【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光信号を同振幅に分岐する第1乃至第3の1×2光カプラを有し、前記第1の1×2光カプラの分岐側の第1のポートに接続する第2の1×2光カプラと、前記第1の1×2光カプラの分岐側の第2のポートに接続する第3の1×2光カプラとを備えて4等分岐する光分岐部と、
前記第2の1×2光カプラの分岐側の第1のポートに接続する第1の遅延導波路と、前記第2の1×2光カプラの分岐側の第2のポートに接続する第2の遅延導波路と、前記第3の1×2光カプラの分岐側の第1のポートに接続する第3の遅延導波路と、前記第3の1×2光カプラの分岐側の第2のポートに接続する第4の遅延導波路とがこの順序で配列するように設けられ、前記第1の遅延導波路乃至前記第4の遅延導波路の遅延量が、遅延干渉部の中心波長、回折次数及び導波路の実効屈折率で決まる所定の遅延量ΔLに対して順に2ΔL、0、ΔL、及び、3ΔLになるように前記第1の遅延導波路乃至前記第3の遅延導波路に結合された同一構造のリング共振器を備え、前記第3の遅延導波路の位相シフト量が0.5πラジアンであり、且つ、前記第4の遅延導波路の位相シフト量が−0.5πラジアンである光遅延部と、
前記第1の遅延導波路及び前記第2の遅延導波路に接続されて光信号を同振幅に分岐・結合する第1の2×2光カプラと、前記第3の遅延導波路及び前記第4の遅延導波路に接続されて光信号を同振幅に分岐・結合する第2の2×2光カプラと、前記第1の2×2光カプラの他端側の第1のポートに接続する第1の光導波路と前記第2の2×2光カプラの他端側の第1のポートに接続する第3の光導波路とを接続する光信号を同振幅に分岐・結合する第3の2×2光カプラと、前記第1の2×2光カプラの他端側の第2のポートに接続する第2の光導波路と前記第2の2×2光カプラの他端側の第2のポートに接続する第4の光導波路とを接続する光信号を同振幅に分岐・結合する第4の2×2光カプラとを備え、前記第2の光導波路と前記第3の光導波路が互いに交差した交差部を有し、前記第2の光導波路及び前記第3の光導波路の前記第1の光導波路及び前記第4の光導波路に対する位相シフト量が0.25πラジアンである光結合部とを
有することを特徴とする波長合分波器。
前記第1の光導波路と前記第4の光導波路が、前記交差部の形状と同じ形状の位相ズレ調整領域を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の波長合分波器。
【背景技術】
【0002】
近年、大容量インターコネクトに向けた有望な技術として、Siフォトニクスが注目を集めている。Siフォトニクス技術の主な利点は光配線の断面積が数百nm角であるため、高密度集積が可能になることが挙げられる。また、Siチップ内で波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)により、光配線1本当りの伝送容量向上が期待されている。
【0003】
Siチップ内でWDM光信号を送受信するためには、WDM光信号を必要に応じて合波(MUX)・分波(DeMUX)させるSi細線導波路型波長合分波器が必要となる。そのSi細線導波路型波長合分波器に求められる条件としては、スペクトル平坦性、低損失性、低チャネル間偏差、低クロストーク(XT)等が挙げられる。
【0004】
これらの条件を満たす有力な候補として遅延マッハ・ツェンダ干渉計(DMZI:Delayed Mach−Zehnder Interferometer)を多段にカスケード接続した波長合分波器が報告されている。米国インテル社では、DMZI型合分波器を報告している(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
ここで、
図13を参照して、従来技術を用いて形成した1×4ChのDMZI型波長合分波器を説明する。
図13は従来例1の1×4ChのDMZI型波長合分波器の概念的平面図であり、光路長の異なる2本のアーム導波路81
1,82
1を対向させて入力端側と出力端側に光カプラ83
1、84
1を形成してDMZI80
1を形成する。光路長の長いアーム導波路82
1は、光路長の短いアーム導波路81
1に対して遅延導波路となる。
【0006】
第1ステージのDMZI80
1に対して2つのDMZI80
2,80
3をカスケード接続した2段ステージのDMZIで波長合分波器を構成する。この時、2つのDMZI80
2,80
3の光路長差は、第1のDMZI80
1の光路長差の1/2とするとともに、一方のDMZI80
3に位相を制御する位相シフタ85
3を設けて第2のDMZI80
2に対してπ/2(=λ/4)の位相差を形成する。
【0007】
図14は、従来例1の1×4ChのDMZI型波長合分波器の合分波スペクトルであり、チャネル間隔を800GHzと仮定している。図に示すように、スペクトル形状は放物線関数的になり、WDM光信号の波長ズレ或いは合分波器の温度変化が生じると、合分波器における挿入損失が増大するほか、WDM光信号間におけるクロストークXTも劣化するという問題がある。
【0008】
そこで、このような問題を解消するために、米国IBM社は、光路長差の異なるDMZIを冗長に接続し、各DMZIにおける光結合率k
iを適正化し、スペクトル平坦性を得ることを提案している(例えば、非特許文献2参照)。ここで、
図15を参照して、提案による改良型波長合分波器を説明する。
【0009】
図15は、提案による改良型の従来例2の波長合分波器の概念的平面図であり、第1ステージのDMZI80
1に対して、光路長差が第1ステージのDMZI80
1より大きく且つ互いに位相差を有する2つのDMZI80
4,80
5を直列に接続する。また、第2ステージの2つのDMZI80
2,80
3にもそれぞれ光路長差が第2ステージのDMZI80
2,80
3より大きく且つ互いに位相差を有する2つのDMZI80
6,80
7を直列に接続する。なお、DMZI80
5及びDMZI80
7には位相シフタ85
5,85
7が形成されている。ここで、各光カプラ83
1〜83
3,84
1〜84
7の光結合係数kを所定の値に設定している。
【0010】
図16は、改良型の従来例2の波長合分波器の合分波スペクトルであり、ここでもチャネル間隔を800GHzと仮定している。図示に示すように、挿入損を犠牲にしないまま、スペクトル形状を平坦化することができ、XTの低減も可能になる。
【0011】
図17は、さらなる改良型の従来例3の波長合分波器の概念的平面図であり、図の説明は省略するが、2段ステージのDMZIに対して3段目のステージのDMZIを接続するとともに、冗長構成を採用したものである。
【0012】
図18は、さらなる改良型の従来例3の波長合分波器の合分波スペクトルであり、ここでもチャネル間隔を800GHzと仮定している。図示に示すように、この場合も、挿入損を犠牲にしないまま、スペクトル形状を平坦化することができ、XTの低減も可能になる。
【0013】
表1は、実施例1乃至実施例3の波長合分波器のスペクトル平坦性とクロストーク特性を纏めたものである。スペクトル平坦性の性能指数として、−1dBと−10dBに対する透過帯域幅の比率(SF:shape factor)と、−1dBと−20dBに対する透過帯域幅の比率SFを用いる。
【表1】
【0014】
表1に示すように、従来例2の場合には、従来例1と比較して光干渉計の数が増大するものの、SFが大幅に改善し、XTも低減する。また、従来例3の場合には、XTをさらに向上させることができる。但し、スペクトル平坦性の劣化は免れず、SFとXTはトレードオフの関係にある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施の形態の波長合分波器を説明する。
図1は本発明の実施の形態の波長合分波器の概念的平面図である。本発明の波長合分波器は光分岐部1と、光遅延部3と、光結合部6とを有している。
【0025】
光分岐部1は、光信号を同振幅に分岐する第1乃至第3の1×2光カプラ2
1〜2
3をカスケード接続して形成する。即ち、第1の1×2光カプラ2
1の分岐側の第1のポート2
12に第2の1×2光カプラ2
2のポート2
21を接続し、第1の1×2光カプラ2
1の分岐側の第2のポート2
13に第3の1×2光カプラ2
3のポート2
31を接続して4等分岐とする。
【0026】
光遅延部3は、ポート2
22に接続する第1の遅延導波路4
1とポート2
23に接続する第2の遅延導波路4
2と、ポート2
32に接続する第3の遅延導波路4
3と、ポート2
33に接続する第4の遅延導波路4
4とを備えている。第1の遅延導波路4
1乃至前記第4の遅延導波路4
4の遅延量が、所定の遅延量ΔLに対して順に2ΔL、0、ΔL、及び、3ΔLになるように第1の遅延導波路4
1乃至第3の遅延導波路4
3にリング共振器(MRR: microring resonator)5
1〜5
3を結合する。各リング共振器5
1〜5
3はリング周回長が同じ同一構造とし、各遅延導波路4
1〜4
3に対する結合効率を変える。
【0027】
この時、各リング共振器5
1〜5
3は、アンチレゾナンス条件を満たすようにする。即ち、各リング共振器5
1〜5
3の中心波長が、リング共振器5
1〜5
3を含まない遅延干渉計の中心波長からπラジアン位相シフトする条件を満たすようにする。また、各リング共振器5
1〜5
3は、遅延長が増大するほど、各遅延導波路4
1〜4
3と各リング共振器5
1〜5
3との結合する割合が減少するように設定する。即ち、各リング共振器5
1〜5
3は各遅延導波路4
1〜4
3に対して位相調整器として作用する。なお、遅延導波路4
3の位相シフト
量(Δθ)は0.5πラジアンであり、遅延導波路4
4の
位相シフト量
(−Δθ)は−0.5πラジアンである。
【0028】
また、光結合部6は、2組の1対の光信号を同振幅に分岐・結合する2×2光カプラ7
1〜7
4を交差接続してBanyan構成の光結合部6とする。第1の2×2光カプラ7
1の他端側の第1のポート7
12に接続する第1の光導波路8
1を第3の2×2光カプラ7
3のポート7
31に接続する。第2の2×2光カプラ8
2の他端側の第1のポート7
23に接続する第3の光導波路8
3を第3の2×2光カプラ7
3のポート8
32に接続する。また、第1の2×2光カプラ7
1の他端側の第2のポート7
14に接続する第2の光導波路8
2を第4の2×2光カプラ7
4のポート7
41に接続する。第2の2×2光カプラ7
2の他端側の第2のポート7
24に接続する第4の光導波路8
4を第4の2×2光カプラ7
4のポート7
42に接続する。この時、第1の光導波路8
1乃至第4の光導波路8
4は、位相シフト(Δφ=−0.25πラジアン)される領域を除き、同じ光学長にする。
【0029】
シリコン基板上に絶縁膜を介して単結晶シリコンコア層を設けたSOI基板を用いて波長合分波器を形成すると、第2の光導波路8
2と第3の光導波路8
3が互いに交差した交差部9
1が形成される。このような交差部9
1は交差部のない第1の光導波路8
1及び第4の光導波路8
4に対して位相ズレをもたらす。そこで、このような位相ズレを調整するために、第1の光導波路8
1及び第4の光導波路8
4にも、交差部9
1と同じ構造の位相調整用の交差部を設けることが望ましい。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態の波長合分波器の合分波スペクトルであり、チャネル間隔を800GHzと仮定している。図から明らかなように、従来例1乃至従来例3に比べてスペクトルの平坦性に優れ、且つ、クロストークXTの少ない特性となっている。
【0031】
このような波長合分波器を用いて送信器側の光集積回路を形成するためには、波長合分波器の第3の2×2光カプラ7
3及び第4の2×2光カプラ7
4の4つのポート7
33,7
34,7
43,7
44に異なる波長で発振するレーザ素子を有する光源アレイを接続する。それと同時に、光源アレイからの各波長の信号光を変調する光変調器アレイを設ける。
【0032】
この場合の光変調器アレイは、4つのマッハ・ツェンダ型変調器を備えた光変調器アレイを光源アレイと第3の2×2光カプラ7
3及び第4の光カプラ7
4との間に挿入しても良い。或いは、光変調器アレイは、第1の1×2光カプラ2
1の結合側のポート2
11に光導波路を接続し、この光導波路の延在方向に互いにリング長の異なる4つのリング共振器を配置した縦型の光変調器アレイを用いても良い。
【実施例1】
【0033】
次に、
図3乃至
図8を参照して、本発明の実施例1の波長合分波器を説明する。
図3は、本発明の実施例1の波長合分波器の概念的平面図である。本発明の波長合分波器は光分岐部10と、光遅延部20と、光結合部30とを有している。
【0034】
図4は、本発明の実施例1の波長合分波器を構成する光導波路構造の説明図であり、ここでは、Siフォトニクス技術を用いてSOI基板上に形成するが、ここでは、一つの導波路部の断面構造で説明する。まず、
図4(a)に示すように、シリコン基板51上にSiO
2膜52を介して厚さが0.22μmの単結晶シリコン層53を設けたSOI基板を準備する。
【0035】
次いで、
図4(b)に示すように、露光プロセスによって幅が0.48μmの導波路ストライプ構造のレジストパターン54を形成し、ドライエッチングを行ってコア層55を形成してチャネル導波路構とする。次いで、
図4(c)に示すように、レジストパターン54を除去したのち、全面にSiO
2膜56を堆積することによってクラッド層とする。
【0036】
なお、
図4(d)に示すように、コア層55を形成する際に、0.05μmの高さのスラブ部57を残すことによりリブ導波路構造としても良い。このように、コア層55の両脇にスラブ部57を形成しておくと、電流注入により導波路の屈折率を変えることができる。
【0037】
再び、
図3に戻ると、光分岐部10は、光信号を同位相・同振幅で分岐する1×2光カプラ11
1の分岐側のポート12
12,12
13に同じ構造の1×2光カプラ11
2,11
3をカスケード接続して4等分岐とする。
【0038】
図5は、光分岐部を構成する1×2光カプラの概念的平面図であり、
図5(a)はMMI(multimode interference)型の1×2光カプラの概念的平面図である。長さがL
MMIで幅がW
MMIの多モード干渉領域13
1の結合側の中央部に幅がWMMI/4のポート12
11を設けるとともに、分岐側に幅がWMMI/4のポート12
12、12
13をW
MMI/4の間隔で配置する。
【0039】
図5(b)は、Y分岐型の1×2光カプラの概念的平面図であり、ポート12
11から直接2本のポート12
12,12
13をY字型に分岐したものである。1×2MMI光カプラの代わりにこのようなY分岐型1×2光カプラを用いても良い。
【0040】
再び、
図3に戻ると、光遅延部20は、1×2光カプラ11
2,11
3の各ポート12
22〜12
33に接続する4本の遅延導波路21
1〜21
4と、3本の遅延導波路21
1〜21
3と光結合するリング共振器22
1〜22
3からなる。ここで、4本の遅延導波路21
1〜21
4の遅延量が、所定の値ΔLに対して順に2ΔL、0、ΔL、及び、3ΔLになるように各リング共振器22
1〜22
3のリング周回長を同じにして、間隙(Gap)により結合効率を変えて遅延量を設定する。
【0041】
図6は、光遅延部の概念的平面図であり、遅延導波路21
1(〜21
3)それとGapを介して光結合するリング共振器22
1(〜22
3)らなる。なお、ここでは、一つの組み合わせのみ図示する。リング共振器22
1(〜22
3)は長さがL
STの直線導波路と半径がRの半円状導波路からなり、全てのリング共振器22
1〜22
3において同一の構造とする。
【0042】
この時、各リング共振器22
1〜22
3は、アンチレゾナンス条件、即ち、リング共振器22
1〜22
3の中心波長が、リング共振器22
1〜22
3を含まない遅延干渉計の中心波長からπラジアン位相シフトする条件を満たすようにする。伝播する信号光のチャネル間隔は光遅延部20の遅延長やリング共振器22
1〜22
3の周回長で制御する。
【0043】
ここで、チャネル間隔に対する光遅延部20の関係を説明する。上述のように、遅延長はΔLで定義される離散的な値をもって、上部から下部に向かってそれぞれ2ΔL、0、ΔL、3ΔLの相対関係を満足するように設定する。この場合、λ
DMZI、m及びN
Eqをそれぞれ遅延干渉部の中心波長、回折次数およびSi細線導波路の実効屈折率とすると、ΔLは下記の式(1)により定まる。
ΔL=(λ
DMZI×m)/N
Eq (1)
【0044】
また、チャネル間隔Δνは、N
GrをSi細線導波路の群屈折率とすると、下記の式(2)で定まる。
Δν=λ
DMZI2/(4N
Gr×ΔL) (2)
また、光遅延部におけるリング共振器MRRの関係は、λ
MRR−1、λ
MRR−2及びλ
MRR−3をそれぞれリング共振器22
1〜22
3の中心波長とすると下記の式(3)及び式(4)で表される。
λ
MRR−1=λ
MRR−2=λ
MRR−3=λ
DMZI−0.5Δν (3)
〜2k
MRR−1=k
MRR−2=〜1.2k
MRR−3=0.95 (4)
この式(3)に示す関係がアンチレゾナンス条件である。一方、式(4)におけるk
MRR−1、k
MRR−2及びk
MRR−3はそれぞれリング共振器22
1〜22
3における光結合率である。
【0045】
ここで、式(3)及び式(4)の関係を満たすために、遅延導波路21
1〜21
3とリング共振器22
1〜22
3の間のGap
1〜Gap
3を調整する。例えば、リング共振器22
1〜22
3において、結合導波路長L
STおよびリングの曲率半径Rをそれぞれ15.57μm及び9.08μmにすれば式(3)に示す関係を満たすことができる。また、リング共振器22
1〜22
3のGap
1〜Gap
3をそれぞれ250nm、188nm及び200nmに設定することにより、式(4)に示す関係を満たすことができる。
【0046】
また、光結合部30は、光信号を同振幅に分岐・結合する4つの2×2光カプラ31
1〜31
4を交差接続してBanyan構成の光結合部30とする。即ち、遅延導波路21
1,21
2に接続する2×2光カプラ31
1の他端側のポート32
13に接続する光導波路33
1を2×2光カプラ31
3のポート32
31に接続する。2×2光カプラ31
1の他端側のポート32
14に接続する光導波路33
2をクロス配置した2×2光カプラ31
4のポート32
41に接続する。一方、遅延導波路21
3,21
4に接続する2×2光カプラ31
2の他端側のポート32
23に接続する光導波路33
3をクロス配置した2×2光カプラ31
3のポート32
32に接続する。2×2光カプラ31
2の他端側のポート32
24に接続する光導波路33
4を2×2光カプラ31
4のポート32
42に接続する。なお、2×2光カプラ31
1〜31
4としては、
図5に示した1×2光カプラの結合側のポートを、分岐側と同じ構成の2本のポートに置き換えたものを用いれば良い。
【0047】
この時、光導波路33
2と光導波路33
3は同一平面上で交差するので交差部34
1が形成される。光導波路33
1〜33
4は位相シフト(Δφ)領域を除いて同じ光路長に設定する。この時、位相シフト量
(Δθ)及び位相シフト量(Δφ)については、下記の式(5)及び(6)の関係を満たすように設定する。
Δθ=0.5π〔radian〕 (5)
Δφ=0.25π〔radian〕 (6)
チャネル間隔Δν=800GHzの特性を想定すると、
図4(c)に示すチャネル型Si細線導波路構造を用いれば、ΔL〜11μmとなる。また、0.25π〔radian〕に相当する位相変化をもたらすための導波路長は〜85nmになるので、光導波路33
2及び光導波路33
3の長さを光導波路33
1及び光導波路33
4より85nmだけ長くすれば良い。なお、これらの位相関係は相対的に成立すれば良いため、例えば、光導波路33
1及び光導波路33
4の長さを光導波路33
2及び光導波路33
3より85nmだけ短くしても所望の関係を満たすことができる。
【0048】
図7は、本発明の実施例1の波長合分波器の合分波スペクトルの説明図であり、
図7(a)は、本発明の実施例1の波長合分波器の合分波スペクトルである。また、
図7(b)及び
図7(c)は各遅延干渉計の遅延量を実施例1と異なるように設定した場合のスペクトルである。ここでは、本発明の実施例1において2ΔL、0、ΔL及び3ΔLの関係を保つように、3つのリング共振器22
1〜22
3の光結合率k
MRR-1〜k
MRR-3を0.48,0.95,0.80に設定している。一方、
図7(b)及び
図7(c)の場合には、それぞれ、0.48,0.80,0.95と0.95,0.80,0.48のように順序を変えて設定している。
【0049】
図7(a)に示すように、本発明の実施例1の場合には、平坦性に優れ且つ低クロストークの良好な合分波スペクトル特性が得られる。一方、
図7(b)或いは
図7(c)の場合には、式(4)の条件からのズレ量が大きくなるにつれて、スペクトル平坦性およびクロストークが顕著に劣化することが分かる。
【0050】
この実施例1における特性は、
SF(−1dB/−10dB):0.87
SF(−1dB/−20dB):0.76
XT:<−33dB
であり、SFが著しく向上するとともに―30dB以下の低XTも確保できることが分かる。
【0051】
図8は、波長合分波器の単一チャネルにおける透過スペクトルおよびクロストークXTの説明図であり、ここでは、上述の従来例2及び従来例3の特性も併せて表示する。ここで、クロストークは1×4Ch波長合分波器において、残り三つのチャネル成分に対する影響を考慮した結果である。尚、チャネル間隔は800GHzと仮定している。
図8(a)は透過スペクトルの説明図であり、本発明の実施例1の波長合分波器の透過帯域におけるスペクトル平坦性が最も優れることが分かる。
【0052】
一方、光リンクにおけるパワーペナルティの観点からは、クロストークXTを低く抑えることが重要である。
図8(b)はクロストーク特性図であり、本発明の実施例1の波長合分波器においては、広波長帯域わたって低いXTが得られている。例えば、XTを−15dB以下に抑えることを想定した場合、本発明の実施例1の波長合分波器の場合、図に示すように、おおよそ5.3nmに相当する波長帯域を活用することができる。これは、チャネル間隔の80%以上に相当する。なお、
図8(a)においては、
図8(b)に示すXT=−15dBに設定した場合に対応する波長位置を縦の破線で示している。
【0053】
一方、従来例2の場合には、有効な波長帯域は、XTに律速され、おおよそ4nmになる。また、従来例3の場合には、本発明の実施例1と同様に、XTを低く抑えることができるものの、スペクトル平坦性が劣るため、有効な波長帯域は、過剰損の増大に律速され、従来例2と同様におおよそ4nmになる。これはチャネル間隔の60%程度に相当する。つまり、本発明の実施例1の波長合分波器は、チャネル間隔設定によらず、有効な動作波長帯域を20%以上改善することが可能になる。
【実施例2】
【0054】
次に、
図9を参照して、本発明の実施例2の波長合分波器を説明するが、光結合部の構成が異なる以外は上記の実施例1の波長合分波器と同じである。
図9は、本発明の実施例2の波長合分波器の概念的平面図であり、光分岐部10及び光遅延部20は上記の実施例1と全く同じである。
【0055】
光結合部30においては、光導波路33
1及び光導波路33
4にも交差部34
1と同じ構造の位相調整用の交差部34
2,34
3を設ける。即ち、必然的に形成される交差部34
1が存在すると、交差部がない光導波路33
1及び光導波路33
4に対して位相ズレが発生する。そこで、光導波路33
1及び光導波路33
4にも交差部34
1と同じ構造の交差部34
2,34
3を設けることによって、この位相ズレを解消したものである。この場合、位相ズレの調整が不要になるので、作製歩留りを向上することが可能になる。
【実施例3】
【0056】
次に、
図10を参照して、本発明の実施例3の光集積回路装置を説明する。
図10は本発明の実施例3の光集積回路装置の概念的平面図であり、上述の
図3に示した1×4Chの波長合分波器の分岐側に光変調器アレイと光源アレイを接続したものである。
【0057】
図に示すように、2×2光カプラ31
3,31
4の4つのポート32
33,32
34,32
43,32
44にマッハ・ツェンダ変調器41
1〜41
4を設けた光変調器アレイ40を接続する。また、光変調器アレイ40の前段に互いに異なる波長で発振する半導体レーザ素子43
1〜43
4を有する光源アレイ42を接続する。
【0058】
この実施例3の光集積回路装置においては、光源アレイ42からの互いに波長の異なるレーザ光をマッハ・ツェンダ変調器41
1〜41
4で変調したのち、波長合分波器で合波してポート12
11から出力する。この時、透過スペクトルの平坦性及びクロストーク特性の優れた波長合分波器により合波しているので、多少光信号の波長ズレや温度変動により波長合分波器の動作波長シフトが生じても、低損失を保持し、波長多重信号の光送信を行うことができる。
【実施例4】
【0059】
次に、
図11を参照して、本発明の実施例4の光集積回路装置を説明する。
図11は本発明の実施例4の光集積回路装置の概念的平面図であり、上述の
図3に示した1×4Chの波長合分波器の分岐側に光源アレイを接続するとともに、合波側にリング変調器を接続したものである。
【0060】
図に示すように、2×2光カプラ31
3,31
4の4つのポート32
33,32
34,32
43,32
44に互いに異なる波長で発振する半導体レーザ素子43
1〜43
4を有する光源アレイ42を接続する。一方、1×2光カプラ11
1の合波側のポート12
11に4段構造のリング変調器44
1〜44
4を接続したものである。なお、このリング変調器44
1〜44
4は、ポート12
11に接続する一本の出力導波路に沿って4つの互いに周回長の異なるリング共振器を結合させたものである。この場合も、透過スペクトルの平坦性及びクロストーク特性の優れた波長合分波器により合波しているので、多少光信号の波長ズレや温度変動により波長合分波器の動作波長シフトが生じても、低損失を保持し、波長多重信号の光送信を行うことができる。
【実施例5】
【0061】
次に、
図12を参照して、本発明の実施例5の光集積回路装置を説明する。
図12は本発明の実施例5の光集積回路装置の概念的平面図であり、上述の
図3に示した1×4Chの波長合分波器の分岐側に受光器アレイ45を接続したものである。
【0062】
図に示すように、2×2光カプラ31
3,31
4の4つのポート32
33,32
34,32
43,32
44に4つの受光器46
1〜46
4を有する受光器アレイ45を接続したものである。1×2光カプラ11
1の合波側のポート12
11から入力した信号光は、波長合分波器によって分波されて4つの受光器46
1〜46
4に入力されて電気信号に変換される。
【0063】
この場合も、透過スペクトルの平坦性及びクロストーク特性の優れた波長合分波器により分波しているので、多少光信号の波長ズレや温度変動により波長合分波器の動作波長シフトが生じても、低損失および低XTを保持することができる。その結果、受光器により検波する際、光リンクにおけるパワーペナルティを最低限に抑えることができる。
【0064】
このような、受信型の光集積回路装置と、
図10或いは
図11に示した発信型の光集積回路装置を組み合わせることによって、小型サイズの光集積青路装置により低損失性および低XTに優れた光通信システムを構築することができる。
【0065】
ここで、実施例1乃至実施例5を含む本発明の実施の形態に関して、以下の付記を付す。
(付記1)光信号を同振幅に分岐する第1乃至第3の1×2光カプラを有し、前記第1の1×2光カプラの分岐側の第1のポートに接続する第2の1×2光カプラと、前記第1の1×2光カプラの分岐側の第2のポートに接続する第3の1×2光カプラとを備えて4等分岐する光分岐部と、前記第2の
1×2光カプラの分岐側の第1のポートに接続する第1の遅延導波路と、前記第2の
1×2光カプラの分岐側の第2のポートに接続する第2の遅延導波路と、前記第3の
1×2光カプラの分岐側の第1のポートに接続する第3の遅延導波路と、前記第3の
1×2光カプラの分岐側の第2のポートに接続する第4の遅延導波路とがこの順序で配列するように設けられ、前記第1の遅延導波路乃至前記第4の遅延導波路の遅延量が、遅延干渉部の中心波長、回折次数及び導波路の実効屈折率で決まる所定の遅延量ΔLに対して順に2ΔL、0、ΔL、及び、3ΔLになるように前記第1の遅延導波路乃至前記第3の遅延導波路に結合された同一構造のリング共振器を備え、前記第3の遅延導波路の位相シフト
量が0.5πラジアンであり、且つ、前記第4の遅延導波路の
位相シフト
量が−0.5πラジアンである光遅延部と、前記第1の遅延導波路及び前記第2の遅延導波路に接続されて光信号を同振幅に分岐・結合する第1の2×2光カプラと、前記第3の遅延導波路及び前記第4の遅延導波路に接続されて光信号を同振幅に分岐・結合する第2の2×2光カプラと、前記第1の2×2光カプラの他端側の第1のポートに接続する第1の光導波路と前記第2の2×2光カプラの他端側の第1のポートに接続する第3の光導波路とを接続する光信号を同振幅に分岐・結合する第3の2×2光カプラと、前記第1の2×2光カプラの他端側の第2のポートに接続する第2の光導波路と前記第2の2×2光カプラの他端側の第2のポートに接続する第4の光導波路とを接続する光信号を同振幅に分岐・結合する第4の2×2光カプラとを備え、前記第2の光導波路と前記第3の光導波路が互いに交差した交差部を有し、前記第2の光導波路及び前記第3の光導波路の前記第1の光導波路及び前記第4の光導波路に対する位相シフト
量が0.25πラジアンである光結合部とを有することを特徴とする波長合分波器。
(付記2)前記各リング共振器は、前記波長合分波器のチャネル間隔ごとに共振ピーク
を有する周回長を備え、前記各遅延導波路に基づく干渉計の中心波長と前記各リング共振器の中心波長がπラジアン異なることを特徴とする付記1に記載の波長合分波器。
(付記3)前記各リング共振器は、遅延長が増大するほど、前記各遅延導波路と前記各リング共振器との結合する割合が減少することを特徴とする付記1または付記2に記載の波長合分波器。
(付記4)前記第1の光導波路と前記第4の光導波路が、前記交差部の形状と同じ形状の位相ズレ調整領域を有することを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1に記載の波長合分波器。
(付記5)前記光分岐部のコア層、前記光遅延部のコア層、前記光結合部のコア層が、シリコン基板上に絶縁膜を介して形成された単結晶シリコンコア層からなることを特徴とする付記1乃至付記4のいずれか1に記載の波長合分波器。
(付記6)付記1乃至付記5のいずれか1に記載の波長合分波器と、前記波長合分波器の第3の2×2光カプラ及び前記第4の2×2光カプラの他端側の4つのポートに接続され互いに異なる波長で発振する第1乃至第4のレーザ素子を有する光源アレイと、前記光源アレイからの各波長の信号光を変調する光変調器アレイとを備えたことを特徴とする光集積回路装置。
(付記7)前記光変調器アレイが、前記光源アレイと前記第3の2×2光カプラ及び前記第4の光カプラとの間に挿入されていることを特徴とする付記6に記載の光集積回路装置。
(付記8)前記光変調器アレイが、前記第1の1×2光カプラの結合側のポートに接続された光導波路と、前記光導波路の延在方向に配置された互いにリング長の異なる4つのリング共振器とからなることを特徴とする付記6に記載の光集積回路装置。
(付記9)付記1乃至付記5のいずれか1に記載の波長合分波器と、前記波長合分波器の第3の2×2光カプラ及び前記第4の2×2光カプラの他端側の4つのポートに接続された4つの受光素子を有する受光器アレイとを備えたことを特徴とする光集積回路装置。