(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、プレート式の熱交換器10を示す図である。
図2は、熱交換器10の一部を構成する第1伝熱板16の平面図である。
図3は、熱交換器10の一部を構成する第2伝熱板18の平面図である。
図4(a)は、第1伝熱板16と第2伝熱板18とを対向させたときのA−A線(
図2参照)の部分断面図である。
図4(b)は、第1伝熱板16と第2伝熱板18とを対向させたときのB−B線(
図2参照)の部分断面図である。
【0014】
熱交換器10は、2枚のフレーム12,14の間に第1伝熱板16と第2伝熱板18とが交互に重ね合わされるように積層配置されて構成される。第1伝熱板16と第2伝熱板18との間の空隙には、交互に冷媒流路60及び熱媒体流路62が形成されている。
【0015】
第1伝熱板16は、四隅に冷媒の入口通路20及び出口通路22と熱媒体の入口通路24及び出口通路26とを構成するための開口28〜34が形成されている。第2伝熱板18も第1伝熱板16と開口28〜34が同様に形成されている。
【0016】
最初に、フレーム12,14、第1伝熱板16及び第2伝熱板18の配置関係について具体的に説明する。
図1において最も手前側に位置する第1伝熱板16で構成される第1プレート46は、四隅にシール部材47を挟んでフレーム12と接合される。
【0017】
また、第2伝熱板18で構成される第2プレート48は、開口32及び開口34にシール部材47を挟んで、第1プレート46と接合される。これにより、第1プレート46の杉綾の稜線と第2プレート48の杉綾の稜線が複数の箇所で点接触して第1プレート46と第2プレート48との間に冷媒流路60が形成され、開口28から流入した冷媒は冷媒流路60を通って開口30から流出することが可能となる。
【0018】
さらに、第1伝熱板16で構成される第3プレート50は、開口28及び開口30にシール部材47を挟んで、第2プレート48と接合される。これにより、第2プレート48の杉綾の稜線と第3プレート50の杉綾の稜線が複数の箇所で点接触して第2プレート48と第3プレート50との間に熱媒体流路62が形成され、開口32から流入した熱媒体は熱媒体流路62を通って開口34から流出することが可能となる。
【0019】
そして、第2伝熱板18で構成される第4プレート52は、開口32及び開口34にシール部材47を挟んで、第3プレート50と接合される。これにより、第3プレート50の杉綾の稜線と第2プレート48の杉綾の稜線が複数の箇所で点接触して第3プレート50と第4プレート52との間に冷媒流路60が形成され、開口28から流入した冷媒は冷媒流路60を通って開口30から流出することが可能となる。
【0020】
このようにして、
図1に示すように、隣り合う伝熱板間に冷媒流路60、熱媒体流路62、冷媒流路60、熱媒体流路62、・・・の順序で各流路60,62が形成されるように、第1伝熱板16と第2伝熱板18とが交互に重ね合わされ、これらが一体的にろう付けされている。
【0021】
一方(
図1の手前側)のフレーム12には、開口28〜34に対応して配管64〜70が接続されている。開口28に対応した配管64は冷媒導入配管、開口30に対応した配管66は冷媒導出配管、開口32に対応した配管68は熱媒体導入配管、開口34に対応した配管70は熱媒体導出配管である。
【0022】
次に、第1伝熱板16と第2伝熱板18の具体的な構造について説明する。第1伝熱板16には、入口端から出口端に向って折曲部が形成されている。この折曲部は、波を形成する山部(
図2における太線部分)と谷部(
図2における細線部分)とが交互に形成されるように折り曲げられる。
【0023】
この折曲部について更に詳しく説明すると、山部と谷部の延伸方向が、
図2の右方向に向うにしたがって下側に傾斜するように形成された下流側傾斜部36と、上側に傾斜するように形成された上流側傾斜部38とが交互に配置されたヘリンボーン形状となっている。
【0024】
ここでは、
図2のA−A線断面及びB−B線断面で第1伝熱板16を見たときの
図4(a)及び
図4(b)に示される山部と谷部の形状を第1伝熱板16の波型とする。そして、
図2に示される平面で第1伝熱板16を見たときの面方向に沿ったV字形状又は逆V字形状を第1伝熱板16の杉綾とする。この場合、
図2に示されるように第1伝熱板16の杉綾の稜線(
図2における太線部分)は、対称軸33の両側で線対称となっている。
【0025】
また、
図2に示されるように、第1伝熱板16の杉綾の稜線のうち、隣接する稜線の間隔は、熱媒体及び冷媒の入口端に比べて出口端の方が大きく、ここでは、例えば、出口端の稜線の間隔が、入口端の稜線の間隔の2倍であるとして説明する。このように、出口端の稜線の間隔が入口端の稜線の間隔よりも大きい場合には、第1伝熱板16の折曲部の形成密度は、入口端に比べ出口端が疎となる。
【0026】
一方、
図3に示されるように、第2伝熱板18も第1伝熱板16と同様に、四隅に冷媒の入口通路20及び出口通路22と熱媒体の入口通路24及び出口通路26とを構成するための開口28〜34が形成されていると共に、入口端から出口端に向って折曲部が形成されている。そして、この第2伝熱板18は、山部と谷部の延伸方向が、第1伝熱板16と異なっている。
【0027】
第1伝熱板16では、
図2に示されるように、左端から、下流側傾斜部36、上流側傾斜部38の順でヘリンボーン形状が構成されているのに対し、第2伝熱板18では、
図3に示されるように、左端から、上流側傾斜部42、下流側傾斜部44の順でヘリンボーン形状が構成されている。
【0028】
そして、
図3に示されるように、第2伝熱板18の杉綾の稜線(
図3における太線部分)のうち、隣接する稜線の間隔は、熱媒体及び冷媒の入口端に比べて出口端の方が大きく、ここでは、出口端の稜線の間隔が、入口端の稜線の間隔の2倍であるとして説明する。このように、第2伝熱板18の折曲部の形成密度においても、入口端に比べ出口端が疎である。
【0029】
ここで、第1伝熱板16と、第1伝熱板16と対向する第2伝熱板18とは、それぞれの対称軸33と対称軸43とを重ね合わせたときに、第1伝熱板16の杉綾の向きと第2伝熱板18の杉綾の向きは逆向きとなるように積層配置される。
【0030】
上述したように、第1伝熱板16及び第2伝熱板18の折曲部の形成密度は、入口端に比べ出口端が疎である。したがって、第1伝熱板16と第2伝熱板18との重ね合わせによって形成され冷媒流路60及び熱媒体流路62を構成する溝の数は、
図4(a)に示される上流側に比べて
図4(b)に示される下流側の方が多くなる。
【0031】
そして、第1伝熱板16と第2伝熱板18が重ね合わされて形成される溝の高さは、
図4(a)に示される上流側の高さをaとし、
図4(b)に示される下流側の高さをa
1とすると、a=a
1の関係となる。また、溝の幅は、
図4(a)に示される上流側の幅をbとし、
図4(b)に示される下流側の幅をb
1とすると、上述したように隣接する稜線の間隔は上流側に比べて下流側が2倍となるため、2×b=b
1の関係となる。これにより、各溝の断面積は、上流側に比べて下流側が大きくなる。すなわち、冷媒流路60及び熱媒体流路62の流路抵抗は上流側に比べて下流側が小さくなる。
【0032】
続いて、熱交換器10の動作について、
図1〜
図4を用いて説明する。冷媒は、
図1に破線で示す矢印のように、冷媒導入配管64を経て各開口28より冷媒流路60を流れ、その後、各開口30を経て冷媒導出配管66より導出される。一方、熱媒体は、
図1に実線で示す矢印のように、熱媒体導入配管68を経て各開口32より熱媒体流路62を流れ、その後、各開口34経て熱媒体導出配管70より導出される。
【0033】
このようにして冷媒及び熱媒体はそれぞれ冷媒流路60及び熱媒体流路62を流れ、伝熱プレート48〜56を介して冷媒と熱媒体とは熱交換を行う。そして、冷媒流路60及び熱媒体流路62内には、上述したように流路抵抗があり、冷媒及び熱媒体がそれぞれ乱流状態で流れているため、冷媒と熱媒体との熱交換は効率よく行われる。
【0034】
ここで、仮に、熱媒体導入配管68の配管の腐食等によって生じる錆等の異物が熱媒体に混ざり、異物が混ざった熱媒体が熱媒体流路62を流れて下流側に向かうにつれて異物同士が集積して大きな異物となる課題を想定する。このような場合で熱交換器10では、熱媒体流路62の下流側において流路抵抗が低く形成されているため、大きな異物でも流れやすいという利点がある。また、熱媒体流路62を構成する溝の断面積も上流側に比べて下流側の方が大きいため、異物が引っ掛かりにくいという利点がある。
【0035】
なお、熱交換器10では、第1伝熱板16及び第2伝熱板18の折曲部は、ヘリンボーン形状を有するものとして説明したが、折曲部の形成密度が入口端に比べ出口端が疎である限り、その他の形状であってもよい。
【0036】
例えば、第1伝熱板16aを
図5に示されるように、右方向に向うにしたがって上側に傾斜するように形成された上流側傾斜部65を有するストライプ形状を有するものとしてもよい。この場合、第1伝熱板16aに対向する第2伝熱板18aは、
図6に示されるように、右方向に向うにしたがって下側に傾斜するように形成された下流側傾斜部67を有するストライプ形状を有するものする。このとき、第1伝熱板16a及び第2伝熱板18aの稜線の間隔は、
図5及び
図6に示されるように、熱媒体及び冷媒の上流側に比べて下流側の方が大きい。これにより、冷媒流路60及び熱媒体流路62の流路抵抗は上流側に比べて下流側の方が小さくなるため、第1伝熱板16及び第2伝熱板18を用いた熱交換器10と同様の効果を奏する。
【0037】
また、上記では、第1伝熱板16,16a及び第2伝熱板18,18bは、稜線の間隔を下流側で大きくするものとして説明したが、対称軸33,43に対する稜線の傾斜角度を上流側に比べて下流側を大きくするものとしてもよい。例えば、
図7に示されるように第1伝熱板16bでは、対称軸33に対して稜線がなす鋭角は上流側に比べて下流側が大きくなっている。また、第1伝熱板16bに対向する第2伝熱板18bでは、
図8に示されるように、対称軸43に対して稜線がなす鋭角は上流側に比べて下流側が大きくなっている。これにより、冷媒流路60及び熱媒体流路62の流路抵抗は上流側に比べて下流側の方が小さくなるため、第1伝熱板16及び第2伝熱板18を用いた熱交換器10と同様の効果を奏する。