(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266294
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】差し込み式引留具
(51)【国際特許分類】
H02G 7/02 20060101AFI20180115BHJP
F16B 2/14 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
H02G7/02
F16B2/14 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-213454(P2013-213454)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-77038(P2015-77038A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】517043192
【氏名又は名称】株式会社白山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【弁理士】
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】稲川 康二
(72)【発明者】
【氏名】岩沢 昇次
(72)【発明者】
【氏名】岡田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】菊地 隆宏
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−185922(JP,U)
【文献】
特開昭56−029415(JP,A)
【文献】
実公昭43−029894(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/02
H02G 7/05
F16B 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に円錐面の貫通穴を有し、該貫通穴の小径端側に円錐面から突出した複数の突起部を有し、隣接する突起部の間に所定幅の軸方向に伸長するガイド溝が形成されたケースと、
前記ガイド溝に沿って移動可能に配置され、挿入された通信線を引き留めるための金属線の外周面から食い込み、金属線を挟持する鋸歯状突出構造を有する複数のチャック部材と、
前記複数のチャック部材を前記ケースの貫通穴の小径端に押圧するコイルばねと、
前記ケースの貫通穴の大径端に設けられ、前記コイルばねを付勢させた状態で該ケースに固定されるキャップと、
一端が前記ケースの貫通穴の小径端に引っ掛かると共に他端が外部に露出するように設けられ、前記金属線の一部を挿通するパイプとを備え、
前記複数のチャック部材の前記ガイド溝と接触する外周面の少なくとも角部が曲面に形成されていることを特徴とする差し込み式引留具。
【請求項2】
前記複数のチャック部材が、挿入された通信線を引き留めるための被覆を有する金属線の外周面から食い込み、金属線を挟持する鋸歯状突出構造を有する複数のチャック部材であることを特徴とする請求項1に記載の差し込み式引留具。
【請求項3】
前記複数のチャック部材を括るためのリングをさらに有し、
前記複数のチャック部材の外周面には、前記リングを嵌入するための切り込み溝が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の差し込み式引留具。
【請求項4】
前記キャップは、中央部に内側へ突出する突出部が形成され、
前記複数のチャック部材は、前記突出部に対応する端部に外周方向へ傾斜する傾斜面を有し、
前記パイプを介して前記複数のチャック部材が前記キャップ側へ押された際に、前記傾斜面が前記突出部に当接し、前記複数のチャック部材が外周方向へ広がるように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の差し込み式引留具。
【請求項5】
前記突出部は、円錐面を有し、前記パイプを介して前記複数のチャック部材が前記キャップ方向へ押された際に、前記傾斜面が前記突出部の円錐面に当接するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の差し込み式引留具。
【請求項6】
前記複数のチャック部材は、所定厚さを有する板状材から形成された3つのチャック部材であり、これらチャック部材は、前記ケースの中心軸線の周りに等角度間隔に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の差し込み式引留具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブル等の通信線を架設する際に用いられ、光ファイバケーブル等を支持する金属線等を挟持し引き留める差し込み式引留具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の通信線用差し込み式引留具は、中心に円錐面の貫通穴を有するケースと、このケースに装着され、挿入された通信線を引き留めるための金属線の外周面を支持するための一対のチャックと、このチャックをケースの貫通穴の一端に固定させるコイルばねと、ケースの前端に設けられ、コイルばねを付勢させた状態で圧着によりケースに固定されるキャップと、ケースの後端に設けられ、通信線を引き留めるための金属線の一部を挿通するパイプとを備えている。
【0003】
このような通信線用差し込み式引留具を用いて、通信線の引き留め作業を行う場合、通信線を引き留めるための金属線の先端の所定長さのプラスチック製保護層(被覆材)を除去し、金属線を露出させ、露出した金属線をパイプから挿入し、チャックにより挟持する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59−185922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る通信線用差し込み式引留具は、通信線等を架設する際に、プラスチック製保護層(被覆材)を一定長さ剥離して金属線を露出させる必要があるので、作業が非常に手数のかかるものであるために工事時間が長くなり作業効率が悪いという問題点があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、通信線等を架設する際に、プラスチック等の保護層(被覆材)がある場合にその被覆材を剥かなくても通信線を引き留めるための金属線を挟持することができる差し込み式引留具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、差し込み式引留具は、中心に円錐面の貫通穴を有し、貫通穴の小径端側に円錐面から突出した複数の突起部を有し、隣接する突起部の間に軸方向に伸長する所定幅のガイド溝が形成されたケースと、ガイド溝に沿って移動可能に配置され、挿入された通信線を引き留めるための金属線の外周面から食い込み、金属線を挟持する鋸歯状突出構造を有する複数のチャック部材と、複数のチャック部材をケースの貫通穴の小径端に押圧するコイルばねと、ケースの貫通穴の大径端に設けられ、コイルばねを付勢させた状態でケースに固定されるキャップと、一端がケースの貫通穴の小径端に引っ掛かると共に他端が外部に露出するように設けられ、金属線の一部を挿通するパイプとを備えている。
【0008】
ケース内に装着された複数のチャック部材が、挿入された通信線を引き留めるための金属線の外周面から食い込み、金属線を挟持する鋸歯状突出構造を有することで、金属線に外被がある場合にその外被を剥かなくても通信線を引き留めるための金属線を確実に挟持することができる。チャック部材のチャックを例えば鋼板材をせん断加工で形成すれば、鋭い先端部を有する鋸歯状突出構造を容易に形成することができ、従って、外被に覆われた金属線であってもその外被の上から確実に把持することができる。もちろん、外被のない金属線についても確実に把持することができる。
【0009】
複数のチャック部材が、挿入された通信線を引き留めるための被覆を有する金属線の外周面から食い込み、金属線を挟持する鋸歯状突出構造を有する複数のチャック部材であることが好ましい。外被に覆われた金属線について、その外被の上から確実に把持することができる。
【0010】
複数のチャック部材を括るためのリングをさらに有し、複数のチャック部材の外周面には、リングを嵌入するための切り込み溝が形成されていることが好ましい。これにより、複数のチャック部材の動作がバラバラになることがなく、動作を同期させることができる。
【0011】
複数のチャック部材のガイド溝と接触する外周面の少なくとも角部が曲面に形成されていることも好ましい。これにより、ケースのガイド溝と接触する部分において、応力分散することができ、チャック部材背面のエッジ部がケースに直接に当たり応力集中が働かないようにすることができる。
【0012】
キャップは、中央部に内側へ突出する突出部が形成され、複数のチャック部材は、突出部に対応する端部に外周方向へ傾斜する傾斜面を有し、パイプを介して複数のチャック部材がキャップ側へ押された際に、傾斜面が突出部に当接し、複数のチャックが外周方向へ広がるように構成されていることも好ましい。これにより、複数のチャックを緩めさせ金属線の挿入位置を調整、又は取り外すことが容易にできる。
【0013】
突出部は、円錐面を有し、パイプを介して複数のチャック部材がキャップ方向へ押された際に、傾斜面が突出部の円錐面に当接するように構成されていることも好ましい。これにより、複数のチャックを安定して外周方向へ拡張させることができる。
【0014】
複数のチャック部材は、所定厚さを有する板状材から形成された3つのチャック部材であり、これらチャック部材は、ケースの中心軸線の周りに等角度間隔に配置されていることも好ましい。これにより、挟持強度を確保することができると共に、チャック部材の加工が容易になり、コストの削減を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の差し込み式引留具によれば、ケース内に装着された複数のチャック部材が、挿入された通信線を引き留めるための金属線の外周面から食い込み、金属線を挟持する鋸歯状突出構造を有することで、金属線に外被がある場合にその外被を剥かなくても通信線を引き留めるための金属線を確実に挟持することができる。チャック部材のチャックを例えば鋼板材をせん断加工で形成すれば、鋭い先端部を有する鋸歯状突出構造を容易に形成することができ、従って、外被に覆われた金属線であってもその外被の上から確実に把持することができる。そのため、通信線等を架設する際に、プラスチック製保護層(被覆材)を一定長さ剥離して金属線を露出させる作業が必要なく、作業効率を向上することができる。もちろん、外被のない金属線についても確実に把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る差し込み式引留具の構成を概略的に示す部分断面図である。
【
図2】
図1の差し込み式引留具のケースの構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図1の差し込み式引留具のチャック部材の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図4】
図1の差し込み式引留具のキャップの構成を概略的に示す断面図である。
【
図5】
図1の差し込み式引留具のパイプの構成を概略的に示す断面図である。
【
図6】本発明に係る差し込み式引留具の引き留め作業手順を概略的に示す説明図である。
【
図7】本発明に係る差し込み式引留具の金属線取り外し作業手順を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る差し込み式引留具(即ち、C形差し込み式引留具)の実施形態を、図を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態における差し込み式引留具100の構成を示しており、
図2はケース10の構成を示しており、
図2中(a)はケース10の上面から見た図であり、(b)はケース10の側面図である。
図3はチャック部材20の構成を示しており、
図3中(a)はチャック21の構成を示しており、(b)はチャックホルダ22の構成を示しており、(c)はチャック21とチャックホルダ22との組み立て状態を示している。
図4はキャップの構成を示しており、
図5はパイプの構成を示している。
【0019】
図1〜
図5に示すように、本実施形態に係る差し込み式引留具100は、ケース10と、複数(例えば、3つ)のチャック部材20と、コイルばね30と、キャップ40と、パイプ50と、リング60と、U形ワイヤ70とを備えている。通信線を引き留めるための金属線Wは、例えば、被覆を有するφ2.3mm又はφ2.6mmの単鋼線である。なお、金属線Wの線径はこれに限定されるものではない。
【0020】
ケース10は、例えば、亜鉛材料等を用いて鋳造にて形成されており、チャック部材20が内部に収容される円錐台状となっている。ケース10は、
図2に示すように、中央部に形成されている円錐面の貫通穴からなる収容部11と、貫通穴の小径端側に円錐面から突出した複数の突起部12と、隣接する突起部12の間に所定幅のガイド溝13と、U形ワイヤ70を装着するためのフランジ部14とを備えている。収容部11の大径端側にキャップ40を嵌入するためのキャップ嵌入部11aが形成され、収容部11の小径端側にパイプ50を挿通するためのパイプ挿通部11bが形成されている。フランジ部14には、アース線を固定するためのネジ15が螺入するネジ穴15aと、アース線挿入孔15bと、U形ワイヤ70を掛止するための切り込み14aとが形成されている。この切り込み14aはU形ワイヤ70の抜け出しを防止するように構成されている。
【0021】
チャック部材20は、
図3に示すように、チャック21と、チャックホルダ22とを備えている。チャック21は、チャックホルダ22とは別個に形成されており、例えば、炭素工具鋼等の板材をせん断加工して形成される。チャック21の前面(金属線Wと接触する面)となる挟持面21aが金属線Wを挟持する鋭い先端の鋸歯状突出構造に形成され、この鋸歯状突出構造の上端に外周方向へ突出した傾斜面21cが形成されている。チャック21の背面21bにリング60を嵌入するための切り込み溝21dが形成されている。また、チャック21の上端にコイルばね30を保持するばね保持部21eが形成されている。チャックホルダ22は、例えば、ステンレス等の板材からプレス加工により形成され、チャック21を嵌入するための溝22aを有している。チャックホルダ22の外周面の少なくとも角部が所定半径の曲面22bに形成されている。これにより、チャック部材20はガイド溝13に沿って収容部11の円錐面に沿ってスムーズに移動することが可能となる。また、金属線Wの被覆の厚さに基づいて鋸歯の高さを適宜に設計することができる。
【0022】
コイルばね30は、3つのチャック部材20のばね保持部21eに装着されて、キャップ40により付勢され、3つのチャック部材20を同時にケース10の貫通穴の小径端に押圧するように構成されている。
【0023】
キャップ40は、例えば、加工性に優れた冷間圧延鋼板から形成されており、
図4に示すように、ケース10のキャップ嵌入部11aに嵌入するための嵌入部40aと、中心部に形成された金属線Wを挿通するための挿通孔40bと、挿通孔40bを形成すると共に内側に突出する突出部40cと、コイルばね30の一端を保持するためにばね保持溝40dとを備えている。突出部40cは、円錐面を有し、パイプ50を介してチャック部材20がキャップ10の方向へ押された際に、チャック21の傾斜面21cが突出部40cの円錐面に当接することで、3つのチャック20がスムーズにかつ安定して外周方向へ拡張させるようになっている。
【0024】
パイプ50は、例えば、金属材料から形成されている。
図5に示すように、パイプ50の一端が、ケース10のパイプ挿通部11bに掛止するための凸縁50aが形成されている。このパイプ50は、ケース10の内部からパイプ挿通部11bを挿通してケース10に装着される。
【0025】
リング60は、3つのチャック部材20を括るためのものであり、例えば、高炭素鋼線材(硬鋼線材)から形成されている。このリング60は、3つのチャック部材20の切り込み溝21dに嵌入するように装着されている。
【0026】
U形ワイヤ70は、ケース10を電信柱等に引っ掛けるものである。U形ワイヤ70の両直線部には、ケース10の切り込み14aに嵌入するためのフラット部70aがプレス等の方法でそれぞれ形成されている。また、U形ワイヤ70の両直線部の先端にケース10のフランジ部14に引っ掛かるための球状部70bが形成されている。
【0027】
図6は本実施形態の差し込み式引留具100の引き留め作業手順を示している。同図(a)は金属線Wが挿入される前の状態を示しており、(b)は金属線Wがパイプ50に挿入され、先端がチャック部材20に当接する状態を示しており、(c)は金属線Wがチャック部材20を上部まで押し上げた状態を示しており、(d)は金属線Wが挿入完了の状態を示しており、(e)はチャック部材20が金属線Wを挟持する状態を示している。
【0028】
図6に示すように、通信線等を引き留めるための金属線Wを引き留める作業を行う際に、まず、
図6(a)に示すように、差し込み式引留具100が組み立てられた状態で、金属線Wの被覆を除去せず、被覆のままでパイプ50に挿入する。次いで、
図6(b)及び(c)に示すように、パイプ50を挿通し、チャック部材20を上部まで押し上げるようにさらに挿入する。この際、チャック部材20の傾斜面21cの上端がキャップ40の突出部40cの円錐面に当接するようになっている。次いで、金属線Wをさらに押し上げると、チャック21の傾斜面21cが突出部40cの円錐面に当接することで、
図6(d)に示すように、チャック20が外周方向へ拡張され、金属線Wがキャップ40の挿通孔40bから挿通するようになる。最後に、
図6(e)に示すように、金属線Wを矢印方向に引っ張ることで、チャック部材20がケース10の収容部11の小径端側に移動すると共に、挟持面21aの鋸歯が金属線Wの被覆に、さらに金属線Wの表面に食い込むことになる。これにより、金属線Wが挟持され、引き留める状態になる。
【0029】
図7は本実施形態の差し込み式引留具100の金属線取り外し作業手順を示している。同図(a)はパイプ50が押し上げされた状態を示しており、(b)はチャック部材20が開放する状態を示しており、(c)は金属線Wが引き抜かれた状態を示している。
【0030】
図7に示すように、引き留め状態となっている金属線Wを差し込み式引留具100から取り外す際に、まず、
図7(a)に示すように、引き留め状態からパイプ50をケース10の中へ(図中矢印方向)押し込む。これにより、チャック部材20がケース10の収容部11の上部まで押し上げられる。パイプ50をさらに押し込むと、チャック21の傾斜面21cが突出部40cの円錐面に当接することで、
図7(b)に示すように、チャック20が外周方向へ拡張され、挟持面21aの鋸歯が金属線Wの被覆から抜き出すことになる。次いで、
図7(c)に示すように、パイプ50を押し込んだままで、金属線Wをケース10から引き抜くと、金属線Wが差し込み式引留具100から取り外される。
【0031】
上述したように、本実施形態の差し込み式引留具100は、ケース10と、3つのチャック部材20と、コイルばね30と、キャップ40と、パイプ50と、リング60と、U形ワイヤ70とを備えている。ケース10内に装着された複数のチャック部材20が、挿入された通信線Wを引き留めるための被覆を有する金属線Wの外周面から食い込み、金属線Wを挟持する鋸歯状突出構造を有することで、金属線の被覆材を剥かなくても通信線を引き留めるための金属線Wを確実に挟持することができる。そのため、通信線等を架設する際に、金属線Wの被覆材を一定長さ剥離して金属線Wを露出させる作業が必要なく、作業効率を向上することができる。チャック21がチャックホルダ22とは別個に形成されているため、チャック21を例えば鋼板材をせん断加工で形成することにより、鋭い先端部を有する鋸歯状突出構造を容易に形成することが可能となり、従って、金属線Wを被覆を介して確実に把持することができる。
【0032】
また、差し込み式引留具100は、3つのチャック部材20を括るためのリング60を有し、かつ3つのチャック部材20の外周面には、リング60を嵌入するための切り込み溝21dが形成されていることで、3つのチャック部材20の動作がバラバラになることがなく、動作を同期させることができる。
【0033】
また、チャックホルダ22のガイド溝13と接触する外周面の角部が曲面に形成されていることで、ケース10のガイド溝13と接触する部分において、応力分散することができ、チャック部材20の背面のエッジ部がケースに直接に当たり応力集中が働かないようにすることができる。
【0034】
また、キャップ40は、中央部に内側へ突出する突出部40cが形成され、3つのチャック部材20は、突出部40cに対応する側に外周方向へ傾斜する傾斜面21cを有し、パイプ50を介して3つのチャック部材20がキャップ40側へ押された際に、傾斜面21cが突出部40cに当接し、3つのチャック20が外周方向へ開放されることで、3つのチャック部材20を緩めさせ金属線Wの挿入位置を調整、又は取り外すことが容易にできる。
【0035】
突出部40cは、円錐面を有し、パイプ50を介して複数のチャック部材20がキャップ40方向へ押された際に、傾斜面21cが突出部40cの円錐面に当接することで、複数のチャック部材20を安定して外周方向へ拡張させることができる。
【0036】
所定厚さを有する板状材から形成された3つのチャック部材20は、ケース10の中心軸線の周りに等角度間隔に配置されていることで、挟持強度を確保することができると共に、チャック部材20の加工が容易になり、コストの削減を図ることができる。
【0037】
なお、上述した実施形態の差し込み式引留具100においては、3つのチャック部材20を有するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、2つ又は4つ以上のチャック部材20を用いてもよい。
【0038】
また、上述した実施形態の差し込み式引留具100において、被覆を有する金属線Wを引き留める例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。被覆のない金属線にも適用できる。
【0039】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態を技術的範囲に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、通信線等を架設する際に、通信線を引き留めるための金属線等を挟持し引き留める引留具の操作性を向上する目的に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 ケース
11 収容部
11a キャップ嵌入部
11b パイプ挿通部
12 突起部
13 ガイド溝
14 フランジ部
14a 切り込み
15 ネジ
15a ネジ穴
15b アース線挿入孔
20 チャック部材
21 チャック
21a 挟持面
21b 背面
21c 傾斜面
21d 切り込み溝
21e ばね保持部
22 チャックホルダ
22a 溝
22b 曲面
30 コイルばね
40 キャップ
40a 嵌入部
40b 挿通孔
40c 突出部
40d ばね保持溝
50 パイプ
50a 凸縁
60 リング
70 U形ワイヤ
70a フラット部
70b 球状部
100 差し込み式引留具