特許第6266155号(P6266155)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266155レーザ加工機の段取り方法およびレーザ加工機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6266155
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】レーザ加工機の段取り方法およびレーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/146 20140101AFI20180115BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20180115BHJP
   B23K 26/035 20140101ALI20180115BHJP
【FI】
   B23K26/146
   B23K26/02 A
   B23K26/035
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-72946(P2017-72946)
(22)【出願日】2017年3月31日
【審査請求日】2017年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】矢田 賢一
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/121116(WO,A1)
【文献】 特開2011−235347(JP,A)
【文献】 特開2009−262163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学ヘッドのノズルから吐出した柱状の液体流で案内したレーザ光をテーブルに載置されたワークに照射してワークを加工するレーザ加工機の段取り方法において、
加工プログラムの少なくとも一部を実行するドライランを実施し、
ドライランを実施中に低レベルのレーザ光を前記ノズルから前記テーブル上のワークへ向けて照射し、
ワーク表面上に照射されるレーザスポットの位置または軌跡を目視にて確認することを特徴としたレーザ加工機の段取り方法。
【請求項2】
前記ドライランを実施する前に、前記光学ヘッドのハウジングの外部に前記光学ヘッドと既知の位置関係に設けられたワークビューカメラによって前記テーブル上のワークを撮像してレーザ加工機の表示部に表示し、該表示部上でレーザ加工機のターゲットサークルとワークの基準点とが合致するよう前記光学ヘッドを送り軸に沿って相対移動させ、前記光学ヘッドとワークとを心出しするようにした請求項1に記載のレーザ加工機の段取り方法。
【請求項3】
前記ドライラン中に加工プログラムを一時停止、再起動することを含む請求項1に記載のレーザ加工機の段取り方法。
【請求項4】
テーブルに載置されたワークにレーザ光を照射してワークを加工するレーザ加工機において、
液体を噴射して柱状の液体流を形成するノズルを有し、該ノズルにレーザ光を導入して照射する光学ヘッドと、
低レベルのレーザ光を前記ノズルから前記テーブル上のワークへ向けて照射するイネーブルスイッチと、
前記低レベルのレーザ光が照射可能な間に、加工プログラムの少なくとも一部を実行しワーク表面上に照射されるレーザスポットの位置または軌跡を目視にて確認できるようにするドライランボタンと、
を具備することを特徴としたレーザ加工機。
【請求項5】
前記光学ヘッドは、レーザ発振器からレーザ光を前記ノズルへ向けて導く光学システムと、前記ノズルの画像を撮像するカメラと、前記光学システムおよびカメラを収納するハウジングと、該ハウジングの外部に前記光学ヘッドと既知の位置関係に設けられ前記テーブル上のワークを撮像するワークビューカメラとを具備し、
前記ワークビューカメラによって撮像した前記テーブル上のワークをレーザ加工機の表示部に表示し、該表示部上でレーザ加工機のターゲットサークルとワークの基準点とが合致するよう前記光学ヘッドを送り軸に沿って相対移動させ、前記光学ヘッドとワークとを心出しするようにした請求項4に記載のレーザ加工機。
【請求項6】
レーザ加工機の加工領域を包囲するカバーと、該カバーに設けられ前記加工領域へのアクセスを可能にするオペレータドアと、前記オペレータドアの開閉状態を検出してレーザ加工中に該オペレータドアが開かれることを防止するインターロック機構とを更に具備する請求項4に記載のレーザ加工機。
【請求項7】
前記ドライランボタンを操作して加工プログラムの少なくとも一部を実行する間、前記インターロック機構の作用が無効になる請求項6に記載のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機の段取り時間を短縮できる段取り方法および該段取り方法を実行するレーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ光を集光レンズを通じてワーク表面に照射して加工を行うレーザ加工機が公知となっている。レーザ加工機のテーブル上にワークを固定する際の設置誤差等によって加工精度が低下する。特許文献1に記載のレーザ加工機では、検査対象となる被検査穴を撮像し、その映像信号に基づいて被検査穴の中心位置を演算し、被検査穴の中心位置と予め設定された正規の加工基準穴の位置とを比較し、その比較結果に基づいてワークの位置を補正するようになっている。
【0003】
ところが、レーザ光はZ軸に沿って照射されるが、レーザ光を照射する光学ヘッドの軸送り精度やレーザ加工機を制御する加工プログラムもまた加工精度に影響を与える。そこで、通常、以下のようにしてワークをレーザ加工機のテーブルに設置する段取り作業が行われている。先ず、ワークをレーザ加工機のテーブルに設置した後、光学ヘッドに配設されたワークビューカメラでワークを撮像し、ワークの画像を表示部に表示する。次いで、表示部のターゲットサークルとワークの基準位置とが一致するようにレーザ加工機の送り軸を操作して心出しを行う。加工プログラムを実行して試し加工を行い、加工結果を見てワークの段取りおよび加工プログラムの良否を確認している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2665227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然しながら、こうした段取り方法は、実際に加工するので時間を要するばかりではなく、本加工を行うときに新たなワークの再セットアップが必要となり、更に時間がかかることになる。また、試し加工のためにワークを1つ無駄にしなければならない問題もある。
【0006】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、実際に加工を行うことなく、安全かつ容易にレーザ加工機へのワークの段取りが可能となるレーザ加工機の段取り方法および該段取り方法を実行するレーザ加工機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、光学ヘッドのノズルから吐出した柱状の液体流で案内したレーザ光をテーブルに載置されたワークに照射してワークを加工するレーザ加工機の段取り方法において、加工プログラムの少なくとも一部を実行するドライランを実施し、ドライランを実施中に低レベルのレーザ光を前記ノズルから前記テーブル上のワークへ向けて照射し、ワーク表面上に照射されるレーザスポットの位置または軌跡を目視にて確認するレーザ加工機の段取り方法が提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、テーブルに載置されたワークにレーザ光を照射してワークを加工するレーザ加工機において、液体を噴射して柱状の液体流を形成するノズルを有し、該ノズルにレーザ光を導入して照射する光学ヘッドと、低レベルのレーザ光を前記ノズルから前記テーブル上のワークへ向けて照射するイネーブルスイッチと、前記低レベルのレーザ光が照射可能な間に、加工プログラムの少なくとも一部を実行しワーク表面上に照射されるレーザスポットの位置または軌跡を目視にて確認できるようにするドライランボタンとを具備するレーザ加工機が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、実際にワークを加工することなく、裸眼での観察が可能な安全な低レベルのレーザ光を照射して加工位置を確認するだけなので、段取り作業は短時間で行うことができる。また、テーブルに固定したワークを取り外すことなく、そのままで(段取り替えをすることなく)本加工に移行できるので、非加工時間が短縮される。更に、本発明によれば、試し加工のため無駄になるワークが発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態によるレーザ加工機の略示斜視図である。
図2図1のレーザ加工機の光学ヘッドの模式的断面図である。
図3図1のレーザ加工機の表示部に表示される画面の一例を示す略図である。
図4】ワークの一例を示す略示平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるレーザ加工機について説明する。
図1に一例として示す本発明の実施形態によるレーザ加工機100は、レンズで絞ったレーザ光をノズルから噴出させた水柱によって導くウォータジェットタイプのものであって、金属の精密な穴あけ加工や切断加工に適したものである。レーザ加工機100は、ワークを取り付けるためのテーブル108と、テーブル108に対してX軸、Y軸、Z軸の直交3軸方向に相対的に直線移動可能に設けられた光学ヘッド10と、レーザ発振器40(図2参照)とを具備している。レーザ加工機100は、光学ヘッド10およびテーブル108を包囲して加工室を形成する直方体状のカバー102を具備している。カバー102の正面には、オペレータがテーブル108や光学ヘッド10へアクセス可能となるように開口部104が形成されている。カバー102は、開口部104を開閉するための、左右方向(X軸方向)にスライド可能なオペレータドア106を有している。オペレータドア106は、その開閉状態を検出するためのドアスイッチ106aを備えている。ドアスイッチ106aは、レーザ加工中に該オペレータドアが開かれることを防止するインターロック機構(図示せず)に接続されている。
【0012】
カバー102の正面側壁には、レーザ加工機100のための操作盤110が取り付けられている。操作盤110は、レーザ加工機100の状態や動作を示すパラメータや、オペレータに対する操作方法を教示するアイコン等を表示する表示部を形成するディスプレイ112および各種操作ボタン114を有している。操作ボタン114は、サイクルスタートボタン114a、ジョグ送りボタン114b、オーバーライドつまみ114c、ドライランボタン114dを含む。ここで、ドライランは、レーザ光を出力することなく加工プログラムを実行させ、送り軸だけを作動させる操作である。通常、加工プログラムで指定された送り速度にオーバーライドつまみ114cで指示した割合を掛け増減した送り速度で光学ヘッド10をテーブル108に対して移動させ、加工プログラムをチェックするために実行される。
【0013】
レーザ加工機100は、更に、ケーブル132を介して操作盤110に接続されたポータブル操作盤120を具備している。ポータブル操作盤120は、その前面に設けられたロックボタン122、ドライランスタートボタン124およびジョグダイヤル126、側面に設けられたイネーブルスイッチ128および頂部に設けられたフック130を有している。イネーブルスイッチ128は、少なくともオン位置とオフ位置の2つの位置を有している。フック130は、操作盤110のフック116にポータブル操作盤120を引っ掛け吊り下げるためのものである。
【0014】
イネーブルスイッチ128がオン位置にあるとき、レーザ発振器40は、低レベルのレーザ光を発振する。この低レベルのレーザ光は、例えばJIS(日本工業規格)C6802やIEC(国際電気標準会議)60825-1の安全基準で裸眼での観察が可能なクラス1に分類されるレーザ光とすることができる。つまり、レーザ発振器40は、レーザ加工用の高レベルのレーザ光と、イネーブルスイッチ128がオン位置にあるときの低レベルのレーザ光を発振することができる。
【0015】
イネーブルスイッチ128は、また、押下されていないときの第1の位置と、軽く押し込んだときの第2の位置と、更に押し込んだときの第3の位置を有する3位置を有する構成としてもよい。この場合、第1の位置と第3の位置がオフ位置であり、第2の位置がオン位置となる。第1の位置から第2の位置へ軽く押し込むことにより、レーザ発振器40は低レベルのレーザ光を発振する。この状態で、オペレータがイネーブルスイッチ128を離すことにより、第2の位置から第1の位置へ復帰する。また、オペレータがイネーブルスイッチ128を第2の位置に保持している状態から第3の位置へ押し込むことにより、レーザ発振器40は低レベルのレーザ光の発振を停止する。第3の位置からオペレータがイネーブルスイッチ128を離すことにより、イネーブルスイッチ128は第1の位置へ復帰する。
【0016】
ディスプレイ112は、オペレータが指でアイコンにタッチすることによってレーザ加工機100に対して様々な操作が可能なタッチパネルとすることができる。また、操作盤110は制御装置を内蔵し、オペレータの入力や制御装置内に記憶されたプログラムに従ってレーザ加工機100を制御する。操作盤110から、加工に用いるレーザ光の出力を入力して設定することができる。なお、制御装置は操作盤110に内蔵されるのではなく、機械の別の場所に格納されていてもよい。
【0017】
図1を参照すると、光学ヘッド10はレーザ照射ヘッド16を具備している。レーザ照射ヘッド16は、ハウジング12内に配設され、レーザ発振器40からのレーザ光を導光部材40aを介して受け取り、コリメーションレンズ18へ向けて照射する。レーザ照射ヘッド16からのレーザ光は、コリメーションレンズ18で平行光線となって、第1のミラー20によって第2のミラー22に向けて反射され、第2のミラー22によってフォーカスレンズ24へ向けて反射される。フォーカスレンズ24で絞られたレーザ光は、ノズルヘッド26を通してハウジング12の外部の、通常はテーブル108に載置されたワークWに照射される。このとき、光学ヘッド10が照射するレーザ光の光軸はZ軸に略平行となっている。また、光学ヘッド10は、ハウジング12の下面にノズル27aの中心との位置関係が既知の状態で設けられ、ワークWをZ軸方向に上方から観察するワークビューカメラ36を有している。
【0018】
また、光学ヘッド10は、光学ヘッド10から照射されるレーザ光の方向を調節するためミラー配向変更手段としてモータ20a、22aを有している。更に、光学ヘッド10は、ノズルヘッド26の底面壁に固定されたノズル体27のノズル27aから照射されるレーザ光とノズル27aとの位置関係を監視するカメラ32も有している。第2のミラー22は誘電体多層膜から形成されているので、ノズル27aから照射されるレーザ光とノズル27aとの位置関係をカメラ32によって監視することが可能となっている。
【0019】
超純水供給源30から管路28を介してノズルヘッド26に水が供給されると、この水はノズル27aから噴出され、Z軸方向に延びる水柱34が形成される。レーザ発振器40からのレーザ光は、光ファイバコードのような導光部材40a、レーザ照射ヘッド16、コリメーションレンズ18、第1と第2のミラー20、22を経てフォーカスレンズ24で絞られ、ノズルヘッド26のノズル27aからハウジング12の外部へ照射される。このとき、レーザ光は、ノズル27aから噴射される水柱34によって包囲され、その水柱34と周囲の空気との境界面で全反射しながら進行してテーブル108上のワークWへ向けて照射される。
【0020】
以下、図3、4を参照して、本実施形態の作用を説明する。
オペレータがテーブル108上にワークWのX軸アライメント調整辺がX軸と平行となるように、ダイヤルゲージ等を用いて通り出ししてワークWを固定する。そして、ワークWの基準位置の略真上にワークビューカメラ36が位置するように、手動でレーザ加工機100のX軸、Y軸、Z軸の送り装置によってドライラン開始位置へ向けて移動を開始する。このとき、操作盤110のディスプレイ112には図3に示すような画面200が表示される。画面200には、カメラ32によって撮像されたノズル202、レーザ加工機が画面200内に生成したクロスライン206a、206bを含むターゲットサークル204が含まれる。また、ワークビューカメラ36が撮像したワーク230の映像が、カメラ32によって撮像されたノズル202と共に画面200に表示される。ノズル202の中心とワークビューカメラ36とは既知の位置関係に設けられているので、画面200に表示されるワーク230の映像は、カメラ32によって撮像されたノズル202に対して相対的に正しい位置に合成される。
【0021】
図4に示す例では、ワーク230は矩形の板部材より成り、基準点232、X軸アライメント調整辺234、角穴(五角形穴)236、丸穴238および複数の細穴240を含んでいる。ワーク230は、X軸アライメント調整辺234が正確にレーザ加工機100のX軸に沿って延びるようにテーブル108上に位置決めされ固定される。
【0022】
オペレータが、操作盤110のジョグ送りボタン114bまたはポータブル操作盤120のジョグダイヤル126を操作することによって、クロスライン206a、206bの交点とワーク230の基準点232とが一致するように、光学ヘッド10をX軸、Y軸方向に相対移動させる。これによって、光学ヘッド10とワーク230の心出しが完了する。
【0023】
次いで、オペレータが、ポータブル操作盤120のイネーブルスイッチ128を押下すると、光学ヘッド10のノズル27aから低レベルのレーザ光が照射される。これにより、オペレータは、ノズル27aからのレーザ光によりワーク230上に形成されるレーザスポットが、ワーク230の基準点232に位置決めされていることを目視することにより、光学ヘッド10がワーク230に対して心出されていることを確認することができる。
【0024】
次いで、オペレータが、イネーブルスイッチ128を押下しながら、ポータブル操作盤120のジョグダイヤル126を操作し光学ヘッド10をワーク230に対してX軸方向に送ることによって、オペレータは、ワーク230上に形成されるレーザスポットによって、光学ヘッド10のX軸方向への送り動作の軌跡を目視により確認することができる。レーザスポットが、ワーク230のX軸アライメント調整辺234に沿って正しく移動していれば、ワーク230がX軸に対して正しく位置決めされていることになる。
【0025】
次いで、オペレータが、ドライランボタン114dを押下してドライランモードを開始させる。ドライラン中にドライランスタートボタン124を押下すると、加工プログラムに従って送り軸が動作し、もう一度押下すると停止する。ドライラン中は、インターロック機構は作用せず、オペレータドア106が開状態でも送り軸とイネーブルスイッチ128は動作する。ドライランは、超純水装置30からの水供給をすることなく、また、レーザ光を照射することなく、加工プログラムに従って送り軸が送られレーザ加工が模擬される。この間、オペレータが、要所要所、例えば、角穴236や丸穴238の加工開始点や細穴240の各々の加工位置でドライランを一時停止し、イネーブルスイッチ128を押下することによって、低レベルのレーザ光がワーク230上に照射さる。これにより、オペレータは、ワーク230に対する光学ヘッド10の位置を目視により確認することができる。
【0026】
また、角穴236の各辺や、丸穴238の円周に沿って光学ヘッド10が送られる間、イネーブルスイッチ128を押下し続けることによって、オペレータは目視により光学ヘッド10が正しく送られているか否かをその軌跡で確認することができる。レーザ加工は一般的に低速で光学ヘッド10を送るので、角穴236や丸穴238の加工には比較的長い時間を要する。そうした場合には、イネーブルスイッチ128を押下しつつロックボタン122を押下することによって、イネーブル状態が継続するようになっている。また、ドライラン中にオーバーライドつまみ114cを操作して、通常のレーザ加工中の送り速度よりも高速で光学ヘッド10を移動させるようにしてもよい。ドライラン中も、ディスプレイ112に画面200を表示して、オペレータがクロスライン206a、206bとワーク230との相対位置をディスプレイ112上で確認できるようにしてもよい。
【0027】
こうして、オペレータが目視により、ワーク230(W)がテーブル108上に正しく設置、固定され、また加工プログラムも正常であることを確認した後に、オペレータドア106を閉じて、サイクルスタートボタン114aを押下することによって、本加工が実行される。このときは、レーザ発振器40は、高レベルのレーザ光を発振する。この間、ドアスイッチ106aによって、インターロック機構が作動し、オペレータドア106は開放不能となっている。
【符号の説明】
【0028】
10 光学ヘッド
12 ハウジング
27a ノズル
34 水柱
36 ワークビューカメラ
100 レーザ加工機
102 カバー
106 オペレータドア
108 テーブル
110 操作盤
112 ディスプレイ
114d ドライランボタン
120 ポータブル操作盤
128 イネーブルスイッチ
【要約】
【課題】実際に加工を行うことなく、安全かつ容易にレーザ加工機へのワークの段取りが可能とすること。
【解決手段】光学ヘッド10のノズル27aから吐出した水柱34で案内したレーザ光をテーブル108に載置されたワークWに照射してワークを加工するレーザ加工機の段取り方法において、加工プログラムの少なくとも一部を実行するドライランを実施中に、低レベルのレーザ光をノズルからテーブル上のワークへ向けて照射し、オペレータがワーク表面上を移動するレーザスポットを安全に目視にて確認できるようにした。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4