【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、以下の手段を提供する。
すなわち、本発明にかかるQCMセンサは、測定試料と基準試料とを測定したそれぞれの測定値の関係により前記測定試料の物理量を検出するQCMセンサにおいて、前記基準試料の測定に用いる基準用水晶振動子と、前記基準試料を内部に収容し、前記基準試料を前記基準用水晶振動子に供給する供給部を有するカートリッジと、を備えることを特徴とする。
かかる特徴により、予め注入量を適切に制御された基準試料をカードリッジによりQCMセンサ本体に注入することにより、基準試料の注入量のばらつきを抑えることができ、測定ばらつきを低減できる。また、注入のために必要なスポイトなどの器具を必要とせず、利便性が向上する。
【0007】
また、本発明にかかるQCMセンサの第2の特徴は、前記基準用水晶振動子を収容し、前記基準用水晶振動子が臨む開口部を有するハウジングを備え、前記供給部が前記開口部に装着されることで前記カートリッジが前記ハウジングに取付けられることである。
かかる特徴により、供給部と開口部を装着して基準試料を注入することにより、空気に触れにくい状態で基準試料を注入できるため、酸化などによる基準試料の状態のばらつきを抑えることができ、測定ばらつきを低減できる。
【0008】
また、本発明にかかるQCMセンサの第3の特徴は、前記カートリッジは、内部の容積を変更可能な容積変更部を備えることである。
かかる特徴により、基準試料の注入時に容積変更部によりカートリッジの容積を調節することで、基準試料を容易にQCMセンサ本体へ注入することができるとともに、注入後に容積変更部を最適な容積に調整しておくことで、カートリッジとハウジングと基準用水晶振動子に囲われた容積を基準試料で満たすことができる。ゆえに、組みあがったQCMセンサのカートリッジ側が鉛直下側に配置された場合にも、基準試料が基準用水晶振動子に十分に接触する状態を保つことができるので、安定して基準試料の測定を行うことができる。よって、精度よく比較測定を行うことができる。
【0009】
また、本発明にかかるQCMセンサの第4の特徴は、前記容積変更部は伸縮可能な蛇腹部材により構成されることである。
かかる特徴により、上述の特徴による効果に加え、容積変更部の容積の変更を安定化ができるため、カートリッジを適切に取り付ける際の利便性が向上する。
【0010】
また、本発明にかかるQCMセンサの第5の特徴は、前記容積変更部は開口部に向かって進退可能なプランジャ部材により構成されることである。
かかる特徴により、容積変更部を進退可能なプランジャ部材により構成することにより、カートリッジ製造時に基準試料をカートリッジに封入する際、プランジャを引くことによりカートリッジに基準試料を容易に封入することができ、特別な基準試料注入器具および装置などを必要とせず、製造コストが低減できる。また、測定者が基準試料をQCMセンサ本体へ注入する際、注入と同時に容積は最適となりカートリッジはその容積を維持することができるため、カートリッジに容積を変更させないための特別なロック機構などを設けることを抑制する。これにより、上述の特徴による効果を達成することができる。
【0011】
また、本発明にかかるQCMセンサの第6の特徴は、前記カートリッジ内部には前記基準試料が吸収される吸液部を備えることである。
かかる特徴により、容積変更部を減少させて吸液部から適量の基準試料をQCMセンサ本体へ注入することができるため、予めカートリッジに封入する基準試料の量を厳密に制御することなく、基準試料の注入量を容易に、かつ適切に制御することができる。これにより、カートリッジとハウジングと基準用水晶振動子とに囲われた容積を安定的に基準試料で満たすことができる。ゆえに、組みあがったQCMセンサのカートリッジ側が鉛直下側に位置したとしても、基準試料が基準用水晶振動子に十分に接触する状態を保つことができるので、安定して基準試料の測定を行うことができ、精度よく比較測定を行うことができる。
【0012】
また、本発明にかかるQCMセンサの第7の特徴は、前記供給部に設けられ前記基準試料を前記カートリッジ内部に保持する保持膜を破る凸部が、前記開口部の周囲に設けられることである。
かかる特徴により、カートリッジ内の基準試料がカートリッジに設けられた保持膜で保持されている場合でも、凸部により保持膜を破断して基準試料をカートリッジからQCMセンサ本体へ一度に注入することができる。これにより、基準試料の注入とカートリッジの取付とを同時に行えるので利便性が向上するとともに、基準試料が外気に曝されにくい状態でカートリッジからQCMセンサ本体へ注入することができるため、酸化などによる基準試料の状態のばらつきを抑えることができる。よって、測定ばらつきを低減できる。
【0013】
また、本発明にかかるQCMセンサの第8の特徴は、前記ハウジングには、外部と連通する脱気孔が形成されることである。
かかる特徴により、QCMセンサ本体内部の余分な空気を取り除いた上で、カートリッジからQCMセンサ本体へ基準試料の注入を行うことにより、基準試料と共に空気が混入することを低減することができる。よって、基準用水晶振動子上に気泡が発生することを防ぐことができるため、安定して基準試料の測定を行うことができる。ゆえに、精度よく比較測定を行うことができる。
【0014】
本発明にかかるカートリッジは、測定試料と基準試料とを測定したそれぞれの測定値の関係により前記測定試料の物理量を検出するQCMセンサ本体に前記基準試料を供給する供給部を備えるカートリッジにおいて、前記供給部に形成され、前記基準試料を前記カートリッジ内に保持する保持膜と、を備えることを特徴とする。
かかる特徴により、予め注入量を適切に制御された基準試料をカードリッジによりQCMセンサ本体に注入することができるため、基準試料の注入量のばらつきを抑えることができる。また、カートリッジごとの基準試料の状態を保存しやすくなる。よって、比較測定におけるばらつきを低減できる。
【0015】
また、本発明にかかるカートリッジの第2の特徴は、前記保持膜が伸縮性を有する膜であることである。
かかる特徴により、カートリッジ保存時に物などが保持膜に接触した場合にはその伸縮性により保持膜が破断され難いため安定して基準試料を保持できるととともに、カートリッジからQCMセンサ本体へ基準試料を注入する場合には、保持膜を凸部で破断することにより、カートリッジ取付と同時に基準試料の注入が行え、利便性が向上する。
【0016】
また、本発明にかかるカートリッジの第3の特徴は、前記保持膜は、前記カートリッジが前記QCMセンサのハウジングに取付けられる際に、前記ハウジングに形成される凸部により破れ、縮むように形成されることである。
かかる特徴により、QCMセンサ本体の開口部周囲に設けられた突出する凸部により保持膜を破断することにより、カートリッジ内部の基準試料をQCMセンサ本体へ注入させる際に、破断した保持膜が破断点より外側に収縮するため、カートリッジからQCMセンサへ基準試料をスムーズに注入することができる。また、破断した保持膜が破断点より外側に収縮して維持されるため、保持膜が破片となって基準試料とともにQCMセンサ本体へ混入することを防ぐことができる。ゆえに、基準試料の状態のばらつきを抑えることができ、測定ばらつきを低減できる。