(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記工作機械の上面または側面に透光性を有する領域を備え、前記撮影装置が前記透光性を有する領域を介して、前記被駆動要素を撮影することを特徴とする請求項3に記載の振動状態検出装置。
前記被駆動要素が並進運動するとき、前記被駆動要素の移動方向と異なる方向から前記被駆動要素を撮影するように前記撮影装置が配置されていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の振動状態検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、図面を参照しながら、本発明を実施するための様々な実施形態を説明する。各図面中、同一の機能を有する対応する部材には、同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しないものとする。
工作機械を示す斜視図においては、加工テーブルの移動方向(前後)をZ軸とし、サドルの水平な移動方向(左右)をX軸とし、主軸頭の垂直な移動方向(上下)をY軸とする。
【0011】
(第1の実施形態に係る振動状態検出装置100)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る振動状態検出装置の構成を示すブロックダイアグラムである。なお、
図1に示す矢印は、信号の送信方向を示す。
図2は、本発明の振動状態検出装置を備えた工作機械における撮影装置の1つの配置例を模式的に示す斜視図である。
【0012】
本実施形態に係る振動状態検出装置100は、
(1)工作機械2に備えられた駆動装置(例えば、サーボモータ50A〜50D)により駆動される被駆動要素(例えば、加工テーブル8、サドル10、主軸頭12、主軸24)のうち、少なくとも1の被駆動要素を撮影する撮影装置130と、
(2)撮影装置130により取得された所定の時間経過ごとの画像データに基づいて、被駆動要素の振動に対応するパラメータを算出する振動状態解析部110と、
(3)振動状態解析部110により算出された振動に対応するパラメータに基づき、振動を抑制する制御が必要な被駆動要素を特定する被駆動要素特定部120と、
を備える。
【0013】
図1に示すように、振動状態検出装置100(被駆動要素特定部120)から、工作機械2の制御装置の一部として構成される駆動制御部200及び表示装置30に信号が送信される。振動状態解析部110及び被駆動要素特定部120は、工作機械2の制御装置の一部として構成される場合もあり得るし、外部装置として存在する振動状態検出装置100に備えられていて、ケーブル等を介して工作機械2の制御装置に電気的に繋がっている場合もあり得る。表示装置30も、工作機械2に備えられている場合もあり得るし、外部装置として存在する振動状態検出装置100に備えられている場合もあり得る。
【0014】
<工作機械2>
次に、
図2に示す工作機械2の概要を説明する。
図2では、一例として横型マシニングセンタを示すが、これに限られるものではなく、例えば、縦型マシニングセンタや被削物側が回転する旋盤型の工作機械に振動状態検出装置100を適用することもできる。
【0015】
工作機械2の基部となるベッド4は、平面視で矩形形状を有する。ベッド4の後端部に、門形状のコラム6が、ベッド4と共にL字形の側面形状を形成するように、起立した状態で配置固定されている。ベッド4上であってコラム6の前側に、サーボモータ50Aで駆動される加工テーブル8 がZ 軸(前後)方向に移動可能に配置されている。コラム6の前面に、サーボモータ50Bで駆動されるサドル10が、X軸(左右)方向に移動可能に配置されている。また、サドル10に、サーボモータ50Cで駆動される主軸ベース18がY軸(上下)方向に移動可能に配置されている。
【0016】
加工テーブル8は、ベッド4上に配置された左右一対のガイドレール14、14により、Z軸方向に移動自在に支持されている。サドル10は、コラム6の上端部及び下端部に配置された上下一対のガイドレール16、16により、X軸方向に移動自在に支持されている。
主軸ベース18 は、サドル10の左、右縦辺部に配置された左右一対のガイドレール20、20により、Y軸方向に移動自在に支持されている。矩形状の主軸ベース18には、主軸頭12が軸心をZ軸方向に向けて固定されている。よって、サーボモータ50Cで駆動される主軸頭12がY軸(上下)方向に移動可能に配置されているということもできる。
【0017】
主軸頭12は円筒状の形状を有し、主軸頭12内には主軸24が挿入配置されている。この主軸24は、複数の軸受を介して主軸頭12により回転自在に支持されている。また主軸頭12内には、サーボモータ50Dが組み込まれており、サーボモータ50Dにより主軸24が回転駆動される。この主軸24の前端部には、回転工具を支持する工具ホルダが着脱可能に装着されている。この着脱機構により、様々な工具を交換して装着することができる。
【0018】
以上のような構成により、加工テーブル8に載せられた被削物を、主軸24に取り付けられた回転する工具で切削加工することができる。加工テーブル8のZ軸方向の移動による被削物の送り込みや、サドル10のX軸方向の移動または主軸頭12のY軸方向の移動による回転工具の移動を伴いながら、回転工具で被削物を加工するとき、切削抵抗等により振動が生じる。この場合、被駆動要素(加工テーブル8、サドル10、主軸頭12、主軸24)が有する固有振動数と、発生する振動数とが近い場合に共鳴が生じる可能性がある。
【0019】
<振動状態検出装置100>
本実施形態に係る振動状態検出装置100は、このような切削により生じる振動に対応するパラメータを算出し、どの被駆動要素で振動が生じているか判別することができる。
図2に示す配置例では、被駆動要素(加工テーブル8、サドル10、主軸頭12、主軸24)のうちの少なくとも1つの被駆動要素を撮影する撮影装置130が、工作機械2(詳細には、カバー28)の内部に設けられている。更に詳細に述べれば、ベッド4の側方であって、加工テーブル8の載置面よりもやや上方に配置されている。撮影装置130は、CCDやCMOS等の撮像素子と、被写像を撮像素子に結像するレンズを有する高速度カメラが好ましく、特に4000フレーム/秒以上の撮像が可能なものが好ましい。
撮影装置130が工作機械2の内部に配置されている場合には、被駆動要素を直接撮影することができ、カバー28により、撮影装置130を外部から守ることができる。
【0020】
図2に示す配置例では、撮影装置130は、X軸方向から被駆動要素を撮影するようになっている。撮影装置130が撮影可能な被駆動要素として、サーボモータ50Aより駆動される加工テーブル8、サーボモータ50Bより駆動されるサドル10、サーボモータ50Cより駆動される主軸頭12、及びサーボモータ50Dより回転駆動される主軸24が挙げられる。ただし、撮影装置130の撮影方向は、必ずしもX軸方向と一致する必要はなく、概略X軸方向に沿っていればよい。
【0021】
加工テーブル8、サドル10または主軸頭12の場合、駆動装置(サーボモータ50A〜C)により並進運動し、主軸24の場合、駆動装置(サーボモータ50D)により回転運動する。このとき、Z軸方向に移動する加工テーブル8またはY軸方向に移動する主軸頭12が被駆動要素の場合には、撮影装置130は、被駆動要素の移動方向と異なる方向から被駆動要素を撮影するように配置されていることになる。
一方、X軸方向に移動するサドル10が被駆動要素の場合には、撮影装置130が、被駆動要素の移動方向と同じ方向から被駆動要素を撮影するように配置されていることになる。
【0022】
振動状態解析部110において、サーボモータ50Dにより回転駆動される主軸24を含め、何れの被駆動要素の場合であっても、撮影装置130により取得された画像データを既知の画像解析手段を用いて画像解析することによって、各被駆動要素の外形または特定の箇所を把握することができる。よって、一定の時間経過ごとの画像データに示された被駆動要素の外形または特定の箇所の位置の変化から、振動に対応するパラメータとして、振動数、振動の振幅、及び振動の方向を算出することができる。
【0023】
特に、撮影装置130が被駆動要素の移動方向と異なる方向から被駆動要素を撮影するようになる、加工テーブル8(Z軸方向に移動)または主軸頭12(Y軸方向に移動)の場合には、振動による変位を確実に撮影することができるので、振動に対応するパラメータをより正確に算出することができる。更に、撮影装置130の撮影方向が、被駆動要素の移動方向と略直交している場合には、振動による変位をより確実に撮影することができる。
【0024】
被駆動要素を撮影する方向によっては、振動の振幅または振動の方向を正確に把握できない場合もあり得る。しかし、そのような場合であっても、周期的な行き戻りの動き及びその周期は把握可能であり、少なくとも振動数は検出可能である。
【0025】
被駆動要素である加工テーブル8、サドル10、主軸頭12、主軸24の外形または特定の箇所の位置変化から振動に対応するパラメータを算出する場合には、主軸24の先端に取り付けられた回転工具に切削油や切り屑等が付着している場合であっても、切削に起因して工作機械2の各被駆動要素に生じる振動に対応するパラメータを確実に算出することができる。
仮に、被駆動要素に切削油や切り屑等が付着した場合であっても、周期的な行き戻りの動き及びその周期は把握可能であり、少なくとも振動数は検出可能である。
【0026】
本実施形態に係る振動状態検出装置100では、被駆動要素特定部120により、振動状態解析部110で算出された振動に対応するパラメータに基づいて、”振動を抑制する制御が必要な被駆動要素”を特定することができる。例えば、被駆動要素の画像データから算出した振幅が所定の閾値を超える場合に、その被駆動要素を”振動を抑制する制御が必要な被駆動要素”と判定することができる。また、被駆動要素の画像データから算出した振動数が、共振等を起こしやすい所定の領域内にある場合に、その被駆動要素を”振動を抑制する制御が必要な被駆動要素”とすることもできる。
【0027】
<振動状態検出処理>
次に、振動状態検出のための制御処理について、フローチャートを参照しながら説明する。
図3は、本発明の第1の実施形態に係る振動状態検出装置100により実施される振動状態検出処理の一例を示すフローチャートである。
図3において、まず、振動状態解析部110が、撮影装置130により取得された画像データに基づいて、各被駆動要素の振動に対応するパラメータを算出する(ステップS10)。次に、被駆動要素特定部120が、算出された振動に対応するパラメータ(例えば、振幅)のうち、閾値を越えるパラメータがあるか否か判断する(ステップS12)。閾値を越えるパラメータがない(NO)の場合には、パラメータの値が閾値を越えるまで、ステップS10の計算を継続する。この判断で、もし、閾値を越えるパラメータがある(YES)と判別したときには、パラメータが閾値を超えた被駆動要素が何であるか特定する(ステップS14)。
【0028】
特定した”振動を抑制する制御が必要な被駆動要素”を被駆動要素Aとすれば、次に、被駆動要素特定部120が、被駆動要素A、及び少なくとも振動数を含む振動に対応するパラメータの情報を含む信号を、工作機械2の駆動制御部200へ送信する(ステップS16)。更に、被駆動要素特定部120が、被駆動要素A、及び少なくとも振動数を含む振動に対応するパラメータの情報を含む信号を表示装置の駆動回路へ送信して、表示装置30に被駆動要素Aの名称やその振動に対応するパラメータを表示して(ステップS18)、一連の制御処理を終了する。なお、被駆動要素Aが複数存在する場合もあり得る。
【0029】
以上のように、振動状態解析部110が、撮影装置130により取得された被駆動要素の所定の時間経過ごとの画像データに基づいて算出することにより、工作機械2の工具に切削油や切り屑等が付着している場合であっても、少なくとも振動数を含む、切削に起因して工作機械2に生じる振動に対応するパラメータを確実に得ることができる。
更に、被駆動要素特定部120が、振動状態解析部110により算出された振動に対応するパラメータに基づいて、振動を抑制する制御が必要な被駆動要素Aを特定するので、振動を抑える適確な制御に適用したり、工作機械2のオペレータに振動に関す情報を適確に知らせることができる。
【0030】
なお、上記のステップS12の判断では、振動に対応するパラメータが閾値を越えるか否か判断しているが、これに限られるものではなく、振動に対応するパラメータ(例えば、振動数)が所定の範囲内にあるか否かを判断する場合もあり得る。
【0031】
(本発明に係る駆動制御部200)
次に、被駆動要素(加工テーブル8、サドル10、主軸頭12、主軸24)の駆動装置(サーボモータ50A〜50D)をフィードバック制御する制御装置であって、振動状態検出装置100から受信した信号に基づいて、駆動装置で駆動される被駆動要素の振動を抑制するための制御処理を実施可能な駆動制御部200の説明を行う。
【0032】
<第1の実施形態に係る駆動制御部200>
はじめに、本発明の第1の実施形態に係る駆動制御部200の説明を行う。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る駆動制御部の構成を示すブロックダイアグラムである。
【0033】
本実施形態に係る駆動制御部200は、工作機械2のNCプログラムが記憶されたNCプログラム記憶部210と、NCプログラム記憶部210からプログラムデータを読み込む動作指令生成部220と、動作指令生成部220から信号を受信する位置制御部230と、位置制御部230から信号を受信する速度制御部240と、速度制御部240から信号を受信するフィルタリング処理部250と、フィルタリング処理部250から信号を受信する電流制御部260と、電流制御部260から信号を受信するサーボアンプ270とを備える、サーボアンプ270から電流制御部260へは、フィードバック信号が送信される。また、サーボアンプ270から増幅された信号が駆動装置であるサーボモータ50A〜Dへ送信される。各サーボモータ50A〜Dには、それぞれロータリエンコーダ60A〜Dが取り付けられており、フィードバック信号が、位置制御部230及び速度制御部240へ送信される。フィルタリング制御部250は、振動状態検出装置100から信号(
図3のステップS16に示す信号)を受信するようになっている。
【0034】
以上のように構成され駆動制御部200において、動作指令生成部220により、NCプログラム記憶部210に格納されたNCプログラムが解析されて、駆動装置(サーボモータ50A〜D)への動作指令信号が生成され、これが位置制御部230に送信される。
【0035】
次に、位置制御部230により、動作指令信号と駆動装置(ロータリエンコーダ60A〜D)からフィードバックされる現在位置信号とを基に速度指令信号が生成され、これが速度制御部240に送信される。次に、速度制御部240により、速度指令信号と駆動装置(ロータリエンコーダ60A〜D)からフィードバックされる現在速度信号とを基に電流指令信号が生成され、これがフィルタリング処理部250に送信される。
【0036】
そして、フィルタリング処理部250において、振動状態検出装置100から受信した信号に基づいて、電流指令信号から被駆動要素A(振動を抑制する制御が必要な被駆動要素)の振動の周波数成分が除去され、除去処理後の電流指令信号が電流制御部260に送信される。そして、電流制御部260により、除去処理後の電流指令信号とサーボアンプ270からフィードバックされる現在電流信号とを基に駆動指令信号が生成されて、サーボアンプ270に送信される。サーボアンプ270により、駆動指令信号が所定のゲインで増幅されて、駆動装置(サーボモータ50A〜D)に送信され駆動制御される。
【0037】
仮に、被駆動要素A(振動を抑制する制御が必要な被駆動要素)に生じる振動が、駆動装置(被駆動要素Aに対応したサーボモータ50A〜Dの何れか)の制御系に外乱として入力されると、当該制御系が不安定となって振動し、駆動装置(ロータリエンコーダ60A〜D)からフィードバックされる現在速度信号に振動の周波数成分が付加され、これを基に算出される電流指令信号に振動の周波数成分が含まれることになり、被駆動要素Aや工作機械2全体の固有振動数に近いと、駆動装置で駆動される被駆動要素Aや工作機械2全体が共振する事態に至る。
【0038】
そこで、本実施形態の駆動制御部200では、振動状態検出装置100から受信した信号に基づく被駆動要素Aの振動の周波数成分が、フィルタリング処理部250で電流指令信号から除去されるようになっている。これにより、切削に伴う外部振動が駆動装置(サーボモータ50A〜D)の制御系に外乱として入力されても、フィルタリング処理部250において、その振動の周波数成分が含まれた電流指令信号から、当該振動周波数成分を適切に除去することができるので、駆動装置(サーボモータ50A〜D)が振動するのを効果的に防止することができる。従って、駆動装置(サーボモータ50A〜D)の振動が大きくなることを防ぎ、過度の振動によって面粗度などの加工精度が悪化する事態を防ぐことができる。
【0039】
<駆動制御処理>
次に、上記に示すようなフィルタリング処理部250による駆動制御処理について、フローチャートを参照しながら説明する。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る駆動制御部200により実施される駆動制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0040】
図5において、まず、振動状態検出装置100から信号を受信したか否か判断する(ステップS20)。なお、振動状態検出装置100から信号を受信していない(NO)場合、振動状態検出装置100から信号を受信するまで待機状態になっている。この判断で、もし、振動状態検出装置100から信号を受信した(YES)と判断したときには、次に、受信した信号に含まれる情報に基づき、被駆動要素Aについて、電流指令信号から被駆動要素Aの振動周波数成分を除去する制御処理を行う(ステップS22)。次に、当該振動周波数成分が除去された電流指令信号が電流制御部260へ送信され、電流制御部260により、駆動指令信号がサーボアンプ270に送信され、サーボアンプ270により駆動指令信号が増幅され、被駆動要素Aの駆動装置(サーボモータ50A〜Dの何れか)に送信される(ステップS24)。
このような制御により、電流指令信号から被駆動要素Aの振動の周波数成分が除去されるので、被駆動要素Aの振動を抑制することができる。
【0041】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る振動状態検出装置100(
図1参照)と、本発明の第1の実施形態に係る駆動装置をフィードバック制御する駆動制御部200(
図4参照)とを備えた工作機械2では、駆動制御部200が、特定された被駆動要素Aの駆動装置(サーボモータ50A〜Dの何れか)へ送信する電流指令信号から、被駆動要素Aの振動の周波数成分を削除するフィルタリング処理部250を有するので、被駆動要素Aの振動、延いては工作機械2全体の振動を抑制することができる。これにより、加工精度が悪化することを防ぐことができる。
なお、振動状態検出装置100が、工作機械2とは個別の外部装置として構成される場合もあり得る。
【0042】
<第2の実施形態に係る駆動制御部200>
次に、本発明の第2の実施形態に係る駆動制御部200の説明を行う。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る駆動制御部の構成を示すブロックダイアグラムである。
【0043】
本実施形態に係る駆動制御部200では、
図4に示す第1の実施形態に比べて、速度制御部240及び電流制御部260の間にフィルタリング制御部250が存在せず、電流制御部260にゲイン調整部280が接続されている点で異なる。振動状態検出装置100からの信号はゲイン調整部280に送信され、ゲイン調整部280から電流制御部260へ信号が送信されるようになっている。その他の構成については、基本的に第1の実施形態と同様であり、更なる説明は省略する。
【0044】
本実施形態に係る駆動制御部200では、動作指令生成部220で生成された動作指令信号に基づき、位置制御部230及び速度制御部240により、駆動装置(ロータリエンコーダ60A〜D)からのフィードバックが反映された電流指令信号が生成され、これが電流制御部260に送信される。なお、電流制御部260に送信される電流指令信号は、振動の周波数成分が除去されていない信号である。
【0045】
ゲイン調整部280では、振動状態検出装置100から受信した信号に基づいて、被駆動要素A(振動を抑制する制御が必要な被駆動要素)の振動の周波数成分について、サーボアンプ270で増幅するゲインを減少させるゲイン調整処理を行い、ゲインの書き換え信号を電流制御部260に送信する。このゲイン調整部280によるゲイン調整処理が、第1の実施形態に係る駆動制御部200のフィルタリング処理部250によるフィルタリング処理に対応する。なお、ゲインを減少させる制御処理にはゲインをゼロにする、つまり、駆動指令信号の当該振動の周波数成分について、駆動装置へ送信しない場合もあり得る。
【0046】
電流制御部260において、電流指令信号とサーボアンプ270からフィードバックされる現在電流信号とを基に駆動指令信号が生成されて、サーボアンプ270に送信され、サーボアンプ270により、ゲイン調整処理に基づくゲインで駆動指令信号が増幅されて、駆動装置(サーボモータ50A〜D)に送信され駆動制御される。
【0047】
第2の実施形態に係る駆動制御部200では、振動状態検出装置100から受信した信号に基づく被駆動要素Aの振動の周波数成分について、ゲイン調整部280でゲインが調整される。これにより、切削に伴う外部振動が駆動装置(サーボモータ50A〜D)の制御系に外乱として入力されても、ゲイン調整部280において、その振動の周波数成分の駆動指令信号の増幅が抑制されるので、駆動装置(サーボモータ50A〜D)が振動するのを効果的に防止することができる。従って、駆動装置(サーボモータ50A〜D)の振動が大きくなることを防ぎ、過度の振動によって面粗度などの加工精度が悪化することを防ぐことができる。
【0048】
<駆動制御処理>
次に、上記に示すようなゲイン調整部280によるゲイン調整処理について、フローチャートを参照しながら説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る駆動制御部200により実施される駆動制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0049】
図7において、まず、振動状態検出装置100から信号を受信したか否か判断する(ステップS30)。なお、振動状態検出装置100から信号を受信するまで待機状態になっている。この判断で、もし、振動状態検出装置100から信号を受信した(YES)と判断したときには、次に、受信した信号に含まれる情報に基づき、被駆動要素Aの振動の周波数成分に関して、駆動指令信号を増幅するゲインを減少させるゲイン調整処理を行う(ステップS32)。このゲイン調整処理に基づくゲイン書き換え信号が電流制御部260へ送信される。これに基づき、電流制御部260により、駆動指令信号がサーボアンプ270に送信され、サーボアンプ270により、調整されたゲインに基づいて駆動指令信号が増幅され、被駆動要素Aの駆動装置(サーボモータ50A〜Dの何れか)に送信される(ステップS34)。
このような制御により、駆動装置を駆動する増幅された信号のうち、被駆動要素Aの振動の周波数成分が削減されるので、被駆動要素Aの振動を抑制することができる。
【0050】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る振動状態検出装置100(
図1参照)と、本発明の第2の実施形態に係る、駆動装置をフィードバック制御する駆動制御部200(
図6参照)とを備えた工作機械2では、駆動制御部200が、特定された被駆動要素Aの駆動装置(サーボモータ50A〜Dの何れか)へ送信する駆動指令信号のうち、被駆動要素Aの振動の周波数成分について、サーボアンプ270で増幅するゲインを減少させるゲイン調整部を有するので、被駆動要素Aの振動、延いては工作機械2全体の振動を抑制することができる。これにより、加工精度が悪化することを防ぐことができる。
なお、振動状態検出装置100が、工作機械2とは個別の外部装置として構成される場合もあり得る。
【0051】
(撮影装置のその他の配置例)
図8及び
図9には、本発明の振動状態検出装置を備えた工作機械における撮影装置のその他の配置例を模式的に示す斜視図である。
図2に示す配置例では、撮影装置130が工作機械2(カバー28)の内部に設けられているが、
図8及び
図9に示す配置例では、撮影装置130が工作機械2(カバー28)の外部に設けられている点で異なる。
撮影装置130が工作機械2(カバー28)の外部に設けられている場合には、撮影装置130のレンズ等に切削油や切り屑等が当たるトラブルが生じず、工作機械2の振動に影響されない状態で撮影装置130を保持することができる。
【0052】
更に詳細に述べれば、
図8に示す配置例では、工作機械2(カバー28)の上面に透光性を有する領域28Aを備え、工作機械2の上方に配置された撮影装置130が透光性を有する領域28Aを介して、被駆動要素を撮影するようになっている。
図8に示す配置例では、撮影装置130は、Y軸方向から被駆動要素を撮影するようになっている。この場合、Z軸方向に移動する加工テーブル8及びX軸方向に移動するサドル10が被駆動要素の場合には、撮影装置130は、被駆動要素の移動方向と異なる方向から被駆動要素を撮影するように配置されていることになる。
一方、Y軸方向に移動する主軸頭12が被駆動要素の場合には、撮影装置130が、被駆動要素の移動方向と同じ方向から被駆動要素を撮影するように配置されていることになる。
【0053】
図9に示す配置例では、工作機械2(カバー28)の側面に透光性を有する領域28Aを備え、工作機械2の側方に配置された撮影装置130が透光性を有する領域28Aを介して、被駆動要素を撮影するようになっている。
図9に示す配置例では、
図2に示す配置例と同様に、撮影装置130は、X軸方向から被駆動要素を撮影するようになっている。よって、Z軸方向に移動する加工テーブル8及びY軸方向に移動する主軸頭12が被駆動要素の場合には、撮影装置130は、被駆動要素の移動方向と異なる方向から被駆動要素を撮影するように配置されていることになる。一方、X軸方向に移動するサドル10が被駆動要素の場合には、撮影装置130が、被駆動要素の移動方向と同じ方向から被駆動要素を撮影するように配置されていることになる。
【0054】
何れの場合においても、工作機械2(カバー28)の上面または側面に透光性を有する領域28Aを備え、撮影装置130が透光性を有する領域28Aを介して、被駆動要素を撮影するようになっているので、撮影装置130が工作機械2(カバー28)の外側に配置されていても、確実に被駆動要素の画像を取得することができる。
【0055】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【課題】工作機械の工具に切削油や切り屑等が付着している場合であっても、切削に起因して生じる振動に対応するパラメータを確実に得ることができる振動状態検出装置、及びこの振動状態検出装置を備えて、切削により生じる振動を抑制することができる工作機械を提供する。
【解決手段】工作機械の駆動装置により駆動される少なくとも1の被駆動要素を撮影する撮影装置130と、撮影装置130により取得された所定の時間経過ごとの画像データに基づいて、被駆動要素の振動に対応するパラメータを算出する振動状態解析部110と、を備え、 パラメータに、少なくとも振動数が含まれる振動状態検出装置100、及び振動状態検出装置100を備えた工作機械を提供する。