【実施例】
【0082】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
尚、以下において、合成石英ガラス基板の略称をQZとする。また、QZ/A/B/Cと表記したときは、QZ上にA層、B層、C層がこの順に成膜された構成であることを示すものとする。
【0083】
実施例1.
実施例1では、QZ/CrON/MoSiN構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0084】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
上述した構成の位相シフトマスクブランク1を製造するため、先ず、透明基板2として、3345サイズ(330mm×450mm×5mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
【0085】
その後、透明基板2をクロムからなるスパッタターゲットと、モリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にクロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層(膜厚:10nm)と、クロム系材料層上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:120nm)を成膜し、位相シフト膜3(合計膜厚:130nm)が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
尚、クロム系材料層は、クロムターゲット付近に、アルゴン(Ar)ガスと一酸化窒素(NO)ガスを含む混合ガス(Ar:30sccm、NO:30sccm)を導入し、スパッタパワー4.0kW、透明基板2の搬送速度を400mm/分として反応性スパッタリングにより、透明基板2の主表面上に成膜した。
また、金属シリサイド系材料層は、モリブデンシリサイドターゲット付近に、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N
2)ガスとの混合ガス(Ar:30sccm、N
2:70sccm)を導入し、スパッタパワー8.0kW、透明基板2の搬送速度を400mm/分として反応性スパッタリングにより、クロム系材料層上に成膜した。尚、金属シリサイド系材料層は、所望の膜厚120nmを得るために同条件で複数回積層した。
【0086】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0087】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、日立ハイテクノロジー社製の分光光度計U−4100により透過率を測定し、レーザーテック社製のMPM−100により位相差を測定した。以下の実施例、比較例において、透過率や位相差の測定には、それぞれ同じ装置を用いた。尚、以下の実施例、比較例における透過率の値は、いずれもAir基準の値である。
位相シフト膜3の透過率、位相差の測定には、同一の基板ホールダー(図示せず)にセットされた6025サイズ(152mm×152mm)の透明基板2の主表面上に、クロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層とモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層とから構成された積層構造の位相シフト膜3(合計膜厚130nm)が成膜された位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を用いた。
その結果、
図4に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例1の透過率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、透過率変化が小さい特性を有している。実施例1の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。波長365nmにおける透過率(以下、T%(365)という場合がある)は4.41%であり、ΔT%(436−365)は3.91%であった。このため、実施例1の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
また、
図8に示すように、ΔT%(700−365)は13.35%であった。このため、実施例1の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
位相差の測定結果を
図8に示す。波長365nmにおいて付与される位相差(以下、P(365)という場合がある)は181.7度であり、ΔP(365−436)は28.7度であった。このため、実施例1の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0088】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、日立ハイテクノロジー社製の分光光度計U−4100により反射率を測定した。以下の実施例、比較例及び参考例において、反射率の測定には、同じ装置を用いた。
その結果、
図6に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例1の反射率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、反射率変化が小さい特性を有している。実施例1の具体的な反射率の測定結果を
図8に示す。波長365nm以上700nm以下の範囲における反射率(以下、R%(700−365)という場合がある)は17.9%以上22.4%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は4.5%であった。このため、実施例1の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における反射率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0089】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
上述のようにして製造された位相シフトマスクブランク1を用いて位相シフトマスク30を製造するため、先ず、位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3上に、レジスト塗布装置を用いてレジスト材料を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚1000nmのレジスト膜5を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてレジスト膜5を描画し、現像・リンス工程を経て、位相シフト膜3上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターン(図示せず)を有するレジストパターン5´を形成した。
【0090】
その後、レジストパターン5´をマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング液により位相シフト膜3のモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層をウェットエッチングした。
【0091】
その後、レジストパターン5´をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液により位相シフト膜3のクロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層をウェットエッチングして位相シフト膜パターン3´を形成した。
その後、レジストパターン5´を剥離した。
【0092】
このようにして、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0093】
上述の位相シフト膜パターンを有する位相シフトマスクの位相シフト効果について、シミュレーションを行った。シミュレーションは、開口数(NA)=0.1、コヒーレンスファクター(σ)=0.5、露光光として、i線(365nm)、h線(405nm)及びg線(436nm)を含み、i線:h線:g線=2:1:1の光強度比をもつ複合光とした。
2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした結果(光強度分布)を
図9に示す。
図9の横軸は、被転写体上のレジスト膜に転写されるコンタクトホールパターンのコンタクトホール中心からの位置(μm)であり、縦軸は、強度比(位相シフトマスクから透過される最大光量を1としたときの強度比)である。
図9の光強度分布曲線は、コンタクトホール中心において透過光の光強度がピークとなり、その中心から離れるにつれて透過光の光強度が徐々に低くなる。
図9の光強度分布曲線において、ピーク強度を示すコンタクトホール中心から±1μmの位置が、被転写体上のレジスト膜に形成される2.0μm四方のコンタクトホールパターンの境界部分(コンタクトホールパターンの直線部分)に相当する。このパターン境界部分における光強度傾斜は、パターン境界部分の近傍の光強度の差から得ることができる。
図9に示すように、実施例1の光強度分布曲線は、後述の比較例と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示している。
パターン境界部分の光強度傾斜(解像度)は、0.446であった。このため、実施例1の位相シフトマスクでは、後述の比較例と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度を向上させることが分かった。
【0094】
実施例2.
実施例2では、QZ/CrN/MoSiN構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0095】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの透明基板2を準備した。
その後、透明基板2をクロムからなるスパッタターゲットと、モリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にクロム窒化物(CrN)からなるクロム系材料層(膜厚:10nm)と、クロム系材料層上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:120nm)を成膜し、位相シフト膜3(合計膜厚:130nm)が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0096】
尚、クロム系材料層は、クロムターゲット付近に、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N
2)ガスを含む混合ガス(Ar:30sccm、N
2:70sccm)を導入し、スパッタパワー4.0kW、透明基板2の搬送速度を400mm/分として反応性スパッタリングにより、透明基板2の主表面上に成膜した。
また、金属シリサイド系材料層は、実施例1と同条件(所望の膜厚120nmを得るために同条件で複数回積層)で成膜した。
【0097】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0098】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、透過率及び位相差を測定した。
QZ/CrN/MoSiN構成の位相シフト膜3(合計膜厚130nm)を成膜した位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を透過率、位相差の測定に用いた。
その結果、
図4に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例2の透過率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、透過率変化が小さい特性を有している。実施例2の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。T%(365)は3.34%であり、ΔT%(436−365)は3.28%であった。このため、実施例2の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
また、
図8に示すように、ΔT%(700−365)は12.68%であった。このため、実施例2の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
位相差の測定結果を
図8に示す。P(365)は182.7度であり、ΔP(365−436)は27.7度であった。このため、実施例2の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0099】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、反射率を測定した。
その結果、
図6に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例2の反射率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、反射率変化が小さい特性を有している。実施例2の具体的な反射率の測定結果を
図8に示す。R%(700−365)は16.6%以上24.8%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は8.2%であった。このため、実施例2の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における反射率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0100】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
実施例1と同様の方法により、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0101】
実施例1と同様の方法により、位相シフトマスク30の位相シフト効果についてシミュレーションを行った。
2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした光強度分布曲線を
図10に示す。
図10に示すように、実施例2の光強度分布曲線は、後述の比較例と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示している。
パターン境界部分の光強度傾斜は、0.447であった。このため、実施例2の位相シフトマスクでは、後述の比較例と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度を向上させることが分かった。
【0102】
実施例3.
実施例3では、QZ/CrON/MoSiN/CrON構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0103】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの透明基板2を準備した。
【0104】
その後、透明基板2をクロムからなるスパッタターゲットと、モリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にクロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層(膜厚:5nm)と、クロム系材料層上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:120nm)と、金属シリサイド系材料層上に、クロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層(膜厚:5nm)を成膜し、位相シフト膜3(合計膜厚:130nm)が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
尚、クロム系材料層は、透明基板2の搬送速度を800mm/分とした以外は、実施例1と同条件で成膜した。また、金属シリサイド系材料層も、実施例1と同条件(所望の膜厚120nmを得るために同条件で複数回積層)で成膜した。
【0105】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0106】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、透過率及び位相差を測定した。
QZ/CrON/MoSiN/CrON構成の位相シフト膜3(合計膜厚130nm)を成膜した位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を透過率、位相差の測定に用いた。
その結果、
図5に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例3の透過率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、透過率変化が小さい特性を有している。実施例3の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。T%(365)は4.03%であり、ΔT%(436−365)は3.32%であった。このため、実施例3の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
また、
図7に示すように、ΔT%(700−365)は12.49%であった。このため、実施例3の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
位相差の測定結果を
図7に示す。P(365)は181.0度であり、ΔP(365−436)は28.3度であった。このため、実施例3の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0107】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、反射率を測定した。
その結果、
図7に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例3の反射率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、反射率変化が小さい特性を有している。実施例3の具体的な反射率の測定結果を
図8に示す。R%(700−365)は26.4%以上30.0%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は3.5%であった。このため、実施例3の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における反射率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0108】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
実施例1と同様の方法により、上述のようにして製造された位相シフトマスクブランク1を用いて位相シフトマスク30を製造するため、先ず、位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有するレジストパターン5´を形成した。
【0109】
その後、レジストパターン5´をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液により位相シフト膜3の二層目のクロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層をウェットエッチングした。
【0110】
その後、レジストパターン5´をマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング液により位相シフト膜3のモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層をウェットエッチングした。
【0111】
その後、レジストパターン5´をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液により位相シフト膜3の一層目のクロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層をウェットエッチングして位相シフト膜パターン3´を形成した。
その後、レジストパターン5´を剥離した。
【0112】
このようにして、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0113】
実施例1と同様の方法により、位相シフトマスク30の位相シフト効果についてシミュレーションを行った。
2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした光強度分布曲線を
図9に示す。
図9に示すように、実施例3の光強度分布曲線は、後述の比較例と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示している。
パターン境界部分の光強度傾斜は、0.447であった。このため、実施例3の位相シフトマスクでは、後述の比較例と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度を向上させることが分かった。
【0114】
実施例4.
実施例4では、QZ/CrN/MoSiN/CrN構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0115】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの透明基板2を準備した。
【0116】
その後、透明基板2をクロムからなるスパッタターゲットと、モリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にクロム窒化物(CrN)からなるクロム系材料層(膜厚:5nm)と、クロム系材料層上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:120nm)と、金属シリサイド系材料層上に、クロム窒化物(CrN)からなるクロム系材料層(膜厚:5nm)を成膜し、位相シフト膜3(合計膜厚:130nm)が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
尚、クロム系材料層は、透明基板2の搬送速度を800mm/分とした以外は、実施例1と同条件で成膜した。また、金属シリサイド系材料層も、実施例1と同条件(所望の膜厚120nmを得るために同条件で複数回積層)で成膜した。
【0117】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0118】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、透過率及び位相差を測定した。
QZ/CrN/MoSiN/CrN構成の位相シフト膜3(合計膜厚130nm)を成膜した位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を透過率、位相差の測定に用いた。
その結果、
図5に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例4の透過率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、透過率変化が小さい特性を有している。実施例4の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。T%(365)は3.82%であり、ΔT%(436−365)は3.33%であった。このため、実施例4の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
また、
図8に示すように、ΔT%(700−365)は14.64%であった。このため、実施例4の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
位相差の測定結果を
図7に示す。P(365)は180.2度であり、ΔP(365−436)は26.8度であった。このため、実施例4の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0119】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、反射率を測定した。
その結果、
図7に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例4の反射率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、反射率変化が小さい特性を有している。実施例4の具体的な反射率の測定結果を
図8に示す。R%(700−365)は22.4%以上27.5%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は5.0%であった。このため、実施例4の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における反射率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0120】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
実施例3と同様の方法により、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0121】
実施例1と同様の方法により、位相シフトマスク30の位相シフト効果についてシミュレーションを行った。2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした光強度分布曲線を
図10に示す。
図10に示すように、実施例4の光強度分布曲線は、後述の比較例と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示している。
パターン境界部分の光強度傾斜は、0.447であった。このため、実施例4の位相シフトマスクでは、後述の比較例と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度を向上させることが分かった。
【0122】
実施例5.
実施例5では、QZ/MoSiN/CrN構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0123】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの透明基板2を準備した。
【0124】
その後、透明基板2をモリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットと、クロムからなるスパッタリングターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:120nm)と、金属シリサイド系材料層上にクロム窒化物(CrN)からなるクロム系材料層(膜厚:10nm)を成膜し、位相シフト膜3(合計膜厚:130nm)が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
尚、金属シリサイド系材料層は、モリブデンシリサイドターゲット付近に、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N
2)ガスとの混合ガス(Ar:30sccm、N
2:70sccm)を導入し、スパッタパワー8.0kW、透明基板2の搬送速度を400mm/分として反応性スパッタリングにより、透明基板2の主表面上に成膜した。所望の膜厚120nmを得るために同条件で複数回積層した。
また、クロム系材料層は、クロムターゲット付近に、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N
2)ガスを含む混合ガス(Ar:30sccm、N
2:70sccm)を導入し、スパッタパワー4.0kW、透明基板2の搬送速度を800mm/分として反応性スパッタリングにより、金属シリサイド系材料層上に成膜した。
【0125】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0126】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、透過率及び位相差を測定した。
QZ/MoSiN/CrN構成の位相シフト膜3(合計膜厚130nm)を成膜した位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を透過率、位相差の測定に用いた。
その結果、
図4に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例5の透過率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、透過率変化が小さい特性を有している。実施例5の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。T%(365)は3.16%であり、ΔT%(436−365)は2.88%であった。このため、実施例5の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
また、
図8に示すように、ΔT%(700−365)は12.21%であった。このため、実施例5の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
位相差の測定結果を
図8に示す。P(365)は178.4度であり、ΔP(365−436)は26.6度であった。このため、実施例5の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0127】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、反射率を測定した。
その結果、
図6に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例5の反射率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、反射率変化が小さい特性を有している。実施例5の具体的な反射率の測定結果を
図8に示す。R%(700−365)は33.6%以上44.6%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は11.0%であった。このため、実施例5の位相シフト膜3は、後述の比較例1及び2と比べて、波長365nm以上700nm以下の範囲における反射率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0128】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
実施例5と同様の方法により、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0129】
実施例1と同様の方法により、位相シフトマスク30の位相シフト効果についてシミュレーションを行った。
2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした光強度分布曲線を
図10に示す。
図10に示すように、実施例5の光強度分布曲線は、後述の比較例と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示している。
パターン境界部分の光強度傾斜は、0.448であった。このため、実施例5の位相シフトマスクでは、後述の比較例と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度を向上させることが分かった。
【0130】
実施例6.
実施例6では、QZ/MoSiN/CrON構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0131】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの透明基板2を準備した。
【0132】
その後、透明基板2をモリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットと、クロムからなるスパッタリングターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:120nm)と、金属シリサイド系材料層上にクロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層(膜厚:10nm)を成膜し、位相シフト膜3(合計膜厚:130nm)が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
尚、金属シリサイド系材料層は、実施例5と同条件で成膜した。
また、クロム系材料層は、クロムターゲット付近に、アルゴン(Ar)ガスと一酸化窒素(NO)ガスを含む混合ガス(Ar:30sccm、NO:30sccm)を導入し、スパッタパワー4.0kW、透明基板2の搬送速度を800mm/分として反応性スパッタリングにより、金属シリサイド系材料層上に成膜した。
【0133】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0134】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、透過率及び位相差を測定した。
QZ/MoSiN/CrON構成の位相シフト膜3(合計膜厚130nm)を成膜した位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を透過率、位相差の測定に用いた。
その結果、
図4に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例6の透過率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、透過率変化が小さい特性を有している。実施例6の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。T%(365)は4.21%であり、ΔT%(436−365)は3.5%であった。このため、実施例6の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
また、
図8に示すように、ΔT%(700−365)は12.88%であった。このため、実施例6の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
位相差の測定結果を
図8に示す。P(365)は178.8度であり、ΔP(365−436)は28度であった。このため、実施例6の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0135】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、反射率を測定した。
その結果、
図6に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例6の反射率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、反射率変化が小さい特性を有している。実施例6の具体的な反射率の測定結果を
図8に示す。R%(700−365)は30.7%以上39.4%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は8.7%であった。このため、実施例6の位相シフト膜3は、後述の比較例1及び2と比べて、波長365nm以上700nm以下の範囲における反射率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0136】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
上述のようにして製造された位相シフトマスクブランク1を用いて位相シフトマスク30を製造するため、先ず、位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3上に、レジスト塗布装置を用いてレジスト材料を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚1000nmのレジスト膜5を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてレジスト膜5を描画し、現像・リンス工程を経て、位相シフト膜3上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターン(図示せず)を有するレジストパターン5´を形成した。
その後、レジストパターン5´をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液により位相シフト膜3のクロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層をウェットエッチングした。
その後、レジストパターン5´をマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング液により位相シフト膜3のモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層をウェットエッチングして位相シフト膜パターン3´を形成した。
その後、レジストパターン5´を剥離した。
【0137】
このようにして、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0138】
実施例1と同様の方法により、位相シフトマスク30の位相シフト効果についてシミュレーションを行った。
その結果、パターン境界部分の光強度傾斜は、実施例5と同等であった。このため、実施例6の位相シフトマスクでは、後述の比較例と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度を向上させることが分かった。
【0139】
実施例7.
実施例7では、QZ/MoSiN/CrON/MoSiN構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0140】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの透明基板2を準備した。
【0141】
その後、透明基板2をモリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットとクロムからなるスパッタターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:60nm)と、金属シリサイド系材料層上に、クロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層(膜厚:10nm)と、クロム系材料層上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:60nm)を成膜し、位相シフト膜3(合計膜厚:130nm)が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
尚、金属シリサイド系材料層は、透明基板2の搬送速度を約800mm/分とした以外は、実施例6と同条件で成膜した。また、クロム系材料層も、実施例6と同条件で成膜した。
【0142】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0143】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、透過率及び位相差を測定した。
QZ/MoSiN/CrON/MoSiN構成の位相シフト膜3(合計膜厚130nm)を成膜した位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を透過率、位相差の測定に用いた。
その結果、
図5に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例7の透過率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、透過率変化が小さい特性を有している。実施例7の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。T%(365)は4.49%であり、ΔT%(436−365)は3.92%であった。このため、実施例7の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
また、
図8に示すように、ΔT%(700−365)は23.78%であった。このため、実施例7の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
位相差の測定結果を
図8に示す。P(365)は178.8度であり、ΔP(365−436)は24度であった。このため、実施例7の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0144】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、反射率を測定した。
その結果を
図7に示す。また、実施例7の具体的な反射率の測定結果を
図8に示す。R%(700−365)は5.4%以上24.4%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は19.0%であった。
【0145】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
実施例1と同様の方法により、上述のようにして製造された位相シフトマスクブランク1を用いて位相シフトマスク30を製造するため、先ず、位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有するレジストパターン5´を形成した。
その後、レジストパターン5´をマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング液により位相シフト膜3のモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層をウェットエッチングした。
その後、レジストパターン5´をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液により位相シフト膜3の一層目のクロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層をウェットエッチングした。
その後、レジストパターン5´をマスクにして、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素との混合溶液を純水で希釈したモリブデンシリサイドエッチング液により位相シフト膜3のモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層をウェットエッチングして位相シフト膜パターン3´を形成した。
その後、レジストパターン5´を剥離した。
【0146】
このようにして、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0147】
実施例1と同様の方法により、位相シフトマスク30の位相シフト効果についてシミュレーションを行った。
2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした光強度分布曲線を
図9に示す。
図9に示すように、実施例7の光強度分布曲線は、後述の比較例と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示している。
パターン境界部分の光強度傾斜は、0.446であった。このため、実施例7の位相シフトマスクでは、後述の比較例と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度を向上させることが分かった。
【0148】
実施例8.
実施例8では、QZ/MoSiN/CrN/MoSiN構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0149】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの透明基板2を準備した。
【0150】
その後、透明基板2をモリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットとクロムからなるスパッタターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:59nm)と、金属シリサイド系材料層上に、クロム窒化物(CrN)からなるクロム系材料層(膜厚:10nm)と、クロム系材料層上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:59nm)を成膜し、位相シフト膜3(合計膜厚:128nm)が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
尚、金属シリサイド層は、透明基板2の搬送速度を約800mm/分とした以外は、実施例5と同じ条件で成膜した。また、クロム系材料層も、実施例5と同条件で成膜した。
【0151】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0152】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、透過率及び位相差を測定した。
QZ/MoSiN/CrN/MoSiN構成の位相シフト膜3(合計膜厚128nm)を成膜した位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を透過率、位相差の測定に用いた。
その結果、
図5に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例8の透過率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、透過率変化が小さい特性を有している。実施例8の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。T%(365)は3.55%であり、ΔT%(436−365)は3.65%であった。このため、実施例8の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
また、
図8に示すように、ΔT%(700−365)は23.62%であった。このため、実施例8の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
位相差の測定結果を
図8に示す。P(365)は178.3度であり、ΔP(365−436)は22度であった。このため、実施例8の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0153】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、反射率を測定した。
その結果、
図7に示す。また、実施例8の具体的な反射率の測定結果を
図8に示す。R%(700−365)は5.1%以上24.8%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は19.7%であった。
【0154】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
実施例7と同様の方法により、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0155】
実施例1と同様の方法により、位相シフトマスク30の位相シフト効果についてシミュレーションを行った。
2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした光強度分布曲線を
図10に示す。
図10に示すように、実施例8の光強度分布曲線は、後述の比較例と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示している。
パターン境界部分の光強度傾斜は、0.447であった。このため、実施例8の位相シフトマスクでは、後述の比較例と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度を向上させることが分かった。
【0156】
実施例9.
実施例9では、QZ/MoSiN構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0157】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの透明基板2を準備した。
【0158】
その後、透明基板2をモリブデンシリサイド(Mo:Si=1:4)からなるスパッタターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる金属シリサイド系材料層(膜厚:120nm)を成膜して位相シフトマスクブランク1を得た。
尚、金属シリサイド系材料層は、モリブデンシリサイドターゲット付近に、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N
2)ガスとの混合ガス(Ar:30sccm、N
2:70sccm)を導入し、スパッタパワー8.0kW、透明基板2の搬送速度を400mm/分として反応性スパッタリングにより、透明基板2上に成膜した。所望の膜厚120nmを得るために同条件で複数回積層した。
【0159】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0160】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、透過率及び位相差を測定した。
QZ/MoSiN構成の位相シフト膜3(膜厚110nm)を成膜した位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を透過率、位相差の測定に用いた。
その結果、
図4に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例9の透過率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、透過率変化が小さい特性を有している。実施例9の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。T%(365)は4.36%であり、ΔT%(436−365)は3.97%であった。このため、実施例9の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
また、
図8に示すように、ΔT%(700−365)は21.60%であった。このため、実施例9の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
位相差の測定結果を
図8に示す。P(365)は180.00度であり、ΔP(365−436)は24.00度であった。このため、実施例9の位相シフト膜3は、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0161】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、反射率を測定した。
その結果、
図6に示すように、波長200nm〜800nmにおける実施例9の反射率スペクトルは、後述の比較例1及び2と比べて、反射率変化が小さい特性を有している。実施例9の具体的な反射率の測定結果を
図8に示す。R%(700−365)は18.0%以上28.3%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は10.4%であった。このため、実施例9の位相シフト膜3は、波長365nm以上700nm以下の範囲における反射率の波長依存性が抑制された光学特性を示すことが分かった。
【0162】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
実施例1と同様の方法により、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0163】
実施例1と同様の方法により、位相シフトマスク30の位相シフト効果についてシミュレーションを行った。
2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした光強度分布曲線を
図9に示す。
図9に示すように、実施例9の光強度分布曲線は、後述の比較例と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示している。
パターン境界部分の光強度傾斜は、0.444であった。このため、実施例9の位相シフトマスクでは、後述の比較例と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度を向上させることが分かった。
【0164】
比較例1.
比較例1では、CrON構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0165】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの透明基板2を準備した。
【0166】
その後、透明基板2をクロムからなるスパッタターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にクロム酸化窒化物(CrON)からなるクロム系材料層(膜厚157nm)を成膜して位相シフトマスクブランク1を得た。
尚、クロム系材料層は、クロムターゲット付近に、アルゴン(Ar)ガスと一酸化窒素(NO)ガスを含む混合ガス(Ar:46sccm、NO:70sccm)を導入し、スパッタパワー8.0kw、透明基板2の搬送速度を約400mm/分として反応性スパッタリングにより、透明基板2上に成膜した。所望の膜厚157nmを得るために同条件で複数回積層した。
【0167】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0168】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、透過率及び位相差を測定した。
QZ/CrON構成の位相シフト膜3(膜厚157nm)を成膜した位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を透過率、位相差の測定に用いた。
その結果、
図4及び
図5に示すように、波長200nm〜800nmにおける比較例1の透過率スペクトルは、透過率変化が、波長300nmを超えた辺りから急激に大きくなり、波長700nmを超えた辺りから透過率変化が小さくなる略S字曲線を示す。比較例1の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。T%(365)は7.73%であり、ΔT%(436−365)は9.82%である。このため、比較例1の位相シフト膜3は、上述の実施例と比べて、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すとはいえないことが分かった。
また、
図8に示すように、ΔT%(700−365)は48.00%であった。このため、比較例1の位相シフト膜3は、上述の実施例と比べて、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すとはいえないことが分かった。
位相差の測定結果を
図8に示す。P(365)は181.3度であり、ΔP(365−436)は32.5度であった。このため、比較例1の位相シフト膜3は、上述の実施例と比べて、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すとはいえないことが分かった。
【0169】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、反射率を測定した。
その結果、
図6及び
図7、並びに
図8の具体的な反射率の測定結果に示すように、R%(700−365)は7.60%以上18.45%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は、10.8%となり、上述の実施例6と大差なく良好であった。
【0170】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
実施例1と同様の方法により、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0171】
実施例1と同様の方法により、位相シフトマスク30の位相シフト効果についてシミュレーションを行った。
2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした光強度分布曲線を
図10に示す。
図10に示すように、比較例1の光強度分布曲線は、上述の実施例と比べて、コンタクトホール中心の光強度のピークがそれほど鋭くなく、パターン境界部分では、光強度変化がそれほど大きくなく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が大きいことを示している。
パターン境界部分の光強度傾斜は、0.432であった。このため、比較例1の位相シフトマスクでは、上述の実施例と比べて、弱い光強度傾斜を示すことが分かった。
【0172】
比較例2.
比較例2では、CrOCN構成の位相シフトマスクブランクについて説明する。
【0173】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの透明基板2を準備した。
【0174】
その後、透明基板2をクロムからなるスパッタターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置(図示せず)に導入し、透明基板2の主表面上にクロム酸化炭化窒化物(CrOCN)からなるクロム系材料層(膜厚117nm)を成膜して位相シフトマスクブランク1を得た。
尚、クロム系材料
層は、クロムターゲット付近に、アルゴン(Ar)ガスと二酸化炭素(CO
2)ガスと窒素(N
2)ガスを含む混合ガス(Ar:46sccm、CO
2:35sccm、N
2:46sccm)を導入し、スパッタパワー8.0kw、透明基板2の搬送速度を約400mm/分として反応性スパッタリングにより、透明基板2上に成膜した。所望の膜厚117nmを得るために同条件で複数回積層した。
【0175】
このようにして、透明基板2上に、位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0176】
得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、透過率及び位相差を測定した。
QZ/CrOCN構成の位相シフト膜3(膜厚117nm)を成膜した位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を透過率、位相差の測定に用いた。
その結果、
図4及び
図5に示すように、波長200nm〜800nmにおける比較例2の透過率スペクトルは、透過率変化が、波長300nmを超えた辺りから急激に大きくなり、波長600nmを超えた辺りから透過率変化が小さくなる略S字曲線を示す。比較例2の具体的な透過率の測定結果を
図8に示す。T%(365)は5.10%であり、ΔT%(436−365)は7.58%であった。このため、比較例2の位相シフト膜3は、上述の実施例と比べて、波長365nm以上436nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すとはいえないことが分かった。
また、
図8に示すように、ΔT%(700−365)は50.63%であった。このため、比較例2の位相シフト膜3は、上述の実施例と比べて、波長365nm以上700nm以下の範囲における透過率の波長依存性が抑制された光学特性を示すとはいえないことが分かった。
位相差の測定結果を
図8に示す。P(365)は182.1度であり、ΔP(365−436)は31.0度であった。このため、比較例2の位相シフト膜3は、上述の実施例と比べて、波長365nm以上436nm以下の範囲における位相差の波長依存性が抑制された光学特性を示すとはいえないことが分かった。
【0177】
また、得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、実施例1と同様の方法により、反射率を測定した。
その結果、
図6及び
図7、並びに
図8の具体的な反射率の測定結果に示すように、R%(700−365)は11.4%以上28.7%以下であり、700nmから365nmの範囲におけるレンジ(最大値と最小値の差)は17.3%となり、上述の実施例5と大差なく良好であった。
【0178】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
実施例1と同様の方法により、透明基板2上に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0179】
実施例1と同様の方法により、位相シフトマスク30の位相シフト効果についてシミュレーションを行った。
2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした光強度分布曲線を
図9に示す。
図9に示すように、比較例2の光強度分布曲線は、上述の実施例と比べて、コンタクトホール中心の光強度のピークがそれほど鋭くなく、パターン境界部分では、光強度変化がそれほど大きくなく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が大きいことを示している。
パターン境界部分の光強度傾斜は、0.440であった。このため、比較例2の位相シフトマスクでは、上述の実施例と比べて、弱い光強度傾斜を示すことが分かった。
【0180】
尚、上述の実施例では、位相シフト膜3を構成する金属シリサイド系材料層の材料としてモリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)の例を説明したが、これらに限られない。金属シリサイド系材料層の材料としてモリブデンシリサイド酸化物(MoSiO)、モリブデンシリサイド炭化窒化物(MoSiCN)、モリブデンシリサイド酸化炭化物(MoSiOC)であってもよい。また、モリブデンシリサイド以外の金属シリサイド系材料の場合でも上述と同等の効果が得られる。
また、上述の実施例では、位相シフト膜3を構成するクロム系材料層の材料としてクロム窒化物(CrN)、クロム酸化窒化物(CrON)の例を説明したが、これらに限られない。クロム系材料層の材料としてクロム酸化物(CrO)、クロム炭化物(CrC)、クロム炭化窒化物(CrCN)、クロム酸化炭化物(CrCO)、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)であってもよい。
【0181】
また、上述の実施例では、透明基板2上に位相シフト膜3のみを形成した位相シフトマスクブランク1、及び透明基板2上に位相シフト膜パターン3´のみを形成した位相シフトマスク30の例を説明したが、これに限られない。透明基板2上に位相シフト膜3と遮光膜4とを有する位相シフトマスクブランクであってもよく、また、透明基板2上に位相シフト膜パターン3´と遮光膜パターン4´とを有する位相シフトマスクであっても上記実施例と同様の効果を奏する。
また、上述で説明した透明基板2上に位相シフト膜3、遮光膜4とを有する位相シフトマスクブランクにおいて、位相シフト膜3上に形成する遮光膜としては、遮光層、遮光層及び反射防止層の積層構造、絶縁層、遮光層及び反射防止層の積層構造としてもよい。
また、上述の実施例では、ウェットエッチングにより位相シフトマスク30を作製する製造方法について説明したが、これに限られない。位相シフトマスクブランク1を構成する材料として金属シリサイド系材料層の場合は、フッ素系ガス(例えば、CF
4ガス、CHF
3ガス、SF
6ガスや、これらのガスにO
2ガスを混合したもの)を用いたドライエッチングによりパターニングしてもよく、また、クロム系材料層の場合は、塩素系ガス(例えば、Cl
2ガスとO
2ガスとの混合ガス)によるドライエッチングによりパターニングすることができる。