特許第6266205号(P6266205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266205ミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品の風味劣化抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266205
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】ミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品の風味劣化抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/00 20160101AFI20180115BHJP
   A23L 29/10 20160101ALI20180115BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20180115BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20180115BHJP
   A23C 9/152 20060101ALN20180115BHJP
   A23C 9/158 20060101ALN20180115BHJP
【FI】
   A23L29/00
   A23L29/10
   A23L2/00 B
   !A23L2/52 101
   !A23C9/152
   !A23C9/158
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-260022(P2012-260022)
(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-103908(P2014-103908A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和良
【審査官】 小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−226588(JP,A)
【文献】 国際公開第01/096506(WO,A1)
【文献】 特表2005−535557(JP,A)
【文献】 特開2003−048825(JP,A)
【文献】 特開昭53−148546(JP,A)
【文献】 特開昭52−099242(JP,A)
【文献】 特開2006−136318(JP,A)
【文献】 特開2006−020600(JP,A)
【文献】 特開平10−210951(JP,A)
【文献】 特開平09−205988(JP,A)
【文献】 特開平11−075692(JP,A)
【文献】 特開2007−224054(JP,A)
【文献】 特開昭61−078368(JP,A)
【文献】 油化学,1983年,第32巻、第11号,p. 695-699
【文献】 J. Am. Oil Ohemists' Soc.,1966年,Vol. 43,p. 300A-321A
【文献】 J. Food Sci.,1978年,Vol. 43,p. 797-798
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/00 − 29/30
A23L 3/00 − 3/54
A23L 5/00 − 5/49
A23D 7/00 − 9/06
A23L 2/00 − 2/84
A23C 9/00 − 9/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミネラル類、ビタミンEおよび下記の乳化剤を含有する飲食品において、リンゴ酸および/またはその塩類を、ミネラル類の質量に対して0.0008〜1倍量含有させることを特徴とする飲食品の風味劣化抑制方法。
乳化剤:グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルからなる群から選択される1種または2種以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄などのミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品の風味劣化抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種飲食品は経時的な風味劣化を抑制するために、ビタミンE、ビタミンC、カテキン、ルチン、ヤマモモ抽出物、ローズマリー抽出物などの酸化防止剤を配合している。また、ビタミンEなどの脂溶性ビタミンと乳化剤を配合したビタミンE含有乳化組成物、油脂と乳化剤を配合した粉末油脂、乳化剤を配合した品質改良剤などを配合した、乳化剤を含む飲食品が多く存在する。そのような中、最近では、健康志向の影響により、鉄分や亜鉛などのミネラル類を配合する飲食品が増加してきている。しかし、鉄などのミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品は、飲食品に配合されているミネラル類によって乳化剤中の脂肪酸が酸化される。その際、ビタミンEは、脂肪酸の酸化反応を抑制するために消費され、ビタミンE自身が酸化・分解した異臭(ビタミンE分解物由来の特異な臭)が顕著に発生するという問題があり、その解決が求められていた。
【0003】
ミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品に関する従来技術としては、緑茶微粉末(A)、天然のビタミンEを水溶性界面活性剤などで処理したビタミンE粉末(B)、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類および水溶性食物繊維などの栄養素粉末(C)、および水溶性界面活性剤粉末(D)の配合物からなることを特徴とする緑茶微粉末組成物(特許文献1)、カプセルに卵黄油を充填しており、特定量の大豆レシチン、ビタミンE、イチョウ葉エキス、有機鉄化合物および乳化剤を含有することを特徴とする卵黄油の健康食品(特許文献2)などが開示されている。
しかしこれらの従来技術は、鉄などのミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品に発生するビタミンE分解物由来の特異な臭いを抑制する技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−168477号公報
【特許文献2】特開2000−316525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品に発生する、ビタミンEが酸化・分解した際に生じるビタミンE分解物由来の特異な臭いの発生を抑制する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、ミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品に、有機酸を添加することにより上記課題を解決することを見出した。本発明者は、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品において、有機酸および/またはその塩類を含有させることを特徴とする飲食品の風味劣化抑制方法、からなっている。
【発明の効果】
【0007】
ミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品において、有機酸および/またはその塩を含有させることにより、ビタミンEが酸化・分解した際に生じるビタミンE分解物由来の特異な臭い(特異臭)の発生の抑制、および飲食品の劣化による異臭の発生の抑制をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いられるミネラル類は、ビタミンEを酸化するものであり、具体的には、鉄、銅、マンガン、亜鉛、マグネシウムなどおよびこれらの塩類が挙げられる。これらの塩類としては、ピロリン酸第二鉄、乳酸鉄、グルコン酸第一鉄、含糖酸化鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、ヘム鉄などの鉄化合物、グルコン酸銅、硫酸銅、マンガン酵母(マンガン成分が酵母に取り込まれたもの)、グルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸三マグネシウムなどが挙げられる。これらミネラル類は1種または2種以上を組み合わせたものである。これらミネラル類は、栄養強化などを目的として飲食品に配合されたものや、従来より飲食品に含まれているものなどが挙げられる。
【0009】
本発明で用いられるビタミンEとしては、例えばdl−α−トコフェロール(食品添加物)、d−α−トコフェロール(食品添加物)、d−γ−トコフェロール(食品添加物)、d−δ−トコフェロール(食品添加物)、ミックストコフェロール(食品添加物)、およびトコトリエノール(食品添加物)などが挙げられる。
【0010】
上記dl−α−トコフェロール以外のビタミンEは、植物油が精製される過程で副生する脱臭留出物(例えば脱臭スカム、脱臭スラッジまたはホットウエル油など)から回収されるビタミンEであれば特に制限はなく、例えば、キャノーラ油、ごま油、こめ油、サフラワー油、大豆油、とうもろこし油、なたね油、パーム油、ひまわり油、綿実油、落花生油などの脱臭留出物から分離・精製して得られる、d−α−,d−β−,d−γ−、d−δ−トコフェロール、およびd−α−,d−β−,d−γ−、d−δ−トコトリエノールなどを含む混合物が挙げられる。各同族体の組成は、植物の種類や品種、産地などに影響される。さらに該混合物をカラムクロマトグラフィー、蒸留または超臨界抽出物などの精製工程により、特定の同族体の含有量を工業的に高めた製品も市販されている。
【0011】
尚、ビタミンEとして商業的に販売されている製品には、ビタミンE含量調製のために食用油脂を含むものがあるが、本発明においてはこのような態様のビタミンEも支障なく用いることができる。
【0012】
またビタミンEは、ビタミンEの水分散性を向上したビタミンE含有乳化組成物の形態として用いることもできる。ビタミンE含有乳化組成物とは、ビタミンEを乳化作用のある物質とともに撹拌機などで乳化した水中油型乳化組成物である。また、水中油型乳化組成物中の油性成分をさらに細かく均質化した可溶化組成物もビタミンE含有組成物に含まれる。さらに、水中油型乳化組成物を乾燥した粉末品、可溶化組成物を乾燥した粉末品など各種乾燥品の形態もビタミンE含有組成物に含まれる。
【0013】
上記乳化作用のある物質とは、ビタミンEを乳化してビタミンE含有乳組成物を作製できれば特に制限はなく、例えば、後述する本発明で用いられる必須の乳化剤、それ以外の乳化剤(レシチンなど)、オクテニルコハク酸エステル化澱粉、増粘安定剤(アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガムなど)、タンパク質(大豆タンパク、ゼラチンなど)などが挙げられる。
【0014】
上記ビタミンE含有乳化組成物には、本発明を阻害しない範囲で、ビタミンE以外の酸化防止剤、糖類、香料などを用いてもよい。
上記ビタミンE以外の酸化防止剤としては、例えば、ビタミンCおよびその誘導体、カテキン、ルチン、ポリフェノール、フラボノイド、コージ酸、ローズマリー抽出物および香辛料抽出物類などが挙げられる。
【0015】
上記糖類としては、例えば、白色デキストリン、分岐デキストリン、サイクロデキストリン、クラスターデキストリン、還元デキストリン、異性化液糖などが挙げられる。
【0016】
上記ビタミンE含有乳化組成物中のビタミンE含有量としては、乳化安定性の観点から好ましくは約1〜70質量%、より好ましくは約10〜50質量%である。ビタミンE含有乳化組成物中に乳化剤を配合する場合、その含有量としては、約1〜10質量%、より好ましくは約2〜8質量%である。
【0017】
上記ビタミンE含有乳化組成物は、公知の方法で作製されればよい。水中油型乳化組成物の作製方法としては、例えば、水に糖類、増粘安定剤および乳化剤などを加えて約40〜80℃に加熱しながら溶解して水相とし、さらに約40〜80℃に加熱したビタミンEを含む油相をゆっくり加え乳化して水中油型乳化組成物を得る。前記乳化するための装置としては特に限定されず、例えば、攪拌機、加熱用のジャケットおよび邪魔板などを備えた通常の攪拌・混合槽を用いることができる。装備する攪拌機としては、TKホモミクサー(プライミクス社製)またはクレアミックス(エムテクニック社製)などの高速回転式分散・乳化機が好ましく用いられる。また、これらの装置で乳化した液を、高圧式均質化処理機を使用して、さらに均質化してもよい。ここで高圧式均質化処理機としては、例えばAPVゴーリンホモジナイザー(APV社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス社製)、アルティマイザー(スギノマシン社製)またはナノマイザー(大和製罐社製)などを好ましく使用することができる。上記均質化処理機に代えて、例えば超音波乳化機などの均質化処理機を用いてもよい。
【0018】
さらに、得られた水中油型乳化組成物を乾燥することによりビタミンE含有乳化油脂組成物の乾燥品(粉末品、顆粒品、カプセル品など)が得られる。前記乾燥する方法としては公知の方法が採用され、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、ベルト乾燥、真空乾燥あるいは真空凍結乾燥などが挙げられるが、好ましくは噴霧乾燥である。本発明で使用される噴霧乾燥装置に特に制限はなく、噴射式噴霧乾燥装置または回転円盤式噴霧乾燥装置など公知の装置を使用することができる。また、噴霧乾燥の操作条件に特に制限は無く、例えば、乳化組成物を加圧ノズル式噴霧乾燥装置に供給し、熱風入口温度約150〜270℃、排気温度約70〜130℃の条件下で噴霧乾燥し、乾燥物をサイクロンで捕集することにより、ビタミンE含有乳化組成物の粉末品を得る。得られる粉末の平均粒子径は約20〜200μm、好ましくは約50〜100μmである。また得られる粉末品の乾燥減量は約10質量%以下、好ましくは約7質量%以下、更に好ましくは約5質量%以下である。
【0019】
本発明で用いられる必須の乳化剤としては、食品添加物であり構成成分として脂肪酸を含む乳化剤である。すなわち、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、これらの乳化剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステルの外、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルなどが含まれる。グリセリン有機酸脂肪酸エステルには、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルおよびグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルなどが含まれる。
【0021】
上記乳化剤を構成する脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖状の飽和または不飽和脂肪酸が挙げられ、好ましくは炭素数16〜18の直鎖状の飽和または不飽和脂肪酸である。
【0022】
本発明で用いられる有機酸および/またはその塩としては食用に適したものであればよく、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、リン酸、コハク酸およびこれらの塩が挙げられる。前記これらの塩としては、例えば、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウムなどが挙げられる。上記有機酸および/またはその塩のなかでも、好ましくはクエン酸、リンゴ酸、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、酢酸酸ナトリウムである。本発明では、前記有機酸および/またはその塩を1種または2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0023】
本発明でいうミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品としては、例えば、豆乳、ビタミン・ミネラル飲料などの飲料;オレンジ果汁、リンゴ果汁、グレープフルーツ果汁などの果汁飲料;果実飲料;コーラ、サイダーなどの炭酸飲料;ビール、酎ハイ、カクテルなどのアルコール飲料;牛乳、乳酸菌飲料などの乳飲料;コーヒー飲料;ウーロン茶飲料、紅茶飲料、緑茶などの茶系飲料;栄養ドリンクなどの健康飲料;健康補助食品;スポーツ飲料などの機能性飲料;パン、ビスケット、クッキー、キャンディー、ゼリーなどのパン・菓子類;ヨーグルト、プリンなどのデザート;ハムなどの乳肉加工食品;味噌、ソース、タレ、ドレッシングなどの調味料;豆腐、麺類などの加工食品;粉末飲料、粉末スープなどの粉末食品;カプセル状、タブレット状、粉末状、顆粒状などにした健康食品などが挙げられる。
【0024】
ミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品において、有機酸および/またはその塩を含有させる方法としては特に制限はなく、例えば、(1)ミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含有する飲食品に有機酸および/またはその塩を直接配合して含有させる方法、(2)乳化剤を含有しないビタミンE含有乳化組成物に有機酸および/またはその塩を配合し、該ビタミンE含有乳化組成物を、ミネラル類および乳化剤を含有する飲食品に配合して含有させる方法、(3)乳化剤を含有するビタミンE含有乳化組成物に有機酸および/またはその塩を配合し、該ビタミンE含有乳化組成物を、ミネラル類を含有する飲食品に配合して含有させる方法などが挙げられる。
【0025】
飲食品へのミネラル類の配合量は特に制限はないが、食品添加物の使用基準を考慮した場合、例えば、飲食品に対して好ましくは約0.0001〜0.01質量%であり、より好ましくは約0.001〜0.01質量%である。
【0026】
飲食品へのビタミンEの配合量は特に制限はないが、飲食品の酸化による風味劣化を抑制する程度に配合すればよく、例えば、飲食品に対して好ましくは約0.001〜0.1質量%、より好ましくは約0.001〜0.05質量%である。
【0027】
飲食品への乳化剤の配合量は特に制限はないが、乳化剤の添加目的に適した量を配合すればよく、例えば、飲食品に対して好ましくは約0.0001〜3.0質量%、より好ましくは約0.0003〜1.0質量%である。
【0028】
飲食品への有機酸および/またはその塩の配合量としては、飲食品に含まれるミネラル類の質量に対して好ましくは約0.001〜2倍量、より好ましくは約0.001〜1倍量である。
【0029】
上述したように、鉄などのミネラル類、ビタミンEおよび乳化剤を含む飲食品において、有機酸および/またはその塩を含有させることにより、経時的に発生するビタミンEが酸化・分解した際に生じるビタミンE分解物由来の特異な臭いの発生、および飲食品の劣化による異臭の発生を抑制することができる。
【0030】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0031】
<ビタミンE含有乳化組成物の作製>
(1)原材料
ビタミンE(商品名:理研Eオイル800;理研ビタミン社製 総トコフェロール含量約68質量%以上)
ポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムJ−0381V;理研ビタミン社製 デカグリセリンモノオレート、HLB値14)
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(商品名:ウイルサーフTF−80;日油社製 脂肪酸の主成分 オレイン酸、HLB値15)
ショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS−1570;三菱化学フーズ社製 ショ糖ステアリン酸エステル、HLB15)
クエン酸(商品名:クエン酸(結晶);関東化学社製)
DL−リンゴ酸(商品名:リンゴ酸フソウ;扶桑化学工業社製)
グリセリン(ミヨシ油脂社製)
水飴(商品名:ハローデックス;林原社製 固形分72質量%以上、マルトシルトレハロース含量50質量%以上(固形分当り))
アラビアガム(商品名:アラビクコールSS;三栄薬品貿易社製)
オクテニルコハク酸エステル化澱粉(商品名:エヌクリーマー46;日本エヌエスシー社製)
澱粉分解物(商品名:パインデックス#2;松谷化学工業社製)
【0032】
(2)ビタミンE含有乳化組成物(水中油型乳化組成物)の配合
上記原材料を用いて作製したビタミンE含有乳化組成物(水中油型乳化組成物)の試作品の配合組成を表1に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
(2)ビタミンE含有乳化組成物(水中油型乳化組成物:試作品1〜9)の作製
300mL容ガラスビーカーにビタミンE成分以外の表1に記載の3倍量の原材料を加えて70℃まで加温し、70℃を保持しながらTKホモミクサー(型式:MARKII;プライミクス社製)で回転数3000rpm、10分間撹拌して水相とした。次いで水相をTKホモミクサーを用いて回転数3000rpmで撹拌しながら、70℃に加温した表1に記載した3倍量のビタミンEを水相部に徐々に加えた後、TKホモミクサーを用いて回転数8000rpm、15分間撹拌して乳化し、ビタミンE含有乳化組成物(水中油型乳化組成物:試作品1〜9)を得た。なお、試作品1〜4は有機酸を含有し、試作品5〜9は有機酸を含有していないビタミンE含有乳化組成物(水中油型乳化組成物)である。
【0035】
(3)ビタミンE含有乳化組成物(粉末品)の配合
上記原材料を用いて作製したビタミンE含有乳化組成物(粉末品)の試作品の配合組成を表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
(4)ビタミンE含有乳化組成物(粉末品:試作品10〜15)の作製
5L容ステンレス製ジョッキにビタミンE成分以外の表2に記載の10倍量の原材料を加えて80℃に加温し、80℃を保持しながらTKホモミクサー(型式:MARK2.5;プライミクス社製)で回転数4000rpm、10分間撹拌して水相とした。次いで水相をTKホモミクサーを用いて回転数4000rpmで攪拌しながら、80℃に加温した表1に記載の10倍量のビタミンEを水相部に徐々に加えた後、TKホモミクサーを用いて回転数10000rpm、15分間攪拌して乳化し、得られた乳化液を更にAPVゴーリンホモジナイザー(型式:LAB1000;APV社製)を用いて34.3MPaで1回処理し、均質化液を得た。
この均質化液を、加圧ノズル式噴霧乾燥装置(型式:L−8i;大川原化工機社)にて、熱風入口温度180℃、排気温度80℃の条件下で噴霧乾燥し、乾燥物をサイクロンで捕集することによりビタミンE含有乳化組成物(粉末品:試作品10〜15)を得た。なお、試作品10〜12は有機酸を含有し、試作品13〜15は有機酸を含有していないビタミンE含有乳化組成物(粉末品)である。
【0038】
<鉄または亜鉛含有低脂肪乳飲料の作製>
(1)原材料
市販低脂肪牛乳(商品名:榛名1.0低脂肪牛乳;榛名酪農業協同連合会製)
ピロリン酸第二鉄(商品名:ピロリン酸第二鉄液;関東化学社製)
グルコン酸亜鉛(商品名:ヘルシャスZn;扶桑化学工業社製)
ビタミンE含有乳化組成物(水中油型乳化組成物:試作品1〜9)
クエン酸(商品名:クエン酸(結晶);関東化学社製)
クエン酸三ナトリウム(商品名:クエン酸三ナトリウム;関東化学社製)
DL−リンゴ酸(商品名:リンゴ酸フソウ;扶桑化学工業社製)
ポリグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムJ−0381V;理研ビタミン社製 デカグリセリンモノオレート、HLB値14)
【0039】
(2)原材料配合
上記原材料を用いて作製した鉄または亜鉛含有低脂肪乳飲料の配合組成を表3〜6に示した。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
(3)鉄または亜鉛含有低脂肪乳飲料の作製
300mLビーカーに表3〜6に記載の原材料の2倍量を加え、スパチュラで撹拌・溶解し、鉄含有低脂肪飲料(実施例品1〜8、比較例品1〜4、参考例品1〜3)および亜鉛含有低脂肪乳飲料(実施例品9〜16、比較例品5〜8、参考例品4〜6)を得た。
【0045】
<鉄またはマグネシウム含有オレンジジュースの作製>
(1)原材料
オレンジジュース(商品名:オレンジジュース(濃縮還元)果汁100%;原田乳業社製)
ピロリン酸第二鉄(商品名:ピロリン酸第二鉄液;関東化学社製)
塩化マグネシウム(商品名:塩化マグネシウム;関東化学社製)
ビタミンE含有乳化組成物(粉末品:試作品10〜15)
【0046】
(2)原材料配合
上記原材料を用いて作製した鉄またはマグネシウム含有オレンジジュースの配合組成を表7、8に示した。
【0047】
【表7】
【0048】
【表8】
【0049】
(3)鉄またはマグネシウム含有オレンジジュースの作製
300mLビーカーに表7、8に記載の原材料の2倍量を加え、スパチュラで撹拌・溶解し、鉄含有オレンジジュース(実施例品17〜19、比較例品9〜11、参考例品7、8)およびマグネシウム含有オレンジジュース(実施例品20〜22、比較例品12〜14、参考例品9、10)を得た。
【0050】
<各飲料の評価>
(1)鉄または亜鉛含有低脂肪乳飲料の評価
得られた鉄含有低脂肪乳飲料(実施例品1〜8、比較例品1〜4、参考例品1〜3)および亜鉛含有低脂肪乳飲料(実施例品9〜16、比較例品5〜8、参考例品4〜6)の製造直後のものおよび冷蔵庫(10℃)10日間(暗所)にて保管したものの風味についての官能評価を、下記表9に示す評価基準に従い10名のパネラーでおこなった。結果はそれぞれ10名の評価点の平均値として求め、下記基準にて記号化した。結果を表10、11に示す。
[記号化]
◎: 平均値3.5以上
○: 平均値2.5以上3.5未満
△: 平均値1.5以上2.5未満
×: 平均値1.5未満
【0051】
【表9】
【0052】
【表10】
結果より、有機酸を配合した実施例品は、経時変化もなく風味は非常に良好であった。一方、有機酸を配合していない比較例品は、製造直後は良好であるが、経時的に風味が悪くなった。
【0053】
【表11】
結果より、有機酸を配合した実施例品は、経時変化もなく風味は非常に良好であった。一方、有機酸を配合していない比較例品は、製造直後は良好であるが、経時的に風味が悪くなった。
【0054】
(2)鉄またはマグネシウム含有オレンジジュースの評価
得られた鉄含有オレンジジュース(実施例品17〜19、比較例品9〜11、参考例品7、8)およびマグネシウム含有オレンジジュース(実施例品20〜22、比較例品12〜14、参考例品9、10)の製造直後のものおよび冷蔵庫(10℃)5日間(光照射:1500Lux)にて保管したものの風味についての官能評価を、「(1)鉄または亜鉛含有低脂肪乳飲料の評価」と同じ方法で風味について評価した。結果を表12、13に示す。
【0055】
【表12】
結果より、有機酸を配合した実施例品は、経時変化もなく風味は非常に良好であった。一方、有機酸を配合していない比較例品は、製造直後は良好であるが、経時的に風味が悪くなった。
【0056】
【表13】
結果より、有機酸を配合した実施例品は、経時変化もなく風味は非常に良好であった。一方、有機酸を配合していない比較例品は、製造直後は良好であるが、経時的に風味が悪くなった。