特許第6266272号(P6266272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266272
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】センサ及び列車検知装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 1/06 20060101AFI20180115BHJP
   B61L 1/18 20060101ALI20180115BHJP
   H02K 35/02 20060101ALI20180115BHJP
   G01V 3/10 20060101ALI20180115BHJP
   H02K 11/00 20160101ALN20180115BHJP
【FI】
   B61L1/06
   B61L1/18 H
   H02K35/02
   G01V3/10 D
   !H02K11/00
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-183934(P2013-183934)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-51650(P2015-51650A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 通夫
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮
【審査官】 高田 元樹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04236093(US,A)
【文献】 特開平02−302629(JP,A)
【文献】 特開平09−090065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00−99/00
G01V 3/10
H02K 35/02
H02K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁歪部材と、
前記磁歪部材に巻装されたコイル部材と、
前記コイル部材に接続され発生する起電力を検知する制御部と、
を備え、
前記磁歪部材はバー材であって、一方の端部が所定の固定部材に固定され、他方の端部に磁石を有し、
前記コイル部材は、外部から定周期電力のみが供給されている場合には、前記コイル部材が第一振動し、前記制御部は定周期の第1波形信号を検知し、
前記コイル部材に前記定周期電力とは異なる外部振動を要因とする第二振動が発生した場合に、前記制御部は前記外部振動による第2波形信号を検知し、
前記制御部は、前記第1波形信号から前記第2波形信号への変化を検知することで前記外部振動の発生を判断する
ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記制御部は、前記コイル部材に発生する起電力を検知しない場合に、センサに故障が発生したと判断する
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセンサが軌条の近傍に設けられ、
前記制御部は、鉄道を制御する運行装置に接続され、
前記運行装置は、前記制御部から定周期の第1波形信号を検知した車両無しの判断データを取得した場合に、車両が通過していない運行制御を行う
ことを特徴とする列車検知装置。
【請求項4】
前記運行装置は、前記制御部から前記コイル部材に発生する起電力がないセンサ故障の判断データを取得した場合に、車両が通過している運行制御を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の列車検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ及び列車検知装置に係り、例えば所定の領域に車両等が存在するか否かを検知するセンサ及びそのようなセンサを有する列車検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道分野では、軌条(レール)上に列車などの車両が存在しているか否かを検知して信号制御などの保安に関わる列車検知装置が導入されている。そのような装置として、例えば、軌道回路方式の検知装置や車軸検知方式の検知装置、さらには軌条に所定の振動波を発生させて、この振動波の検知有無に基づいて列車の在線有無を検知する検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−264813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鉄道分野の列車検知装置において使用される車両検知用のセンサは次の条件が求められる。
(1)センサの故障は、一定周期の診断等により速やかに検出可能であること。
(2)センサ故障の場合、安全側データとしてとして、速やかに「車両あり」とする必要がある。
(3)センサの出力が定常時と異なるとき安全側データとして「車両あり」として処理する。言い換えると、センサが常時動いていることが確認される必要がある。
【0005】
これらの条件を前提として、シンプルであって、センサの設置の容易さや、故障が起きにくいことが求められる。
【0006】
特許文献1に開示の技術は検知精度の信頼性向上の点では効果はあるが、レールに超音波を重畳させる装置を必ず接続する必要があり、列車の通過に伴う経年劣化が起きやすいという課題があり、センサを適正に機能させるための保守管理の観点から別の技術が求められていた。
【0007】
本発明は、以上のような状況に鑑みなされたものであって、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセンサは、磁歪部材と、前記磁歪部材に巻装されたコイル部材と、前記コイル部材に接続され発生する起電力を検知する制御部と、を備え、前記磁歪部材はバー材であって、一方の端部が所定の固定部材に固定され、他方の端部に磁石を有し、前記コイル部材は、外部から定周期電力のみが供給されている場合には、前記コイル部材が第一振動し、前記制御部は定周期の第1波形信号を検知し、前記コイル部材に前記定周期電力とは異なる外部振動を要因とする第二振動が発生した場合に、前記制御部は前記外部振動による第2波形信号を検知し、前記制御部は、前記第1波形信号から前記第2波形信号への変化を検知することで前記外部振動の発生を判断する
また、前記制御部は、前記コイル部材に発生する起電力を検知しない場合に、センサに故障が発生したと判断してもよい。
本発明の列車検知装置は、上述のセンサが軌条の近傍に設けられ、前記制御部は、鉄道を制御する運行装置に接続され、前記運行装置は、前記制御部から定周期の第1波形信号を検知した車両無しの判断データを取得した場合に、車両が通過していない運行制御を行う。
また、前記運行装置は、前記制御部から前記コイル部材に発生する起電力がないセンサ故障の判断データを取得した場合に、車両が通過している運行制御を行ってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、稼働状態が把握可能でシンプルなセンサを実現する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る、列車検知装置を示した図である。
図2】本実施形態に係る、列車検知装置で観測されるセンサ出力の波形を示した図である。
図3】本実施形態に係る、列車検知装置の制御部における判断例を示した図である。
図4】本実施形態の変形例に係る、列車検知装置を示した図である。
図5】本実施形態の変形例に係る、列車検知装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
本実施形態では、磁歪材料を用いた振動発電技術をセンサ(振動発電センサ)に適用するものである。この振動発電技術の基本的な概念は、例えば特許第4905820号にて開示されている。上記センサを列車検知装置に用いて鉄道の安全運行を実現するものである。
【0013】
図1は本実施形態に係る列車検知装置10の概略構成を示す。列車検知装置10は、固定部12に取り付けられる振動発電センサ20と、振動発電センサ20に対して定周期波形を発生させる電力供給機40と、制御部60とを備える。
【0014】
固定部12は、軌条の近傍に設けられた構造物である。振動発電センサ20は、磁歪棒22と第1のコイル24と、永久磁石26とを備える。
【0015】
磁歪棒22は、鉄ガリウム合金等の磁歪材料で構成された棒状の部材であって、片持ち状に一方の端部が固定部12に取り付けられている。磁歪棒22の自由端側の端部には永久磁石26が取り付けられている。
【0016】
磁歪棒22には、第1のコイル24が巻装されている。磁歪棒22が振動すると、その振動に伴って磁歪棒22の構造に生じる変形によって周囲の磁力線が変化する。その結果、第1のコイル24には起電力が発生する。
【0017】
振動発電センサ20の近傍には、電力供給機40が配置されている。電力供給機40は、交流電源42と、第2のコイル44とを備える。第2のコイル44には、交流電源42から定周期電力(交流電力)が供給される。
【0018】
ここで、第2のコイル44は、永久磁石26の近傍に配置されている。そして、第2のコイル44に定周期の交流電力が供給されている場合、交流電力に基づく磁力線変化が永久磁石26に作用する。その結果、永久磁石26が取り付けられた磁歪棒22には、交流電力の周期に応じた振動が生じる。磁歪棒22の振動によって第1のコイル24には定周期波形の起電力が発生する。
【0019】
また、列車が軌条を通過した場合、電力供給機40による振動とは異なった周期または振幅の振動(外部振動)が振動発電センサ20に発生する。つまり、磁歪棒22が異なった周期または振幅で振動する。その結果、第1のコイル24には定周期波形とは異なる波形(一般には非定周期波形)の起電力が発生する。
【0020】
制御部60は、振動発電センサ20の起電力、言い換えると第1のコイル24の出力を監視して、軌条上の車両の有無の検知や、振動発電センサ20の故障の有無の判断を行う。
【0021】
図2は列車検知装置10で観測されるセンサ出力、つまり第1のコイル24の出力の波形を示している。また、図3は、制御部60による判断例を示している。
【0022】
図2に示すように、時間t1までの期間、時間t2〜t3及び時間t4〜t5の期間では、振動発電センサ20は電力供給機40から定周期電力供給によって定周期波形の振動発電を発生させている。このとき、制御部60は、図3に示すように、「車両無し」と判断するとともに、制御データとして「健全データ」のフラグを設定し、その旨を鉄道を制御する所定の運行装置に通知する。
【0023】
時間t1〜t2の期間及び時間t3〜t4の期間では、図2に示すように、定周期の波形とは異なる外部振動による発電波形が生じている。これら発電波形が生じている場合には、振動発電センサ20が設置されている場所で車両が通過中である。したがって、図3に示すように、制御部60は、「車両有り」と判断するとともに、制御データとして「安全側データ1」のフラグを設定し、その旨を鉄道を制御する所定の運行装置に通知する。
【0024】
時間t5〜の期間では、図2に示すように、第1のコイル24の出力がゼロとなっている。この場合、振動発電センサ20又は電力供給機40に故障が発生した可能性がある。そこで、制御部60は「センサ故障」と判断するとともに、制御データとして「安全側データ2」のフラグを設定し、その旨を鉄道を制御する所定の運行装置に通知する。
【0025】
上述の制御データを取得した運行装置は、制御データが「健全データ」の場合、その振動発電センサ20が設置されている位置では、「車両が通過していない」として運行制御を行う。制御データが「安全側データ1」の場合、「車両が通過している」として運行制御を行う。制御データが「安全側データ2」の場合、車両が通過しているか否かが不明であることから、事故発生防止の観点から、「車両が通過している」ことを前提として安全側の運行制御を行う。
【0026】
以上、本実施形態によると、列車検知装置10は、つぎのような機能を実現できる。
(1)常時、一定周期で変化するセンサ出力信号を保安上「健全データ」として用いる。
(2)健全データと異なるセンサ出力は、全て「安全側データ」として用いる。
(3)(2)によって鉄道分野において、列車を停止する「安全側制御」を実現できる。
【0027】
また、振動発電センサ20は、小型化が容易であって、振動発電センサ20自体を稼働させるための電力供給が不要である。また、振動発電センサ20を軌条に直接設置する必要が無いため、故障等の発生を大幅に回避できる。また、故障に伴う交換等の保守管理は容易となる。
【0028】
なお、振動発電センサ20の出力の大きさ等の調整は、磁歪棒22や第1のコイル24の構造等を調整することで可能である。例えば、振動発電センサ20の感度が高くノイズを受信しやすい場合には、磁歪棒22の変形が少ない構造にすればよい。逆に、感度を高くしたい場合には、磁歪棒22の変形が大きい構造にしたり、第1のコイル24の巻き数を多くしたりすることで調整可能である。また、軌条等の構造物と共振が発生するような場合でも、同様の調整によって回避できる。
【0029】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0030】
図4は、第1の変形例に係る列車検知装置110を示している。本変形例の振動発電センサ120では、第2のコイル144が第1のコイル124と並置される。そして、第2のコイル144が1次コイル、磁歪棒122の第1のコイル124が2次コイルとして機能する。そして永久磁石26による振動無しで、交流電源142で発生した交流電力が第2のコイル144を介して第1のコイル124に起電力を発生させる。列車等の通過によって外部振動が発生した場合には、上述の実施形態と同様に、磁歪棒122が振動・変形することで発電波形の起電力が発生する。制御部60の動作は上述同様である。
【0031】
図5は第2の変形例に係る列車検知装置210を示している。第1の変形例と異なる点は、電力供給機240の第2のコイル244の位置が振動発電センサ220の磁歪棒222を覆うように巻装されている点にある。つまり、磁歪棒222に、第1のコイル224と第2のコイル244との両コイルが巻装されている。交流電源242で発生する交流電力は第2のコイル244を介して第1のコイル224に起電力を発生させる。列車等の通過によって外部振動が発生した場合の動作は上述同様である。
【0032】
なお、以上の説明においては、鉄道分野の列車検知装置を例に説明したが、これに限定されず、架橋の異常検出や自動車の検出など高い信頼性と安全性が要求される実施形態に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10、110、210 列車検知装置
12 固定部
20、120、220 振動発電センサ
22、122、222 磁歪棒
24、124,224 第1のコイル
26 永久磁石
40 電力供給機
42、142、242 交流電源
44、144、244 第2のコイル
60 制御部
図1
図2
図3
図4
図5