(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266107
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】コンデンサ用の二重架橋剤系を含む導電性ポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20180115BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20180115BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20180115BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20180115BHJP
C08L 25/18 20060101ALI20180115BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
H01G9/02 331G
H01G9/24 A
C08K5/54
C08L65/00
C08L25/18
C08L63/00 Z
【請求項の数】97
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-529866(P2016-529866)
(86)(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公表番号】特表2016-530711(P2016-530711A)
(43)【公表日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】US2014047876
(87)【国際公開番号】WO2015013443
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】61/857,878
(32)【優先日】2013年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511231986
【氏名又は名称】ケメット エレクトロニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー ヤールー
(72)【発明者】
【氏名】チャッコ アントニー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト エドガー
【審査官】
小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/153790(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/094462(WO,A1)
【文献】
特表2009−508341(JP,A)
【文献】
特開2008−253012(JP,A)
【文献】
特開2010−103106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00−13/08
C08L1/00−101/14
H01G9/00−9/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノードと、
前記アノード上の誘電体と、
前記誘電体上のカソードと、
を備えるコンデンサであって、前記カソードが、
前記誘電体に最も近い第1層;及び
導電性ポリマー、有機官能性シラン、並びに、カルボン酸及びエポキシからなる群から選択される少なくとも2つの官能基を有する有機化合物を含む第2層を含み、
前記第1層は、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びトルエンスルホネートを含み、
前記導電性ポリマーは、−(CR1R2CR3R4−)x−(式中、R1、R2、R3又はR4の少なくとも1つがチオフェン、ピロール又はアニリンから選択される基を含むが、但しR1、R2、R3又はR4のいずれも−SOOH又はCOOHを含有しない)の繰り返し単位を含み、及び
前記有機官能性シランは、式:
Y(Si(R3)3−n(R2)n)2
(式中、Yはアルキル、アリール、スルフィド又はメラミン等の反応性又は非反応性官能基を含有する任意の有機部分であり、
R2は個々に加水分解性官能基であり、
R3は個々に炭素数1〜6のアルキル官能基であり、
nは1〜3である)によって規定される、
コンデンサ。
【請求項2】
前記カソードがポリアニオンを更に含む、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記導電性ポリマーがポリチオフェンを含む、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記導電性ポリマーがポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項4に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記有機官能性シランがグリシジルシランである、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記有機化合物がエポキシ架橋性化合物である、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項8】
前記エポキシ架橋性化合物が式:
【化1】
(式中、Xは炭素数0〜14のアルキル若しくは置換アルキル、アリール若しくは置換アリール、エチレンエーテル若しくは置換エチレンエーテル、2個〜20個のエチレンエーテル基を有するポリエチレンエーテル若しくは置換ポリエチレンエーテル、又はそれらの組合せである)によって規定される、請求項
7に記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記置換がエポキシ基である、請求項8に記載のコンデンサ。
【請求項10】
アルキル又は置換アルキルが0個〜6個の炭素を有する、請求項8に記載のコンデンサ。
【請求項11】
前記エポキシ架橋性化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキシレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ジ(2,3−エポキシプロピル)エーテル、1,3−ブタジエンジエポキシド、1,5−ヘキサジエンジエポキシド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、4−ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビスフェノールジグリシジルエーテル、及びマレイミド−エポキシ化合物からなる群から選択される、請求項8に記載のコンデンサ。
【請求項12】
前記エポキシ架橋性化合物がグリシジルエーテルである、請求項7に記載のコンデンサ。
【請求項13】
前記グリシジルエーテルが式:
【化2】
(式中、R
3は炭素数1〜14のアルキル若しくは置換アルキル、又は
少なくとも1つのエチレンエーテル
結合を形成するために必要な原子である)によって規定される、請求項
12に記載のコンデンサ。
【請求項14】
前記R3が炭素数2〜6のアルキル又は置換アルキルである、請求項13に記載のコンデンサ。
【請求項15】
前記R3がポリエチレンエーテルである、請求項13に記載のコンデンサ。
【請求項16】
前記ポリエチレンエーテルが2個〜220個の重合されたエチレンエーテル基を有する、請求項15に記載のコンデンサ。
【請求項17】
前記R
3がヒドロキシ、
【化3】
及び−(CH
2OH)
xCH
2OH(式中、Xは1〜14である)からなる群から選択される基で置換されたアルキルである、請求項
13に記載のコンデンサ。
【請求項18】
前記グリシジルエーテルが、
【化4】
からなる群から選択される、請求項
13に記載のコンデンサ。
【請求項19】
前記カソードがカルボン酸を更に含む、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項20】
前記カルボン酸がカルボン酸基を有する芳香族酸である、請求項19に記載のコンデンサ。
【請求項21】
前記芳香族酸がフタル酸及び安息香酸からなる群から選択される、請求項20に記載のコンデンサ。
【請求項22】
前記フタル酸がオルト−フタル酸である、請求項21に記載のコンデンサ。
【請求項23】
前記有機化合物が2つ以上のカルボン酸基を有するカルボン酸架橋性化合物である、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項24】
前記カルボン酸架橋性化合物がカルボン酸基を有する芳香族酸である、請求項23に記載のコンデンサ。
【請求項25】
前記カルボン酸架橋性化合物が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、マレイン酸、ムコン酸、クエン酸、トリメシン酸、及びポリアクリル酸からなる群から選択される、請求項24に記載のコンデンサ。
【請求項26】
溶媒と、導電性ポリマーと、トルエンスルホネートと、有機官能性シランと、エポキシ及びカルボン酸からなる群から選択される2つ以上の官能基を有する有機化合物とを含む導電性ポリマー分散液。
【請求項27】
前記導電性ポリマーが、−(CR1R2CR3R4−)x−(式中、R1、R2、R3又はR4の少なくとも1つがチオフェン、ピロール又はアニリンから選択される基を含むが、但しR1、R2、R3又はR4のいずれも−SOOH又はCOOHを含有しない)として規定される、請求項26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項28】
前記導電性ポリマーがポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項27に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項29】
前記導電性ポリマー分散液1グラム当たり0.0005グラム〜0.1グラムの前記有機官能性シランを含む、請求項26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項30】
前記導電性ポリマー分散液1グラム当たり0.001グラム〜0.1グラムの前記有機化合物を含む、請求項26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項31】
ドーパントを更に含む、請求項26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項32】
前記ドーパントがポリアニオンを含む、請求項31に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項33】
前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項32に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項34】
前記ドーパントが前記導電性ポリマー1グラム当たり0.05グラム〜0.3グラムの量で存在する、請求項31に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項35】
前記有機
官能性シランが式:
【化5】
(式中、R
1は炭素数1〜14のアルキルであり、R
2は各々独立して炭素数1〜6のアルキルである)によって規定されるグリシジルシランである、請求項
26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項36】
前記R1がメチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される、請求項35に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項37】
前記グリシジルシランが式:
【化6】
である、請求項
35に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項38】
前記有機官能性シランが式:
XR1Si(R3)3−n(R2)n
(式中、Xはアミノ、エポキシ、無水物、ヒドロキシ、メルカプト、スルホネート、カルボキシレート、ホスホネート、ハロゲン、ビニル、メタクリロキシ、エステル及びアルキルから選択される有機官能基であり、
R1はアリール又は(CH2)m(式中、mは0〜14であり得る)であり、
R2は個々に加水分解性官能基であり、
R3は個々に炭素数1〜6のアルキル官能基であり、
nは1〜3である)によって規定される、請求項26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項39】
前記加水分解性官能基がアルコキシ、アシルオキシ、ハロゲン及びアミンからなる群から選択される、請求項38に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項40】
前記有機官能性シランが式:
Y(Si(R3)3−n(R2)n)2
(式中、Yはアルキル、アリール、スルフィド又はメラミン等の反応性又は非反応性官能基を含有する任意の有機部分であり、
R2は個々に加水分解性官能基であり、
R3は個々に炭素数1〜6のアルキル官能基であり、
nは1〜3である)によって規定される、請求26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項41】
前記有機官能性シランが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリヒドロキシシリル−1−プロパンスルホン酸、及びオクチルトリエトキシシランからなる群から選択される、請求項26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項42】
前記有機化合物が少なくとも2つのエポキシ基を含む、請求項26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項43】
前記エポキシ架橋性化合物が式:
【化7】
(式中、Xは炭素数0〜14のアルキル若しくは置換アルキル、アリール若しくは置換アリール、エチレンエーテル若しくは置換エチレンエーテル、2個〜20個のエチレンエーテル基を有するポリエチレンエーテル若しくは置換ポリエチレンエーテル、又はそれらの組合せである)によって規定される、請求項
42に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項44】
前記置換がエポキシ基である、請求項43に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項45】
アルキル又は置換アルキルが0個〜6個の炭素を有する、請求項43に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項46】
前記エポキシ架橋性化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキシレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールジグリシジルエーテル(ソルビトール−DGE)、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ジ(2,3−エポキシプロピル)エーテル、1,3−ブタジエンジエポキシド、1,5−ヘキサジエンジエポキシド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、4−ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、及びマレイミド−エポキシ化合物からなる群から選択される、請求項43に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項47】
前記有機化合物がグリシジルエーテルである、請求項26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項48】
前記グリシジルエーテルが式:
【化8】
(式中、R
3は炭素数1〜14のアルキル若しくは置換アルキル、又は
少なくとも1つのエチレンエーテル
結合を形成するために必要な原子である)によって規定される、請求項
47に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項49】
前記R3が炭素数2〜6のアルキル又は置換アルキルである、請求項48に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項50】
前記R3がポリエチレンエーテルである、請求項48に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項51】
前記ポリエチレンエーテルが2個〜220個の重合されたエチレンエーテル基を有する、請求項50に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項52】
前記R
3がヒドロキシ、
【化9】
及び−(CH
2OH)
xCH
2OH(式中、Xは1〜14である)から選択される基で置換されたアルキルである、請求項
47に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項53】
前記グリシジルエーテルが、
【化10】
からなる群から選択される、請求項
47に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項54】
カルボン酸を更に含む、請求項26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項55】
前記カルボン酸が芳香族酸である、請求項54に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項56】
前記芳香族酸がフタル酸及び安息香酸からなる群から選択される、請求項55に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項57】
前記有機化合物が2つ以上のカルボン酸基を有するカルボン酸架橋性化合物である、請求項26に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項58】
前記カルボン酸架橋性化合物がカルボン酸基を有する芳香族酸である、請求項57に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項59】
前記カルボン酸架橋性化合物が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、マレイン酸、ムコン酸、クエン酸、トリメシン酸、及びポリアクリル酸からなる群から選択される、請求項58に記載の導電性ポリマー分散液。
【請求項60】
アノードを形成することと、
前記アノード上に誘電体を形成することと、
前記誘電体上にカソードを形成することと、を含み、
前記誘電体上にカソードを形成することが、
酸化剤及び3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマーを塗布してin situでポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を形成することにより第1導電層を形成する工程;及び
前記第1導電層上に導電性ポリマー分散液を塗布する工程を含む、導電層を形成することを含み、
前記導電性ポリマー分散液が、
−(CR1R2CR3R4−)x−(式中、R1、R2、R3又はR4の少なくとも1つがチオフェン、ピロール又はアニリンから選択される基を含むが、但しR1、R2、R3又はR4のいずれも−SOOH又はCOOHを含有しない)の繰り返し単位と、
有機官能性シランと、
エポキシ及びカルボン酸からなる群から選択される2つ以上の官能基を有する有機化合物と、を含む、コンデンサを形成する方法。
【請求項61】
前記カソードを形成することが炭素含有層を形成することを更に含む、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項62】
前記カソードを形成することが金属含有層を形成することを更に含む、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項63】
前記導電性ポリマー層を形成することが、前記導電性ポリマーを含む導電性ポリマー分散液を塗布することを含む、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項64】
前記導電性ポリマー分散液が前記有機官能性シラン又は前記有機化合物の少なくとも1つを含む、請求項63に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項65】
前記導電性ポリマー分散液が前記有機官能性シランを含む、請求項64に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項66】
前記導電性ポリマー分散液がポリアニオンを更に含む、請求項63に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項67】
前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項66に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項68】
前記導電性ポリマー分散液がポリチオフェンを含む、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項69】
前記ポリチオフェンがポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である、請求項68に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項70】
前記有機官能性シランがグリシジルシランである、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項71】
前記グリシジルシランが式:
【化11】
(式中、R
1は炭素数1〜14のアルキルであり、R
2は各々独立して炭素数1〜6のアルキルである)によって規定される、請求項
70に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項72】
前記R1がメチル、エチル及びプロピルからなる群から選択される、請求項71に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項73】
前記グリシジルシランが式:
【化12】
である、請求項
71に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項74】
前記有機化合物がグリシジルエーテルである、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項75】
前記有機官能性シランが式:
XR1Si(R3)3−n(R2)n
(式中、Xはアミノ、エポキシ、無水物、ヒドロキシ、メルカプト、スルホネート、カルボキシレート、ホスホネート、ハロゲン、ビニル、メタクリロキシ、エステル及びアルキルからなる群から選択される有機官能基であり、
R1はアリール又は(CH2)m(式中、mは0〜14であり得る)であり、
R2は個々に加水分解性官能基であり、
R3は個々に炭素数1〜6のアルキル官能基であり、
nは1〜3である)によって規定される、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項76】
前記加水分解性官能基がアルコキシ、アシルオキシ、ハロゲン及びアミンからなる群から選択される、請求項75に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項77】
前記有機官能性シランが式:
Y(Si(R3)3−n(R2)n)2
(式中、Yはアルキル、アリール、スルフィド又はメラミン等の反応性又は非反応性官能基を含有する任意の有機部分であり、
R2は個々に加水分解性官能基であり、
R3は個々に炭素数1〜6のアルキル官能基であり、
nは1〜3である)によって規定される、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項78】
前記有機官能性シランが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリヒドロキシシリル−1−プロパンスルホン酸、及びオクチルトリエトキシシランからなる群から選択される、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項79】
前記有機化合物がエポキシ架橋性化合物である、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項80】
前記エポキシ架橋性化合物が式:
【化13】
(式中、Xは炭素数0〜14のアルキル若しくは置換アルキル、アリール若しくは置換アリール、エチレンエーテル若しくは置換エチレンエーテル、2個〜20個のエチレンエーテル基を有するポリエチレンエーテル若しくは置換ポリエチレンエーテル、又はそれらの組合せである)によって規定される、請求項
79に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項81】
前記置換がエポキシ基である、請求項80に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項82】
アルキル又は置換アルキルが0個〜6個の炭素を有する、請求項80に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項83】
前記エポキシ架橋性化合物が、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキシレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ジ(2,3−エポキシプロピル)エーテル、1,3−ブタジエンジエポキシド、1,5−ヘキサジエンジエポキシド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、4−ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビスフェノールジグリシジルエーテル、及びマレイミド−エポキシ化合物からなる群から選択される、請求項80に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項84】
前記エポキシ架橋性化合物がグリシジルエーテルである、請求項83に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項85】
前記グリシジルエーテルが式:
【化14】
(式中、R
3は炭素数1〜14のアルキル若しくは置換アルキル、又は
少なくとも1つのエチレンエーテル
結合を形成するために必要な原子である)によって規定される、請求項
84に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項86】
前記R3が炭素数2〜6のアルキル又は置換アルキルである、請求項85に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項87】
前記R3がポリエチレンエーテルである、請求項85に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項88】
前記ポリエチレンエーテルが2個〜220個の重合されたエチレンエーテル基を有する、請求項87に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項89】
前記R
3がヒドロキシ、
【化15】
及び−(CH
2OH)
xCH
2OH(式中、Xは1〜14である)からなる群から選択される基で置換されたアルキルである、請求項
85に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項90】
前記グリシジルエーテルが、
【化16】
からなる群から選択される、請求項
84に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項91】
前記カソードがカルボン酸を更に含む、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項92】
前記カルボン酸が芳香族酸である、請求項91に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項93】
前記芳香族酸がフタル酸及び安息香酸からなる群から選択される、請求項92に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項94】
前記フタル酸がオルト−フタル酸である、請求項93に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項95】
前記有機化合物が2つ以上のカルボン酸基を有するカルボン酸架橋性化合物である、請求項60に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項96】
前記カルボン酸架橋性化合物がカルボン酸基を有する芳香族酸である、請求項95に記載のコンデンサを形成する方法。
【請求項97】
前記カルボン酸架橋性化合物が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、マレイン酸、ムコン酸、クエン酸、トリメシン酸、及びポリアクリル酸からなる群から選択される、請求項96に記載のコンデンサを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、2013年7月24日に出願された係属中の米国仮特許出願第61/857,878号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は固体電解コンデンサを作製するための改良された重合方法に関する。より具体的には、本発明は固体電解コンデンサを形成する改良された方法、及びそれによって形成される改良されたコンデンサに関する。更により具体的には、本発明は、導電性ポリマーカソード層内に改善された架橋を含むことにより、改善された等価直列抵抗(ESR)及びESR安定性から明らかなように接着性が改善されたコンデンサに関する。
【背景技術】
【0003】
電気伝導性ポリマーはコンデンサ、太陽電池及びLEDディスプレイに広く使用されている。電気伝導性ポリマーとしては、ポリピロール、ポリチオフェン及びポリアニリンが挙げられる。それらの中でも、最も商業的に成功した導電性ポリマーはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。PEDOTを塗布する方法の1つは、in situ化学重合又は電気化学重合によってPEDOTポリマーを形成することによるものである。他の方法は、PEDOT自体よりもはるかに良好な溶解性を有する、好ましくはポリアニオンを含むPEDOT分散液としてPEDOTを使用することである。より特には、PEDOT−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSSA)分散液は、その高い伝導性及び良好な膜形成特性のために高い関心を集めている。
【0004】
現在、ほぼ全ての電子部品が、回路基板上の銅パッドと表面実装技術(SMT)部品のはんだ付け可能な終端部(solderable terminations)との間に塗布されたはんだペーストのリフローに十分な温度までの基板及び部品の両方の赤外線(IR)加熱又は対流加熱を用いて回路基板の表面に実装される。表面実装技術の結果として、回路基板上の各SMT部品が一般に180℃よりも高く、通例230℃を超え、250℃よりも高くなることが多いはんだ付け温度に約1分間曝される。コンデンサの構築に使用される材料がかかる高温の影響を受けやすい場合、回路性能の負のシフトを引き起こすESRの顕著な正のシフトが見られることは珍しくない。SMTリフローはんだ付けは、温度安定性ESRを有するコンデンサの需要の大きな原動力となっている。
【0005】
コンデンサの等価直列抵抗(ESR)安定性には、熱機械応力時にカソード層、カソード導電層、導電性接着剤及びリードフレームの間の接合面が良好な機械的完全性を有することが必要である。固体電解コンデンサは組立て、成形、基板実装リフロー等の際に様々な熱機械応力を受ける。基板実装時にコンデンサは250℃を超える温度に曝されることが多い。これらの高温は隣接層間の熱膨張係数(CTE)ミスマッチに起因して接合面に応力を生じさせる。生じた応力は接合面に機械的脆弱化を引き起こす。この機械的脆弱化は層間剥離を引き起こす場合もある。接合面の任意の物理的分離によって層間の電気抵抗の増大、ひいては完成したコンデンサのESRの増大が起こる。
【0006】
PEDOT−PSSAポリマー膜は、十分な機械的強度又は下層面との十分な接着性を有しないことが多い。コンデンサにおいては、低い膜品質及び接着性は加工条件下で低いESR又は低いESR安定性を生じる。ポリマーバインダーを添加して、PEDT−PSSA膜の機械特性及びアノードとの接着性を高めることができる。特許文献1(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)では、導電性ポリマーコーティングは少なくとも1つのポリマー有機バインダーを含むものであった。特許文献2(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)では、導電性ポリマーコーティングはバインダーとしてノボラックポリマー樹脂及びスルホン化ポリエステルを含有する。
【0007】
ポリマーバインダーは、特許文献3(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に記載のように乾燥工程中に「in situ」で形成することができ、特許文献3には多価アルコールと、多価(polyhyric)アルコールと重縮合してポリマーバインダーを「in situ」で形成することができる2つ以上の官能基を有する有機物質とを含むPEDOT−PSSAのポリマー分散液が記載されている。
【0008】
PEDOT−ポリアニオン、特にPEDOT−PSSA導電性ポリマー膜と関連する別の問題はポリアニオンの吸湿(hydroscopic)特性である。ポリアニオンは、コンデンサ加工工程(例えばディッピングコーティングサイクル)時の水又は環境からの湿分を容易に吸収し、導電性ポリマー膜の膨潤を引き起こす。膨潤した導電性膜は通例その後に乾燥工程に供される。この膨潤/収縮サイクルは多くの場合、導電性ポリマー膜を基体から剥離させる。コンデンサ用途において、これは正のESRシフト等の性能劣化として現れる。
【0009】
特許文献4(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)は、−SOOH及び/又は−COOH官能基により自己ドーピングした導電性ポリマーを記載しており、この場合自己ドーピング基は導電性ポリマー構造上に存在する。PEDT−ポリアニオン分散液の場合のような外部ドープされたポリマーに対して自己ドープされた導電性ポリマーを使用することの利点は、耐湿性に不利益なポリアニオンの排除である。それにもかかわらず、これらの自己ドープされたポリマー膜は耐水性又は耐溶媒性が乏しい。導電性ポリマー膜の耐水性は、自己ドーピング基である−SOOH又は−COOHとヒドロキシル基、シラノール基、チオール基、アミノ基又はエポキシ基等の2つ以上の官能基を有する架橋性化合物とを反応させることによって改善することができる。
【0010】
より吸湿性の外部ドープされたPEDOT−PSSAについては、特許文献5(引用することにより本明細書の一部をなすものとする)が、その耐水性を改善するためにPEDOT−PSSA中にモノエポキシ基を有する有機物質を使用することを記載している。これに対し、導電性ポリマー組成物中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物は、より乏しい耐水性及びより高いESRを引き起こした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,987,663号
【特許文献2】米国特許第7,990,684号
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0256117号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0844284号
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0091432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これらの継続的な努力にもかかわらず、導電性ポリマーカソードを利用する電解コンデンサには依然としてコーティング安定性と関連する重大な問題が存在している。当該技術分野における更なる進歩を本明細書に提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、改善されたコンデンサを提供することである。
【0014】
本発明の特定の特徴は、特に加熱後に、より低いESR及び改善されたESR安定性を有するコンデンサである。
【0015】
実現されるこれら及び他の利点がコンデンサに与えられる。コンデンサは、アノードと、前記アノード上の誘電体と、前記誘電体上のカソードとを備える。前記カソードが、−(CR
1R
2CR
3R
4−)
x−(式中、R
1、R
2、R
3又はR
4の少なくとも1つがチオフェン、ピロール又はアニリンから選択される基を含むが、但しR
1、R
2、R
3又はR
4のいずれも−SOOH又はCOOHを含有しない)として規定される導電性ポリマーと、有機官能性シランと、カルボン酸及びエポキシからなる群から選択される少なくとも2つの官能基を有する有機化合物とを含む。
【0016】
更に別の実施の形態が、溶媒と、導電性ポリマーと、有機官能性シランと、エポキシ及びカルボン酸からなる群から選択される2つ以上の官能基を有する有機化合物とを含む導電性ポリマー分散液において提供される。
【0017】
更に別の実施の形態が、
アノードを形成することと、
前記アノード上に誘電体を形成することと、
−(CR
1R
2CR
3R
4−)
x−(式中、R
1、R
2、R
3又はR
4の少なくとも1つがチオフェン、ピロール又はアニリンから選択される基を含むが、但しR
1、R
2、R
3又はR
4のいずれも−SOOH又はCOOHを含有しない)として規定される導電性ポリマーと、
有機官能性シランと、
エポキシ及びカルボン酸からなる群から選択される2つ以上の官能基を有する有機化合物と、
を含む導電層を形成することを含む、
前記誘電体上にカソードを形成することと、
を含む、コンデンサを形成する方法において提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】本発明の実施形態のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、単一架橋剤系と比較して驚くべき相乗効果をもたらす、有機官能性シランとエポキシ及びカルボン酸からなる群から選択される少なくとも2つの官能基を有する有機化合物との2つの架橋剤の組合せを含む二重架橋剤系に関する。加えて、この二重架橋剤系を使用することで、幾つかの実施形態ではポリマー有機バインダーを回避しても、依然としてより低いESR及び改善されたESR安定性を達成することができる。
【0020】
本発明は、本開示の統合された非限定的なコンポーネントを形成する様々な図面を参照して説明される。本開示を通して、同様の要素はそれに応じて参照符号が付されている。
【0021】
本発明の実施形態を
図1の断面概略側面図に示す。
図1では、概して10で表されるコンデンサが、アノードリード線14が伸びる又は取り付けられるアノード12を備える。アノードリード線は、好ましくはアノードリード16と電気接触する。誘電体18がアノード上に形成され、好ましくは誘電体がアノードの少なくとも一部、好ましくは全体を被覆する。カソード20は誘電体上に存在し、誘電体の一部を被覆するが、但しカソード及びアノードは直接電気接触しない。カソードリード22はカソードと電気接触する。多くの実施形態では、当業者には容易に理解されるようにコンデンサが非導電性樹脂24に被覆され、アノードリード及びカソードリードの少なくとも一部が、回路基板への取付けのために露出されていることが好ましい。カソードは複数の副層を含み得る。本発明はカソード層20の改善、より具体的にはカソード層の形成に関する。
【0022】
本発明の実施形態を
図2の部分断面概略図に示す。
図2では、カソード20が概略的に示される複数の中間層201〜204を含み、カソードは誘電体18上に形成される。限定されるものではないが、カソード中間層は好ましくは導電性ポリマーの層、炭素含有層及び金属含有層から選択され、最も好ましくはこの順番である。特に好ましい実施形態では、第1の中間層201はin situ重合、又はディップの間に少なくとも部分乾燥させる導電性ポリマースラリー中での反復ディッピングによって形成される少なくとも1つの導電性ポリマー層である。リードフレーム又は外終端部をポリマーカソードにはんだ付けすることが困難であることは十分に理解される。したがって、はんだ接着を可能にする導電性中間層を設けることが当該技術分野で標準となっている。好ましくは少なくとも1つの炭素中間層である第2の中間層202は通例、導電性ポリマー中間層201に塗布される。炭素中間層又は一連の炭素中間層が導電性ポリマー中間層への接着をもたらし、好ましくは少なくとも1つの金属含有中間層203である第3の中間層が適切に接着する層をもたらす。特に好ましい金属含有層は銀、銅又はニッケルを含む。金属中間層は、カソードリード等の外終端部をはんだ又は接着剤中間層204等によってコンデンサのカソード側に取り付けることを可能にする。
【0023】
本発明の実施形態をフローチャート形式で
図3に示す。
図3では、本発明の固体電解コンデンサを形成する方法を示す。
図3では32でアノードを設ける。34で誘電体をアノードの表面上に形成するが、特に好ましい誘電体はアノードの酸化物である。36でカソード層を形成するが、カソードは複数の中間層を含む。中間層は少なくとも1つの伝導性のポリマー層を含み得るが、本質的に伝導性のポリマーがin situで形成されるか、又は本質的に伝導性のポリマーを含むスラリーでコーティングすることによって層が形成される。中間層はまた、少なくとも1つの炭素含有層及び少なくとも1つの金属含有層を含むのが好ましい。38でアノードリード及びカソードリードをそれぞれアノード及びカソードに取り付け、40でコンデンサを任意ではあるが被覆し、試験するのが好ましい。
【0024】
導電性ポリマー層は少なくとも導電性ポリマー、任意に架橋剤、及びバインダー、ドーパント、有機酸等の任意のアジュバントを含むスラリーを塗布する単一工程で形成することができる。代替的には、導電性ポリマー層は層の成分を別個に塗布する複数工程で形成することができる。一つの実施形態では、一方又は両方の架橋剤をコーティングした後に導電性ポリマー層をコーティングする。別の実施形態では、導電性ポリマーを第1の架橋剤と同時に塗布し、続いて第2の架橋剤を塗布する。導電性ポリマーと架橋剤との混合物が早期に反応してしまい、スラリーのポットライフが低下する可能性があるため、成分を分離させ、それらを同時ではなく順次に塗布することが幾つかの実施形態では有益である。特に好ましい実施形態では、導電性ポリマー及びグリシジルシランは1つのスラリー中に含まれ、グリシジルエーテル等の第2の架橋剤は別個に、好ましくは導電性ポリマーを含有するスラリーの塗布後に塗布される。
【0025】
アノードは好ましくは金属又は導電性金属酸化物から選択される導体である。より好ましくは、アノードは好ましくはAl、W、Ta、Nb、Ti、Zr及びHfから選択されるバルブ金属の混合物、合金又は導電性酸化物を含む。最も好ましくは、アノードはAl、Ta、Nb及びNbOからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。本質的にTaからなるアノードが最も好ましい。導電性ポリマー材料をアノード材料として用いることができる。特に好ましい導電性ポリマーとしては、ポリピロール、ポリアニリン及びポリチオフェンが挙げられる。
【0026】
カソードは好ましくは導電性ポリマー材料を含む導体である。特に好ましい導電性ポリマーとしては、最も好ましくはポリピロール、ポリアニリン及びポリチオフェンから選択される本質的に導電性のポリマーが挙げられる。金属をカソード材料として用いることができるが、バルブ金属はあまり好ましくない。カソードは複数の中間層を含み得るが、導体と終端部との間の接着性を改善するために接着層が用いられる。特に好ましい接着中間層としては、炭素、銀、銅、又はバインダー中の別の導電性材料が挙げられる。カソードは好ましくは導電性ポリマーのスラリー又は当該技術分野で既知の酸化剤によって重合する導電性ポリマー前駆体のディッピング、コーティング又は噴霧によって形成される。炭素含有層及び金属含有層は通例、炭素を含有する液体へのディッピング又はコーティングによって形成される。炭素含有層及び金属含有層は電気めっきによって形成することができ、一つの実施形態では、これが特に金属含有層に好ましい方法である。
【0027】
誘電体は非導電層であり、本明細書では特に限定されない。誘電体は金属酸化物又はセラミック材料であってもよい。特に好ましい誘電体は、形成の単純さ及び使用の容易さから金属アノードの酸化物である。誘電体はアノードをアノード酸化溶液にディッピングするとともに、電気化学的変換によって形成するのが好ましい。代替的には、誘電体前駆体を噴霧又は印刷によって塗布した後、焼結して層を形成することができる。誘電体がアノード材料の酸化物である場合にはディッピングが好ましい方法であるが、誘電体がセラミック等の異なる材料である場合、噴霧又はコーティング法が好ましい。
【0028】
アノードリード線は低い抵抗率を有し、アノード材料に適合するように選ばれる。アノードリード線はアノード材料と同じであってもよいし、又はその導電性酸化物であってもよい。特に好ましいアノードリード線としては、Ta、Nb及びNbOが挙げられる。アノードリード線の形状は特に限定されない。好ましい形状としては、円形、楕円形、長方形及びそれらの組合せが挙げられる。アノードリード線の形状は最適な電気特性で選ばれるのが好ましい。
【0029】
導電性ポリマーは、−(CR
1R
2−CR
3R
4−)
x−(式中、R
1、R
2、R
3又はR
4の少なくとも1つが、置換されていてもよいチオフェン、ピロール又はアニリンから選択される基を含み、下付き文字xは少なくとも2〜1000以下である)として規定される骨格を有する。R
1、R
2、R
3又はR
4のいずれも−SOOH又はCOOHを含有しない。水素及び炭素数5未満の低級アルキルが特に好適である。チオフェンが特に好ましく、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が最も好ましい。
【0030】
導電性ポリマー層は、より低いESRを有する改善されたコンデンサをもたらすように相乗的に機能する2つの架橋剤を含む。第1の架橋剤は有機官能性シランであり、第2の架橋剤はエポキシ及びカルボン酸から選択される少なくとも2つの官能基を有する有機化合物である。有機官能性シラン、より特にはグリシジルシラン架橋剤が当該技術分野で教示されているが、過剰量のシラン架橋剤は乾燥導電性ポリマー膜を硬く及び脆弱にし、結果としてESR及びESR安定性がシランの濃度の増大とともに悪化することが広く知られている。したがって、ESRを最小限に抑えるために導電性ポリマー中のシランの濃度を制限しなければならないことから、当業者は達成すべき架橋の量を制限してきた。有機官能性シランはコンデンサ中の架橋剤としての理論的可能性に達したことはない。
【0031】
特許文献5に記載のように、耐水性を高めるために1つのエポキシ基を有する有機化合物が当該技術分野で教示されている。しかしながら、2つ以上のエポキシ基を用いる場合、耐水性はそれほど改善されない。従来技術の教示は、2つ以上の官能架橋基を有する架橋性化合物が架橋反応後に立体的に嵩高くなり、導電性ポリマー中に均一に広がることができず、したがって耐水性を効果的に改善することができないというものである。したがって、2つ以上のエポキシ基を有する有機化合物は、過剰な吸水によりポリマーカソード層が剥離し、コンデンサが使い物にならなくなる傾向があるため、電子コンデンサへの使用に適さないとみなされている。
【0032】
驚くべきことに、有機官能性シランと2つ以上の架橋基、特に2つ以上のエポキシ基を有する有機化合物との組合せは相乗的に反応し、特に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ架橋性化合物について予想されるように吸水を増大させることなく、所与の有機官能性シランレベルではるかに低いESRをもたらす。この予想外の相乗効果は、以前に可能であると考えられていたよりも高濃度の有機官能性シランとエポキシ架橋性化合物との組合せ、ひいてはより多くの架橋部位の使用を可能にする。架橋の増加は、より低いESRから明らかなように導電性ポリマー層の構造的完全性を増大させる。
【0033】
更により驚くべきことに、有機官能性シランと2つ以上のカルボン酸基を有する有機化合物との組合せは相乗的機能も示し、所与の有機官能性シランレベルではるかに低いESRをもたらす。"Mixed sulfonic-carboxylic anhydrides. I. Synthesis and thermal stability. New syntheses of sulfonic anhydrides", by Yehuda Mazur, Michael H. Karger, J. Org. Chem., 1971, 36 (4), pp 528-531に記載のように、カルボン酸基は通常のコンデンサ加工条件下で−SOOH基又は−COOH基に対して反応性が高いとはみなされない。ESRの改善は有機官能性(organofuncational)シランとカルボン酸架橋性化合物、及び導電性ポリマー分散液の他の成分との反応によるものであり得る。本明細書ではオルガノシラン及びエポキシ架橋性化合物の二重架橋剤系又はオルガノシラン及びカルボン酸架橋系の二重架橋剤系について論考しているが、3つ若しくは4つ、又は更に多くの架橋剤を含有する多重架橋剤系が想定される。
【0034】
有機官能性シラン濃度は、固体分約0.2wt%〜10wt%で導電性ポリマー分散液の約0.05wt%〜約10wt%という範囲であり得る。より好ましくは、有機官能性シラン濃度は導電性ポリマーの約0.1wt%〜約5wt%、更により好ましくは約0.1wt%〜約2wt%という範囲であり得る。
【0035】
有機官能性シランは式:
XR
1Si(R
3)
3−n(R
2)
n
(式中、Xはアミノ、エポキシ、無水物、ヒドロキシ、メルカプト、スルホネート、カルボキシレート、ホスホネート、ハロゲン、ビニル、メタクリロキシ、エステル及びアルキル等の有機官能基であり、R
1はアリール又はアルキル(CH
2)
m(式中、mは0〜14であり得る)であり、R
2は個々にアルコキシ、アシルオキシ、ハロゲン、アミン又はそれらの加水分解産物等の加水分解性官能基であり、R
3は個々に炭素数1〜6のアルキル官能基であり、nは1〜3である)によって規定される。
【0036】
有機官能性シランはまた、式:
Y(Si(R
3)
3−n(R
2)
n)
2
(式中、Yはアルキル、アリール、スルフィド又はメラミン等の反応性又は非反応性官能基を含有する任意の有機部分であり、R
3、R
2及びnは上記で規定される)によって規定される二脚状(dipodal)であることができる。有機官能性シランはまた、シラン修飾ポリブタジエン又はシラン(silanbe)修飾ポリアミン等の多官能性シラン又はポリマーシランであることができる。
【0037】
上記有機官能性シランの例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピル(propy)トリエトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリヒドロキシシリル−1−プロパンスルホン酸、オクチルトリエトキシ(ethyoxy)シラン、及びビス(トリエトキシシリル)オクタン等が挙げられる。これらの例は本発明を説明するために用いられ、決定的なものとみなすべきではない。
【0038】
特に好ましい有機官能性シランは式:
【化1】
(式中、R
1は炭素数1〜14のアルキルであり、より好ましくはメチル、エチル及びプロピルから選択され、R
2は各々独立して炭素数1〜6のアルキル又は置換アルキルである)によって規定されるグリシジルシランである。
【0039】
特に好ましいグリシジルシランは式:
【化2】
によって規定される3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、便宜上これを本明細書中で「シランA」と称する。
【0040】
エポキシ及びカルボン酸から選択される少なくとも2つの官能基を有する有機化合物である第2の架橋剤は、固形分約0.2wt%〜約10wt%で導電性ポリマー分散液の約0.1wt%〜約10wt%という好ましい範囲の濃度を有する。より好ましくは、グリシジルエーテル濃度は導電性ポリマーの約0.2wt%〜約5wt%、更により好ましくは約0.2wt%〜約2wt%という範囲であり得る。
【0041】
少なくとも2つのエポキシ基を有する第2の架橋剤は本明細書中でエポキシ架橋性化合物と称され、式:
【化3】
(式中、Xは炭素数0〜14、好ましくは炭素数0〜6のアルキル若しくは置換アルキル、アリール若しくは置換アリール、エチレンエーテル若しくは置換エチレンエーテル、2個〜20個のエチレンエーテル基を有するポリエチレンエーテル若しくは置換ポリエチレンエーテル、又はそれらの組合せである)によって規定される。特に好ましい置換はエポキシ基である。
【0042】
2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ架橋性化合物の例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(PGDGE)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)、ペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキシレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、レゾルシノールグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル(GDGE)、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールジグリシジルエーテル(ソルビトール−DGE)、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ジ(2,3−エポキシプロピル)エーテル、1,3−ブタジエンジエポキシド、1,5−ヘキサジエンジエポキシド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、4−ビニルシクロヘキセンジエポキシド、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、マレイミド−エポキシ化合物等が挙げられる。
【0043】
好ましいエポキシ架橋性化合物は式:
【化4】
(式中、R
3は炭素数1〜14、好ましくは炭素数2〜6のアルキル又は置換アルキル;エチレンエーテル、又は2個〜20個のエチレンエーテル基を有するポリエチレンエーテル;ヒドロキシ、又は、
【化5】
、又は−(CH
2OH)
xCH
2OH(式中、Xは1〜14である)から選択される基で置換されたアルキルである)によって規定されるグリシジルエーテルである。
【0044】
特に好ましいグリシジルエーテルは下記により表される:
【化6】
EGDGE:エチレングリコールジグリシジルエーテル
【化7】
(式中、nは1〜220の整数である);
PEGDGE:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
【化8】
BDDGE:1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル
【化9】
GDGE:グリセロールジグリシジルエーテル
【化10】
ソルビトール−DGE:ソルビトールジグリシジルエーテル
【0045】
少なくとも2つのカルボン酸官能基を有する有機化合物は、本明細書中でカルボン酸架橋性化合物と称される。
【0046】
上記カルボン酸架橋性化合物の例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、マレイン酸、ムコン酸、クエン酸、トリメシン酸、及びポリアクリル酸等が挙げられるが、これらに限定されない。特に好ましい有機酸はフタル酸等の芳香族酸であり、特にオルト−フタル酸であり、これはESRを低下させる。架橋性官能基と架橋剤との反応は、コンデンサ製造の通常の加工工程中に生じる高温で起こる。
【0047】
固体電解質コンデンサの構築及び製造は文書で十分に報告されている。固体電解コンデンサの構築では、バルブ金属をアノードとして利用するのが好ましい。アノード体は高純度粉末の圧縮及び焼結によって形成される多孔質ペレット、又はアノード表面積を増大させるようにエッチングされた箔であることができる。バルブ金属の酸化物はアノードの全表面を被覆し、コンデンサの誘電体として利用されるように電気分解により形成される。固体カソード電解質は通例、極めて限られた種類の材料から選ばれ、二酸化マンガン;又はポリアニリン、ポリピロール(polypyrol)、ポリチオフェン及びそれらの誘導体等の本質的に導電性のポリマーを含む電気伝導性有機材料が挙げられる。固体カソード電解質は誘電体の全表面を被覆し、誘電体と直接密接に接触するように塗布される。固体電解質に加えて、固体電解質コンデンサのカソード層は通例、アノード体の外部の幾つかの層からなる。表面実装構築の場合、これらの層には通例、炭素層と、ポリマー又は樹脂マトリックスに結合した高導電性金属、典型的には銀を含有する層であり得るカソード導電層と、銀充填接着剤等の導電性接着剤層とが含まれる。固体カソード電解質を含む層、導電性接着剤及びそれらの間の層は、本明細書では通例、一方の面で誘電体、もう一方の面でカソードリードへの接着が可能となるように設計された複数の中間層を含むカソードと総称される。高導電性金属リードフレームが、陰極終端部のカソードリードとして使用されることが多い。様々な層は、固体電解質を外部回路に連結し、その後の加工、基板実装又は顧客による使用時に生じ得る熱機械的損傷から誘電体を保護する働きもする。
【0048】
導電性ポリマーカソードの場合、導電性ポリマーは通例、化学酸化重合、電気化学酸化重合、又は予め重合した分散液のディッピング、噴霧若しくは印刷によって塗布される。
【0049】
一つの実施形態では、導電性ポリマー層をスラリーとして添加し、スラリーをディッピング又はコーティングによって表面に塗布する。スラリーは溶媒、好ましくは水と、導電性ポリマー、好ましくはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と、有機官能性シランと、エポキシ及びカルボン酸から選択される少なくとも2つの官能基を有する有機化合物である第2の架橋剤とを含む。溶媒は好ましくは水、アルコール又はアセトニトリル等の極性溶媒、及び水と極性溶媒との混合物であり、水が最も好ましい溶媒である。溶媒は、適切なコーティングを達成するために好適な粘度を達成するのに十分な比率であり、溶媒として望ましくない付加的な溶媒は通例塗布後に除去される。有機官能性シランは、導電性ポリマー分散液1グラム当たり0.0005グラム〜0.1000グラムの量で存在するのが好ましい。より好ましくは、有機官能性シランは好ましくは導電性ポリマー分散液1グラム当たり0.001グラム〜0.050グラムの量で存在する。第2の架橋剤は、導電性ポリマー1グラム当たり0.001グラム〜0.100グラムの量で存在するのが好ましい。より好ましくは、エポキシ架橋性化合物又はカルボン酸架橋性化合物は、好ましくは導電性ポリマー1グラム当たり0.002グラム〜0.050グラムの量で存在する。
【0050】
導電性ポリマー、溶媒、有機官能性シラン及び第2の架橋剤とは別に、スラリーは伝導性向上添加剤、表面活性物質、被覆率向上添加剤及び任意にポリマーバインダー等の他の添加剤も更に含み得る。
【0051】
有機酸、特に芳香族有機酸はスラリーの幾つかの実施形態において、及びスラリーによって形成されるコンデンサにおいて有益である。有機酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロパン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、ムコン酸等を挙げることができる。特に好ましい有機酸はフタル酸、特にオルト−フタル酸、及び安息香酸であり、どちらもESRを更に低下させ、被覆率を改善する。スラリーは導電性ポリマー分散液1グラム当たり0グラム〜0.10グラムの有機酸を含むのが好ましい。
【0052】
スラリーはアセチレンジオール、アルキルカルボキシレート、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、フルオロアルキル界面活性剤又は任意の他の表面活性物質等の表面活性添加剤を含有し得る。
【0053】
スラリーはジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、エチレングリコール、プロピレングリコール等の導電性向上添加剤を含有し得る。
【0054】
導電性ポリマー層は好ましくはドーパント、より好ましくはポリアニオンドーパントを含む。ポリアニオンドーパントは、全てのポリアニオンがドーパントとして機能するわけではないが、最大90wt%の量まで存在することができる。約5wt%〜約30wt%、より好ましくは12wt%〜約25wt%、最も好ましくは約21wt%のドーパント濃度を有するのが好ましい。5−スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホネート、p−トルエンスルホネート又は塩化物等の任意の好適なドーパントを使用することができる。特に例示的なドーパントはp−トルエンスルホネートである。特に好ましいポリアニオンドーパントはポリスチレンスルホン酸である。
【0055】
炭素層は固体電解質と銀層との間の化学的障壁として働く。この層の重要な特性としては、下層への接着、下層の湿潤、一定の被覆率、下層への浸透、バルク伝導性、界面抵抗、銀層との適合性、積層(buildup)及び機械特性が挙げられる。
【0056】
好ましくは銀層であるカソード導電層は、電流をリードフレームからカソードへ、及びカソード周辺からリードフレームに直接連結していない側へと伝導する働きをする。この層の重要な特徴は高い伝導性、炭素層への接着強度、炭素層の湿潤及び許容可能な機械特性である。
【0057】
本明細書全体を通して、0〜6又は0.1〜0.6等の表示の範囲は、列挙される最高の有効数字と同じ有効桁数の全ての中間範囲を指す。
【実施例】
【0058】
PEDOT−PSSA及び導電性ポリマー分散液(dipsersion)の調製
冷却ジャケットを備える4L容のプラスチックジャーに、初めに125gのPSSA、2531gのDI水、28.5gの1%硫酸鉄(III)及び21.5gのペルオキソ二硫酸ナトリウムを投入した。内容物を、丸孔径1.6mmの有孔ステータースクリーンを備えるローター−ステーター混合システムを用いて混合した。続いて、11.25gの3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を滴下した。反応混合物を、ローター−ステーター混合システムを用いて更に23時間、8000RPMの剪断速度で連続的に剪断した。分散液を陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂で処理し、濾過して、PEDOT−PSSAベーススラリーを得た。
【0059】
導電性ポリマー分散液を、PEDOT−PSSAベーススラリーと他の添加剤及び架橋剤とを混合することによって調製した。
【0060】
コンデンサ製造例1
一連のタンタルアノード(33マイクロファラッド、25V)を準備した。タンタルがアノード酸化されてタンタルアノード上に誘電体を形成した。こうして形成されたアノードをトルエンスルホン酸鉄(III)酸化剤の溶液に1分間ディッピングし、続けてエチルジオキシチオフェンモノマーに1分間ディッピングした。60分間の重合の完了後、アノードを洗浄して過剰のモノマー及び反応の副産物を除去し、これによりアノードの誘電体上に導電性ポリマー(PEDOT)の薄層を形成した。このプロセスを十分な厚みが達成されるまで繰り返した。導電性ポリマー分散液を塗布して、外部ポリマー層を形成した。乾燥後、トルエンスルホン酸デカンジアミンと導電性ポリマー分散液との交互層を塗布し、更に4〜5回繰り返した。導電性ポリマー層を有するアノードを洗浄し、乾燥させた後、グラファイト層及び銀層の連続コーティングを行い、固体電解コンデンサを作製した。パーツを組み立て、パッケージングし、表面実装した。ESRを表面実装の前後に測定した。
【0061】
コンデンサ製造例2
一連のタンタルアノード(330マイクロファラッド、6V)を準備した。タンタルがアノード酸化されてタンタルアノード上に誘電体を形成した。こうして形成されたアノードをトルエンスルホン酸鉄(III)酸化剤の溶液に1分間ディッピングし、続けてエチルジオキシチオフェンモノマーに1分間ディッピングした。60分間の重合の完了後、アノードを洗浄して過剰のモノマー及び反応の副産物を除去し、これによりアノードの誘電体上に導電性ポリマー(PEDOT)の薄層を形成した。このプロセスを十分な厚みが達成されるまで繰り返した。導電性ポリマー分散液を塗布して、外部ポリマー層を形成した。乾燥後、このプロセスを更に2回繰り返した後、グラファイト層及び銀層の連続コーティングを行い、固体電解コンデンサを作製した。パーツを組み立て、パッケージングし、表面実装した。ESRを表面実装の前後に測定した。
【0062】
比較例1
120gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、4.8gのDMSO及び0.48gの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランA)を添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0063】
比較例2
0.96gのシランAを使用して導電性ポリマー分散液を調製した以外は比較例1と同じ。
【0064】
比較例3
1.44gのシランAを使用して導電性ポリマー分散液を調製した以外は比較例1と同じ。
【0065】
本発明例1
120gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、4.8gのDMSO、0.48gのシランA及び0.96gのEGDGEを添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0066】
120gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、4.8gのDMSO、0.96gのシランA及び0.48gのEGDGEを添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0067】
二重架橋剤系とグリシジルシラン架橋剤を用いた単一架橋剤系とを比較するために、表1に提示する様々な量の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いて一連の比較用ポリマースラリーを調製した(比較例1〜3)。タンタルコンデンサを、ポリマーカソード層の形成にポリマースラリーを用いて形成した。アノード終端部及びカソード終端部を、従来技術を用いた同一の方法で形成した。表1で述べられるように、ESRは当該技術分野における要望に反して架橋剤の増加とともに増大した。本発明のサンプルを、表1に提示する様々な量のシラン架橋剤を様々な量のEDDGE架橋剤とともに用いて調製した。ESRを測定し、表1に結果を示した。結果から、改善されたESRの相乗効果が本発明の二重架橋剤系によって得られることが明らかに示される。
【0068】
【表1】
【0069】
比較例4
80gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、3.2gのDMSO、0.32gのシランA及び2.56gの市販のポリエステルバインダー(44%水分散液)を添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0070】
比較例5
Heraeus(ドイツ、レバークーゼン)の市販のPEDOT−PSSA導電性ポリマー分散液Clevios(商標) K(KV2)を使用し、コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0071】
本発明例3
80gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、3.2gのDMSO、0.32gのシランA及び0.64gのPEGDGEを添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0072】
本発明例4
PEGDGEの代わりにBDDGEを使用して導電性ポリマー分散液を調製した以外は比較例4と同じ。
【0073】
本発明例5
PEGDGEの代わりにGDGEを使用して導電性ポリマー分散液を調製した以外は比較例4と同じ。
【0074】
本発明例6
PEGDGEの代わりにソルビトール−DGEを使用して導電性ポリマー分散液を調製した以外は比較例4と同じ。
【0075】
実施例3〜6では一連のジグリシジルエーテル架橋剤スラリーを、表2に提示する成分及びその濃度(levels)で調製した。コンデンサをコンデンサ製造例1と同様にスラリーを用いて形成し、リフロー温度260℃での従来の表面実装技術(SMT)を用いた従来の実装の前後にESRを測定した。比較例4を、シランA及び市販のポリエステルバインダーを用いて同様に作製した。比較例5では市販のポリマースラリーKV2を使用した。全ての本発明例が同様に、実験条件下で2つの比較例と比較してより低いESR値を示した。SMT実装の後、本発明例は全て不利益なESRシフトを示さず、比較例よりもはるかに安定していた。
【0076】
【表2】
【0077】
比較例6
200gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、8gのDMSO及び0.8gのシランAを添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0078】
比較例7
200gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、8gのDMSO及び0.8gのシランAを添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例2のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0079】
本発明例7
200gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、8gのDMSO、0.8gのシランA及び2gのo−フタル酸(PA)を添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0080】
本発明例8
200gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、8gのDMSO、0.8gのシランA及び2gのo−フタル酸(PA)を添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例2のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0081】
グリシジルシラン架橋剤及びフタル酸架橋剤を用いた二重架橋剤系は、シラン架橋剤のみを用いた比較例に対して改善されたESR及びESR安定性を示した。
【0082】
【表3】
【0083】
本発明例9
80gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、3.2gのDMSO、0.32gのシランA及び0.56gのEGDGEを添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0084】
本発明例10
EGDGEの代わりに0.64gのGDGEを使用して導電性ポリマー分散液を調製した以外は比較例9と同じ。
【0085】
本発明例11
EGDGEの代わりに0.72gのソルビトール−DGEを使用して導電性ポリマー分散液を調製した以外は比較例9と同じ。
【0086】
本発明例12
80gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、3.2gのDMSO、0.32gのシランA、0.56gのPA及び0.56gのEGDGEを添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0087】
本発明例13
80gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、3.2gのDMSO、0.32gのシランA、0.64gのGDGE及び0.48gのPAを添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0088】
本発明例14
80gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、3.2gのDMSO、0.32gのシランA、0.40gのPA及び0.72gのソルビトール−DGEを添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。コンデンサ製造例1のプロセスに従って固体コンデンサを作製した。
【0089】
導電性ポリマースラリーを、場合によってはオルト−フタル酸を更に組み込んで上記のように調製した。オルト−フタル酸の添加は、更なるESRの低減及び改善されたアノード縁角部被覆率(edge and corner coverage)という2つの利点を有していた。縁角部被覆率は目視観察によって評価した。99%は全ての角部及び縁部が被覆されていることを意味する。
【0090】
【表4】
【0091】
比較例8
比較例5と同じ。
【0092】
本発明例15
600gのPEDOT−PSSA導電性ポリマーに、24gのDMSO及び2.4gのシランAを添加した。導電性ポリマー分散液を容器内で一晩回転混合した。導電性ポリマー層を塗布した後、アノードを2.5%のEGDGEエタノール溶液に5分間浸し、乾燥させて架橋剤塗膜を形成した以外はコンデンサ製造例1のプロセスに従い、固体コンデンサを作製した。それ以外のアノード製造プロセスは同じままにした。
【0093】
本発明例16
EGDGEエタノール溶液の代わりに2.5%のソルビトール−DGEエタノール溶液を使用した以外は本発明例15と同じ。
【0094】
二重架橋剤は2工程で別個に塗布することもできる。第1の架橋剤シランAは導電性ポリマー分散液に含まれ、第2の架橋剤(グリシジルエーテル)はその後に別個のコーティングとして塗布した。このプロセスでも、1工程コーティングで塗布した市販の導電性ポリマー分散液KV2よりも良好なESRが示された。
【0095】
【表5】
【0096】
二重架橋剤系は、架橋剤の一方が導電性ポリマーPEDOT−PSSA自体を容易に架橋することができない状況下であっても、単一架橋剤系又はポリマーバインダーと比較して良好なESR及びESR安定性を示した。この驚くほど良好な電気性能は、それらの間の又は導電性ポリマー分散液中の他の成分との架橋反応による2つの異なるタイプの架橋剤の相乗効果にのみ起因し得る。
【0097】
本発明を、特に好ましい実施形態を参照してそれに限定することなく説明した。当業者であれば、特に示されていないが、添付の特許請求の範囲においてより具体的に示されている本発明の範囲内にある追加の実施形態及び改良形態を認識するであろう。