【課題を解決するための手段】
【0005】
導入部で述べたダイス回しから開始すると、この目的は受け入れ溝内に取り外し可能に配置された複数の締め付け楔が切削インサートの軸方向及び半径方向の固定用に配備され、1つの締め付け楔及び1つの切削インサートが夫々各受け入れ溝に配備されるとの事実によって達成され、締め付け楔は、軸方向及び半径方向を横切る周方向に、各受け入れ溝内の切削インサートと平行に配置されて、受け入れ溝毎に1つの固定手段が配備されて、締め付け楔及び切削インサートを受け入れ溝内に固定する。
【0006】
更に、この目的はそのようなダイス回し用のホルダによって達成され、該ホルダは、
― 大凡円筒形で、軸方向に延びる中心ホルダ長軸に対して対称的で、
― 複数の受け入れ溝を有し、各受け入れ溝は切削インサートと締め付け楔を受け入れるように構成され、各受け入れ溝はホルダの第1の端面から軸方向に延び、第1の端面は軸方向を横切って延び、各受け入れ溝はホルダの内側から半径方向に延び、該内側はホルダの長軸に対向し、
― 受け入れ溝内に取り外し可能に配置されて、切削インサートを軸方向及び半径方向に固定する複数の締め付け楔を備えて、1つの締め付け楔は各受け入れ溝に夫々配備され、締め付け楔は周方向に、各受け入れ溝内で切削インサートと夫々平行に配置されて、周方向は軸方向と半径方向を横切り、
― 受け入れ溝毎に1つの固定手段が配備されて、締め付け楔を受け入れ溝内に固定する。
【0007】
更に、本発明に従って、切削インサートは本発明に従ったダイス回しに配備され、切削インサートは、
― ホルダの長軸に略向かう前側に少なくとも1つの切削エッジを有し、
― 軸方向に直交する断面形状を有し、該断面形状は前側から開始して半径方向に沿って楔形状に外向きに拡がり、
― 1つの締め付け楔によってホルダの1つの受け入れ溝内にて軸方向及び半径方向に固定可能であり、切削インサートは軸方向及び半径方向を横切る周方向に延びて、各受け入れ溝内にて1つの締め付け楔と平行に配置される。
【0008】
上記の締め付け楔の使用により、最適な挿入嵌合が達成される。締め付け楔により、個々の切削インサート内にて楔の固定が確実になる。その結果、固定手段が締められると、自己ロック閉じ力が切削インサート、各締め付け楔及び各受け入れ溝間に生成され、閉じ力は個々の切削インサートを各受け入れ溝内にて軸方向及び半径方向に固定する。機械加工中に、固定して挿入された切削インサートの意図しない取り外しは、これにより実際上不可能である。個々の切削インサートの締め付けは、故に非常に安定する。
【0009】
従来技術から公知の上記のダイス回しとは異なり、締め付け楔は通常は上から切削インサート上に軸方向に押圧しない。本発明に従った締め付け楔は周方向に、即ち軸方向及び半径方向を横切って、各受け入れ溝内の切削インサートと平行に配置される。単語「横切って」はこの点において、直交することを意味すると理解されるのが好ましい。上から切削インサート上に軸方向に取り付けられる締め付け楔とは対照的に、そのような切削インサートの隣に配置された側方締め付け楔は、軸方向及び半径方向の両方で受け入れ溝内の切削インサートの固定を改善することが出来る。
【0010】
本発明に従った締め付け楔及びその切削インサートと平行な配置の更なる利点は、切削インサートの製造ばらつきが簡単な方法で補償されるとの事実にある。締め付け楔の形及びテーパにより、軸方向及び半径方向における小さな距離のばらつきがそれによって補償される。上から切削インサート上に軸方向に押圧される締め付けプレートでは、これは可能でない傾向にある。
上記の目的は十分に達成された。
【0011】
好ましい実施形態に従って、切削インサートは夫々軸方向に直交した断面形状を有し、該断面形状は前側から開始して軸方向に沿って楔形状に外向きに拡がる。
切削インサートが所定位置に締め付けられた状態で、断面形状はこのようにホルダの長軸からの距離が増加するとともに拡がる。断面形状はこの方向(半径方向)に連続して拡がるのが好ましい。これにより、ホルダ内に締め付けられた状態で、切削インサートの平坦側面又は接触面はホルダの長軸に平行に延びる。締め付け状態にて、接触面の1つは対応する受け入れ溝の平坦な接触面を支える(bear)。斜めに延びる(即ち、所定の角度で)反対側の接触面は、一方、同じ受け入れ溝に配置された各締め付け楔の平坦な接触面を支える。
【0012】
この点で、本発明に従った構成にて、同じ受け入れ溝内に複数の切削インサート又は複数の締め付け楔を配置することは原則として可能であることは注目すべきである。しかし、各受け入れ溝内に1つだけの切削インサート及び1つだけの締め付け楔が配置されることは好ましい。
更なる実施形態において、各受け入れ溝はホルダの内側から開始して、ホルダの長軸からの距離が増加しつつ、軸方向に沿って楔形状に外向きに拡がる。更に、各受け入れ溝は、ホルダの第1の端面から開始して(軸方向に直交して延びる) 軸方向に沿って楔形状にテーパ状である。
【0013】
同様に、ホルダの第1の端面から見て、各締め付け楔は軸方向に沿って楔形状に外向きに拡がり、ホルダの内側から開始して、半径方向に沿って楔形状に外向きに拡がる。
この実施形態の結果、二重タイプの楔がこのように生成される。上記の如く、軸方向及び半径方向から見て、受け入れ溝と同様に締め付け楔は楔形状に構成される。その結果、固定手段の締め付け時に、切削インサートはホルダ内に軸方向及び半径方向に自動的に締め付けられる。2つの方向の何れにも、切削インサートの取り外しは不可能である。また上記の如く、切削インサートはまた周方向にて(軸方向及び半径方向に直交して)、各受け入れ溝と該受け入れ溝内に配置された締め付け楔との間に堅く締め付けられる。
【0014】
更に好ましい実施形態において、複数の切削インサートは異なるように構成される。複数の切削インサートは異なる切削エッジの幾何学形状を有するのが好ましく、個々の切削インサートの切削エッジはネジ山の異なる周辺セグメントを形成する。
複数の同じ切削インサートが本発明に従ったダイス回しに原則として用いられるが、異なる複数の切削インサートを用いる利点は、切削インサート上のダイス回しとともに生成される外部ネジの幾何学形状が良くなると記載される事実にある。既に述べたように、切削インサートはホルダ上の周方向に分散している。切削インサート上の生成されるべき外部ネジの幾何学形状を更に良く記載すべく、個々の切削インサートの切削エッジの幾何学形状は、ホルダの個々の切削インサートの位置に従って構成される。
【0015】
この実施形態に従って、ユーザは個々の異なる切削インサートをホルダ上に正しい順番で嵌めることは故に重要である。ユーザにとって更に簡単にすべく、ホルダ上の対応する受け入れ溝と同様に個々の切削インサートはラベル付けられ、例えば番号付けられる。
導入部及び国際公開公報2012/117033号に記載され、且つ同様の切削インサートを用いるダイス回しとは対照的に、異なる切削インサートの使用は、1つだけの切削インサートが最初に(切削開始時に)ワークピースに係合するのではなく、全ての切削インサートが同時に機械加工されるべきワークピースに係合するとの利点を有する。その結果、また個々の切削インサートへの力の分布は、特に切削開始時に、著しく改善した。
【0016】
従って、本発明は本発明に従ったダイス回し用の複数の切削インサートのセットに関することを意図しており、セットの個々の切削インサートは、
― 夫々が、前側に少なくとも1つの切削エッジと軸方向に直交する断面形状を有し、該断面形状は前側から開始して軸方向に沿って楔形状に外向きに拡がる。
― 複数の切削エッジが異なる幾何学形状を有し、複数の切削インサートの切削エッジはネジ山の異なる周辺セグメントを形成する。
― 各々は1つの締め付け楔によってホルダの受け入れ溝内にて軸方向及び半径方向に固定可能であり、軸方向及び半径方向に直交する周方向にて、1つの受け入れ溝内の1つの締め付け楔と平行に配置されている。
【0017】
本発明に従ったダイス回しの更なる好ましい実施形態にて、各切削インサートは入口面取りを有し、該入口面取りは切削インサートがホルダ内に配置されたときに、ホルダの第1の端面領域に位置し、入口面取りの垂直ベクトルは、ホルダ長軸を指し示し、入口面取りは共通の仮想包含円錐上に位置する。
勿論、上記の垂直ベクトルは入口面取りの空間位置を記載するためだけに役立ち、即ち実際には存在しないか、見えない。個々の垂直ベクトルは、切削インサートが所定位置に締め付けられたときにホルダの長軸と交差するように向けられるべきである。換言すれば、入口面取りは切削インサートの締め付け状態でホルダの対称な中心軸に対向するように構成される。上記の個々の切削インサートの切削エッジの異なる幾何学形状により、異なる入口面取りもそこから生じる。
【0018】
入口面取りはまた本質的にリードイン面取りと呼ばれる。該面取りは平面によって形成されるのが好ましく、切削インサートの挿入状態でホルダの長軸に斜めに延びる。リードイン面取り又は入口面取りは、ダイス回しが機械加工されるべきワークピースの開始切削端部に嵌合することを容易にする。上記の如く、切削インサートの入口面取りは、共通の仮想包含円錐上に位置するから、機械加工されるべきワークピースは、比較的容易に且つダイス回しに位置が正確に嵌合される(又は、ワークピース上に嵌合したダイス回しについても然りである)。共通の仮想包含円錐上の配置により、特にこの工程中にダイス回し上のワークピース(又はワークピース上のダイス回し)が引っ掛り又は望ましくない斜めに嵌合することが規制される。
【0019】
更なる実施形態に従って、受け入れ溝は同じであり、各受け入れ溝はホルダ長軸に直交して切削インサートの1つを支持する支え面(bearing surface)を有し、該支え面は同じ軸方向高さに配置され、切削インサートは軸方向の長さが等しい。
前記支え面はホルダ長軸に直交するのが好ましいが、原則としてホルダ長軸に斜めでもよい。このように「横切る」の語は「斜め」又は「所定角度で(平行でない)」と理解されるが、直交するが好ましい。切削インサートの異なる好ましい実施形態に拘らず、同じ軸方向の高さを有し、ホルダに対し同じ軸方向高さで支える。個々の切削インサートの上端部(ワークピース側端部)はこのように同様に、同じ軸方向高さに位置する。ワークピースの最初の切削時に、各切削インサートはこのように直ぐに係合し、即ち等しく負荷がかかり、個々の切削インサートは切削工程時に互いに支持する。
【0020】
更なる実施形態に従って、固定手段は外部ネジ山を有するネジであり、該ネジはホルダの第2の端部側からホルダに付与されたボアに挿入可能であり、前記第2の端部はホルダの第1の端部の反対側に配置され、ネジは対応する内部ネジを介して締め付け楔に螺合可能であり、該内部ネジは締め付け楔に付与されて外部ネジに対応する。
締め付け楔及び切削インサートを固定する螺合は、このようにいわば、底から達成される。固定板を軸方向に上から切削インサートに押圧するのに代えて、通常ではないように、本発明の締め付け楔は受け入れ溝内へ反対側に引かれる。他方でこれにより、締め付け楔の正確な位置決めを伴うのと同様に、締め付け力の計測を改良することができる。他方で、これにより、ホルダの第1の端面(ホルダのワークピース側の端面)の領域に必要であり、それ以外にネジ頭用にこの箇所に付与されなければならない嵌合スペースが軽減される。
【0021】
更なる実施形態において、ホルダは2つの部分の構成であり、受け入れ溝が付与された第1のホルダ部を有し、更にホルダをワークピースに固定するのに役立ち固定手段の助けを以て第1のホルダ部に固定可能な第2のホルダ部を有する。
原則として、ホルダの単一部分の構成は技術的には同等に可能であるが、ホルダの2つの部分の構成は非常に生成を簡単にする。ホルダは、より複雑な型彫り工程による代わりに、ワイヤカットEDMによって生成される。これは、受け入れ溝が付与される第1のホルダ部はネジ頭用の凹部が付与される第2のホルダ部から分離される。2つの部分の異なる幾何学形状は、このように別個に生成される。生成するのに複雑且つ高価で単一部分のホルダを生成するのに必要な皿穴はこれにより省くことが出来る。
【0022】
好ましいホルダの2つの部分の構成にて、底からの上記ネジは幾つかの機能を実行する。ネジ(固定手段)は一方で締め付け楔を固定するのに役立ち且つ切削インサートの固定にも役立つ。他方でネジはホルダの2つの部分を同時に一緒に保持する。
更なる実施形態にて、2つのホルダ部を接続すべく、少なくとも1つの駆動ピンが付与され、該駆動ピンはホルダ内を軸方向に延びる貫通孔に正確に嵌まるやり方で挿入される。
【0023】
1つだけの駆動ピンに代えて、そのような複数の駆動ピンが勿論用いられる。2つのピンが用いられるのが好ましい。これらの駆動ピンはホルダの2つの部分構成の2つの分離したホルダ部間の力の伝達に役立つ。複数の駆動ピンはツール固定で締め付けられ回転可能に駆動される第2のホルダ部から第1のホルダ部にトルクを伝え、該第1のホルダ部上に切削インサートが配置され、該切削インサートを用いてワークピースが機械加工される。駆動ピンは固定手段(ネジ)上の負荷を軽減するのに役立ち、そのような駆動ピンが更に使用される場合は、単に引っ張り負荷を受け、せん断負荷を受けない。駆動ピンとホルダ間の閉じ力はネジとホルダ間の閉じ力よりもトルクの伝達に適している。
【0024】
勿論、上記の特徴及び以下に記載される特徴は、各述べられた組み合わせのみに用いられるのではなく、本発明の範囲を離れることなく、他の組み合わせ又は単独で用いられる。