(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の誘導充電回路がコイルを備え、かつ前記ハンドピースが、該ハンドピースと植え込み装置との間で達成される電荷結合の状態を示す表示器を備え、前記植え込み装置に整合するように該ハンドピースを外部から位置合わせすることを容易にする、請求項2記載の体液管理システム。
前記第1の制御装置が、前記監視/制御ソフトウエアによって伝達される動作パラメータに応答して、所定期間の間、前記電気モータ及び前記容積式歯車ポンプを自動的に作動させて体液を所定量移動させるようにプログラムされている、請求項4記載の体液管理システム。
前記第1の制御装置が、前記電気モータ及び前記容積式歯車ポンプを自動的に作動させて、ポンプ輸送の間、体液を移動させるようにプログラムされており、これにより前記流入カテーテル及び前記流出カテーテルが掃除されて詰まりのリスクが低減される、請求項8記載の体液管理システム。
前記第1の制御装置が、前記電気モータ及び前記容積式歯車ポンプをチックモードで定期的に作動させて、起こり得る詰まりを軽減するようにプログラムされている、請求項1記載の体液管理システム。
前記第1の制御装置が、前記電気モータ及び前記容積式歯車ポンプをブーストモードで作動させて該容積式歯車ポンプの閉塞を解除するようにプログラムされており、該電気モータを駆動させる追加のエネルギーが、前記充電/通信システムの前記第2の誘導充電回路を介して前記第1の誘導充電回路に転送される、請求項1記載の体液管理システム。
前記電気モータがスプライン軸を備え、前記容積式歯車ポンプが、キー付き開口を有する歯車を備え、かつ該スプライン軸が、該キー付き開口内で浮動する、請求項1記載の体液管理システム。
前記植え込み装置が、前記流入カテーテルの圧力を測定するように構成された第1の圧力センサ、及び前記流出カテーテルの圧力を測定するように構成された第2の圧力センサを更に備える、請求項4記載の体液管理システム。
前記植え込み装置が、周囲圧力を測定するように構成された第3の圧力センサを更に備え、かつ前記第1の制御装置が、前記流入カテーテルの圧力と該周囲圧力との間の圧力差、及び前記流出カテーテルの圧力と該周囲圧力との間の圧力差に応答して前記電気モータ及び前記容積式歯車ポンプを作動させるようにプログラムされている、請求項13記載の体液管理システム。
前記植え込み装置内に配設され、かつ前記第1の制御装置に接続された加速度計を更に備え、該第1の制御装置が、該加速度計が患者が眠っていることを示す場合は、前記電気モータ及び前記容積式歯車ポンプの作動を防止するようにプログラムされている、請求項4記載の体液管理システム。
前記第2の送受信機が、前記植え込み装置の前記第1の送受信機と通信されるメッセージについて暗号化ルーチンを利用するよう構成されている、請求項1記載の体液管理システム。
前記充電/通信システムが、前記植え込み装置に保存されたデータを、前記第1及び第2の送受信機を介して該充電/通信システム内に配設されたメモリに無線でダウンロードするように構成されている、請求項1記載の体液管理システム。
前記監視/制御ソフトウエアが、有線接続又は無線接続を用いて、前記充電/通信システムと定期的に通信して前記メモリに保存されたデータを回収するように構成されている、請求項20記載の体液管理システム。
前記監視/制御ソフトウエアが、前記第1及び第2の送受信機を用いて、前記充電/通信システムを介して前記第1の制御装置用の修正ファームウエアをアップロードするように構成されている、請求項1記載の体液管理システム。
【背景技術】
【0003】
(III. 発明の背景)
腹膜、胸膜、又は心嚢内への病的な慢性体液貯留をもたらす様々な状態が存在する。慢性的な腹水、胸水、及び心外膜液は、慢性体液貯留が持続する状態であり、罹患率及び死亡率を上昇させる。
【0004】
これらの上記状態は現在、典型的には、次の3つの方法の1つで治療される:(1)感染症のリスクがあり、長期に亘る多数の穿刺が必要となる体外ドレナージ、(2)別の体腔へのドレナージ、又は(3)薬物治療。胸水では、原因となっている病理、例えば、肺癌、乳癌、又はリンパ腫から生じる過剰な体液が胸膜腔内に溜まる。治療しないで放置すると、体液貯留が、適切な肺機能を阻害して、罹患率及び死亡率が著しく上昇することがある。胸水の根本原因により、治療は、薬物治療、針を定期的に胸部から胸腔内に刺入して体液貯留を排出する胸腔穿刺、又はピグテールカテーテルの一端を胸腔に刺入して、体液を外部容器に排出する肋間排出管の装着からなり得る。比較的単純な処置であるが、肋間排出管の配置は、出血及び感染症を含む主要合併症を比較的高率で伴う。繰り返される滲出は、2つの胸膜表面を互いに取り付けて体液が胸膜表面間に溜まり得ないようにする胸膜癒着によって治療することもできる。しかしながら、この処置は、長期の入院を必要とし、致命的な合併症を引き起こし得る成人呼吸窮迫症候群の発症に関わることが報告されている。
【0005】
心外膜液では、体液が心嚢内に溜まり、該体液が、心膜内(intrapercardial)圧を上昇させて心拍出量を低下させることがある。体液貯留が適切な心機能を阻害する場合は、心膜穿刺を行って、胸壁から心嚢内に挿入された針又はカテーテルによって体液を外部に排出することができる。慢性の場合には、治療の選択肢として、心膜に開口部を形成する方法がある。この侵襲性の高い処置では、心嚢の一部を除去して、体液の腹部への排出を可能にする瘻孔を形成する。この処置は、通常は患者が十分に耐えられるものであるが、心膜開口部が閉じて、再手術が必要になることがある。
【0006】
腹水は、肝不全、うっ血性心不全、及び特定の癌を含む多くの病状に関連した、患者をひどく衰弱させる合併症である。腹水を放置すると、呼吸困難、下大静脈(生命維持に不可欠の血管)の圧迫、及び突発性細菌性腹膜炎(命に関わる状態)が起こり得る。腹水の従来の治療には、薬物療法及び食事制限が含まれ、慢性の場合には、度重なる外科的介入が必要となる。
【0007】
腹水の治療に頻繁に使用される薬物は、通常は長期に亘って服用され、多くの場合、合併症を引き起こす。腹水の最も一般的な薬剤治療では、利尿薬を使用して、尿により患者の体から体液を排出させる。しかしながら、この治療の困難な点は、血液の循環量を含め、体全体から体液が除去されることにある。このため、体液の過度の減少により、人体の生命維持に必要な器官を灌流する必要がある。従って、たとえ投与が頻繁であっても、薬物療法は、多くの場合、不満足な結果となる。このような場合には、外科的処置又は侵襲的処置が提示される。
【0008】
薬物が効かない慢性腹水の場合は、患者は、典型的には、定期的、例えば、2〜4週間毎に穿刺術を受けて溜まった体液を抜く必要がある。この処置では、針が腹壁から腹腔内に刺入されて、腹水が腹壁を介して排出される。大量の体液の腹腔内への定期的な貯留及び穿刺術によるその排出は、患者の生活の質に悪影響を与え、多くの場合、原因となっている疾患、例えば、肝硬変に対抗する患者の能力を阻害し得る。更に、繰り返される穿刺術は、腹腔の致命的な感染症のリスクを患者に与える。他の外科的/侵襲的処置は、典型的には、腹水の原因(例えば、経頸静脈性肝内門脈大循環短絡術)に対する治療を含むが、このような処置もまた、多くの場合、深刻かつ致命的な合併症をもたらす、又は時間が経つと無効になる。結果として、このような処置は、殆ど行われていない。
【0009】
穿刺術は、慢性の場合には、腹水が腹腔をすぐに満たすため、多くの場合、単なる一時的な解決策である。特に、腹腔内の大量の体液の存在は、患者における体液の平衡を頻繁に乱すため、患者の体が、穿刺術による体液の減少を腹水の産生の増大によって補おうとする。この現象に対処するために、臨床医の標準的診療では、通常はヒトアルブミンである血漿増補液を穿刺術を受けている患者に注入する。典型的な5〜7リットルの抜水に使用されるヒトアルブミンのコストは、1回の処置で500ドルを超えることもある。結果として、定期的な計画的穿刺術、これに続くヒトアルブミンの注入は、患者及び医療制度に大きな経済的負担がかかる。
【0010】
腹水を治療しようとする既知の試みには、外部ポートを備えた留置カテーテル、並びにゴム球(squeeze-bulb)ポンプ及び磁気駆動式往復ポンプを用いて、腹水を腹腔から、外部ポートを介して静脈系に移送する又は膀胱内に移送することが含まれる。例えば、Newkirkに付与された米国特許第4,240,434号及びBuchwaldに付与された米国特許第4,657,530号のそれぞれに、腹腔内に配置されるように構成された入口端部及び静脈内に配置されるように構成された出口端部を有するゴムチューブ型(squeezable tube-type)腹水シャントが説明されている。Rosenblitらの文献、「難治性腹水治療用の腹膜-尿路ドレナージ:予備研究(Peritoneal-Urinary Drainage for Treatment of Refractory Ascites: A Pilot Study)」という名称の記事、J. Vascular & Interv. Radiology, 9(6):998-1005 (Nov./Dec. 1998)に、出口が膀胱内に留置される同様のゴム球システムが説明されている。Buchwaldらに付与された米国特許第4,610,658号に、体液を腹腔から静脈系に移送する磁気駆動式ポンプを含む、腹水治療用の植え込みポンプが説明されている。このような既知の装置には、線維性被包、頻繁な詰まり、及び感染症を含む様々な欠点がある。このような装置は、定期的な穿刺術に対して殆ど改善がなく、一定期間所定の位置に留置されると、感染症、再手術、又は他の合併症の発生率が高くなる。更に、このような既知のシステムの大きな欠点は、患者が毎日、ポンプ機構を何度も位置合わせし、該ポンプ機構を手動で作動させる必要があることである。このような操作は、患者、特に高齢者や肥満体には困難であり得、腹水による腹部膨張によって更に困難となる。結果として、このような既知のシステムの操作が困難であることから、患者がコンプライアンスを守らなくなり、詰まりや感染症につながる。
【0011】
既知のシステムの上記欠点を考慮すると、1日に何回も少量の体液を除去し、これにより穿刺術による大量の体液の定期的な除去によって起こる体液の平衡の乱れを回避すると共に、高価な血漿増補液の併用を必要としない腹水を治療するための方法及び装置を提供することが望ましいであろう。
【0012】
更に、詰まりにくく、感染症のリスクが低減され、かつ患者の血管系の正常の働きを阻害しない植え込み装置を用いた、腹水及び他の体液の貯留を治療するための方法及び装置を提供することが特に望ましいであろう。
【0013】
また、毎日間隔を空けて複数回、高流量をポンプ輸送するように構成され、これによりポンプ又はカテーテルの閉塞のリスクが低減された植え込み装置を用いた、腹水及び他の体液の貯留を治療するための方法及び装置を提供することが特に望ましいであろう。
【0014】
なお更に、環境条件を検出することができ、かつ患者の活動レベルに相応する場合にのみ体液を移動させる植え込み装置を用いた、腹水及び他の体液の貯留を治療するための方法及び装置を提供することが望ましいであろう。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(VI. 発明の詳細な説明)
本発明の体液管理システムは、体のある部位、例えば、ドレナージが望ましい腹腔、胸腔、又は心嚢からの体液の除去を容易にする装置を含む。本明細書に開示される装置は、慢性的な過度の体液貯留の、ある体腔から第2の体腔、好ましくは膀胱へのドレナージに使用することができる。本発明の原理によると、体液管理システムは、慢性腹水、及び胸水又は心外膜液の治療に使用するために最適化することができ、かつ任意に、感染症の予測又は検出を医師に知らせるように構成することができる。
【0036】
(システムの概要)
図1を参照すると、本発明の体液管理システム10の概要が示されている。
図1では、システムの構成要素は、相対的にも絶対的にも縮尺通りには示されていない。体液管理システム10は、植え込み装置20、外部充電/通信システム30、及びソフトウエアをベースとした監視/制御システム40を含む。例示されている実施態様では、監視/制御システム40は、担当医が使用する通常のラップトップコンピュータにインストールされ、このコンピュータ上で実行される。患者の診察中に、植え込み装置20に保存された検査データをダウンロードするため、又は該植え込み装置の操作パラメータを調整するために、充電/通信システム30が無線又はケーブルで監視/制御システム40に接続される。監視/制御システム40は、充電/通信システム30から回収されたデータを、医師又は該充電/通信システム30が後にアクセスする遠隔サーバーにアップロードして保存するように構成することもできる。
【0037】
植え込み装置20は、皮下に植え込まれるように構成されたハウジング21を有する電気機械ポンプを備えている。詳細を後述するように、腹水の治療に適した実施態様では、植え込み装置20は、腹膜カテーテル23に接続された入口ポート22及び膀胱カテーテル25に接続された出口ポート24を有する電動機械歯車ポンプを備えている。腹膜カテーテル23は、ポンプ入口23に接続されるように構成された第1の端部及び腹腔内に留置されるように構成された第2の端部を有する管を備えている。膀胱カテーテル25は、ポンプ出口24に接続されるように構成された第1の端部及び患者の膀胱壁から挿入されて膀胱内に固定されるように構成された第2の端部を有する管を備えている。好ましい実施態様では、両方のカテーテルは、医療用シリコーンから形成され、該カテーテルを所定の位置に維持するためにポリエステルカフ(不図示)をそれらの遠位端部に備えている。腹膜カテーテル23及び膀胱カテーテル25は、不完全な装着及び偶発的な分離のリスクを低減するように構成されたコネクタ26を用いてポンプハウジング21に接続され、不完全な装着のリスクを低減する独特の断面を更に有することができる。
【0038】
植え込み装置20は、好ましくは、ある間隔(例えば、10〜20分毎)で短時間(例えば、10秒)体液を移動させるように構成されている。このような短時間であるが頻繁な間隔は、既知の腹水シャントに共通している詰まりの問題を、カテーテル23及び25のルーメンへの物質の堆積を防止することによって解消し、組織内植のリスクを低減することが期待される。腹水治療では、植え込み装置20の体液回路は、好ましくは、約60 ml/時間の平均流量となるように構成されているが、必要に応じて、これよりも遥かに多い流量にも、少ない流量にもすることができる。詳細を後述するように、ポンプ輸送の時間及び量は、1日のポンプ輸送量に上限及び下限を含め、必要に応じて特定の患者に対して、監視/制御システム40を用いて医師がプログラムすることができる。更に後述するように、植え込み装置20の体液回路は、膀胱が更なる体液を収容する十分な空間を有すると判断されるまで該体液の該膀胱へのポンプ輸送が実施されないように、腹腔及び膀胱の両方の圧力を監視する圧力センサを備えている。患者に不快感を与えないために、植え込み装置10は通常、夜間に、又は該植え込み装置に設けられた加速度計が患者が眠っている(従って、恐らく膀胱が排尿することができない)ことを示す時にポンプ輸送しないようにプログラムされている。植え込み装置20は、好ましくは、ポンプによって尿が膀胱から腹腔に流れないようにする多数の別個の安全機構を備え、これにより感染症を伝播するリスクが低減される。
【0039】
なお
図1を参照すると、好ましい形態の外部充電/通信システム30は、ベース31及びハンドピース32を備えている。この実施態様では、ハンドピース32は、制御装置、無線送受信機、誘導充電回路、バッテリ、充電の質の表示器、及びディスプレイを備え、かつ該バッテリを充電するためにベース31に着脱可能に装着される。ベース31は、ハンドピース32が該ベース31に装着されたときに、通常の120 Vの電力を適切なDC電流に変換して該ハンドピース32を充電するための変換器及び回路を備えることができる。代替の実施態様では、ハンドピース32は、このような回路及び着脱式電源コードを備えることができ、これにより該ハンドピースを通常の120 Vのコンセントに直接差し込んでバッテリを充電することができる。好ましい実施態様では、植え込み装置20及びハンドピース32はそれぞれ、メモリに保存された装置識別子を備え、該患者の特定の植え込み装置20のみを作動させるために、患者に与えられるハンドピース32が符号化される。
【0040】
ハンドピース32は、好ましくは、多機能ボタン34、ディスプレイ35、複数の発光ダイオード(LED、不図示)、及び誘導コイル部分36を有するハウジング33を備えている。多機能ボタン34により、患者が、植え込み装置20に限られた数のコマンドを入力することができ、ディスプレイ35により、所望のコマンドが入力されたかを視認することができる;該ディスプレイは、バッテリ状態も表示する。誘導コイル部分36は、エネルギーをハンドピース32から転送して植え込み装置20のバッテリを充電するために使用される誘導コイルを収容している。LEDは、発光するとハウジング33の材料を通して見ることができ、各行に2つのLEDとして3行に配置することができ、かつハンドピース32内に収容された制御回路及び誘導充電回路に接続されている。以下に更に詳述するように、LEDは、植え込み装置20の再充電中にハンドピース32と該植え込み装置との間で達成される誘導結合の程度を発光して反映するように配置することができる。別法では、LEDを取り止めて、誘導結合の状態を示すアナログ表示をディスプレイ35に表示しても良い。
【0041】
以下に更に詳述するように、ハンドピース32内に収容された制御回路は、誘導充電回路、バッテリ、LED、及び無線送受信機に接続され、かつ植え込み装置20からの情報を保存するメモリを備えている。ハンドピース32はまた、好ましくは、患者が診療所に訪問したときに該ハンドピースの監視/制御システム40への接続を可能にするデータポート、例えば、USBポートも備えている。別法では、ハンドピース32は、例えば、ブルートゥース又はIEEE802.11無線規格に適合した無線チップを備えることができ、これによりハンドピースと監視/制御システム40との無線通信が可能となる。
【0042】
監視/制御システム40は、主に医師が使用することを目的としたものであり、通常のラップトップコンピュータ上で実行されるように構成されたソフトウエアを備えている。該ソフトウエアにより、医師が、充電/通信システム30及び植え込み装置20の動作を設定し、監視し、かつ制御することができる。詳細を後述するように、該ソフトウエアは、ポンプの動作、例えば、毎日又はモーター作動毎の体液の目標輸送量、ポンプの作動間隔、並びに腹腔圧、膀胱圧値から、ポンプ圧、及びバッテリ温度に対する上限を設定及び制御するルーチンを含み得る。システム40はまた、特定の期間(例えば、夜間)は体液を移動させないように、又は患者が眠っている場合はポンプの作動を延期するように、充電/制御システム30を介して植え込み装置20に命令を出して、植え込み装置20の動作を制御することができる。システム40は、例えば、即時コマンドを植え込み装置に送信してポンプを始動又は停止させる、或いは該ポンプ又は関連カテーテルの閉塞を除去するために該ポンプを逆回転で又は高出力で運転させるように更に構成することができる。システム40のソフトウエアは、ポンプ動作に関連したリアルタイムデータ、及び植え込み装置20の動作中に保存されるイベントログをダウンロードするように構成することもできる。ダウンロードデータ、例えば、患者の体温、呼吸数、及び/又は体液粘度の測定値に基づいて、システム40のソフトウエアを、任意に、感染症の予測又は検出を医師に知らせるように構成することができる。最後に、システム40は、任意に、安全なインターネットチャンネルを通じて患者のハンドピース32から生の動作データ又はフィルタリングされた動作データを遠隔受信するように構成することができる。
【0043】
(流入カテーテル及び流出カテーテル)
図2A及び
図2Bを参照すると、本発明の原理に従って構成された例示的な流入カテーテル50が示されている。流入カテーテル50は、腹腔(従って
図1の腹腔カテーテル23に対応する)、又は胸腔もしくは心膜腔に使用されるように構成することができ、好ましくは、複数の壁貫通孔53を備えた入口端部52及び出口端部54を有する医療用シリコーンからなる管51を備えている。腹腔内に留置されるように構成されている場合、流入カテーテルは、好ましくは、約40cmの流さL1を有し、入口端部52から約24cmの流さL2に亘って複数の孔53が広がっている。孔53は、好ましくは、
図2Bに示されているように、周方向に約90度ずれていて、長手方向に約8 mm〜10 mm離隔して配置されている。好ましい一実施態様では、29個の孔53が、各行に7個の孔として4行に配置され、各位置で流入カテーテルの壁を1回のみを貫通し、該孔は、2.0〜2.5 mmの大きさを有する。流入カテーテル50は、好ましくは、組織内植を軽減するためにルーメンの遠位端部から約7〜10 mmの距離まで挿入される固形シリコーンプラグ55、及び該カテーテルの表面に配設される又は該カテーテルの内部に埋め込まれる放射線不透過性ストリップ56を備え、該ストリップは、カテーテルの全長に亘って延在し、蛍光透視画像又はX線画像で該カテーテルを可視化することができる。流入カテーテル50はまた、カテーテルの周囲組織への付着を促進して該カテーテルを所定の位置に固定するために、孔53から離れた部分にポリエステルカフを備えることもできる。
【0044】
別法では、流入カテーテル50の入口端部52は、螺旋構造及び非外傷性先端部を有することができ、孔53が、詰まりのリスクを低減するために管の全長に亘って分布している。更なる代替として、入口端部52は、詰まりのリスクを更に低減するために、米国特許第4,657,530号に開示されているような拡径部、米国特許出願公開第2009/0318844号の
図9〜
図16に開示されているようなリザーバを備えることができ、これらの特許文献はそれぞれ、引用により全容が本明細書中に組み込まれている。入口端部52はまた、例えば、米国特許第4,240,434号に示されているように、ダックビル弁を端部に設けることができ、これにより、カテーテル50の出口端部を植え込み装置20から取り外して、ロッドを該カテーテルの出口端部から該入口端部のダックビル弁の中に通すことによって、該カテーテルをin situで掃除することができる。
【0045】
入口端部52はまた、近傍の組織壁へのカテーテルの付着を促進するためにポリエステルカフを備えることもでき、これにより、カテーテルの入口端部が所定の位置に確実に維持される。出口端部54はまた、流入カテーテルの出口端部を植え込み装置20に固定するコネクタを備えることもできる。好ましい一実施態様では、流入カテーテルの遠位端部は、内植カフまで、通常の16Fのピールアウェイシースを通過できるように構成することができる。加えて、流入カテーテルの長さは、体腔の底部に沿って確実に延在するように選択することができ、該流入カテーテルは、捻れ運動に十分に耐えて、植え込み時又は植え込み後に捻れたり捩れたりしない。
【0046】
図3Aを参照すると、
図1の膀胱カテーテル25に対応する、本発明の流出カテーテル60の第1の実施態様が示されている。流出カテーテル60は、好ましくは、螺旋構造64を含む出口端部63及び入口端部62を有する医療用シリコーンからなる管61、並びにポリエステル内植カフ65を備えている。流出カテーテル60は、入口端部62から螺旋構造64の先端部の単一出口まで延びた、一般に「ピグテール」設計と呼ばれる単一内部ルーメンを備えている。入口端部62は、流出カテーテルの入口端部を植え込み装置20に固定するコネクタを備えても良いし、又は特定の患者に適合するように切断できる長さを有しても良い。
【0047】
腹水治療システムの流出カテーテルとして使用されるように構成される場合は、流出カテーテルは、約45 cmの長さL3を有することができ、カフ65が、螺旋構造64から約5〜6cmの長さL4の位置に配置される。流出カテーテル60を、螺旋構造64を直線状にしてスタイレットに装着し、該スタイレットを用いて出口端部63及び螺旋構造64を患者の膀胱壁を通過させる低侵襲性技術を用いて植え込むことができる。スタイレットが抜去されると、螺旋構造64が、
図3Aに示されているコイル形状に戻る。流出カテーテル60の出口端部63が患者の膀胱内に配置されると、カテーテルの入口端部62を植え込み装置20に接続できるように、カテーテルの残りの部分がトンネル技術を用いて植え込まれる。螺旋構造64は、膀胱の周囲組織が十分に治癒して内植カフ65が取り込まれて流出カテーテルが所定の位置に固定される前に、出口端部63が膀胱から偶発的に抜けてしまうリスクを低減することができる。
【0048】
好ましい実施態様では、流出カテーテルは、従来のピールアウェイシースを通過できるように構成されている。流出カテーテル60は、好ましくは、植え込み時又は植え込み後に捻れたり捩れたりしないように捻れ運動に十分に耐える。好ましい実施態様では、流入カテーテル50及び流出カテーテル60は、植え込み装置20への接続中に誤って入れ替わらないように、好ましくは、異なる色であり、異なる外形(例えば、四角と丸)を有する、又は異なる接続特性を有する。任意に、流出カテーテル60は、その入口端部62と出口端部63との間の中間に配設される内部ダックビル弁を備えることができ、これにより、たとえ流出カテーテルが植え込み装置20のポンプ出口から偶発的に抜けたとしても、尿が膀胱から腹腔内に流れることはない。
【0049】
代替の実施態様では、流入カテーテル及び流出カテーテル装置は、体腔間の感染の広がりを抑制するために1つ又は幾つかの抗感染症薬を含むことができる。使用することができる抗感染症薬の例として、例えば、静菌性物質、殺菌物質、1つ又は複数の抗生物質放出物質(antibiotic dispenser)、抗生物質溶出物質、及び細菌の付着を防止するコーティング、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0050】
別法では、別個のカテーテルを備えるのではなく、流入カテーテルと流出カテーテルが共通の壁を共用する。この構成は、膀胱と腹腔が共通の壁を共用しているため腹水治療の実施態様では理想的に利用することができ、これにより単一デュアルルーメンチューブの挿入が容易になる。加えて、流入カテーテル又は流出カテーテルの一方又は両方を、それらの長さの一部又は全長に沿って編組リボン又は編組ワイヤを用いて補強する、或いは複数のリボン又はワイヤを該カテーテルの内部に埋め込む又はその表面に一体化させて補強することができる。編組又はワイヤは、ステンレス鋼などの金属、ニチノールなどの超弾性金属、又は様々な適切なポリマーから形成することができる。
【0051】
図3Bを参照すると、本発明の流出カテーテルの第2の実施態様が示されており、同様の構成要素には、同一の参照符号にシングルクォテーションが付されている。流出カテーテル60'は、好ましくは、入口端部62'、出口端部63'、及びポリエステル内植カフ65'を有する医療用シリコーンからなる管61'を備えている。この実施態様によると、出口端部63'は、マルコー構造(malecot structure)66を備え、該マルコー構造は、カテーテルの出口端部63'が留置後に偶発的に抜けてしまうリスクを低減するためにカテーテルの軸から遠ざかる横方向に拡張する4つの弾性ウイング67を例示的に含む。入口端部62'は、流出カテーテルの入口端部を植え込み装置20に固定するコネクタを備えても良いし、又は特定の患者に適合するように切断できる長さを有しても良い。
【0052】
マルコー構造66は、好ましくは、スタイレットがカテーテルのルーメンに挿入されるときに、ウイング67が実質的に閉じた細い構造に変形するように構成されている。このようにして、流出カテーテル60'をスタイレットに装着することができ、低侵襲性技術を用いて、出口端部63'及びマルコー構造66を該スタイレットを用いて患者の膀胱壁を通過させることができる。スタイレットが抜去されると、マルコー構造のウイング67は、
図3Bに示されている拡張形状に戻る。流出カテーテル60'の出口端部63'が、患者の膀胱に結合されると、該カテーテルの残りの部分が、該カテーテルの入口端部62'を植え込み装置20に結合できるようにトンネル技術を用いて植え込まれる。マルコー構造66は、膀胱の周囲組織が十分に治癒して内植カフ65'が取り込まれる前に、出口端部63'が膀胱から偶発的に抜けてしまうリスクを低減することができる。
図3Aの実施態様では、
図3Bの流出カテーテルは、従来のピールアウェイシースを通過できるように構成することができ、好ましくは、植え込み時又は植え込み後に捻れたり捩れたりしないように捻れ運動に十分に耐える。
【0053】
上記のように、腹水治療システムでは、流出カテーテルの出口端部は、好ましくは、膀胱内に留置されるように構成され、かつこの構成は、胸水及び心外膜液の治療システムに利用することもできる。別法では、胸水又は心外膜液の治療用に設計されたシステムに使用される流出カテーテルは、出口端部が腹腔内に留置されるように構成することができ、これにより、腹腔内に排出される滲出液が、再吸収され、例えば、腎臓を通って排出される。このような実施態様では、流出カテーテル60は、
図2の流入カテーテル50と同様に構成することでき、かつ体液を腹腔内に排出する複数の孔を有することができる。
【0054】
(植え込み装置)
ここで
図4を参照すると、本発明の植え込み装置20の機能ブロックを表現する略図が示されている。植え込み装置20は、制御回路を備え、該制御回路は、データバスによって不揮発性メモリ71、例えば、フラッシュメモリ又は電気的消去・書き込み可能読出し専用メモリ、及び揮発性メモリ72に接続されたプロセッサ70として例示されている。プロセッサ70は、電気モータ73、バッテリ74、誘導回路75、無線送受信機76、並びに湿度センサ77、複数の温度センサ78、加速度計79、複数の圧力センサ80、及び呼吸数センサ81を含む複数のセンサに電気的に接続されている。誘導回路75は、充電/通信システム30から送信されるエネルギーを受信するためにコイル84に電気的に接続され、送受信機76は、アンテナ82に接続され、また、後述するように充電/通信システム30の送受信機と通信するように構成されている。任意に、誘導回路75はまた、赤外線発光ダイオード83に接続することもできる。モータ73は、専用制御装置を備えることができ、該制御装置は、プロセッサ70からのコマンドを理解して、該コマンドに応答してモータ73を作動させる。
図4に示されている構成要素の全ては、
図5Aに示されているように、小型の密封生体適合性ハウジング内に収容されている。
【0055】
プロセッサ70は、モータ73によって生成される信号、センサ77〜81、及び送受信機76から受信するコマンドに応答して該モータ73の動作を制御する不揮発性メモリ71に保存されたファームウエアを実行する。プロセッサ70はまた、送受信機76を介したメッセージの送受信、及びバッテリ74を充電する誘導回路75の動作も制御する。加えて、プロセッサ70は、モータ73内に配設されたホール効果センサによって生成される信号を受信し、該信号は、後述するように、歯車ポンプの歯車の方向及び回転、従ってポンプ輸送される体液の量及び該体液の粘度を計算するために使用される。プロセッサ70は、好ましくは、低出力モードの動作を含み、内部クロックを備え、これにより、該プロセッサは、定期的に起動して、ポンプ輸送、ポンプのチックモード(pump tick mode)、又は通信/充電機能を制御することができ、かつ/又は起動してハンドピース32から送受信機76が受信するコマンドを処理することができる。一実施態様では、プロセッサ70は、Texas Instruments社, Dallas, Texasから入手可能なMSP430ファミリーの1つであるマイクロコントローラーユニットを備え、
図4に示されている不揮発性メモリ、揮発性メモリ、及び無線送受信機要素を含み得る。加えて、プロセッサ70で実行されるファームウエアは、充電/通信システム30を介して植え込み装置20に送られるコマンドに直接応答するように構成することができる。プロセッサ70はまた、後述するように、モーター72(及びあらゆる関連するモータ制御装置)の動作及びセンサ78〜81を監視し、かつイベントログ及びアラームを含む、植え込み装置の動作を反映するデータを保存するように構成されている。従って、充電/通信システムが、次に植え込み装置に無線接続されるときに、データが該充電/通信システムに報告される。好ましい実施態様では、プロセッサ70は、ポンプを作動させる前は最大で1秒に80個のログエントリー、植え込みシステムが活発にポンプ輸送しているときは1秒に約8個のログエントリー、そしてポンプ輸送されていないときは1時間に約1個のログエントリーを生成する。
【0056】
不揮発性メモリ71は、好ましくは、フラッシュメモリ又はEEPROMを含み、かつ植え込み装置20の一意の装置識別子、プロセッサ70で実行されるファームウエア、植え込み装置の動作に関する構成設定値データ、並びに任意である、送受信機76及び/又は誘導回路75、及び別個のモーター制御装置(存在する場合)で実行されるコーディングを保存する。不揮発性メモリ71に保存されるファームウエア及び設定値データは、充電/通信システム30を介して制御/監視システム40によって供給される新たな命令を用いて更新することができる。揮発性メモリ72は、プロセッサ70に接続され、該プロセッサの動作を支援し、かつ植え込み装置20の動作中に収集されたデータ及びイベントログ情報を保存する。揮発性メモリ72はまた、充電/通信システム30に送信される情報及び該充電/通信システムから受信する情報のバッファとしても機能する。
【0057】
送受信機76は、好ましくは、無線周波数送受信機を含み、かつ充電/通信システム30のハンドピース32内に配設された同様の送受信回路を用いてアンテナ76を介して双方向通信するように構成されている。送受信機76はまた、低出力動作モードを備えることができ、これにより定期的に起動して、受信メッセージを待ち受け、かつ植え込み装置に割り当てられた一意の装置識別子を含むメッセージのみに応答する。別法では、送受信機76が、関連する充電/通信システム30のハンドピース32内の対応する送受信機と通信するだけであるため、該送受信機76は、植え込み装置の誘導回路75が作動しているときにのみデータを送信又は受信するように構成することができる。加えて、送受信機76は、植え込み装置から送信されるメッセージ又は該植え込み装置が受信するメッセージを傍受又は偽造できないように暗号化ルーチンを利用することができる。
【0058】
誘導回路75は、コイル84に接続され、かつ充電/通信システム30のハンドピース32内の対応する誘導回路によって生成される磁場に曝露されたときに植え込み装置のバッテリ74を再充電するように構成されている。一実施態様では、誘導回路75は、該誘導回路75が作動しているときに赤外線信号を発する任意である赤外線LED 83に接続されている。該赤外線信号は、充電/通信システム30のハンドピース32が受信して、該ハンドピースの植え込み装置に対する位置合わせを支援し、これにより植え込み装置に対する電磁結合及びエネルギー伝達が改善される。
【0059】
本発明の一態様によると、誘導回路75は、任意に、バッテリ74を再充電するだけではなく、ポンプの閉塞を解除するために「ブースト」モード又はジョグ/振動モードのモータ73に直接エネルギーを供給するように構成することができる。特に、モータ73が、例えば、タンパク様腹水によって形成される障害物によって停止したことをプロセッサ70が検出する場合は、アラームをメモリに保存することができる。植え込み装置20が、充電/通信システム30と次に通信するときに、アラームがハンドピース32に送られ、かつ患者に、多機能ボタン34を押す選択肢を与えることができ、この押圧により、誘導回路75から過電圧がモータ73に一定時間加えられてポンプの閉塞が解除される。別法では、多機能ボタンを押すと、プロセッサ70が一連のコマンドを実行し、これにより、例えば、モータ73が逆方向及び順方向に交互に回転することによって、該モータがジョグ又は振動して閉塞が解除される。このような動作モードは、通常の動作中に予想されるよりも多くのエネルギーを消費し得るため、このような処置中は、誘導回路75を介して供給されるエネルギーでモータを駆動すると有利である。
【0060】
バッテリ74は、好ましくは、人体に植え込まれたときに長く持続する、例えば、最大3年間動作することができ、これにより植え込み装置20を交換する再手術の必要性を最小限にするリチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池を含む。好ましい一実施態様では、バッテリ74は、3.6 Vの公称電圧、新品時に150 mAhの静電容量、2年使用後に約120 mAhの静電容量を有する。好ましくは、バッテリ74は、ポンプ輸送するときは280 mA;送受信機が充電/通信システム30と通信するときは25 mA;プロセッサ70及び関連回路が作動しているが、ポンプ輸送も通信もしていないときは8 mA;そして植え込み装置が低出力モードのときは0.3 mAの電流をモータ73に供給する。より好ましくは、バッテリ74は、各充電サイクルの間に10秒間の少なくとも450 mAh及び25ミリ秒間の1 Aの最小電流を可能にする容量にするべきである。
【0061】
モータ73は、好ましくは、後述するように、歯車ポンプとして動作する一組の浮動歯車を駆動するスプライン出力軸を有するブラシレス直流モータ又は電子整流モータである。モータ73は、該モータの動作を制御する、プロセッサ70とは別個の専用モータ制御装置を備えることができる。モータ73は、モータの位置及び回転方向を決定するための複数のホール効果センサ、好ましくは2つ以上のホール効果センサを備えることができる。プロセッサ70は、植え込み装置20が遭遇し得る高湿度のせいで、たとえホール効果センサの全て又は一部が故障したとしても、精度は低下するもののモータ73を作動させるプログラミングを備えることができる。
【0062】
好ましい実施態様では、モータ73は、歯車を駆動して150 ml/分の公称流量を供給し、3000 RPMで水30 cmの圧力水頭に対して約1 mNmのトルクを加えることができる。この実施態様では、モータは、好ましくは、50 ml/分の流量に対応する1000 RPMから260 ml/分の流量に対応する5000 RPMで歯車を駆動するように選択される。モータは、好ましくは、非固形腹水タンパク様物質を粉砕するために、500 mA、3 Vで少なくとも3 mNm、より好ましくは6 mNmの停動トルクを有する。上記のように、モータはまた、好ましくは、誘導回路75によって直接電力が供給される場合は、例えば、5 Vでのブーストモードの動作を支援する。モータ73はまた、好ましくは、歯車ポンプの閉塞を解除するジョグ又は振動処置の一部として逆回転で駆動することができる。
【0063】
本発明の一態様によると、プロセッサ70は、自動的かつ定期的に起動してポンプチックモードに入るようにプログラムすることができる。この動作モードでは、歯車ポンプは、プロセッサ70が低出力モードに戻る前に、ホール効果センサによる測定で僅かに、例えば、約120度順方向に回転する。好ましくは、この間隔は、約20分毎であるが、監視/制御システムを用いて医師が調整することができる。このポンプチックモードは、高タンパク質含量を有する腹水が部分的に固化して、歯車ポンプを閉塞させるのを防止することが期待され、かつ慢性腹水の治療用に設計された既知の植え込みシステムで観察される詰まりの問題の解消において特に有利であると考えられる。
【0064】
加えて、プロセッサ70はまた、バッテリのみで動作しているときに歯車ポンプの閉塞を解除するジョグ又は振動モードに入るようにプログラムすることもできる。充電/通信システム30のハンドピースを用いて植え込み装置を充電するときに利用できるブーストモードと同様に、ジョグ又は振動モードでは、モータが、歯車を順方向と逆方向との間で迅速に交互して動作して、歯車ポンプ内又は体液流路の他の部分におけるタンパク様蓄積物を粉砕する又はほぐす。特に、この動作モードでは、エネルギーが供給された後の一定期間(例えば、1秒)の間に始動しない場合は、運動の方向を短時間逆転させ、次いで再び逆転させて所望の方向にモータを回転させる。モータがなお回転しない場合は(例えば、歯車ポンプの故障のために)、回転方向を一定期間(例えば、更に10ミリ秒)の間、再び逆転させる。それでもモータが順方向に回転できない場合は、該モータの逆方回転間の時間間隔を短縮して、該モータがより高い出力を発生できるようにし、これにより歯車が振動動作する。モータが4秒を超えて順方向に回転しない場合は、ジョグモードの動作が停止されて、アラームがイベントログに書き込まれる。モータが順方向に回転できなかった場合は、プロセッサ70が、次の計画されている体液輸送の前に逆方向チックを導入する。逆方向チックは、チック(例えば、モータ軸の約120度の順方向運動)と同様であるが、逆方向であり、順方向に回転する前にモータを逆方向に強制的に回転させようとするものであり、これによりモータが推進力を得ることができるはずである。
【0065】
センサ77〜81は、湿度、温度、加速度、圧力、及び呼吸数を継続的に監視し、対応する信号をプロセッサ70に供給する。特に、湿度センサ77は、植え込み装置の構成要素が、予想される動作限界の範囲内で確実に動作するように、該植え込み装置のハウジング内の湿度を測定するために配置される。湿度センサ77は、好ましくは、20%〜100%の範囲内の湿度を高精度で検出して報告することができる。1つ以上の温度センサ78をハウジング内に配設して、植え込み装置、特にバッテリ74の温度を、該バッテリが充電中に過熱しないように監視することができ、また別の1つ以上の温度センサ78を、入口62に進入する体液に接触するように配設し、これにより、例えば、体液の温度上昇に基づいた感染症の予測又は検出に使用される該体液の温度を監視することができる。加速度計79を配置して、例えば、患者が眠っているか否かを決定するために、好ましくは少なくとも2つの軸に沿った植え込み装置の加速度を測定して非活動期間を検出する。この情報は、患者が排尿を望まないときにはポンプが絶対に作動しないようにプロセッサ70に供給される。
【0066】
植え込み装置20は、好ましくは、プロセッサの作動期間中に継続的に監視される多数の圧力センサ80を備えている。
図6Aを参照して以下に説明するように、本発明の植え込み装置は、好ましくは、4つの圧力センサ:体液源体腔(source cavity)(例えば、腹腔、胸腔、又は心膜腔)内の圧力を測定するセンサ、周囲圧力を測定するセンサ、歯車ポンプの出口の圧力を測定するセンサ、及び流入体腔(sink cavity)(例えば、膀胱、又は胸膜系もしくは心膜系の場合は腹腔)内の圧力を測定するセンサを備えている。これらのセンサは、好ましくは、3 Vで50 mW未満の電力消費で450 mBar〜1300 mBar(45 kPa〜130 kPa)の絶対圧力を測定するように構成されている。好ましくは、ポンプ出口の圧力を測定するセンサ及び流入体腔内の圧力を測定するセンサは、歯車ポンプへの逆流を防止するダックビル弁の前後に配置され、これにより該ダックビル弁の前後の圧力低下に基づいた流量計算が可能となる。
【0067】
呼吸数モニタ81は、例えば、患者の呼吸数の増加に基づいた感染症の予測又は検出に使用される該患者の呼吸数を測定するように構成されている。別法では、患者の呼吸数は、1つ以上の圧力センサ80の出力、例えば、呼吸の際に体液源体腔(例えば、腹腔、胸腔、又は心膜腔)を定期的に圧迫する横隔膜によって生じる周囲圧力又は該体液源体腔の圧力の変化に基づいて測定することができる。
【0068】
好ましい実施態様では、プロセッサ70は、体液源体腔内の圧力が第1の所定値を超え、かつ流入体腔内の圧力が第2の所定値未満の場合にのみ、該体液源体腔から該流入体腔に体液がポンプ輸送されるようにプログラムされている。患者の海抜ゼロ地点から高所への移動を考慮するために、周囲圧力測定値を使用して腹膜圧の差圧値を計算することができる。この方法では、低い大気圧を考慮するために、ポンプが始動する設定圧力を下げることができる。同様に、周囲圧力を使用して、膀胱圧の所定値を調整することができる。この方法では、高所にいるときは患者がより低い圧力で膀胱に不快を感じることがあるため、ポンプ輸送が停止する閾値圧力を下げることができる。
【0069】
ここで
図5A及び
図5Bを参照すると、植え込み装置90の例示的な実施態様の更なる詳細が示されている。
図5Aでは、ハウジング91は、透明として示されているが、当然、ハウジング91が不透明な生体適合性プラスチック及び/又は金属合金材料を含むことを理解されたい。
図5Bでは、ハウジング91の下部92が上部ハウジング93から取り外され、植え込み装置内に水分が蓄積するのを防止するために使用されるガラスビーズ/エポキシ充填材料を含んでいない植え込み装置が示されている。
図5A及び
図5Bでは、モータ94が、
図6及び
図7を参照して詳細に説明する歯車ポンプハウジング95に接続されている。
図4を参照して上記説明した電子部品が、可撓性回路基板96に配設され、該可撓性回路基板は、支持部材97の周りに延在し、かつ該支持部材に固定されている。コイル98(
図4のコイル84に対応する)が、基板のフラップ99に配設され、該コイルは、可撓性ケーブル部101によってフラップ100上の電子部品に接続されている。支持部材97は、上部ハウジング93に固定され、かつバッテリ102(
図4のバッテリ74に対応する)を保持するキャビティを画定している。ハウジング91の下部92は、該ハウジング91の上部93と該下部92が互いに固定された後に、水分が蓄積し得るハウジング内の空間を縮小するためにガラスビーズ/エポキシ混合物を注入するポート103を備えている。
【0070】
ハウジング91はまた、患者に植え込まれると植え込みポンプの動きを抑制するように設計された機能構造、例えば、植え込み装置を周囲組織に確実に固定する縫合孔を備えることができる。ハウジング91は、皮下植え込み後の植え込み装置の周囲組織への付着を促進するポリエステル内植パッチを更に備えることができる。
【0071】
加えて、植え込み装置は、詰まり防止剤、例えば、腹水の特にタンパク様成分を標的とする酵素溶出剤、尿の特にタンパク様成分及び付着促進成分を標的とする酵素溶出剤、化学溶出表面、タンパク様成分の付着を防止するコーティング、及びこれらの組み合わせを、任意に含むことができる。このような作用物質は、使用される場合は、システムの様々な構成要素の中に入れて一体にする、又は該構成要素の表面にコーティングすることができる。
【0072】
ここで
図6A〜
図6Dを参照すると、歯車ポンプ及び流路の更なる詳細が示されている。
図6A〜
図6Dでは、同様の構成要素は、
図5A及び
図5Bと同じ参照符号を用いて識別される。
図6Aは、歯車ポンプハウジング95及び上部ハウジング93、並びに植え込み装置内の流路の構成要素とモータ94とのアセンブリを示す組立分解図である。上部ハウジング93は、好ましくは、入口ニップル102、出口ニップル103、圧力センサ104a〜104d、マニホールド105、及びねじ106を収容する開口及び通路を備えるように成形又は機械加工することができる高強度プラスチック又は金属合金材料を含む。ニップル102及び103は、好ましくは、高強度生体適合性金属合金から機械加工され、出口ニップル103は、弾性ダックビル弁108を収容する通路107を更に備えている。出口ニップル103は、圧力センサ104aを収容する側面凹部109を更に備え、該圧力センサは、患者の膀胱(又は腹腔)内の圧力に対応する、流出カテーテルの入口端部の圧力を測定するように配置される。
【0073】
また、ここで
図6B及び
図6Cを参照すると、入口ニップル102は、開口110内に配設され、該開口110は、圧力センサ104bの開口111及びマニホールド105に結合される開口112を備えた上部ハウジング93に通路を形成する。圧力センサ104bは、腹腔(又は胸腔もしくは心膜腔)内の圧力に対応する、流入カテーテルの出口端部の圧力を測定するように配置される。ダックビル弁107を含む出口ニップル103は、側面凹部108が開口114に整合して圧力センサ104aの電気接点へのアクセスを可能にするように上部ハウジング93の開口113内に配設される。開口113は、圧力センサ104cの開口116及びマニホールド105に結合される開口117を備えた通路115を形成する。上部ハウジング93は、好ましくは、圧力センサ104dを収容する開口119を備えた通路を形成する開口118を更に備えている。圧力センサ104dは、周囲圧力を測定し、このセンサの出力は、上記のように差圧を計算するために使用される。上部ハウジングは、入口ニップル102に接続される流入カテーテル及び出口ニップル103に接続される流出カテーテルを保持するコネクタ26(
図1を参照)を収容するノッチ120を更に備えている。上部ハウジング93は、マニホールド105を収容する凹部121、及び支持部材97(
図5Bを参照)が接続されるペグ122を更に備えている。
【0074】
図6A及び
図6Dに示されているように、マニホールド105は、好ましくは、流入路及び流出路を上部ハウジング93を介して歯車ポンプに接続する2つの別個の流路を有する成形弾性要素を備えている。第1の通路は、入口124及び出口125を備え、第2の通路は、入口126及び出口127を備えている。入口124は、流入路の開口112(
図6Cを参照)に接続され、出口127は、流出路の開口117に接続される。マニホールド105は、上部ハウジング93の構造を単純にし、かつ複雑な非線形流路を備えた構成要素を鋳造又は機械加工する必要性をなくすことによって、植え込み装置の製造性を改善するように構成されている。
【0075】
ここで
図6A、
図7A、及び
図7Bを参照すると、モータ94は、そのスプライン軸131が軸受132を通過するように相手ねじ130を用いて歯車ポンプハウジング95に接続される。本発明の歯車ポンプは、Oリングシール135及びプレート136によって歯車ポンプハウジング95内に封入された互いに噛合する歯車133及び134を備えている。歯車ポンプは自給式である。プレート136は、マニホールド105の出口125に結合する開口137及び入口126に結合する開口138を備えている。モータ94のスプライン軸131は、歯車133の開口139内に挿入されて該歯車と浮動係合する。スプライン軸と歯車との相互作用を、
図7Bを参照して以下に説明する。
【0076】
図7Aは、
図6Aの歯車ポンプハウジング95の表側を示し、該歯車ハウジングは、歯車133及び134を収容する大きさの凹部140、並びにOリングシール135を収容する溝141を備えている。歯車133及び134は、スプライン軸131が開口142内に挿入されて、歯車133のキー付き開口139内で浮動するように凹部140内に収容されている。歯車133及び134は、凹部140の壁143に対して僅かな公差(例えば、0.2 mm)で該凹部内に収容されるような寸法であるが、体液の粘度が許す限り自由に回転する。プレート136の開口137及び138(
図6Aを参照)は、歯車133の時計回りの方向(上から見て)の回転により、開口137を介して歯車ポンプハウジング内に体液を引き込む吸引力が発生し、次いで該体液が開口138から排出されるように、歯車133と134との接合部の上に位置している(
図7Aの点線で示されている)。同様に、モータ94が歯車133を反時計回りの方向(上から見て)に駆動すると、歯車ポンプが、開口138を介して歯車ポンプハウジング内に体液を引き込み、次いで該体液を開口137を介して排出する。従って逆流である。
【0077】
図7Bの簡易モデルに示されているように、歯車134は、軸を有していないが、代わりに凹部140のその部分内で自由に浮動する。スプライン軸131は、歯車133が該スプライン軸131に対して浮動するように、歯車133のキー付き開口139に係合する。有利なことに、この構成により、ポンプの効率及び製造性が改善され、製造上のばらつきの影響及び熱効果が軽減されることによりモータ94の電力消費が低減される。特に、製造公差又は熱膨張差から生じる、モータ軸の偏心又は真直度における僅かなばらつきにより、歯車が凹部140の内面又は歯車134に付着することはない。代わりに、軸131の回転中に、該軸131の表面の異なる各部分とキー付き開口139とが互いに接触して、回転トルクが歯車133に継続的に伝達される。しかしながら、軸の偏心、製造公差のばらつき、又は構成要素の熱膨張差から生じるエネルギーを無駄にする力は低減される。加えて、この浮動係合により、歯車が横方向に移動して粒子状物質を収容できるため、該粒子状物質が歯車と壁143との間に付着を生じさせるリスクが低減される。
【0078】
歯車133及び134は、噛合するローブ144を備え、該ローブは、係合並びに係合が解除されるときに、実質的にバイパス流が一切発生することなく体液を確実に移動させる。この方式では、歯車133及び134によって輸送される体液の量及び粘度を、モータ94内に配設されたホール効果センサによって検出されるモータの回転数を監視することによって計算することができる。
図7A及び
図7Bに更に示されているように、歯車ポンプハウジング95の凹部140は、互いに接続された実質的に円形の2つのローブを備えている。この構成により、歯車133及び134が、凹部の壁143に対して、及び互いに対して適切に維持される。好ましい実施態様では、2つのローブが交わるように形成された尖端部145が、各ローブの中心から引かれた半径に対して接線を成すように構成されている。有利なことに、このように尖端部を構成することにより、歯車133及び134が壁143に衝当する可能性が低くなる。
【0079】
(充電/通信システム)
図8A、
図8B、及び
図9を参照して、本発明の充電/通信システム150(
図1のシステム30に対応する)をここで詳細に説明する。好ましい一実施態様では、充電/通信システム150は、ハンドピース151及びベース31を備えている(
図1を参照)。ベース31は、ハンドピース151を再充電するためのクレードルを提供し、好ましくは、該ハンドピースが該ベースに装着されたときに該ハンドピースを充電するために通常の120 Vの電源を適切な直流電流に変換する変換器及び回路を備えている。別法では、ハンドピース151は、該ハンドピースのバッテリを充電するための回路、及び着脱式電源コードを備えることができる。この実施態様では、ハンドピース151は、充電のために通常の120 Vのコンセントに直接差し込むことができ、該ハンドピースを使用して植え込み装置を再充電する場合は、電源コードは取り外される。
【0080】
図9に示されているように、ハンドピース151は、制御装置152を備え、該制御装置は、不揮発性メモリ153(例えば、EEPROM又はフラッシュメモリのいずれか)、揮発性メモリ154、無線送受信機155、誘導回路156、バッテリ157、表示器158、及びディスプレイ159に接続されたマイクロコントローラユニットのプロセッサとして例示されている。制御装置152、メモリ153及び154、並びに無線送受信機155は、1つのマイクロコントローラユニット、例えば、Texas Instruments社, Dallas, Texasが販売するMPS430ファミリーのマイクロプロセッサに組み込むことができる。送受信機155は、植え込み装置20に対して情報を送受信するためのアンテナ160に接続されている。バッテリ157は、コネクタ161に接続され、該コネクタは、該バッテリを充電するためにベース31のコネクタに取り外し可能に接続される。ポート162、例えば、USBポート又は同等の無線回路は、ハンドピース151と監視/制御システムとの間で情報が交換できるように制御装置152に接続されている。誘導回路156は、コイル163に接続されている。入力装置164は、好ましくは、多機能ボタンであり、同様に、患者が限られた数のコマンドを入力できるように制御装置152に接続されている。表示器158は、ハンドピースと植え込み装置との間で達成された電荷結合の状態を発光して示し、従って充電中の該ハンドピース151の該植え込み装置に対する位置の最適化に役立つ複数のLEDを例示的に備えている。好ましい一実施態様では、表示器158が省かれ、代わりとして、コイル163と84との結合による充電の質を示すバー表示がディスプレイ159に表示される。
【0081】
好ましい実施態様では、ハンドピース151は、対応する植え込み装置20とのみ通信するように、該植え込み装置の不揮発性メモリ71に保存された装置識別子に対応する不揮発性メモリ153に保存された装置識別子を備えている。診療所での使用のために構成可能なハンドピースは、植え込み装置に問い合わせて該装置の一意の装置識別子を要求して、監視/制御システム40の装置識別子を患者の植え込み装置の識別子に変更して患者のハンドピースを模倣する能力を有し得る。この方法では、患者が診療所を訪れたときに自身のハンドピース151を持参するのを忘れたとしても、医師が植え込み装置の設定を調整することができる。
【0082】
制御装置152は、植え込み装置の通信及び充電を制御する不揮発性メモリ153に保存されたファームウエアを実行する。制御装置152はまた、診療所訪問中に、ポート162を介した監視/制御システム40への後の再送信のために、植え込み装置からハンドピース151にアップロードされるデータ、例えば、イベントログを転送及び保存するように構成されている。別法では、ハンドピース151は、診療所訪問中に、診療所内の指定された無線アクセスポイントを認識して、監視/制御システム40と無線通信するように構成することができる。更なる別法として、ベース31は、自動的にダイアルして、ハンドピース151に保存された情報、例えば、アラーム情報を安全な接続によって医師のウエブサイトにアップロードするための電話回線を備えることができる。
【0083】
制御装置152は、好ましくは、低出力動作モードを有し、かつ該制御装置が定期的に起動して植え込み装置と通信してデータを記録する又は充電機能を果たすように内部クロックを備えている。制御装置152は、好ましくは、植え込み装置の近傍に配置されると起動して通信及び充電機能を実行し、かつ入力装置164を用いて入力されたコマンドを送信するように構成されている。制御装置152は、植え込み装置から受信した情報を評価して、アラームメッセージをディスプレイ159上に作成するためのプログラムを更に有することができる。制御装置152はまた、入力装置164を用いて入力されたコマンドを植え込み装置に送信し、このようなコマンドの実行中、例えば、閉塞を解除するための歯車ポンプのブースト又はジョグ/振動動作中の植え込み装置の動作を監視するためのファームウエアも有することができる。加えて、制御装置152は、植え込み装置の再充電中の誘導回路156の動作、バッテリ74の充電状態の表示、並びにバッテリ157の充電の制御及び充電状態の情報の表示を含む、ハンドピース151の様々な電力操作を制御し、監視する。
【0084】
不揮発性メモリ153は、好ましくは、フラッシュメモリ又はEEPROMを含み、かつ関連する植え込み装置の一意装置識別子、制御装置152によって実行されるファームウエア、構成設定値、及び任意である、送受信機155及び/又は誘導回路156で実行されるコーディングを保存する。不揮発性メモリ153に保存されたファームウエア及び設定値データを、ポート162を介して制御/監視システム40によって供給される情報を用いて更新することができる。揮発性メモリ154は、制御装置152に接続され、該制御装置の動作を支援し、かつ植え込み装置20からアップロードされたデータ及びイベントログ情報を保存する。
【0085】
加えて、好ましい実施態様では、不揮発性メモリ153は、監視/制御システムと通信しなくても、充電/通信システムによる一部の最初のスタートアップ機能の実行を可能にするプログラミングを保存する。特に、メモリ153は、「
単独準備モード」の動作において、充電/通信システムのみを用いて植え込み時に植え込み装置の試験を可能にするルーチンを含み得る。この場合、医師がポンプを手動で始動することができるボタンを設けることができ、ディスプレイ159を使用して、ポンプ輸送セッションが正常に行われているか否かをフィードバックする。また、充電/通信システムのディスプレイ159を使用して、医師による植え込み装置、流入カテーテル、又は流出カテーテルの位置の調整に役立つように設計されたエラーメッセージを表示することができる。これらの機能は、好ましくは、植え込み装置の最初の植え込みの後に無効にされる。
【0086】
送受信機155は、好ましくは、例えば、ブルートゥース又はIEEE802.11無線規格に適合した無線周波数送受信機を含み、アンテナ160を介して、植え込み装置内に配設された送受信機回路76と双方向通信するように構成されている。送受信機155はまた、低出力動作モードを備えることができ、これにより定期的に起動して、受信メッセージを待ち受けし、関連する植え込み装置に割り当てられた一意装置識別子を含むメッセージのみに応答する。送受信機155は、好ましくは、植え込み装置に送信されるメッセージ又は該植え込み装置から受信されるメッセージを傍受又は偽造できないように暗号化ルーチンを利用する。
【0087】
誘導回路156は、コイル163に接続され、かつ植え込み装置のコイル84に誘導結合されて該植え込み装置のバッテリ74を再充電するように構成されている。一実施態様では、誘導回路156は、表示器158、好ましくは、コイル163と84との間の電磁結合の程度(従って、充電の質)を点灯して示し、これにより、ハンドピース151の植え込み装置に対する位置合わせを支援する複数のLEDに接続されている。好ましい一実施態様では、誘導コイル84及び163は、315 kHz以下の周波数で動作しているときに、35 mm離隔して良好な結合を確立することができる。植え込み装置が、任意である赤外線LED 83を備える実施態様では、充電/通信システム30は、LED 83によって放出される赤外線光を検出する任意である赤外線センサ(不図示)を備えることができ、該赤外線センサは、コイル163と84との間の電磁結合を最適化するためにハンドピース151の位置合わせを更に支援し、これにより植え込み装置へのエネルギー伝送が改善される。
【0088】
本発明の一態様によると、制御装置152は、バッテリ74の誘導充電中に、定期的に植え込み装置と通信して、温度センサ78によって作成された温度データを回収してメモリ72に保存するように構成することができる。制御装置152は、バッテリの温度を分析し、所定閾値、例えば、体温よりも2℃未満高い温度よりも低く植え込み装置の温度を維持するために誘導回路163に供給される充電電力を調整するファームウエアを備えることができる。この閾値は、バッテリ、周囲の電子部品、及び機械部品の熱膨張を低減するため、例えば、モータ及び歯車ポンプの構成要素の熱膨張を低減するため、並びにハウジングの下部92と上部93との間のシールに対する熱歪みを低減するために設定することができる。好ましい実施態様では、誘導コイル163に供給される電力は、植え込み装置内の測定温度に応じた充電間隔で高電力(例えば、120 mA)と低電力(例えば、40 mA)との間で循環される。
【0089】
植え込み装置の誘導回路75について上記説明したように、誘導回路156は、任意に、歯車ポンプの閉塞を解除するために「ブースト」モード又はジョグモードで、誘導回路75及びバッテリ74を介して植え込み装置のモータ73に追加電力を伝達するように構成することができる。特に、例えば、腹水によって形成される閉塞によってモータ73が停止したというアラームが制御装置152に送信されると、患者に、閉塞を解除するために入力装置164を用いて誘導回路75からモータ73に所定時間、過電圧を加える選択肢を与えることができる。別法では、入力装置164の作動により、制御装置152が、モータ74を逆方向及び順方向に急速に作動させることにより歯車ポンプをジョグ又は振動させて閉塞物を破壊するルーチンを実行するようにプロセッサ70に命令を出す。このような動作モードは、通常の動作中に予想されるよりも多くのエネルギーを消費し得るため、誘導回路156及び75は、このようなモータ動作のための追加エネルギーを、植え込み装置のバッテリ74を消耗させるのではなく、バッテリ157に蓄えられたエネルギーから直接供給するように構成することができる。
【0090】
バッテリ157は、好ましくは、例えば、最大3年、動作を持続することができるリチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池を含む。バッテリ157は、ベース31から取り外され、植え込み装置の充電中に、制御装置152、送受信機155、誘導回路156、及び関連電子機器を作動させるためにハンドピース151に電力を供給する十分な容量を有する。好ましい実施態様では、バッテリ157は、約2〜4時間の間に、植え込み装置のバッテリ74を空の状態から満充電する十分な容量を有する。バッテリ157はまた、約2〜4時間以内に再充電できるべきである。日常の動作で体液700 mlを移動させる場合は、バッテリ157及び誘導回路156は、十分な電荷を誘導回路75を介してバッテリ74に転送して約30分以内にバッテリを再充電できることが期待される。バッテリ容量は、好ましくは、充電蓄積アルゴリズム(charge accumulator algorithm)を用いて制御装置152によって監視される。
【0091】
図8A及び
図8Bを参照すると、ハンドピース151は、好ましくは、多機能ボタン166(
図9の入力装置164に対応する)及びディスプレイ167(
図9のディスプレイ159に対応する)を有するハウジング165を備えている。複数のLED 168が、ハンドピース151の半透明部分の下に配設され、該複数のLEDは、
図9の表示器158に対応している。ポート169(
図9のポート162に対応する)により、ハンドピースを監視/制御システム40に接続することができ、コネクタ170(
図9のコネクタ161に対応する)により、ハンドピースをベース31に接続してバッテリ157を再充電することができる。多機能ボタン166により、患者が、限られた数のコマンドを植え込み装置に入力することができる。ディスプレイ167、好ましくは、OLED又はLCDディスプレイにより、多機能ボタン166を用いて入力された所望のコマンドが受け取られたことを視認することができる。ディスプレイ167はまた、植え込み装置のバッテリ74の充電の状態及び段階、ハンドピース151のバッテリ157の充電の状態及び段階、無線通信の信号強度、充電の質、エラーメッセージ、並びにメンテナンスメッセージも表示することができる。ハウジング165の誘導コイル部分171は、誘導コイル163を収容する。
【0092】
LED 168は、点灯するとハウジング165の材料を通して視認することができ、好ましくは、各行に2つのLEDとして3行に配置される。充電中に、LEDが点灯して、例えば、誘導回路156からのエネルギー損失によって決定される誘導コイル163と84との間の電磁結合の程度を表示し、患者がこの表示を使用して、ハンドピース151を植え込み装置に対して正確に配置することができる。従って、例えば、低度の結合を2つのみのLEDの点灯に対応させ、中程度の結合を4つのLEDの点灯とし、好ましい結合の程度を6つ全てのLEDの点灯によって反映させることができる。この情報を用いて、患者は、植え込み装置が位置する領域の上にハンドピース151の位置を合わせて、ハンドピースにとって好ましい位置を得ることができ、これにより最短の再充電時間となる。好ましい一実施態様では、LED 168は、電荷結合の質を示す、ディスプレイ167上のアナログバー表示に置き換えられる。
【0093】
(監視/制御システム)
図10を参照すると、
図1の監視/制御システムを実行するソフトウエアが示されている。ソフトウエア180は、
図10に模式的に示されている多数の機能ブロックを含み、該多数の機能ブロックは、主ブロック184、イベントログブロック182、データダウンロードブロック183、構成セットアップブロック184、ユーザインターフェイスブロック185、感染症予測ブロック191を含むアラーム検出ブロック186、センサ校正ブロック187、ファームウエアアップグレードブロック188、装置識別子ブロック189、及び状態情報ブロック190を含む。該ソフトウエアは、好ましくは、C++言語で書かれ、オブジェクト指向形式を利用する。好ましい一実施態様では、ソフトウエアは、Microsoft Windows(登録商標)(Microsoft社, Redmond, Washingtonの登録商標)又はユニックスベースのオペレーティングシステム上で動作するように構成され、これらは、通常はデスクトップ及びラップトップコンピュータで使用される。監視/制御システムのソフトウエア180を実行するコンピュータは、好ましくは、データポート、例えば、USBポート又は同等の無線接続を備え、これにより、充電/通信システムのハンドピース151をポート169を介して接続することができる。別法では、上記説明したように、コンピュータは、例えば、IEEE802.11規格に適合した無線カードを備えることができ、これにより、ハンドピース151が、ソフトウエア180を実行するコンピュータと無線通信することができる。更なる代替として、充電/通信システムは、自動的にダイアルして、ハンドピース151からのデータ、例えば、アラームデータを担当医がアクセス可能な安全なウエブサイトにアップロードする電話回線を備えることができる。
【0094】
主ブロック184は、好ましくは、医師のコンピュータ上で実行される主ソフトウエアルーチンからなり、他の機能ブロックの全体の動作を制御する。主ブロック184により、医師は、ハンドピース151に接続されると、該ハンドピース151に保存されたイベントデータ及びアラーム情報を自身の診療所のコンピュータにダウンロードすることができ、かつ制御/監視ソフトウエア180が、植え込み装置の動作を直接制御することができる。主ブロックにより、医師は、ファームウエアの更新及び構成データを植え込み装置にアップロードすることもできる。
【0095】
イベントログブロック182は、植え込み装置から充電/通信システムを介してダウンロードされた動作データの記録であり、例えば、ポンプの始動及び停止時間、モータ位置や、腹腔(又は胸腔又は心膜腔)及び流入体腔(例えば、膀胱)の圧力、患者の体温、呼吸数又は体液温度、ポンプの出口圧力、湿度、ポンプ温度、バッテリ電流、バッテリ電圧、及びバッテリ状態などのセンサデータを含み得る。イベントログはまた、事象、例えば、ポンプの閉塞、ブーストモードもしくはジョグモードでの動作、アラーム、又は他の異常な状態の発生を含み得る。
【0096】
データダウンロードブロック183は、該ハンドピースが監視/制御ソフトウエア180を実行するコンピュータに接続された後に、揮発性メモリ154からデータをダウンロードするハンドピース151との通信を制御するルーチンである。データダウンロードブロック183は、自動的に、又はユーザーインターフェイスブロック185を介した医師の誘導で、イベントログに保存されたデータのダウンロードを開始することができる。
【0097】
構成セットアップブロック184は、植え込み装置の動作を制御する不揮発性メモリ71に保存されたパラメータを設定するルーチンである。間隔タイミングパラメータは、例えば、起動して無線通信を待ち受ける前又はポンプの動作を制御する前に、プロセッサをスリープモードにどれくらいの期間維持するかを決定することができる。間隔タイミングパラメータは、例えば、体液を腹腔(又は胸腔又は心嚢)から流入体腔に移動させるポンプ動作の期間、並びに植え込み装置、流入カテーテル、及び流出カテーテルの閉塞を防止する定期的チック動作の間の間隔を制御することができる。監視/制御ソフトウエア180から植え込み装置に送信される間隔タイミング設定は、イベントデータがいつ、そしてどの程度の頻度で不揮発性メモリ71に書き込まれるか決定し、充電/通信システムのハンドピース151のプロセッサ152によって実行されるファームウエアが使用するタイミングパラメータを設定することもできる。ブロック184はまた、医師が使用して、プロセッサ70及びモータ73の動作に対する限界値に関する、不揮発性メモリ71に保存されたパラメータを設定することができる。これらの値は、流入カテーテル及び流出カテーテルの最小圧力及び最大圧力、充電中の最大温度差、ポンプが動作できる時間、及びポンプが動作できない時間などを含み得る。ブロック184によって設定される限界値は、ハンドピース151のプロセッサ152の動作を制御するパラメータも設定する。ブロック184はまた、プロセッサ70及びモータ73の動作の制御に関連した、植え込み装置の不揮発性メモリ71に保存されたパラメータを設定することもできる。これらの値は、輸送する体液の目標とする1日の量、1回のポンプ輸送セッションで輸送される体液の量、モータ速度、及び1回のポンプ輸送セッションの期間を含み得る。ブロック184はまた、ハンドピース151に接続されたときのブーストモードでの動作中、及び植え込み装置がバッテリ74のみで動作するときの振動/ジョグモードでの動作中のモータ73の動作パラメータを指定することができる。このようなパラメータは、モータの速度及び電圧、順方向と逆方向との間で交互して動作するときのモータ軸の回転の期間/数などを含み得る。
【0098】
ユーザーインターフェイスブロック185は、データダウンロードブロック183を介して監視/制御システム及び植え込み装置から回収された情報の表示を制御し、医師による評価のために直感的に理解しやすい形式で該情報を提示する。
図11〜
図15を参照して以下に説明するように、このような情報は、植え込み装置の状態、充電/制御システムの状態、測定圧力、1回のポンプ輸送セッションで又は1日に輸送される体液の量などを含み得る。ユーザーインターフェイスブロック185は、医師が情報を入力して、ブロック184に関して上記説明された間隔タイミングパラメータ、限界値パラメータ、及びポンプの動作パラメータを設定することができるユーザーインターフェイス画面も作成する。
【0099】
アラーム検出ブロック186は、植え込み装置又は充電/通信システムから回収されたデータを評価し、医師の注意を向けるために異常な状態をフラグ立てするルーチンを含み得る。例えば、アラーム検出ブロック186は、感染症予測ブロック191を含むことができ、該感染症予測ブロックは、例えば、所定閾値を上回る患者の体温の1回以上の上昇、所定閾値を上回る患者の呼吸数の上昇、及び/又は所定閾値を上回る体液の増加に基づいて感染症を予測又は検出するように構成されている。このようなフラグは、ユーザーインターフェイスブロック185によって示される表示器の状態を変更することによって、又はユーザーインターフェイスブロック185を介して患者の体温、呼吸数、もしくは体液の粘度の上昇についての特定の情報を医師に提示することによって医師に伝達することができる。
【0100】
センサ校正ブロック187は、例えば、経年変化又は湿度の変化による、植え込み装置に使用されているセンサ70、78〜81のドリフトを試験又は測定するルーチンを含み得る。次いで、ブロック187は、センサからの測定データを補正するためのオフセット値を計算して、この情報を不揮発性メモリ71に保存するために植え込み装置に送信する。例えば、圧力センサ104a〜104dは、経年変化又は温度変化によるドリフトを受け得る。従って、ブロック187は、オフセット値を計算することができ、次いで該オフセット値を、このようなドリフトを考慮するために植え込み装置に送信して保存する。
【0101】
ファームウエアアップグレードブロック188は、植え込み装置にインストールされたプロセッサ又はモータ制御装置のファームウエア及び/又は充電/通信システムのプロセッサのファームウエアのバージョン番号をチェックし、アップグレードされたファームウエアが存在する否かを確認するルーチンを含み得る。存在する場合は、該ルーチンは、医師に知らせることができ、これにより医師は、不揮発性メモリ71に保存するために植え込み装置に修正ファームウエアをダウンロードする、又は不揮発性メモリ153に保存するために充電/通信システムに修正ファームウエアをダウンロードすることができる。
【0102】
装置識別子ブロック189は、不揮発性メモリ71に保存されている植え込み装置の一意識別子、及び監視/制御システムが充電/通信システムを介して植え込み装置に接続されたときにこのデータを読み込むルーチンからなる。上記説明したように、装置識別子を植え込み装置が使用して、充電/通信システムから受信した無線通信がその特定の植え込み装置用であるかを確認する。同様に、この情報を充電/通信システムのハンドピース151が使用して、受信メッセージがそのハンドピースに関連した植え込み装置によって作成されたものであるか否かを決定する。最後に、装置識別子情報を監視/制御ソフトウエア180が使用して、ハンドピース及び植え込み装置が整合したセットを構成するかを確認する。
【0103】
状態情報ブロック190は、ハンドピースを151を介して接続されると、植え込み装置に問い合わせて、植え込み装置及び/又はハンドピース151から現在の状態データ(current status date)を回収するルーチンを含む。このような情報は、例えば、バッテリ状態、植え込み装置及びハンドピースの内部クロックの日付及び時刻、現在使用中のファームウエア及びハードウエアのバージョン管理情報、並びにセンサデータを含み得る。
【0104】
ここで
図11〜
図15を参照して、ソフトウエア180のユーザーインターフェイスブロック187によって作成された、腹水治療システム用の例示的な画面を説明する。
図11は、監視/制御ソフトウエア180を実行している医師に示される主画面200を示している。主画面200は、
図10のブロック190に対応するルーチンによって植え込み装置及び充電/通信システムから回収した状態情報を表示する状態領域を有する。より詳細には、状態領域は、充電/通信システム用の状態領域201(「スマート充電器」と呼ばれる)、及び植え込み装置用の状態領域202(「ALFAポンプ」と呼ばれる)を含む。各状態領域は、チェックマークによって示される、各システムが正常に動作しているか否かを示すアイコン、各システムの装置識別子、及び各システムが接続されている又は作動しているか否かを含む。アラーム検出ブロック186によって評価されるパラメータが仕様範囲外であると、アイコンは、代わりに警告記号を含み得る。メニューバー203は、各メニューアイテムを強調表示することによって医師が移動できる様々な画面を示す。作業スペース領域204は、状態領域の下側に設けられ、選択されるメニューアイテムによって変化する表示を含む。作業スペース領域204の下側には、ナビゲーションパネル205が表示され、該ナビゲーションパネルは、ソフトウエア180のバージョン番号、及び作業スペース領域204の表示をリフレッシュすることができるラジオボタンを含む。
【0105】
図11では、メニューバー203において、メニューアイテム「情報」のサブメニューアイテム「植え込み装置」が強調表示されている。このメニューアイテムの選択では、作業スペース領域204は、植え込み装置についてのバッテリ状態ウインドウ204a、測定圧力ウインドウ204b、及びファームウエアバージョン管理ウインドウ204cを例示的に示している。バッテリ状態ウインドウ204aは、バッテリ74の残量を表すアイコンを含み、かつ満充電、3/4充電、1/2充電、1/4充電として表しても良いし、又はバッテリがほぼ空の状態であるというアラームを示しても良い。ウインドウ204aの時間成分は、植え込み装置から受信したときの現在の時刻を示し、日付は、日/月/年の形式で表され、時刻は、24時制に基づいた時/分/秒の形式で表される。測定圧力ウインドウ204bは、膀胱圧、腹腔圧、周囲圧力をそれぞれ、センサ104a、104b、及び104d(
図6Aを参照)で測定されたmBar単位で表示する。バージョン管理ウインドウ204cは、プロセッサ70のファームウエアバージョン、モータ制御装置のバージョン、及び植え込み装置のハードウエアバージョンを示す。患者パラメータウインドウ204dは、患者の体温、呼吸数、及び体液粘度を表示する。アラーム状態ウインドウ204eは、起こり得る感染症の発症を示唆し得るパラメータのあらゆる変化を表示する(
図10のブロック191)。例えば、例示されているように、アラーム状態ウインドウ204eは、患者の体温が異常に高いことを医師に知らせることができ、これにより医師が、感染症の可能性について患者を経過観察することができる。一部の実施態様では、ウインドウ204b、204d、及び/又は204eに表示される情報に基づいて、医師が、例えば、
図14を参照して以下に説明されるインターフェイスを用いて、ポンプの動作パラメータを調整することができる。
【0106】
図12を参照すると、
図11の「スマート充電器」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示206が示されている。
図12は、
図11を参照して上記説明した充電/通信システム用の状態領域201、植え込み装置用の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示206は、「スマート充電器」サブメニューアイテムが強調表示されている点で画面表示200とは異なり、作業スペース領域204は、充電/制御システムについてのバッテリ状態ウインドウ207a及びバージョン管理ウインドウ207bを表示している。バッテリ状態ウインドウ207aは、バッテリ157の残量を表すアイコンを含み、かつ満充電、3/4充電、1/2充電、1/4充電として表しても良いし、又はバッテリがほぼ空の状態であるというアラームを示しても良い。ウインドウ207aの時間成分は、ハンドピース151から受信したときの現在の時刻を示し、日付は、日/月/年の形式で表され、時刻は、24時制に基づいた時/分/秒の形式で表される。バージョン管理ウインドウ207bは、プロセッサ152のファームウエアバージョン、及び充電/制御システムのハードウエアバージョンを示す。
【0107】
ここで
図13を参照すると、
図11の「ダウンロード」メニューアイテム及び「ログファイル」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示208が示され、ソフトウエア180のブロック183の機能が実行される。
図13は、それぞれが上記説明された充電/通信システムの状態領域201、植え込み装置の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示208は、「ログファイル」サブメニューアイテムが強調表示されている点で「情報」画面表示とは異なり、作業スペース領域204は、ダウンロード進行ウインドウ209a及び保存経路ウインドウ209bを表示している。ウインドウ209aは、充電/通信システムを介して植え込み装置からイベントログをダウンロードすることができるディレクトリの経路を含む。ウインドウ209aはまた、イベントログがダウンロードされるディレクトリ経路を医師が選択できる「ダウンロードホルダを開く」ラジオボタン、及びダウンロードされたデータの量を反映するべく更新されるプログレスバーも含む。ウインドウ209bは、作動させてイベントログをウインドウ209aの指定された経路にダウンロードすることができるラジオボタンを含み、かつダウンロード処理を中断する「中断」ラジオボタンも含む。
【0108】
図14は、
図11の「ポンプ設定」メニューアイテム及び「体液輸送」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示210の例示的な表現であり、ソフトウエア180のブロック184及び190の機能が実行される。
図14は、それぞれが上記説明された充電/通信システムの状態領域201、植え込み装置の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示210は、「体液輸送」サブメニューアイテムが強調表示されている点で「情報」画面表示とは異なり、作業スペース領域204は、セッション量ウインドウ211a、体液輸送プログラムウインドウ211b、1日の最小量ウインドウ211c、圧力ウインドウ211d、並びにウインドウ211a、211b、及び211dで入力された値を植え込み装置の不揮発性メモリ71に送信して保存することができるナビゲーションパネル205内のラジオボタンを含む。セッション量ウインドウ211aは、植え込み装置によってポンプ輸送される1日の最大量、ポンプ輸送セッション間の時間間隔、ポンプを作動させることができる1日の回数、1日の合計ポンプ動作時間、及び1回のポンプ輸送セッションのセッション量についての現在の設定を表示する。
【0109】
ウインドウ211aに表示される1日の最大量は、ポンプが24時間の間に膀胱に輸送する体液の上限に対応するが、植え込み装置が低い体液の状態を検出した場合は、ポンプ輸送される実際の量を低くすることができる。この値は、患者の全身状態及び1日の腹水産生量に基づいており、例えば、20 ml〜4000 mlの許容範囲を有し得る。ウインドウ211aに表示される時間間隔を構成セットアップルーチン(
図10のブロック184)が使用して、好ましくは、3 ml〜30 mlの範囲、より好ましくは、10 ml〜20 mlの範囲であるセッション量を計算する。ウインドウ211aに表示される、ポンプが作動できる時間区間は、植え込み装置が体液を膀胱に確実に移動させることができる時間枠を定義する:これらの時間区間以外では、植え込み装置は、体液を移動させることができないが、上記説明したポンプチック動作を実行して定期的に歯車回転させて歯車の動きが悪くなるのを防止することができる。ウインドウ211aに表示される1日のポンプ作動時間は、時間区間ボックスで入力される時間区間の総計であるため、読み取り専用形式で示される。最後に、ウインドウ211aに表示されるセッション量は、1回のポンプ輸送セッションで膀胱に移送される体液の量としてブロック183によって計算される。
【0110】
体液輸送プログラムウインドウ211bは、ソフトウエア180のブロック184を用いたパラメータセットに基づいて植え込み装置のポンプの動作を制御するプログラムの状態を表示する。ポンプの動作が何らかの理由で停止しなければならない場合は、ウインドウ211bの「オフ」ボタンをクリックすることによって体液輸送プログラムを停止することができ、これにより、手動でオンに切り替えられるまでポンプはポンプ輸送を停止する。一実施態様では、体液輸送プログラムは、ウインドウ211bの「オン」ボタンを押圧することによって再びスイッチをオンにすることができる。植え込み装置は、好ましくは、ポンプのスイッチが切られた状態で植え込まれるため、医師又は外科医は、植え込み装置が最初に植え込まれた後に、ウインドウ211bを使用して体液輸送プログラムを作動させることができる。
【0111】
1日の最小量ウインドウ211cは、植え込み装置によって膀胱にポンプ輸送される体液の予想量を表示し、該予想量は、構成セットアップルーチンによって、ウインドウ211aで入力される規定時間区間の長さ及び時間間隔のタイミングに基づいて、セッション量に1日のセッション回数を乗じて計算される。
【0112】
図14の圧力ウインドウ211dにより、医師が、植え込みポンプの動作を制御するために使用される最大膀胱圧及び最小腹腔圧の値を入力することができる。従って、例えば、プロセッサ70は、圧力センサによって検出される膀胱圧がウインドウ211dの指定された値を超えると、モータ73に命令して、現在のポンプ輸送セッションを停止する、又はウインドウ211aで確認できる時間区間中の計画されたポンプ輸送セッションをスキップする。同様に、プロセッサ70は、圧力センサによって検出される腹腔圧がウインドウ211dの指定された値よりも低いと、モータ73に命令して、現在のポンプ輸送セッションを停止する、又はウインドウ211aで確認できる時間区間中の計画されたポンプ輸送セッションをスキップする。上記説明された要領で動作するように構成されている場合は、植え込み装置は、患者の膀胱の過度の膨張による患者の不快感をもたらすことも、腹腔、胸腔、又は心膜腔を過度に乾燥させることもない。
【0113】
ここで
図15を参照すると、
図11の「試験」メニューアイテム及び「手動試験運転」サブメニューアイテムの選択に対応する画面表示212の例示的な表現が示されている。
図15は、それぞれが上記説明された充電/通信システムの状態領域201、植え込み装置の状態領域202、メニューバー203、作業スペース領域204、及びナビゲーションパネル205を含む。画面表示212は、「手動試験運転」サブメニューアイテムが強調表示されている点で「情報」画面表示とは異なり、作業スペース領域204が、手動ポンプサイクルウインドウ213を含む。手動ポンプサイクルウインドウ213は、ラジオボタン「試験開始」を含み、該ラジオボタン「試験開始」は、充電/通信システムを介して植え込み装置にコマンドを送信して、プロセッサ70がポンプを所定時間の間、例えば、数秒間作動させるようにする。プロセッサ70は、モータ73のホール効果センサからの位置データ、及び圧力センサ104c及び104dによる測定圧力データを受信する。プロセッサ70は、セッション量を計算し、その情報を充電/通信システムを介してソフトウエア10に送り返し、該ソフトウエアが、測定データを目標セッション量と比較して、試験結果、例えば、達成された目標セッション量のパーセンテージ又は合格/不合格のアイコンを提示する。測定セッション量、目標セッション量、及び試験結果は、ウインドウ213に表示される。
【0114】
上記説明した例示的な実施態様は、慢性腹水を治療するための体液管理システムに関するが、本発明の体液管理システムは、胸水又は心外膜液の治療にも容易に適合し得る。このような実施態様では、呼吸又は正常な心臓活動によって生じる胸腔又は心膜腔の圧力の変動を考慮して、該腔から全ての体液が排出されて適切な肺機能や心臓活動が阻害されるのを回避することが有利であろう。胸水の治療用の体液管理システムでは、これは、例えば、呼吸サイクルの間、胸腔の圧力を測定するように植え込み装置のプロセッサ70をプログラミングすることによって達成することができる。次いで、この情報を使用して平均圧力を計算し、この平均圧力を使用して、胸腔からの体液のポンプ輸送をいつ停止するかを決定することができる。同様に、心膜液の治療用の本発明の体液管理システムでは、心周期の間、心外膜腔の圧力を測定するように植え込み装置のプロセッサ70をプログラムすることができる。次いで、この情報を使用して平均圧力を計算し、正常の心臓活動による心嚢内の心臓の動きが円滑になるよう、一部の体液が確実に残存するようにこの平均圧力を使用して心外膜腔からの体液のポンプ輸送をいつ停止するかを決定することができる。
【0115】
本発明の様々な例示的な実施態様を上記説明したが、当業者であれば、本発明から逸脱することなく、様々な変更及び改良が本発明の範囲内で可能であることを理解できよう。添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨及び範囲に含まれる全てのこのような変更及び改良を含むものとする。