【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、薄鋼板から成るストリップ材を提供するステップと、ストリップ材をフレキシブル圧延するステップであって、ストリップ材の長さに亘って変わる肉厚を形成するステップと、少なくとも93%の亜鉛を含有する金属製のコーティング材でもって電解コーティングを施すステップであって、電解コーティングをフレキシブル圧延後に実施するステップと、350℃より高くかつ前記コーティング材の固相線の下側の温度において熱処理するステップであって、熱処理を前記電解コーティング後に行うステップと、フレキシブル圧延されたストリップ材からブランクを形成する或いは取り出すステップと、ブランクを冷間又は熱間加工するステップとを有する、フレキシブル圧延されたストリップ材から製品を製造する方法により達成される。
さらに上記課題は、薄鋼板から成るストリップ材を提供し、ストリップ材をフレキシブル圧延するステップであって、ストリップ材の長さに亘って変わる肉厚を形成するステップと、少なくとも亜鉛及び鉄を含有する金属製のコーティング材で電解コーティングするステップと、フレキシブル圧延されたストリップ材からブランクを形成する或いは取り出すステップと、ブランクを冷間又は熱間加工するステップとを有する、フレキシブル圧延されたストリップ材から製品を製造する方法により達成される。
好ましくは、電解コーティング後に他の方法ステップとして熱処理が設定されていて、熱処理を、350℃より高くかつコーティング材の固相線の下側の温度において実施する。
好ましくは、少なくとも鉄5%、最大で鉄80%、の少なくとも一方の割合を有する鉄が含まれている。
好ましくは、析出された状態において、少なくとも部分的にδ1相、特にδ1相及びΓ相があるように、亜鉛及び鉄の割合を選択する。
好ましくは、上記温度を熱処理中に高める。
好ましくは、熱処理を誘導式に実施するか又はバッチ焼きなましにより実施し、バッチ焼きなましを、特に10〜80時間の滞留時間において行う。
好ましくは、他の方法ステップとして、電解コーティング前に、中間層、特にニッケル又はアルミニウム又はマンガンを含んだ層でもって、ストリップ材をコーティングするステップが設定されている。
好ましくは、他の方法ステップとして、電解コーティング後に、スケール保護部を提供するステップが設定されている。
好ましくは、熱間加工は、ブランクを予め冷間加工し、ブランクから予め冷間加工された構成部材の少なくとも一部分領域をオーステナイト化温度に加熱し、構成部材を熱間加工して最終輪郭を製造する、部分ステップ(間接的なプロセス)を有する。
好ましくは、熱間加工は、ブランクの少なくとも一部分領域をオーステナイト化温度へ加熱し、ブランクを熱間加工して最終輪郭を製造する、部分ステップ(直接的なプロセス)を有する。
好ましくは、コーティング材は、熱間加工の導入の時点では固体の状態にある。
さらに上記課題は、特に請求項1又は2記載の方法により製造されている、フレキシブル圧延後に金属製のコーティング層でもって電解コーティングされていて、コーティング後に熱間加工されているフレキシブル圧延された薄鋼板から成る製品により達成される。
第1の解決手段の特徴は、薄鋼板から成るストリップ材を提供するステップと、ストリップ材をフレキシブル圧延するステップであって、ストリップ材の長さに亘って変わる肉厚を形成するステップと、少なくとも93質量%の亜鉛を含有する金属製のコーティング材でもって電解コーティングを施すステップであって、電解コーティングを前記フレキシブル圧延後に実施するステップと、350℃より高くかつコーティング材の固相線の下側の温度において熱処理するステップであって、熱処理を電解コーティング後に行うステップと、フレキシブル圧延されたストリップ材からブランクを形成するステップと、ブランクを冷間又は熱間加工するステップと、を有する、フレキシブル圧延されたストリップ材から製品を製造する方法にある。
【0010】
第2の解決手段の特徴は、薄鋼板から成るストリップ材を提供し、ストリップ材をフレキシブル圧延するステップであって、ストリップ材の長さに亘って変わる肉厚を形成するステップと、少なくとも亜鉛及び鉄を含有する金属製のコーティング材で電解コーティングするステップと、フレキシブル圧延されたストリップ材からブランクを形成するステップと、ブランクを冷間又は熱間加工するステップとを有する、フレキシブル圧延されたストリップ材から製品を製造する方法にある。
【0011】
上記2つの方法の利点は、電解コーティングがフレキシブル圧延後に行われる、という点にある。これによって、提供されたコーティング層は、フレキシブル圧延されたストリップ材の長さに亘って均一な厚さを有する、ということが達成される。この点において、強力に圧延されているストリップ材の領域も、確実に腐食から保護する層厚さを有する。全体的に、製品を製造するためのプロセス期間を短縮することができ、やはり製造コストに有利に作用する少ないコーティング材しか必要とならない。
【0012】
フレキシブル圧延された製品とは、本願においては、種々異なる厚さを備えた鋼ストリップとも、方形ブランク若しくは形状切断部とも理解される。この形状切断部は、機械的といった切断又はレーザ切断により、フレキシブル圧延された鋼ストリップから得られる。フレキシブル圧延用のストリップ材として、熱延ストリップ又は冷延ストリップを使用することができる。この概念は、専門用語の意味において理解することができる。熱延ストリップとは、事前の加熱後の圧延により製造される圧延鋼最終製品(鋼ストリップ)と理解される。冷延ストリップとは、冷延された鋼ストリップ(平坦鋼)と理解される。この鋼ストリップにおいては、圧延による最後の厚さ削減は先の加熱を伴わずに行われる。
【0013】
上記両解決手段において、個々の方法ステップの間に、さらに別のステップを介在させることができると認識される。
【0014】
例えばフレキシブル圧延後に、ストリップ矯正を設定することができる。ストリップ材からのブランクの形成は、電解コーティング前又は後に実施することができる。概念的に形成とは、金属薄板ブランクがストリップ材から打抜き加工される、つまりストリップに、その後使用されない縁部が残ると理解され、また部分部材へストリップ材を簡単に切断して短くすることが、特に切断過程により実施されるとも理解される。
【0015】
第1の解決手段においては、少なくとも93質量%の亜鉛から成るコーティング層がストリップ材に析出される。この構成において、亜鉛割合は、特に95質量%,97質量%又は99質量%であってよく、また100質量%であってもよい(純粋亜鉛コーティング層)。電解コーティングのために、純粋亜鉛若しくは亜鉛から成るアノード、及び通電時に金属イオンを電解質に放出する他の合金素子が使用される。亜鉛イオン、場合によっては他の合金素子のイオンが、カソードとして接続されているストリップ材に、原子として析出されコーティング層を形成する。第1の解決手段において設定されているように、93質量%を超える高い亜鉛割合を備えたコーティング層の析出時に、後続の熱処理が、好ましくは、析出された亜鉛とストリップ材内に包含される鉄との間の合金形成をもたらすので、全体的に亜鉛・鉄コーティング層が発生する。
【0016】
第2の解決手段において、電解式の析出により予め亜鉛・鉄合金層が得られる。亜鉛及び鉄の割合は、好ましくは少なくとも1つの以下の条件に当てはまるように選択されている。つまり、合金層が少なくとも5重量%の鉄を包含するという条件、合金層が最大で80重量%の鉄を含有するという条件、合金層が少なくとも20重量%の亜鉛を含有するという条件及び/又は合金層が最大で95重量%の亜鉛を含有するという条件。亜鉛及び鉄の割合が、析出された状態において少なくとも部分的にδ1相、特にδ1相及びΓ相、又は単に金属間のΓ相があるように選択されると特に好ましい。このことは、例えば10〜30質量%の鉄割合若しくは70〜90質量%の亜鉛割合でもって達成される。この構成において、別の合金素子の付加は排除されていない。この構成において、コーティング層自体は既に亜鉛及び鉄を含有しているので、続く熱処理を回避することができる。亜鉛原子及び鉄原子は、数ナノメートルの間隔を置き、その結果、特に短い拡散経路が与えられる。しかしながら、亜鉛・鉄合金の電解式の析出時においても、上記熱処理を実施することができると理解される。短い拡散経路により、例えば誘導による極めて短い熱処理で十分である。全体的に、上記方法の態様により好ましくはプロセス時間の短縮を達成することができる。
【0017】
第2の解決手段による方法は、熱処理を伴わない第1の可能な構成によれば、電解コーティングの後又は加工若しくは成形前に実施することができる。第2の解決手段の第2の可能な構成によれば、別のステップとして電解コーティング後に、350℃より上側でかつコーティング材の溶融温度の下側(固相線)の温度領域における熱処理を設定することができる。固相線は、コーティング素材用の状態図において、単に固相がその下側にある線を示す。固相線の上側ではコーティング素材は、少なくとも部分的に溶融形状である。
【0018】
鉄原子は母材からコーティング材に拡散するので、加熱時間が進むに伴い、コーティング層における鉄割合は上昇する。コーティング層における鉄割合が増大することにより、固相線に達するか又は超過することなく、熱処理温度を上げることができる。このことは適切なプロセス実施において、最大781℃までの温度が可能である。熱処理中の温度上昇の可能性は、当然に第1の構成にも適用される。温度は、鉄割合が上昇するに伴い段階的に又は連続的に上昇することができる。
【0019】
液相線は、コーティング素材に対する状態図において、その下側に二相域又は多相域、固体−液体がある線を示す。液相線の上側においてコーティング素材は溶融形状にある。二相域の下側の境界は固相線と称呼される。固相線の温度は、合金の割合に応じた組成に基づく。純粋な亜鉛においては、固相線は419.5℃であり、亜鉛・鉄合金においては、Γ相の割合がまだ存在する場合には最大782℃である。したがって、鉄の適切な割合でもって、フレキシブル圧延されたストリップ材を圧延硬質に電解コーティングし、次いで500℃より高く最大782℃の比較的高温において、溶融相が発生することなく、熱処理を施すことが可能である。
【0020】
さらに500℃〜782℃の温度範囲における熱処理は、再結晶焼きなましを実施することに適しているので、形成された材料は、特に間接的な熱間加工に適している。したがって、通常であれば必要不可欠な、フレキシブル圧延後であってコーティング前の再結晶焼きなましを省略できる。例えば、純粋亜鉛(100%亜鉛のコーティング材)を使用した最初に述べた解決手段において、熱処理プロセスは、380℃の焼きなまし温度において開始することができ、拡散工程に基づき増大する鉄割合と共に、段階的に最大781℃の温度にまで高められる。
【0021】
2つの解決手段に、コーティング材が、例えばマンガン、クロム、シリコン又はモリブデンといったさらに別の合金素子を含むことができるということが当てはまる。合金素子の種類及び数に関係なく、本発明の特殊性は、亜鉛・鉄合金層の形成という目的のための温度調節にある。プロセス中に夫々実際に存在する組成において、亜鉛・鉄相の二相図の合金形成、若しくは2つより多い合金素子から成る層形成の時点で、コーティング材の固相線に達しないか又はコーティング材の固相線を超過しないように、各々の合金温度が選択されている。つまり合金は、固相拡散により形成される。
【0022】
熱処理時において、コーティングされる材料から金属製のコーティング層への鉄の拡散が行われる。この構成において亜鉛がコーティング層から、カソード型の防食を提供する亜鉛・鉄合金へと変化する。350℃の上側及び固相線の下側の所定の温度範囲は、拡散が比較的迅速に行われる限りは特に有利である。鉄含有により、コーティング層の亀裂傾向は減じられるので、構成部材の耐用性が向上する。
【0023】
上述のように相変化は、第1の可能な実施の形態によれば、誘導式の加熱により達成することができる。この方法の構成は、短い拡散距離が存在するので、特に亜鉛及び鉄の電解析出において適している。その結果、短い熱処理により既に所望の相変化に繋がる。第2の可能な構成によれば、熱処理はバッチ焼きなましにより実施することができる。このバッチ焼きなましは、特に純粋亜鉛の電解析出において適している。好ましくは、バッチ焼きなまし時に、10〜80時間、好ましくは30〜60時間の滞留時間が設定されるので、拡散により亜鉛・鉄合金が形成されるように十分に時間が提供される。滞留時間は、好ましくはブランク若しくはストリップ材が熱処理される全時間を表し、つまり加熱位相、保持位相、冷却位相を一緒に含むことができる。別の可能な構成は、伝導性の加熱である。この構成において他の技術的に可能な熱処理方法は、当然に排除されていない。
【0024】
別の方法ステップとして、電解コーティング前に、ストリップ材を介在層によってコーティングするようになっていてよい。介在層として、特にニッケル又はアルミニウム含有層を使用することができる。この層は、少なくとも部分的にニッケル若しくはアルミニウムを含有する層であると理解できる。このことは純粋なニッケル層又はアルミニウム層を共に含む。ニッケル層は、表面の付加的な保護を形成し、続いて提供される亜鉛を含有するコーティング層の接着性を改良する。ニッケルコーティング層は、例えば電解式又は外部電流なしの析出により形成することができる。中間層用の他の素材が、排除されていないことは明らかである。例えばマンガン又はクロムを含有するコーティング層を使用することもできる。マンガン及びクロムの両者は、立方格子を有しかつ合金特性に良好な影響を与える、鉄における良好な溶解度を有する。
【0025】
別の可能な構成によれば、ストリップ材には電解コーティング後に、スケール保護部を設けることができる。このことは特に、後の熱間加工のためにオーステナイト化が、保護ガス雰囲気においては行われない場合に有効である。スケールとは、高温において、空気又は他の酸素含有ガス内での金属素材の反応時に発生する、十分に酸化性の腐食生成物であると理解される。スケール保護部の提供は、溶射又は圧延により行うことができる。酸化に対する保護に加えて、スケール保護層のその他の利点は、表面が高い品質を有するという点にある。特に金属薄板の後のラッカ処理の前に、ショットブラストのような清浄処理は必要でない。さらにスケール保護により熱間加工中の摩擦係数及び熱吸収特性にポジティブに影響を与えることができる。スケール保護部のさらなる利点は、その下側にあるカソード型の防食保護層の接着が改良される、という点にある。さらに、オーステナイト化の枠内における温度・時間窓の拡大が、例えばスケール保護材の、その下側にある層との合金形成により可能である。スケール保護部は、固相線の下側において実施される熱処理前又は後に提供することができる。
【0026】
プロセスの適切な個所において、フレキシブル圧延されたストリップ材から、ブランク又は形状切断部を製造する。このことは、機械的な切断又はレーザ切断により実施することができる。ブランクとは、ストリップ材から切り離されている、特に方形の金属薄板と理解される。形状切断部として、ストリップ材から形成された、最終製品の形状に既に適合されている外側輪郭を有する金属薄板エレメントが理解される。この構成において、ブランクという表示は統一して、方形ブランクにも形状切断部にも使用される。ブランクの製造は、電解コーティングの前又は後に行うことができ、場合によってはスケール保護部の提供前又は後に行うことができる。
【0027】
金属薄板ブランクは、2つの解決手段に当てはまる可能な方法の構成により熱間加工される。熱間加工とは、ワークピースが加工前に熱間加工の領域における温度に加熱される加工過程と理解される。加熱は、適切な加熱装置、例えば炉において行われる。熱間加工は、第1の可能な構成によれば、ブランクの冷間加工により予め成形された構成部材を形成する部分ステップと、次いで予め冷間加工された構成部材の少なくとも部分領域を、オーステナイト化温度に加熱する部分ステップと、続いて熱間加工により製造品の最終輪郭を形成するという部分ステップとを含む、間接的なプロセスとして実施することができる。オーステナイト化温度とは、少なくとも一部分オーステナイト化(フェライト及びオーステナイトの二相域における構造条件)がある温度範囲と理解できる。さらに、例えば部分的な硬化を可能にするために、ブランクの部分領域だけをオーステナイト化することも可能である。熱間加工は、第2の可能な構成によれば、ブランクの少なくとも部分領域が、直接的にオーステナイト化温度に加熱され、次いで所望の最終輪郭へと所定のステップにおいて熱間加工されることを特徴とする直接的なプロセスとして実施することもできる。事前の(冷間)加工は、この構成においては行われない。直接的なプロセスにおいても、部分領域のオーステナイト化により、部分的な硬化を達成することができる。構成部材の部分領域の硬化が、種々異なって温度調節された工具により可能であるか、若しくは種々異なる冷却速度を可能にする複数の工具材料の使用により可能であるということが、両プロセスに当てはまる。最後の構成において、ブランク全体若しくは構成部材全体を完全にオーステナイト化することができる。
【0028】
各構成において、2つの熱間加工プロセスに当てはまる有利な方法の構成によれば、コーティング材は、熱間加工の導入時点において固体状態にある、つまり温度はコーティング材の固相線の下側の範囲にまで冷却されたということになっている。熱間加工後に、縁層における鉄含有率は80%を下回る、好ましくは60%以下、特に好ましくは30%以下であることが望ましい。
【0029】
原則的に2つの上記解決手段に有効な択一的な方法の構成によれば、金属薄板ブランクを冷間加工することもできる。冷間加工とは、この構成において、ブランクが加工前には適切に加熱されない加工過程と理解される。したがって加工は、空間温度において実施される。ブランクは、供給されたエネルギの拡散により加熱される。冷間加工は、特に軟質のボデー鋼を加工するためのプロセスとして使用される。
【0030】
さらに上記課題の解決の特徴は、フレキシブル圧延後に金属製のコーティング層でもって電解式に被覆されていて、この被覆後に熱間加工されているフレキシブル圧延された薄鋼板から成る金属薄板ブランクにある。したがって、フレキシブル圧延されたストリップ若しくはこのストリップから形成されたブランクの長さに亘る一定の層厚さという上記利点がもたらされる。ブランクを、1つ又は複数の方法ステップにより形成することができるので、ステップ及びこのステップに付随する利点に関しては、上記説明が参照される。