特許第6266246号(P6266246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266246鋼製柱とフーチングの接合構造及びその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266246
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】鋼製柱とフーチングの接合構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/02 20060101AFI20180115BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20180115BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   E01D19/02
   E02D27/32 A
   E01D22/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-148914(P2013-148914)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-21259(P2015-21259A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396007890
【氏名又は名称】大日本コンサルタント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】伊原 茂
(72)【発明者】
【氏名】中野 博文
(72)【発明者】
【氏名】内海 和仁
(72)【発明者】
【氏名】原田 政彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敏明
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】仲田 宇史
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭52−042507(JP,U)
【文献】 特公昭48−011609(JP,B1)
【文献】 特開平11−323988(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0094816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/02
E01D 22/00
E02D 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ及びウェブを有する鋼製部材をそれらの梁高さが全体厚さとなるように格子状又は井桁状に組んで構成されてなる荷重伝達板を、その外周縁部が水平面において既設フーチングの外周縁部を包囲するようにかつ中央近傍に形成された柱貫通開口の縁部が前記既設フーチングから立設された既設柱を取り囲み又はその撤去後の領域を包囲するように前記既設フーチングの上方に配置するとともに、前記荷重伝達板が埋設される形で前記既設フーチングの周囲に新設フーチングを構築し、前記荷重伝達板に新設鋼製柱を立設したことを特徴とする鋼製柱とフーチングの接合構造。
【請求項2】
コの字状鉄筋を前記鋼製部材の材軸に直交する面に平行になるようにかつ開き側が下方となるように該鋼製部材に跨設して前記新設フーチング内であって前記既設フーチングの上方に埋設するとともに、該コの字状鉄筋の下端を前記既設フーチングに埋入された差し筋に連結した請求項1記載の鋼製柱とフーチングの接合構造。
【請求項3】
地盤に埋設された既設フーチングを該地盤を掘り下げることによって露出させ、
荷重伝達板を、その外周縁部が水平面において前記既設フーチングの外周縁部を包囲するようにかつ該荷重伝達板の中央近傍に形成された柱貫通開口に前記既設フーチングから立設された既設柱が貫通されるように前記既設フーチングの上方に配置し、
前記荷重伝達板が埋設されるように前記既設フーチングの周囲にコンクリートを打設することで新設フーチングを構築し、
前記荷重伝達板に新設鋼製柱を立設し、
該新設鋼製柱による荷重受替え後、前記既設柱を撤去することを特徴とする鋼製柱とフーチングの接合方法。
【請求項4】
前記荷重伝達板を複数の荷重伝達パネルで構成した請求項3記載の鋼製柱とフーチングの接合方法。
【請求項5】
前記荷重伝達板を、フランジ及びウェブを有する鋼製部材をそれらの梁高さが全体厚さとなるように格子状又は井桁状に組んで構成した請求項3又は請求項4記載の鋼製柱とフーチングの接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製橋脚をはじめとした鋼製柱の下端をフーチングに接合する際に適用される鋼製柱とフーチングの接合構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都心部においては、数多くの高速道路が高架橋やトンネルの形で建設されているが、社会状況の変動等によって車の流れや交通量もめまぐるしく変化しており、これに対応すべく、高速道路の新規建設が継続的に行われているとともに、道路の拡幅等を内容とした改築も既存の高速道路に対して数多く行われている。
【0003】
既存の高速道路に対する改築を行うにあたり、高架橋方式の高速道路においては、上部工の支持点を大きく変更することが構造上あるいは費用面で困難な場合があり、かかる場合には、支持点の移動を最小限にとどめるべく、既存の橋脚に近接してあらたな橋脚を立設することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−195225号公報
【特許文献2】特開平10−121416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、橋脚同士の離間距離が小さいと、地盤内で新旧のフーチングが干渉することがあり、その場合には、上部工の荷重を受け替えた状態で既存のフーチング及び橋脚を撤去し、しかる後、あらたなフーチングを構築して該フーチングにあらたな鋼製橋脚を立設しなければならないところ、既存のフーチング及び橋脚を撤去してから、その撤去場所にあらたなフーチングを構築する方法だと、上部工の荷重の受替えが長期間にわたって必要になることとも相俟って、建設コストが割高になるのを余儀なくされる。
【0006】
一方、鋼製橋脚の下端をフーチングに接合するにあたり、アンカーフレームと呼ばれる鋼製フレームをフーチング内に予め埋設しておき、該アンカーフレームから延びるアンカーボルトを用いて鋼製橋脚の下端をアンカーフレームにボルト接合する工法が従来から広く用いられており、これを利用して既存のフーチングを取り込む形であらたなフーチングを構築する工法が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の工法のように、既存のフーチングの側方にアンカーフレームを配置する場合には、該フーチングを取り囲むように複数のアンカーフレームを配置せざるを得ないところ、それらのアンカーフレームを合理的な費用で一体化させることは難しく、結果として十分な接合強度を確保することができないという問題を生じる。
【0008】
また、特許文献2記載の工法のように、既存のフーチングの上方にアンカーフレームを配置する場合には、あらたなフーチングが露出しない程度に土被りに余裕がある場合でなければ採用自体が難しいという問題を生じる。
【0009】
そして何より、これらの工法は、既存のフーチングや橋脚を予め撤去することが前提となっているため、既存のフーチングや橋脚を生かしながらあらたなフーチングを構築する場合には適用が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、既存のフーチングで上部工の荷重を支持しつつ、該既存のフーチングと干渉しない形であらたなフーチングを構築可能な鋼製柱とフーチングの接合構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る鋼製柱とフーチングの接合構造は請求項1に記載したように、フランジ及びウェブを有する鋼製部材をそれらの梁高さが全体厚さとなるように格子状又は井桁状に組んで構成されてなる荷重伝達板を、その外周縁部が水平面において既設フーチングの外周縁部を包囲するようにかつ中央近傍に形成された柱貫通開口の縁部が前記既設フーチングから立設された既設柱を取り囲み又はその撤去後の領域を包囲するように前記既設フーチングの上方に配置するとともに、前記荷重伝達板が埋設される形で前記既設フーチングの周囲に新設フーチングを構築し、前記荷重伝達板に新設鋼製柱を立設したものである。
【0012】
また、本発明に係る鋼製柱とフーチングの接合構造は、コの字状鉄筋を前記鋼製部材の材軸に直交する面に平行になるようにかつ開き側が下方となるように該鋼製部材に跨設して前記新設フーチング内であって前記既設フーチングの上方に埋設するとともに、該コの字状鉄筋の下端を前記既設フーチングに埋入された差し筋に連結したものである。
【0013】
また、本発明に係る鋼製柱とフーチングの接合方法は請求項3に記載したように、地盤に埋設された既設フーチングを該地盤を掘り下げることによって露出させ、
荷重伝達板を、その外周縁部が水平面において前記既設フーチングの外周縁部を包囲するようにかつ該荷重伝達板の中央近傍に形成された柱貫通開口に前記既設フーチングから立設された既設柱が貫通されるように前記既設フーチングの上方に配置し、
前記荷重伝達板が埋設されるように前記既設フーチングの周囲にコンクリートを打設することで新設フーチングを構築し、
前記荷重伝達板に新設鋼製柱を立設し、
該新設鋼製柱による荷重受替え後、前記既設柱を撤去するものである。
【0014】
また、本発明に係る鋼製柱とフーチングの接合方法は、前記荷重伝達板を複数の荷重伝達パネルで構成したものである。
【0015】
また、本発明に係る鋼製柱とフーチングの接合方法は、前記荷重伝達板を、フランジ及びウェブを有する鋼製部材をそれらの梁高さが全体厚さとなるように格子状又は井桁状に組んで構成したものである。
【0016】
第1の発明に係る鋼製柱とフーチングの接合構造においては、荷重伝達板の外周縁部が水平面において既設フーチングの外周縁部を包囲するように、かつ該荷重伝達板の中央近傍に形成された柱貫通開口の縁部が既設フーチングから立設された既設柱を取り囲み又はその撤去後の立設領域を包囲するように、該荷重伝達板を既設フーチングの上方に配置するとともに、荷重伝達板が既設フーチングの周囲に打設されたコンクリートに埋設されるように新設フーチングを構築する。
【0017】
このようにすると、上部工の荷重を既設柱で支持している間、荷重伝達板は、その柱貫通開口の縁部が既設柱を取り囲む形で既設フーチングの上方に配置されるため、既設フーチング及び既設柱は、荷重伝達板の設置を含む新設フーチングの構築作業から何ら影響を受けることなく、新設鋼製柱による受替えが終了するまで、上部工の荷重を継続的に支持する。
【0018】
一方、荷重伝達板は、既設フーチングの周囲に打設されたコンクリートに埋設されて新設フーチングの一部となるため、新設フーチングは、荷重伝達板とコンクリートとからなる鋼コンクリート合成フーチングとして機能する一方、新設フーチングは、既設フーチングとも一体化するため、該既設フーチングとともに複合フーチングを構成する。
【0019】
加えて、荷重伝達板自体が既設フーチングよりも拡張された大きさを有することから、新設鋼製柱から伝達されてきた荷重は、複合フーチング全体に向けて広く分散伝達することとなり、かくして道路拡幅等によって増大した上部工の荷重は、新設鋼製柱を介して下方に伝達された後、これら鋼コンクリート合成フーチング及び複合フーチングによって確実かつ十分な余裕をもって支持され、杭や地盤に伝達される。
【0020】
ここで、本発明の荷重伝達板は、フランジ及びウェブを有する鋼製部材をそれらの梁高さが全体厚さとなるように格子状又は井桁状に組んで構成してあるため、一体性が高く、面外剛性もきわめて高い。
【0021】
したがって、荷重伝達板を、既設フーチングの平面形状よりも十分に大きく拡張させた場合であっても、該荷重伝達板からの荷重を複合フーチング全体に向けて広く分散伝達させることができる。
【0022】
具体的に説明すると、新設鋼製柱を介して荷重伝達板に作用する荷重のうち、圧縮荷重は、該荷重伝達板を構成する鋼製部材のフランジ下面がコンクリートに作用して該コンクリートからの支圧によって支持され、地震時水平力は、同じく鋼製部材のウェブがコンクリートに作用して該コンクリートからの支圧によって支持され、引張荷重は、同じく鋼製部材のフランジ上面がコンクリートに作用し該コンクリートからの支圧によって支持される。
【0023】
ここで、新設フーチングにおける荷重伝達板の上方のコンクリート被り厚さが十分でない場合、引張荷重に対するコンクリートからの支圧だけでは、引張荷重を支持できない場合が生じる。
【0024】
かかる場合においては、荷重伝達板の上方に格子状の上端筋を配筋することで引張耐力を高めることが可能であるが、コの字状鉄筋を上述した鋼製部材の材軸に直交する面に平行になるようにかつ開き側が下方となるように該鋼製部材に跨設して新設フーチング内であって既設フーチングの上方に埋設するとともに、該コの字状鉄筋の下端を既設フーチングに埋入された差し筋に連結した構成とすることができる。
【0025】
かかる構成によれば、コの字状鉄筋が既設フーチングの差し筋から反力を受けることにより、十分な引抜き抵抗を発揮するので、引張荷重に対する荷重伝達板ひいては複合フーチングの強度を高めることができる。
【0026】
なお、第1の発明においては、既設柱が撤去された状態であるかどうかは任意事項であって、上部工の荷重を新設鋼製柱で受け替えた後も既設柱が残置される場合には、荷重伝達板は、その柱貫通開口の縁部が既設フーチングから立設された既設柱を取り囲むように配置された状態となるし、既設柱が撤去される場合には、荷重伝達板は、その柱貫通開口の縁部が、既設柱の撤去後の立設領域を包囲するように配置された状態となる。
【0027】
第2の発明に係る鋼製柱とフーチングの接合方法においては、まず、地盤に埋設された既設フーチングを該地盤を掘り下げることによって露出させる。
【0028】
次に、必要に応じて既設フーチングの周囲にて地盤に新設杭を配置した後、荷重伝達板を、その外周縁部が水平面において既設フーチングの外周縁部を包囲するようにかつ該荷重伝達板の中央近傍に形成された柱貫通開口に既設フーチングから立設された既設柱が貫通されるように既設フーチングの上方に配置する。
【0029】
次に、荷重伝達板が埋設されるように既設フーチングの周囲にコンクリートを打設することで新設フーチングを構築する。
【0030】
なお、後工程で新設鋼製柱を立設することができるよう、その下端が接合される立ち上がり部を必要に応じて荷重伝達板に設け、コンクリート打設においては、該立ち上がり部をコンクリートの天端から突出させる。
【0031】
次に、荷重伝達板に新設鋼製柱を立設し、該新設鋼製柱による荷重受替え後、既設柱を撤去する。
【0032】
このようにすると、上部工の荷重を既設柱及び既設フーチングで継続支持しながら、その荷重支持状態に影響を及ぼすことなくあるいは該荷重支持状態から影響を受けることなく、荷重伝達板が埋設される形で新設フーチングを構築することができるとともに、既設フーチングを生かす形で新設フーチングとともに複合フーチングを構築することができる。
【0033】
そのため、既存のフーチング及び橋脚を撤去してから、その撤去場所にあらたなフーチングを構築する従来の場合に比べ、高架橋の改築工事に要する工期を大幅に短縮することが可能となる。
【0034】
荷重伝達板は、既設柱が貫通可能な柱貫通開口が形成されている必要があるが、例えば既設柱を避けながら、現地で組み立てることも可能であり、その場合には、組立後に柱貫通開口が形成されることになる。
【0035】
ここで、前記荷重伝達板を複数の荷重伝達パネルで構成するようにすれば、複数の荷重伝達パネルを予め工場製作しておき、これらを現地に搬入した後、既設柱の廻りに荷重伝達パネルを配置し、しかる後、それらを相互に接合すれば足りるので、荷重伝達板の設置を短期間に行うことが可能となる。
【0036】
荷重伝達板は、現地で組み立てるにしろ、複数の荷重伝達パネルの形で工場製作するにしろ、フランジ及びウェブを有する鋼製部材をそれらの梁高さが全体厚さとなるように格子状又は井桁状に組んで構成することができる。
【0037】
上述した第1の発明及び第2の発明において、荷重伝達板は、フランジ及びウェブを有する鋼製部材をそれらの梁高さが全体厚さとなるように格子状又は井桁状に組んで構成される限り、具体的な構成は任意であって、I形鋼、H形鋼等の形鋼をそれらの梁高さが全体厚さとなるように格子状又は井桁状に組んで構成してもよいし、矩形状の開口が平面二方向に沿って列状に形成された2枚の鋼製平板を上下に対向配置するとともにそれらの間にかつそれらと直交するように帯状の鋼板を格子状又は井桁状に配置した上、該鋼板の上縁と下縁を2枚の鋼製平板の対向面にそれぞれ溶接等で接合するようにしてもよい。この場合、2枚の鋼製平板がそれぞれフランジとなり、帯状の鋼板がウェブとなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1を示した分解斜視図。
図2】同じく本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1を示した全体斜視図。
図3】同じく本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1を示した全体図であり、(a)は平面図、(b)はA−A線方向に沿う鉛直断面図。
図4】コの字状鉄筋42の配筋状況を示した図であり、(a)は鉛直断面図、(b)はB−B線方向から見た矢視図。
図5】本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1の作用を示した説明図。
図6】複数の荷重伝達パネル61a〜61fで構成された荷重伝達板61を示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る鋼製柱とフーチングの接合構造及びその施工方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0040】
図1は、本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造を示した分解斜視図、図2は同じくその全体斜視図、図3は平面図及び鉛直断面図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1は、既設フーチング2に既設柱としての既設橋脚8が立設された基礎構造に適用されたものであって、既設フーチング2の上方に全体形状が矩形をなす荷重伝達板3を配置し、該荷重伝達板が埋設される形で既設フーチング2の周囲に新設フーチング4を構築するとともに、該荷重伝達板に新設鋼製柱としての新設橋脚5を立設してある。
【0041】
既設フーチング2は、地盤10に打ち込まれた既設杭9にそれらの杭頭にて接合してあり、新設フーチング4は、同じく地盤10に打ち込まれた新設杭11にそれらの杭頭にて接合してある。
【0042】
既設フーチング2は、一例として平面形状が9×11m程度、新設フーチング4は、一例として平面形状が15×12m程度、高さが5m程度の規模となる。
【0043】
荷重伝達板3は、その外周縁部が水平面において既設フーチング2の外周縁部を包囲するように、かつ中央近傍に形成された柱貫通開口6の縁部7が、既設橋脚8の基部8aを取り囲むように既設フーチング2の上方に配置してあり、一例として平面形状が15×12m程度よりも若干小さく、全体厚さ(高さ)が1m程度の規模となる。
【0044】
荷重伝達板3は、I形鋼をそれらの梁高さが全体厚さとなるように格子状に組んで構成してある。
【0045】
ここで、図4(a),(b)に示すように、新設フーチング4内であって既設フーチング2の上方には、コの字状鉄筋42を、荷重伝達板3を構成するI形鋼41の材軸に直交する面に平行になるようにかつ開き側が下方となるように該I形鋼に跨設して埋設するとともに、その下端を、カプラー44を介して既設フーチング2に埋入された差し筋43に連結してある。
【0046】
本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1においては、上部工(図示せず)の荷重を既設橋脚8で支持している間、荷重伝達板3は、その柱貫通開口6の縁部7が既設橋脚8の基部8aを取り囲む形で既設フーチング2の上方に配置されるため、既設フーチング2及び既設橋脚8は、荷重伝達板3の設置を含む新設フーチング2の構築作業から何ら影響を受けることなく、新設橋脚5による受替えが終了するまで、上部工の荷重を継続的に支持する。
【0047】
一方、荷重伝達板3は、既設フーチング2の周囲に打設されたコンクリートに埋設されて新設フーチング4の一部となるため、新設フーチング4は、荷重伝達板3とコンクリートとからなる鋼コンクリート合成フーチングとして機能する一方、新設フーチング4は、既設フーチング2とも一体化するため、該既設フーチングとともに複合フーチング12を構成する。
【0048】
また、荷重伝達板3自体が既設フーチング2よりも拡張された大きさを有し、かつ荷重伝達板3をI形鋼41の梁高さが全体高さとなるようにそれらを格子状に組んで構成してあるために荷重伝達板3の一体性が高く面外剛性もきわめて高いことから、新設橋脚5から伝達されてきた荷重は、複合フーチング12全体に向けて広く分散伝達する。
【0049】
すなわち、新設橋脚5を介して荷重伝達板3に作用する荷重のうち、圧縮荷重は図5(a)に示すように、該荷重伝達板を構成するI形鋼41のフランジ下面がコンクリートに作用して該コンクリートからの支圧によって支持される。
【0050】
また、引張荷重は同図(b)に示すように、同じくI形鋼41のフランジ上面がコンクリートに作用し該コンクリートからの支圧で支持されるとともに、コの字状鉄筋42を介した既設フーチング2の差し筋43からの反力によって支持される。
【0051】
また、地震時水平力は同図(c)に示すように、同じくI形鋼41のウェブがコンクリートに作用して該コンクリートからの支圧によって支持される。
【0052】
本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1を構築するには、まず、地盤10を既設フーチング2の底面位置まで掘り下げることで該地盤に埋設されていた既設フーチング2を露出させるとともに、該既設フーチングの周囲に拡がる掘削底に新設杭11を打ち込み又は造成する。
【0053】
次に、荷重伝達板3を、その外周縁部が水平面において既設フーチング2の外周縁部を包囲するようにかつ該荷重伝達板の中央近傍に形成された柱貫通開口6に既設フーチング2から立設された既設橋脚8が貫通されるように既設フーチング2の上方に配置する。
【0054】
荷重伝達板3は、既設橋脚8を避けるようにしながら、I形鋼41を縦横に並べ、これらを溶接やボルトで相互に接合することで格子状に組めばよい。この場合、柱貫通開口6は、荷重伝達板3の現場製作が完了した後に形成されることになる。
【0055】
荷重伝達板3は、掘削底から支保工を適宜立設することにより、コンクリート打設に備えて水平に仮保持しておけばよい。
【0056】
次に、荷重伝達板3を構成するI形鋼41にコの字状鉄筋42を跨設し、該コの字状鉄筋の下端を、既設フーチング2に予め埋入された差し筋43の突出端部にカプラー44を介して連結する。
【0057】
一方、後工程で打設されるコンクリートとの付着が良好になるよう、既設フーチング2の表面に対し、ウォータジェットなどの方法で目荒らし処理を施す。
【0058】
次に、必要な型枠(図示せず)を建て込んだ後、荷重伝達板3が埋設されるように既設フーチング2の周囲にコンクリートを打設することで、新設フーチング4を構築する。
【0059】
次に、荷重伝達板3に新設橋脚5を立設する。
【0060】
ここで、コンクリートが打設された後も該コンクリートの天端から突出するよう、荷重伝達板3に立ち上がり部(図示せず)を溶接等で予め固着しておき、該立ち上がり部に新設橋脚5の下端を接合するようにすればよい。立ち上がり部の部材長は、荷重伝達板3のコンクリート被り厚さを考慮して適宜定める。
【0061】
次に、上部工の荷重を新設橋脚5で受け替えた後、既設橋脚8を撤去する。既設橋脚8は、適当な高さで切断すればよく、例えばその基部8aを残す形で撤去すればよい。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1によれば、上部工の荷重を既設橋脚8で支持している間、荷重伝達板3は、その柱貫通開口6の縁部7が既設橋脚8を取り囲む形で既設フーチング2の上方に配置される。
【0063】
そのため、既設フーチング2及び既設橋脚8は、荷重伝達板3の設置を含む新設フーチング4の構築作業から何ら影響を受けることなく、新設橋脚5による受替えが終了するまで、上部工の荷重を継続的に支持することができる。
【0064】
また、本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1によれば、新設フーチング4が、荷重伝達板3を鉄筋コンクリートに埋設した鋼コンクリート合成フーチングとなるため、一般的な鉄筋コンクリートフーチングよりも剛性や耐力に優れたフーチングとなるとともに、新設フーチング4は、既設フーチング2と一体化して複合フーチング12を構成するため、既設フーチング2を生かした合理的な耐力向上が可能となる。
【0065】
また、本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1によれば、I形鋼41を格子状に組んで荷重伝達板3を構成することにより、全体厚さが小さくても面外剛性に優れた構造体とすることができるので、既設フーチング2の上方に配置しても複合フーチング12の全高を抑えることが可能となり、土被りに余裕がない状況であっても適用が可能であるとともに、荷重伝達板3をその高い面外剛性を生かして既設フーチング2よりも拡張された大きさで構築することができるので、新設橋脚5から伝達されてきた荷重を分散された状態でかつ確実に複合フーチング12に伝達することが可能となる。
【0066】
そのため、複合フーチング12を、全高を抑えた状態で、しかも新設杭11の配置領域に合わせて自由な平面形状で構築することが可能となり、現場のさまざまな制約に柔軟に対応することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1によれば、I形鋼41を格子状に組んで荷重伝達板3を構成するようにしたので、コンクリートによる支圧で圧縮荷重に抵抗しあるいはアンカーボルトを介して引張荷重に抵抗する機能しか持たない従来のアンカーフレームとは異なり、地震時水平力を受けた場合、該水平力は、I形鋼41のウェブがコンクリートに作用して該コンクリートからの支圧によって支持されるため、耐震性に優れた接合構造を実現することが可能となる。
【0068】
ちなみに、荷重伝達板3は、荷重伝達機能を有するだけではなく、I形鋼41によって新設フーチング2内の断面力を支持する構造部材としても機能する。
【0069】
また、本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合構造1によれば、新設フーチング4内であって既設フーチング2の上方には、コの字状鉄筋42をI形鋼41に跨設した状態で埋設し、その下端をカプラー44を介して既設フーチング2に埋入された差し筋43に連結したので、コの字状鉄筋42が既設フーチング2の差し筋43から反力を受けることにより、十分な引抜き抵抗を発揮することとなり、かくして引抜き荷重あるいは曲げ荷重に対する荷重伝達板3の強度、ひいては複合フーチング12の強度を高めることができる。
【0070】
また、本実施形態に係る鋼製柱とフーチングの接合方法によれば、上部工の荷重を既設橋脚8及び既設フーチング2で継続支持しながら、その荷重支持状態に影響を及ぼすことなくあるいは該荷重支持状態から影響を受けることなく、荷重伝達板3が埋設される形で新設フーチング4を構築することができるとともに、既設フーチング2を生かす形で新設フーチング4とともに複合フーチング12を構築することができる。
【0071】
そのため、既存のフーチング及び橋脚を撤去してから、その撤去場所にあらたなフーチングを構築する従来の場合に比べ、高架橋の改築工事に要する工期を大幅に短縮することが可能となる。
【0072】
本実施形態では、本発明の荷重伝達板を、I形鋼をそれらの梁高さが全体厚さとなるように格子状に組んで構成した荷重伝達板3で構成したが、I形鋼に代えて、H形鋼その他の形鋼で鋼製してもよいし、さらには、このようなフランジやウェブが当初から含まれた既製の形鋼を用いるのではなく、フランジやウェブが形成されるように、所定の鋼材を現地で組み立てるようにしてもかまわない。
【0073】
例えば、矩形状の開口が平面二方向に沿って列状に形成された2枚の鋼製平板を上下に対向配置するとともに、それらの間にかつそれらと直交するように帯状の鋼板を格子状又は井桁状に配置した上、該鋼板の上縁と下縁を2枚の鋼製平板の対向面にそれぞれ溶接等で接合するようにしてもよい。この場合、2枚の鋼製平板がそれぞれフランジとなり、帯状の鋼板がウェブとなる。
【0074】
なお、かかる変形例で組み上げられた荷重伝達板は、組立後は荷重伝達板3と概ね同様の構成となるため、図面を用いた説明は省略する。
【0075】
また、本実施形態では、コの字状鉄筋42をカプラー44を介して既設フーチング2に埋入された差し筋43に連結するようにしたが、このような機械継手に代えて、溶接によって連結することはもちろん可能である。
【0076】
また、本実施形態では、地盤10に新設杭11に打ち込んでその頭部を新設フーチング4に接合するようにしたが、場合によっては新設杭11を省略するようにしてもかまわない。
【0077】
また、本実施形態では、I形鋼41を現場で格子状に組み上げることで荷重伝達板3を製作するようにしたが、これに代えて、図6に示すように、複数の荷重伝達パネル61a〜61fからなる荷重伝達板61で本発明の荷重伝達板を構成するようにしてもよい。
【0078】
かかる構成によれば、複数の荷重伝達パネル61a〜61fを予め工場製作しておき、これらを現地に搬入した後、既設橋脚8の廻りに荷重伝達パネル61a〜61fを配置し、しかる後、それらを相互に接合して荷重伝達板61とすれば足りるので、荷重伝達板の設置を短期間に行うことが可能となる。ちなみに、この場合も、柱貫通開口6は、荷重伝達板61の現場製作が完了した後に形成される。
【0079】
また、本実施形態では、既設柱である既設橋脚8が内部空間に取り込まれるようにして新設鋼製柱である新設橋脚5を荷重伝達板3に立設したが、本発明の新設鋼製柱は、荷重伝達板の任意の場所に立設することが可能であって、例えば既設柱の一方の側に立設するようにしてもよいし、既設柱を挟み込むようにその両側に配置された一対の鋼製柱で構成することも可能である。
【0080】
また、本実施形態では、既設柱、新設鋼製柱をそれぞれ既設橋脚、新設橋脚としたが、本発明は、橋脚以外の任意の柱部材に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 鋼製柱とフーチングの接合構造
2,61 既設フーチング
3 荷重伝達板
4 新設フーチング
5 新設橋脚(新設鋼製柱)
6 柱貫通開口
7 縁部
8 既設橋脚(既設柱)
9 既設杭
10 地盤
41 I形鋼(鋼製部材)
42 コの字状鉄筋
43 差し筋
44 カプラー
61a〜61f 荷重伝達パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6