(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266339
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】エタノール含有茶飲料
(51)【国際特許分類】
A23F 3/14 20060101AFI20180115BHJP
A23F 3/38 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
A23F3/14
A23F3/38
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-267500(P2013-267500)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-122968(P2015-122968A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】311002447
【氏名又は名称】キリン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391058381
【氏名又は名称】キリンビバレッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】後 藤 武 知
(72)【発明者】
【氏名】名 倉 良 英
(72)【発明者】
【氏名】今 井 靖 子
(72)【発明者】
【氏名】小 川 かおり
【審査官】
戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−165690(JP,A)
【文献】
特開2007−167003(JP,A)
【文献】
特開2008−148604(JP,A)
【文献】
特開2008−079609(JP,A)
【文献】
特開2008−212024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F 3/00−3/42
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶飲料であって、該茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下であり、該茶飲料中のエタノールの含有量が0.005〜0.1質量%であり、さらにポリフェノールを含み、かつ該茶飲料100ml当たりの総ポリフェノールの含有量がタンニン量として2.5〜55mgである、茶飲料。
【請求項2】
茶飲料が緑茶飲料または無糖茶である、請求項1に記載の茶飲料。
【請求項3】
茶飲料中のエタノールの含有量が0.01〜0.1質量%である、請求項1または2のいずれか一項に記載の茶飲料。
【請求項4】
甘味料が添加されない、請求項1〜3のいずれか一項に記載の茶飲料。
【請求項5】
容器詰めである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の茶飲料。
【請求項6】
茶飲料の製造方法であって、
茶抽出液に、該茶飲料100ml当たりカフェイン含有量が6mg以下となるようにカフェイン低減処理を行う工程、
茶飲料中のエタノールの含有量が0.005〜0.1質量%となるようにカフェイン低減処理された茶抽出液にエタノールを加える工程、および
該茶飲料100ml当たりの総ポリフェノールの含有量がタンニン量として2.5〜55mgとなるように調整する工程
を含む、製造方法。
【請求項7】
カフェイン低減処理された茶抽出液に、茶飲料中のエタノールの含有量が0.005〜0.1質量%となるようにエタノールを加え、かつ該茶飲料100ml当たりの総ポリフェノールの含有量がタンニン量として2.5〜55mgとなるように調整することを特徴とする、茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下である茶飲料の甘味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は茶飲料に関し、より詳細にはエタノールを一定量含有した茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
茶やコーヒーなどを愛飲する消費者が多いが、カフェインの中毒性や、妊婦への悪影響等があり、カフェインを低減した飲料の開発が求められている。一方で、茶飲料中のカフェイン含有量を低減させるために吸着剤を用いて処理した場合、茶原料の使用量を低減させた場合には、茶本来の甘味を損ねてしまう場合があった。
【0003】
これまでに、カフェインを含有する水溶液から他の成分に影響を与えずに選択的にカフェインを除去する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、カフェインの含有量が少なく、カテキン類を多量に含有している飲食品が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、カフェインの含有量を十分に低減させつつ、茶飲料本来の甘味を有する茶飲料については未だ求められているといえる。
【0004】
また、茶抽出物に、アルコールが含まれた飲料は知られているが(例えば、特許文献3および4参照)、飲料中のカフェインの含有量が低減された飲料については開示も示唆もなされておらず、また茶本来の甘味の改善効果についても開示も示唆もなされていない。さらに、エタノールを用いて吸着剤と接触させる方法によって得られた低カフェイン緑茶抽出物を配合した容器詰飲料が知られている(例えば、特許文献5参照)が、飲料の製造工程において留去によりエタノールが除かれることから、エタノールが含有した飲料については開示も示唆もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−142405号公報
【特許文献2】特開平10−4919号公報
【特許文献3】特開2006−149373号公報
【特許文献4】特開2007−244310号公報
【特許文献5】特開2005−176760号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は、茶飲料に含まれるカフェイン含有量が低減され、かつ茶本来の甘味を有する茶飲料を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者らは、カフェイン低減処理を行ってカフェイン含有量を低減させた茶飲料またはカフェインを含まない茶飲料に、一定量のエタノールを含有させることにより、茶本来の甘味を有する茶飲料を提供できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0008】
すなわち、本発明によれば以下の発明が提供される。
(1)茶飲料であって、該茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下であり、かつ該茶飲料中のエタノールの含有量が0.005〜0.1質量%である、茶飲料。
(2)さらにポリフェノールを含み、かつ茶飲料100ml当たりの総ポリフェノールの含有量がタンニン量として2.5〜55mgである、(1)に記載の茶飲料。
(3)茶飲料が緑茶飲料または無糖茶である、(1)または(2)に記載の茶飲料。
(4)茶飲料中のエタノールの含有量が0.01〜0.1質量%である、(1)〜(3)のいずれかに記載の茶飲料。
(5)甘味料が添加されない、(1)〜(4)のいずれかに記載の茶飲料。
(6)容器詰めである、(1)〜(5)のいずれかに記載の茶飲料。
(7)茶飲料の製造方法であって、
茶抽出液に、該茶飲料100ml当たりカフェイン含有量が6mg以下となるようにカフェイン低減処理を行う工程、および
茶飲料中のエタノールの含有量が0.005〜0.1質量%となるようにカフェイン低減処理された茶抽出液にエタノールを加える工程を含む、製造方法。
(8)カフェイン低減処理された茶抽出液に、茶飲料中のエタノールの含有量が0.005〜0.1質量%となるようにエタノールを加えることを特徴とする、茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下である茶飲料の甘味改善方法。
【0009】
本発明によれば、茶飲料に含まれるカフェイン含有量が低減され、かつ茶本来の甘味を有する茶飲料を提供できる点で有利である。また、本発明によれば、エタノールを一定量加えるとの簡易な工程により、茶飲料に含まれるカフェイン含有量が低減された茶飲料の茶本来の甘味を改善できる点で有利である。
【0010】
本発明の茶飲料は、該茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下であり、かつ茶飲料中のエタノールの含有量が0.005〜0.1質量%である茶飲料である。本発明の茶飲料を用いることにより、茶飲料に含まれるカフェイン含有量が低減され、かつ茶本来の甘味を有する茶飲料を提供することができる。また、本発明の茶飲料中のエタノールの含有量は0.005〜0.1質量%であるため、本発明の茶飲料はノンアルコール飲料である。
【0011】
本発明の茶飲料は、茶抽出液を用いて製造することができる。本発明の茶飲料を製造するために用いられる茶抽出液は、特に限定されないが、通常の茶抽出液の調製に用いられている方法を用いて製造される茶抽出液やその濃縮物を用いることができる。例えば、茶葉と水(0〜100℃)を混合接触させるか、あるいは、茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出物の濃縮物や精製物を水(0〜100℃)に混合または溶解させることにより、本発明の茶飲料を製造するために用いられる茶抽出液を得ることができる。また、上記の茶葉と水を混合接触させて得られる茶抽出液と、上記の茶エキスや茶パウダーを混合したものとを茶抽出液として本発明の茶飲料を製造するために用いてもよい。茶葉と水(0〜100℃)を混合接触させた場合には、メッシュやストレーナーなどを用いて茶葉と茶抽出液を分離することができる。
【0012】
茶葉と水(0〜100℃)を混合接触させる条件は、特に限定されないが、茶葉に対し10〜50倍の水(0〜100℃)を混合接触させることが好ましく、より好ましくは30〜40倍の水(0〜100℃)を混合接触させて抽出したものである。
【0013】
茶抽出液のpHは、茶抽出液が未調整の場合には、通常5.5〜6.0である。
【0014】
茶抽出液の調製に用いられる茶葉は、特に限定されないが、Camellia sinensisに属する茶葉を用いることができ、煎茶、玉露、抹茶、釜炒り茶、番茶、ほうじ茶等の緑茶葉のような不発酵茶に限らず、烏龍茶のような半発酵茶や、紅茶のような発酵茶、プーアル茶のような後発酵茶等も用いることができる。本発明の製造方法に用いられる茶抽出液に用いられる茶葉は、上記のような茶葉であれば特に限定されるものではないが、好ましくは緑茶、烏龍茶、または紅茶であり、より好ましくは緑茶である。本発明の茶飲料の別の好ましい態様によれば、無糖茶(より好ましくは、緑茶無糖茶)である。
【0015】
茶エキスや茶パウダーなどの茶抽出液の濃縮物や精製物としては、ポリフェノン(三井農林社製)やサンフェノン(太陽化学社製)、テアフラン(伊藤園社製)などの市販品を用いることができる。また、これらの茶濃縮物や茶精製物は、そのまま又は水で溶解もしくは希釈したものを単独で使用しても、複数の種類を混合して用いても、茶葉と水を混合接触させて得られる茶抽出液と混合して用いてもよい。
【0016】
本発明の茶飲料は、茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下であれば特に限定されるものではないが、好ましくは2mg以下、より好ましくは1mg以下であり、さらに好ましくは下記実施例の表1に記載のHPLC分析条件によりカフェイン量を定量した場合に定量限界以下となる含有量である。
【0017】
本発明の茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量を6mg以下とすることができればどのような手段を用いてもよいが、好ましくは吸着剤処理、イオン交換処理、茶原料熱水処理、または二酸化炭素超臨界抽出処理を行うことによって本発明の茶飲料中のカフェイン量を低減させることができる。また、茶原料や、茶抽出方法を変更し、茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量を6mg以下となるように調製してもよい。
【0018】
本発明の茶飲料中のカフェイン量を低減させるために用いられる吸着剤としては、特に限定されるものではないが、好ましくは白土、ゼオライト、および合成吸着剤からなる群から選択される1種または2種以上であり、白土を用いることがより好ましい。
【0019】
本発明の茶飲料の製造するために用いられる白土は、特に限定されるものではなく、例えば、酸性白土、活性白土、ベントナイト、活性ベントナイトおよびこれらの一部または全部の組合せが挙げられる。好ましくは、酸性白土および活性白土並びにこれらの組合せを用いることができ、より好ましくは酸性白土を用いることができる。
【0020】
本発明の茶飲料を製造するために用いられる酸性白土および活性白土は、共に一般的な化学成分として、SiO
2 、Al
2O
3 、Fe
2O
3 、CaO、MgOなどを有するが、本発明の茶飲料に用いる場合、SiO
2 /Al
2O
3 比は、3〜12、好ましくは3〜8が好ましい。また、酸性白土および活性白土中に、Fe
2O
3 2〜5質量%、CaO 0〜1.5質量%、MgO 1〜7質量%などを含有する組成のものが好ましい。
【0021】
本発明の茶飲料を製造するために用いられる酸性白土および活性白土の比表面積(m
2/g)は、酸性白土の場合には50m
2/g以上150m
2/g未満、活性白土の場合には70m
2/g以上300m
2/g未満であるものが好ましい。
【0022】
本発明の茶飲料を製造するために用いられる白土のうち好ましいものとしては、比表面積(m
2/g)が50以上150未満で、かつSiO
2/Al
2O
3比が3以上8未満である酸性白土や、比表面積(m
2/g)が200以上300未満で、かつ、SiO
2/Al
2O
3比が3以上11未満である活性白土が挙げられる。
【0023】
上記のような好ましい酸性白土としては、例えば、ミズカエース#20やミズカエース#200、ミズカエース#400、ミズカエース#600、ミズライト(水澤化学社製)などの市販品を用いることができる。また、上記のような好ましい活性白土としては、例えば、ガレオンアースNVZやガレオンアースV2、ガレオンアースNF2(水澤化学社製)などの市販品を用いることができる。また、Clarit100GやClarit125G、Tonsil531N(ズードケミー触媒社製)などの市販ベントナイトも白土として用いることができる。
【0024】
ゼオライトは、特に限定されるものではなく、天然であればいずれの産地のものを用いてもよく、合成であればいずれの方法で作製されたものを用いてもよい。例えば、東ソー社製のゼオラムやハイシリカゼオライト等、シナネンゼオミック社製のゼオミック等を用いることができる。
【0025】
合成吸着剤は、多孔質構造を持たせた合成高分子であれば特に限定されるものではなく、合成に用いる原料(芳香族系化合物、メタクリル酸系化合物など)や形状(粒状、粉末状など)はいずれのものを用いてもよい。例えば、三菱化学社製のダイヤイオンHP20や、セパビーズSP700等、東新化成社製のニッカゲルM等を用いることができる。
【0026】
本発明の茶飲料を製造するために用いられる吸着剤の濃度は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1質量%以上であり、好ましくは0.2〜5質量%であり、より好ましくは0.5〜4質量%であり、さらに好ましくは1〜3質量%である。
【0027】
本発明の茶飲料には、エタノールが含まれ、該茶飲料中のエタノール含有量は0.005〜0.1質量%であり、好ましくは0.01〜0.1質量%であり、より好ましくは0.01〜0.05質量%である。茶飲料の中のエタノール含有量を0.005〜0.1質量%とすることにより、茶飲料の茶本来の甘味の増強することができ、0.01〜0.1質量%とすることにより、茶本来の甘味の増強することができ、さらに劣化臭および劣化味を抑制することができ、0.01〜0.05質量%とすることにより、茶本来の甘味の増強並びに劣化臭および劣化味を抑制に加えて、エタノール様の香味を抑えることができる。
【0028】
本発明の茶飲料の好ましい態様によれば、さらにポリフェノールを含み、茶飲料100ml当たりの総ポリフェノールの含有量が、タンニン量として、2.5〜55mg、好ましくは5〜51mg、より好ましくは10〜50mgである茶飲料が提供される。本発明の茶飲料に含まれるポリフェノールは特に限定されるものではないが、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシル基をもつ成分のことを意味し、好ましくは茶由来のポリフェノールである。該茶由来のポリフェノールとは、茶葉中に含まれる各種ポリフェノール類を指し、具体的には、カテキン類やプロアントシアニジン類などの一次ポリフェノールのみならず、それらの酸化重合等による生成物であるテアシネンシン類、ウーロンテアニン、テアフラビン類、テアルビジン類等の二次ポリフェノールも包含する意味で使用される。
【0029】
本発明の茶飲料に含まれる総ポリフェノールの含有量は、タンニン量として規定することができる。「タンニン量」は、例えば、茶葉抽出液および/または茶類エキスのタンニン量を測定し、タンニン量を所望の濃度範囲となるように含有させることにより、茶飲料に含まれる総ポリフェノールの含有量を所定の範囲に調整することができる。あるいは、予めタンニン量が調整された茶葉抽出液および/または茶類エキスを所定量添加することによっても、製品茶飲料のタンニン量の調整を行うことができ、それに伴い本発明の茶飲料に含まれるポリフェノールの含有量を調整することができる。
【0030】
本発明において、「タンニン量」は、茶類のポリフェノール量を評価する際の基準である日本食品分析センター編「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」(日本食品分析センター編、中央法規、2001年7月、p.252)に記載の公定法(酒石酸鉄吸光度法)を用いて測定することができる。この測定方法においては、液中のポリフェノールと、酒石酸鉄試薬とを反応させて生じた紫色成分について、吸光度(540nm)を測定することにより、没食子酸エチルを標準物質として作成した検量線を用いて定量することができる。このようにして得られた定量した値に1.5倍したものをタンニン量とすることができる。
【0031】
本発明の茶飲料中に含まれる総ポリフェノール量の調整は、例えば、市販のポリフェノール製剤を加えることによっても行うことができる。市販のポリフェノール製剤としては、例えば、ポリフェノン70A(三井農林社製)、サンフェノン 90S(太陽化学社製)、テアフラン(伊藤園社製)などを挙げることができる。
【0032】
本発明の茶飲料は、好ましくは本発明の効果に影響しない程度の甘味料が添加された茶飲料であり、より好ましくは甘味料が添加されない茶飲料である。本発明の茶飲料は、甘味料を用いることなしに、茶本来の甘味を改善することができる点で有利である。本発明の茶飲料に添加されない甘味料としては、例えば、ショ糖、果糖、スクラロースが挙げられる。
【0033】
本発明の茶飲料は、好ましくは容器詰め茶飲料である。本発明の茶飲料に用いられる容器としては、PETボトル、缶(例えば、金属缶)、瓶(例えば、ガラス瓶)等が挙げられ、好ましくはPETボトルである。本発明の茶飲料を容器詰め茶飲料とすることにより、本発明の茶飲料に含まれるエタノールを消費者が摂取するまで一定量に保つことができ、エタノールを茶飲料に含有させることによる茶本来の甘味の増強効果を維持することができる。
【0034】
本発明の茶飲料は、例えば、茶抽出液を吸着剤(例えば、酸性白土)に接触させて茶飲料の中のカフェイン量を低減させ、さらにエタノールの所定量を加えて本発明の茶飲料を調製し、調製した茶飲料を容器詰めとして、本発明の茶飲料を製造することができる。
【0035】
本発明の茶飲料の好ましい態様によれば、緑茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下であり、緑茶飲料中のエタノールの含有量が0.01〜0.1質量%であり、さらにポリフェノールを含み、かつ緑茶飲料100ml当たりの総ポリフェノールの含有量がタンニン量として2.5〜55mgである緑茶飲料が提供される。
【0036】
本発明の別の態様によれば、茶飲料の製造方法であって、茶抽出液に、該茶飲料100ml当たりカフェイン含有量が6mg以下となるようにカフェイン低減処理を行う工程、および茶飲料中のエタノールの含有量が0.005〜0.1質量%となるようにカフェイン低減処理された茶抽出液にエタノールを加える工程を含む、製造方法が提供される。
【0037】
カフェイン低減処理は、上述のとおり、茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量を6mg以下とすることができればどのような手段を用いて処理してもよいが、好ましくは吸着剤処理、イオン交換処理、茶原料熱水処理、または二酸化炭素超臨界抽出処理を行うことによって本発明の茶飲料中のカフェイン量を低減させることができる。本発明の茶飲料の製造方法に用いられる吸着剤としては、本発明の茶飲料の製造に用いられる吸着剤と同じであってもよい。
【0038】
また、本発明の茶飲料の製造方法に用いられる茶抽出液、エタノール等は、本発明の茶飲料の製造の際に用いられるものと同じであってもよい。
【0039】
本発明の緑茶飲料の製造方法の好ましい態様によれば、該緑茶飲料100ml当たりカフェイン含有量が6mg以下となるようにカフェイン低減処理を行う工程、緑茶飲料中のエタノールの含有量が0.01〜0.1質量%となるようにカフェイン低減処理された茶抽出液にエタノールを加える工程、および緑茶飲料中の総ポリフェノールの含有量がタンニン量として2.5〜55mgとなるように調整する工程を含む製造方法が提供される。
【0040】
本発明の別の態様によれば、カフェイン低減処理された茶抽出液に、茶飲料中のエタノールの含有量が0.005〜0.1質量%となるようにエタノールを加えることを特徴とする、茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下である茶飲料の甘味改善方法が提供される。
【0041】
本発明において、甘味の改善とは、エタノールが0.005〜0.1質量%含まれない茶飲料と比較して、僅かでも茶本来の甘味が増強されていれば甘味が改善されたとされ、複数人が茶飲料を試飲した場合に、試飲者の一部が茶本来の甘味の増強効果があると判断(回答)した場合も、茶飲料の甘味が改善されたとされる。ここで、茶本来の甘味とは、旨みを伴ったさわやかな甘味である。
【0042】
本発明の茶飲料の甘味改善方法に用いられるカフェイン低減処理、茶飲料中のカフェイン含有量、茶抽出液、エタノール等は、本発明の茶飲料の製造または本発明の茶飲料の製造方法に用いられるものと同じであってもよい。
【0043】
本発明の茶飲料の甘味改善方法の好ましい態様によれば、カフェイン低減処理された茶抽出液に、緑茶飲料中のエタノールの含有量が0.01〜0.1質量%となるようにエタノールを加え、緑茶飲料中の総ポリフェノールの含有量がタンニン量として2.5〜55mgとなるように調整することを特徴とする、茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下である緑茶飲料の甘味改善方法が提供される。
【0044】
本発明の別の態様によれば、カフェイン低減処理された茶抽出液に、茶飲料中のエタノールの含有量が0.005〜0.1質量%となるようにエタノールを加えることを特徴とする、茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下である茶飲料の劣化臭および劣化味低減方法が提供される。
【0045】
本発明において、劣化臭および劣化味低減とは、エタノールが0.005〜0.1質量%含まれない茶飲料と比較して、僅かでも茶飲料の劣化臭および劣化味の低減効果があるとされ、複数人が茶飲料を試飲した場合に、試飲者の一部が茶飲料の劣化臭および劣化味の低減効果があると判断(回答)した場合も、茶飲料の劣化臭および劣化味の低減効果があると判断される。ここで、茶飲料の劣化臭とはイモ様または落ち葉様の香りであり、茶飲料の劣化味とはこもったようなエグ味である。
【0046】
本発明の茶飲料の劣化臭および劣化味低減方法に用いられるカフェイン低減処理、茶飲料中のカフェイン含有量、茶抽出液、エタノール等は、本発明の茶飲料の製造または本発明の茶飲料の製造方法に用いられるものと同じであってもよい。
【0047】
本発明の茶飲料の劣化臭および劣化味低減方法の好ましい態様によれば、カフェイン低減処理された茶抽出液に、緑茶飲料中のエタノールの含有量が0.01〜0.1質量%となるようにエタノールを加え、緑茶飲料中の総ポリフェノールの含有量がタンニン量として2.5〜55mgとなるように調整することを特徴とする、茶飲料100ml当たりのカフェイン含有量が6mg以下である緑茶飲料の劣化臭および劣化味低減方法が提供される。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0049】
(1)カフェインおよびタンニン量としての総ポリフェノール量の測定方法
茶飲料中のカフェインおよびタンニン量としての総ポリフェノールの含有量について、以下の手順に従い分析した。
茶飲料をメンブレンフィルター(アドバンテック株式会社製)(DISMIC親水性PTFE、0.45μm)にてろ過し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法にてカフェイン量およびタンニン量としての総ポリフェノールを定量した。HPLC分析条件を下記表1に示した。
【表1】
【0050】
試験例1:エタノールによる茶飲料の各種効果の検討
(1)緑茶抽出液の調製
緑茶葉100gに、70℃に加熱したイオン交換水3000gを加えて10分間抽出した。その後、抽出した抽出液から茶葉を取り除き、氷水にて10℃以下に冷却し、緑茶抽出液Aを得た。
【0051】
(2)緑茶抽出液の吸着剤処理
緑茶抽出液Aの400gと、酸性白土ミズカエース♯20(水澤化学社製)8gとを混
合し、室温(25℃)にて、10分間接触させ、遠心分離機にて固液分離後、メンブラン
フィルターにてろ過を行い、緑茶抽出液Bを得た。
【0052】
(3)緑茶抽出液へのエタノール添加
緑茶抽出液Bの200gにエタノールを容器詰め時の濃度が下記表2に記載の濃度となるように加え、さらにL−アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを加え、イオン交換水で1000gとし、UHT殺菌した後、PETボトルに充填し、緑茶飲料(比較例1および実施例1〜4)を得た。一方で、緑茶抽出液Bにエタノールを加えず、緑茶抽出液Bの200gに、L−アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを加え、イオン交換水で1000gとし、UHT殺菌した後、PETボトルに充填し、緑茶飲料(比較例2)を得た。
【0053】
(4)評価基準
得られた茶飲料について、訓練されたパネリスト6名(試飲者)によって、甘味ならびに劣化臭および劣化味について評価した。劣化臭および劣化味は、上記で得られた茶飲料を60℃で14日間保存後に評価した。評価基準は以下の通りである。
【0054】
甘味評価基準
A:試飲者全員が茶本来の甘み増強効果ありと回答
B:試飲者の一部が茶本来の甘み増強効果ありと回答
C:試飲者全員が茶本来の甘み増強効果なしと回答
【0055】
劣化臭および劣化味評価基準
A:試飲者全員が茶飲料の劣化臭および劣化味低減効果ありと回答
B:試飲者の一部が茶飲料の劣化臭および劣化味低減効果ありと回答
C:試飲者全員が茶飲料の劣化臭および劣化味低減効果なしと回答
【0056】
【表2】
【0057】
上記表2の結果から、茶飲料中のエタノール濃度が0.3質量%(比較例1)およびエタノールが全く含まれていない茶飲料(比較例2)と比較して、エタノールが0.005〜0.1質量%含まれる茶飲料(実施例1〜4)では、茶本来の甘味の増強効果があることがわかった。また、実施例1〜3(エタノール含有量:0.01〜0.1質量%)の茶飲料ではさらに劣化臭および劣化味の抑制効果があることがわかった。さらに、実施例2および3(エタノール含有量:0.01〜0.05質量%)の茶飲料では、実施例1および4の茶飲料よりもエタノール様の香味が抑えられた茶本来の甘みの増強効果と、劣化臭および劣化味の抑制効果とがあり、茶飲料として最も好ましいものであった。
【0058】
試験例2:茶飲料中の総ポリフェノール量と甘味改善効果との関係
(1)緑茶抽出液の調製
緑茶葉100gに、85℃に加熱したイオン交換水3000gを加えて6分間抽出した。その後、抽出した抽出液から茶葉を取り除き、氷水にて10℃以下に冷却し、緑茶抽出液Cを得た。
緑茶抽出液Cに、L−アスコルビン酸および炭酸水素ナトリウムを加え、UHT殺菌した後、PETボトルに充填した。該容器詰め茶飲料を、試験に供する原料Cとした。
(2)試験に供する茶飲料の調製
上記の調製した原料Cに、下記表4の通り、原料D(ポリフェノン70A(三井農林社製))、原料E(カフェイン抽出物(白鳥製薬社製))、原料F(エタノール(一級)(和光純薬工業社製))を加えて混合し、上記試験例1と同様に甘味について、訓練されたパネリスト6名によって評価した。評価結果を表4に示した。また、原料C、D、E、およびFに含まれる総ポリフェノール量、カフェイン含有量、エタノール含有量は、下記表3の通りであった。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
※実施例5:原料Cを全体質量の1/20、原料Eを全体質量の1/20000、および原料Fを全体質量の1/2000となるように調製し、さらに残量としてイオン交換水を加えて混合して調製した。
実施例6:原料Cを全体質量の1/10、原料Eを全体質量の1/23000、および原料Fを全体質量の1/2000となるように調製し、さらに残量としてイオン交換水を加えて混合して調製した。
実施例7:原料Cを全体質量の1/2および原料Fを全体質量の1/2000となるように調製し、さらに残量としてイオン交換水を加えて混合して調製した。
実施例8:原料Cを全体質量の1/2、原料Dを全体質量の1/3000、原料Fを全体質量の1/2000となるように調製し、さらに残量としてイオン交換水を加えて混合して調製した。
実施例9:原料Cを全体質量の1/2、原料Dを全体質量の1/2000、原料Fを全体質量の1/2000となるように調製し、さらに残量としてイオン交換水を加えて混合して調製した。
【0061】
上記表4の結果から、茶飲料中の総ポリフェノール含有量が、タンニン量として実施例6〜8(4.8〜50.7mg/100ml)である場合には、他の実施例と比較して、カフェイン含有量やエタノール含有量が同程度であるにも関わらず、茶本来の甘味をより改善できることがわかった。