(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266255
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】能動型マウント
(51)【国際特許分類】
F16F 13/26 20060101AFI20180115BHJP
F16F 13/10 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
F16F13/26 A
F16F13/10 H
F16F13/10 K
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-158311(P2013-158311)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-119114(P2014-119114A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2016年7月13日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0144885
(32)【優先日】2012年12月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン、ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジャン、ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン、ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ドン、ウク
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−155855(JP,A)
【文献】
特開平08−270719(JP,A)
【文献】
特開2007−239883(JP,A)
【文献】
特開2006−077923(JP,A)
【文献】
特開平08−121529(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0256294(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0150145(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0296819(US,A1)
【文献】
特開昭62−288741(JP,A)
【文献】
特開昭61−136032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有するハウジングと、
前記ハウジングの内側上部に設けられ上段部が前記開口から前記ハウジングの外側へ突出するコアと、
前記コアの下部に連結され下部に向かって放射状に、前記コアを中心として外側に延伸するインシュレータと、
前記インシュレータの下部から一定の間隔を置いて設けられ、中央部が上下方向に移動可能に設けられる加振手段と、
水平方向において前記加振手段を中心として前記加振手段の外側に設けられる前記加振手段の中央部に上下方向の移動のための力を加える駆動手段と
を含み、
前記加振手段は、
中央部に設けられ、前記駆動手段に下部が連結され前記駆動手段によって上下方向に移動させられるフォークと、
前記フォークを囲みながら前記フォークを中心として外側へ延伸する弾性材質の加振板と、
前記フォークを中心として前記加振板の外側に設けられハウジングの内側に固定されるオリフィスと、
前記フォークを囲みながら前記加振板の下部に設けられるダイアフラムと
を含むことを特徴とする能動型マウント。
【請求項2】
前記フォークを中心として前記オリフィスの外側に設けられ電流によって磁力を発生させる電磁石と、
前記オリフィスと前記電磁石の間に位置し、前記フォークと連結されたアマチュアであって、前記電磁石により発生した磁力によって上下方向に移動することにより、前記フォークを上下方向に移動させるアマチュアを含むことを特徴とする請求項1に記載の能動型マウント。
【請求項3】
上部に開口を有するハウジングと、
前記ハウジングの内側上部に設けられ上段部が前記開口から前記ハウジングの外側へ突出するコアと、
前記コアの下部に連結され下部に向かって放射状に、前記コアを中心として外側に延伸するインシュレータと、
前記インシュレータの下部から一定の間隔を置いて設けられ、中央部が上下方向に移動可能に設けられる加振手段と、
水平方向において前記加振手段を中心として前記加振手段の外側に設けられる前記加振手段の中央部に上下方向の移動のための力を加える駆動手段と
を含み、
前記インシュレータと前記加振手段の間に設けられ、上下に貫通される貫通ホールを備えるフィルタ部材をさらに含むことを特徴とする能動型マウント。
【請求項4】
前記加振手段と前記駆動手段の間に設けられ、上部には前記インシュレータの下部端部が支持される第1支持部材と、
前記駆動手段とハウジングとの間に設けられた第2支持部材と
をさらに含み、
前記第1支持部材の上部と前記第2支持部材の上部とは面接触しながら密着することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の能動型マウント。
【請求項5】
上部に開口を有するハウジングと、
前記ハウジングの内側上部に設けられ上段部が前記開口から前記ハウジングの外側へ突出するコアと、
前記コアの下部に連結され下部に向かって放射状に、前記コアを中心として外側に延伸するインシュレータと、
前記インシュレータの下部から一定の間隔を置いて設けられ、中央部が上下方向に移動可能に設けられる加振手段と、
水平方向において前記加振手段を中心として前記加振手段の外側に設けられる前記加振手段の中央部に上下方向の移動のための力を加える駆動手段と
を含み、
前記加振手段と前記駆動手段の間に設けられ、上部には前記インシュレータの下部端部が支持される第1支持部材と、
前記駆動手段とハウジングとの間に設けられた第2支持部材と
をさらに含み、
前記第1支持部材の上部と前記第2支持部材の上部とは面接触しながら密着することを特徴とする能動型マウント。
【請求項6】
前記第1支持部材の上部端部は、前記加振手段を中心として外側に折り曲げられて前記第2支持部材の上部に係止されることを特徴とする請求項5に記載の能動型マウント。
【請求項7】
前記ハウジングの下部端部は、前記加振手段を中心として内側にカーリングされ、前記第2支持部材の下部端部を支持することを特徴とする請求項5に記載の能動型マウント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから伝えられる振動を能動的に減殺させる能動型マウントに関する。より詳しくは、上下方向の大きさを減少させ、設計時にレイアウトの自由度を向上させる能動型マウントに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、能動型マウントは、エンジンと車体の間に設けられてエンジンを支持すると共に、エンジンから伝えられる振動を減殺させる役割を果たす装置である。
図1は、従来の能動型マウントを示す図である。
【0003】
図1に示す通り、従来の能動型マウントは、外側を形成する全体的に円筒形状のハウジング100を備えており、ハウジング100内には、その上部にエンジンの振動を受けるコア110、コア110に結合され下部へ延伸する弾性材質のインシュレータ120、インシュレータ120の下部に設けられるフィルタオリフィス130、フィルタオリフィス130の下部に上下方向に移動可能に設けられる加振板140、加振板140の外側を取り囲むオリフィス150、加振板140の下部に連結され伸縮可能なダイアフラム160、ダイアフラム160の下部に設けられ、電磁石からなる駆動器170が上部から下部に順に設けられている。
【0004】
さらに、駆動器170の内側にはアマチュア190が設けられており、アマチュア190の内側には加振板140と一体に形成されているフォーク180がアマチュア190と結合されている。
【0005】
このような構造を有する従来の能動型マウントは、エンジンの振動がコア110を介して伝えられる場合、振動のパターンに合わせて駆動器170に電流をオン/オフさせ、アマチュア190を上下方向に移動させる。これにより、アマチュア190と連結されたフォーク180及び加振板140が上下方向に移動しながら、コア110と加振板140との間の空間を拡大又は縮小させると共に振動を減殺させることになる。
【0006】
前記従来の能動型マウントは、駆動器170及びアマチュア190が加振板140の下部に位置するため、上下方向に高さが大きくなることになる。これにより上下方向に小型化させることができず、その結果、設計時にレイアウトの自由度が限定されるとの問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の従来の技術の問題点を解決するためのものであって、上下方向への小型化を可能にして、設計時にレイアウトの自由度を向上させることができる能動型マウントを提供することに目的がある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、エンジンの振動が伝えられる場合に発生する荷重に耐えることができる構造を有するようにすることにより、構造的に安定した能動型マウントを提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外側を取り囲むハウジングと、前記ハウジングの内側上部に設けられると上段部が外側へ突出するコアと、前記コアの下部に連結され下部に向かって放射状に外側に延伸するインシュレータと、前記インシュレータの下部から一定の間隔を置いて設けられ、中央部が上下方向に移動可能に設けられる加振手段と、水平方向において前記加振手段の外側に設けられる前記加振手段の中央部に上下方向の移動のための力を加える駆動手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る能動型マウントは、加振手段の水平方向の外側に駆動手段を設ける構成を有しているので、加振手段の下部に駆動手段が位置する従来の能動型マウントに比べ上下方向の大きさを縮小させることができ、その結果、小型化を達成することができる。したがって、設計時にレイアウトの自由度を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明に係る能動型マウントを示す断面図である。
【
図3】本発明に係る能動型マウントを切り取って示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る能動型マウントの作用を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照しつつ、本発明に係る能動型マウントの実施形態に対しより詳しく説明する。説明の便宜上、
図2を基準にして上側を「上部」、下側を「下部」と記す。
【0013】
先ず、
図2及び
図3に示す通り、発明に係る能動型マウントは、外側を取り囲んで外形を形成するハウジング10を備えている。ハウジング10は略円柱形状であり、上部に進むほどやや傾斜した形状を有している。さらに、ハウジング10は上部が開口されており、下部は受け板11により閉鎖されている。
【0014】
ハウジング10の内側上部にはコア20が設けられる。コア20は、上段部がハウジング10の開口を介して上部に突出している。コア20の上段部は、図示しないエンジンの下部に位置してエンジンを支持すると共に、エンジンから振動が伝えられる。
【0015】
ハウジング10内で、コア20の下部にはインシュレータ30が連結される。インシュレータ30の上部はコア20の下部を囲んでおり、さらに、インシュレータ30の下部は下部に向かって放射状に外側に延伸されてハウジング10の内側(特に、後述する第1支持部材71)に支持される。さらに、インシュレータ30はゴムなどの弾性を有する材料で作製される。
【0016】
さらに、インシュレータ30の下部には一定の間隔を置いて加振手段40が設けられる。加振手段40は、縁部がハウジング10内に固定されており、中央部が上下方向に移動可能な構成を有している。コア20及びインシュレータ30を介しエンジンから振動が伝えられる場合、加振手段40は振動のパターンに合わせて上下方向に移動することでインシュレータ30との間の空間を膨張又は収縮させることにより、エンジンからの振動を減殺させることになる。
【0017】
このような加振手段40は、中央部にフォーク41が設けられ、フォーク41の上部にはフォーク41を囲みながら外側に延伸する弾性材質の加振板42が設けられる。加振板42の外側にはオリフィス43が設けられる。オリフィス43は、
図3に示す通り、ドーナツ状に加振板42の縁部に沿って連結されており、上側に凹んだ形状の凹部を有している。さらに、オリフィス43は図示しない貫通孔によって上下に連通されている。一方、オリフィス43はハウジング20の内側に固定されている。
【0018】
加振板42の下部には、フォーク41の下部を囲みながら外側端部がオリフィス43に固定されるダイアフラム44が設けられる。ダイアフラム44は弾性材質で作製され、
図2及び
図3に示す通り、しわ状に複数の屈曲を有する形状を有している。
【0019】
このような構成を有する加振手段40は、中央部に位置したフォーク41が上下方向に移動することになれば、加振板42の中央部分が上下方向に伸縮することになる。併せて、上下方向に移動した状態では、加振板42の弾性力によって原位置に復帰され得る。
【0020】
一方、前記インシュレータ30と加振手段40の間にはフィルタ部材60が設けられている。フィルタ部材60は、外側縁部が前記オリフィス43を覆っており、中央部はフォーク41と一定の間隔を置いて離れている。さらに、フィルタ部材60は、中央に上下に貫通する貫通ホール61が複数個形成されている。このような構成によってフォーク41が上下方向に移動する場合、加振手段40とインシュレータ30の間の空間の流体が、貫通ホール61を通して加振手段40側又はインシュレータ30側へ移動することになる。
【0021】
さらに、
図2及び
図3に示す通り、前記加振手段40の水平方向の外側には駆動手段50が設けられる。駆動手段50は、加振手段40のフォーク41を上下方向に移動させる力を発生させる作用をする。本実施形態では、加振手段40の水平方向の外側に駆動手段50が設けられるため、上下方向への大きさを縮小させることができる。したがって、上下方向への小型化が可能なため、設計時にレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0022】
具体的に、駆動手段50は、ハウジング10の下部内側に固定されオリフィス43の外側に設けられる環状コイルの電磁石51と、オリフィス43と電磁石51の間に設けられるアマチュア52とを含む。電磁石51は、外部スィッチ(図示省略)のオン/オフ動作により供給される電流によって磁力を発生させる。アマチュア52は金属材質で製作され、電磁石51から発生した磁力により上下方向に移動するように形成され、内側に加振手段40を収容する空間が形成される円筒状である。さらに、アマチュア52の下部と加振手段40のフォーク41の下部とは、連結部材53により連結されている。このような構成により、電磁石51によって発生した磁力によりアマチュア52が上下方向に移動することになれば、連結部材53により連結されているフォーク41が共に上下方向に移動することになる。
【0023】
さらに、本発明に係る能動型マウントでは、ハウジング10の内側において、加振手段40と駆動手段50の間に第1支持部材71が設けられており、駆動手段50とハウジング10の間には第2支持部材72が設けられている。
【0024】
具体的に、第1支持部材71は、加振手段40のオリフィス43の外側を取り囲むように設けられ、さらに第1オリフィス43が固定される。また、第1支持部材71の上部は、インシュレータ30の下部端部を支持している。
【0025】
第2支持部材72は、ハウジング10の内側面と駆動手段50の電磁石51の外側面との間に圧入されて密着固定される。さらに、ハウジング10の下部端部10aは内側にカーリングされ、受け板11と共に第2支持部材72の下部端部を支持する。したがって、第2支持部材72は安定的にハウジング10に密着固定される。
【0026】
さらに、第2支持部材72の上部は、第1支持部材71の上部と面接触しながら密着される。また、第1支持部材71の上部端部71aは、外側に折り曲げられて第2支持部材72の上部端部に係止されることになる。
【0027】
このような構成により、エンジンの振動によってコア20及びインシュレータ30を介し外側に向かう力が加えられる場合、その力は第1支持部材71を介して第2支持部材72に伝えられるが、第2支持部材72がハウジング10に安定的に固定されているため伝えられる力に耐えることができるようになる。したがって、本実施形態では、コア20及びインシュレータ30を介し力が加えられる場合、コア20及びインシュレータ30を十分支持することができないのでコア20及びインシュレータ30が下部に移動してハウジングから離脱される、ということを防止することができる。
【0028】
以下、
図4を参照しつつ、本発明に係る能動型マウントの作用について説明する。
【0029】
先ず、
図4の(a)に示す通り、エンジンからコア20へ下部に向かう振動が伝えられる場合、コントローラ(図示省略)によってエンジンの振動パターンを感知し、外部のスイッチ(図示省略)をオンさせて駆動手段50の電磁石51に電流を供給する。これにより電磁石51で磁力が発生し、この磁力によりアマチュア52が下部に移動する。その結果、連結部材53によってアマチュア52に連結されたフォーク41が下部に移動することになると共に、加振板42の中央部分が下部に移動することになる。したがって、インシュレータ30と加振板42の間の空間が拡大されて下部に加えられる力を相殺することになる。
【0030】
逆に、
図4の(b)に示す通り、エンジンからコア20へ上部に向かう振動が伝えられる場合、コントローラはスイッチをオフさせて駆動手段50の電磁石51に電流が供給されないようにする。この場合、電磁石51による磁力が発生せず、下部に移動した加振板42の中央部分が弾性により元の位置に移動することになる。したがって、インシュレータ30と加振板42の間の空間が縮小されて上部に加えられる力を相殺することになる。
【0031】
以上で検討してみたところのように、本発明に係る能動型マウントは、加振手段の水平方向の外側に駆動手段を設ける構成を有しているので、加振手段の下部に駆動手段が位置する従来の能動型マウントに比べて上下方向の大きさを縮小させることができ、その結果、小型化を達成することができる。したがって、設計時にレイアウトの自由度を向上させる。
【0032】
さらに、本発明に係る能動型マウントは、インシュレータの下部端部を支持する第1支持部材と、駆動手段とハウジングの間に密着される第2支持部材が上部で互いに面接触により密着されているので、インシュレータから伝えられる力に十分に耐えることができる。つまり、本発明は第1及び第2支持部材を採択することにより、外部から伝えられる力を安定的に支持することができる。
【0033】
以上、本発明に対する実施形態を具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるのではなく、特許請求の範囲に記載された技術思想を離脱しない範囲で多様に変更可能であるのは勿論である。
【0034】
例えば、本実施形態では、連結部材53がアマチュア52及びフォーク41に下部で連結される構造を有しているが、アマチュア52の上下方向の移動によりフォーク41を上下方向に移動させるものであれば、連結部材53はアマチュア52及びフォーク41に下部でない他の位置で連結されていてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 ハウジング 20 コア
30 インシュレータ 40 加振手段
41 フォーク 42 加振板
43 オリフィス 44 ダイアフラム
50 駆動手段 51 電磁石
52 アマチュア 53 連結部材
60 フィルタ部材 61 貫通ホール
71 第1支持部材 72 第2支持部材