特許第6266337号(P6266337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266337
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】半導体基板用濡れ剤及び研磨用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20180115BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20180115BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20180115BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20180115BHJP
【FI】
   C09K3/00 R
   C09K3/14 550Z
   H01L21/304 622D
   H01L21/304 622Q
   H01L21/304 622N
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550C
   H01L21/304 647Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-267255(P2013-267255)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-124231(P2015-124231A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116127
【氏名又は名称】ニッタ・ハース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(72)【発明者】
【氏名】松下 隆幸
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−078233(JP,A)
【文献】 特表2013−534262(JP,A)
【文献】 特開2005−286224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/00
C09K3/14
H01L21/304
B24B37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシエチルセルロースと水とを含む半導体基板用濡れ剤であって、
前記ヒドロキシエチルセルロースは慣性半径が56nm以上255nm以下であり、且つ接触角が10°以上32°以下である半導体基板用濡れ剤。
【請求項2】
pH9.0以上11.0以下である請求項1に記載の半導体基板用濡れ剤。
【請求項3】
ヒドロキシエチルセルロースと水と砥粒とを含む研磨用組成物であって、
前記ヒドロキシエチルセルロースは慣性半径が56nm以上255nm以下であり、且つ接触角が10°以上32°以下である研磨用組成物。
【請求項4】
pH9.0以上11.0以下である請求項3に記載の研磨用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板用濡れ剤及び研磨用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路の高度集積化などに伴い半導体装置の微細化が進み、その結果、半導体ウェーハ(以下、単にウェーハともいう。)等の半導体基板(以下、単に基板ともいう。)には高い平坦性に加え、表面の濡れ性の向上及び表面欠陥の低減についても高いレベルが要求されている。
【0003】
ウェーハの表面の濡れ性を向上させ、且つ表面欠陥を低減させるために、例えば、濡れ性を高める成分である水溶性高分子の水溶液でウェーハ表面を処理することが考えられている。
水溶性高分子を含む水溶液でウェーハを処理することで、水溶性高分子による親水性膜がウェーハ表面に付与され、濡れ性が高まることが知られている。
【0004】
このような濡れ性を高めることができる溶液は、例えば、特許文献1に記載されている。
特許文献1には、水溶性高分子としてのヒドロキシエチルセルロースを含む研磨用の濡れ剤及び研磨用組成物が記載されている。
ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子は前述のように濡れ性を高める成分であるが、その一方、水溶液中に不溶解性物質を生じやすく、かかる不溶解性物質は処理後のウェーハ表面に付着することで、ウェーハ表面のヘイズ値や、LPD(Light Point Defects)値の上昇など、表面欠陥の原因となりうる。
【0005】
特許文献1には、ヒドロキシエチルセルロースとして特定の粘度を有するものを用いることで、表面欠陥の原因となる不溶解性物質をろ過により除去しやすくすることが記載されている。
【0006】
しかし、特許文献1に記載の濡れ剤或いは研磨用組成物は、溶液中の不溶解性物質の発生を抑制するものではないため、ろ過が不十分である場合には研磨後のウェーハの表面欠陥の抑制はできない。また、ろ過できない程度に細かい不溶解性物質は除去することができないため、極めて微細な不溶解性物質がウェーハ表面に付着することは抑制できない。従って、表面欠陥の低減が不十分であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−89862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題を鑑みて、半導体基板表面の濡れ性を十分に向上させると同時に、基板の表面欠陥を十分に低減することができる半導体基板用濡れ剤及び研磨用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の慣性半径及び接触角を有するヒドロキシエチルセルロースを用いることで、濡れ性の向上及び表面欠陥の低減ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明に係る半導体基板用濡れ剤は、
ヒドロキシエチルセルロースと水とを含む半導体基板用濡れ剤であって、
前記ヒドロキシエチルセルロースは慣性半径が56nm以上255nm以下であり、且つ接触角が10°以上32°以下である。
【0011】
本発明によれば、ヒドロキシエチルセルロースが含まれているため半導体基板表面の濡れ性を向上させることができる。また、ヒドロキシエチルセルロースの慣性半径及び接触角が前記範囲であるため、水溶液において不溶解性物質の発生を抑制できる。
従って、基板表面の濡れ性を十分に向上できると同時に、不溶解性物質による基板表面の微小なキズや汚れ等の表面欠陥を十分に低減することができる。
【0012】
本発明において、半導体基板用濡れ剤はpH9.0以上11.0以下であってもよい。
【0013】
前記範囲のpHである場合には、半導体基板の濡れ性をより十分に向上できると同時に、基板表面の表面欠陥をより十分に低減することができる。
【0014】
本発明に係る研磨用組成物は、
ヒドロキシエチルセルロースと水と砥粒とを含む研磨用組成物であって、
前記ヒドロキシエチルセルロースは慣性半径が56nm以上255nm以下であり、且つ接触角が10°以上32°以下である。
【0015】
本発明において、研磨用組成物はpH9.0以上11.0以下であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、半導体基板表面の濡れ性を十分に向上させると同時に、基板の表面欠陥を十分に低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明にかかる半導体基板用濡れ剤および研磨用組成物について説明する。
本実施形態の半導体基板用濡れ剤は、ヒドロキシエチルセルロースと水とを含む半導体基板用濡れ剤であって、前記ヒドロキシエチルセルロースは慣性半径が56nm以上255nm以下であり、且つ接触角が10°以上32°以下である。
【0018】
ヒドロキシエチルセルロースは親水性高分子であって、水と混合されることで容易に水溶液となる。該ヒドロキシエチルセルロースの水溶液を、シリコンウェーハ等の半導体基板表面に接触させることで該表面に親水性を付与し、濡れ性を向上させることができる。
【0019】
本実施形態の濡れ剤に含まれるヒドロキシエチルセルロースの慣性半径は56nm以上、255nm(560オングストローム以上2550オングストローム以下)以下、好ましくは、56nm以上207nm(560オングストローム以上2070オングストローム以下)以下である。
ヒドロキシエチルセルロースの慣性半径が前記範囲であることで、濡れ性を向上させることができると同時に、水溶液中の不溶解性物質の発生を抑制することができる。
【0020】
本実施形態におけるヒドロキシエチルセルロースの慣性半径とは、水中における慣性半径をいう。
慣性半径は、静的光散乱法で測定される慣性半径をいい、具体的には、後述する実施例に示す測定方法で測定される値をいう。
【0021】
本実施形態の濡れ剤に含まれるヒドロキシエチルセルロースの接触角は10°以上32°以下、好ましくは、15°以上29°以下である。
ヒドロキシエチルセルロースの接触角が前記範囲であることで、濡れ性を向上させることができると同時に、水溶液中の不溶解性物質の発生を抑制することができる。
【0022】
本実施形態におけるヒドロキシエチルセルロースの接触角とは、ヒドロキシエチルセルロースの0.3質量%水溶液の表面粗さ(Ra)10オングストローム(1nm)のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)製ウェーハ表面に対する接触角をいい、具体的には、後述する実施例に示す測定方法で測定される値をいう。
【0023】
本実施形態におけるヒドロキシエチルセルロースは、絶対分子量が、例えば30万以上、好ましくは、30万以上400万以下、より好ましくは300万以上360万以下であるものが好適に用いられる。
絶対分子量が前記範囲である場合には、水溶液中の不溶解性物質の発生をより抑制することができる。
本実施形態のおけるヒドロキシエチルセルロースの絶対分子量とは、光散乱法を用いて測定される絶対分子量をいい、具体的には、後述する実施例に示す測定方法で測定される値をいう。
【0024】
ヒドロキシエチルセルロースの半導体基板用濡れ剤中における含有量は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1ppm以上20000ppm以下、好ましくは10ppm以上10000ppm以下である。
ヒドロキシエチルセルロースの含有量が前記範囲の場合には、不溶解性物質の発生を効果的に抑制できると同時に、基板表面の濡れ性を十分に向上させることができる。
【0025】
本実施形態の濡れ剤は、pH9.0以上11以下、好ましくは9.5以上10.5以下であってもよい。
濡れ剤のpHが前記範囲である場合には、不溶解性物質の発生をより効果的に抑制できる。
pHを前記範囲に調整するために、本実施形態の濡れ剤には公知のpH調整剤が含まれていてもよい。
前記pH調整剤としては、例えば、アンモニア;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の四級水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。
中でも、アンモニアがシリコンウェーハ等の半導体基板表面に金属不純物を生成させにくいため好ましい。
【0026】
本実施形態の濡れ剤に含まれる水としては、濡れ剤の作用を阻害しないような不純物の含有量が少ないものが好ましい。例えば、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水などが挙げられる。
【0027】
本実施形態の濡れ剤には、濡れ剤の作用を阻害しない範囲で、さらに他の成分が含まれていてもよい。
前記他の成分としては、アミノカルボン酸系キレート剤、及び有機ホスホン酸系キレート等のキレート剤、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシアルキレン重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン付加物等や、複数種のオキシアルキレンの共重合体等のノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
本実施形態の濡れ剤は、使用時の所望の濃度よりも高濃度である高濃度液として調整しておき、使用時に希釈してもよい。
かかる高濃度液として調整した場合には、濡れ剤の貯蔵、輸送に便利である。
尚、高濃度液として調整する場合には、例えば、使用時の5倍〜100倍、好ましくは20倍〜60倍に希釈する程度の濃度に調整することが挙げられる。
【0029】
本実施形態の半導体基板用濡れ剤は、研磨前、或いは研磨後の半導体ウェーハ等の半導体基板に使用することで、研磨後の基板表面の濡れ性を向上させつつ、基板の表面欠陥を十分に低減することができる。
本実施形態の半導体基盤用濡れ剤は、例えば、ウェーハの研磨後に研磨用組成物を洗い流す洗浄剤としても用いることができる。かかる洗浄剤を使用することで、研磨後の研磨用組成物の残存砥粒等を洗浄しつつウェーハの表面欠陥を低減させて、ウェーハ表面の濡れ性を向上させることができる。
【0030】
次に、本発明にかかる研磨用組成物について説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、ヒドロキシエチルセルロースと水と砥粒とを含む研磨用組成物であって、前記ヒドロキシエチルセルロースは慣性半径が56nm以上255nm以下であり、且つ接触角が10°以上32°以下である組成物である。
【0031】
本実施形態の研磨用組成物に含まれるヒドロキシエチルセルロースは、前述の半導体基板用濡れ剤に含まれるものと同様のものが挙げられる。
【0032】
一般的には水溶性高分子が研磨用組成物中に砥粒と共に含まれている場合には、組成物中の砥粒が凝集しやすくなるという問題がある。
特に、分子量が大きい水溶性高分子は砥粒に付着しやすくなり、その結果砥粒の凝集がより促進されるという問題がある。
本実施形態の研磨用組成物において、濡れ性を高める成分として、特定の範囲の慣性半径及び接触角を有するヒドロキシエチルセルロースを含むことによって、組成物中における砥粒の凝集を抑制することができる。
【0033】
ヒドロキシエチルセルロースの研磨用組成物中の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、使用時の濃度で、0.1ppm以上10000ppm以下、好ましくは10ppm以上6000ppm以下が挙げられる。
ヒドロキシエチルセルロースの含有量が前記範囲の場合には、不溶解性物質の発生を効果的に抑制できると同時に、被研磨物表面の濡れ性を十分に向上させることができる。
また、砥粒の凝集を十分に抑制することができる。
【0034】
砥粒は、半導体ウェーハ等の基板研磨に用いられる砥粒であれば特に限定されるものではないが、例えば、二酸化ケイ素、アルミナ、セリア、ジルコニアなどの公知の砥粒粒子が挙げられる。
中でも、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等の二酸化ケイ素からなる砥粒が好ましく、特には、コロイダルシリカが、砥粒に由来するキズなどの表面欠陥を生じにくいため好ましい。
【0035】
砥粒の研磨用組成物中の含有量は特に限定されるものではないが、例えば、使用時の濃度で0.01質量%以上10質量%以下、好ましくは0.1質量%以上1質量%以下が挙げられる。
砥粒の含有量が前記範囲である場合には、研磨性を維持しつつ、研磨後に基板表面に砥粒残渣が付着することを抑制できる。
【0036】
本実施形態の研磨用組成物は、本実施形態の濡れ剤と、砥粒とが含まれていてもよい。すなわち、前記のような半導体基板用濡れ剤に砥粒が添加されることで得られた研磨用組成物であってもよい。
【0037】
本実施形態の研磨用組成物には、さらに他の成分が含まれていてもよい。
前記他の成分としては、アミノカルボン酸系キレート剤、及び有機ホスホン酸系キレート剤等のキレート剤、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシアルキレン重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシアルキレン付加物等や、複数種のオキシアルキレンの共重合体等のノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0038】
本実施形態の研磨用組成物で研磨した後の半導体基板表面の濡れ性を十分に向上させ、該基板の表面欠陥を十分に低減することができる。
また、ヘイズの原因となりうる砥粒の凝集も抑制できるため、より、研磨後のヘイズを抑制することができる。
【0039】
本実施形態の研磨用組成物は、使用時の所望の濃度よりも高濃度である高濃度液として調整しておき、使用時に希釈してもよい。
かかる高濃度液として調整した場合には、研磨用組成物の貯蔵、輸送に便利である。
尚、高濃度液として調整する場合には、例えば、使用時の5倍〜100倍、好ましくは20倍〜60倍に希釈する程度の濃度に調整することが挙げられる。
【0040】
本実施形態の半導体基板用濡れ剤、或いは研磨用組成物で処理をした半導体基板は、表面の濡れ性が良好であると同時に、表面欠陥が少ない。
ヒドロキシエチルセルロースは水溶液の状態で処理対象の基板表面の濡れ性を向上させるが、一方、不溶解性物質が生じやすい。かかる不溶解性物質は、基板表面に付着してヘイズやLPD値が上昇し、基板の表面欠陥が増加する原因となる。
本実施形態の半導体基板用濡れ剤、或いは研磨用組成物は、前述のように特定の範囲の慣性半径及び接触角を有するヒドロキシエチルセルロースを含むため、不溶解性物質が生じにくく、基板の表面欠陥を低減できる。
【0041】
本実施形態の半導体基板用濡れ剤、或いは研磨用組成物で処理した後の基板表面は、例えば、コンフォーカル光学系のレーザー顕微鏡(MGICS M5640 レーザーテック社製)等の表面欠陥検査装置を用いて測定される異物、染み、傷、粒子残り等のいわゆる表面欠陥(ディフェクト)の数が、12インチの円形基板1枚当たり3000個以下、好ましくは2000個以下、より好ましくは1000個以下である。
【0042】
尚、本実施形態にかかる半導体基板用濡れ剤及び研磨用組成物は以上のとおりであるが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は前記説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(ヒドロキシエチルセルロース)
下記表1に示す異なる分子量の6種類のヒドロキシエチルセルロース(HEC1〜6)を準備した。
【0044】
各HECを0.3質量%、砥粒(ゾルゲル法で製造された二酸化珪素、粒子径:動的光散乱法で70nm)9.5質量%、アンモニア 0.5質量%(NH3としての質量%)、残水とを混合して研磨用組成物1〜6を得た。
各研磨用組成物を水で31倍に希釈して、被研磨物としてのシリコン製ウェーハ(12インチ)を下記研磨条件で研磨を行い、研磨後のウェーハ表面の濡れ性、表面欠陥の個数及びpHを以下の方法で測定した結果を表1に示した。
【0045】
《研磨条件》
研磨装置:SPP800S(岡本工作機械社製)
研磨パッド:Supreme RN−H(ニッタ・ハース社製)
定盤速度:40rpm
研磨荷重:100gf/cm2
流量:0.6L/min
被研磨物:12inch Silicon wafer
研磨時間:300sec
【0046】
《濡れ性》
濡れ性は以下の方法で評価した。
前記研磨条件で研磨したウェーハを、目視にて評価した。評価基準は、研磨直後のウェーハ全面が濡れていると確認した場合に○とした
【0047】
《表面欠陥の測定方法》
表面欠陥(Defect)は、前記研磨条件で研磨した後のウェーハをアンモニア/過酸化水素混合液で洗浄した後に、測定装置(MAGICS M5640(レーザーテック社製)を用いて測定(エッジエクスクルージョン EE:5mm,Slice level:D37mV)を行った。
【0048】
また、各HECについて、慣性半径、絶対分子量、接触角を以下の方法で測定した。
《慣性半径及び絶対分子量の測定方法》
前記各研磨用組成物1〜6を用いて、組成物中のヒドロキシエチルセルロースの慣性半径を測定した。
慣性半径の測定は、まず、ヒドロキシエチルセルロースの濃度1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/mlの各サンプルを作製し、各サンプルを、スタティック光散乱光度計 SLS−6500(大塚電子社製)を用い、測定角度60/90/120/150度で測定を行い、平方根Zimmプロット解析により慣性半径及び絶対分子量の算出を行った。
【0049】
《接触角》
各HECの0.3質量%水溶液を作製し、表面粗さ(Ra)が10オングストローム(1nm)のTEOSウェーハ上に滴下した際の接触角を自動接触角計 DM500(協和界面化学社製)を用いて接触角測定を行った。
測定方法は、0.1mlのHEC水溶液を注射器に充填し、前記TEOSウェーハに注射針からHEC水溶液を出してウェーハ表面に付着させ、液滴と針先が離れてから1秒後の状態をCCDカメラで捉えTEOS基板と液の接触角度をθ/2法を用いて算出した。
【0050】
《pH》
各組成物の液温度25℃の時のpHを、pHメーター(堀場製作所社製)を用いて測定した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1から、すべての実施例および比較例は研磨後のウェーハ表面の濡れ性は良好であったが、被慣性半径が560オングストローム(56nm)未満であり、且つ接触角が32°を超えていたHECを用いた比較例では、LPD値が高く、表面欠陥の低減が不十分であった。