【実施例1】
【0019】
まず、本発明であるマンホール用高さ調整リングを用いたマンホールの構造について説明する。
図1は、マンホール用高さ調整リングを用いたマンホールを示す斜視図である。
【0020】
図1に示すように、マンホール100は、地下の下水道などから垂設された管状の直壁110、直壁110に連設されてテーパ状に径が絞られた斜壁120等を有する上下に貫通する中空の縦孔であり、地上の出入口を塞ぐ鉄蓋400、鉄蓋400を支持する鉄蓋枠300、斜壁120と鉄蓋枠300の間に介在させる調整リング200等を用いて地面に空いた開口部が閉じられる。
【0021】
なお、本実施例において、斜壁120は、マンホール100の途中で径を絞った部分ではなく、鉄蓋枠300のサイズに合わせて径を絞ったマンホール100の一番上の部分とする。
【0022】
斜壁120の上に鉄蓋枠300を取り付ける場合、まず、斜壁120の環状の上面に穴130を空けてボルト500aを固定し、調整リング200の貫通孔210を貫通させて鉄蓋枠300の孔310まで通す。なお、穴130は、例えば、3箇所に等間隔(120度)で空ければ良い。また、貫通孔210及び孔310も、穴130と対応した位置に空けられれば良い。
【0023】
調整リング200は、斜壁120と鉄蓋枠300の間隔を埋めるために使用される。また、地上の路盤が傾斜している場合、鉄蓋400及び鉄蓋枠300を傾斜させて設置するので、鉄蓋枠300の高さ及び勾配を調整するために使用される。なお、調整リング200で埋められなかった隙間や、鉄蓋枠300の傾斜により調整リング200との間に生じた隙間には、モルタル等を充填すれば良い。
【0024】
鉄蓋枠300の交換や高さの変更などをする際に、既に斜壁120に固定されているボルト500aの何れかがインサート部材140(
図6を参照)の劣化等により利用できない場合、調整リング200の非貫通穴220にボルト500bを固定し、鉄蓋枠300の孔310に通せば良い。なお、孔310は、非貫通穴220と対応した位置にも空けておく。
【0025】
次に、本発明であるマンホール用高さ調整リングの構造について説明する。
図2は、マンホール用高さ調整リングを示す(a)平面図、及び(b)正面断面図である。
図3は、マンホール用高さ調整リングの貫通孔側を拡大した正面断面図である。
図4は、マンホール用高さ調整リングの非貫通穴側を拡大した正面断面図である。
【0026】
図2に示すように、調整リング200には、マンホール100の斜壁120の上端に差し込んだボルト500aを通すために上下に貫通させた貫通孔210、斜壁120に差し込まれないボルト500bを固定するためのインサート部材240が埋め込まれた下側に貫通しない非貫通穴220が空けられる。
【0027】
貫通孔210は、斜壁120の穴130の位置に合わせて3箇所に等間隔で空けられ、非貫通穴220は、それぞれ貫通孔210の間となるように3箇所に等間隔で空けられる。すなわち、貫通孔210と非貫通穴220とが交互に一定の間隔(60度)で空けられれば良い。なお、貫通孔210と非貫通穴220の数及び間隔は、任意に変更しても良い。
【0028】
貫通孔210は、斜壁120のボルト500aがそのまま貫通するように、内径をボルト500aの外径よりも大きくする。また、非貫通穴220は、ボルト500bが螺合するように、雌ネジ状のインサート部材240が埋め込まれる。
【0029】
図3に示すように、貫通孔210側においては、斜壁120の穴130に埋め込まれた雌ネジ状のインサート部材140に固定されたボルト500aが上方に延びる。貫通孔210の上部には、径を拡げた収容部230aを有する。収容部230aは、貫通しているボルト500aに螺合させた下調整コマ510bを収容可能な大きさ(径及び高さ)で設ければ良い。
【0030】
鉄蓋枠300の孔310を貫通するボルト500aには、鉄蓋枠300を挟むように、上調整コマ510aと下調整コマ510bを通し、さらに、上調整コマ510aの上側に上ナット520aを配置する。
【0031】
上調整コマ510aと下調整コマ510bとで鉄蓋枠300を挟持するが、鉄蓋枠300を傾斜させたときは、上調整コマ510aと下調整コマ510bの間隔が拡がる。上ナット520aは、上調整コマ510aが緩まないように下方に締め付ける。鉄蓋枠300の傾斜や高さが保持されたら、鉄蓋枠300と調整リング200の間に調整モルタル600を充填することで固定される。
【0032】
また、下調整コマ510bを収容部230aの底の位置まで下げることで、調整リング200が斜壁120に向けて締め付けられ、さらに、ボルト500aがインサート部材140から抜けないように締め付けられる。下調整コマ510bを収容部230aに収容される位置まで下げることで、鉄蓋枠300を調整リング200に接する位置まで下げることが可能である。
【0033】
鉄蓋枠300が調整リング200に近い位置で傾斜したときに、鉄蓋枠300の端が調整リング200に当たらないように、調整リング200の上面の外縁部を下方に傾斜させた外切欠き250を設けても良い。
【0034】
また、調整リング200を斜壁120の上に載せたときに位置ズレしないように、斜壁120の上端の内周側に切欠き150を空け、調整リング200の下端の内周側に突起270を設けて嵌合させても良い。なお、調整リング200の上端の内周側に内切欠き260を空ければ、使用しない調整リング200を重ねて収納することが可能となる。
【0035】
図4に示すように、非貫通穴220側においては、内部に埋め込まれた雌ネジ状のインサート部材240に固定されたボルト500bが上方に延びる。非貫通穴220の上部には、径を拡げた収容部230bを有する。収容部230bは、貫通していないボルト500bに螺合させた下調整コマ510bを収容可能な大きさ(径及び高さ)で設ければ良い。
【0036】
鉄蓋枠300の孔310を貫通するボルト500bには、鉄蓋枠300を挟むように、上調整コマ510aと下調整コマ510bを通し、さらに、上調整コマ510aの上側に上ナット520aを配置する。
【0037】
上調整コマ510aと下調整コマ510bとで鉄蓋枠300を挟持するが、鉄蓋枠300を傾斜させたときは、上調整コマ510aと下調整コマ510bの間隔が拡がる。上ナット520aは、上調整コマ510aが緩まないように下方に締め付ける。鉄蓋枠300の傾斜や高さが保持されたら、鉄蓋枠300と調整リング200の間に調整モルタル600を充填することで固定される。
【0038】
下調整コマ510b自体にネジが切ってあるので、下ナットは不要であるが、下調整コマ510bの緩み防止として下調整コマ510bの下側に下ナットを配しても良い。また、下ナットを収容部230aの底の位置まで下げることで、ボルト500bがインサート部材240から抜けないように締め付けることも可能である。下調整コマ510bを収容部230aに収容される位置まで下げることで、鉄蓋枠300を調整リング200に接する位置まで下げることが可能である。
【0039】
鉄蓋枠300が調整リング200に近い位置で傾斜したときに、鉄蓋枠300の端が調整リング200に当たらないように、調整リング200の上面の外縁部を下方に傾斜させた外切欠き250を設けても良い。
【0040】
また、調整リング200を斜壁120の上に載せたときに位置ズレしないように、斜壁120の上端の内周側に切欠き150を空け、調整リング200の下端の内周側に突起270を設けて嵌合させても良い。なお、調整リング200の上端の内周側に内切欠き260を空ければ、使用しない調整リング200を重ねて収納することが可能となる。
【0041】
次に、本発明であるマンホール用高さ調整リングを用いたマンホールの施工方法について説明する。
図5は、(a)マンホール用高さ調整リングを用いたマンホール、及び(b)従来の平面図である。
図6は、(a)マンホール用高さ調整リングを用いたマンホール、及び(b)従来の正面断面図である。
【0042】
図5及び6に示す例は、左側が高く右側が低い傾斜した路盤にマンホール100を設置した場合である。
【0043】
従来の(b)においては、調整リング200aに3つの貫通孔210aが空いており、最も低い位置一点と、高い位置二点で鉄蓋枠300を支持すべく、それぞれボルト500aが通され、上調整コマ510aで高さが保持されている。最も低い位置においては、鉄蓋枠300の端が調整リング200aに当たっており、そこが傾斜の支点となっている。また、鉄蓋枠300の下側に下調整コマ510bを配置するための空間がない。ボルト500aを固定するインサート部材140が劣化した場合、斜壁120に新たなインサート部材140を後付けする必要が生じる。
【0044】
それに対して、(a)においては、調整リング200に3つの貫通孔210と、3つの非貫通穴220が交互に空いており、最も高い位置が貫通孔210に通されたボルト500aで支持され、最も低い位置が非貫通穴220に通されたボルト500bで支持されている。その他に高い位置二点が非貫通穴220に通されたボルト500bで支持されており、最大六点で支持することが可能である。
【0045】
最も低い位置においては、鉄蓋枠300の端が調整リング200に当たらないため、ボルト500bが通る位置を支点に傾斜される。また、調整リング200に収容部230bがあるため、鉄蓋枠300の下側に下調整コマ510bを配置する空間があり、調整モルタル600を充填する空間も確保される。
【0046】
ボルト500aを固定するインサート部材140が劣化した場合でも、調整リング200のインサート部材240にボルト500bを固定すれば、例えば、一点が使用できなくなっても他の五点で、鉄蓋枠300を支持することが可能である。なお、斜壁120の上端に新たなインサート部材140を埋め込む等の加工をする必要はない。
【0047】
既に(b)の調整リング200aを使用したマンホール100をメンテナンスした際に、(a)の調整リング200に交換すれば、斜壁120の上端を加工することなく、新たにボルト500bを追加して鉄蓋枠300を支持することができる。鉄蓋枠300の上下に調整コマ510が入るため、鉄蓋枠300の傾斜や高さを保持しやすくなる。
【0048】
このように、傾斜した路盤に設置されたマンホール100に鉄蓋枠300を確実に固定することができる。鉄蓋枠300を交換又は高さを変更する場合に、既存のマンホール100の上端に差し込まれたボルト500aを固定するためのインサート部材140が劣化等していても、調整リング200のインサート部材240にボルト500を差し込むことにより固定することができる。
【0049】
また、傾斜の低い側において、調整モルタル600を充填するための高さがなくても、鉄蓋枠300を固定するための調整コマ510を入れることができる。さらに、傾斜した路盤の勾配が大きい場合でも、鉄蓋枠300の角が調整リング200に接触することはなく、容易に施工することができる。
【0050】
以上、本発明の実施例を述べたが、これらに限定されるものではない。例えば、調整コマをナット等に替えても良い。