(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ユーザに装着され当該ユーザの運動フォームを解析する運動フォーム解析装置であって、前記ユーザの運動時において前記ユーザに装着された部位周辺の基準値に対する外気圧変動量を測定する気圧変動センサを有するセンサモジュールと、
前記気圧変動センサによる前記外気圧変動量の測定結果に基づいて、前記ユーザの運動時における上下動の振幅を算出し、当該算出した振幅と予め定めた振幅とを比較してユーザの運動フォームを解析する解析部を有する解析モジュールと、を備え、
前記上下動の振幅は、所定時間内における前記外気圧変動量の最大値と最小値との差分量より算出されることを特徴とする運動フォーム解析装置。
ユーザに装着され当該ユーザの運動フォームを解析する運動フォーム解析装置であって、前記ユーザの運動時において前記ユーザに装着された部位周辺の基準値に対する外気圧変動量を測定する気圧変動センサを有するセンサモジュールと、
前記気圧変動センサによる前記外気圧変動量の測定結果に基づいて、前記ユーザの運動時における上下動の振幅を算出し、当該算出した振幅と予め定めた振幅とを比較してユーザの運動フォームを解析する解析部を有する解析モジュールと、を備え、
前記センサモジュールは、前記ユーザの運動時における加速度を計測する加速度センサを有し、
前記解析部は、前記加速度センサの測定結果と前記ユーザの上下動の振幅とに基いて、静止状態、歩行状態、及び走行状態からなるユーザの現在の運動状態を特定し、当該特定した運動状態に基づく運動フォームを解析することを特徴とする運動フォーム解析装置。
ユーザに装着され当該ユーザの運動フォームを解析する運動フォーム解析装置であって、前記ユーザの運動時において前記ユーザに装着された部位周辺の基準値に対する外気圧変動量を測定する気圧変動センサを有するセンサモジュールと、
前記気圧変動センサによる前記外気圧変動量の測定結果に基づいて、前記ユーザの運動時における上下動の振幅を算出し、当該算出した振幅と予め定めた振幅とを比較してユーザの運動フォームを解析する解析部を有する解析モジュールと、を備え、
前記上下動の振幅は、所定時間内における前記外気圧変動量の最大値と最小値との差分量より算出され、
前記センサモジュールは、前記ユーザの運動時における加速度を計測する加速度センサを有し、
前記解析部は、前記加速度センサの測定結果と前記ユーザの上下動の振幅とに基いて、静止状態、歩行状態、及び走行状態からなるユーザの現在の運動状態を特定し、当該特定した運動状態に基づく運動フォームを解析することを特徴とする運動フォーム解析装置。
前記気圧変動センサは、内部に空気が充填されるとともに当該空気を外気と連通させる開口を有する空気室と、前記開口の一部をふさぐように配置され、前記ユーザの上下動による空気室内外の圧力差に応じてたわみ変形可能なカンチレバーと、前記カンチレバーのたわみ変形に応じた電気抵抗値の変化を出力するピエゾ抵抗素子と、を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の運動フォーム解析装置。
前記解析モジュールは、前記気圧変動センサによる測定結果と前記解析部による解析結果との少なくとも何れか一方を記憶する不揮発性メモリからなる記憶部を持つことを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の運動フォーム解析装置。
前記解析部は、前記運動フォームの解析結果に基づいて前記ユーザの前記運動フォームの改善情報を作成し、前記報知部は、前記解析結果とともに前記改善情報を報知することを特徴とする請求項9に記載の運動フォーム解析装置。
前記センサモジュールと解析モジュールとは別体からなり、相互に無線伝送方式で通信可能に構成されることを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の運動フォーム解析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の発明は、運動中の被験者の心拍数や発汗などの生体情報を取得するものなので、身体への負荷の大きさや疲労の程度を把握することができるに過ぎない。つまり、特許文献1記載の発明では、被験者の運動フォームの状態を把握することができないので、パフォーマンスをどこまで向上する余地があるか等を、被験者が運動中に知ることはできない、という課題があった。
【0007】
また、上記特許文献2記載の発明では、運動中の被験者の姿勢を画像から知ることができるが、カメラが配置された特定の場所を被験者が通過する必要がある。つまり、当該特許文献2記載の発明では、特定の場所の通過時における被験者の姿勢がわかるだけであるため(つまり、運動の開始から終了までのごく一部の姿勢を把握できるに過ぎないため)、それ以外の時間における姿勢を知ることができない。更に、当該特許文献2記載の発明では、上記撮影を行うためのカメラを別途用意する必要が有るなどの理由により、非常に手間・コストがかかってしまう、という課題があった。
【0008】
また、上記特許文献3記載の発明では、歩行時や走行時などの速度や歩数といった運動強度に関する情報と、心拍数や体温といった体の状態に関する情報とを収集・分析することで、ユーザのフィットネスに応じた最適な運動を実現するものであるが、運動のフォーム、更には体の上下動の測定に基づいたフォーム解析を行うものではないため、ユーザのパフォーマンスあるいは健康増進のための最適なフォームと比較するようなフォーム解析はできない、という課題があった。
【0009】
また、上記特許文献4記載の発明に係るセンサは、一回のスイングでの頭の上下動速度の最大値を測定するのみであり、使用できるスポーツがゴルフなどの特定の運動に限定される上、振幅の測定は行っておらず、頭の上下動速度のみから診断するため、正しいフォーム診断を実施するには不十分なものであった。
【0010】
本発明はこのような事情に考慮してなされたもので、その目的は、手間やコストを掛けることなく被験者の運動フォームをリアルタイムに測定・解析可能な運動フォーム解析装置及び運動フォーム解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る運動フォーム解析装置は、ユーザに装着され当該ユーザの運動フォームを解析する運動フォーム解析装置であって、前記ユーザの運動時において前記ユーザに装着された部位周辺の外気圧変動量を測定する気圧変動センサを有するセンサモジュールと、前記気圧変動センサによる外気圧変動量の測定結果に基づいて、前記ユーザの運動時における上下動の振幅を算出し、当該算出した振幅と予め定めた基準値とを比較してユーザの運動フォームを解析する解析部を有する解析モジュールと、を備えることを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、ユーザに装着された気圧変動センサが、ユーザの運動(体動)に応じた外気圧変動量を検出するので、ユーザの運動時における上下動の振幅をリアルタイムに算出することができる。そして、解析モジュールが当該算出した上下動の振幅を予め定めた基準値(例えば、理想的な運動フォームにおける上下動の振幅)と比較することで、容易にユーザの現在の運動フォームの乱れ等をリアルタイムに解析することが可能となる。しかも当該解析モジュールによる解析は、上述の通り、気圧変動センサの出力値と基準値との対比を行うだけであり、カメラによるユーザの撮像等を必要とするものではないので、手間やコストも掛からない。
【0012】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記上下動の振幅は、所定時間内における前記外気圧変動量の最大値と最小値との差分量より算出されることを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、ユーザの運動時の体の上下動に伴うセンサ周囲の外気圧変動から、当該運動に対応した周期における振幅を求めることができ、正確なフォーム解析を行うことができる。つまり、運動フォーム解析装置は、所定時間をユーザの運動に対応した周期(運動時における一動作に掛かる時間)に対応付け、その一動作ごとの最大値と最小値の差分量(一動作における出力強度の最大変化量)を振幅として予め定めた基準値と対比することで、運動フォームの安定/乱れに関する計時的変化を一動作単位で判断することが出来る。
【0013】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記上下動の振幅は、複数の前記差分量より算出されることを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、所定時間での外気圧変動量の最大値と最小値との差分量を複数用いて振幅を算出するので(例えば、複数の差分量の平均値等を振幅として用いるので)、周期的運動において、運動フォームの計時的変化を任意の運動時間単位で判断することが出来る。そのため、例えば、地面の凹凸などの突発的で不規則な振幅の変動を除外したフォーム解析を行うことができる。
【0014】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記気圧変動センサは、内部に空気が充填されるとともに当該空気を外気と連通させる開口を有する空気室と、前記開口の一部をふさぐように配置され、前記ユーザの上下動による空気室内外の圧力差に応じてたわみ変形可能なカンチレバーと、前記カンチレバーのたわみ変形に応じた電気抵抗値の変化を出力するピエゾ抵抗素子と、を含むことを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、気圧変動センサとして上記のようなカンチレバータイプの圧力センサ(差圧センサ)を利用しているので、10Hz以下のゆっくりした体動についても高感度で検出することができる。また、当該気圧変動センサは、高山など、気圧が元々低い場所であっても平地での使用と全く同じ性能を持つことができる。
【0015】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記センサモジュールは、前記ユーザの運動時における加速度を計測する加速度センサを有し、前記解析部は、前記加速度センサの測定結果と前記ユーザの上下動の振幅とに基いて、静止状態、歩行状態、及び走行状態からなるユーザの現在の運動状態を特定し、当該特定した運動状態に基づく運動フォームを解析することを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、ユーザの走行状態(ランニング)や歩行状態(ウォーキング)など異なる種類の運動状態を自動的に認識し、現在の運動状態に即した適切なフォーム解析ができるため、ユーザは運動状態を変更する際に、運動フォーム解析装置の設定を手動で切り替える必要が無く、単に装着しているだけで自身の現在の運動状態に適したフォーム解析の結果を知ることができる。
【0016】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記運動フォーム解析装置が前記ユーザの衣服に装着されることを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、衣服を通して簡単に着脱自在とすることで、ユーザにとってより便利に利用することができる。
【0017】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記運動フォーム解析装置が前記ユーザの運動時に使用する道具に装着されることを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、ユーザの身体そのものではなく道具に装着されるので、ユーザの体動を妨げないセンシングが実現でき、また、ユーザ間で道具を交換することで異なるユーザが交代で使用することができる。
【0018】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記気圧変動センサによる測定結果と前記解析部による解析結果との少なくとも何れか一方を記憶する不揮発性メモリからなる記憶部を持つことを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、当該記憶部に上記結果(データ)を保持しておくことにより、外部接続されたコンピュータ装置等により、運動を終えた後に種々のデータ解析手法を用いた解析を追加で実行することで、より詳細な運動フォームの解析を行うことができる。
【0019】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記解析部による解析結果を前記ユーザに報知する報知部を持つことを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、上記報知部を介してユーザは運動中に自分の運動フォーム解析結果をリアルタイムに知ることができるので、運動中に運動フォームを改善することができる。
【0020】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記解析部は、前記運動フォームの解析結果に基づいて前記ユーザの前記運動フォームの改善情報を作成し、前記報知部は、前記解析結果とともに前記改善情報を報知することを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、ユーザ自身がどのようにすれば運動フォームを改善できるかを十分に理解していなくても、報知部からの改善情報を参考にすることで、より効果的に運動フォームを改善することができる。
【0021】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、心拍計、歩数計、全地球測位システムの少なくとも何れか1つを含むセンサアセンブリを有し、前記解析部は、前記センサアセンブリの出力信号と前記外気圧変動量の測定結果とに基いて前記運動フォームの解析を行うことを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、体の上下運動に関する情報に加えて、センサアセンブリから取得される種々の情報を組み合わせることで複合的なフォーム解析ができる。
【0022】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記センサモジュールは複数からなることを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、体の複数部位に装着されたセンサモジュールから各部位の上下運動情報を取得することにより、より正確な運動フォーム解析ができる。
【0023】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記センサモジュールと解析モジュールとは別体からなり、相互に無線伝送方式で通信可能に構成される。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、センサモジュールと解析モジュールとからなる各モジュールを小型にすることができ、しかも各々のモジュールを異なる部位に装着することが可能となるので、ユーザの体動を妨げずにセンシングすることができる。
【0024】
本発明に係る運動フォーム解析装置は、前記センサモジュールと解析モジュールとは同一筐体内に備わることを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析装置によれば、センサモジュールと解析モジュール間の伝送用に無線伝送機構を設けなくて済むため、全体としてコンパクトなサイズで安定した駆動が可能となる。
【0025】
本発明に係る運動フォーム解析方法は、ユーザに装着された部位周辺の外気圧変動量を気圧変動センサを用いて測定するステップと、該測定結果に基いて、前記ユーザの運動時における上下動の振幅を算出するステップと、該算出した振幅と予め定めた基準値とを比較するステップと、該比較の結果に基いて前記ユーザの運動フォームを解析するステップと、有することを特徴とする。
本発明に係る運動フォーム解析方法によれば、ユーザの運動時における上下動の振幅をリアルタイムに算出することができる。そして、解析モジュールが当該算出した上下動の振幅を予め定めた基準値(例えば、理想的な運動フォームにおける上下動の振幅)と比較することで、容易にユーザの現在の運動フォームの乱れ等をリアルタイムに解析することが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
したがって、本発明は、手間やコストを掛けることなく被験者の運動フォームをリアルタイムに測定・解析可能な運動フォーム解析装置及び運動フォーム解析方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
本発明に係る第1実施形態を
図1から
図3を用いて説明する。
図1は、本発明に係る第1実施形態の運動フォーム解析装置1を示す図である。運動フォーム解析装置1は、
図1(a)に示すように、センサモジュール2と解析モジュール3から成る。
【0029】
センサモジュール2は、ユーザの体に装着される。ここで、センサモジュール2の装着位置は、ユーザの頭部や腕など任意でよい。また、センサモジュール2は、ユーザの体に直接装着してもよいし、ユーザの衣服、帽子、サンバイザ、ヘッドフォンなどのユーザの所有物に装着してもよい。さらに、センサモジュール2は、ヘルメットやスキーストックなど、特定の運動に使用される道具に装着してもよい。解析モジュール3もユーザの体に装着される。解析モジュール3の装着位置は、ユーザの腕やメガネなど、ユーザが運動しながら視認できる位置が望ましい。
【0030】
センサモジュール2は、
図1(b)に示すように、センサ電源4と、センサ制御部5と、気圧変動センサ6と、センサ通信部7と、センサアンテナ8と、を備え、運動時におけるユーザの体動を検出する。
センサ電源4は、例えば、各種の一次電池や二次電池等であり、センサモジュール2の各部構成に電力を供給するための電力源である。なお、当該センサ電源4は、運動フォーム解析装置1を装着するユーザの運動に応じて発電可能な発電モジュール等を含んでいてもよい。
【0031】
センサ制御部5は、CPUやROM等を含んで構成され、センサモジュール2の動作全般を統括制御する。
気圧変動センサ6は、ユーザの上下運動による圧力差(外気圧変動量)を検出するためのセンサであり、検出結果をセンサ制御部5へ出力する。当該気圧センサの詳細な機能は後述する。
【0032】
センサ通信部7は、センサアンテナ8を介して解析モジュール3と信号の送受信を実行する。具体的には、センサ通信部7は、センサ制御部5より取得した気圧変動センサ6の出力に基づくセンサ信号を解析モジュール3へ送信する。
センサアンテナ8は、例えば、後述の解析アンテナ13とともに、赤外線通信やBluetooth(登録商標)等の無線方式による通信を実現するための通信インターフェースである。
【0033】
解析モジュール3は、
図1(c)に示すように、解析電源9と、解析制御部10と、解析表示部11と、解析通信部12と、解析アンテナ13と、を備え、センサモジュール2で検出されたユーザの体動を解析する。解析電源9は、例えば、各種の一次電池や二次電池等であり、解析モジュール3の各部構成に電力を供給するための電力源である。なお、当該解析電源9は、運動フォーム解析装置1を装着するユーザの運動に応じて発電可能な発電モジュール等を含んでいてもよい。
【0034】
解析制御部10は、CPUやROM等を含んで構成され、解析モジュール3の動作全般を統括制御する。
解析表示部11は、例えば、表示用の液晶モニタ等で構成され、解析制御部10による解析結果を表示画面上に表示する。なお、当該解析表示部11は、スピーカ等の音声出力部を有し、上記解析結果を音声でユーザに報知するものであっても良い。
【0035】
解析通信部12は、解析アンテナ13を介してセンサモジュール2と信号の送受信を実行する。具体的には、解析通信部12は、センサモジュール2のセンサアンテナ8より送信された気圧変動センサ6の出力に基づくセンサ信号を解析アンテナ13を介して受信し、解析制御部10へ転送する。
解析アンテナ13は、例えば、センサアンテナ8とともに、赤外線通信やBluetooth(登録商標)等の無線方式による通信を実現するための通信インターフェースである。
【0036】
「気圧変動センサについて」
次に、気圧変動センサ6の詳細構造について
図2を用いて説明する。
図2は、気圧変動センサ6の断面図である。気圧変動センサ6は、Siハンドル層、SiO2ボックス層、Siデバイス層、の3層構造を持つSOI(Silicon OnInsulater)基板の表面から作製される。
図2に示す気圧変動センサ6は、Siハンドル層21と、その上層のSiO2ボックス層22と、を含む。当該SiO2ボックス層22内は、一部のSiO2が除去されて空洞化されたキャビティ23を備える。そして、キャビティ23は、その上部がSiデバイス層からパターニングされた一端固定のカンチレバー24に覆われる。ただし、カンチレバー24は、キャビティ23の上面全体を覆うものではない。つまり、カンチレバー24は、キャビティ23の上面の一部にギャップ25と呼ばれる空隙が存在するように当該上面を覆う。カンチレバー24の固定端付近の上部には、ピエゾ抵抗素子26が載置される。ここで、カンチレバー24は平面視矩形状からなり、典型的なサイズ例として一辺100ミクロンの正方形とする。カンチレバー24は極めて薄い板状からなり、本実施形態では0.3ミクロン厚とする。また、キャビティ23の容積は0.1〜数ミリリットルとする。さらに、ギャップ25は0.1〜数ミクロンとする。
【0037】
次に、
図3を用いて、気圧変動センサ6の駆動原理を説明する。
まず、
図3(a)はユーザが上下運動を開始する前の初期状態での気圧変動センサ6を示す。このとき、気圧変動センサ6を含むセンサモジュール2は、ユーザの体に装着されているものとする。
【0038】
次いで、上記初期状態よりユーザが走り始めて身体が上下運動を開始すると、ユーザの体に装着されたセンサモジュール2も上下運動し、センサモジュール2に搭載された気圧変動センサ6も同じく上下運動する。ここで、気圧変動センサ6の周囲空気の気圧は、例えばユーザの体が上に10センチメートル移動すると、わずかに(約1パスカル)減少する。これにより、キャビティ23内部の気圧は、周囲空気の気圧よりも相対的に高くなるため、カンチレバー24の上下(キャビティ23内外)に圧力差が発生する。その結果、
図3(b)に示すように、カンチレバー24は上記圧力差に応じてたわむ。ここで、ピエゾ抵抗素子26は、作用する応力に応じて電気抵抗値が変化するため、当該ピエゾ抵抗素子26の電気抵抗値をブリッジ回路に組み込むことなどにより検出することで、カンチレバー24のたわみが検出される。つまり、カンチレバー24の上下に発生する圧力差が検出されることで、ユーザの体の上下方向の移動量が検出される。
【0039】
次いで、キャビティ23内部の空気がギャップ25を通って周囲空気に向けて流出するため、キャビティ23内部の気圧と周囲空気の気圧との圧力差が時間経過とともにゼロに帰着するので、カンチレバー24は
図3(c)に示すように初期状態に戻る。この構造を持つ気圧変動センサ6の特徴は、周囲空気の気圧が変動しても所定時間の後にはキャビティ23内部の気圧が追いついて、カンチレバー24は初期状態に戻るために、瞬間的にカンチレバー24に大きな力が作用したとしても、その力がやがて消滅する(持続しない)点である。
【0040】
例えば、高地のような気圧が低い場所で使用された場合では、周囲空気の気圧があらかじめ低くなっているが、キャビティ23内部の気圧もそれと同じく低くなった状態から駆動を開始するために、カンチレバー24が初期状態から駆動を開始できる。これにより、高地であっても平地であっても全く同じ感度と信頼性を持った性能を発揮できる。ここで、気圧変動センサ6は、上述したカンチレバー24とキャビティ23の材質と寸法において、気圧が1気圧前後、典型的には9万Paから11万Paまでの範囲で、上下運動の周波数は10Hz以下の振動を検出することができる。というのは、一般にユーザがランニングなどの運動を行うのは1気圧前後の環境であり、上下運動による周波数変動量が10Hz以下程度であるので、上記設計値からなる気圧変動センサ6がランニングなどの運動に基づくセンシングに適している。
【0041】
このようにして、気圧変動センサ6は、ユーザがランニングを行っているあいだ、ユーザの体の上下移動に対応した強度の信号を出力する。そして、気圧変動センサ6の出力信号はセンサ制御部5に送られる。センサ制御部5は、その信号を記憶部(図示省略)に蓄積するとともにフィルタリングなどの処理を行って、センサ通信部7に送る。センサ通信部7は、センサアンテナ8を介してセンサ制御部5より取得したセンサ信号を解析モジュール3に向けて発信する。すると、解析モジュール3の解析通信部12は、センサモジュール2から発信されたセンサ信号を解析アンテナ13を介して受信し、当該受信したセンサ信号を解析制御部10へ送信する。そして、解析制御部10は、受信したセンサ信号に基づいて以下のような解析処理を実行する。
【0042】
「解析制御部の解析処理」
まず、
図4に示すフローチャートを用いて、解析制御部10による運動フォームの解析処理の概要を説明する。
はじめに、気圧変動センサ6は、ユーザの上下運動による圧力差(外気圧変動量)を測定し、測定した圧力差を表すセンサ信号を解析制御部10に送信する(ステップS1)。
【0043】
次いで、解析制御部10は、取得したセンサ信号より、ユーザの運動時における上下動の振幅を表すセンサ信号の出力強度の振幅を算出する(ステップS2)。
次いで、解析制御部10は、算出した振幅を予め定めた基準値と比較し、ユーザの運動フォームが安定的であるか乱れているかなどを判断し、ユーザの運動フォームを解析する(ステップS3)。
次いで、解析制御部10は、ステップS3における解析結果を解析表示部11を介してユーザに報知する(ステップS4)。
【0044】
次に、上述のフローチャートに係る運動フォームの解析処理の詳細を、
図5を用いて説明する。ここで、
図5は解析対象となるセンサ信号の時間変化を示す図である。そして、
図5(a)は、運動中の気圧変動センサ6の出力強度hの時間変化を示す図である。なお、
図5(a)において、縦軸に示す気圧変動センサ6の出力強度hは、ユーザの体のうちセンサモジュール2の装着部分の鉛直方向高さに対応する数値を示す。また、
図5(b)は、ユーザの運動中における気圧変動センサ6の出力強度の振幅a(上下動の振幅)の時間変化を示す図である。
【0045】
図5(a)に示すように、時間s1のあいだ、気圧変動センサ6の出力強度hは基準値h1付近で安定した振動をしており、
図5(b)に示すように、振幅aは小振幅a1付近で安定している。つまり、解析制御部10は、取得したセンサ信号について、出力強度hが基準値h1近傍(例えば、h/h1=0.85〜1.15)にあり振幅aが小振幅a1近傍(例えば、a/a1=0.9〜1.1)にある場合に、ユーザのランニングフォームが安定していると判断するとともに、体の上下運動が最小限に抑えられているため効率的なランニングになっていると判断する。なお、基準値h1及び小振幅a1は、予め解析制御部10に設定された値としても良いし、解析モジュール3に備わる入力部(図示省略)を介してユーザが適宜に入力・設定できるものとしても良い。
【0046】
次いで、時間s2においては、
図5(a)で示すように、出力強度hが基準値h1から大きく変動した値をとる状態が複数回把握される。つまり、時間s2は、ランニング中のユーザの体の上下運動が徐々に乱れ始めている状態を表す。また、当該時間s2においては、
図5(b)に示すように振幅aが小振幅a1から変動した値を取るようになり(不安定になり)、かつ増加する。そのため、時間s2において、疲労や集中力の低下によってユーザのランニングフォームが乱れ始めていることが把握される。したがって、解析制御部10は、取得したセンサ信号について、出力強度hが基準値h1近傍から乖離した値(例えば、h/h1>1.15)を取り、振幅aが小振幅a1近傍値からずれた値(例えば、a/a1>1.1)を示す場合に、疲労や集中力の低下によってユーザのランニングフォームが乱れ始めていると判断する。
【0047】
更に時間s3においては、
図5(a)(b)で示すように、出力強度hが常に基準値h1から大きく変動した値をとり、振幅aが小振幅a1から増大した値をとることが把握される。つまり、時間s3は、ランニング中のユーザの体の上下運動が大きく不安定になり振幅も大きくなっている状態を表す。そのため、解析制御部10は、取得したセンサ信号について、所定時間に亘って、検出した出力強度hがすべて基準値h1近傍から乖離した値となり、振幅aが小振幅a1近傍値から時間経過とともに増大している場合に、ランニングフォームの乱れが継続し、ランニングの効率も大きく低下していると判断する。
【0048】
解析制御部10では以上のような判断基準の下、ユーザのランニングフォームが本来の状態であるのか、不安定になっているのかの解析(判断)を行う。そして、解析制御部10は、その解析結果に基いて、解析表示部11に表示指示信号を送り、ユーザにランニングフォームの解析結果を報知する。
したがって、ユーザは、解析表示部11に表示された解析結果を見て、フォームが乱れないように注意しながら走るなどの工夫を試みることができ、タイムや距離などのパフォーマンス向上を図ることができる。
【0049】
なお、解析制御部10は、ランニングフォームの解析を行うだけでなく、その解析結果に基いてユーザに対する助言情報を作成し、解析結果とともに当該助言情報を解析表示部11に表示する機能を持つこともできる。ここで、解析制御部10が作成する助言情報とは、例えば、解析制御部10がユーザのランニングフォームが乱れ始めていると判断した場合に、基準値h1及び小振幅a1と当該判断した時点における出力強度h及び小振幅a1とのずれ量に基づいて作成する、安定時におけるランニングフォームへ戻すために必要な体動や姿勢に関する助言である。
【0050】
また、本実施形態において、解析制御部10は、上述の通り取得した気圧変動センサ6の出力強度と振幅の双方からランニングフォームの乱れを判断する(解析を行う)場合を例示したが、必ずしも双方を用いる必要は無い。つまり、
図5(b)に示されるように、解析制御部10は、振幅が時間とともに増大する傾向が把握出来ればランニングフォームが乱れつつあると判断可能であるので、少なくとも出力強度の振幅が取得出来れば足りる。
【0051】
また、本実施形態に係る運動フォーム解析装置1では、ランニングフォームの解析処理を行う場合を例に挙げたが、ウォーキングやスキー、自転車、乗馬など、種々のスポーツにおいてフォームの解析装置として利用することができる。
【0052】
(変形例1)
第1実施形態で述べた気圧変動センサ6の構造は、
図2に示すものに限定されるものではなく、例えば、
図6に示すものであってもよい。ここで、
図6に係る気圧変動センサ6
は、
図2で示した気圧変動センサ6のバリエーションの一例であり、Siハンドル層21に替えてキャビティボックス27を備える。
【0053】
キャビティボックス27は、例えば、プラスチック材等のSiO2ボックス層22に固着可能な材質からなり、上面側に凹部の形成された箱状部材である。キャビティボックス27は、SiO2ボックス層22とは別体として作製され、ウェハプロセスの終了後に接着剤などを用いてSiO2ボックス層22に固定したものである。
【0054】
以上、本変形例で述べた気圧変動センサ6によると、SiO2ボックス層22やカンチレバー24を作製した後であっても、キャビティボックス27をSiO2ボックス層22に固着する前に、キャビティボックス27の凹部の大きさを適宜に変更することで、容易にキャビティ23の容量を変更することが可能となる。
【0055】
(変形例2)
第1実施形態で述べた解析制御部10による出力強度の振幅aは、例えば、
図7に示す強度の最大値と最小値との差分により算出される。ここで、
図7は、解析対象となるセンサ信号の時間変化を示す図である。そして、
図7(a)は、運動中の気圧変動センサ6の出力強度hの時間変化を示す図である。なお、
図7(a)において、縦軸に示す気圧変動センサ6の出力強度hは、ユーザの体のうちセンサモジュール2の装着部分の鉛直方向高さに対応する数値を示す。また、
図7(b)におけるプロット点は、
図7(a)における時刻t1〜t2、t2〜t3・・・の時間間隔である所定時間p内の出力強度hの最大値h1max、h2max、・・・と最小値h1min、h2min、・・・の差max−minであり、
図5(b)に示した振幅aに相当する。なお、所定時刻t1は、ここでは任意の時刻でよい。
【0056】
具体的には、解析制御部10は、所定時間pにおける各出力強度hをサンプルホールドしておき、当該所定時間pでの最大値hmaxと最小値hminを抽出してその差分を算出する処理を、所定時間pごとに実行する。ここで、所定時間pは、例えば、ユーザの運動時における一動作(ランニングでは一歩ごとの体の上下動)に掛かる時間である。当該所定時間pは、ユーザごとに事前に測定された一動作に掛かる時間を予め解析制御部10に記憶しておいたものとしても良いし、ユーザが入力用のインターフェース(図示省略)を介して適宜自由に設定できるものとしてもよい。また、所定時間pは、解析制御部10が、出力強度hの時間変化データを周波数解析して、最も主要な(最大値や最頻値となる)周波数成分の周波数を特定し、特定した周波数の逆数より算出される周期を用いても良い。なお、各所定時間pは、必ずしもそれぞれが等しい値で有る必要は無く、例えば、運動の進行によるユーザの疲労/体力低下を考慮して、時間経過とともに所定時間pを大きな値に変更するなど、運動の態様/状況に応じた可変値を用いてもよい。つまり、解析制御部10は、例えば、所定時間pをユーザの運動時における一動作に掛かる時間に対応付け、その一動作ごとの最大値と最小値の差分量(一動作における出力強度の最大変化量)を振幅として予め定めた基準値と対比することで、運動フォームの安定/乱れに関する計時的変化を一動作単位で判断することが出来る。
【0057】
ここで、
図7(b)に示す例では、所定時間pごとの出力強度の最大値と最小値の差が、ランニングにおける一歩ごとの体の上下動に対応する。そのため、解析制御部10は、
図7、その最大値と最小値の差があらかじめ定めた上下動基準値a_stdよりも小さい場合は、効率的なランニングになっていると判断する。他方、解析制御部10は、その最大値と最小値の差が上下動基準値a_stdよりも大きくなった場合、ランニングフォームが乱れていると判断する。
【0058】
(変形例3)
さらに変形例2で述べた解析制御部10による解析処理は、
図7に示すものに限定されるものではなく、例えば、
図8に示すものであってもよい。
図8は、
図7(b)で得られた最大値と最小値の差max−minを所定の周期分(本例では20回分)平均した値ave(max−min)の時間変化を示す。具体的には、解析制御部10は、時間20pが経過するまでの間、各所定時間pにおける複数の差max−minを積算しておき、時間20pが経過した時点でその総和を20Pで除して平均値ave(max−min)を算出する処理を行う。つまり、本変形例に係る解析制御部10は、当該平均値ave(max−min)の時間推移を解析することで、周期的運動の運動スパン(ある任意の運動時間)に対して、運動フォームが安定的であるか/乱れが生じているかに関する判断を実現することが出来る。
【0059】
ここで、
図8に示す例では、所定時刻の1歩目から30歩目までは平均値ave(max−min)が上下動基準値a_stdよりも低いため、解析制御部10は効率的なランニングを行っていると判断する。他方、30歩目から40歩目までは平均値が上下動基準値a_stdより高くなっている。そのため、解析制御部10は、ユーザのランニングの歩数が30歩目から40歩目に達した時点でランニングフォームが乱れていると判断する。
【0060】
なお、何回分の周期を平均値算出に用いるかは、あらかじめ決めておくこともできるし、繰り返し運動フォーム解析装置を駆動した結果を評価してフィードバックすることにより最適化することもできる。
【0061】
以上、本変形例に係る解析制御部10によると、周期的運動において、運動フォームの計時的変化を任意の運動時間単位で判断することが出来る。特に、ランニングにおいては、地面の凹凸などにより突発的に体が大きく上下動することがあるが、本変形例に係る解析制御部10のように所定周期分の上下動を平均することによって、フォームの乱れによって起こる上下動の乱れのみを検出することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
次いで、本発明に係る運動フォーム解析装置の第2実施形態を
図9と
図10を用いて説明する。
図9は、本実施形態におけるセンサモジュール31を示す。本実施形態に係る運動フォーム解析装置1は、センサモジュール31と解析モジュール3から成る。ここでは主に第1実施形態との相違について説明し、第1実施形態と同一部分には同一符号を与え説明を省略する。
【0063】
センサモジュール31は、
図9に示すように、第1実施形態のセンサモジュール2とほぼ同じ構成になっており、相違点はセンサとして気圧変動センサ6に加えて加速度センサ32を持つ点である。
【0064】
加速度センサ32は、センサモジュール31が装着されたユーザの体動による加速度を計測して計測結果をセンサ制御部5に出力する。センサ制御部5は、気圧変動センサ6からの気圧変動データと加速度センサ32からの加速度データを受信し、センサ通信部7を介して解析モジュール3に送信する。
【0065】
次いで、本実施形態における解析モジュール3(解析制御部10)による解析処理について
図10を用いて説明する。ここで、
図10は本実施形態における解析モジュール3の動作フロー図を示す。
【0066】
最初にステップS21で、センサモジュール31が解析モジュール3にセンサ信号を送信する。このセンサ信号は、上述したように気圧変動センサ6の出力と加速度センサ32の出力を含んでいる。なお、ユーザは、運動フォーム解析装置1を使用する前の初期化作業として、運動フォーム解析装置1を装着して静止、歩行、走行を行い、静止状態、歩行状態、走行状態それぞれにおける気圧変動センサ6と加速度センサ32の出力を解析モジュール3に記録させておくことで参照データの蓄積を事前に準備しておく。
【0067】
次いで、ステップS22で、解析モジュール3は、その蓄積データと実際の駆動時にセンサモジュール31から送信されてきたデータ(センサ信号)を比較することで、ユーザの運動状態を判定する。解析モジュール3は、ユーザの現在の運動状態が、静止状態、歩行状態、走行状態のうち、何れの状態であるのかを判定する。
【0068】
そして、解析モジュール3は、ステップS22にて判定結果が静止状態であると判定した場合(ステップS22A;静止状態)、加速度や気圧の不規則な変動が検出されるとそれは装置の故障やユーザの想定外な行動などの異常が発生していると判断する。それらが無いと異常は無いと判断する(ステップS23)。
【0069】
一方、解析モジュール3は、ステップS22にて判定結果が歩行状態であると判定した場合(ステップS22B;歩行状態)、蓄積データにおける正常なフォームによる歩行状態を示すデータと、ステップS22にて取得したデータと、のずれ量に基づいて、ユーザが適切なウォーキングフォームで歩行を行っているか否かを解析(判断)する(ステップS24)。
【0070】
さらに、解析モジュール3は、ステップS22にて判定結果が走行状態であると判定した場合(ステップS22C;走行状態)、ユーザが適切なランニングフォームで走行を行っているか否かを解析(判断)する(ステップS25)。
次いで、解析モジュール3は、ステップS23〜S25における解析の結果を解析表示部11に表示させ、ユーザに報知する(ステップS26)。
【0071】
以上の通り、本実施形態に係る運動フォーム解析装置1は、ユーザの運動状態を特定するとともに、当該特定した運動状態に即したフォームの解析を行い、解析結果をユーザに報知することができる。ここで、ユーザはエクササイズを行う際に、ランニングだけでなくウォーキングを組み合わせることも多く、また、そのエクササイズ中にウォーミングアップやクーリングダウンといった動作を休憩を挟んで行うことも多い。つまり、本実施形態に係る運動フォーム解析装置1は、ユーザがそれら種々の形態の運動を行っている場合において、運動フォーム解析装置1が自動的に現在の運動状態を判定し、フォームを解析してユーザに通知することができる。そのため、ユーザは現在の運動状態を他の運動状態に切り替えるときに、運動フォーム解析装置そのものを別体に取り替えたり、上記他の運動状態に即した設定に切り替えるなどの作業を行う必要がなくなり、単に装着しているだけで常時現在の運動状態に即したフォームの解析結果を知ることができる。
【0072】
(第3の実施形態)
図11(b)は本発明に係る第3実施形態の運動フォーム解析装置41のブロック図である。本実施形態に係る運動フォーム解析装置41は、電源42と、制御部43と、気圧変動センサ44と、表示部45と、解析部46と、を備える点である。そして、電源42,制御部43,気圧変動センサ44,表示部45,解析部46はそれぞれ、第1実施形態に係るセンサ電源4(及び解析電源9),センサ制御部5,気圧変動センサ6,解析表示部11,解析制御部10と同様の機能を有する。つまり、運動フォーム解析装置41では、第1実施形態に係るセンサモジュール2と解析モジュール3とが同一筐体内に配置される。つまり、運動フォーム解析装置41では、センサモジュールと解析モジュールとの区別が無く、単体で機能する。そして、
図11(a)に示すように、運動フォーム解析装置41は、ユーザの腕など、ユーザが運動中に表示部45を視認できる部位に装着される。
【0073】
ここで、当該運動フォーム解析装置41の動作は以下の通りである。まず、ユーザが運動中に、気圧変動センサ44がユーザの体の上下運動による圧力差を検出すると、制御部43はその気圧変動センサ44より送信される信号を解析部46に送信する。解析部46は、上述した実施形態における解析と同じ運動フォーム解析を行い、その解析の結果を制御部43を介して表示部45に表示させる。 以上により、本実施形態に係る運動フォーム解析装置41においては、センシングを行う構成と解析や表示を行う構成が同一筐体内に配置されているため、その構成間の通信が通常の電気配線で行うことができるので、第1実施形態に係る運動フォーム解析装置1が具備していた無線モジュールやアンテナが不要となる。そのため、運動フォーム解析装置41は、運動フォーム解析装置1と同様の効果を発揮するとともに、全体としてコンパクトなサイズで安定した駆動が可能となる。
【0074】
(第4の実施形態)
次いで、
図12は本発明に係る第4実施形態の運動フォーム解析装置に備わる解析モジュール51のブロック図である。なお、上述した実施形態と同一部分には同一符号を与え説明を省略する。本実施形態に係る運動フォーム解析装置は、解析モジュール51が、ストレージ部52を有する点で第1の実施形態に係る運動フォーム解析装置1と相違する。
【0075】
ここで、ストレージ部52は、例えば、ハードディスクドライブ等の不揮発性記憶装置からなる。そして、当該ストレージ部52には、解析制御部10が実行する運動フォーム解析の解析データ、あるいはセンサモジュール2から送信されるセンサ信号に応じた気圧変動センサ6の出力データ(解析前のデータ)が、解析制御部10により必要に応じてストレージ部52に蓄積される。そして、当該ストレージ部52に蓄積されたデータは、ユーザが運動を終えた後に解析通信部12等を介して運動フォーム解析装置とは別の解析装置(コンピュータ)に送信されることで、詳細な追加解析が施される。ここで、追加解析とは、例えば、ストレージ部52に蓄積されたデータと、別の計測システムで計測したユーザの運動状態における各種の計測データ(速度データ、風向きデータ、心拍データ、体温データ、など)との相関性の解析や、体の上下運動データの周波数解析などの詳細解析である。
【0076】
以上により、本実施形態に係る運動フォーム解析装置では、気圧変動センサ6の出力データや解析制御部10の解析データがストレージ部52に蓄積されているので、運動中のフォーム解析だけでなく、運動を終えた後に種々のデータ解析手法を用いた解析を追加で実行することが可能となるため、より詳細な解析が実現可能となる。
【0077】
なお、解析制御部10が上記別の計測システムの計測した計測データを解析通信部12によって取得するものとし、当該解析通信部12が上述した追加解析処理の実行機能を実現することとしても勿論よい。
【0078】
(第5の実施形態)
次いで、
図13は本発明に係る第5実施形態の運動フォーム解析装置に備わるセンサモジュール61のブロック図である。上述した実施形態と同一部分には同一符号を与え説明を省略する。本実施形態に係る運動フォーム解析装置は、センサモジュール61が、気圧変動センサ6以外にセンサアセンブリ62を備える点で第1実施形態に係る運動フォーム解析装置1と相違する。
【0079】
センサアセンブリ62は、加速度センサ、心拍計、歩数計、GPS(Global Positioning Syetem)を含むセンサ集合体である。そして、センサアセンブリ62の出力に基づくセンサ信号は、気圧変動センサ6のセンサ信号と同様、センサ通信部7を介して解析モジュール3へ送信される。つまり、センサモジュール61は、ユーザの運動状態における、気圧変動センサ6による体の上下運動情報に加えて、体の水平方向の移動速度と加速度、脈拍数、歩数、などの種々の情報を同期を取った形で取得できる。そして、これらの情報が解析モジュール3に送信され、解析制御部10が所定の解析処理を実行することにより、ユーザの現在の運動状態と体調を同時に解析することができる。ここで、解析制御部10による体調に関する解析処理とは、例えば、上下運動の振幅が乱れ始めていても脈拍数に変化が無い場合に、疲労の蓄積はまだ起きていないと推定し、集中力を高めることでフォームを改善できると解析する処理である。つまり、解析制御部10が上記解析結果を解析表示部11に表示させることで、ユーザは現在の運動状態や体調を把握し、一層運動のパフォーマンスを向上させることができる。
【0080】
以上により、本実施形態に係る運動フォーム解析装置では、体の上下運動に加えてセンサアセンブリ62より種々の情報を同時に取得することで、一層高度で複合的なフォーム解析が可能となる。
【0081】
(第6の実施形態)
次いで、
図14は本発明に係る第6実施形態の運動フォーム解析装置71を示す。上述した実施形態と同一部分には同一符号を与え説明を省略する。本実施形態に係る動フォーム解析装置71は、センサモジュール2が複数備わる点で第1実施形態に係る運動フォーム解析装置1と相違する。ここで、
図14では、運動フォーム解析装置71が同一のセンサモジュール2を2個備える例を示す。また、2個のセンサモジュール2はそれぞれ、ユーザの頭部に1個、腰に1個装着される。つまり、運動フォーム解析装置71は、それぞれの部位における体の上下運動を複数のセンサモジュール2で計測し、それを解析モジュール3で解析することにより、体の姿勢の経時変化を知ることができる。したがって、運動フォーム解析装置71によると、上下運動の乱れとは別に体の姿勢の変化を解析してユーザに知らせることが可能となるので、ユーザはフォームを正してパフォーマンスを向上させることができる。なお、運動フォーム解析装置71は、異なる性能や機能を持つセンサモジュール2を2個あるいはそれ以上持つことも可能である。
【0082】
本実施形態に係る運動フォーム解析装置71によると、複数のセンサモジュール2を用いて体の姿勢の変化を解析できるため、例えばスケート競技において時間の経過とともに前傾姿勢が乱れる状態を定量的に把握することができる。また、運動フォーム解析装置71をスキー競技に用いた場合には、上半身の変位と膝の変位を独立に解析することができ、斜面を滑降中にどの位置でフォームがどの程度乱れたのかを正確に把握することができる。
以上により、本実施形態に係る運動フォーム解析装置71では、体の複数部位の上下運動情報を取得することにより、より正確な運動フォーム解析が可能となる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態への適宜の変更が可能である。具体的には、上記実施形態に係る気圧変動センサでは、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗値の変化量を回路で検出することで外気圧変動量を計測する構成としたが、ピエゾ抵抗素子に替えて圧電素子をカンチレバー上面に設ける構成としても良い。つまり、気圧変動センサは、キャビティ内外に差圧が生じた際、カンチレバーの変形に応じて圧電素子が歪んで起電力を出力するため、当該起電力を検出することで外気圧変動量を計測することができる。当該気圧変動センサを備える運動フォーム解析装置によると、外気圧変動量を計測する上で圧電素子の生ずる起電力を利用できるため省電力化を図ることが出来る。