(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源と、この光源からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、上記光源と上記投影レンズとの間に配置された可動シェードと、を備えてなる車両用灯具において、
上記可動シェードが、上記リフレクタからの反射光の一部を遮光して上端部にカットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成する遮光位置と、この遮光を一部解除して上記カットオフラインの上方側に該カットオフラインと交差する側端カットオフラインを有する拡張領域を備えた片ハイビーム用配光パターンを形成する遮光一部解除位置とを取り得るように構成されており、
上記光源と上記投影レンズとの間に、上記片ハイビーム用配光パターンにおける拡張領域の上端部の明るさを補強するための付加配光パターンを形成する付加光学系が配置されており、
上記付加光学系として、上記光源と上記可動シェードとの間に配置された付加レンズを備えており、
上記付加レンズが、上記光源からの直射光を上記遮光位置にある上記可動シェードへ向けて上向きに偏向透過させるように構成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような可動シェードを備えたプロジェクタ型の車両用灯具において、リフレクタの反射面形状をロービーム用配光パターンの形成に適したものとすると、片ハイビーム用配光パターンにおいては、その拡張領域をカットオフラインから上方側に大きく拡げることができず、このため拡張領域の上端部の明るさを十分に確保することができない、という問題がある。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、可動シェードを備えたプロジェクタ型の車両用灯具において、片ハイビーム用配光パターンを形成したときに、その拡張領域の上端部の明るさを十分に確保することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、光源と投影レンズとの間に所定の付加光学系が配置された構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源と、この光源からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、上記光源と上記投影レンズとの間に配置された可動シェードと、を備えてなる車両用灯具において、
上記可動シェードが、上記リフレクタからの反射光の一部を遮光して上端部にカットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成する遮光位置と、この遮光を一部解除して上記カットオフラインの上方側に該カットオフラインと交差する側端カットオフラインを有する拡張領域を備えた片ハイビーム用配光パターンを形成する遮光一部解除位置とを取り得るように構成されており、
上記光源と上記投影レンズとの間に、上記片ハイビーム用配光パターンにおける拡張領域の上端部の明るさを補強するための付加配光パターンを形成する付加光学系が配置されて
おり、その上で、
本願第1の発明は、
上記付加光学系として、上記光源と上記可動シェードとの間に配置された付加レンズを備えており、
上記付加レンズが、上記光源からの直射光を上記遮光位置にある上記可動シェードへ向けて上向きに偏向透過させるように構成されている、ことを特徴とするものであり、
本願第2の発明は、
上記付加光学系として、上記リフレクタの前方でかつ上記可動シェードの上方に位置するように配置された第1付加リフレクタと、上記光源と上記可動シェードとの間に配置された第2付加リフレクタとを備えており、
上記第1付加リフレクタが、上記光源からの直射光を上記第2付加リフレクタへ向けて反射させるように構成されており、
上記第2付加リフレクタが、上記第1付加リフレクタからの反射光を上記遮光位置にある上記可動シェードへ向けて反射させるように構成されており、
上記光源および上記第2付加リフレクタが、上記遮光位置にある上記可動シェードの上端縁よりも下方に位置するように配置されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば、発光ダイオードやレーザダイオード等の発光素子あるいは光源バルブ等が採用可能である。
【0011】
上記「可動シェード」は、遮光位置と遮光一部解除位置とを取り得るように構成されていれば、その移動の態様は特に限定されるものではない。
【0012】
上記「片ハイビーム用配光パターン」は、カットオフラインの上方側において該カットオフラインと交差する側端カットオフラインを有する拡張領域を備えた配光パターンであれば、その拡張領域の具体的な形成範囲や側端カットオフラインの傾斜角度等は特に限定されるものではない。
【0013】
上記「付加光学系」は、光源と投影レンズとの間に配置された状態で、片ハイビーム用配光パターンにおける拡張領域の上端部の明るさを補強するための付加配光パターンを形成し得るように構成されていれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用灯具は、可動シェードが遮光位置にあるとき、上端部にカットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成するとともに、可動シェードが遮光一部解除位置にあるとき、上記カットオフラインの上方側に該カットオフラインと交差する側端カットオフラインを有する拡張領域を備えた片ハイビーム用配光パターンを形成する構成となっているが、光源と投影レンズとの間には、片ハイビーム用配光パターンにおける拡張領域の上端部の明るさを補強するための付加配光パターンを形成する付加光学系が配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0015】
すなわち、リフレクタの反射面形状をロービーム用配光パターンの形成に適したものとするために、片ハイビーム用配光パターンの拡張領域をカットオフラインから上方側に大きく拡げることができないような場合であっても、付加配光パターンの追加形成によって拡張領域の上端部の明るさを補強することができる。そしてこれにより拡張領域の上端部の明るさを十分に確保することができる。
【0016】
このように本願発明によれば、可動シェードを備えたプロジェクタ型の車両用灯具において、片ハイビーム用配光パターンを形成したときに、その拡張領域の上端部の明るさを十分に確保することができる。
【0017】
上記構成において、光源が車幅方向に延びる横長の発光面を有する発光素子で構成されており、かつ、この発光素子を上方側から覆うようにしてリフレクタが配置されている場合には、拡張領域をカットオフラインから上方側に大きく拡がるように形成することが一層困難なものとなるので、本願発明の構成を採用することが特に効果的である。
【0018】
上記構成において、付加光学系として、リフレクタの前方でかつ可動シェードの上方に位置するように配置された第1付加リフレクタと、光源と可動シェードとの間に配置された第2付加リフレクタとを備えた構成とした上で、第1付加リフレクタを、光源から前方へ向かう直射光を第2付加リフレクタへ向けて反射させる構成とするとともに、第2付加リフレクタを、第1付加リフレクタからの反射光を遮光位置にある可動シェードへ向けて反射させる構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0019】
すなわち、可動シェードが遮光一部解除位置に移動したとき、第1および第2付加リフレクタで順次反射した光源からの光を投影レンズを介して前方へ照射させることができ、これにより付加配光パターンを形成することができる。しかもこのような構成を採用することにより、付加配光パターンを精度良く形成することができる。
【0020】
上記構成において、付加光学系として、光源と可動シェードとの間に配置された付加レンズを備えた構成とした上で、この付加レンズを、光源からの直射光を遮光位置にある可動シェードへ向けて上向きに偏向透過させる構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0021】
すなわち、可動シェードが遮光一部解除位置に移動したとき、付加レンズで偏向制御された光源からの光を投影レンズを介して前方へ照射させることができ、これにより付加配光パターンを形成することができる。しかもこのような構成を採用することにより、簡易な灯具構成で付加配光パターンを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0024】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図であり、
図2は、そのII−II線断面図である。
【0025】
これらの図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、投影レンズ12と、この投影レンズ12の後側焦点Fよりも後方側に配置された光源14と、この光源14を上方側から覆うように配置され、該光源14からの光を投影レンズ12へ向けて反射させるリフレクタ16と、このリフレクタ16と投影レンズ12との間に配置された可動シェード18とを備えた構成となっている。
【0026】
この車両用灯具10は、ヘッドランプ用の灯具ユニットであって、図示しないランプボディに光軸調整可能に支持されている。
【0027】
投影レンズ12は、前面が凸面で後面が平面の平凸非球面レンズであって、その光軸Axが車両前後方向に延びるように配置された状態で、レンズホルダ22を介してベース部材24に支持されている。
【0028】
光源14は、白色発光ダイオードであって、横長矩形状の発光面14aを有している。そして、この光源14は、光軸Axの下方において、その発光面14aを上向きに配置した状態でベース部材24に支持されている。
【0029】
リフレクタ16の反射面16aは、光源14の発光中心を第1焦点とする楕円面に近似した曲面で構成されており、その楕円面の離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。このリフレクタ16は、その下端面においてベース部材24に支持されている。
【0030】
可動シェード18は、いわゆるロータリー型の可動シェードとして構成されている。
【0031】
すなわち、この可動シェード18は、光軸Axの下方において車幅方向に延びる軸状部材で構成されており、その中心部を通るようにして車幅方向に延びる軸線Ax1を中心にして回動し得るようになっている。その際、この可動シェード18の外周面18aは、円筒形状を基本形状とする凹凸面で構成されている。
【0032】
この可動シェード18は、その右端部(灯具正面視では左端部)においてベース部材24に支持されるとともにその左端部においてアクチュエータ20を介してベース部材24に支持されている。このアクチュエータ20は、図示しないビーム切換えスイッチの操作が行われたときに駆動するようになっている。
【0033】
図3は、車両用灯具10の主要構成要素を示す正面図である。
【0034】
可動シェード18は、軸線Ax1回りの回動により、同図(a)に示す遮光位置と、同図(b)に示す遮光解除位置と、同図(c)に示す第1の遮光一部解除位置と、同図(d)に示す第2の遮光一部解除位置とを採り得るようになっている。
【0035】
同図(a)に示すように、可動シェード18は、遮光位置にあるときには、その外周面18aの上端縁18a1が投影レンズ12の後側焦点Fを通るようにして左右段違いで水平方向に延びた状態で配置され、これによりリフレクタ16で反射した光源14からの光の一部を遮光するようになっている。
【0036】
同図(b)に示すように、可動シェード18は、遮光解除位置にあるときには、その外周面18aの上端縁18a1が光軸Axの下方において水平方向に延びるように配置され、これによりリフレクタ16で反射した光源14からの光の遮光を解除するようになっている。
【0037】
同図(c)に示すように、可動シェード18は、第1の遮光一部解除位置にあるときには、その外周面18aの上端縁18a1が、その右端位置から光軸Axのやや左側の位置までは同図(a)と同一の形状で延びるとともに、それよりも左側では、傾斜部18a1aを介して光軸Axの下方において水平方向に延びるように配置され、これによりリフレクタ16で反射した光源14からの光の遮光を一部解除するようになっている。
【0038】
同図(d)に示すように、可動シェード18は、第2の遮光一部解除位置にあるときには、その外周面18aの上端縁18a1が、その右端位置から光軸Axの位置までは光軸Axと同じ高さで水平方向に延びるとともに、それよりも左側では、傾斜部18a1bを介して光軸Axの下方において水平方向に延びるように配置され、これによりリフレクタ16で反射した光源14からの光の遮光を、第1の遮光一部解除位置にあるときとは異なる態様で一部解除するようになっている。
【0039】
なお、
図1および2においては、車両用灯具10を可動シェード18が第2の遮光一部解除位置にある状態で示している。
【0040】
図1および2に示すように、光源14と投影レンズ12との間には、付加光学系30として、第1および第2付加リフレクタ32、34が配置されている。
【0041】
第1付加リフレクタ32は、リフレクタ16の前方でかつ可動シェード18の上方に位置するように配置されており、第2付加リフレクタ34は、光源14と可動シェード18との間に配置されている。
【0042】
そして、第1付加リフレクタ32は、その反射面32aにおいて、光源14からの直射光を第2付加リフレクタ34へ向けて反射させるように構成されており、第2付加リフレクタ34は、その反射面34aにおいて、第1付加リフレクタ32からの反射光を遮光位置にある可動シェード18へ向けて反射させるように構成されている。その際、第1付加リフレクタ32の反射面32aは、凹曲面状に形成されており、第2付加リフレクタ34の反射面34aも、凹曲面状に形成されている。
【0043】
これら第1および第2付加リフレクタ32、34は、リフレクタ16で反射した光源14からの光を遮光してしまわない位置にそれぞれ配置されている。
【0044】
第1付加リフレクタ32は、リフレクタ16と一体で形成されている。一方、第2付加リフレクタ34は、その下端部においてベース部材24に支持されている。なお、この第2付加リフレクタ34は、光源14から可動シェード18の下方を通って投影レンズ12に向かう直射光を遮光するようになっている。
【0045】
図4および5は、車両用灯具10から前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される4種類の配光パターンを透視的に示す図である。
【0046】
図4(a)に示す配光パターンは、ロービーム用配光パターンPLであって、可動シェード18が
図3(a)に示す遮光位置にあるときに形成される配光パターンである。
【0047】
このロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びるように形成されている。その際、V−V線よりも右側の対向車線側カットオフラインCL1は、水平方向に延びるように形成されており、一方、V−V線よりも左側の自車線側カットオフラインCL2は、対向車線側カットオフラインCL1の左端位置から傾斜部を介して段上がりになった後に水平方向に延びるように形成されている。
【0048】
このロービーム用配光パターンPLは、リフレクタ16の反射面16aで反射した光源14からの光によって投影レンズ12の後側焦点面上に形成された光源14の像を、投影レンズ12により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、その左右段違いのカットオフラインCL1、CL2は、可動シェード18の外周面18aの上端縁18a1の反転投影像として形成されるようになっている。
【0049】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、対向車線側カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置しており、このエルボ点Eを囲むようにして高光度領域であるホットゾーンHZLが形成されている。
【0050】
図4(b)に示す配光パターンは、ハイビーム用配光パターンPHであって、可動シェード18が
図3(b)に示す遮光解除位置にあるときに形成される配光パターンである。
【0051】
このハイビーム用配光パターンPHは、リフレクタ16で反射して投影レンズ12を透過した光源14からの光によって形成される基本配光パターンPH0と、第1および第2付加リフレクタ32、34で順次反射した光源14からの光を投影レンズ12を介して前方へ照射した光によって形成される付加配光パターンPAとを重畳させた合成配光パターンとして形成されている。
【0052】
基本配光パターンPH0は、可動シェード18によるリフレクタ14からの反射光の遮光が解除されているので、ロービーム用配光パターンPLに対して、そのカットオフラインCL1、CL2よりも上方側へ拡がる拡張領域A0が追加された配光パターンとして形成されるが、その上方側へ拡がりは比較的小さいものとなっている。これは、光源14が、その横長矩形状の発光面14aを上向きにした状態で配置されており、このため遮光位置にあるときの可動シェード18に到達するリフレクタ16からの反射光が十分に確保されないことによるものである。
【0053】
付加配光パターンPAは、H−Vを水平方向に通るH−H線よりも上方側において、V−V線を中心にして左右方向に細長く延びる横長の配光パターンとして形成されている。
【0054】
その際、この付加配光パターンPAは、その上端縁が基本配光パターンPH0の上端縁よりも上方に位置しており、その下端縁がH−H線の近くに位置している。すなわち、この付加配光パターンPAは、基本配光パターンPH0と部分的に重複するように形成されており、これによりハイビーム用配光パターンPHにおける拡張領域A0の上端部の明るさを補強するようになっている。
【0055】
しかも、この付加配光パターンPAは、その上端縁が基本配光パターンPH0の上端縁よりも上方に位置しているが、必要以上に上方までは拡がってはおらず、また、その左右拡散角度も基本配光パターンPH0の左右拡散角度よりも小さい値に抑えられている。これにより、付加配光パターンPAは、ハイビーム用配光パターンPHにおける拡張領域A0の上端部の明るさを補強するのに必要かつ十分な大きさで比較的明るい配光パターンとして形成されている。
【0056】
図5(c)に示す配光パターンは、第1の片ハイビーム用配光パターンPM1であって、可動シェード18が
図3(c)に示す第1の遮光一部解除位置にあるときに形成される配光パターンである。
【0057】
この片ハイビーム用配光パターンPM1は、カットオフラインCL1、CL2の上方側に、該カットオフラインCL1、CL2と交差する側端カットオフラインCL3を有する拡張領域A1を備えた配光パターンとして形成されている。その際、側端カットオフラインCL3は、可動シェード18の外周面18aにおける上端縁18a1の傾斜部18a1aの反転投影像として、V−V線から多少右側に離れた位置において鉛直方向に対して右側に僅かに傾斜して延びるように形成されている。
【0058】
この片ハイビーム用配光パターンPM1は、ハイビーム用配光パターンPHと同様、リフレクタ16で反射して投影レンズ12を透過した光源14からの光によって形成される基本配光パターンPM10と、第1および第2付加リフレクタ32、34で順次反射した光源14からの光を投影レンズ12を介して前方へ照射した光によって形成される付加配光パターンPB1とを重畳させた合成配光パターンとして形成されている。
【0059】
この片ハイビーム用配光パターンPM1は、ハイビーム用配光パターンPHの左上部分をカットオフラインCL1、CL2と側端カットオフラインCL3とで切り取った形状を有している。
【0060】
この片ハイビーム用配光パターンPM1においても、付加配光パターンPB1が基本配光パターンPM10と部分的に重複するように形成されることにより、基本配光パターンPM10における拡張領域A1の上端部の明るさが補強されている。
【0061】
このような片ハイビーム用配光パターンPM1を形成することにより、前走車ドライバや遠方の対向車ドライバにグレアを与えてしまうことなく、対向車線側の路肩部分を明るく照射するようになっている。
【0062】
図5(d)に示す配光パターンは、第2の片ハイビーム用配光パターンPM2であって、可動シェード18が
図3(d)に示す第2の遮光一部解除位置にあるときに形成される配光パターンである。
【0063】
この片ハイビーム用配光パターンPM2は、カットオフラインCL1、CL2の上方側に、該カットオフラインCL1、CL2と交差する側端カットオフラインCL4を有する拡張領域A2を備えた配光パターンとして形成されている。その際、側端カットオフラインCL4は、可動シェード18の外周面18aにおける上端縁18a1の傾斜部18a1bの反転投影像として、V−V線からやや左側に離れた位置において、鉛直方向に対して右側に僅かに傾斜して延びるように形成されている。
【0064】
この片ハイビーム用配光パターンPM2も、ハイビーム用配光パターンPHと同様、リフレクタ16で反射して投影レンズ12を透過した光源14からの光によって形成される基本配光パターンPM20と、第1および第2付加リフレクタ32、34で順次反射した光源14からの光を投影レンズ12を介して前方へ照射した光によって形成される付加配光パターンPB2とを重畳させた合成配光パターンとして形成されている。
【0065】
この片ハイビーム用配光パターンPM2は、ハイビーム用配光パターンPHの左上部分をカットオフラインCL2と側端カットオフラインCL4とで切り取った形状を有している。
【0066】
この片ハイビーム用配光パターンPM2においても、付加配光パターンPB2が基本配光パターンPM20と部分的に重複するように形成されることにより、基本配光パターンPM20における拡張領域A2の上端部の明るさが補強されている。
【0067】
このような片ハイビーム用配光パターンPM2を形成することにより、自車線側の路肩部分の歩行者にグレアを与えてしまうことなく、車両前方走行路を遠方まで明るく照射するようになっている。
【0068】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0069】
本実施形態に係る車両用灯具10は、可動シェード18が遮光位置にあるとき、上端部にカットオフラインCL1、CL2を有するロービーム用配光パターンPLを形成するとともに、可動シェード18が第1の(または第2の)遮光一部解除位置にあるとき、カットオフラインCL1、CL2の上方側に該カットオフラインCL1、CL2と交差する側端カットオフラインCL3(またはCL4)、を有する拡張領域A1(またはA2)を備えた片ハイビーム用配光パターンPM1(またはPM2)を形成する構成となっているが、光源14と投影レンズ12との間には、片ハイビーム用配光パターンPM1(またはPM2)における拡張領域A1(またはA2)の上端部の明るさを補強するための付加配光パターンPB1(またはPB2)を形成する付加光学系30が配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0070】
すなわち、リフレクタ16の反射面形状をロービーム用配光パターンPLの形成に適したものとするために、片ハイビーム用配光パターンPM1(またはPM2)の拡張領域A1(またはA2)をカットオフラインCL1、CL2から上方側に大きく拡げることができないような場合であっても、付加配光パターンPB1(またはPB2)の追加形成によって拡張領域A1(またはA2)の上端部の明るさを補強することができる。そしてこれにより拡張領域A1(またはA2)の上端部の明るさを十分に確保することができる。
【0071】
このように本実施形態によれば、可動シェード18を備えたプロジェクタ型の車両用灯具10において、片ハイビーム用配光パターンPM1(またはPM2)を形成したときに、その拡張領域A1(またはA2)の上端部の明るさを十分に確保することができる。
【0072】
特に本実施形態においては、光源14が車幅方向に延びる横長の発光面14aを有する発光素子で構成されるとともに、この光源14を上方側から覆うようにしてリフレクタ16が配置されており、拡張領域A1(またはA2)をカットオフラインCL1、CL2から上方側に大きく拡がるように形成することが一層困難なものとなっているので、本実施形態の構成を採用することが特に効果的である。
【0073】
また本実施形態においては、付加光学系30として、リフレクタ16の前方でかつ可動シェード18の上方に位置するように配置された第1付加リフレクタ32と、光源14と可動シェード18との間に配置された第2付加リフレクタ34とを備えた構成となっており、そして、第1付加リフレクタ32が、光源14から前方へ向かう直射光を第2付加リフレクタ34へ向けて反射させるように構成されるとともに、第2付加リフレクタ34が、第1付加リフレクタ32からの反射光を遮光位置にある可動シェード18へ向けて反射させるように構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0074】
すなわち、可動シェード18が第1の(または第2の)遮光一部解除位置に移動したとき、第1および第2付加リフレクタ32、34で順次反射した光源14からの光を投影レンズ12を介して前方へ照射させることができ、これにより付加配光パターンPB1(またはPB2)を形成することができる。しかもこのような構成を採用することにより、付加配光パターンPB1(またはPB2)を精度良く形成することができる。
【0075】
本実施形態においては、ハイビーム用配光パターンPHも選択的に形成し得る構成となっているが、このハイビーム用配光パターンPHを形成したときにも、付加配光パターンPAの追加形成によって、その拡張領域A0の上端部の明るさを補強することができる。
【0076】
上記実施形態においては、第1付加リフレクタ32がリフレクタ16と一体で形成されているものとして説明したが、リフレクタ16と別体で形成された構成とすることも可能である。
【0077】
上記実施形態においては、可動シェード18がロータリー型の可動シェードであるものとして説明したが、これ以外の種類の可動シェード(例えば回動型の可動シェードや直動型の可動シェード等)である場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0078】
上記実施形態においては、車両用灯具10が、左配光のロービーム用配光パターンPLを形成するように構成されているが、右配光のロービーム用配光パターンを形成するように構成されている場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0079】
上記実施形態においては、各片ハイビーム用配光パターンPM1、PM2として、ハイビーム用配光パターンPHの左上部分を切り取った形状の配光パターンを形成するように構成されているものとして説明したが、ハイビーム用配光パターンPHの右上部分を切り取った形状の配光パターンを形成するように構成されたものとすることも可能である。
【0080】
その際、一般にヘッドランプ用の灯具ユニットは、車両前部の左右両側に配置されるので、左右いずれか一方の灯具ユニットにおいて上記実施形態の各片ハイビーム用配光パターンPM1、PM2を形成するとともに、他方の灯具ユニットにおいて各片ハイビーム用配光パターンPM1、PM2と左右対称の付加配光パターンを形成する構成とすることも可能である。このような構成を採用した場合には、左右1対の灯具ユニットからの照射光によって形成される片ハイビーム用配光パターンを合成した配光パターンとしてハイビーム用配光パターンを形成するように構成することも可能である。
【0081】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0082】
図6は、本変形例に係る車両用灯具110を示す、
図2と同様の図である。
【0083】
同図に示すように、本変形例に係る車両用灯具110も、その基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、付加光学系130の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0084】
すなわち、本変形例においては、付加光学系130として付加レンズ136を備えた構成となっている。
【0085】
この付加レンズ136は、光軸Axの下方において光源14と可動シェード18との間に配置されており、レンズホルダ138を介してベース部材24に支持されている。
【0086】
この付加レンズ136は、前面が凸面で後面が平面の平凸レンズとして構成されている。そして、この付加レンズ136は、光源14からの直射光を遮光位置にある可動シェード18へ向けて上向きに偏向透過させるように構成されている。なお、この付加レンズ136は、リフレクタ16で反射した光源14からの光を該付加レンズ136によって遮光してしまわないようにするため、前方へ向けて上向きに傾斜した上端面を有している。
【0087】
本変形例においては、可動シェード18が第1(または第2)遮光一部解除位置に移動したとき、付加レンズ136で偏向制御された光源14からの光を投影レンズ12を介して前方へ照射させることができ、これにより付加配光パターンPB1(またはPB2)と同様の付加配光パターンを形成することができる。しかもこのような構成を採用することにより、簡易な灯具構成で付加配光パターンを形成することができる。
【0088】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0089】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。