同軸配置された供給経路401c及び帰還経路401dと適合するように配置される。シャフト401は、シャフト突出部401bを介してハブに取り付けられ、シャフト突出部401bは、突出部520及びハブ500を貫通し、シャフト突出部401b内のねじ穴内で終端するねじによって、突出部520とは反対のハブ500の面にクランプされる。もちろん、スプライン及びねじ穴など、ハブ500をシャフト401bに取り付けるその他の方法も、供給経路及び帰還経路のその他の配置とともに、可能である。
【0205】
シャフト401内の中央供給経路401cを通して供給された冷却液は、突出部520内の供給流路521並びに、開口521aを介して、パイプ530a及び開口515a内を順に通過し、次いで冷却液流動経路515内を通る。流動経路515から戻った冷却液は、開口515b、パイプ530b及び開口521bを順に通過し、突出部520内の冷却液帰還経路522に入り、次いでシャフト401の外側同軸流動経路401dに沿って戻る。
【0206】
パイプ530は、本実施形態ではねじによって、凹部514の内部円周表面に固定されたシール要素521a及び521bによって、正しい位置に維持される。パイプは剛性があっても柔軟であってもよく、ハブ500の半径に沿って延設しても、突出部520と流動経路515との間のその他の経路に沿って延設してもよい。
【0207】
したがって、
図11a及び11bの構成によって、ターゲットハブの外縁部を、ハブが回転するシャフトに供給され、シャフトから回収される冷却流体によって効率的に冷却することができるようになる。
【0208】
代替的な構成において、突出部520は、ハブ500の表面内に完全にまたは部分的に埋め込まれてもよい。いくつかの構成において、突出部520が設けられるハブ500の表面は、突出部の埋め込みの結果として平坦である。そのような構成において、パイプ530は省略されてもよく、開口521a及び515a並びに開口515b及び521bは、互いに対して、任意選択的にはそれぞれのシール部によってシールするように設けることもできる。代替的には、開口521a及び521bまたは開口515a及び515bが、ハブ500または突出部510の軸方向表面に位置することができ、角度のある経路または曲線経路を有するパイプによって接続することができる。そのような構成は、完全な、部分的な、または埋め込まれていない突出部を有して提供可能であり、そのような構成では、中央凹部514は省略可能であり、またはその中に完全にまたは部分的に埋め込まれた突出部が合う凹部として提供することができる。そのような変更の全ては、本開示の範囲内にある。
【0209】
もちろん、
図2の装置の様々な構成要素は、別個にまたはともに設けられてもよく、そのような変更は、本明細書に開示された構成要素のそれぞれによって提供される技術的効果を考慮して、当業者に理解されるであろう。利用可能な材料及び技術に従い、また任意の実現されるデバイスの工学的及びその他の必要性に従い、構成要素は本明細書で説明されたような発明の開示、思想及び範囲を逸脱することなく置き換えられ、置換され、取り除かれまたは改良されてもよい。
本明細書の開示には、以下のような発明の開示も含まれる。
パラグラフ1.
X線源のための高電圧発生器であって、前記発生器が、
出力電極と、
第1の電圧増倍器と、
第2の電圧増倍器と、
前記出力電極を少なくとも部分的に取り囲むように配置されたシールド電極と、を含み、
前記第2の電圧増倍器の出力が前記出力電極に電気的に接続され、
前記第1の増倍器の出力が前記第2の電圧増倍器の入力に電気的に接続され、
前記シールド電極が前記第2の電圧増倍器の入力に電気的に接続された、高電圧発生器。
パラグラフ2.
前記シールド電極が前記出力電極を実質的に取り囲む、パラグラフ1に記載の高電圧発生器。
パラグラフ3.
前記シールド電極が前記出力電極を円周方向に取り囲む、パラグラフ1に記載の高電圧発生器。
パラグラフ4.
前記シールド電極が、前記出力電極に取り付けられた電子放出源から電子の放出を可能とする放出開口部を有する、パラグラフ1から3のいずれか一項に記載の高電圧発生器。
パラグラフ5.
第1の端部および第2の端部を有する細長い絶縁ブッシングをさらに含み、
前記第1及び第2の電圧増倍器が前記ブッシング内に配置され、
前記出力電極が前記ブッシングの前記第2の端部に提供され、
前記シールド電極が、前記ブッシングの前記第1及び第2の端部の間で、前記ブッシングの中間領域から延設する、パラグラフ1から4のいずれか一項に記載の高電圧発生器。
パラグラフ6.
第3の電圧増倍器と、
前記シールド電極を少なくとも部分的に取り囲むように配置された二次シールド電極と、をさらに含み、
前記第3の電圧増倍器の出力が前記第1の電圧増倍器の入力に電気的に接続され、
前記二次シールド電極が前記第1の電圧増倍器の入力に電気的に接続された、パラグラフ1から5のいずれか一項に記載の高電圧発生器。
パラグラフ7.
前記発生器が、少なくとも500kV、好適には少なくとも750kVのDC電位差を、前記発生器の入力と、前記出力電極との間に発生するように構成された、パラグラフ1から6のいずれか一項に記載の高電圧発生器。
パラグラフ8.
前記第1及び第2の、さらに任意選択的に第3の電圧増倍器のそれぞれが、少なくとも150kV、好適には200kV、最も好適には300kVをそれぞれの入力と出力との間に発生させるように構成された、パラグラフ1から7のいずれか一項に記載の高電圧発生器。
パラグラフ9.
前記第1及び第2の、さらに任意選択的に第3の電気増倍器のそれぞれが、コッククロフト−ウォルトン型電圧増倍器である、パラグラフ1から8のいずれか一項に記載の高電圧発生器。
パラグラフ10.
前記第1の電圧増倍器の出力と前記第2の電圧増倍器の入力との間に提供された1つまたは複数のサージ抵抗をさらに含み、任意選択的に、1つまたは複数のさらなるサージ抵抗が、前記第3の電圧増倍器の出力と前記第1の電圧増倍器の入力との間に提供される、パラグラフ1から9のいずれか一項に記載の高電圧発生器。
パラグラフ11.
前記第2の電圧増倍器の出力と前記出力電極との間に提供された1つまたは複数のサージ抵抗をさらに含む、パラグラフ1から10のいずれか一項に記載の高電圧発生器。
パラグラフ12.
パラグラフ1から11のいずれか一項に記載の高電圧発生器と、
前記出力電極に取り付けられた電子放出源と、を含む、電子ビーム発生器。
パラグラフ13.
前記電子放出源が、加熱されたフィラメントである、パラグラフ9に記載の電子ビーム発生器。
パラグラフ14.
前記出力電極及び前記シールド電極を取り囲むように配置された真空容器をさらに含む、パラグラフ9または10に記載の電子ビーム発生器。
パラグラフ15.
パラグラフ12から14のいずれか一項に記載の電子ビーム発生器と、
電子ビームによる照射のために配置されたX線放出ターゲットと、を含む、X線銃。
パラグラフ16.
真空容器と、
前記真空容器に設けられた電子ビーム発生器と、を含む電子ビーム装置であって、
前記電子ビーム発生器が、高電圧電極及び電子ビームを発生させるために前記高電圧電極に取り付けられた電子発生源を含み、
前記電子ビーム発生器が、前記電子ビーム発生器内に取り付けられた制御モジュールをさらに含み、
前記電子ビーム装置が、前記真空容器の壁に対して取り付けられた遠隔モジュールをさらに含み、
前記制御モジュールが、光検出器および光放出器のうち一方を含み、
前記遠隔モジュールが、前記光検出器および前記光放出器のうちもう一方を含み、
前記光検出器が、前記光放出器によって放出された光を受け取るように配置され、
前記電子ビーム装置が、前記光検出器および前記光放出器の一方を覆うように、前記光検出器と前記光放出器との間の光学経路に配置された透明導電性シールドをさらに含む、電子ビーム装置。
パラグラフ17.
前記透明シールドが、前記高電圧電極上に配置されて前記高電圧電極に電気的に接続され、前記制御モジュールが前記高電圧電極内に取り付けられた、パラグラフ16に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ18.
前記透明シールドが前記真空容器の壁上に配置され、前記真空容器の壁に電気的に接続された、パラグラフ16に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ19.
導電性ミラーが、前記透明シールドと、前記透明導電性シールドによって覆われていない前記光検出器および前記光放出器のうちの前記他方との間の光学経路に配置された、パラグラフ16から18のいずれか一方に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ20.
前記導電性ミラーが、前記高電圧電極上または前記高電圧電極内に配置され、前記高電圧電極と電気的に接続された、パラグラフ19に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ21.
前記導電性ミラーが、前記真空容器の壁上または前記真空容器の壁の外側に配置され、前記真空容器の壁に電気的に接続された、パラグラフ19に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ22.
前記透明導電性シールドが、前記真空容器の壁または前記高電圧電極の壁のいずれか一方において、真空バリアの一部を形成する、パラグラフ16から21のいずれか一項に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ23.
流動経路が、前記透明導電性シールドの一方の側から前記透明導電性シールドの他方の側まで提供されて、前記一方の側と前記他方の側との間の圧力を均等化する、パラグラフ16から22のいずれか一方に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ24.
前記透明導電性シールドが、その上に設けられた透明導電層を有する透明基板を含む、パラグラフ16から23のいずれか一項に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ25.
前記透明導電層がパターニングされた導電層である、パラグラフ24に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ26.
前記透明導電層が導電フィルムである、パラグラフ24に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ27.
前記透明導電層がインジウムスズ酸化物からなる、パラグラフ25または26に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ28.
前記透明基板がガラスである、パラグラフ24から27のいずれか一項に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ29.
前記遠隔モジュールが、前記真空容器の壁に取り外し可能に取り付けられた、パラグラフ16から28のいずれか一項に記載の電子ビーム装置。
パラグラフ30.
パラグラフ16から29のいずれか一項に記載の電子ビーム装置と、ターゲットアセンブリーと、を含み、前記電子ビーム発生器からの電子ビームが前記ターゲットアセンブリーのX線放出ターゲット部を照射するように構成された、X線銃。
パラグラフ31.
回転するシャフトのための回転真空シールであって、前記シールが、
前記シャフトを収容し、高圧端及び低圧端のそれぞれにおいてターミナル開口部を有する穴と、
前記高圧端と前記低圧端との間の中間位置において、前記穴を取り囲み、前記穴に円周状に接続するチャンバーと、
前記チャンバーから、真空ポンプに接続するのに適したポートまで延設する流動経路と、を含む、回転真空シール。
パラグラフ32.
前記穴が、前記高圧端と前記チャンバーと、前記低圧端と前記チャンバーとのそれぞれの間において、実質的に円筒形である、パラグラフ31に記載の回転真空シール。
パラグラフ33.
前記チャンバーが実質的に円筒形である、パラグラフ31または32に記載の回転真空シール。
パラグラフ34.
前記チャンバーが、前記穴の少なくとも120%の、前記穴の長手方向軸に渡る最小内部寸法を有する、パラグラフ31から33のいずれか一項に記載の回転真空シール。
パラグラフ35.
前記シールが、前記穴内部で前記シャフトを回転可能に支持する回転ベアリングを含み、前記ベアリングが、任意選択的に、前記穴の高圧端及び低圧端のそれぞれにおいて、一対の回転ベアリング、好適にはローラーベアリングとして提供される、パラグラフ31から34のいずれか一項に記載の回転真空シール。
パラグラフ36.
前記穴内に収容された前記シャフトをさらに含む、パラグラフ31から35のいずれか一項に記載の回転真空シール。
パラグラフ37.
前記シャフトが実質的に円筒形である、パラグラフ36に記載の回転真空シール。
パラグラフ38.
前記穴及びシャフトが、前記高圧端で1バールに保たれた圧力及び前記チャンバー内で1ミリバールに保たれた圧力により、前記高圧端と前記チャンバーとの間で標準温度において窒素の質量流量率が1ミリバール・l/s未満となるような寸法である、パラグラフ36または37に記載の回転真空シール。
パラグラフ39.
前記穴及びシャフトが、チャンバー内で1ミリバールに保たれた圧力及び前記低圧端で10−5ミリバールに保たれた圧力により、前記チャンバーと前記低圧端との間で窒素の質量流量率が10−3ミリバール・l/s未満となるような寸法である、パラグラフ36から38のいずれか一項に記載の回転真空シール。
パラグラフ40.
真空ハウジングと、
X線放出ターゲットと、
前記筐体の壁に設けられた、パラグラフ36から38のいずれか一項に記載の回転真空シールと、を含み、
前記X線放出ターゲットが前記シャフト上に取り付けられた、X線源のためのターゲットアセンブリー。
パラグラフ41.
X線放出ターゲットと、
真空ハウジングと、
前記ターゲットを取り付け、前記真空ハウジングの壁を横切るシャフトと、
スピンドルを回転可能に支持するベアリングと、
前記ベアリングを支持し、前記真空ハウジングの前記壁上に取り付けられたベアリングハウジングと、を含み、
前記ベアリングハウジングと前記真空ハウジングとの間のトルクが所定のトルクを超過したときに、前記ベアリングハウジングが前記真空ハウジングに対して回転するように、前記ベアリングハウジングがトルクリミッターによって取り付けられた、X線源のための回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ42.
前記トルクリミッターが、前記真空ハウジングと前記ベアリングハウジングとの間の回転を抑制するように構成され、前記所定のトルクでずれるように構成された部分を含む、パラグラフ41に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ43.
前記トルクリミッターが、前記真空ハウジングと前記ベアリングハウジングとの間に摩擦力を加え、前記真空ハウジングと前記ベアリングハウジングとが所定のトルクで互いに対して摺動することができるように構成された部分を含む、パラグラフ41に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ44.
前記ベアリングハウジング及び前記真空ハウジングのうち一方がフランジを有し、前記ベアリングハウジング及び前記真空ハウジングのうちもう一方がクランピングアセンブリーを有し、
前記クランピングアセンブリーが、前記フランジに摩擦力を加えるように構成された、パラグラフ43に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ45.
前記クランピングアセンブリーが、前記フランジの一方の面に接触するように構成されたエネルギー吸収プレートと、前記エネルギー吸収プレートに対して前記フランジを押し付けるように構成されたクランプとを含む、パラグラフ44に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ46.
前記エネルギー吸収プレートが環状である、パラグラフ45に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ47.
前記クランプが、クランピング部分として回転または摺動するベアリングを含み、前記フランジが前記クランピング部分に対して自由に摺動することができる、パラグラフ45または46に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ48.
前記クランプが、クランプ手段が前記エネルギー吸収プレートに押し付けられるクランプ力を調整するためのバイアススプリングを有して提供される、パラグラフ45から47のいずれか一項に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ49.
前記フランジ及び前記プレートの少なくとも一方が、前記フランジ及び前記プレートの前記少なくとも一方が前記フランジ及び前記プレートの他方に接触する経路に沿って、円周方向に連続的である、パラグラフ45から48のいずれか一項に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ50.
前記クランプが前記エネルギー吸収プレートに取り付けられた、パラグラフ45から49のいずれか一項に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ51.
前記フランジ及び前記エネルギー吸収プレートが、100℃未満の温度で互いに摩耗しないように選択される、パラグラフ45から50のいずれか一項に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ52.
前記クランピングアセンブリーが、前記フランジと前記エネルギー吸収プレートとの間に50kgより大きく、任意選択的に80kgより大きい力を加えるように構成された、パラグラフ45から51のいずれか一項に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ53.
前記所定のトルクが10Nm未満に超過した後に、前記クランピングアセンブリーが、前記ベアリングハウジングと前記真空ハウジングとの間で伝達されるトルクを制限するように構成された、パラグラフ45から52のいずれか一項に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ54.
前記所定のトルクが10Nm未満である、パラグラフ41から53のいずれか一項に記載の回転ターゲットアセンブリー。
パラグラフ55.
電子ビーム発生器と、前記電子ビーム発生器からの電子ビームがX線放出ターゲットのターゲット部分を照射するように構成されたパラグラフ41から54のいずれか一項に記載の回転ターゲットアセンブリーと、を含むX線銃。
パラグラフ56.
ターゲットの回転の所定の軸を画定するサポートハブと、
それぞれが前記ハブ上に支持されたターゲット材料からなる複数のターゲットプレートであって、前記プレートが、回転の前記軸に対して環状ターゲット領域を提供するように、前記ハブに配置された、複数のターゲットプレートと、を含む、電子ビーム照射下でX線放出を発生させるための回転X線放出ターゲット。
パラグラフ57.
前記ターゲット領域の前記ターゲット材料が前記ターゲットプレートの間で遮断されるように、前記ターゲットプレートが、前記ターゲット領域の円周方向において互いに対して離隔されて配置された、パラグラフ56に記載のターゲット。
パラグラフ58.
前記ターゲット材料における前記ターゲット材料の遮断が、前記ターゲット領域内の全円周経路の10%以下、好適には1%以下、さらに好適には0.1%以下である、パラグラフ57に記載のターゲット。
パラグラフ59.
前記ターゲットプレートが、ターゲット材料の実質的に連続なターゲット領域を提供するように、互いに当接しまたは重なる、パラグラフ56に記載のターゲット。
パラグラフ60.
前記ターゲットプレートのそれぞれが、前記プレートの、相対的に半径方向内側位置において、前記ハブに固定され、前記ハブの、相対的に半径方向外側に突出する、パラグラフ56から59のいずれか一項に記載のターゲット。
パラグラフ61.
前記ターゲットプレートのそれぞれが、環状区画の形態である、パラグラフ56から60のいずれか一項に記載のターゲット。
パラグラフ62.
前記ハブに支持され、前記ターゲットプレートが当接しもしくは重なる位置における前記ターゲット領域の部分、または前記ターゲット材料が存在しない位置における前記ターゲット領域の部分上を覆うように構成された、複数のシールド要素をさらに含む、パラグラフ56から61のいずれか一項に記載のターゲット。
パラグラフ63.
前記シールド要素が、前記ターゲットプレートの円周方向縁部を覆うように構成された、パラグラフ62に記載のターゲット。
パラグラフ64.
前記シールド要素が、前記ターゲット領域内の位置において、前記ターゲットプレートから軸方向に離隔された、パラグラフ63に記載のターゲット。
パラグラフ65.
前記シールド要素が、前記ターゲット材料よりも主に原子番号が小さい原子またはイオンを有する材料から形成された、パラグラフ62から64のいずれか一項に記載のターゲット。
パラグラフ66.
前記シールド要素が、ベリリウム合金またはアルミニウム合金である、パラグラフ65に記載のターゲット。
パラグラフ67.
前記ターゲット材料が、タングステンまたはタングステン合金から形成された、パラグラフ56から66のいずれか一項に記載のターゲット。
パラグラフ68.
前記ターゲットプレートが、前記ターゲット領域において、750keVにおける前記ターゲット材料内への電子侵入深さの200%未満、好適には150%未満、より好適には125%未満の厚さを有する、パラグラフ56から67のいずれか一項に記載のターゲット。
パラグラフ69.
前記ハブが、前記ハブを回転の前記軸に対する回転のためのベアリングに取り付けるための取付け手段を有する、パラグラフ56から68のいずれか一項に記載のターゲット。
パラグラフ70.
前記ハブが、相対的に厚さが小さい第1の半径方向内部領域と、相対的に厚さが大きい第2の半径方向外部領域とを有する、パラグラフ56から69のいずれか一項に記載のターゲット。
パラグラフ71.
前記第2の領域が、冷却流体のための複数の半径方向に延設する経路を有して提供され、
前記相対的に小さな厚さの前記第1の領域が、前記ハブの軸面において凹部を画定し、
前記複数の経路が、前記凹部の円周壁部に設けられた対応するポート内で終端する、パラグラフ70に記載のターゲット。
パラグラフ72.
前記複数の経路が、前記凹部の壁部から延設し、前記凹部の壁部に戻る少なくとも1つの連続的な流動経路を画定するように接続された、パラグラフ71に記載のターゲット。
パラグラフ73.
前記ハブが、前記凹部内に位置する冷却水分配部を含み、前記冷却液分配部が、
冷却液流入ポート及び冷却液流出ポートと、
前記流入ポートに供給するための冷却液のための、少なくとも1つの前記連続な流動経路への供給経路と、
少なくとも1つの前記連続な流動経路から戻った冷却液のための、少なくとも1つの流出ポートへの帰還経路と、を提供する、パラグラフ72に記載のターゲット。
パラグラフ74.
前記冷却液分配部が、前記凹部内に設けられた中央突出部を含み、前記中央突出部が、少なくとも1つの前記流入ポート及び少なくとも1つの前記流出ポート並びに、任意選択的に、前記突出部から、前記凹部の円周壁部に設けられた前記ポートまで延設する複数のパイプを有し、前記中央突出部が、冷却液を、任意選択的に前記複数のパイプを介して、前記流入ポートから、前記少なくとも1つの連続な流動経路へ、そして前記少なくとも1つの連続な流動経路から前記流出ポートへ分配するように構成された内部経路を有する、パラグラフ73に記載のターゲット。
パラグラフ75.
電子ビーム発生器と、前記電子ビーム発生器からの電子が、前記ターゲットが回転する間に前記環状ターゲット領域の一部を照射するように回転可能に配置されたパラグラフ56から74のいずれか一項に記載のX線放出ターゲットと、を含む、X線銃。
パラグラフ76.
ターゲットに電子ビームを放出するための高電圧発生器に電気的に接続されたカソードと、
前記カソードを取り囲むように配置され、前記カソードを前記ターゲットに接続する仮想線の方向に開口部を有するシールド電極と、を含み、
前記シールド電極が、ターゲットに対して、前記カソードと異なる電位差に維持された、X線銃。
パラグラフ77.
前記カソード及び前記シールド電極を収容するための容器をさらに含み、
前記シールド電極が前記カソードと前記容器との間に配置された、パラグラフ76に記載のX線源。
パラグラフ78.
前記シールド電極が複数の電極要素を有し、前記電極要素が開口部を有し、前記カソードを取り囲むように配置された、パラグラフ77に記載のX線源。
パラグラフ79.
前記複数の電極要素のそれぞれが、前記電極要素のそれぞれと前記ターゲットとの間の相対的な電位が前記電極要素のそれぞれが前記容器に近接するにつれ低くなるように異なる電圧に維持された、パラグラフ78に記載のX線源。
パラグラフ80.
前記カソードの周囲に配置されたウェーネルト電極をさらに含み、
前記ウェーネルト電極と前記ターゲットとの間の電位差が、前記カソードと前記ターゲットとの間の電位差よりも大きい、パラグラフ76に記載のX線源。
パラグラフ81.
前記カソードと前記ターゲットとの間に電位差を提供するように構成されたパラグラフ1から14のいずれか一項に記載の高電圧発生器を含む、パラグラフ76から80のいずれか一項に記載のX線源。
パラグラフ82.
前記シールド電極が、前記アパーチャに対して異なる位置に存在する第2のアパーチャを有する、パラグラフ76から81のいずれか一項に記載のX線源。