(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
工作機械やロボットなど、数値制御される産業機械の分野では、一般的に、自動運転の他に、ジョグ送りやパルス送りといった手動操作により、刃物台,主軸頭,ロボットアームなどの移動構造体を操作することができるようになっている。
【0003】
そして、ジョグ送りのための操作キーや、パルス送りのためのパルスハンドルは、通常、操作盤に配設され、この操作キーやパルスハンドルから入力された操作信号が数値制御装置に送信されるようになっている。
【0004】
ところで、手動操作により前記移動構造体を操作する場合に、オペレータは、誤認によって、例えば、ロボットアームの移動軸を間違えて選択する、或いは移動させる方向を間違えるというように、自身が意図している操作とは異なった操作を行うことがある。これは所謂人為的なミスであるが、このような誤った操作を行うと、操作対象の移動構造体が他の構造体と衝突するといった重大な事故を引き起こしかねない。
【0005】
そこで、このような誤操作を防止するために、従来、下記特許文献1に開示されるような表示装置が提案されている。この表示装置は、グラフィック画像を表示するディスプレイ装置(CRTモニタ)と、このディスプレイ装置の画面上に、ロボットを表現する画像とともに、ロボットコントローラが実行するジョグモードの内容を表現する画像を表示させるディスプレイコントローラとを備えている。
【0006】
この表示装置では、例えば、1)ロボットコントローラが「ツール送りモード」を実行する場合には、ディスプレイコントローラは、ロボットアーム先端部付近及びハンドのグラフィック画像に、ツール座標系の各軸を重畳させた画像をディスプレイ装置に表示させ、2)ロボットコントローラが「ロボット座標系送りモード」を実行する場合には、ディスプレイコントローラは、ロボットベースを含むロボット全体の画像に、ベース座標系の各軸を重畳させた画像をディスプレイ装置に表示させる。また、3)ロボットコントローラが「ユーザ座標系送りモード」を実行する場合には、ディスプレイコントローラは、ロボット全体の画像に、ユーザ座標系の各軸を重畳させた画像をディスプレイ装置に表示させ、4)ロボットコントローラが「各軸送りモード」を実行する場合には、ディスプレイコントローラは、ロボット全体の画像に、各軸の位置及び運動方向を指示する画像を重畳させて、ディスプレイ装置に表示させる。
【0007】
更に、前記ディスプレイコントローラは、ジョグ送りの送り方向について、対応する座標軸を点滅させる、或いは対応する座標軸の表示色を変えるなど、これを強調した表示を行うことができるようになっている。
【0008】
斯くして、この従来の表示装置によれば、オペレータが、ジョグ送り実行前、或いは実行中にジョグモードをイメージで容易に把握することができるので、ジョグモードを誤認したままジョグ送りを開始、或いは続行するのが防止され、また、ジョグ送り可能な方向或いはジョグ送り中の方向がイメージで把握されるので、ジョグ送り動作を不安なく実行することができるとともに、ジョグ送りによる教示作業の効率化を図ることができ、更に、実行中のジョグ送り方向をグラフィック表示中に強調表現することによって、より明確にオペレータにジョグ送り方向を把握させることができる、とのことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、工作機械の分野では、複数の移動構造体を備えたものがあり、この工作機械において、各移動構造体が相互に接近した位置にある場合には、上記従来の表示装置のように、操作対象に係る移動構造体の送り軸(送り方向)の画像を、当該移動構造体の画像付近に配置して表示したのでは、表示された送り軸の画像を一見しただけでは、これがどの移動構造体に対して表示されたものかを、オペレータが容易に判別することができないという問題があった。
【0011】
また、送り軸の画像を介して、操作対象に係る移動構造体を認識すること自体、これが間接的であるため、却ってオペレータの誤認,誤操作を誘発しかねない。
【0012】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであって、複数の移動構造体を備えた工作機械の当該移動構造体を選択的に手動操作する際に、オペレータにどの移動構造体が操作対象となっているかを容易に認識させることができる表示装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、
複数の移動構造体、該移動構造体を駆動する駆動機構部、該駆動機構部の作動を制御する数値制御装置、
並びに、手動操作のための固有の操作信号
である、操作対象の移動構造体を選択するための選択信号、選択した移動構造体を移動させる移動軸を選択する信号、及び選択した移動構造体を移動させるための信号を前記数値制御装置に入力する入力装置を備えた工作機械に接続され、少なくとも前記移動構造体に係る画像を表示する表示装置であって、
前記画像を表示するディスプレイと、
前記画像を前記ディスプレイ上に表示するための、該画像に係るデータを記憶する表示画像データ記憶部と、
前記数値制御装置から前記各移動構造体の位置に係る信号を受信するとともに、前記表示画像データ記憶部から、対応する移動構造体に係る画像データを読み出し、各移動構造体の画像を、受信した位置関係となるように配置した表示画像を生成し、生成した表示画像を前記ディスプレイ上に表示させる表示制御部とを備えてなり、
前記表示制御部は、更に、前記入力装置から操作対象の移動構造体を選択する信号が前記数値制御装置に入力されたとき、該選択信号を受信して、受信した選択信号に対応する移動構造体の画像を強調した前記表示画像を生成し、生成した前記表示画像を前記ディスプレイ上に表示させるように構成された表示装置に係る。
【0014】
本発明に係る表示装置によれば、前記表示制御部によって、少なくとも前記移動構造体に係る画像が前記ディスプレイ上に表示される。前記表示制御部によって表示される画像には、少なくとも移動構造体が含まれるが、工作機械を構成する固定構造体の画像を併せて表示するようにしても良い。
【0015】
各移動構造体の表示画像は、前記数値制御装置から受信される各移動構造体の位置に係る信号と、前記表示画像データ記憶部に格納された対応の移動構造体に係る画像データとを基に、受信した位置関係となるように、各移動構造体の画像を配置することによって生成され、前記表示制御部は生成した表示画像を前記ディスプレイ上に表示させる。
【0016】
これにより、オペレータは、工作機械の加工領域を外部から遮断する扉が閉じられ、前記加工領域内に配設された移動構造体等の構造体を直接視認できない場合であっても、前記ディスプレイに表示された画像を確認することで、前記構造体の位置関係を把握することができる。
【0017】
そして、前記表示制御部は、オペレータが手動操作により前記移動構造体を操作する際には、前記入力装置から前記数値制御装置に入力される、操作対象の移動構造体を選択する信号を受信して、選択信号に対応する移動構造体の画像を強調した前記表示画像を生成し、生成した前記表示画像を前記ディスプレイ上に表示させる。尚、この強調表示は、選択された移動構造体の表示色を他の構造体の表示色と異なるものとする、或いは、選択された移動構造体の輪郭を他のものに比べて太くする、或いは、選択された移動構造体を点滅させて表示するといった態様を採ることができる。
【0018】
これにより、オペレータは、自身が手動操作によって操作しようとしている前記移動構造体を、前記ディスプレイに表示された画像を確認することにより、即ち、どの移動構造体に対応した画像が強調表示されているかを確認することにより、極めて容易に把握することができる。したがって、オペレータが、自身の意図したものと異なる移動構造体を操作しようとしている場合には、当該オペレータは、ディスプレイ上の表示画像を確認することで、これを容易に認識することができ、誤操作により意図しない移動構造体を移動させることによって、衝突事故が発生するのを効果的に防止することができる。
【0019】
また、本発明
に係る前記表示制御部は、前記入力装置から入力された選択信号に対応する移動構造体の
移動可能な移動軸に関する画像を加えた前記表示画像を生成し、生成した前記表示画像を前記ディスプレイ上に表示させ
る。これにより、オペレータは、前記ディスプレイ上の表示画像を確認することにより、手動操作によって選択した移動構造体の移動可能な方向を認識することができ、操作によって当該移動構造体がどの方向に移動するか、或いは、当該移動構造体を自身が意図する方向に移動させ得るかどうかを容易に把握することができる。
【0020】
また、本発明
に係る前記表示制御部は、
次に、前記入力装置から移動軸
の選択信号が前記数値制御装置に入力され
ると、入力された移動軸に係る画像を強調した前記表示画像を生成し、生成した前記表示画像を前記ディスプレイ上に表示させ
る。尚、この強調表示は、選択された移動軸の表示色を他の移動軸の表示色と異なるものとする、或いは、選択された移動軸を他のものに比べて太く表示する、或いは、選択された移動軸を点滅させて表示するといった態様を採ることができる。
【0021】
このようにすれば、オペレータは、前記ディスプレイ上の表示画像を確認することにより、手動操作によって選択した移動構造体の移動方向を容易に認識することができ、当該移動構造体を自身が意図する方向に移動させているかどうかを容易に把握することができる。これにより、オペレータの誤操作により、当該移動構造体が意図しない方向に移動して、衝突事故が引き起こされるのをより効果的に防止することができる。
【0022】
本発明において、前記ディスプレイ上に表示される画像は、2次元画像、3次元画像のいずれでも良い。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明に係る表示装置によれば、オペレータが手動操作によって操作しようとしている移動構造体を、ディスプレイ上で強調表示するようにしているので、オペレータは、強調表示された画像を確認することにより、自身がどの移動構造体を操作しようとしているのかを、極めて容易に把握することができる。これにより、オペレータの意図しない移動構造体を移動させることによって衝突事故が発生するのを効果的に防止することができる。
【0024】
また、選択された移動構造体の移動軸に関する画像を加えた画像をディスプレイ上に表示させれば、オペレータは、手動操作によって選択した移動構造体の移動可能な方向を認識することができ、操作によって当該移動構造体がどの方向に移動するか、或いは、当該移動構造体を自身が意図する方向に移動させ得るかどうかを容易に把握することができる。
【0025】
また、入力装置から移動軸に関する信号が入力されたときに、対応する移動軸に係る画像をディスプレイ上に表示させる、或いは、この移動軸に係る画像を強調してディスプレイ上に表示させるようにすれば、オペレータは、手動操作によって選択した移動構造体の移動方向を容易に認識することができ、当該移動構造体を自身が意図する方向に移動させているかどうかを容易に把握することができる。これにより、オペレータの誤操作により、当該移動構造体が意図しない方向に移動して、衝突事故が引き起こされるのをより効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る表示装置30は、工作機械1に組み込まれて構成されるもので、表示制御部31及びタッチパネル40から構成される。以下、各部について説明する。
【0028】
[工作機械の構成]
まず、本実施形態に係る工作機械1の概略構成について説明する。尚、
図3及び
図4は、前記タッチパネル40の表示画面を示した説明図であるが、図中の括弧書きした符号は、工作機械1の構成物を示すものである。
【0029】
図1に示すように、本例の工作機械1は、加工機構部2、制御装置20及び操作盤25から構成される。
【0030】
前記加工機構部2は、ベッド(図示せず)や、このベッド(図示せず)上に配設される、
図3及び
図4に示した第1主軸台3及び第2主軸台6、並びに第1刃物台9,第2刃物台11及び第3刃物台13などから構成される。前記第1主軸台3は、第1主軸4及びこの第1主軸4の軸端に配設された第1チャック5を備え、一方、前記第2主軸台6は、第2主軸7及びこの第2主軸7の軸端に配設された第2チャック8を備えており、これら第1主軸台3及び第2主軸台6は、その第1チャック5,第2チャック8が相互に対向するように同軸上に配設されている。尚、前記第1主軸4及び第2主軸7はそれぞれ適宜駆動モータにより、その軸中心に回転するように駆動される。
【0031】
また、前記第1刃物台9及び第2刃物台11は、オペレータの作業側から見て、前記第1主軸4及び第2主軸7の軸線よりも奥側に配設され、一方、前記第3刃物台13は、前記第1主軸4及び第2主軸7の軸線よりも手前側に配設されている。前記第1刃物台9及び第2刃物台11は、それぞれに設けられる第1タレット10及び第2タレット12が、互いに対峙するように配設され、適宜送り機構によってそれぞれ直交3軸であるX軸,Y軸及びZ軸方向に移動するようになっている。また、前記第3刃物台13は第3タレット14を備えており、同様に、適宜送り機構によって前記X軸,Y軸及びZ軸方向に移動する。また、これら第1タレット10,第2タレット12及び第3タレット14は、適宜駆動モータによって、前記Z軸方向に沿った軸を中心として回転するように駆動される。
【0032】
尚、本例の工作機械1では、前記第1刃物台9の操作系統を「1系統」、第2刃物台11の操作系統を「2系統」、第3刃物台13の操作系統を「3系統」と称する。また、前記第1主軸4、第1チャック5、第2主軸7、第2チャック8、第1刃物台9、第1タレット10、第2刃物台11、第2タレット12、第3刃物台13及び第3タレット14が、本発明に係る移動構造体である。
【0033】
前記制御装置20は、
図1に示すように、数値制御部21、プログラマブル・マシン・コントローラ(PMC)22及び前記表示制御部31を備えている。尚、表示制御部31については、上述のように前記表示装置30を構成するものであるので、その詳しい説明については、後述する。
【0034】
前記数値制御部21は、NCプログラムに従って、前記第1主軸4及び第2主軸7の回転を制御するとともに、第1刃物台9、第2刃物台11及び第3刃物台13の移動を数値制御する。また、前記PMC22は、所定の動作プログラムに従って、前記第1チャック5、第2チャック8、第1タレット10、第2タレット12及び第3タレット14等の作動を制御する。また、これら数値制御装置21及びPMC22は、前記プログラムに従った制御の他に、後述の操作盤25から入力される手動操作信号を受信し、受信した手動操作信号に応じて、前記第1主軸4及び第2主軸7の回転、第1刃物台9、第2刃物台11及び第3刃物台13の移動、並びに前記第1チャック5、第2チャック8、第1タレット10、第2タレット12及び第3タレット14の作動等を制御する。
【0035】
前記操作盤25は、タッチパネル40、主軸操作部26、ジョグ送り操作部27及びパルス送り操作部28などを備えている。尚、タッチパネル40については、上述のように前記表示装置30を構成するものであるので、その詳しい説明については、後述する。
【0036】
前記主軸操作部26は、前記第1主軸4及び第2主軸7を手動操作によって回転させるための信号を前記制御装置20に入力する入力機器であり、例えば、第1主軸4及び第2主軸7のうち、回転させる対象を選択する選択キーや、正逆の所定方向に回転させる駆動キーなどが含まれる。
【0037】
前記ジョグ送り操作部27は、第1刃物台9、第2刃物台11及び第3刃物台13をジョグ送りによって移動させるための信号を、前記制御装置20に入力する入力機器であり、本例では、X軸+,X軸−、Y軸+,Y軸−、Z軸+,Z軸−のジョグ送り方向を入力する6個のキーを有する。
【0038】
前記パルス送り操作部28は、前記第1刃物台9、第2刃物台11及び第3刃物台13をパルス送りによって移動させるための信号を、前記制御装置20に入力する入力部であり、パルス信号を生成するパルスハンドルや、送り軸、即ち、X軸,Y軸及びZ軸の内から1軸を選択するキーなどを有する。
【0039】
尚、操作盤25に設けられる手動操作のためのキー,スイッチ及びパルスハンドル等の構成は、工作機械の分野では周知であり、本例においても何ら上記のものに限定されるものではない。
【0040】
[表示装置の構成]
上述したように、前記表示装置30は、前記制御装置20内に設けられる表示制御部31及び表示データ記憶部36、並びに操作盤25に設けられるタッチパネル40からなる。
【0041】
ディスプレイとしての前記タッチパネル40は、
図3及び
図4に示すように、所定の表示領域41を有し、オペレータが当該表示領域41の所定部分に触ると、これを入力信号として、前記表示制御部31に送信する処理を行う。
【0042】
前記表示データ記憶部36は、前記タッチパネル40の表示領域41内に、画像やソフトキーなどを表示するためのデータを記憶する機能部であり、本例では、加工機構部2の3次元モデルの画像、即ち、第1主軸台3の画像43,第1主軸4の画像44,第1チャック5の画像45,第2主軸台6の画像46,第2主軸7の画像47,第2チャック8の画像48,第1刃物台9の画像49,第1タレット10の画像50,第2刃物台11の画像51,第2タレット12の画像52,第3刃物台13の画像53,第3タレット14の画像54,ベッドカバー15の画像55及び前扉16の画像56に係るデータ、並びに「1系統」キー61,「2系統」キー62及び「3系統」キー63に係るデータ等が、適宜、予め格納されている。
【0043】
前記表示制御部31は、
図1に示すように、表示画面切替部32、入力制御部33、モデル画像表示部34及び画面表示部35からなる。
【0044】
前記表示画面切替部32は、前記タッチパネル40の表示領域41内に表示する画面の領域を設定する処理部であり、例えば、
図3及び
図4に示した例では、前記表示画面切替部32は、前記工作機械1を構成する構造体のモデル画像を表示する画像表示領域42と、その外側に設けられるソフトキーを表示するソフトキー表示領域60とを設定している。尚、表示画面切替部32は、この他に、NCプログラムを表示する画面や、前記第1主軸4及び第2主軸7の回転数を表示する画面や、前記第1刃物台9、第2刃物台11及び第3刃物台13の現在位置を表示する画面など、従来公知の様々な表示画面を設定することができるようになっている。
【0045】
前記画面表示部35は、前記表示画面切替部32によって設定される表示領域41内の、前記画像表示領域42以外の領域について、当該領域内に画面表示する処理部であり、例えば、前記表示データ記憶部36に格納されたソフトキーに関する表示データを読み出して、
図3及び
図4に示したソフトキー表示領域60に、所定のソフトキーを表示する。
図3及び
図4に示した例では、前記ソフトキー表示領域60の右辺側上部に、前記第1刃物台9の操作系統を示す「1系統」キー61、第2刃物台11の操作系統を示す「2系統」キー62、第3刃物台13の操作系統を示す「3系統」キー63が表示されている。
【0046】
この他に、前記画面表示部35は、例えば、NCプログラムを表示する場合には、前記数値制御部21からNCプログラムに係るデータを受信して、これを表示し、前記第1主軸4及び第2主軸7の回転数を表示する場合や、前記第1刃物台9、第2刃物台11及び第3刃物台13の現在位置を表示する場合には、同様に、前記数値制御部21からそれぞれのデータを受信して表示する。
【0047】
前記入力制御部33は、前記タッチパネル40から入力信号が入力されると、これを受けて、前記画面表示部35により表示される表示内容を参照し、その表示内容に対応した信号を前記数値制御部21に送信する処理を行う。例えば、
図4において、ソフトキーである「2系統」キー62が押下され、その信号が前記タッチパネル40から入力されると、前記入力制御部33は、「2系統」である第2刃物台11が選択されたことを示す選択信号を前記数値制御部21に送信する。その際、前記画面表示部35は、押下されたソフトキー(本例では、「2系統」キー62)の白黒を反転させて、当該ソフトキーが押下されたことを表示する。
【0048】
前記モデル画像表示部34は、前記加工機構部2の3次元モデルに係る画像を、前記タッチパネル40の画像表示領域42に表示する処理部であり、具体的には、
図2に示した処理を実行する。
【0049】
即ち、同
図2に示すように、前記モデル画像表示部34は、前記表示画面切替部32によって、加工機構部2の画像を表示する設定がなされると処理を開始して、まず、前記表示データ記憶部36に格納された前記加工機構部2の3次元モデルに係る画像データを読み出すとともに(ステップS1)、前記第1刃物台9、第2刃物台11及び第3刃物台13に関する現在位置データを前記数値制御部21から入力する(ステップS2)。
【0050】
ついで、前記モデル画像表示部34は、前記タッチパネル40上に表示したソフトキー61,62,63のいずれかが押下され、前記第1刃物台9、第2刃物台11及び第3刃物台13の内から手動操作によって操作する対象を選択する選択信号が前記タッチパネル40から入力されたかどうかを監視し(ステップS3)、選択信号の入力がない場合には、
図3に示すように、前記加工機構部2を構成する各画像、即ち、第1主軸台3の画像43,第1主軸4の画像44,第1チャック5の画像45,第2主軸台6の画像46,第2主軸7の画像47,第2チャック8の画像48,ベッドカバー15の画像55及び前扉16の画像56を所定の位置に配置するとともに、前記第1刃物台9の画像49及び第1タレット10の画像50、前記第2刃物台11の画像51及び第2タレット12の画像52、並びに前記第3刃物台13の画像53及び第3タレット14の画像54を、前記数値制御部21から入力した位置関係に配置した表示画像を生成し(ステップS4)、生成した表示画像を前記タッチパネル40の画像表示領域42に表示する(ステップS5)。
【0051】
一方、前記タッチパネル40から選択信号が入力された場合には(ステップS3)、前記モデル画像表示部34は、選択信号に対応する移動構造体を認識、即ち、前記第1タレット10、第2タレット12、第3タレット14のいずれが選択されたかを認識し(ステップS6)、
図4に示すように、前記ステップS4で生成される表示画像の内、選択された移動構造体に係る画像(前記第1タレット10の画像50、第2タレット12の画像52、第3タレット14の画像54のいずれか)を強調した表示画像、即ち、当該移動構造体の表示色を他の構造体の表示色とは異なる色に設定した表示画像を生成する(ステップS7)。尚、
図4では、第2タレット12が選択された状態を示しており、第2タレット12の画像52を黒色で表示している。また、この場合、「2系統」キー62が押下されている状態であり、この押下によって、「2系統」キー62が白黒反転されて表示されている。
【0052】
続いて、前記モデル画像表示部34は、前記ジョグ送り操作部27のジョグ送りキーが操作されたかどうか、並びにパルス送り操作部28において、送り軸の選択キーが操作されたかどうか、即ち、送り軸に関する入力がされたかどうかを監視し(ステップS8)、これが入力された場合には、前記モデル画像表示部34は、
図4に示すように、前記ステップS7で生成した表示画像に当該送り軸に係る画像57を重畳した表示画像を生成し(ステップS9)、生成した表示画像を前記タッチパネル40の画像表示領域42に表示する(ステップS5)。尚、
図4では、前記ジョグ送り操作部27又はパルス送り操作部28から送り軸としてZ軸に関する信号入力された場合を示している。
【0053】
一方、前記ジョグ送り操作部27又はパルス送り操作部28から送り軸に関する信号が入力されない場合には(ステップS8)、前記モデル画像表示部34は、前記ステップS7で生成した表示画像を前記タッチパネル40の画像表示領域42に表示する(ステップS5)。尚、前記ステップS7で生成される画像は、
図4に示した画像から、Z軸に係る画像57を削除したものである。
【0054】
そして、ステップS5における表示処理の後、前記モデル画像表示部34は、前記表示画面切替部32によって、加工機構部2の画像を表示する設定が解除、即ち、終了されるまで、前記ステップS2〜S9の処理を繰り返し、画像表示の設定が解除されたとき、処理を終了する(ステップS10)。
【0055】
[工作機械及び表示装置の動作]
以上の構成を備えた本例の工作機械1では、前記数値制御部21及びPMC22による制御の下での、各プログラムに従った自動運転が可能であり、また、前記操作盤25を介した、前記加工機構部2の手動操作が可能である。
【0056】
また、前記表示装置30は、前記表示画面切替部32によって設定した画面を、前記操作盤25に設けられたタッチパネル40上に表示する。オペレータは、タッチパネル40上に表示されたソフトキーを操作することにより、この表示画面切替部32を介して、タッチパネル40上に表示される画面を切り替えることができ、
図3に示すような、加工機構部2を構成する構造体の3次元画像及びソフトキーを表示させることができる。尚、前記構造体の3次元画像は、前記モデル画像表示部によって前記画像表示領域42内に表示され、ソフトキーは、前記画面表示部35によって、前記ソフトキー表示領域60内に表示される。
【0057】
オペレータは、タッチパネル40上に表示されたソフトキーや、前記操作盤25に設けられた主軸操作部26,ジョグ送り操作部27及びパルス送り操作部28を操作することにより、加工機構部2を手動操作することができる。
【0058】
オペレータが、前記第1刃物台9、第2刃物台11及び第3刃物台13のいずれかをジョグ送り又はパルス送りによって移動させる場合、当該オペレータは、まず、
図3に示したソフトキーである、「1系統」キー61,「2系統」キー62,「3系統」キー63のいずれかを選択的に押下する。
【0059】
そして、例えば、オペレータが第2刃物台11を移動させるべく、「2系統」キー62を押下すると、「2系統」キー62が押下されたことを示す信号が、タッチパネル40から前記入力制御部33に入力され、当該入力制御部33は、「2系統」キー62が押下されたことを示す信号、即ち、第2刃物台11が選択されたことを示す選択信号を前記数値制御部21に送信するとともに、同様に前記画面表示部35及び前記モデル画像表示部34に送信する。そして、この選択信号を受けて、
図4に示すように、前記画面表示部35は、「2系統」キー62を白黒反転して表示し、前記モデル画像表示部34は、「2系統」に対応する第2タレット12の画像52を黒色に反転して表示する。
【0060】
ついで、オペレータが、第2刃物台11を、例えば、Z軸方向に移動させるべく、前記パルス送り操作部28においてZ軸を選択する、又は、ジョグ送り操作部27においてZ軸方向のジョグ送りキーを操作すると、この信号が前記数値制御部21に送信されるとともに、前記モデル画像表示部34に送信される。そして、モデル画像表示部34は、この信号を受けて、
図4に示すように、画像表示領域42に表示される画像に、Z軸に係る画像57を重畳して表示する。
【0061】
尚、数値制御部21は、ジョグ送りキーが操作された場合には、その方向に第2刃物台11を移動させ、パル
ス送りの場合には、更に、前記パルス送り操作部28のパル
スハンドルから入力されるパルス量に応じて前記第2刃物台11を移動させる。
【0062】
[まとめ]
このように、本例の表示装置30によれば、オペレータが手動操作によって前記第1刃物台9及び第1タレット10、第2刃物台11及び第2タレット12、並びに第3刃物台13及び第3タレット14のいずれかを移動させる場合に、タッチパネル40上に表示される第1タレット10の画像50、第2タレット12の画像52及び第3タレット14の画像54の内、選択された移動対象の画像(
図4では、第2タレット12の画像52)を白黒反転して、即ち、強調して表示するようにしているので、オペレータは、自身が手動操作によって操作しようとしている移動構造体を、前記タッチパネル40に表示された画像を確認することにより、即ち、どの画像が強調表示されているかを確認することにより、極めて容易に把握することができる。
【0063】
したがって、オペレータが、自身の意図したものと異なる移動構造体を操作しようとしている場合には、当該オペレータは、タッチパネル40上の表示画像を確認することで、これを容易に認識することができ、誤操作により意図しない移動構造体を移動させることによって、衝突事故が発生するのを効果的に防止することができる。
【0064】
また、オペレータが移動構造体を移動させるべく操作した当該移動軸の画像をタッチパネル40上に表示、即ち、操作する移動構造体の移動方向を表示するようにしているので、オペレータは、当該タッチパネル40上の表示画像を確認することにより、当該移動構造体の移動方向を認識することができ、当該移動構造体を自身が意図する方向に移動させているかどうかを容易に把握することができる。これにより、オペレータの誤操作によって、操作対象の移動構造体が意図しない方向に移動することで、衝突事故が引き起こされるのをより効果的に防止することができる。
【0065】
[変形例]
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は何らこれに限定されるものではない。例えば、上例において、前記モデル画像表示部34は、操作対象に選択した移動構造体の画像(上例では第2タレット12の画像52)を白黒反転することによって強調するようにしたが、これに限られるものではなく、前記モデル画像表示部34は、選択した移動構造体の画像を他のものと異なる色で表示する、或いは、選択した移動構造体の画像の輪郭を他のものに比べて太く表示する、或いは、選択した移動構造体の画像を点滅させて表示することによって、強調表示するように構成されていても良い。具体例として、画像の輪郭を太くすることにより強調した画面を、
図5に示す。
図5では、「2系統」が選択され、これに対応した第2タレット12の画像52の輪郭を、他のものに比べて太くしている。
【0066】
また、前記モデル画像表示部34は、
図5に示すように、操作対象として選択した移動構造体の移動可能な移動軸に関する画像を加えた表示画像を生成して、前記画像表示領域42内に表示するように構成されていても良い。
図5では、第2タレット12に係る移動軸の画像、即ち、X軸画像58、Y軸画像59及びZ軸画像57を表示している。このようにすれば、オペレータは、前記タッチパネル40上の表示画像を確認することにより、手動操作によって選択した移動構造体の移動可能な方向を認識することができ、操作によって当該移動構造体がどの方向に移動するか、或いは、当該移動構造体を自身が意図する方向に移動させ得るかどうかを容易に把握することができる。
【0067】
また、この場合において、前記モデル画像表示部34は、オペレータが移動構造体を移動させるべく操作した当該移動軸の画像をタッチパネル40上に強調表示するように構成されていても良い。
図5では、オペレータが操作軸としてZ軸を選択した場合に、当該Z軸画像57を白黒反転して強調表示した例を示している。尚、この強調表示も、上記と同様に、他のものと異なる表示色にする、或いは、輪郭を太くする、或いは点滅表示するといった態様を採ることができる。このようにすることで、上述したように、オペレータは、当該タッチパネル40上の表示画像を確認することにより、移動構造体の移動方向を認識することができ、当該移動構造体を自身が意図する方向に移動させているかどうかを容易に把握することができる。これにより、オペレータの誤操作によって、移動構造体が意図しない方向に移動することで、衝突事故が引き起こされるのをより効果的に防止することができる。
【0068】
また、上例では、前記第1刃物台9及び第1タレット10、第2刃物台11及び第2タレット12、並びに第3刃物台13及び第3タレット14を強調表示対象の移動構造体として捉えたが、これに限られるものではなく、上例においても、第1主軸4及び第1チャック5並びに、第2主軸7及び第2チャック8を強調表示対象の移動構造体に含めるようにしても良い。尚、この強調表示対象の移動構造体には、並進運動や回転運動を行うあらゆる構造体が含まれ、工作機械の構成によってそれぞれ異なる。
【0069】
また、上例では、表示する画像を3次元画像としたが、2次元画像であっても良い。