特許第6266286号(P6266286)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266286マスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、及び半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266286
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】マスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/60 20120101AFI20180115BHJP
【FI】
   G03F1/60
【請求項の数】18
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-201579(P2013-201579)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-68919(P2015-68919A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】田辺 勝
【審査官】 新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−175279(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/122608(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0002290(US,A1)
【文献】 特開2010−278034(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0302524(US,A1)
【文献】 特開2013−016710(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0010272(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/203961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00−1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する1組の主表面を有する透光性基板の一方の主表面に転写パターン形成用の薄膜が設けられたマスクブランクの製造に用いられるマスクブランク用基板の製造方法であって、
前記透光性基板の薄膜が設けられる側の主表面を、前記透光性基板の中心を基準とした所定の直径を有する円の内側の算出領域で、極座標系で表現されたゼルニケ多項式によって定義される仮想基準面に対して形状フィッティングを行い、前記主表面と前記仮想基準面との差分データを取得する工程と、
前記差分データの前記算出領域内での最高高さと最低高さとの差を算出する工程と、
前記透光性基板と、当該透光性基板に対して形状フィッティングを行った前記仮想基準面におけるゼルニケ多項式に係る情報とを対応付けする工程と、
前記最高高さと最低高さとの差、及び前記対応付けされたゼルニケ多項式に係る情報を記録装置に記録する工程を有する
ことを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項2】
前記最高高さと最低高さとの差が、所定値以下となる表面形状を有する前記透光性基板を選定し、
前記対応付けする工程及び前記記録する工程を、前記選定した透光性基板について行うことを特徴とする請求項1記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項3】
前記所定値は、露光転写に用いられる露光光の波長λの1/8であることを特徴とする請求項2記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項4】
前記所定の直径は、104mmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項5】
前記仮想基準面は、半径に係る変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係る変数の次数が2次の項を1以上含むゼルニケ多項式によって定義される形状を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項6】
前記差分データから算出される決定係数Rが0.9以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項7】
前記薄膜が設けられる側の主表面は、前記透光性基板の中心を基準とした一辺が132mmの四角形の内側領域における平坦度が0.2μm以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法で製造されたマスクブランク用基板の一方の主表面に前記転写パターン形成用の薄膜を設ける工程を備えることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
対向する1組の主表面を有する透光性基板の一方の主表面に転写パターン形成用の薄膜が設けられたマスクブランクの製造方法であって、
前記マスクブランクの転写パターン形成用の薄膜の表面を、前記透光性基板の中心を基準とした所定の直径を有する円の内側の算出領域で、極座標系で表現されたゼルニケ多項式によって定義される仮想基準面に対して形状フィッティングを行い、前記薄膜の表面と前記仮想基準面との差分データを取得する工程と、
前記差分データの前記算出領域内での最高高さと最低高さとの差を算出する工程と、
前記マスクブランクと、当該マスクブランクに対して形状フィッティングを行った前記仮想基準面におけるゼルニケ多項式に係る情報とを対応付けする工程と、
前記最高高さと最低高さとの差、及び前記対応付けされたゼルニケ多項式に係る情報を記録装置に記録する工程を有する
ことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項10】
前記最高高さと最低高さとの差が、所定値以下となる表面形状を有する前記マスクブランクを選定し、
前記対応付けする工程及び前記記録する工程を、前記選定した前記マスクブランクについて行うことを特徴とする請求項9記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項11】
前記所定値は、露光転写に用いられる露光光の波長λの1/8であることを特徴とする請求項10記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項12】
前記所定の直径は、104mmであることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項13】
前記仮想基準面は、半径に係る変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係る変数の次数が2次の項を1以上含むゼルニケ多項式によって定義される形状を有することを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項14】
前記差分データから算出される決定係数Rが0.9以上であることを特徴とする請求項9から13のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項15】
前記薄膜の表面は、前記透光性基板の中心を基準とした一辺が132mmの四角形の内側領域における平坦度が0.2μm以下であることを特徴とする請求項9から14のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【請求項16】
請求項8から15のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクの前記薄膜に転写パターンを形成する工程を備えることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを露光装置のマスクステージに載置し、リソグラフィー法により前記転写用マスクの転写パターンを半導体基板上にパターン転写する露光工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項18】
前記露光装置は、前記転写用マスクの転写パターンから透過した透過光の波面に対し、ゼルニケ多項式で定義される形状の波面補正を行う機能を有し、
前記露光工程は、前記転写用マスクに対応付けされている前記仮想基準面におけるゼルニケ多項式に係る情報を用い、前記転写用マスクの転写パターンから透過した透過光の波面に対して補正を行うことを特徴とする請求項17記載の半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光リソグラフィーに用いるマスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、並びに半導体デバイスの製造方法に係わり、特に光リソグラフィーを行った際に焦点裕度を確保する上で好適なマスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法、並びに半導体デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に対応するために、波長193nmのArF露光光を使用する露光装置の高NA化(高開口数化)が進み、さらに液浸露光技術が導入されることによってさらなる高NA化が進んできており、現在ではNA1.35が実用化されるに至っている。
【0003】
このような、微細化の要求、及び高NA化に対応するために、転写用マスクの平坦度を高くすることが求められている。物点であるマスク面の平坦度が低下すると、投影レンズを介して転写されたウエハ上の像点の合焦点位置が振れる。そのため、マスク面の平坦度が落ちると許容される焦点裕度が小さくなる。一方で、光学の原理により、投影レンズの高NA化は焦点深度を低下させる。よって、高NA化が進むに従いリソグラフィー工程での焦点裕度が少なくなるため、マスク面での高い平坦性が求められている。このため、転写用マスクを作製するための原版となるマスクブランクに用いられる透光性基板に対しても、パターンを形成するための薄膜が設けられる側の主表面に対し、高い平坦度が求められている。この平坦度要求に応えるため、例えば、特許文献1に開示されているように、研磨布などの研磨パッドと研磨砥粒を含む研磨液を用いてマスクブランク用基板の表裏両面を研磨する両面研磨がよく用いられてきた。しかし、従来の両面研磨装置による透光性基板の研磨では、その主表面の平坦度を高めることには限界が生じていた。このため、特許文献2に示すような、基板の主表面の形状を測定し、相対的に凸になっている箇所に対してプラズマエッチングを行うことで平坦化する技術が開発されていた。
【0004】
一方、露光装置の高NA化に伴い、リソグラフィー工程での焦点裕度が少なくなってきていることから、投影光学系のレンズ収差が転写精度に対して与える影響が大きくなってきている。特許文献3では、投影光学系のレンズ加熱効果に起因する収差を補正するためのゼルニケ多項式によって定義可能な表面形状を有する2つの補正光学エレメントについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−40267号公報
【特許文献2】特開2002−318450号公報
【特許文献3】特開2008−028388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにマスクブランク用基板には高い平坦度が求められており、これを受けて、透光性基板の主表面を局所加工する技術開発が進められている。例えば、前述のように、特許文献2には、相対的に凸になっている部分に局所的にプラズマエッチングをかけて平坦度の高いマスクブランク用基板を製造する技術が開示されている。しかし、この方法では、所望の高い平坦度を得るために、1枚の基板ごとに主表面の形状を測定してプラズマエッチング等の局所加工を施す必要があるため、従来よりもスループットが大幅に低下するという問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、マスクブランク用基板の加工時のスループットを低下させることなく、また、製造装置設備負担を抑えて、様々な用途に適用できる、マスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及び、転写用マスクの製造方法を提供することにある。また、波面制御の観点から、実効的な表面平坦度の極めて高いマスクブランク用基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及び、転写用マスクの製造方法を提供することにある。また、その転写用マスクの使用によって、高い転写精度を確保し、回路動作の安定した半導体デバイスを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、本発明者が突き止めた上記課題を解決するため、以下の点について検討を行った。マスクブランク用基板の主表面は、背景技術においても述べたように、極めて高い平坦性が求められる。しかしながら、このような完全平坦面を実際に製造するのは大変困難である。また、局所プラズマエッチングなどの手法を使って平坦に近づける工夫も行われているが、この方法はスループットが低く、装置コストなどもかかり、また異物欠陥が発生しやすいなどの副作用も多い。そこで、本発明者は、転写用マスクを製造する際に転写用のパターンが形成される側の透光性基板の主表面、いわゆる透光性基板の転写用主面に対して、機械的平坦面を過度に追求するのではなく、光学的平坦面、言い換えれば等波面的平坦面を仮想基準面として追求する方向に発想を転換した。本発明者は、投影レンズを介して像転写を行う上で本質的に求められているものは、機械的な平面では必ずしもなく、波面の揃った光学的平坦面であることを見出した。この点が、本発明の第1の特徴的な点である。光学的平坦面を使うことにより、露光波長λの1/8であるλ/8というような実効的に極めて高い平坦度のマスクブランク基板を提供することが可能となる。
【0009】
本発明者は、露光装置の投影レンズには、レンズ収差を補正する収差補正機能が備え付けられていることに着目した。この機能は、露光装置レンズ組み付け、設置調整、経時変化対応など、元々は露光装置性能向上のために設けられた機能であるが、この機能を使うと、光学的平坦面を、機械的平坦面からずれて研磨された面に対しても近づけられるとの発想に至った。この点が、本発明の第2の特徴的な点である。
【0010】
また、本発明者は、この光学的平坦面の記述として、極座標系であるゼルニケ多項式近似面を使うことを着想した。この点が、本発明の第3の特徴的な点である。
【0011】
さらに、本発明者は、前記仮想基準面と実測された表面形状の差分形状の最高高さと最低高さの差、いわゆるPV(Peak to Valley)値が前記光学的平坦面の平坦度の程度を表す良い指標となることを見出した。この点が、本発明の第4の特徴的な点である。
【0012】
その上で、本発明者は、前記ゼルニケ多項式の情報とPV値の情報を、各透光性基板に対応して記録装置に記録して置くことを着想した。この点が、本発明の第5の特徴的な点である。
マスクブランク基板、マスクブランク、及び転写用マスクに対しては、使用される世代、品種、及び層などに応じて要求される平坦度が異なるが、このPV値の情報により、露光波長λの1/8であるλ/8というような極めて高い平坦度要求を含め、所望の平坦度の透光性基板を選定することができるようになる。また、光学的平坦面での露光を行う時の投影レンズ収差パラメータの設定が、前記ゼルニケ多項式の情報により簡便かつ適格に行えるようになる。そして、前記ゼルニケ多項式の情報とPV値の情報を記録装置に記録して置くことで、記録された透光性基板を好適な用途で活用できるように選別することができる。
【0013】
このように、本発明は、前述した着想に基づいてなされたものであり、以下の構成を有する。
(構成1)
対向する1組の主表面を有する透光性基板の一方の主表面に転写パターン形成用の薄膜が設けられたマスクブランクの製造に用いられるマスクブランク用基板の製造方法であって、
前記透光性基板の薄膜が設けられる側の主表面を、前記透光性基板の中心を基準とした所定の直径を有する円の内側の算出領域で、極座標系で表現されたゼルニケ多項式によって定義される仮想基準面に対して形状フィッティングを行い、前記主表面と前記仮想基準面との差分データを取得する工程と、
前記差分データの前記算出領域内での最高高さと最低高さとの差を算出する工程と、
前記透光性基板と、当該透光性基板に対して形状フィッティングを行った前記仮想基準面におけるゼルニケ多項式に係る情報とを対応付けする工程と、
前記最高高さと最低高さとの差、及び前記対応付けされたゼルニケ多項式に係る情報を記録装置に記録する工程を有する
ことを特徴とするマスクブランク用基板の製造方法。
【0014】
(構成2)
前記最高高さと最低高さとの差が、所定値以下となる表面形状を有する前記透光性基板を選定し、
前記対応付けする工程及び前記記録する工程を、前記選定した透光性基板について行うことを特徴とする構成1記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0015】
(構成3)
前記所定値は、露光転写に用いられる露光光の波長λの1/8であることを特徴とする構成2記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0016】
(構成4)
前記所定の直径は、104mmであることを特徴とする構成1から3のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0017】
(構成5)
前記仮想基準面は、半径に係る変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係る変数の次数が2次の項を1以上含むゼルニケ多項式によって定義される形状を有することを特徴とする構成1から4のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0018】
(構成6)
前記差分データから算出される決定係数Rが0.9以上であることを特徴とする構成1から5のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0019】
(構成7)
前記薄膜が設けられる側の主表面は、前記透光性基板の中心を基準とした一辺が132mmの四角形の内側領域における平坦度が0.2μm以下であることを特徴とする構成1から6のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法。
【0020】
(構成8)
構成1から7のいずれかに記載のマスクブランク用基板の製造方法で製造されたマスクブランクの一方の主表面に前記転写パターン形成用の薄膜を設ける工程を備えることを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0021】
(構成9)
対向する1組の主表面を有する透光性基板の一方の主表面に転写パターン形成用の薄膜が設けられたマスクブランクの製造方法であって、
前記マスクブランクの転写パターン形成用の薄膜の表面を、前記透光性基板の中心を基準とした所定の直径を有する円の内側の算出領域で、極座標系で表現されたゼルニケ多項式によって定義される仮想基準面に対して形状フィッティングを行い、前記薄膜の表面と前記仮想基準面との差分データを取得する工程と、
前記差分データの前記算出領域内での最高高さと最低高さとの差を算出する工程と、
前記マスクブランクと、当該マスクブランクに対して形状フィッティングを行った前記仮想基準面におけるゼルニケ多項式に係情報とを対応付けする工程と、
前記最高高さと最低高さとの差、及び前記対応付けされたゼルニケ多項式に係る情報を記録装置に記録する工程を有する
ことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0022】
(構成10)
前記最高高さと最低高さとの差が、所定値以下となる表面形状を有する前記マスクブランクを選定し、
前記対応付けする工程及び前記記録する工程を、前記選定した前記マスクブランクについて行うことを特徴とする構成9記載のマスクブランクの製造方法。
【0023】
(構成11)
前記所定値は、露光転写に用いられる露光光の波長λの1/8であることを特徴とする構成10記載のマスクブランクの製造方法。
【0024】
(構成12)
前記所定の直径は、104mmであることを特徴とする構成9から11のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【0025】
(構成13)
前記仮想基準面は、半径に係る変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係る変数の次数が2次の項を1以上含むゼルニケ多項式によって定義される形状を有することを特徴とする構成9から12のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【0026】
(構成14)
前記差分データから算出される決定係数Rが0.9以上であることを特徴とする構成9から13のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【0027】
(構成15)
前記薄膜の表面は、前記透光性基板の中心を基準とした一辺が132mmの四角形の内側領域における平坦度が0.2μm以下であることを特徴とする構成9から14のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
【0028】
(構成16)
構成8から15のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクの前記薄膜に転写パターンを形成する工程を備えることを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【0029】
(構成17)
構成16記載の転写用マスクの製造方法で製造された転写用マスクを露光装置のマスクステージに載置し、リソグラフィー法により前記転写用マスクの転写パターンを半導体基板上にパターン転写する露光工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【0030】
(構成18)
前記露光装置は、前記転写用マスクの転写パターンから透過した透過光の波面に対し、ゼルニケ多項式で定義される形状の波面補正を行う機能を有し、
前記露光工程は、前記転写用マスクに対応付けされている前記仮想基準面におけるゼルニケ多項式に係る情報を用い、前記転写用マスクの転写パターンから透過した透過光の波面に対して補正を行うことを特徴とする構成17記載の半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、ゼルニケ多項式で記述された透光性基板の仮想基準面を求め、前記透光性基板の実表面形状との差分形状のPV値、及び前記ゼルニケ多項式の情報を記録装置に記録する。そのPV値の情報は、様々な用途での透光性基板の選別に用いることができる。機械的平坦性から光学的平坦性に置き換えた基準値で選別することにより、平坦度に関し、極めて高い要求精度をも満たすマスクブランク用基板を得ることが可能となる。ゼルニケ多項式の情報は、露光装置の投影レンズ収差パラメータ設定に用いられ、光学的平坦面での露光が可能となる。このようにして、極めて高い平坦度要求精度をも満たすマスクブランク用基板が得られる。そこでは、マスクブランク用基板の加工時のスループットを低下させることなく、また、製造装置の設備負担も少なく、高平坦なマスクブランク用基板を製造することが可能となる。そのマスクブランク用基板を用いて製造されたマスクブランク及び転写用マスクの実効的平坦度も、マスクブランク用基板と同様に高いものになる。その転写用マスクを用いて露光を行うと、焦点裕度や高い位置精度が確保され、極めて高い転写精度が得られる。その結果、製造される半導体デバイスの回路動作特性が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の概念を説明するためのマスクブランク基板の断面図である。
図2】本発明によるマスクブランク基板の製造工程を示す工程フロー図である。
図3】本発明によるマスクブランク基板の製造工程を示す工程フロー図である。
図4】露光装置の照明及び投影光学系の構成の概要を示す露光装置光学部の要部断面構成図である。
図5】実施例によって得られた実施例サンプルAのマスクブランク基板の主表面形状分布を示す図であり、(a)はマスクブランク上面から見た表面高さ等高線分布図、(b)は対角線方向の高さ分布特性曲線図、そして(c)はマスクブランク中心部を縦及び横に切った時の高さ分布特性曲線を示す図である。
図6】実施例サンプルAの表面形状分布を示す等高線分布図であり、(a)は直径104mm内の実測形状を示す等高線分布図、(b)はそれに対応する仮想基準面を示す等高線分布図、そして(c)は実測と仮想基準面との差分を示す差分形状等高線分布図である。
図7】実施例によって得られた実施例サンプルBのマスクブランク基板の主表面形状分布を示す図であり、(a)はマスクブランク上面から見た表面高さ等高線分布図、(b)は対角線方向の高さ分布特性曲線図、そして(c)はマスクブランク中心部を縦及び横に切った時の高さ分布特性曲線を示す図である。
図8】実施例サンプルBの表面形状分布を示す等高線分布図であり、(a)は直径104mm内の実測形状を示す等高線分布図、(b)はそれに対応する仮想基準面を示す等高線分布図、そして(c)は実測と仮想基準面との差分を示す差分形状等高線分布図である。
図9】実施例によって得られた参考例サンプルCのマスクブランク基板の主表面形状分布を示す図であり、(a)はマスクブランク上面から見た表面高さ等高線分布図、(b)は対角線方向の高さ分布特性曲線図、そして(c)はマスクブランク中心部を縦及び横に切った時の高さ分布特性曲線を示す図である。
図10】参考例サンプルCの表面形状分布を示す等高線分布図であり、(a)は直径104mm内の実測形状を示す等高線分布図、(b)はそれに対応する仮想基準面を示す等高線分布図、そして(c)は実測と仮想基準面との差分を示す差分形状等高線分布図である。
図11】実施例によって得られた比較例サンプルX1のマスクブランク基板の主表面形状分布を示す図であり、(a)はマスクブランク上面から見た表面高さ等高線分布図、(b)は対角線方向の高さ分布特性曲線図、そして(c)はマスクブランク中心部を縦及び横に切った時の高さ分布特性曲線を示す図である。
図12】比較例サンプルX1の表面形状分布を示す等高線分布図であり、(a)は直径104mm内の実測形状を示す等高線分布図、(b)はそれに対応する仮想基準面を示す等高線分布図、そして(c)は実測と仮想基準面との差分を示す差分形状等高線分布図である。
図13】実施例によって得られた参考例サンプルX2のマスクブランク基板の主表面形状分布を示す図であり、(a)はマスクブランク上面から見た表面高さ等高線分布図、(b)は対角線方向の高さ分布特性曲線図、そして(c)はマスクブランク中心部を縦及び横に切った時の高さ分布特性曲線を示す図である。
図14】参考例サンプルX2の表面形状分布を示す等高線分布図であり、(a)は直径104mm内の実測形状を示す等高線分布図、(b)はそれに対応する仮想基準面を示す等高線分布図、そして(c)は実測と仮想基準面との差分を示す差分形状等高線分布図である。
図15】実施例によって得られた比較例サンプルX3のマスクブランク基板の主表面形状分布を示す図であり、(a)はマスクブランク上面から見た表面高さ等高線分布図、(b)は対角線方向の高さ分布特性曲線図、そして(c)はマスクブランク中心部を縦及び横に切った時の高さ分布特性曲線を示す図である。
図16】比較例サンプルX3の表面形状分布を示す等高線分布図であり、(a)は直径104mm内の実測形状を示す等高線分布図、(b)はそれに対応する仮想基準面を示す等高線分布図、そして(c)は実測と仮想基準面との差分を示す差分形状等高線分布図である。
図17】サンプル基板A、B、C、X1、X2、及びX3における各仮想基準面のゼルニケ多項式近似式である。
図18】差分形状データのゼルニケ多項式次数依存性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら、その概念を含め具体的に説明する。なお、図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付してその説明を簡略化ないし省略することがある。
【0034】
[マスクブランク用基板の製造方法]
ここでは、マスクブランク用基板及びその製造方法に関して説明する。最初に本発明の構成概念を説明し、その後、その概念に基づいて実施した実施例を比較例とともに示す。
【0035】
まず、本発明は、投影レンズを介して像転写を行う上で本質的に求められているものは、機械的な平面では必ずしもなく、波面の揃った光学的平坦面であることに基づいている。この点について、図1を用いて説明する。マスクブランク用基板の主表面(転写パターン形成用の薄膜が設けられる側である一方の主表面で転写用主面とも呼ぶことにする。)は、背景技術においても述べたように、極めて高い平坦性が求められる。図1はマスクブランクの断面を示したもので、一般的には、マスクブランク用基板1の主表面(転写用主面)は、同図中の符号2に示すように、完全平坦面となるように形成することが理想とされている。しかしながら、このような完全平坦面を実際に製造するのは大変困難である。また、局所プラズマエッチングなどの手法を使って平坦度を高める方法も行われているが、この方法はスループットが低く、装置コストなどもかかり、また異物欠陥が発生しやすいなどの副作用も多い。そこで、本発明においては、機械的平坦面を過度に追求するのではなく、光学的平坦面、言い換えれば等波面的平坦面を仮想基準面として追求する方向に発想を転換したものである。
【0036】
そして、本発明は、露光装置の投影レンズに備え付けられたレンズ収差を補正する収差補正機能を用いて、光学的平坦面を、機械的平坦面からずれて研磨された面に対して近づけている。この点について、図1を用いて説明する。図1中の符号3は研磨を行って形成された主表面の断面形状を示す。例えば、同図中のA点での理想的機械的平坦面からのずれはd1となるが、露光装置の収差補正機能を使った光学的平坦面(断面)4からのずれはd2と極めて小さくできる。ここでの光学的平坦面とは、この面から波面を揃えて出た光線が、レンズ収差補正機能を使って意図的に投影レンズに収差を与えることにより、理想的な結像を示す面のことである。言い換えれば、ここで言う光学的平坦面とは、ウエハ面を像点面とした時の投影レンズの共役上にある物点面のことで、投影レンズに意図的に収差を与えて、機械的平坦面から所望に近い形状に変形させた物点面を言う。本願では、この物点面の平坦度のことを光学的平坦度と呼ぶことにする。光学的平坦面は、機械的完全平坦面というような一意的に決定される1つの固定面ではなく、マスクブランク用基板の表面形状に応じて投影レンズに収差を与えることで、ある程度の自由度を持って決めることができる。従って、機械的平坦度に比して、光学的平坦度を高めることが容易になる。
【0037】
また、本発明は、この光学的平坦面の記述に極座標系であるゼルニケ多項式近似面を使用している。その極座標の原点は、マスクブランク用基板の中心である。ArF露光装置などに用いられるマスクブランク用基板は、一部隅の部分で面取りはされているものの、縦横とも約152mm幅の四角形であり、またマスクパターン図形のレイアウトもXY座標表示となっていることから、座標系表示として、一般的にはXY座標系が用いられている。あえて四角形のマスクブランク用基板を極座標系で記述したところに本発明の特徴的な点がある。ゼルニケ多項式は直交系の多項式であり、各変数が独立関係にあって取り扱いが容易である。そして、投影レンズの収差特性が、フーリエ変換面である投影レンズの瞳面での波面のゼルニケ多項式展開の各項と対応付けられるため、投影レンズ収差補正とブランク基板面の光学的平坦面を結びつけるのに大変好適である。なお、ArF露光装置としては、現在の主流はArFスキャナであるが、スキャナに限るものではなく、ステッパでも構わない。また、光源もArFエキシマレーザ(波長193nm)に限るものではなく、例えばKrFエキシマレーザ(波長248nm)などでも構わない。
【0038】
このように、光学的平坦面を仮想基準面として、その表面形状をゼルニケ多項式近似で表した形状に対して、研磨された透光性基板の主表面形状とフィッティングをとる。その上で、透光性基板の主表面における所定の直径を有する円の内側の算出領域で算出される仮想基準面と透光性基板の主表面形状の差分の最高高さと最低高さの差、いわゆるPV値を計算し、記録装置に記録する。一点でもPV値が外れると、その場所では波面がその分ずれ、その場所での転写特性に悪影響が出るので、マスクブランク用基板の選定指標としてPV値は好適である。また、ゼルニケ多項式の情報も記録装置に記録する。記録されたゼルニケ多項式の情報は、光学的平坦面となるための投影レンズの収差入力データに用いる。このPV値とゼルニケ多項式の記録情報を活用して、マスクブランク基板の選定や露光装置投影レンズ収差パラメータの設定を行うことにより、マスクブランク基板の転写用主面を光学平坦面として扱うことが可能となる。このことにより、露光波長λの1/8というような極めて高い実効的な平坦度を含む所望の平坦度のマスクブランク基板を製造することができる。
【0039】
上記算出領域は、露光装置のスキャン露光時の露光スリット長を考慮して設定されるべきである。算出領域(仮想基準面の大きさと等価。)は、84mm以上の直径を有する円の内側領域であることが少なくとも望まれる。また、算出領域は、94mm以上の直径を有する円の内側領域であると好ましく、露光スリット長の最大値である104mmの直径を有する円の内側領域であるとより好ましい。
【0040】
マスクブランク用基板を選定する際のPV値の判定値(所定値)は、その選定されたマスクブランク用基板から作製される転写用マスクに対する要求精度に応じて定めれば良いが、十分な波面制御が求められる場合は、位相差による投影露光時の悪影響が充分小さく、波面計測測定装置の計測精度基準の1つとなっている露光波長λの1/8、すなわちλ/8とすることが好ましい。転写評価の結果、通常はこの基準で十分な転写精度が得られた。露光装置の調整時や品質管理(QC:Quality Control)を行うとき等、より高い精度が求められるときは、選別の基準値をλ/10とすることがさらに好ましい。
【0041】
フィッティングによってマスクブランク用基板を選定する第2の指標は、前述の差分形状から算出される決定係数Rである。決定係数Rとは、重相関係数の2乗で、寄与率とも呼ばれるもので、標本値から求めた回帰方程式の当てはまりの良さの尺度として良く用いられる指標である。その定義式は、実測値をy、回帰方程式による推定値をfとすると、
【0042】
【数1】
であり、この値が1に近いほど相対的な残差が少ないことを表す。PV値がポイントでの異常を選別する指標に対し、決定係数Rは形状全体の残差の大きさを表す指標となる。マスクを作成して転写との相関をとって種々調べた結果、決定係数Rが0.9以上で十分な転写精度が得られた。
【0043】
加えて、より好ましい転写性能を与えるマスクブランク用基板を製造するために、以下の点について詳細な検討を行った。
【0044】
投影レンズの収差補正機能は、ゼルニケ多項式における半径に係わる変数の次数が3次以降の高次の項も可能である。このため、仮想基準面を定義するゼルニケ多項式における半径に係わる変数の次数についても、露光装置の投影レンズの収差補正機能で補正可能な形状の次数であれば、使用可能である。たとえば、仮想基準面を定義するゼルニケ多項式は、半径に係わる変数の次数が4次である項を1つ以上含むものであってもよく、半径に係わる変数の次数が3次である項を1つ以上含むものであってもよい。
【0045】
一方、高次の項まで使ってフィッティングを行うと、ある時点では良いが、露光状況によっては投影レンズの高次の収差が変動して、不都合が生じる場合があるということもわかった。この点については、[露光方法及びそれを用いたデバイスの製造方法]において詳細を後述する。また、次数が1次の項のみでは1次元的なティルト補正であり、これでは十分な光学平坦性を得ることができないこともわかった。よって半径に係わる変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係わる変数の次数が2次の項を1つ以上含むことが好ましいことが、詳細な検討の結果わかった。その必要な代表の2次の項はデフォーカスの項であり、デフォーカスの項は、アリゾナ大学表記では第4項、標準形では第5項にあたる。なお、ゼルニケ多項式近似は標準形、アリゾナ大学方式、及びフリンジゼルニケ方式など各種の方式がある。本発明の適用にあたっては、どの形式のゼルニケ多項式近似を用いても問題はないが、露光装置の投影レンズ収差の入力形式に沿ったゼルニケ多項式を用いると、パラメータ入力の際に変換の手間が省けるので都合が良い。
【0046】
前述の手法では、マスクブランクの中心を基準とした所定の直径(最大で104mm)の内側領域における光学的平坦度は十分確保されるが、チップ露光は最大104mm×132mm領域で行われる。そこで前述の光学的平坦度選別に加え、マスクブランク用基板の中心を基準とした一辺が132mmの四角形の内側領域において平坦度を0.2μm以下とする基準を併用すると、全面に渡ってさらに良い転写結果が得られた。なお、チップ露光は最大でも104mm×132mmと、本測定基準領域の132mm×132mmより小さいが、これはマスクブランクの向きを限定しないためである。また、マスクブランク用基板の主表面は、所定以上の表面粗さに鏡面研磨されている必要がある。主表面は、一辺が5μmの四角形の内側領域で算出される自乗平方根平均粗さRqが0.2nm以下であることが好ましく、0.15nm以下であるとより好ましい。なお、表面粗さは、例えば原子間力顕微鏡(AFM)によって測定できる。
【0047】
次に本発明の概念に沿って、所望の高い平坦度を持つマスクブランク用基板を製造する工程を、図2のマスクブランク用基板における製造工程のフローチャート図を参照しながら説明する。
【0048】
最初は、図2の工程S1に示すように、合成石英インゴットからマスクブランク用基板の形状に透光性基板を切り出し、次に同図の工程S2に示すように、切り出した透光性基板の主表面、端面及び面取り面に対して研磨を行う研削工程、続いて同図の工程S3に示すように、主表面に対してその表面を精密に研磨する工程を行う。この研磨は通常多段階で行われる。研磨の方法は様々であってここでは特に制限を設けるわけではないが、酸化セリウム等の研磨剤を用いたCMP(Chemical Mechanical Polishing)やコロイダルシリカ等の研磨剤を用いたポリッシングが好適に行われる。その後、同図の工程S4に示すように、主表面の精密な形状測定を行う。以上の工程S4までは、通常の方法であってよい。なお、ここではマスクブランク材料として一般的な合成石英ガラスの場合を示したが、露光光に対して透明であって、転写用マスクの基板として用いることができるものであれば、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、露光波長によっては、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、無アルカリガラス、フッ化カルシウムガラスなども適用可能である。
【0049】
本発明の特徴は、図2の工程S5以降にある。まず、工程S5で、仮想基準面の算出計算を行う。この仮想基準面は、前述のように、極座標系で表現されたゼルニケ多項式によって定義される光学的平坦面である。前述のように効率を鑑みると、この仮想基準面は、半径に係わる変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係わる変数の次数が2次の項を1つ以上含むゼルニケ多項式によって定義されるのが実用的であるが、より高次の項を含んで精度を上げても良い。範囲は、例えば透光性基板の中心を基準とした直径104mmの円領域の内側とする。この仮想基準面の算出にあたっては、工程S4で計測された透光性基板の主表面の表面形状(転写用主面)を参考にして算出計算される。
【0050】
次に、図2の工程S6に示すように、工程S5で算出計算された仮想基準面形状と工程S4で測定された透光性基板の主表面形状(転写用主面)との差分を計算し、差分形状のデータ(差分データ)を取得する。その後、図2の工程S7に示すように、工程S6で得られた差分データから最高高さと最低高さの差、いわゆるPV値を計算する。さらに、このゼルニケ多項式に係る情報を、そのゼルニケ多項式で定義される仮想基準面とフィッティングを行った対象である透光性基板と対応付ける工程を行う。
【0051】
このゼルニケ多項式に係る情報との対応付けは、例えば、個々の透光性基板にそれぞれ割り当てられている固有番号と対応付ける方法が適用できる。また、透光性基板の露光装置による露光転写時に影響のない部分(端面、面取り面、ノッチマーク部、主表面の転写パターンが形成される領域の外周領域等)に、特開2006−209143号公報に記載されているような複数の凹部からなるマーカーを設けて、これを個体識別マークとし、この個体識別マークと前記ゼルニケ多項式に係る情報と対応付けしてもよい。この個体識別マークとして用いられるマーカーは、透光性基板の表面に形成される場合に限定する必要はない。基板内部に焦点が集まるように複数方向からレーザー光を照射して、内部を局所的に変質させることによってマーカーを形成してもよい。また、透光性基板と対応付けする情報は、ゼルニケ多項式に係る情報に限定する必要はなく、PV値、差分形状のデータ、工程S4で測定された透光性基板の主表面形状に係る情報なども透光性基板と対応付けしてもよい。
【0052】
そして、図2の工程S8に示すように、前記のPV値と、透光性基板と対応付けされた前記ゼルニケ多項式に係る情報を記録装置に記録する。記録装置は特に問わないが、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどがその代表である。また、データ記録形態も特に問わない。一例としては、テキストデータ形式、アスキーデータ形式などが挙げられる。なお、ゼルニケ多項式のデータは、露光に用いる露光装置のレンズ収差入力データ形式と一致させると、露光装置へのデータ入力が容易になるので好ましい。このPV値とゼルニケ多項式の情報を透光性基板とセットにして、マスクブランク基板選定前までの工程を終了する(工程S9)。
【0053】
マスクブランク基板の選定にあたっては、ゼルニケ多項式の情報とPV値データを基に、必要な光学的平坦度を持つ透光性基板を用途に応じて選別することができる。すなわち、必要とされる光学的平坦度である所定値X以下のPV値を持つ透光性基板をマスクブランク基板として選定することができる。所定値Xは、この基準で選定されたマスクブランク用基板を使って作製される転写用マスクの適用層、例えば、ポリ層(ゲート層)であるとか、配線層であるとか、拡散層であるとかによって求められる精度が異なるため、要求される必要精度に応じて値を定めるのが実用的である。
光学的な見地に立つと、所定値Xとしては、例えば、露光波長λの1/8が挙げられる。光学計測で公知のように、露光波長λの1/8という値は波面制御の代表的な基準値であり、その値を境に結像性能等に大きな違いがあるためである。また、そのマスクブランク基板を使用した転写用マスクの露光にあたっては、ゼルニケ多項式の情報を露光装置のレンズ収差入力データに反映させて、光学的平坦面での露光を行う。以上のマスクブランク用基板の製造方法により、光学的平坦度に関し、λ/8という極めて高い精度をも満たす要求精度に応じたマスクブランク用基板が、高いスループットを持って製造することが可能となる。ArFエキシマ露光の場合のλ/8は25nm(小数点以下切上げ)であるが、そのような高い平坦度を、マスクブランク用基板の加工時のスループットを低下させることなく得られ、また、製造装置の設備負担も抑えることが可能となる。
【0054】
次に、決定係数Rを用いたもう一つのマスクブランク用基板を製造する工程を、図3のマスクブランク用基板の製造工程フローチャート図を参照しながら説明する。工程S7までは前述の図2のマスクブランク用基板の製造方法と同一である。違いは工程S10以降で、まず工程S10に示すように、差分形状(差分データ)から算出される決定係数Rを計算する。続いて、ゼルニケ多項式に係る情報を、そのゼルニケ多項式で定義される仮想基準面とフィッティングを行った対象である透光性基板と対応付けする工程を行う。さらに、工程S11に示すように、PV値、決定係数R、及びゼルニケ多項式の情報を記録装置に記録する。
【0055】
マスクブランク基板の選定にあたっては、前記PV値データと前記決定係数Rを使って必要な平坦度を持つ透光性基板の選別を行う。そのため、工程S12に示すように、PV値を所定値Xと比較し、所定値X以下の場合は、工程S13に示すように、決定係数Rが0.9以上であるかを比較判定する。決定係数Rが0.9以上の場合は、透光性基板を高平坦マスクブランク用基板として選別し、終了する(工程S14)。PV値が所定値Xを超える場合や、決定係数Rが0.9未満の透光性基板は、低・中平坦品として、ミドルレイヤーやラフレイヤー用のマスクブランク用基板としての活用を考えるか、工程S3の研磨工程に戻すか、局所加工工程を経て工程S4以降再度同様の工程を踏むか、あるいはこの透光性基板を廃棄する(工程S15)。ここで、所定値Xは、前記のように要求される必要精度に応じて値を定めるのが実用的である。光学的な見地に立つと、所定値Xとしては、例えば、露光波長λの1/8が挙げられる。光学計測で公知のように、露光波長λの1/8という値は波面制御の代表的な基準値であり、その値を境に結像性能等に大きな違いがあるためである。また、そのマスクブランク基板を使用した転写用マスクの露光にあたっては、ゼルニケ多項式の情報を露光装置のレンズ収差入力データに反映させて、光学的平坦面での露光を行う。この方法では、1点異常点を含め、形状全体の光学平坦面とのフィッティング度をも併用して選別するため、そのマスクブランク用基板を使って製造された転写用マスクの転写精度は高い。
【0056】
以上のマスクブランク用基板の製造方法により、実用的に極めて高い平坦度を有するマスクブランク用基板を、高いスループットを持って製造することが可能となる。ArFエキシマ露光の場合のλ/8は25nm(小数点以下切上げ)であり、従来法より格段に高い光学的平坦度が、マスクブランク用基板の加工時のスループットを低下させることなく得られ、また、製造装置設備負担も抑えることが可能となる。
なお、工程S7とS10の順番、及びS12とS13の順番は入れ替わっても良い。
【0057】
[マスクブランクの製造方法]
本発明のマスクブランクの製造方法は、前述のマスクブランク用基板の製造方法で製造されたマスクブランク用基板の一方の主表面(転写用主面)に転写パターン形成用の薄膜を設ける工程を備えることを特徴としている。
【0058】
ここで重要となるのは薄膜の応力の制御で、この薄膜による応力でマスクブランク用基板が歪むと、基板表面の平坦度は変化する。この膜応力による基板主表面の変形は、同心円状の2次曲面という比較的単純な変形であり、露光機の収差補正によって対応できるが、一方で、薄膜の応力が大きすぎると、マスクブランクから転写用マスクを製造する際に行われる薄膜のパターンニング時に、薄膜パターンの位置ずれが起こるという問題が生じる。マスクブランクの中心を基準とし、一辺が132mmの四角形の内側領域の機械的平坦度の変化量と膜応力の関係を調べたところ、平坦度変化量10nm、20nm、25nm、30nm、40nm、及び50nmに対応する膜応力は、それぞれ55MPa、110MPa、137MPa、165MPa、220MPa、及び275MPaであった。この結果から、薄膜の応力は、275MPa以下が望ましく、165MPa以下だとさらに望ましく、110MPa以下だとさらに一層望ましいことがわかる。
【0059】
したがって、薄膜の膜応力を調整する必要があるが、その方法としては、例えば、加熱処理(アニール)を行う方法やフラッシュランプ等の高エネルギー光を薄膜に対して照射する光照射処理を行う方法などがある。この膜応力調整に留意して薄膜形成を行えば、露光波長λの1/8という光学的に高平坦なマスクブランクを製造することができ、そのマスクブランクを使って製造された転写用マスクを用いて露光を行うと、焦点深度、位置ずれ、及び解像度に優れ、それを使って製造される半導体デバイスの回路特性も安定する。
【0060】
本発明のマスクブランク及び本発明のマスクブランクの製造方法で製造されるマスクブランクは、以下の(1)〜(3)の構成のものを適用することができる。
(1)遷移金属を含む材料からなる遮光膜を備えたバイナリマスクブランク
かかるバイナリマスクブランクは、透光性基板上に遮光膜(転写パターン形成用の薄膜)を有する形態のものであり、この遮光膜は、クロム、タンタル、ルテニウム、タングステン、チタン、ハフニウム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ロジウム等の遷移金属単体あるいはその化合物を含む材料からなる。例えば、クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素から選ばれる1種類以上の元素を添加したクロム化合物で構成した遮光膜が挙げられる。また、例えば、タンタルに、酸素、窒素、ホウ素などの元素から選ばれる1種類以上の元素を添加したタンタル化合物で構成した遮光膜が挙げられる。かかるバイナリマスクブランクは、遮光膜を、遮光層と表面反射防止層の2層構造や、さらに遮光層と基板との間に裏面反射防止層を加えた3層構造としたものなどがある。また、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0061】
(2)遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料からなる光半透過膜を備えた位相シフトマスクブランク
かかる位相シフトマスクブランクとしては、透光性基板(ガラス基板)上に光半透過膜(転写パターン形成用の薄膜)を有する形態のものであって、該光半透過膜をパターニングしてシフタ部を設けるタイプであるハーフトーン型位相シフトマスクが作製される。かかる位相シフトマスクにおいては、光半透過膜を透過した光に基づき転写領域に形成される光半透過膜パターンによる被転写基板のパターン不良を防止するために、透光性基板上に光半透過膜とその上の遮光膜(遮光帯)とを有する形態とするものが挙げられる。また、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクのほかに、透光性基板をエッチング等により掘り込んでシフタ部を設ける基板掘り込みタイプであるレベンソン型位相シフトマスク用やエンハンサー型位相シフトマスク用のマスクブランクが挙げられる。
【0062】
前記ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものであって、所定の位相差(例えば180度)を有するものである。この光半透過膜をパターニングした光半透過部と、光半透過膜が形成されていない実質的に露光に寄与する強度の光を透過させる光透過部とによって、光半透過部を透過して光の位相が光透過部を透過した光の位相に対して実質的に反転した関係になるようにすることによって、光半透過部と光透過部との境界部近傍を通過し回折現象によって互いに相手の領域に回り込んだ光が互いに打ち消しあうようにし、境界部における光強度をほぼゼロとし境界部のコントラスト即ち解像度を向上させるものである。
【0063】
この光半透過膜は、例えば遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイドを含む)の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素及び/又は窒素を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。また、光半透過膜上に遮光膜を有する形態の場合、上記光半透過膜の材料が遷移金属及びケイ素を含むので、遮光膜の材料としては、光半透過膜に対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)材料、特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物で構成することが好ましい。
【0064】
レベンソン型位相シフトマスクは、バイナリマスクブランクと同様の構成のマスクブランクから作製されるため、転写パターン形成用の薄膜の構成については、バイナリマスクブランクの遮光膜と同様である。エンハンサー型位相シフトマスク用のマスクブランクの光半透過膜は、実質的に露光に寄与しない強度の光(例えば、露光波長に対して1%〜30%)を透過させるものではあるが、透過する露光光に生じさせる位相差が小さい膜(例えば、位相差が30度以下。好ましくは0度。)であり、この点が、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜とは異なる。この光半透過膜の材料は、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの光半透過膜と同様の元素を含むが、各元素の組成比や膜厚は、露光光に対して所定の透過率と所定の小さな位相差となるように調整される。
【0065】
(3)遷移金属、遷移金属及びケイ素(遷移金属シリサイド、特にモリブデンシリサイドを含む)の化合物を含む材料からなる遮光膜を備えたバイナリマスクブランク
この遮光膜(転写パターン形成用の薄膜)は、遷移金属及びケイ素の化合物を含む材料からなり、これらの遷移金属及びケイ素と、酸素又は窒素のうちの少なくとも1つ以上を主たる構成要素とする材料が挙げられる。また、遮光膜は、遷移金属と、酸素、窒素又はホウ素のうちの少なくとも1つ以上を主たる構成要素とする材料が挙げられる。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、クロム等が適用可能である。特に、遮光膜をモリブデンシリサイドの化合物で形成する場合であって、遮光層(MoSi等)と表面反射防止層(MoSiON等)の2層構造や、さらに遮光層と基板との間に裏面反射防止層(MoSiON等)を加えた3層構造がある。また、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
【0066】
また、レジスト膜の膜厚を薄膜化して微細パターンを形成するために、遮光膜上にエッチングマスク膜を有する構成としてもよい。このエッチングマスク膜は、遷移金属シリサイドを含む遮光膜のエッチングに対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)材料、特にクロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物からなる材料で構成することが好ましい。このとき、エッチングマスク膜に反射防止機能を持たせることにより、遮光膜上にエッチングマスク膜を残した状態で転写用マスクを作製してもよい。
【0067】
なお、上記(1)〜(3)において、透光性基板(ガラス基板)と遮光膜との間、又は
光半透過膜と遮光膜との間に、遮光膜や光半透過膜に対してエッチング耐性を有するエッ
チングストッパー膜を設けてもよい。エッチングストッパー膜は、エッチングストッパー
膜をエッチングするときにエッチングマスク膜を同時に剥離することができる材料として
もよい。
【0068】
本発明のマスクブランクの製造方法は、前記の態様に加え、透光性基板の主表面にパターン形成用の薄膜が形成されたマスクブランクのパターン形成用の薄膜の表面に対して、前記の差分形状を取得する工程、対応付けをする工程、および記録装置に記録する工程を行う態様も含まれる。すなわち、この態様のマスクブランクの製造方法では、まず、マスクブランクの転写パターン形成用の薄膜の表面に対して、透光性基板の中心を基準とした所定の直径を有する円の内側の算出領域で、極座標系で表現されたゼルニケ多項式によって定義される仮想基準面に対して形状フィッティングを行い、薄膜の表面と仮想基準面との差分データを取得する工程を行う。次に、差分データの算出領域内での最高高さと最低高さとの差を算出する工程を行う。続いて、マスクブランクと、このマスクブランクに対して形状フィッティングを行った仮想基準面におけるゼルニケ多項式に係情報とを対応付けする工程を行う。さらに、最高高さと最低高さとの差、及び対応付けされたゼルニケ多項式に係る情報を記録装置に記録する工程を行う。
【0069】
[転写用マスクの製造方法]
本発明の転写用マスクの製造方法は、前記のマスクブランクの製造方法で製造されたマスクブランクの薄膜に転写パターンを形成する工程を備えることを特徴としている。以下、マスクブランクから転写用マスクを製造する工程について説明する。なお、ここで使用するマスクブランクは、前述(2)の位相シフトマスクブランクであり、透光性基板上に、光半透過膜(転写パターン形成用の薄膜)と遮光膜が順に積層した構造を備える。また、この転写用マスク(位相シフトマスク)の製造方法は一例であり、一部の手順を変えても製造することは可能である。
【0070】
まず、位相シフトマスクブランクの遮光膜上に、レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。このレジスト膜には、電子線露光描画用の化学増幅型レジストが好ましく用いられる。次に、レジスト膜に対して、光半透過膜に形成すべき転写パターンを電子線で露光描画し、現像等の所定の処理を施し、転写パターンを有するレジストパターンを形成する。続いて、遮光膜に対してレジストパターンをマスクとしたドライエッチングを行い、遮光膜に光半透過膜に形成すべき転写パターンを形成する。ドライエッチング後、レジストパターンを除去する。次に、光半透過膜に対し、転写パターンを有する遮光膜をマスクとしたドライエッチングを行い、光半透過膜に転写パターンを形成する。続いて、レジスト膜をスピン塗布法で再度形成し、遮光膜に形成すべきパターン(遮光帯等のパターン)を電子線で露光描画し、現像等の所定の処理を施し、レジストパターンを形成する。遮光膜に対し、遮光帯等のパターンを有するレジストパターンをマスクとするドライエッチングを行い、遮光膜に遮光帯等のパターンを形成する。そして、所定の洗浄処理等を施し、転写用マスク(位相シフトマスク)が出来上がる。
【0071】
本方法で製造された転写用マスクの基板露出面(パターン形成用薄膜が残されていない開口部の基板主表面)の光学的平坦度は平坦度に関し、所望の所定値X、あるいは露光波長λの1/8以下と極めて高く、十分な波面コントロールがなされた転写用マスクを製造することが可能となった。波面コントロールが十分なされるため、この転写用マスクを用いて露光を行うと、焦点深度、位置ずれ、及び解像度に優れ、それを使って製造される半導体デバイスの回路特性も安定していた。
【0072】
本発明は、転写用マスクの種類によらずに効果的で、バイナリマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、エンハンサーマスク、及びレベンソン型位相シフトマスクともに効果がある。
【0073】
この中で、バイナリマスクは最も汎用に用いられ、特別な方法で遮光帯を作る必要もないので、量産上効果が大きい。また、ハーフトーン型位相シフトマスクに関しては、パターン開口部はもとより光半透過部からも露光光が透過するため、波面制御の転写性能への影響が大きいので、本方法で製造された転写用マスクは特に効果が大きい。
【0074】
[露光方法及びそれを用いたデバイスの製造方法]
ここでは、前述の方法で製造したマスクを用いた露光方法及びそれを用いたデバイスの製造方法について述べる。
最初に、露光装置の光学系部分の概要を、装置構成の概要を断面図にして示した装置構成概要図である図4を参照しながら説明する。露光装置の光学系部分は以下の構成になっている。光源31から発せられた露光光32は、照明光学系33を介して転写用マスク34に照射される。転写用マスク34を透過した露光光は、投影レンズ35及び38を介してウエハステージ39上に載置されたウエハ40上に照射され、これにより露光が行われる。投影レンズ35及び38の間にある瞳36部分には、一般的に可動絞りが設置されていて、投影レンズの開口数(NA:Numerical Aperture)が調整できるようになっている。投影レンズ35及び38は、この図では各々1枚のレンズで描かれているが、実際には多数のレンズ群から成り立っており、その相互位置は一部微動できるようになっていて、低次を中心としたレンズ収差の補正ができる機構が組み込まれている。また、瞳36の近傍には位相フィルタ37が組み込まれていて、この位相フィルタ37を調整することによって、高次のレンズ収差、特にレンズ部分ヒーティングによる高次収差のリアルタイム補正が可能なようになっている。
【0075】
この低次のレンズ収差補正は、ティルト、非点収差などゼルニケの多項式の6項までを含む。すなわち、半径に係る変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係る変数の次数が2次の項を1以上含むゼルニケ多項式によって規定される項を補正する機能がある。本発明の転写用マスクを用いると、この低次のレンズ収差補正によって投影レンズ35、38にとってウエハ40上と共役の位置に転写用マスクの主表面を配置することができ、この転写用マスクの主表面は光学的平坦面となる。このため、この転写用マスクを用い、且つ、この転写用マスクの転写用主面が光学的平坦面となるように、ゼルニケ多項式近似データを投影レンズの収差補正に反映した露光を行うと、焦点深度、位置ずれ、及び解像度に優れた露光を行うことができ、これにより、製造される半導体デバイスの回路特性も安定する。
【0076】
レンズ高次収差の発生について、以下に説明する。照明光学系33にはズーミング機構や可動式マルチミラー光学系などが組み込まれていて、所望の形状の照明を設定できるようになっている。通常照明は照明部と遮光部(光が遮断される部分)からなっている。照明部は中央を中心とした円形で、その円の大きさで照明条件を定義する(これをコヒーレンシーと呼んでいる)。一方、メモリ系デバイスを中心として最近よく使用されるようになってきているものが、ダイポール照明と呼ばれるものである。Xダイポールと呼ばれるものは、中央からX軸上に離れて円形状の小さな照明部が配置され、その周りは遮光部となっている。このXダイポール照明は、X方向の解像度が高く、X方向に密で微細なパターンの形成に適している。照明光学系33には、照射効率を上げる機構が組み込まれ、このXダイポール照明の際、照明光を、通常であれば遮光部(フィールド部)を照射する光も、上述の機構によって照明光学系33に集中させている。したがって、投影レンズ35及び38においては、レンズの一部分に集中的に強い露光光が通り、部分的にレンズヒーティングが起こる。この熱によってレンズは歪むので、複雑な高次のレンズ収差が発生する。また、デバイス製造においては、Xダイポール照明ばかりでなく、Yダイポール照明も多用される。この場合は、Y方向に密で微細なパターンの形成に適している。メモリでは、特に微細なパターン形成が要求されるのがワード線とビット線であるが、一般にその両者は直行関係の配置、すなわちX方向に密な配線と、Y方向に密な配線とからなる。そのようなこともあって、Xダイポール照明とYダイポール照明が併用されることも多い。また、ロジックパターンなどでの様々な形状のパターン形成には、通常照明が多用される。照明部が円形から扇型などに変形された変形ダイポール照明も使われることがある。このように様々な照明が使われるので、レンズヒーティングが起こる場所も様々で、レンズ高次収差の発生も様々である。露光を始めた時と連続して多量にウエハ露光処理を行っている最中でもヒーティングの状況は異なり、高次のレンズ収差補正はヒーティングの経時変化に追従する必要もある。この高次の収差補正は、ゼルニケの多項式で表すと半径方向3次以上の項であり、その項は逐次補正がなされることになる。よって、転写用マスクの光学平坦面を、半径方向3次以上のゼルニケ多項式の項まで補正しても、ある時点でのある照明状態での光学的平坦に過ぎず、様々な使用状況の中では、十分な波面コントロールにはならない。
したがって、前述したように、半径に係る変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係る変数の次数が2次の項を1以上含むゼルニケ多項式によって転写用マスクの仮想基準面である光学平坦面を設定するのが効率的である。但し、これは露光装置を汎用な層やデバイスに適用した場合であり、特定層に特化利用したり、逐次補正を必要としてもより高い精度を要求したりする時は、より高次の項まで取り込むことが効果的である。
【0077】
以下に、露光適用の応用例3例を示す。
<ハーフトーン型位相シフトマスクのサブピーク転写回避例>
ここで示すのは、ハーフトーン型位相シフトマスクを用いた時に、しばしば問題となるサブピーク転写不良を改善した例である。ウエハ用レジストとしてポジレジストを用いた場合、サブピーク現象によってレジスト部であるべき場所にレジストくぼみが生じることがある。このくぼみは、被加工膜のエッチングの際に突き抜けを起こし、デバイス回路の欠陥の巣となって、デバイスの製造歩留まりを低下させたり、回路動作の不安定要因になりうる。レジスト膜厚を厚くできればこの問題は解消されるが、レジスト解像度の問題やパターン倒れの問題などがあるためレジストを厚くすることは困難である。この問題の解決法の一つには、レンズに低次の収差を与え、サブピークが出にくくすることがあるが、一方でこの方法では露光裕度、特にフォーカス裕度が小さくなる。したがって、マスクブランク用基板や転写用マスクに対しては、より厳しい平坦度が要求される。そこで、本実施の形態のマスクブランク用基板及び転写用マスクを用い、このマスクブランク用基板や転写用マスクに対して光学平坦面を与えるべく投影レンズに対し、極座標表示のゼルニケ多項式によって定義される収差補正を加え、さらにその補正の上にサブピーク転写防止の低次の補正を加えて露光を行った。その結果、必要な焦点裕度を確保した上で、上記ハーフトーン型位相シフトマスクを用いた時のサブピーク転写の問題を回避することができた。これは、本実施の形態のマスクブランク用基板及び転写用マスクでは、光学平坦度λ/8以下が達成されるものを選定できたことによる。
【0078】
<露光装置QC適用例>
ここで示すのは、露光装置の品質管理(QC:Quality Control)に適用した例である。露光装置の投影レンズの高次の収差補正は前述の通り、露光状況に応じて逐次調整されるものであるが、半径に係る変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係る変数の次数が2次の項を1以上含むゼルニケ多項式で記述されるような低次の項は、前述のように半導体デバイスの適用層によっては変化させるが、露光装置管理という観点では基準値は半固定で運用すべきものである。通常はこれらの低次のレンズ収差補正は経時的に変化しないものであるが、停電や、温度調整チャンバーの異常停止による露光装置の温度環境変化、及び地震などが起こると変化が生じる。そこで、露光装置の低次のレンズ収差補正管理のQCが必要になるが、このQCには、極めて平坦で波面の揃った基準マスクが必要となる。レンズ収差の評価であるため、そこで使用する基準マスクに関しては、高度な光学測定器に要求されるのと同様の光学平坦度λ/8以下の平坦性が要求される。本実施の形態のマスクブランク用基板及び転写用マスクはこの要求を満たすように選定できるので、露光装置のレンズ収差補正機能調整に好適である。
【0079】
<露光装置レンズ収差補正機能調整適用例>
ここでは、露光装置のレンズ収差補正機能調整に適用した例を示す。上記の通り、露光装置にはレンズ収差補正機能が組み込まれている。この機能を調整、評価するにあたっては極めて平坦で、波面収差の源とならない基準マスクが必要となる。レンズ収差の評価であるため、そこで使用する基準マスクに関しては、高度な光学測定器に要求されるのと同様の光学平坦度λ/8以下の平坦性が要求される。本実施の形態のマスクブランク用基板及び転写用マスクはこの要求を満たすように選定できるので、露光装置のレンズ収差補正機能調整に好適である。
[実施例]
【0080】
[マスクブランク用基板の製造]
本実施の形態のマスクブランク基板の製造方法に従って6枚の透光性基板サンプルを作成し、評価を行った。必要とされる光学的平坦度であるPVの所定値XをArF露光波長λの1/8である25nm(小数点以下繰り上げ)という極めて高い値とすると、サンプルA、Bの2枚がマスクブランク用基板の実施例、サンプルX1、X3の2枚が比較例、サンプルC、X2の2枚が参考例の位置づけとなる。マスクブランク用基板の選別まで、この6枚は全て以下に示す同一の工程で製造した。
【0081】
まず、合成石英ガラス基板(大きさ152.4mm×152.4mm、厚さ6.75mm)を切り出し、この合成石英ガラス基板の端面を面取加工、及び研削加工し、さらに酸化セリウム砥粒を含む研磨液で粗研磨処理及び精密研磨した。その後、このガラス基板を両面研磨装置のキャリアにセットし、下記条件で超精密研磨を行った。
研磨パッド:軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
研磨液:コロイダルシリカ砥粒(平均粒径100nm)と水
加工圧力:50〜100g/cm
加工時間:60分
超精密研磨終了後、ガラス基板(透光性基板)を希フッ酸液中に浸漬させてコロイダルシリカ砥粒を除去する洗浄を行った。その後、ガラス基板の主表面及び端面に対してスクラブ洗浄を行い、その後純水によるスピン洗浄、及びスピン乾燥を行って、表面が平坦加工されたガラス基板を6枚準備した。そしてそのガラス基板の表面形状(フラットネス)を平坦度測定装置(Corning Tropel社製 UltraFlat200M)で実測した。
【0082】
その実測データを図5図7図9図11図13、及び図15に示す。各図は順に、サンプルA、B、C、X1、X2、及びX3の場合を示し、図中の(a)は実測の主表面形状を上面から見た等高線分布図、(b)は対角線方向の高さ分布曲線図、そして(c)はガラス基板の中心を横切る縦軸、横軸に沿った高さ分布曲線図を示す。また、各図(a)中の左側の平面図の縦軸、横軸の単位は平坦度測定に用いたピクセルの番号を示す。ピクセルのサイズは1個あたり0.77mmである。したがって、ガラス基板の中心を基準とした146mm×146mmの四角形の内側領域を測定している。等高線は10nm刻みでプロットした。右横に示されたZの単位はμmである。各図(b)及び(c)の横軸は平坦度測定に用いたピクセルの番号で、縦軸は高さを表し、その単位はμmである。
【0083】
また、ガラス基板の中心を基準とした直径104mmの円領域で表面形状分布を表示し直した例を図6図8図10図12図14、及び図16に示す。各図は順に、サンプルA、B、C、X1、X2、及びX3の場合を示し、図中の(a)は実測の主表面形状の等高線分布図(実測の主表面)、(b)は半径に係る変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係る変数の次数が2次の項を1以上含むゼルニケ多項式によって定義された仮想基準面を等高線分布図で示したもの、そして(c)は実測の主表面形状と仮想基準面との差分形状(差分データ)を等高線分布図で示したものである。ちなみに、ここでのゼルニケ多項式としてはアリゾナ大学表記のものを用い、その1項から6項までを使って実測形状に近づけるようにフィッティングを行って、仮想基準面を生成した。ただし、前述のように、これは一実施例であり、ゼルニケ多項式としては、アリゾナ大学表記のものに限るものではない。標準ゼルニケ表記やフリンジゼルニケ表記等のほかの表記方式を適用した場合であっても、同様の仮想基準面を得ることは可能である。なお、等高線は、(a)及び(b)が10nm刻みでプロットしてあり、(c)が5nm刻みでプロットしてある。
【0084】
本実施例等で使用したアリゾナ大学表記のゼルニケ多項式の各項は、表1のとおりである。各項は半径がρ、位相(方位角)がθである極座標系で表記されている。表1において、jは項の番号(第j項)であり、Zj(ρ,θ)はその番号の項の内容である。表1では参考までに第10項まで表記したが、本実施例で使用したのは第6項までである。
各サンプル基板における各仮想基準面のゼルニケ多項式近似式を図17に示す。このゼルニケ多項式近似式の情報は記録装置に記録され、露光を行う時の投影レンズ収差入力データに反映した。また、差分形状から求めたPV値も記録装置に記録し、後述のように、平坦度の観点からのマスクブランク用基板の選定に活用した。
【0085】
【表1】
【0086】
所定値Xをλ/8(25nm)とした時に実施例の位置づけとなるサンプルA及びBの機械的平坦度は、最高点と最低点の差であるTIR(Total Indicator Reading)で表して、146mm×146mm領域の場合は各々216nmと249nmであった。転写露光領域(ショット領域)が収まる132mm×132mm領域の場合は、各々138nmと148nmであって、両者とも200nm以下であった。また、104mm直径の円領域の場合は各々55nmと46nmであった。この2枚のサンプルの機械的平坦度の最小値は、104mm直径の円領域の場合で46nmであり、ArF露光の露光波長λ(193nm)の1/8である25nm(小数点以下切上げ)の倍近くの値であった。
【0087】
一方、実測の主表面形状と仮想基準面との差分形状(差分データ)から算出される本発明による光学的平坦度の観点に立つと、その平坦度指標の1つであるPV値は、実施例サンプルA、Bの順で記して14nmと15nmであった。この方法により、ArF露光の露光波長λの1/8である25nm(小数点以下切上げ)を実施例サンプルA、Bとも大幅に下回り、λ/10をも下回る極めて平坦な光学的平坦度を有するマスクブランク用基板を選別取得することができた。
【0088】
実測の主表面形状と仮想基準面との差分形状(差分データ)の決定係数R図18に示す。同図では、ゼルニケ多項式の1項から4項までを使った場合(図中の[Z1−4]に対応)から、1項から17項までを使った場合(図中の[Z1−17]に対応)まで用いて、決定係数Rを計算したものを示している。ゼルニケ多項式としてはアリゾナ大学表記を用いた。サンプルA、B、C、X1、X2及びX3ともに、高次の項まで使うほど決定係数Rは1に近づき、特に15項以上まで使うと、決定係数Rは0.9を超えた。一方で、前述のように3次を超えた高次の項でマスクブランク基板の仮想基準面調整を行うと、露光条件による投影レンズの収差補正変化から、労力がかかる割には効果が小さい。半径に係る変数の次数が2次以下の項のみで構成され、かつ半径に係る変数の次数が2次の項を1以上含むゼルニケ多項式の1項から6項まで使った(図中の[Z1−6]に対応)マスクブランク用基板の選別を行って、決定係数Rが0.9を超えるサンプルA、B、C、及びX3を得た。ただし、所定値Xをλ/8とした時の比較例の位置づけのサンプルX3のPV値は26nmであり、その値はλ/8(25nm)をわずかに超えている。また、この基準での参考例の位置づけのサンプルCは、後述のように、104mm直径の円領域の光学平坦度と決定係数Rは選択基準値を満たしたが、132mm×132mm領域の機械的平坦度が281nmあり、200nm以下には入らなかった。
【0089】
選別取得された高平坦のマスクブランク用基板である実施例の位置づけのサンプルAとBは、直径104mmの円内で波面収差がλ/8以下で、かつ、決定係数Rは0.9を超え、また、132mm×132mm領域の場合での機械的平坦度は0.2μm以下である。このマスクブランク用基板を使って製造されたマスクを用いて露光を行ったところ、焦点裕度、位置ずれ、及び解像度に優れ、[露光方法及びそれを用いたデバイスの製造方法]において後述するように、それを使って製造される半導体デバイスの回路特性も安定していた。
【0090】
所定値Xをλ/8とした時の比較例の位置づけであるサンプルX1とX3の機械的平坦度は、TIRで表して、146mm×146mm領域の場合は各々163nmと282nmであり、132mm×132mm領域の場合は各々71nmと239nmであった。サンプルX1の132mm×132mm領域のTIRの値71nmは、前記基準において実施例の位置づけであるサンプルAの138nmやBの148nmのほぼ半分である。また、104mm直径の円領域の場合は各々40nmと75nmであった。サンプルX1のこの値40nmもサンプルAの55nmやBの46nmより優れた値である。一方、その104mm直径の円領域における実測の主表面形状と仮想基準面との差分形状から算出される本発明による光学的平坦度の指標であるPV値は、サンプルX1が30nm、X3が26nmであって、ArF露光の露光波長λの1/8である25nmを両方のサンプルX1、X3ともに満たさなかった。なお、機械的平坦性を表すTIRの大小と、光学的平坦度の大小との間には相関がなく、λ/8という非常に平坦な平坦度を得るためには、本発明による光学平坦度による選別取得が大変有効なことがわかった。
【0091】
所定値Xをλ/8とした時に第1の参考例の位置づけとなるサンプルCの機械的平坦度は、TIRで表して、146mm×146mm領域の場合は346nmであり、132mm×132mm領域の場合は281nm、104mm直径の円領域の場合は81nmであった。この値は6サンプルの内で最も大きな値となっている。特に転写露光領域(ショット領域)が収まる132mm×132mm領域では、200nm(0.2μm)を超えていた。一方、その104mm直径の円領域における実測の主表面形状と仮想基準面との差分形状から算出される本発明による光学的平坦度は、PV値で表して13nmであって、ArF露光の露光波長λの1/8である25nmの半分近くと極めて良好な値であった。このマスクブランク用基板を使ってマスクを製造し、スキャナによる転写評価を行ったところ、ショット中心部は実施例サンプルA及びBと同様に焦点裕度、位置ずれ、及び解像度に優れていたが、周辺部では低下していた。
【0092】
所定値Xをλ/8とした時に第2の参考例の位置づけとなるサンプルX2の機械的平坦度は、TIRで表して、146mm×146mm領域の場合は126nmであり、132mm×132mm領域の場合は81nm、104mm直径の円領域の場合は29nmであった。この値はサンプルX1と並んで小さい値である。一方、その104mm直径の円領域における実測の主表面形状と仮想基準面との差分形状から算出される本発明による光学的平坦度はPV値で表して19nmであって、ArF露光の露光波長λの1/8である25nm以下と良好な値であった。しかしながら、決定係数Rは0.637と小さく、104mm直径の円領域全体での光学的平坦面(仮想基準面)とのフィッティング乖離が目立った。
【0093】
[マスクブランクの製造]
ここでは、ハーフトーン用マスクブランクを製造した例を示す。まず前述の方法で製造し、選別基準を通過したマスクブランク用基板(実施例サンプルA、B)を準備し、その上に窒化されたモリブデン及びシリコンからなる光半透過膜を形成した。具体的には、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=10mol%:90mol%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N:He=5:49:46)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を3.0kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、シリコン及び窒素からなるMoSiN膜を69nmの膜厚で形成した。次いで、上記MoSiN膜が形成された基板に対して、加熱炉を用いて、大気中で加熱温度を450℃、加熱時間を1時間として、加熱処理を行った。なお、このMoSiN膜は、ArFエキシマレーザーにおいて、透過率は6.16%、位相差が184.4度となっていた。
【0094】
次に、上記光半透過膜の上に、遮光膜を成膜した。具体的には、スパッタターゲットにクロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比 Ar:CO:N:He=20:35:10:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚30nmのCrOCN層を成膜した。続いて、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.1Pa,ガス流量比 Ar:N=25:5)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚4nmのCrN層を成膜した。最後に、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス圧0.2Pa,ガス流量比Ar:CO:N:He=20:35:5:30)とし、DC電源の電力を1.7kWとし、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、膜厚14nmのCrOCN層を成膜し、合計膜厚48nmの3層積層構造のクロム系遮光膜を形成した。その後、280℃で15分間の加熱処理を加えて、膜応力を0近くまで軽減した。
【0095】
本方法によって製造したマスクブランクの表面の光学的平坦度は、ArF露光の露光波長λ(193nm)の1/8である25nm以下となり、λ/8という十分な波面コントロールがなされたマスクブランクとなった。
【0096】
なお、上記マスクブランクの製造方法では、マスクブランク用基板の平坦度を測定し、極座標表示のゼルニケ多項式による仮想基準面を計算し、前記の仮想基準面と差分形状のデータをとってPV値を求め、このPV値とゼルニケ多項式の情報を記録装置に記録し、光学平坦度選別を行った後、薄膜を形成してマスクブランクを製造したが、薄膜形成と光学平坦度選別の順番を逆にしてもよい。すなわち、マスクブランク用基板上に薄膜を形成した後、マスクブランクの平坦度を測定し、前記の仮想基準面と差分形状データをとって、光学平坦度選別を行ってもよい。
【0097】
[転写用マスクの製造および半導体デバイスの製造]
ここでは、前述の方法で製造したマスクブランク上の薄膜に対してパターン形成を行って転写用マスクを製造した。転写用マスクの製造工程については、上記[転写用マスク及びその製造方法]で記載した方法と同様であるので説明は省略する。また、この転写用マスクを用いた露光転写にあたっては、記録装置に記録したゼルニケ多項式のパラメータを露光装置のレンズ収差補正機能に反映させて、転写用マスクの転写用主面が光学的平坦面になる設定とした。
【0098】
本方法で製造された転写用マスクの転写用主面の光学的平坦度は、露光波長λの1/8以下と極めて高く、十分な波面コントロールがなされた転写用マスクを製造することが可能となった。波面コントロールが十分なされるため、この転写用マスクを用いて露光を行うと、焦点深度、位置ずれ、及び解像度に優れ、それを使って製造される半導体デバイスの回路特性も安定していた。
【0099】
なお、本発明のマスクブランク用基板およびマスクブランクでは、露光装置における収差補正機能への負荷を考慮し、ゼルニケ多項式の次数が2次の項までの収差補正機能を使用した場合において表面形状がλ/8以下であるものが好ましいとしている。しかし、露光装置の収差補正機能等の性能向上や投影レンズの品質向上等によって、より多くの負荷を基板やマスクブランクの表面形状に係る波面収差の補正に割いても、露光転写への影響が小さい場合においては、仮想基準面の範囲を半径に係る変数の次数が3次以下の項のみで構成され、かつ半径に係る変数の次数が3次の項を1以上含むゼルニケ多項式で定義される表面形状まで広げてもよい。このようなゼルニケ多項式で定義される表面形状を仮想基準面とすることにより、本発明のマスクブランク用基板やマスクブランクを製造する際の歩留まりを大幅に向上させることができる。
[比較例]
【0100】
ここでは、実施例で作製した6枚のサンプルA、B、C、X1、X2、及びX3について、従来技術のように機械的平坦面によって評価した場合を示す。したがって、物自体はマスクブランク用基板の段階から、転写用マスクに至るまで実施例と同じものである。実施例との違いは、光学的平坦面で利用せずに、機械的平坦面を利用して評価したことにある。比較例では、実施例で行ったゼルニケ多項式で記述される仮想基準面を算出し、マスクブランク用基板の主表面形状との差分形状(差分データ)を取得し、PV値を求めてその情報を記録し、そのPV値情報からマスクブランク基板の選定を行うという工程は行っていない。また、転写用マスクを用いた露光において、露光装置へこの転写用マスク固有のレンズ収差補正、すなわち光学的平坦面とするためのゼルニケ多項式パラメータを反映していない。
【0101】
透光性基板のサンプルA、B、C、X1、X2、及びX3の直径104mm領域の機械的表面形状は、前述のように、図6図8図10図12図14、及び図16各図の(a)に示されている。その機械的平坦度をPV値で表すと、104mm直径の円領域の場合は、サンプルAで55nm、サンプルBで46nm、サンプルCで81nm、サンプルX1で40nm、サンプルX2で29nm、そしてサンプルX3で75nmであった。最良のサンプルX2の場合でも29nmであり、光学的平坦面を使った実施例の19nmの1.5倍以上の値となった。29nmという値は、ArF露光の露光波長λ(193nm)の1/8である25nm(小数点以下繰り上げ)に及ばず、十分な波面制御はできなかった。次に良好なサンプルX1は40nmであり、これは約λ/5に相当して、不十分なものであった。なお、転写露光領域(ショット領域)が収まる132mm×132mm領域の場合は、実施例のところでも述べたように、サンプルAで138nm、サンプルBで148nm、サンプルCで281nm、サンプルX1で71nm、サンプルX2で81nm、そしてサンプルX3で239nmであった。このように波面コントロールが不十分なため、この転写用マスクを用いて従来の方法で露光を行うと、焦点深度、位置ずれ、及び解像度に面内分布が生じ、それを使って製造される半導体デバイスの回路特性も不安定となった。
【符号の説明】
【0102】
1…マスクブランク用基板、2…機械的平坦面、3…基板主表面、4…光学的平坦面、31…光源、32…露光光、33…照明光学系、34…転写用マスク、35…投影レンズ、36…瞳、37…位相フィルタ、38…投影レンズ、39…ウエハステージ、40…ウエハ。
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