特許第6266073号(P6266073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266073活性エネルギー線硬化型インク組成物、このインク組成物を用いた積層体、基材上に像を形成する像形成方法及び印刷物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6266073
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インク組成物、このインク組成物を用いた積層体、基材上に像を形成する像形成方法及び印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20180115BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20180115BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180115BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20180115BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   C09D11/30
   B41M5/00 120
   B41J2/01 501
   B05D1/26 Z
   B05D3/06 Z
【請求項の数】10
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-211867(P2016-211867)
(22)【出願日】2016年10月28日
【審査請求日】2017年7月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】宇▲高▼ 公淳
(72)【発明者】
【氏名】森山 岳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 保真
(72)【発明者】
【氏名】犬丸 雅基
(72)【発明者】
【氏名】古高 敏男
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−001903(JP,A)
【文献】 特開2012−233111(JP,A)
【文献】 特開2017−141381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00− 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線重合性モノマーとして、
モノマーA):下記一般式(1)で表される単官能モノマーと、
モノマーB):下記一般式(2)で表される多官能モノマーと、を含有し、
前記モノマーA)の合計含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中40質量%以上であり、
前記モノマーB)の合計含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中20質量%以下であり、
前記モノマーA)には、分子構造が異なる2種の単官能モノマーであるモノマーA1)とモノマーA2)とを少なくとも含み、前記モノマーA1)のガラス転移点が、前記モノマーA2)のガラス転移点よりも小さく、
前記モノマーA1)と前記モノマーA2)との含有量比が、モノマーA1)/モノマーA2)の質量比で1.3以上16以下である活性エネルギー線硬化型インク組成物。
活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【化1】
(式中、Rヘテロ原子が酸素のみからなる5員環又は6員環の飽和複素環構造を有する官能基である。Rは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
−CH=CR−COOR−O−CH=CH−R ・・・(2)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2以上20以下の2価の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上11以下の1価の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記モノマーA1)のガラス転移点が、前記モノマーA2)のガラス転移点よりも25℃以上小さい請求項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項3】
前記モノマーA1)のガラス転移点が−5℃以下のモノマーであって、
前記モノマーA2)のガラス転移点が25℃以上のモノマーである請求項に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項4】
前記モノマーA1)が、テトラヒドロフルフリルアクリレート、下記一般式(3)で表されるモノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種以上のモノマーであり、
【化2】
(式中、R1−1及びR1−2は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖、分岐鎖もしくは環状の炭素数1以上18以下のアルキル基又はフェニル基であり、R1−1とR1−2とは結合して環を形成していても良い。Rは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を示す。)
前記モノマーA2)が、下記一般式(4)で表されるモノマーである請求項1から3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【化3】
(式中、R1−1及びR1−2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Rは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
【請求項5】
更に、アルキルシクロアルキルアクリレートを含有する請求項1からのいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項6】
インクジェット用インクとして用いられる請求項1からのいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を、厚さ80μmの塩化ビニルシート上に厚さ10μmの硬化膜として形成し、この硬化膜が形成された硬化膜形成基材を、ダンベル状6号形(JIS K6251−5)の試験片として、JIS K7161に基づき25℃で引張速度10mm/分で引張試験した際に、前記硬化膜の割れが生じる硬化膜破断点伸び率が50%以上である、活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【請求項8】
基材上に、請求項1からのいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化膜であるインク硬化膜層が形成された積層体。
【請求項9】
請求項1からのいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を使用して基材上に画像及び/又は凹凸像を形成する像形成方法。
【請求項10】
請求項1からのいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を使用して基材上に画像及び/又は凹凸像を形成する印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にインクジェット用インクとして用いられる活性エネルギー線硬化型インク組成物、このインク組成物を印刷した積層体、このインク組成物を使用して基材上に画像及び/又は凹凸像を形成する像形成方法、及びこのインク組成物を使用する印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、紫外線、電子線その他の活性エネルギー線によって硬化する活性エネルギー線硬化型インク組成物の開発が進められている。活性エネルギー線硬化型インク組成物は速乾性があるため、プラスチック、ガラス、コート紙等、インクを吸収しない又は殆ど吸収しない基材に印字する場合であっても、インクの滲みを防止できる。活性エネルギー線硬化型インク組成物は、活性エネルギー線重合性モノマー、色材その他の添加剤等から構成されている。
【0003】
例えば、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含み、揮発性化合物を殆ど含まない活性エネルギー線硬化型インク組成物が特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1によれば、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(CTFA)を含む活性エネルギー線硬化型インク組成物は、低い粘度を有し、低臭である。更に、その活性エネルギー線硬化型インク組成物により形成された硬化膜の硬化速度及びフレキシブル性(延伸性)に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2010−540751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
延伸性を有する硬化膜であっても、硬化膜の表面にタックがある場合、硬化膜の表面が塵、埃、泥、すす、ピッチ等が付着しやすくなり、印刷物の意匠性の観点から好ましくなく、硬化膜が他の基材に接触することによって硬化膜が他の基材に付着する問題が生じる。尚、本明細書においてタックとは、硬化膜の表面を指で触った際に粘着性があることを意味する。このように硬化膜における延伸性とタックは、トレードオフの関係にある。
【0007】
特許文献1によれば、特許文献1の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、活性エネルギー線硬化型インク組成物により形成された硬化膜の硬化速度及びフレキシブル性(延伸性)を有するとされているが、特許文献1においては、硬化膜における延伸性とタックの軽減との両立については、何ら検討はされていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化型インク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、特定構造を有する単官能モノマー及び多官能モノマーを含有した活性エネルギー線硬化型インク組成物であって、各活性エネルギー線重合性モノマーの含有量の割合を調整した活性エネルギー線硬化型インク組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
【0010】
(1)活性エネルギー線重合性モノマーとして、
モノマーA):下記一般式(1)で表される単官能モノマーと、
モノマーB):下記一般式(2)で表される多官能モノマーと、を含有し、
前記モノマーA)の合計含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中40質量%以上であり、
前記モノマーB)の合計含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中20質量%以下である活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【化1】
(式中、Rは含酸素複素環構造を有する官能基である。Rは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
−CH=CR−COOR−O−CH=CH−R ・・・(2)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2以上20以下の2価の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上11以下の1価の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
【0011】
(2)前記モノマーA)におけるRの複素環構造が、飽和複素環構造である(1)に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0012】
(3)前記モノマーA)には、分子構造が異なる2種の単官能モノマーであるモノマーA1)とモノマーA2)とを少なくとも含み、前記モノマーA1)のガラス転移点が、前記モノマーA2)のガラス転移点よりも小さい(1)又は(2)に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0013】
(4)前記モノマーA1)のガラス転移点が、前記モノマーA2)のガラス転移点よりも25℃以上小さい(3)に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0014】
(5)前記モノマーA1)のガラス転移点が−5℃以下のモノマーであって、
前記モノマーA2)のガラス転移点が25℃以上のモノマーである(4)に記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0015】
(6) 前記モノマーA1)が、テトラヒドロフルフリルアクリレート、下記一般式(3)で表されるモノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種以上のモノマーであり、
【化2】
(式中、R1−1及びR1−2は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖、分岐鎖もしくは環状の炭素数1以上18以下のアルキル基又はフェニル基であり、R1−1とR1−2とは結合して環を形成していても良い。Rは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を示す。)
前記モノマーA2)が、下記一般式(4)で表されるモノマーである請求項3から5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【化3】
(式中、R1−1及びR1−2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Rは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
【0016】
(7)前記モノマーA1)と前記モノマーA2)との含有量比が、モノマーA1)/モノマーA2)の質量比で1.3以上16以下である(3)から(6)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0017】
(8)更に、アルキルシクロアルキルアクリレートを含有する(1)から(7)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0018】
(9)インクジェット用インクとして用いられる(1)から(8)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0019】
(10)(1)から(9)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を、厚さ80μmの塩化ビニルシート上に厚さ10μmの硬化膜として形成し、この硬化膜が形成された硬化膜形成基材を、ダンベル状6号形(JIS K6251−5)の試験片として、JIS K7161に基づき25℃で引張速度10mm/分で引張試験した際に、前記硬化膜の割れが生じる硬化膜破断点伸び率が50%以上である、活性エネルギー線硬化型インク組成物。
【0020】
(11)基材上に、(1)から(10)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化膜であるインク硬化膜層が形成された積層体。
【0021】
(12)(1)から(10)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を使用して基材上に画像及び/又は凹凸像を形成する像形成方法。
【0022】
(13)(1)から(10)のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インク組成物を使用して基材上に画像及び/又は凹凸像を形成する印刷物の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化型インク組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0025】
<活性エネルギー線硬化型インク組成物>
本発明の一実施形態の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、下記一般式(1)で表される単官能モノマーであるモノマーA)と、下記一般式(2)で表される多官能モノマーであるモノマーB)と、を含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物である。尚、本明細書において、「モノマーA)等のモノマーを含有する」とは、分子構造が同一の単独のモノマーA)等のモノマーを含有することのみならず、分子構造が異なる2種以上のモノマーA)等のモノマーを含有することも含まれる概念である。
【0026】
【化4】
(式中、Rは含酸素複素環構造を有する官能基である。Rは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
【0027】
−CH=CR−COOR−O−CH=CH−R ・・・(2)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2以上20以下の2価の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上11以下の1価の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
【0028】
一般式(1)で表されるモノマーA)と、一般式(2)で表されるモノマーB)は粘度が低い。そのため、一般式(1)で表されるモノマーA)と、一般式(2)で表されるモノマーB)と、を含有した活性エネルギー線硬化型インク組成物は、室温であっても粘性が低く、吐出安定性の高い活性エネルギー線硬化型インク組成物である。
【0029】
又、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、一般式(1)で表されるモノマーA)の合計含有量が40質量%以上である。更に、一般式(2)で表されるモノマーB)の合計含有量が20質量%以下である。モノマーA)とモノマーB)との含有量とを最適化することにより、硬化膜に硬化性と延伸性とを付与するとともに、硬化膜の表面のタックを軽減することができる。よって、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化型インク組成物である。
【0030】
又、一般式(1)で表される単官能モノマー及び一般式(2)で表される多官能モノマーは臭気が小さいため、これらのモノマーを含有した活性エネルギー線硬化型インク組成物の臭気が小さい。尚、本明細書において活性エネルギー線硬化型インク組成物の臭気が小さいとは、活性エネルギー線硬化型インク組成物自体の臭いの低さを意味するものであり、臭気が小さい活性エネルギー線硬化型インク組成物であれば、活性エネルギー線硬化型インク組成物を取り扱う際、活性エネルギー線硬化型インク組成物を使用して基材上に像を形成する際、又は活性エネルギー線硬化型インク組成物を使用して印刷物を製造する際に、作業員が臭気を気にすることなく作業に集中することが可能となり、又、鼻が敏感な作業者であってもマスク無しで作業することが可能となるというメリットがある。
【0031】
低臭且つ低粘度であって、活性エネルギー線硬化型インク組成物に必要な物性を全て満たす活性エネルギー線硬化型インク組成物の開発は必ずしも容易なものではない。例えば、活性エネルギー線重合性モノマーが高沸点の活性エネルギー線重合性モノマーであれば、室温環境下で気化されることが殆どないため、臭気の小さい活性エネルギー線重合性モノマーとなりやすい傾向がある。しかしながら、高沸点の活性エネルギー線重合性モノマーは、分子量が高くなることにより活性エネルギー線重合性モノマー同士の分子間力が増大し、高沸点となるものが多いため、活性エネルギー線重合性モノマーの粘度が高くなる傾向がある。そのため、そのような活性エネルギー線重合性モノマーを含有した活性エネルギー線硬化型インク組成物自体も粘度が高くなり、インクジェットとして吐出することは困難となる。
【0032】
又、臭気が小さく、粘度が低い活性エネルギー線重合性モノマーであっても、ガラス転移点(Tg)が極端に低く、活性エネルギー線重合性モノマーによって形成される硬化膜の硬化性が著しく劣る場合もある。以下、活性エネルギー線重合性モノマーによって形成される硬化膜の硬化性を「活性エネルギー線硬化型インク組成物」が備える特性をして「活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化性」又は「インク組成物の硬化性」と表記することがある。
【0033】
一般式(1)で表される単官能モノマーであるモノマーA)と、一般式(2)で表される多官能モノマーであるモノマーB)と、を含有し、各活性エネルギー線重合性モノマーの含有量の割合を調整した本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物であれば、室温であっても粘性が低く、吐出安定性の高い活性エネルギー線硬化型インク組成物であって、インクジェット用インクとして用いられるインク組成物に必要な物性を満たすことのできる活性エネルギー線硬化型インク組成物とすることができる。
【0034】
尚、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物のJIS Z 8803:2001に基づいて測定される25℃の測定温度による粘度は、20mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることがより好ましく、8mPa・s以下であることが更に好ましい。粘度は、20mPa・s以下であることにより、インクジェットにおける吐出安定性が向上する。
【0035】
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物に含有される活性エネルギー線重合性モノマーについて説明する。
(単官能モノマー)
[モノマーA):一般式(1)で表される単官能モノマー]
モノマーA)とは、下記一般式(1)で表される単官能モノマーである。モノマーA)が含有されることにより、活性エネルギー線による硬化に影響を与え、硬化速度が速くなり、インク組成物の硬化性を向上させることができる。又、モノマーA)と後述するモノマーB)との含有量の割合を調整することにより、延伸性を有する硬化膜を形成することができるので、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物により形成される硬化膜は、延伸性と硬化性とを併せ持つ硬化膜となる。更に、下記一般式(1)で表される単官能モノマーは、低臭であるため、モノマーA)が活性エネルギー線硬化型インク組成物に含有されることに起因して、臭気の大きい活性エネルギー線硬化型インク組成物とはならない。更に、下記一般式(1)で表される単官能モノマーは低粘度であるため、モノマーA)が含有されることに起因して、活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘性が高くなることはない。このため、モノマーA)が含有された活性エネルギー線硬化型インク組成物は、インクジェットにおいて吐出安定性が極めて高く、インクジェット用インクとして好ましい活性エネルギー線硬化型インク組成物とすることができる。
【0036】
【化5】
(式中、Rは含酸素複素環構造を有する官能基である。Rは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
【0037】
尚、本明細書において、含酸素複素環構造とは、少なくとも酸素元素と炭素元素により構成される環式の分子構造を意味する。含酸素複素環構造を有する官能基とは、官能基の分子構造の一部に含酸素複素環構造が含まれている官能基を意味するものである。Rは含酸素複素環構造を有する官能基であれば、例えば含酸素複素環構造に枝分かれして他の置換基等を有する構造(例えば、下記一般式(3)のR1−1又はR1−2、下記一般式(4)のR1−1、R1−2又はR等の置換基を有する構造)であっても良い。
【0038】
の炭素数1以上5以下のアルキレン基とは、炭素数1以上5以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていても良いアルキレン基を意味するものである。
【0039】
の水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基とは、炭素数1以上4以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていても良いアルキレン基を意味するものである。
【0040】
は含酸素複素環構造を有する官能基であるが、Rの含酸素複素環構造が、飽和複素環構造であることが好ましい。
【0041】
は炭素数1以上5以下のアルキレン基であるが、Rは炭素数1以上3以下の直鎖状又は分枝状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1のメチレン基であることがより好ましい。
【0042】
は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であるが、Rは水素原子又は炭素数1以上3以下の直鎖状又は分枝状のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数が1のメチル基であることがより好ましい。
【0043】
又、モノマーA)の合計含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中40質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。モノマーA)の合計含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中40質量%未満であると、活性エネルギー線硬化型インク組成物の臭気を小さくし、且つ延伸性を有する硬化膜を形成することが困難となる。
【0044】
又、モノマーA)の合計含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが最も好ましい。モノマーA)の合計含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中90質量%以下であることにより、活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化性を向上させるとともに、硬化膜の表面のタックを軽減することができる。
【0045】
モノマーA)の例として、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(CTFA)、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、(2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル))メチル(メタ)アクリレート等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。モノマーA)の中でも低粘度であり、臭気が極めて少ないという観点から、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートが好ましく、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)が最も好ましい。
【0046】
又、モノマーA)は、一般式(1)で表される単官能モノマーであれば、分子構造が同一の単独のモノマーのみであっても良いが、分子構造が異なる少なくとも2種の単官能モノマーであるモノマーA1)とモノマーA2)とを含み、モノマーA1)のガラス転移点が、モノマーA2)のガラス転移点よりも小さいことが好ましい。分子構造が異なる少なくとも2種のガラス転移点の異なる単官能モノマーを含むことにより両立が困難な硬化膜の延伸性とタックの軽減とをより好ましい範囲に調整することができる。以後、分子構造が異なる2種のモノマーA)を含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物において、ガラス転移点が低い方のモノマーA)をモノマーA1)と、ガラス転移点が高い方のモノマーA)をモノマーA2)と表記することがある。
【0047】
硬化膜の延伸性とタックの軽減とをより好ましい範囲に調整する方法として、例えば、異なるガラス転移点を有する2種以上のモノマーA)を使用する方法を挙げることができる。例えば、ガラス転移点の低いモノマーA1)を所定量含有させることにより、硬化膜の延伸性を向上させ、且つ、ガラス転移点の高いモノマーA2)を所定量含有させることにより、硬化膜の硬化性を向上させることができる。異なるガラス転移点を有する2種以上のモノマーA)を含有させることにより、本来トレードオフの関係の硬化膜の延伸性とタックの軽減とを両立させることができる。硬化膜の延伸性とタックの軽減とを両立させる観点から、モノマーA1)のガラス転移点が、モノマーA2)のガラス転移点よりも25℃以上小さいことが好ましく、30℃以上小さいことがより好ましく、35℃以上小さいことが最も好ましい。
【0048】
ガラス転移点の異なるモノマーA1)及び、モノマーA2)は、上記に挙げたモノマーA)の中からガラス転移点の差が所定の差となるように選択することが好ましい。
【0049】
ガラス転移点の異なるモノマーA1)及びモノマーA2)の選択の一例として、モノマーA1)のガラス転移点が−5℃以下のモノマーであって、モノマーA2)のガラス転移点が25℃以上のモノマーであるモノマーA1)及びモノマーA2)を挙げることができる。モノマーA1)とモノマーA2)のガラス転移点をこの範囲にすることにより、より効果的に硬化膜の延伸性とタックの軽減とを好ましい範囲に調整することができる。尚、モノマーA1)のガラス転移点が−10℃以下のモノマーであることがより好ましい。
【0050】
モノマーA1)の例として、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、下記一般式(3)で表されるモノマー等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。低粘度であり、臭気が極めて少ないという観点から、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)が最も好ましい。
【0051】
【化6】
(式中、R1−1及びR1−2は、それぞれ独立して、水素原子、直鎖、分岐鎖もしくは環状の炭素数1以上18以下のアルキル基又はフェニル基であり、R1−1とR1−2とは結合して環を形成していても良い。Rは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上5以下のアルキル基を示す。)
【0052】
は炭素数1以上5以下のアルキレン基とは、炭素数1以上5以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていても良いアルキレン基を意味するものである。Rは炭素数1以上5以下のアルキル基とは、炭素数1以上5以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていても良いアルキル基を意味するものである。
【0053】
モノマーA2)の例として、下記一般式(4)で表されるモノマーを挙げることができる。尚、モノマーA2)は、下記一般式(4)で表されるモノマーに限定されるものではない。
【0054】
【化7】
(式中、R1−1及びR1−2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Rは炭素数1以上5以下のアルキレン基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
【0055】
炭素数1以上5以下のアルキレン基とは、炭素数1以上5以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていても良いアルキレン基を意味するものである。
【0056】
水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基とは、炭素数1以上4以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていても良いアルキレン基を意味するものである。
【0057】
トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(CTFA)等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。低粘度であり、臭気が極めて少ないという観点から、トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(CTFA)が最も好ましい。
【0058】
一般式(4)で表されるモノマーを合成する方法は特に限定されず、例えば、特開2015−189734や特開2016−056153に記載されているようなモノヒドロキシ環式アセタールと(メタ)アクリレートとのエステル交換反応によって合成することができる。モノヒドロキシ環式アセタールは、上記特許文献に記載されているトリメチロールプロパン環式ホルマールには限定されず、例えば特開平2−019373の11頁目に例示して記載されているような各種のモノヒドロキシ環式アセタールを使用することができる。
【0059】
モノマーA1)とモノマーA2)との含有量比は、モノマーA1)/モノマーA2)の質量比で1.3以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.8以上であることが更に好ましい。モノマーA1)とモノマーA2)との含有量比をモノマーA1)/モノマーA2)の質量比で1.3以上にすることにより、より効果的に硬化膜の延伸性とタックの軽減とを好ましい範囲に調整することができる。
【0060】
モノマーA1)とモノマーA2)との含有量比は、モノマーA1)/モノマーA2)の質量比で16以下であることが好ましく、14以下であることがより好ましく、11以下であることが更に好ましい。モノマーA1)とモノマーA2)との含有量比をモノマーA1)/モノマーA2)の質量比で16以下にすることにより、より効果的に硬化膜の延伸性とタックの軽減とを好ましい範囲に調整することができる。
【0061】
[モノマーA)以外の単官能モノマー]
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物には、モノマーA)以外の単官能モノマーが含有されていても良い。モノマーA)以外の単官能モノマーとしては、従来公知の単官能モノマーであれば用いることができるが、例えば、アルキルシクロアルキルアクリレートである4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、クレゾールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、パラクミルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、1−アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3−3−5−トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルカプロラクタム、イミドアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、及び、これらのアクリレートにアルコキシ変性、及びカプロラクトン変性等の各種変性を有するもの、を挙げることができる。モノマーA)以外の単官能モノマーは、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物では必須ではないが、モノマーA)以外の単官能モノマーを用いる場合には、低臭であり、粘度が低いという観点から、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート等のアルキルシクロアルキルアクリレートを用いることが好ましい。
【0062】
又、上述したモノマーA)以外の単官能モノマー(アルキルシクロアルキルアクリレートである4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、クレゾールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、パラクミルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、1−アダマンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、3−3−5−トリメチルシクロヘキサノールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルカプロラクタム、イミドアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、及び、これらのアクリレートにアルコキシ変性、及びカプロラクトン変性等の各種変性を有するもの(以下、単に「上述したモノマーA)以外の単官能モノマー」と表記する。))は、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物においては必須ではないが、上述したモノマーA)以外の単官能モノマーが本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物に含有される場合には、上述したモノマーA)以外の単官能モノマーの合計含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。又、上述したモノマーA)以外の単官能モノマーの合計含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中35質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0063】
単官能モノマーの全量における、モノマーA)及び/又は上述したモノマーA)以外の単官能モノマーの合計含有量は、単官能モノマーの含有量中90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。
【0064】
[単官能モノマーの含有量]
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれる単官能モノマーの合計含有量が活性エネルギー線重合性モノマーの全量中60質量%以上であり、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれる単官能モノマーの合計含有量が60質量%以上であることにより、より効果的に硬化膜の延伸性とタックの軽減とを好ましい範囲に調整することができる。
【0065】
又、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれる単官能モノマーの合計含有量が活性エネルギー線重合性モノマーの全量中95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0066】
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、活性エネルギー線重合性モノマーの全量における、モノマーA)を含む単官能モノマーの合計含有量の割合を調整することにより、硬化膜に延伸性を付与し、可撓性を有する基材を被記録媒体とした場合であっても、硬化膜の割れを抑制することができる。
【0067】
[モノマーB):一般式(2)で表される多官能モノマー]
モノマーB)とは、下記一般式(2)で表される多官能モノマーである。モノマーB)が含有されることにより、活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化性を向上させるとともに、硬化膜の表面のタックを軽減することができる。又、モノマーA)とモノマーB)との含有量の割合を調整することにより、延伸性を有する硬化膜を形成することができるので、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物により形成される硬化膜は、延伸性と硬化性とを併せ持つ硬化膜となる。又、含有量の割合を調整下記一般式(2)で表される多官能モノマーは、低臭であるため、モノマーB)が活性エネルギー線硬化型インク組成物に含有されることに起因して、臭気の大きい活性エネルギー線硬化型インク組成物とはならない。更に、下記一般式(2)で表される単官能モノマーは低粘度であるため、モノマーB)が含有されることに起因して、活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘性が高くなることはない。このため、モノマーB)が含有された活性エネルギー線硬化型インク組成物は、インクジェット用インクとして好ましい活性エネルギー線硬化型インク組成物とすることができる。
【0068】
−CH=CR−COOR−O−CH=CH−R ・・・(2)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数2以上20以下の2価の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上11以下の1価の有機残基を示し、Rは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を示す。)
【0069】
一般式(2)において、Rで表される2価の有機残基としては、炭素数2以上20以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていても良いアルキレン基、構造中にエーテル結合及びエステル結合の少なくとも一方による酸素原子を有する置換されていても良い炭素数2以上20以下のアルキレン基、炭素数6以上の置換されていても良い2価の芳香族基、炭素数11以下の置換されていても良い2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2以上6以下のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2以上のアルキレン基、又は炭素数9以下のアルキレン基が好適に用いられる。
【0070】
一般式(2)において、Rで表される炭素数1以上11以下の1価の有機残基としては、炭素数1以上11以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていても良いアルキル基、炭素数6以上の置換されていても良い芳香族基、炭素数11以下の置換されていても良い芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1以上2以下のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6以上の芳香族基、又は炭素数8以下の芳香族基が好適に用いられる。
【0071】
一般式(2)において、各有機残基が置換されていても良い基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基、アルコキシ基が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0072】
一般式(2)において、Rで表される水素原子又は炭素数1以上4以下の1価の有機残基としては、水素原子又は炭素数1以上4以下の直鎖状、分枝状又は環状の置換されていても良いアルキル基が好適である。これらの中でも、水素原子が好適に用いられる。
【0073】
一般式(2)で表されるモノマーB)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0074】
上記したものの中でも、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0075】
これらの中でも、低粘度で、引火点が高く、且つ、活性エネルギー線重合性モノマーの硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルが好ましく、更に、臭気が小さく、且つ、反応性及び密着性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルがより好ましい。
【0076】
(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。モノマーB)は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0077】
又、モノマーB)の含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中20質量%以下であり、活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中17質量%以下であることが好ましく、活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中15質量%以下であることが最も好ましい。モノマーB)の含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中20質量%以下であることにより、硬化膜に延伸性を付与することができるため、可撓性を有する基材を被記録媒体とした場合であっても、硬化膜の割れを抑制することができる。又、モノマーB)の含有量が活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中1質量%以上であることが好ましく、活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中3質量%以上であることがより好ましく、活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中5質量%以上であることが最も好ましい。
【0078】
[モノマーB)以外の多官能モノマー]
又、モノマーB)に加え、本発明の目的を達成できる範囲で、更に別の多官能モノマー(一般式(2)で表される多官能モノマー以外の多官能モノマー)を適宜加えても良い。
【0079】
例えば、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、アルコキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリントリアクリレート、及びこれらの変性数違い、変性種違い、構造違いの(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0080】
又、一般式(2)で表される多官能モノマー以外の多官能モノマーとしては、インクジェットにおける吐出安定性が向上できる程度に活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度を維持できる多官能モノマー及び/又は、活性エネルギー線硬化型インク組成物の臭気が大きくならない程度の多官能モノマーを用いることが好ましい。活性エネルギー線硬化型インク組成物の粘度が高くなること及び/又は臭気が大きくなることを抑制することができる。活性エネルギー線重合性モノマーの全量中10質量%以下含有されていることが好ましく、5質量%以下含有されていることがより好ましく、1質量%以下含有されていることが更に好ましい。
【0081】
なお、本発明においては、反応性を有しないポリマー成分を更に含有していても良い。このようなポリマー成分としては、アクリル樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂などが例示できる。
【0082】
[活性エネルギー線重合開始剤]
活性エネルギー線硬化型インク組成物は、必要に応じて活性エネルギー線重合開始剤を含有しても良い。活性エネルギー線は、ラジカル、カチオン、アニオン等の重合反応の契機となり得るエネルギー線であれば、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波のほか、電子線、プロトン線、中性子線等のいずれであっても良いが、硬化速度、照射装置の入手容易さ、価格等の観点において、紫外線照射による硬化が好ましい。活性エネルギー線重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射により活性エネルギー線硬化型インク組成物中のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の重合反応を促進するものであれば特に限定されず、従来公知の活性エネルギー線重合開始剤を用いることができる。活性エネルギー線重合開始剤の具体例として、例えば、チオキサントン等を含む芳香族ケトン類、α−アミノアルキルフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、アシルフォスフィンオキサイド類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0083】
活性エネルギー線重合開始剤の量は、活性エネルギー線重合性モノマーの重合反応を適切に開始できる量であれば良く、活性エネルギー線硬化型インク組成物全体に対して1.0質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。又、活性エネルギー線硬化型インク組成物全体に対して20.0質量%以下であることが好ましい。なお、本発明においては、活性エネルギー線重合開始剤は必ずしも必須でなく、例えば活性エネルギー線として電子線を用いる場合には活性エネルギー線重合開始剤は用いなくても良い。
【0084】
[モノマーA)及びモノマーB)の含有量]
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれるモノマーA)及びモノマーB)の合計含有量は活性エネルギー線重合性モノマーの全量中45質量%以上であることが好ましく、活性エネルギー線重合性モノマーの全量中53質量%以上であることがより好ましく、活性エネルギー線重合性モノマーの全量中60質量%以上であることが更に好ましい。
【0085】
モノマーA)及びモノマーB)の合計含有量は活性エネルギー線重合性モノマーの全量中45質量%以上であることにより、延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化型インク組成物とすることができる。
【0086】
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物に含まれるモノマーA)及びモノマーB)の合計含有量は活性エネルギー線重合性モノマーの全量中90質量%以下であることが好ましく、活性エネルギー線重合性モノマーの全量中85質量%以下であることがより好ましく、活性エネルギー線重合性モノマーの全量中80質量%以下であることが更に好ましい。
【0087】
モノマーA)及びモノマーB)の合計含有量は活性エネルギー線重合性モノマーの全量中45質量%以上であることにより、延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化型インク組成物とすることができる。
【0088】
[モノマーA)及びモノマーB)以外のモノマーの含有量]
本発明における「モノマーA)」及び「モノマーB)」の他に「上述したモノマーA)以外の単官能モノマー」及び「上述したモノマーB)以外の多官能モノマー」(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、アルコキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリセリントリアクリレート、及びこれらの変性数違い、変性種違い、構造違いの(メタ)アクリレート(以下、単に「上述したモノマーB)」と表記する。))からなる群より選択される少なくとも1のモノマーを含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物である場合には、「モノマーA)」、「モノマーB)」、「上述したモノマーA)以外の単官能モノマー」、「上述したモノマーB)以外の多官能モノマー」の合計のモノマーの含有量は、活性エネルギー線重合性モノマー全量中80質量%以上であることが好ましく、全活性エネルギー線重合性モノマー全量中90質量%以上であることがより好ましく、全活性エネルギー線重合性モノマー全量中95質量%以上であることが更に好ましい。
【0089】
[色材]
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、必要に応じて色材を含有しても良い。色材を含有することで、硬化膜を加飾用の硬化膜として好ましく用いることができる。色材は、従来の油性インク組成物に通常用いられている無機顔料又は有機顔料であればどのようなものであっても良く、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化チタン、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、ジケトピロロピロール、アンスラキノン、ベンズイミダゾロン、アンスラピリミジン、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、アルミペースト、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、沈降性硫酸バリウム、パール顔料等が挙げられる。
【0090】
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物の顔料の好ましい分散粒径は、レーザー散乱法による体積平均粒径で10nm以上であることが好ましい。又、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物の顔料の好ましい分散粒径は、レーザー散乱法による体積平均粒径で300nm以下であることが好ましい。体積平均粒径を10nm以上、300nm以下、又は10nm以上300nm以下にすることで、耐光性を維持することが可能となることや、分散の安定化が可能となり顔料の沈降やインクジェット記録装置でインクジェットインクを吐出する際でのヘッド詰まりや吐出曲がりが発生する可能性が軽減することが可能となるため、より好ましい活性エネルギー線硬化型インク組成物とすることができる。
【0091】
本発明において、顔料を用いる場合、その含有量は適宜調整されれば良い。顔料の種類によっても異なるが、活性エネルギー線硬化型インク組成物全量における、顔料の含有量は、分散性と着色力を両立する点から、有機顔料の場合、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましい。又、分散性と着色力を両立する点から、有機顔料の場合、20.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましい。又、分散性と着色力を両立する点から、無機顔料の場合、1.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましい。又、無機顔料の場合、40.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以下がより好ましい。
【0092】
[分散剤]
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、必要に応じて分散剤を含有しても良い。分散剤としては例えば高分子分散剤が挙げられる。この高分子分散剤の主鎖はポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプロラクトン系等からなり、高分子分散剤は、側鎖としてアミノ基、カルボキシル基、スルホン基、ヒドロキシル基等の極性基やこれらの塩を有するのが好ましい。
【0093】
好ましい高分子分散剤はポリエステル系分散剤であり、具体例として、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース33000」、「ソルスパース32000」、「ソルスパース24000」;ビックケミー社製「Disperbyk168」、;味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821」、エボニック・ジャパン社製「TEGO Dispers685」等が挙げられる。
【0094】
[表面調整剤]
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、更に表面調整剤を含有していても良い。表面調整剤としては特に限定されないが、具体例としては、ジメチルポリシロキサンを有するビックケミー社製「BYK−306」、「BYK−333」、「BYK−371」、「BYK−377」、エボニックデグサジャパン社製「TegoRad2010」「TegoRad2100」、「TegoRad2200N」、「TegoRad2300」等が挙げられる。
【0095】
表面調整剤の含有量は、インク組成物全量に対して0.1質量%以上であることが好ましい。又、表面調整剤の含有量は、インク組成物全量に対して5.0質量%以下であることが好ましい。0.1質量%以上、又は、5.0質量%以下とすることで、インク組成物が熱可塑性樹脂基材等に対し好ましい濡れ性を有することとなり、基材上に記録する(像を形成する)際に活性エネルギー線硬化型インク組成物がハジキを生じることなく濡れ広がることが可能となるため、特に好ましい活性エネルギー線硬化型インク組成物とすることができる。
【0096】
[艶消し剤]
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、必要に応じて、艶消し剤を含有しても良い。艶消し剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウムなどの各種の粉粒体を使用することができる。艶消し剤は、単独で又は2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0097】
[その他の添加剤]
又、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、その他の添加剤として、可塑剤、重合禁止剤、光安定化剤、酸化防止剤等、種々の添加剤を含有していても良い。溶剤は本願の目的を達成する範囲内で添加することもできる。
【0098】
又、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物の表面張力は、インクジェットの吐出性、吐出安定性の点から、40℃での表面張力が20mN/m以上であることが好ましい。又、40℃での表面張力が40mN/m以下であることが好ましい。
【0099】
<活性エネルギー線硬化型インク組成物の製造方法>
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。又、粒状の色材、粒状の艶消し剤などを用いる場合は、分散機を用いて、活性エネルギー線重合性モノマー、分散剤等で分散し、その後、必要に応じて活性エネルギー線重合開始剤、表面調整剤等を添加して均一に撹拌し、更にフィルターで濾過することによって本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物が得られる。
【0100】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造は、上記活性エネルギー線硬化型インク組成物を、基材上へ好ましくはインクジェット方式で印刷した後、活性エネルギー線で硬化することによって行われる。印刷は、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スプレー方式、刷毛塗り方式など従来公知の方式で印刷可能であるが、小ロット多品種に対応できる点でインクジェット方式であることが好ましい。又、インクジェット方式で印刷する際にインクジェットヘッドを加熱した状態で印刷しても良いし、室温のまま印刷しても良い。本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、室温環境下においても極めて低粘度であるモノマーA)と、モノマーB)とを含有しているので、室温環境下においても低粘度の活性エネルギー線硬化型インク組成物とすることが可能となる。そのため、インクジェットヘッドを加熱せずに基材上に印刷することが可能である。
【0101】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を使用して基材に画像を形成することができる。例えば、様々な色合いの色材をそれぞれ含有させた活性エネルギー線硬化型インク組成物のインクセットを用意し、インクジェット方式により印刷後、インク組成物を硬化することによって、基材に様々な画像を形成することができる。このような硬化膜を形成する活性エネルギー線硬化型インク組成物や基材上に画像を形成する像形成方法も本発明の範囲である。尚、本明細書において「画像」とは、単色又は複数の色からなる文字、図表、図形、記号、写真等を含む視覚を通じて認識することができる装飾的な像を意味し、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄等も含まれる。
【0102】
[基材]
基材は特に限定されず、例えば塗工紙、非塗工紙、布帛等の吸収体、非吸収性基材のいずれも使用することができる。具体的には、非塗工紙としては、更紙、中質紙、上質紙、塗工紙としては、コート紙、アート紙、キャスト紙、軽量コート紙、微塗工紙、布帛等の吸収体としては、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等を例示でき、非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等を例示できる。又、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、金属等の可撓性を有しない基材を被記録媒体として使用する場合に限定されず、可撓性を有する基材を被記録媒体として使用する場合であっても、可撓性を有する基材が曲がることに起因する硬化膜の割れを効果的に抑制することができる。尚、「可撓性を有する」とは、室温時において曲率半径を通常直径1m、好ましくは50cm、より好ましくは30cm、更に好ましくは10cm、特に好ましくは5cmに曲げることが可能であることをいう。
【0103】
[活性エネルギー線による硬化]
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を硬化させた硬化膜(以下、「硬化膜」と表記することがある。)を形成するための活性エネルギー線は、200nm以上の波長域の光が好ましく、250nm以上の波長域の光がより好ましい。硬化膜を形成するための活性エネルギー線は、450nm以下の波長域の光が好ましく、430nm以下の波長域の光がより好ましい。光源は、特に限定されるものではなく、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。これらの光源を用い、積算光量が100mJ/cm以上、好ましくは200mJ/cm以上になるように活性エネルギー線を照射することにより、インク組成物を瞬時に硬化させることができる。
【0104】
硬化膜の厚さは、1μm以上であることが好ましい。又、硬化膜の厚さは、100μm以下であることが好ましい。1μm以上にすることで、色材を含有する硬化膜の色濃度が薄くなることなく、意匠性や装飾性の低下や密着性、伸長性等の物性が向上するため、より好ましい。100μm以下にすることで、インク組成物に対して活性エネルギー線を照射した際に、インク組成物をより短時間で充分に硬化することができるようになるため、より好ましい。
【0105】
硬化膜の厚さの測定方法は、作製した硬化膜と同様の塗布条件でPETフィルム(東洋紡績社製、A4300)に本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を塗布し、得られた硬化膜の厚さをマイクロメーターにより測定することができる。尚、本明細書において、硬化膜の厚さとは1サンプルにつき10箇所行い、これらの平均値を厚さ(平均厚さとする)。後述の保護層及びプライマーについても同様のものとする。
【0106】
[硬化膜]
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物により形成される硬化膜は、前述したように色材等を含有していれば加飾層として用いることができるが、色材を添加せずに加飾層上に吐出すれば本硬化膜自体を硬化膜を保護するオーバーコート層として利用することもできる。更に、基材表面と硬化膜との間に形成することで両者の密着性を向上させるためのプライマー層としても利用することができる。このような硬化膜を形成する活性エネルギー線硬化型インク組成物も本発明の範囲である。
【0107】
本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物により形成される硬化膜のみで加飾層、オーバーコート層又はプライマー層をそれぞれ単独で形成することもできるし、又はこれらの層を複数組合わせて形成することもできる。例えば本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物に色材等を加え加飾層を形成し、その加飾層上に色材等を加えていない本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を吐出することでオーバーコート層を形成することもできる。又、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物により形成される硬化膜を、従来公知のインク組成物により形成される加飾層、オーバーコート層又はプライマー層と組み合わせて使用することもできる。例えば本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を加飾層として利用した場合に、その加飾層上に従来公知のオーバーコート組成物を用いてオーバーコート層を形成することもできる。
【0108】
基材にオーバーコート層やプライマー層を形成する場合、これらの層を形成する方法としてはどのような方法であっても良く、例えば、スプレー塗布、タオル、スポンジ、不織布、ティッシュ等を用いた塗布、ディスペンサー、刷毛塗り、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット、熱転写方式等のいずれであっても良い。
【0109】
[オーバーコート層]
積層体の耐久性をより向上させることを目的に、本発明のインク組成物の硬化膜の表面に、従来公知のオーバーコート剤からなるオーバーコート層又は本発明のインク組成物をオーバーコート剤として用いて形成されるオーバーコート層が更に形成されていても良い。なお、オーバーコート層は、インク組成物の硬化膜からなる層の表面に形成される場合に限らず、基材の表面に直接形成されていても良いし、基材の表面に形成された、後述するプライマー層の表面に形成されていても良い。
【0110】
オーバーコート剤としては、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を好ましく用いることができる。本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いることで、優れた硬化性と延伸性とを実現することができる。更に、例えば本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いた硬化膜に本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いたオーバーコート剤によりオーバーコート層を形成した場合には、当該硬化膜と当該オーバーコート層は同様の組成であるため、これらの密着性は極めて高い。そのため、本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物の硬化膜用のオーバーコート剤として本発明の活性エネルギー線硬化型インク組成物を用いることが特に好ましい。
【0111】
オーバーコート層の厚さは、1μm以上であることが好ましい。1μm以上とすることで、硬化膜を適切に保護することができるため好ましい。又、オーバーコート層の厚さは、100μm以下であることが好ましい。100μm以下とすることで、オーバーコート層を形成するために乾燥時間が短縮され、生産性に優れたものとすることができるため好ましい。
【0112】
又、オーバーコート層を形成する際にインク組成物の吐出量やインク組成物を吐出してから活性エネルギー線照射までの時間等の条件を調節することで、オーバーコート層に意匠性を付与することもできる。例えば、表面を艶消し調やグロス調にすることや、表面の膜厚をあえて不均一にすることで凹凸が付けられた立体的で意匠性の高いオーバーコート層を形成することもできる。具体的には、インク組成物を吐出後、所定時間経過後に活性エネルギー線を照射することで表面をグロス調にすることができ、又吐出後、速やかに活性エネルギー線を照射することで表面を艶消し調とすることができる。又1回の吐出量を吐出箇所によって増減させることで凹凸を付与することもできるし、又同一箇所でインク組成物の吐出と活性エネルギー線の照射とを繰り返すことで他の箇所との凹凸差を付与することもできる。このような硬化膜を形成する活性エネルギー線硬化型インク組成物や凹凸像を形成する像形成方法も本発明の範囲である。なお、そのようなオーバーコート層は条件調整が容易である点からインクジェット方式で形成することが望ましい。凹凸像とは、必ずしも視覚を通じて認識されるものには限定されず、例えば無色の硬化膜であっても単色又は複数の色を有する硬化膜であっても、凹凸を有する形状であれば含まれる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0114】
<インク組成物の調製(実施例1〜20、比較例1〜5)>
実施例及び比較例における、インク組成物全量中のインク組成物の活性エネルギー線重合性モノマー、活性エネルギー線重合開始剤、光重合開始剤、高分子分散剤、顔料の質量部を表1、表2(実施例)、表3(比較例)に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
表1〜3中、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルは、日本触媒社製、VEEA−AI(モノマーB)に相当。)である。
【0119】
表3中、PO変性(×2)ネオペンチルグリコールジアクリレートは、アルケマ(株)社製、SR9003(モノマーB)以外の二官能モノマーに相当。)である。
【0120】
表3中、ネオペンチルグリコールジアクリレートは、アルケマ社製、SR247(モノマーB)以外の二官能モノマーに相当。)である。
【0121】
表1〜3中、アクリル酸4−(1,1−ジメチルエチル)シクロヘキシルは、アルケマ(株)社製、SR217(モノマーA)以外の単官能モノマーに相当。)である。
【0122】
表1〜3中、テトラヒドロフルフリルアクリレートは、大阪有機化学工業社製、ビスコート♯150(モノマーA)であり、モノマーA1)に相当。)である。
【0123】
表1〜3中、アクリル酸5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イルメチルは、大阪有機化学工業社製、ビスコート♯200(モノマーA)であり、モノマーA2)に相当。)である。
【0124】
表1〜3中、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートは、大阪有機化学工業社製、MEDOL−10(モノマーA)に相当。)である。
【0125】
表3中、イソボルニルアクリレートは、大阪有機化学工業社製、IXBA(モノマーA)以外の単官能モノマーに相当。)である。
【0126】
表3中、N−ビニル−ε−カプロラクタムは、ISP製、V−CAP(モノマーA)以外の単官能モノマーに相当。)である。
【0127】
表2中、光重合開始剤Aとは、ビス(2、4、6―トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドであって、BASF社製、IRGACURE 819である。
【0128】
表1〜3中、光重合開始剤Bとは、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドであって、BASF社製、IRGACURE TPOである。
【0129】
表2中、光重合開始剤Cとは、2、4―ジエチルチオキサンテン−9−オンであって、三菱商事ケミカル社製、DOUBLECURE DETXである。
【0130】
表1〜3中、光重合禁止剤Aとは、フェノチアジンであって、川口化学薬品工業(株)社製、ANTAGE TDPである。
【0131】
表2中、光重合禁止剤Bとは、RAHN社製、Genorad22である。
【0132】
表1〜3中、表面調整剤とは、シリコーンポリエーテルアクリレートであって、エボニックデグサジャパン社製、Tegorad 2010である。
【0133】
表1〜3中、高分子分散剤Aとは、日本ルーブリゾール(株)社製、ソルスパース32000である。
【0134】
表2中、高分子分散剤Bとは、エボニック・ジャパン(株)社製、TEGO Dispers685である。
【0135】
表1〜3中、顔料Aは、C.I.Pigment Blue 15 : 3であって、トーヨーカラー社製、LIONOL BLUE FG7400Gである。
【0136】
表1〜3中、顔料Bは、カーボンブラックであって、オリオン・エンジニアドカーボンス社製、NEROX 56000である。
【0137】
表1〜3中、顔料Cは、酸化チタンであって、テイカ(株)社製、TITANIX JR407である。
【0138】
表2中、顔料Dは、C.I.Pigment Yellow 150であって、ランクセス社製、Levascreen Yellowである。
【0139】
表2中、顔料Eは、C.I.Pigment RED 122であって、DIC社製、FASTOGEN Super Magenta RISである。
【0140】
表1〜3中、「モノマーA)/インク組成物」とは、活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中のモノマーA)の含有量(質量%)を意味する。
【0141】
表1〜3中、「モノマーB)/インク組成物」とは、活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中のモノマーB)の含有量(質量%)を意味する。
【0142】
表1〜3中、「モノマー/インク組成物」とは、活性エネルギー線硬化型インク組成物全量中の活性エネルギー線重合性モノマーの含有量(質量%)を意味する。
【0143】
表1〜3中、「単官能モノマー/モノマー」とは、活性エネルギー線重合性モノマー全量中の単官能モノマーの含有量(質量%)を意味する。
【0144】
〔インク組成物の調製〕
各モノマー材料を表1〜3に示す割合になるように混合し、室温(20〜25℃)にて1時間撹拌した。その後、溶け残りがないことを確認した。その後、メンブレンフィルターを用いて濾過を行い、実施例及び比較例のインク組成物を調製した。
【0145】
<粘度測定試験>
実施例及び比較例のインク組成物について粘度を測定した。具体的には、JIS Z 8803:2001に基づいて粘度測定試験機(アントンパール社製AMVn)を用いて25℃で粘度を測定した。測定結果を表1〜3に示す(表中、粘度と表記、単位はPa・s)。
【0146】
<臭気試験>
実施例及び比較例のインク組成物について、臭気試験を行った。具体的には、インク組成物をポリエチレングリコールで希釈し(インク組成物:ポリエチレングリコール=1:1000)、被験者5人に臭いを嗅いでもらい、下記基準によって官能評価した。過半数の評価が3の場合は“○”とし、過半数の評価が1又は2の場合は“×”とし、(表中、「臭気」と表記)。測定結果を表1〜3に示す。
評価3 :臭気がしない。
評価2 :わずかに臭気がある。
評価1 :不快な臭気がある。
〔積層体の製造〕
【0147】
厚さ80μmの塩化ビニルを基材として積層体を製造した。基材の表面に、表1〜3に示す硬化膜を構成する組成物をインクジェット法にて各サンプルを作製した。そして、UV−LEDランプ(波長385nm)を用いて積算光量が100mJ/cm、ピーク照度が1500mW/cmの条件(いずれもUV−V波長領域(375〜415nm))でインク組成物を硬化した。積算光量及びピーク照度の測定は、紫外線光量計UV Power Puck 2(EIT社製)を用いて行った。これにより、硬化膜を作製した。
【0148】
<延伸性試験>
実施例及び比較例の積層体について、積層体を作製して一日経過後にダンベル状6号形(JIS K6251−5)の試験片として、25℃で積層体の元の長さの150%(1.5倍)までの範囲を積層体の延伸を100mm/minの歪み速度で1回延伸した時に、硬化膜の実質的な割れが生じるか否かを確認した。実質的な割れが生じなかったものを“○”とし、生じたものを“×”とした。評価結果を表1〜3に示す(表中、延伸性と表記)。ここで、実質的な割れとはサンプル片幅の長さの50%以上割れ(クラック)が進行した割れを意味する。
【0149】
<硬化性試験>
硬化性の評価は、硬化後の硬化膜を綿棒で擦り、色移りの有無を確認することにより行った。結果を表1〜3に示す。綿棒により色移りが全く見られなかった場合を“◎”とし、綿棒により色移りが殆ど見られなかった場合を“○”とし、綿棒により色移りが見られ、実質上許容範囲を超えた場合を“×”とした(表中、「硬化性」と表記。)。
【0150】
<タック性試験>
タックの評価は、室温で行った。
積層体を室温下におき、硬化膜を指で触れ、べたつきの有無を確認した。結果を表1〜3に示す。べたつきがない場合を“◎”とし、ややべたつきがあるが実質上許容範囲内であった場合を“○”、べたつきが強く実質上許容範囲を超えた場合を“×”とした(表中、「タック」と表記。)。
【0151】
<評価結果>
表1〜3より、実施例の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化型インク組成物であることが分かる。
【0152】
特に、モノマーA)が、分子構造が異なる2種の単官能モノマーであるモノマーA1)とモノマーA2)とを含む、実施例1〜6、9〜20の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、全ての試験において“○”評価となっており、モノマーA)が単独の実施例7、8よりも更に延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化型インク組成物であることが分かる。
【0153】
一方、モノマーB)の代わりに、モノマーB)でない二官能モノマーであるネオペンチルグリコールジアクリレートを用いた比較例1の活性エネルギー線硬化型インク組成物やモノマーB)でない二官能モノマーであるPO変性(×2)ネオペンチルグリコールジアクリレートを用いた比較例2の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、延伸性が低下し又はタックが悪化しており、延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成できていないことが分かる。
【0154】
又、モノマーA)の代わりに、モノマーA)でない単官能モノマーであるイソボルニルアクリレート(IBXA)及びN−ビニル−ε−カプロラクタム(V−CAP)を用いた比較例3の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、延伸性試験において硬化膜の割れが生じていることから、延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成できていないことが分かる。
【0155】
又、モノマーA)及びモノマーB)の含有量が本発明の範囲内(モノマーA)の合計含有量が40質量%以上、且つ、モノマーB)の合計含有量が20質量%以下)にない比較例4の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、延伸性試験において硬化膜の割れが生じていることから、延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成できていないことが分かる。
【0156】
又、二官能モノマーを含有していない比較例5の活性エネルギー線硬化型インク組成物は、硬化性試験において硬化性が劣り、硬化性を充分有する硬化膜を形成できていないことが分かる。
【要約】      (修正有)
【課題】延伸性とタックの軽減との両立を可能とする硬化膜を形成することのできる活性エネルギー線硬化型インク組成物の提供。
【解決手段】活性エネルギー線重合性モノマーとして、40質量%以上のモノマーA):式(1)で表される単官能モノマーと、20質量%以下のモノマーB):式(2)で表される多官能モノマーと、を含有する活性エネルギー線硬化型インク組成物。
(Rは含酸素複素環構造を有する官能基;RはC1−5のアルキレン基;RはH又はC1−4のアルキル基)R−CH=CR−COOR−O−CH=CH−R・・・(2)
【選択図】なし