【実施例】
【0042】
以下に本発明の実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。当業者は、以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明として実施することができ、かかる変更は本願の特許請求の範囲に包含される。
なお、電気化学測定は下記に示すとおりに行った。
【0043】
(電気化学測定)
電極作製法及び回転電極法によるリニアスイープボルタンメトリーの測定方法(日厚計測製の回転リングディスク電極装置「RRDE−1」を使用。)を以下に示す。まず、バイアル瓶に、含窒素炭素材料5mgを秤取し、そこに、ガラスビーズを約50mg、5質量%ナフィオン(商品名)分散液(シグマアルドリッチジャパン製)を50μL、並びにイオン交換水及びエタノールをそれぞれ150μLずつ添加し、それらの混合物に20分間超音波を照射してスラリーを作製した。このスラリーを4μL秤取し、回転電極のガラス状炭素上(0.2828cm
2)に塗布し、飽和水蒸気下で乾燥した。乾燥後の回転電極を作用極とし、可逆水素電極(RHE)を参照極として、炭素電極を対極とした。0.5M硫酸を電解液とし、その電解液に酸素を30分間バブリングした後、掃引速度5mV/s、回転速度1500rpmで1.1Vから0Vまで掃引して電気化学測定を行った。また、酸素還元開始電位E
0は−10μA/cm
2の電流を与える電位と定義した。
【0044】
[比較例1]
<原料炭素材料の合成>
1Lナス型フラスコに特開2011−256093号公報に記載の方法で合成したアズルミン酸12g、硝酸鉄(III)・9水和物0.030g及び純水400gを加え、90℃の油浴中で1時間撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を除去し、真空乾燥機にて80℃で8時間乾燥させアズルミン酸と鉄との混合物として9.0g得た。得られたアズルミン酸と鉄との混合物の全量を、石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から600℃まで昇温し、600℃のまま5時間保持して炭化させた。室温まで冷却後、これを遊星ボールミル(フリッチュ製、商品名「Pulverisette−7」)にて粉砕及び分級することにより、平均粒子径を約1μmに調整した原料炭素材料を得た。その後、33質量%の塩酸400mLに分級後の原料炭素材料を浸漬して2時間撹拌した後に濾過することを3回繰り返すことにより、最終的に、鉄の一部を除去した原料炭素材料を4.1g得た。最終的に得られた原料炭素材料について、堀場製作所製の商品名「JY138」を用いてICP−AES測定を行ったところ、鉄の質量濃度は1000ppmであった。最終的に得られた原料炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0045】
[比較例2]
<原料炭素材料の空気流通下での熱処理>
比較例1において最終的に得られた原料炭素材料1.0gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの空気流通下で60分間かけて室温から450℃まで昇温し、450℃のまま1時間保持し、酸化加熱処理物を0.63g得た。得られた酸化加熱処理物について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0046】
[実施例1]
<酸化性ガスに空気を用いて合成した窒素含有炭素材料>
比較例2において得られた酸化加熱処理物0.60gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から1000℃まで昇温し、1000℃のまま1時間保持することにより窒素含有炭素材料を0.15g得た。得られた窒素含有炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0047】
[比較例3]
<酸化性ガスによる熱処理を施さず、不活性ガスによる熱処理を施した場合>
比較例1において最終的に得られた原料炭素材料1.0gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から1000℃まで昇温し、1000℃のまま1時間保持することにより窒素含有炭素材料を0.30g得た。得られた窒素含有炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0048】
[比較例4]
<酸化性ガスによる熱処理と不活性ガスによる熱処理の順番を入れ替えた場合>
比較例1において最終的に得られた原料炭素材料1.0gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から1000℃まで昇温し、1000℃のまま1時間保持した。冷却後、大気圧、1NL/minの空気流通下で60分間かけて室温から450℃まで昇温し、450℃のまま1時間保持することにより窒素含有炭素材料を0.24g得た。得られた窒素含有炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0049】
[比較例5]
<原料炭素材料の二酸化炭素流通下での熱処理>
比較例1において最終的に得られた原料炭素材料1.0gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの二酸化炭素流通下で60分間かけて室温から900℃まで昇温し、900℃のまま1時間保持し、酸化加熱処理物を0.25g得た。得られた酸化加熱処理物について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0050】
[実施例2]
<酸化性ガスに二酸化炭素を用いて合成した窒素含有炭素材料>
比較例5において得られた酸化加熱処理物0.20gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から1000℃まで昇温し、1000℃のまま1時間保持することにより窒素含有炭素材料を0.10g得た。得られた窒素含有炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0051】
[比較例6]
<原料炭素材料の飽和水蒸気含有窒素流通下での熱処理>
比較例1において最終的に得られた原料炭素材料1.0gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素を水中を潜らせることによって室温での飽和水蒸気を含む窒素流通下で60分間かけて室温から800℃まで昇温し、800℃のまま1時間保持し、酸化加熱処理物を0.24g得た。得られた酸化加熱処理物について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0052】
[実施例3]
<酸化性ガスに飽和水蒸気含有窒素を用いて合成した窒素含有炭素材料>
比較例6において得られた酸化加熱処理物0.20gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から1000℃まで昇温し、1000℃のまま1時間保持することにより窒素含有炭素材料を0.16g得た。得られた窒素含有炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0053】
[比較例7]
<原料炭素材料の合成>
500mLフラスコに0.5M塩酸200mLを入れて氷浴にて0℃まで冷却し、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アニリン(シグマアルドリッチジャパン製)4.0g、塩化鉄(III)(関東化学社製)0.1g、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(和光純薬社製)4.0gを加え、室温で20時間撹拌した。その後、ロータリーエバポレーターにて溶媒を除去し、真空乾燥機にて80℃で8時間乾燥させてポリアニリンを含む固形分を7.9g得た。得られた固形分全量を石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から900℃まで昇温し、900℃のまま1時間保持して炭化させた。これを遊星ボールミル(フリッチュ製、商品名「Pulverisette−7」)にて粉砕及び分級することにより、平均粒子径を約2μmに調整した原料炭素材料を得た。次に、33質量%の塩酸400mLに分級後の原料炭素材料を浸漬して2時間撹拌した後に濾過することを3回繰り返すことにより、鉄の少なくとも一部を除去した原料炭素材料を得た。濾残を真空乾燥機にて80℃で8時間乾燥させて、最終的に、原料炭素材料を1.1g得た。最終的に得られた原料炭素材料について、堀場製作所製の商品名「JY138」を用いてICP−AES測定を行ったところ、鉄の質量濃度は5500ppmであった。最終的に得られた原料炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0054】
[実施例4]
<酸化性ガスに空気を用いて合成した窒素含有炭素材料>
比較例7において最終的に得られた原料炭素材料1.0gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの空気流通下で60分間かけて室温から450℃まで昇温し、450℃のまま1時間保持した。その後、室温まで冷却してから、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から1000℃まで昇温し、1000℃のまま1時間保持し、窒素含有炭素材料を0.33g得た。得られた窒素含有炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0055】
[比較例8]
<原料炭素材料の合成>
コバルト(II)フタロシアニン(東京化成工業製)10gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で室温から800℃まで昇温し、800℃のまま1時間保持した。これを遊星ボールミル(フリッチュ製、商品名「Pulverisette−7」)にて粉砕及び分級することにより、平均粒子径約2μmに調整した。次に、33質量%の塩酸400mLに分級後の原料炭素材料を浸漬して2時間撹拌した後に濾過することを3回繰り返すことにより、コバルトの少なくとも一部を除去した原料炭素材料を得た。濾残を真空乾燥機にて80℃で8時間乾燥させて、最終的に、原料炭素材料を5.5g得た。最終的に得られた原料炭素材料について、堀場製作所製の商品名「JY138」を用いてICP−AESを行ったところ、コバルトの質量濃度は9800ppmであった。最終的に得られた原料炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0056】
[実施例5]
<酸化性ガスに空気を用いて合成した窒素含有炭素材料>
比較例8において最終的に得られた原料炭素材料1.0gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの空気流通下で60分間かけて室温から350℃まで昇温し、350℃のまま1時間保持した。その後、室温まで冷却してから、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から1000℃まで昇温し、1000℃のまま1時間保持し、窒素含有炭素材料を0.50g得た。得られた窒素含有炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0057】
[比較例9]
<原料炭素材料の合成>
ポリピロール(シグマアルドリッチジャパン製)10gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの窒素流通下で室温から800℃まで昇温し、800℃のまま1時間保持した。これを遊星ボールミル(フリッチュ製、商品名「Pulverisette−7」)にて粉砕及び分級することにより、平均粒子径約2μmに調整し、原料炭素材料2.7gを得た。得られた原料炭素材料について、堀場製作所製の商品名「JY138」を用いてICP−AESを行ったところ、遷移金属は検出されなかった。得られた原料炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0058】
[実施例6]
<酸化性ガスに空気を用いて合成した窒素含有炭素材料>
比較例9において最終的に得られた原料炭素材料1.0gを石英ボートに載置し、それを内径70mmの石英管状炉に収容し、炉内を大気圧、1NL/minの空気流通下で60分間かけて室温から450℃まで昇温し、450℃のまま1時間保持した。その後、室温まで冷却してから、1NL/minの窒素流通下で60分間かけて室温から1000℃まで昇温し、1000℃のまま1時間保持し、窒素含有炭素材料を0.10g得た。得られた窒素含有炭素材料について、上記電気化学測定を行った。酸素還元開始電位E
0の結果を表1に示す。また、日本電子製の商品名「JPS−9010MC」を用いたXPS測定によって求めた炭素原子に対する窒素原子の原子数比(N/C)、及び、リガク製の商品名「Ultima−IV」を用いたXRD測定によって求めた回折角(2θ)25°付近のピーク位置も表1に示す。
【0059】
【表1】