特許第6266353号(P6266353)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6266353導電性材料前駆体および導電性材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266353
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】導電性材料前駆体および導電性材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20180115BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20180115BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20180115BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20180115BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20180115BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   H01B5/14 A
   H01B13/00 503D
   B32B27/08
   B32B27/18 Z
   H01B5/14 B
   G03F7/11 503
   G03F7/40 521
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-2153(P2014-2153)
(22)【出願日】2014年1月9日
(65)【公開番号】特開2014-197531(P2014-197531A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】特願2013-31153(P2013-31153)
(32)【優先日】2013年2月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-41798(P2013-41798)
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤岩 昌治
(72)【発明者】
【氏名】吉城 武宣
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−074174(JP,A)
【文献】 特開平04−255776(JP,A)
【文献】 特開平02−251801(JP,A)
【文献】 特開昭63−045893(JP,A)
【文献】 特表平10−500734(JP,A)
【文献】 特開2000−261186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00− 7/42
C23C 18/00−20/08
H05K 3/10− 3/26
H05K 3/38
H01B 5/14
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコールの誘導体から選ばれる水溶性高分子化合物、クロム明ばん、N−メチロール化合物、多価アルデヒド化合物、活性ハロゲンを有する化合物、エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトン、N,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン及びエチレンイミノ基を二個以上有する化合物から選ばれる架橋剤及び、パラジウム及びスズから選ばれる金属の硫化物を含有する下地層と、感光性レジスト層をこの順に積層して有する導電性材料前駆体。
【請求項2】
下地層がウレタンポリマーラテックスを含有する請求項1に記載の導電性材料前駆体。
【請求項3】
感光性レジスト層がポジ型感光性レジスト層である請求項1または2に記載の導電性材料前駆体。
【請求項4】
支持体上に、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコールの誘導体から選ばれる水溶性高分子化合物、クロム明ばん、N−メチロール化合物、多価アルデヒド化合物、活性ハロゲンを有する化合物、エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトン、N,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン及びエチレンイミノ基を二個以上有する化合物から選ばれる架橋剤及び、パラジウム及びスズから選ばれる金属の硫化物を含有する下地層と、感光性レジスト層をこの順に積層して有する導電性材料前駆体の感光性レジスト層面を任意のパターン状に露光後、現像し、露光したパターンのレジスト画像を形成した後、無電解めっきを行ってレジスト画像に被覆されていない下地層上に導電性パターンを形成し、その後レジスト画像を除去する導電性材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の導電性回路、タッチパネル等に用いる光透過性電極、電磁波シールド材料等に利用される導電性材料を得るために用いる導電性材料前駆体、及び導電性材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・高機能化に伴い、導電性パターンのファインピッチ化が強く求められている。具体的にはCOF(チップ・オン・フィルム)実装用途などにおいて、現在の量産ラインでは40〜50μmのパターンピッチが最小であるが、数年後には25μm、将来的には15μm位にパターンピッチを小さくすることが目標とされている。
【0003】
現在、導電性材料の製造方法としては金属箔上に設けたレジスト層を用い、いわゆるフォトリソグラフィー法によりエッチングレジストパターンを形成し、エッチングにより金属箔をパターン状に加工するサブトラクティブ法が主に用いられているが、上記のようなファインピッチの要望から、エッチングする金属箔(主に銅箔)やレジスト層の薄層化が急務となっている。
【0004】
導電性パターン形成用の材料としては、圧延銅箔あるいは電解銅箔を絶縁性支持体に接着層を介し貼り合わせたもの(通常「3層CCL(銅張積層板)」と呼ばれる)、銅箔を絶縁性支持体に接着剤層を介さず直接加熱加圧等により貼り合わせたもの(通常「2層CCL」と呼ばれる)、絶縁性支持体上に真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式めっき法または無電解めっき法により下地金属を形成し、電解銅めっきをしたもの(通常「銅メタライズド材料」と呼ばれる)などが用いられている。銅箔を貼り合わせるCCLの場合、密着強度確保の観点から、絶縁性支持体の銅箔貼合面をあらかじめ化学的に粗面化し、凹凸を形成させることが一般的に行われているが、その結果、エッチング後の絶縁性支持体の透明性が失われる、あるいは高周波伝送時の損失が高くなるなどの問題があり、金属箔のより薄層化が可能という点からも、CCLよりも銅メタライズド材料の方が優れている。しかしながら銅メタライズド材の製造においては、乾式めっきあるいは無電解めっきなどの工程の生産性が低く、高価になる等の問題点が指摘されている。
【0005】
レジスト層の薄層化に関しては、一般に用いられるDFR(感光性ドライフィルムレジスト)に替えて、液状レジスト、電着レジストなど薄層化が可能なレジストが用いられるようになっているが、これらはDFRに比べ、パターン形成を行う製造場所において薄層のレジスト層を設ける設備、技術が必要となり、適用の妨げの一因となっている。この問題については特開2007−210157号公報(特許文献1)のように、あらかじめ金属箔上にレジスト層を塗布した形態で供給する技術などが開示されている。
【0006】
一方、ファインピッチ化の別の手段として、サブトラクティブ法に替えて、絶縁性支持体上に薄層の下地金属層を形成し、その上にレジストパターンを形成した後、電解めっき法によりレジスト開口部に金属層を積層し、最後にレジスト層及びレジスト層で保護された下地金属を除去することにより、回路形成を行ういわゆるセミアディティブ法が提案されている。例えば特開2007−287953号公報(特許文献2)では支持体表面に第1金属層としてスパッタ金属層を形成し、上記セミアディティブ法を用い回路形成する方法が開示されている。しかしながら、下地金属層であるスパッタ金属層を除去するエッチング工程が数回必要であり、また支持体表面のエッチングも行わなければならず、工程が多くなるため生産性が低かった。このような生産性を改善することを目的として、特開2010−45227号公報(特許文献3)では、下地金属層として写真製法によって得られた銀薄膜層を用い、その上にレジスト層を設けた導電性材料前駆体が開示されている。しかしながら導電性材料の製造には、依然としてエッチング工程が必要であった。
【0007】
一方、エッチング工程を必要としないものとしては、特開平8−239773号公報(特許文献4)、特開平9−205270号公報(特許文献5)、特開平10−18044号公報(特許文献6)等に、プラスチックフィルム上に、膨潤性の水性樹脂、金属化合物の微粒子及び架橋剤を含有する無電解めっき用下地層を設け、これに無電解めっきを施すことで下地金属層を設け、その上にレジスト層を設けた感光性シートが開示されており、該金属化合物の微粒子として、硫化パラジウムや硫化スズ等の金属硫化物が例示されている。これらの感光性シートはレジスト画像を形成した後に、露出した下地金属層に電解めっきが施され、その後、接着剤層が設けられた絶縁性支持体の接着層上に、めっき層(あるいはめっき層とレジスト画像)を転写させることで導電性パターンが形成されるが、その間には、絶縁性支持体へのめっき層の転写や、その後のプラスチックフィルムの剥離等、煩雑な工程を経る必要があり、生産性の改善には至っていなかった。
【0008】
上記のようなエッチングや剥離・転写等の工程を必要とせず、生産工程数が少ないものとして、レジスト画像を形成してから、スパッタリングや、触媒処理及び無電解めっきを施して導電性パターンを形成するリフトオフ方式というものが知られている。しかしながらこの方式においては、レジスト画像に沿って金属が析出してしまい、めっき画像がレジスト画像をオーバーハングするため、レジスト画像の除去が困難となってしまう問題があった。また特開2002−134879号公報(特許文献7)においては、支持体上にメッキレジストを硬化させる特定波長の光線を吸収する触媒層を設けることで金属パターンを正確な形状に形成できることが開示されており、特開2007−191731号公報(特許文献8)においては、支持体をスズ化合物、銅化合物及びパラジウム化合物等で処理することで形成した触媒層上にレジスト画像を形成した後、無電解めっきにより金属パターンを形成することで、支持体に対するめっき膜の密着性や光学的特性に優れためっき配線基板が得られることが開示されている。しかしながら、触媒層を形成する工程においては、支持体の複数回の浸漬処理が必要となるため製造工程が煩雑であり、また線幅が25μm以下の微細な金属パターンを形成した際には、支持体と金属パターンとの間で十分な密着性を得ることはできず、改善が求められていた。更に、触媒層の付着ムラが発生することもあり均一な金属厚みが得られず、改善が求められていた。微細な金属パターンにおいて均一な金属厚みが得られない場合、抵抗値が部分的にばらつくという問題が生じる。
【0009】
一方、特開2003−249790号公報(特許文献9)においては、支持体に金属錯体還元層を塗布し、その上にポジ型のレジスト画像を形成した後、スプレー等を用いて金属錯体を金属錯体還元層に接触させて金属パターンを形成することが開示されており、該金属錯体還元層が含有するバインダー樹脂の一例としてポリウレタンが記載されている。この方法は工程数が少なく生産性に優れた方法であるが、ここで用いられている金属錯体還元層(下地層)ではめっき時間を短くした場合において、十分な導電性の金属パターンを形成することができないことに加え、導電性を発現するためには150℃以上の加熱焼成工程が必要であることから、フレキシブル性を有する透明樹脂フィルムを使用することが難しいと言う課題があった。また特開2011−35220号公報(特許文献10)には、支持体にパターン状に印刷された易めっき性樹脂層にめっき触媒化合物溶液を接触させることにより、易めっき性樹脂層上にパターン状のめっき触媒層を設け、その後無電解めっき及び/又は電解めっきを施すことで金属パターンを形成する技術が開示されており、該易めっき性樹脂層が含有する樹脂としてポリウレタン樹脂が記載されている。しかし、この方法では微細で導電性が高い金属パターンを得ることは難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−210157号公報
【特許文献2】特開2007−287953号公報
【特許文献3】特開2010−45227号公報
【特許文献4】特開平8−239773号公報
【特許文献5】特開平9−205270号公報
【特許文献6】特開平10−18044号公報
【特許文献7】特開2002−134879号公報
【特許文献8】特開2007−191731号公報
【特許文献9】特開2003−249790号公報
【特許文献10】特開2011−35220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、線幅が25μm以下の微細な導電性パターンであっても、十分な全光線透過率を有した上で良好な導電性を有する導電性パターンを形成することが可能で、更には、形成した導電性パターンの密着性にも優れている導電性材料前駆体、及び高い生産性にて導電性材料を製造することが可能な導電性材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、支持体上に、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコールの誘導体から選ばれる水溶性高分子化合物、クロム明ばん、N−メチロール化合物、多価アルデヒド化合物、活性ハロゲンを有する化合物、エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトン、N,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン及びエチレンイミノ基を二個以上有する化合物から選ばれる架橋剤及び、パラジウム及びスズから選ばれる金属の硫化物を含有する下地層と、感光性レジスト層をこの順に積層して有する導電性材料前駆体により基本的に達成される。ここで、下地層がウレタンポリマーラテックスを含有することが好ましい。感光性レジスト層がポジ型感光性レジスト層であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の上記目的は、支持体上に、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコールの誘導体から選ばれる水溶性高分子化合物、クロム明ばん、N−メチロール化合物、多価アルデヒド化合物、活性ハロゲンを有する化合物、エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトン、N,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン及びエチレンイミノ基を二個以上有する化合物から選ばれる架橋剤及び、パラジウム及びスズから選ばれる金属の硫化物を含有する下地層と、感光性レジスト層をこの順に積層して有する導電性材料前駆体の感光性レジスト層面を任意のパターン状に露光後、現像し、露光したパターンのレジスト画像を形成した後、無電解めっきを行ってレジスト画像に被覆されていない下地層上に導電性パターンを形成し、その後レジスト画像を除去する導電性材料の製造方法により基本的に達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の導電性材料前駆体及び導電性材料の製造方法によれば、線幅が25μm以下の微細な導電性パターンであっても、十分な全光線透過率を有した上で良好な導電性を有する導電性パターンを形成することが可能で、更には、形成した導電性パターンの密着性にも優れている導電性材料前駆体、及び高い生産性にて導電性材料を製造することが可能な導電性材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の導電性材料前駆体は、支持体上に、水溶性高分子化合物、架橋剤及び金属硫化物を含有する下地層と、感光性レジスト層をこの順に積層して有する。かかる支持体としては、例えば、ガラスやフレキシブル性を有する樹脂フィルムが挙げられるが、取り扱い性が優れている点で、フレキシブル性を有する樹脂フィルムが好適に用いられる。樹脂フィルムの具体例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。これら樹脂フィルムの厚さは、20〜300μmであることが好ましい。なお、導電性パターンを有する導電性材料に光透過性が求められる場合、支持体は透明支持体であることが好ましく、また透明支持体の全光線透過率は80%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましい。
【0016】
本発明の導電性材料前駆体に用いる支持体は易接着層を有することが好ましい。易接着層は支持体上に塗布する層の塗布性(面質)及び、支持体と塗膜の密着性を向上させることを目的に設ける。易接着層は、合成樹脂あるいは水溶性高分子化合物を含有する層であることが好ましく、かかる合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられる。これらの中でも、特にアクリル樹脂、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタンが好ましい。また合成樹脂としては水分散性のポリマー(エマルジョンやラテックス)を利用することが好ましい。水溶性高分子化合物としては、例えばゼラチンやポリビニルアルコール等が挙げられる。更に易接着層はシリカ等のマット剤、イソシアネート、エポキシ等の架橋剤、滑剤、顔料、染料、界面活性剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。また透明支持体上には耐傷性を目的としたHC(ハードコート)層や、反射率低減を目的としたAR(アンチリフレクション)層等公知の層を設けてもよい。
【0017】
次に支持体上に設けられる下地層について説明する。
本発明における下地層が含有する水溶性高分子化合物としては水溶性のアニオン性高分子化合物、ノニオン性高分子化合物、及び両性高分子化合物等が挙げられる。アニオン性高分子化合物としては、天然由来の化合物、あるいは合成された化合物のいずれでも用いることができ、例えば−COO−基、−SO−基等を有するものが挙げられる。具体的なアニオン性の天然高分子化合物としてはアラビアゴム、アルギン酸、ペクチン等があり、半合成品としてはカルボキシメチルセルロース、フタル化ゼラチン等のゼラチン誘導体、硫酸化デンプン、硫酸化セルローズ、リグニンスルホン酸等がある。また、合成品としては無水マレイン酸系(加水分解したものも含む)共重合体、アクリル酸系(メタクリル酸系も含む)重合体及び共重合体、ビニルベンゼンスルホン酸系重合体及び共重合体、カルボキシ変性ポリビニルアルコール等がある。ノニオン性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース等がある。両性の高分子化合物としてはゼラチン等がある。
【0018】
上記した水溶性高分子の中でも、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビニルアルコールを用いた場合、優れた密着性に加え、とりわけ優れた導電性を有する導電性材料を得ることが可能となる。ポリビニルアルコールは下地層の皮膜形成性及び皮膜強靱性の観点から、完全または部分鹸化されたポリビニルアルコールが好ましく、中でも鹸化度が80%以上のポリビニルアルコールが特に好ましい。また、ポリビニルアルコールの平均重合度は500〜6000が好ましく、1000〜5000がより好ましい。本発明で用いられるポリビニルアルコールとしては、一般的なポリビニルアルコールに加え、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール及びその他ポリビニルアルコールの誘導体も含まれる。ポリビニルアルコールは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
なお本発明において、水溶性高分子化合物の水溶性とは、25℃における水に対する溶解量が少なくとも0.5質量%以上であることを意味し、好ましくは5質量%以上である。本発明の下地層における水溶性高分子化合物の含有量は、固形分で導電性材料前駆体の1m当たり1〜1000mgが好ましく、より好ましくは5〜200mgである。
【0020】
本発明の下地層には、水溶性高分子化合物に加えてウレタンポリマーラテックスを含有することが好ましい。ウレタンポリマーラテックスは、ウレタンポリマーエマルジョン、ポリウレタンラテックス、ポリウレタンエマルジョン、水性ウレタン樹脂等とも表記される。本発明の下地層に用いるウレタンポリマーラテックスにはポリオールとポリイソシアネートから合成されるウレタンポリマーの微粒子を含有する。用いられるポリオールとしてポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられる。
【0021】
本発明において好ましいウレタンポリマーラテックスは、ポリカーボネート系ウレタンポリマーもしくはポリエーテル系ウレタンポリマーのラテックスである。ここでポリエーテル系ウレタンポリマーとはポリオールとしてポリエーテルポリオールを用いたものを意味し、ポリカーボネート系ウレタンポリマーとはポリオールとしてポリカーボネートポリオールを用いたものを意味する。以下に本発明において好ましく用いられるウレタンポリマーラテックスについて説明する。
【0022】
ポリカーボネートポリオールは、例えば炭酸エステルとジオールとを反応させることにより得ることができる。炭酸エステルの例としてはエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどを挙げることができ、ジオールの例としては1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、1,4−ブタンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。また、ポリカーボネートジオールとジカルボン酸あるいはポリエステルとの反応で得られるポリエステルポリカーボネートであってもよい。
【0023】
ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族ポリエーテルポリオール及び芳香族環含有ポリエーテルポリオールが挙げられる。脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、脂肪族低分子量活性水素原子含有化合物(水酸基当量が30以上150未満の2価〜8価またはそれ以上の脂肪族多価アルコール、及び活性水素原子含有基として1級もしくは2級アミノ基を含有する化合物)のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物が使用できる。AOが付加される脂肪族多価アルコールには、直鎖もしくは分岐の脂肪族2価アルコール[(ジ)エチレングリコール、(ジ)プロピレングリコール、1,2−、1,3−、2,3−及び1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,12−ドデカンジオールなど]、脂環式2価アルコール[環状基を有する低分子ジオール、例えば特公昭45−1474号公報記載のもの]、脂肪族3価アルコール[グリセリン、トリメチロールプロパン、トリアルカノールアミンなど]及び脂肪族で4価以上のアルコール[ペンタエリスリトール、ジグリセリン、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、ソルバイドなど]が挙げられる。AOが付加される1級もしくは2級アミノ基を含有する化合物としては、アルキル(炭素数1〜12)アミン、及び(ポリ)アルキレンポリアミン(アルキレン基の炭素数2〜6、アルキレン基の数1〜4、ポリアミンの数2〜5)などが挙げられる。
【0024】
芳香族環含有ポリエーテルポリオールとしては芳香族低分子量活性水素原子含有化合物(水酸基当量が30以上150未満の2価〜8価またはそれ以上の、フェノール類及び芳香族アミン)のAO付加物が使用できる。AOが付加されるフェノール類としては、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなど、芳香族アミンとしてはアニリン及びフェニレンジアミンなどが挙げられる。AO付加物の製造に用いるAOとしては、炭素数2〜12またはそれ以上のAO、例えばエチレンオキサイド(以下、EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下、POと略記)、1,2−、2,3−及び1,3−ブチレンオキサイド、THF(テトラヒドロフラン)、α−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド、エピハロヒドリン(エピクロロヒドリン等)、及びこれらの2種以上の併用(ランダム及び/またはブロック)が挙げられる。脂肪族ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリオキシエチレンポリオール[ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)など]、ポリオキシプロピレンポリオール[ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)など]、ポリオキシエチレン/プロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略記)などが挙げられる。芳香族環含有ポリエーテルポリオールとしては、ビスフェノール骨格を有するポリオール、例えばビスフェノールAのEO付加物[ビスフェノールAのEO2モル付加物、ビスフェノールAのEO4モル付加物、ビスフェノールAのEO6モル付加物、ビスフェノールAのEO8モル付加物、ビスフェノールAのEO10モル付加物、ビスフェノールAのEO20モル付加物など]及びビスフェノールAのPO付加物[ビスフェノールAのPO2モル付加物、ビスフェノールAのPO3モル付加物、ビスフェノールAのPO5モル付加物など]及びレゾルシンのEOもしくはPO付加物などが挙げられる。
【0025】
本発明の下地層に用いるウレタンポリマーラテックスが含有するウレタンポリマーの原材料であるポリイソシアネートとしては、芳香族系ポリイソシアネート類と脂肪族・脂環族系ポリイソシアネート類が挙げられるが、本発明においてはヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートなどの脂肪族・脂環族系ポリイソシアネート類を用いることが好ましい。
【0026】
本発明の下地層に用いるウレタンポリマーラテックスは、ウレタンポリマー微粒子が水系媒体中に分散した水分散物のことである。ウレタンポリマーラテックス中のウレタンポリマー微粒子の平均粒子径は0.01〜0.3μmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1μmである。なお、本発明において下地層に用いるウレタンポリマーラテックスは、下地層の塗液に用いる段階ではウレタンポリマー微粒子の水分散物であるが、下地層は塗布後乾燥され固体の塗膜となるため、下地層中でウレタンポリマーラテックスは、水分散物の状態やウレタンポリマー微粒子の粒子形状を保持している必要はない。
【0027】
上記したウレタンポリマーラテックスは単独あるいは併用することもできる。本発明の下地層におけるウレタンポリマーラテックスの含有量は、水溶性高分子化合物の含有量に対して、固形分量で10〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜70質量%である。
【0028】
本発明における下地層に用いる架橋剤としては、25℃の水に対する溶解量が0.5質量%以上である架橋剤が好ましく、例えばクロム明ばん等の無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類、尿素、エチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−s−トリアジン塩等の活性ハロゲンを有する化合物、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、ジビニルスルホン、ジビニルケトン、N,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基を二個以上有する化合物、「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)の2・6・7章、5・2章、9・3章などに記載の架橋剤等の、公知の高分子用架橋剤を用いることができる。中でも多価アルデヒド化合物が好ましい。架橋剤として多価アルデヒド化合物を用いた場合、とりわけ優れた導電性を有する導電性パターンを得ることが可能となる。
【0029】
多価アルデヒド化合物の代表例としては、例えばグリオキザール、マロンアルデヒド、グルタルアルデヒド、スクシンアルデヒド、ヘプタンジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカンジアール、ドデカンジアール、2,4−ジメチルヘプタンジアール、4−メチルヘキサンジアールなどの脂肪族ジアルデヒドやテレフタルアルデヒド、フェニルマロンジアルデヒドなどの芳香族ジアルデヒド、更にはそれらとメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類が反応したアセタール化合物、及びN,N′,N″−(3,3′,3″−トリスルホミルエチル)イソシアヌレートなどのトリアルデヒド化合物が挙げられる。特に好ましい多価アルデヒド化合物はジアルデヒド化合物であり、特にグルタルアルデヒド及びグリオキザールが好適である。多価アルデヒド化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。下地層における架橋剤の含有量は、水溶性高分子化合物の含有量に対して1〜200質量%であることが好ましい。
【0030】
なお、本発明において下地層に用いる架橋剤は、水溶性高分子化合物やウレタンポリマーラテックスの残留ヒドロキシル基と架橋反応を起こすものであるため、本発明の下地層には高分子化合物と架橋剤の反応生成物が含まれていればよく、必ずしも下地層中に架橋剤が未反応の状態で存在している必要はない。
【0031】
本発明の下地層が含有する金属硫化物は、主に重金属の硫化物の微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)である。金属硫化物の代表例としては、例えば、金、銀等のコロイド粒子や、パラジウム、亜鉛、スズ等の水溶性塩と硫化物を反応させて得られた金属硫化物等が挙げられる。下地層に用いる金属硫化物の含有量は、固形分で導電性材料前駆体の1m当たり0.1〜10mgであることが好ましい。
【0032】
本発明の下地層は、水を主な媒体とし前記の構成成分を含有する塗液を支持体上に塗布・乾燥して設けることが好ましい。塗布方法としては、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの定量塗布方式を用いることができ、用いる塗布方式に合わせて界面活性剤等の各種塗布助剤を用いることもできる。本発明の下地層は、塗膜の架橋を促進させるために塗膜形成後、30〜50℃の温度で3〜7日間加温することが望ましい。
【0033】
本発明の導電性材料前駆体は、支持体上に設けられた前記下地層上に感光性レジスト層を有するものであって、支持体と下地層の間、あるいは下地層と感光性レジスト層の間にあらかじめ金属層は有さない。該感光性レジスト層は、ドライフィルムレジストをラミネートすることにより設けても良いが、パターンの微細化の観点から、感光性液状レジストを塗布・乾燥して設けた感光性レジスト層であることが好ましい。また下地層との接触による感光性能などの経時変化を防ぐためには、ポジ型感光性レジスト層であることがより好ましい。
【0034】
ポジ型感光性レジスト層としては、感光して溶解可能となった部分を、アルカリ水溶液を主成分とする水系現像液で溶解除去できるものが好ましく用いられる。特にキノンジアジド系ポジ型フォトレジスト層が好ましい。キノンジアジド系ポジ型フォトレジスト層は、アルカリ可溶性樹脂と光分解成分であるフォトセンシタイザーを含有する。アルカリ可溶性樹脂としてはクレゾールノボラック樹脂が好ましく、フォトセンシタイザーとしてはナフトキノンジアジドスルホン酸エステルが好ましい。本発明において、ポジ型感光性レジスト層には、例えば塗膜強度を向上させるなどの目的で、アルカリ可溶性樹脂と相溶性のあるエポキシ樹脂やアクリル樹脂、可塑剤としてのポリビニルエーテル類、その他安定剤、レベリング剤、染料、顔料などを含有させても良い。
【0035】
感光性レジスト層の膜厚としては、10μm以下であることが好ましく、5μm以下、更には3μm以下であることがより好ましい。膜厚の下限値は、必要なレジスト性能を確保し塗布を均一に欠点無く行うために、0.5μm以上であることが好ましい。
【0036】
本発明において、感光性液状レジストを塗布して感光性レジスト層を設ける場合には、塗布方法として、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの定量塗布方式を用いることができる。また、用いる塗布方式に合わせて、界面活性剤や増粘剤等の各種塗布助剤を用いることもできる。
【0037】
次に、本発明の導電性材料の製造方法について説明する。本発明の導電性材料の製造方法は、上述した導電性材料前駆体の感光性レジスト層面を任意のパターンで露光後、現像し、露光したパターンのレジスト画像を形成した後、無電解めっきを実施することでレジスト画像が被覆されていない下地層上に優先的に金属層を形成させ、その後レジスト画像を除去する。導電性パターンを得るためのパターン露光の方法としては、感光性レジスト層面と任意のパターンを有するフォトマスクを密着して露光する方法が挙げられる。ここで任意のパターンとは、金属メッシュパターンと周辺トレース配線パターンを有するタッチパネル用光透過性電極を例にとると、目的や要求性能に応じてデザインした、繰り返し単位が正方形や菱形、正六角形等からなるメッシュパターンや、周辺トレース配線パターンのことである。金属メッシュパターンの線幅については、導電性や光透過性等を考慮して、線幅が1〜50μm程度の金属細線が用いられる。ピッチ(繰り返し単位の長さ)については同じく100〜1000μm程度に設定される。また、その周辺トレース配線としてはライン&スペース(複数本並んだトレース配線の線幅と線間隔)で10〜200μmに設定される。任意のパターンにおいて、特に線幅が10μm以下の微細パターンの露光をする際にはフォトマスクを密着して平行光源を用いた平行光露光を行うことが好ましい。本発明の導電性材料の製造方法は、このような線幅が10μm以下の微細な金属細線によるパターンを作製する場合に特に適している。また感光性レジスト層の感光領域のレーザー光を用いて、感光性レジスト層面を任意のパターンで走査露光する方法等もある。露光後、レジストの現像については、環境負荷低減の観点から、アルカリ性水溶液を使用することが好ましい。任意のパターンに露光された感光性レジスト層を現像処理することで、感光性レジスト層が溶解し除去された領域には下地層が現れ、任意のパターンを有するレジスト画像が形成される。
【0038】
本発明の導電性材料の製造方法では、上記のようにして得られた、レジスト画像を形成した面に無電解めっきを施すことで、レジスト画像で被覆されていない領域の下地層上に優先的に金属を積層させ、導電性の金属パターンを形成する。無電解めっき法としては銅めっき、ニッケルめっき、亜鉛めっき、スズめっき、銀めっき等の公知のめっき方法を用いることができるが、その中でも、導電性の観点から無電解銀めっき法が好ましい。
【0039】
無電解銀めっき法としては、硝酸銀及びアンモニアを含むアンモニア性硝酸銀溶液と、還元剤及び強アルカリ成分を含む還元剤溶液の2液を、任意のパターンを有するレジスト画像が形成された導電性材料前駆体の表面上で混合されるように付与し酸化還元反応が生じることによって金属銀を析出させる方法が挙げられる。
【0040】
還元剤溶液としては、グルコース、グリオキザール等のアルデヒド化合物、硫酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジンまたはヒドラジン水和物等のヒドラジン化合物等の還元剤と、水酸化ナトリウムに代表される強アルカリ成分を含有する還元剤溶液が挙げられ、かかる還元剤溶液は、亜硫酸ナトリウムやチオ硫酸ナトリウム等を含有しても良い。
【0041】
アンモニア性硝酸銀溶液には、良好な導電性の金属銀を生成させるためにいくつかの添加剤を加えることもできる。例えば、モノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアミノアルコール化合物、グリシン、アラニン、グリシンナトリウム等のアミノ酸またはその塩等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0042】
アンモニア性硝酸銀溶液と還元剤溶液の2液を、任意のパターンを有するレジスト画像が形成された導電性材料前駆体の表面上で混合されるように付与する方法としては、2種の水溶液をあらかじめ混合し、この混合液をスプレーガン等を用いてレジスト画像が形成された導電性材料前駆体の表面に吹き付ける方法、スプレーガンのヘッド内で2種の水溶液を混合して直ちに吐出する構造を有する同芯スプレーガンを用いて吹き付ける方法、2種の水溶液を2つのスプレーノズルを持つ双頭スプレーガンから各々吐出させ吹き付ける方法、2種の水溶液を2つの別々のスプレーガンを用いて、同時に吹き付ける方法等がある。これらは状況に応じて任意に選ぶことができる。
【0043】
本発明の導電性材料の製造方法における無電解めっきの処理時間は、実用的に求められる導電性を確保できる厚さにめっきするためには5〜300秒が好ましい。好ましいめっき層の厚みは、0.1〜1μmである。本発明の導電性材料前駆体を用いる場合、急速にめっきが進行し、短時間で安定した金属層が得られ、更には、熱処理による焼成も必要がなく、通常の自然乾燥のみで十分な導電性が得られる。
【0044】
本発明の導電性材料の製造方法において、無電解めっきの後に残ったレジスト画像は、用いた感光性レジスト層に適した剥離液を用いて除去する。一般的にはレジスト画像を膨潤させる有機溶剤、あるいはアルカリ性水溶液をスプレーにより吹き付け、レジスト画像を膨潤させることにより除去でき、環境負荷低減の観点からは、アルカリ性水溶液を使用することが好ましい。かかるアルカリ水溶液としては、例えば炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等を含有するpHが11〜14のアルカリ性水溶液を使用することができる。更に、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤等を適当量添加して使用することもできる。なお、これらアルカリ水溶液は、前述の感光性レジスト層の現像にも利用される。以上詳述したように、本発明の導電性材料の製造方法にはエッチング工程は含まれない。
【0045】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
≪導電性材料前駆体1の作製≫
支持体として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラーU34(両面易接着タイプ))を用いた。該支持体の全光線透過率をダブルビーム方式ヘーズコンピューター(スガ試験機株式会社製)を用いて測定したところ、92.4%であった。下記の通り調製した硫化パラジウムゾルを用いて下記の組成の下地層1の塗液を作製した。直径が60mm、斜線角度が45度、線数90線/インチ、溝深さ110μmの斜線グラビアロールを用い、リバース回転且つキスタッチで前記支持体上に下地層1の塗液を塗布・乾燥し、皮膜形成後に40℃の加温庫にて1週間加温した。
【0047】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
5規定塩酸 48g
蒸留水 1000g
B液 硫化ナトリウム 8.6g
蒸留水 1000g
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0048】
<下地層1の塗液の組成/導電性材料前駆体の1mあたりの量>
ポリビニルアルコール 12mg
(株式会社クラレ製PVA217 鹸化度88%、重合度1700)
界面活性剤 12mg
(泰光油脂化学工業株式会社製タイポールNPS−436)
1規定水酸化ナトリウム 110mg
グルタルアルデヒド 18mg
硫化パラジウムゾル 0.4mg
【0049】
このようにして得られた下地層1上に、クレゾールノボラック樹脂及びナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを含有する感光性液状レジストを、前記した斜線グラビアロールを用いリバース回転且つキスタッチで塗布し、90℃で2分間乾燥して、乾燥膜厚が1.5μmのポジ型感光性レジスト層を設けることで、導電性材料前駆体1を得た。
【0050】
≪導電性材料前駆体2の作製≫
下地層1の塗液の作製において、ポリビニルアルコールとしてPVA217の代わりにPVA117(株式会社クラレ製 鹸化度99%、重合度1700)を用いた以外は導電性材料前駆体1の作製と同様にして、導電性材料前駆体2を得た。
【0051】
≪導電性材料前駆体3の作製≫
下地層1の塗液の作製において、ポリビニルアルコールとしてPVA217の代わりにカチオン変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製CM−318 鹸化度88%、重合度1800)を用いた以外は導電性材料前駆体1の作製と同様にして、導電性材料前駆体3を得た。
【0052】
≪導電性材料前駆体4の作製≫
下地層1の塗液の作製において、グルタルアルデヒドの代わりにグリオキザールを用いた以外は導電性材料前駆体1の作製と同様にして、導電性材料前駆体4を得た。
【0053】
≪導電性材料前駆体5の作製≫
下地層1の塗液の作製において用いた硫化パラジウムゾルの代わりに、下記の通り調製した硫化スズゾルを用いた以外は導電性材料前駆体1の作製と同様にして、導電性材料前駆体5を得た。
【0054】
<硫化スズゾルの調製>
A液 塩化スズ 5g
5規定塩酸 48g
蒸留水 1000g
B液 硫化ナトリウム 8.6g
蒸留水 1000g
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化スズゾルを得た。
【0055】
≪導電性材料前駆体6の作製≫
下地層1の塗液の作製において、グルタルアルデヒドの代わりにブチルアルデヒドを用いた以外は導電性材料前駆体1の作製と同様にして、導電性材料前駆体6を得た。
【0056】
≪導電性材料前駆体7の作製≫
下地層1の塗液の代わりに、下記の通り調製したパラジウムゾルを用いて下記の組成の下地層2の塗液を作製し、用いた以外は導電性材料前駆体1の作製と同様にして、導電性材料前駆体7を得た。
【0057】
<パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
5規定塩酸 25g
蒸留水 565g
B液 ポリビニルピロリドン 7.5g
(東京化成工業株式会社製K90)
1規定水酸化ナトリウム 250g
蒸留水 437.5g
C液 ホルムアルデヒド 5g
蒸留水 626g
B液をスターラーで撹拌し、A液とC液を同時にゆっくりと添加し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通しパラジウムゾルを得た。
【0058】
<下地層2の塗液/導電性材料前駆体の1mあたりの量>
ゼラチン 50mg
界面活性剤 12mg
(泰光油脂化学工業株式会社製タイポールNPS−436)
1規定水酸化ナトリウム 110mg
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩
5mg
パラジウムゾル 0.4mg
【0059】
≪導電性材料前駆体8の作製≫
下地層1の塗液の作製において用いた硫化パラジウムゾルの代わりに、前記下地層2の塗液を作製する際に用いたパラジウムゾルを用いた以外は、導電性材料前駆体1の作製と同様にして、導電性材料前駆体8を得た。
【0060】
≪導電性材料前駆体9の作製≫
下地層1の塗液の作製において用いた硫化パラジウムゾルの代わりに、下記の通り調製したスズゾルを用いた以外は導電性材料前駆体1の作製と同様にして、導電性材料前駆体9を得た。
【0061】
<スズゾルの調製>
A液 塩化スズ 5g
5規定塩酸 25g
蒸留水 565g
B液 ポリビニルピロリドン 7.5g
(東京化成工業株式会社製K90)
1規定水酸化ナトリウム 250g
蒸留水 437.5g
C液 ホルムアルデヒド 5g
蒸留水 626g
B液をスターラーで撹拌し、A液とC液を同時にゆっくりと添加し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通しスズゾルを得た。
【0062】
≪導電性材料前駆体10の作製≫
下地層1の塗液の作製において硫化パラジウムゾルを除いた以外は、導電性材料前駆体1の作製と同様にして、導電性材料前駆体10を得た。
【0063】
≪導電性材料前駆体11の作製≫
導電性材料前駆体1の作製で支持体として用いたポリエチレンテレフタレートフィルムを、1質量%の塩化パラジウム溶液に2分間浸漬して一旦乾燥して支持体とし、下地層は設けず、支持体上にポジ型感光性レジスト層を、導電性材料前駆体1の作製と同様にして設けて、導電性材料前駆体11を得た。
【0064】
≪導電性材料前駆体12の作製≫
導電性材料前駆体1の作製で支持体として用いたポリエチレンテレフタレートフィルムを、1質量%の塩化スズ溶液に2分間浸漬して一旦乾燥して支持体とし、下地層は設けず、支持体上にポジ型感光性レジスト層を、導電性材料前駆体1の作製と同様にして設けて、導電性材料前駆体12を得た。
【0065】
≪導電性材料前駆体13の作製≫
導電性材料前駆体1の作製で支持体として用いたポリエチレンテレフタレートフィルムに下地層は設けず直接、ポジ型感光性レジスト層を、導電性材料前駆体1の作製と同様にして設けて、導電性材料前駆体13を得た。
【0066】
<導電性材料の作製>
上記のようにして得られた導電性材料前駆体1〜13の各々について、感光性レジスト層表面に、線幅が3μm(透光部)、線間隔が300μm(遮光部)で、全体が正方形の格子パターン画像のマスク画像と、線幅が10μm(透光部)、線間隔が10μm(遮光部)で、平行に細線が並んだライン/スペース画像からなるマスク画像とを有するガラスマスクを真空密着させ、感光性レジスト層の感光域の波長を有する光(超高圧水銀灯)を集光し、コリメーターレンズを通して平行光露光を行った。露光後の導電性材料前駆体1〜13は各々、現像液として液温30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、現像液をシャワー方式にて感光性レジスト層に30秒間吹き掛けて現像し、レジスト画像を得た。なお露光量は、ライン/スペース画像部のレジスト画像で被覆されていない領域(下地層が露出している領域)の線幅が10μmになるように設定した。レジスト画像部の線幅は共焦点顕微鏡(Lasertec社製OPTELICS C130)で確認した。
【0067】
次に、各導電性材料前駆体の上記レジスト画像を有する側の面を脱イオン水で洗浄し、圧縮空気により脱イオン水を吹き飛ばした後、下記の通り調製したアンモニア性硝酸銀溶液と還元剤溶液を双頭スプレーガンにて、レジスト画像を有する側の面に同時に30秒間吹き付けて無電解銀めっきを行い、レジスト画像で被覆されていない下地層上に銀めっき層を形成した。その後、脱イオン水で洗浄し、自然乾燥させた。双頭スプレーガンの吹き付け量は各々240ml/分であった。
【0068】
<アンモニア性硝酸銀溶液の調製>
D液 硝酸銀 20g
脱イオン水 1000g
E液 28質量%アンモニア水溶液 100g
モノエタノールアミン 5g
脱イオン水 1000g
D液とE液を1:1の質量比で混合し、アンモニア性硝酸銀溶液を得た。
【0069】
<還元剤溶液の調製>
硫酸ヒドラジン 10g
モノエタノールアミン 5g
水酸化ナトリウム 10g
これらを脱イオン水1000gに溶解し、還元剤溶液を得た。
【0070】
次に、各導電性材料前駆体のレジスト画像を有する側の面に、5質量%水酸化ナトリウム溶液をシャワー方式にて60秒間吹き掛けてレジスト画像を溶解除去し、水洗後、自然乾燥することで、格子パターンの銀画像とライン/スペースの銀画像からなる導電性パターンを有する導電性材料1〜10を得た。なお導電性材料前駆体11〜13を用いた場合においては、無電解銀めっきによる銀画像は得られなかった。
【0071】
<導電性パターンのシート抵抗値測定>
得られた導電性材料1〜10の格子パターン部のシート抵抗値を、ロレスターGP/ESPプローブ(株式会社ダイアインスツルメンツ製)を用いて、JIS K7194に従い測定した。結果を表1に示す。なお、導電性材料7〜10は、格子パターン部に銀画像は認められるものの、所々に断線や銀画像のムラが見られシート抵抗値が高すぎて、具体的な値が得られなかったため、表中に「測定不能」と記載した。なお、実使用上、シート抵抗値は50Ω/□以下であることが好ましい。
【0072】
<導電性パターンの全光線透過率測定>
得られた導電性材料1〜10の格子パターン部の全光線透過率を、ダブルビーム方式ヘーズコンピューター(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。なお、実使用上、全光線透過率は80%以上であることが好ましい。
【0073】
<導電性パターンのめっき金属積層部の線幅と厚み測定>
得られた導電性材料1〜10のライン/スペース部から任意の5本のラインを選択し、これらの線幅と厚みを共焦点顕微鏡(Lasertec社製OPTELICS C130)にて測定した。得られた線幅の5本の平均値と、得られた各々のライン(N1〜N5)の細線の厚みを表1に示す。なお、線幅の平均値は、マスク画像の線幅である10μmに近いことが好ましく、細線の厚みは、導電性を発現するために十分であると共にバラツキが少ないことが好ましい。
【0074】
【表1】
【0075】
≪導電性材料前駆体14の作製≫
導電性材料前駆体1の作製において、下地層1の塗液の代わりに下記の組成の下地層3の塗液を作製し、用いた以外は導電性材料前駆体1の作製と同様にして、導電性材料前駆体14を得た。
【0076】
<下地層3の塗液の組成/導電性材料前駆体の1mあたりの量>
ポリビニルアルコール 12mg
(株式会社クラレ製PVA217 鹸化度88%、重合度1700)
ポリカーボネート系ウレタンポリマーラテックス 17.2mg(固形分6mg)
(DIC株式会社製ハイドランWLS210 平均粒径0.05μm)
界面活性剤 12mg
(泰光油脂化学工業株式会社製タイポールNPS−436)
1規定水酸化ナトリウム 110mg
グルタルアルデヒド 18mg
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
【0077】
≪導電性材料前駆体15の作製≫
下地層3の塗液の作製において、ポリカーボネート系ウレタンポリマーラテックスの代わりにポリエーテル系ウレタンポリマーラテックス(荒川化学工業株式会社製ユリアーノW600 平均粒径0.05μm)を固形分で6mg用いた以外は導電性材料前駆体14の作製と同様にして、導電性材料前駆体15を得た。
【0078】
≪導電性材料前駆体16の作製≫
下地層3の塗液の作製において、ポリカーボネート系ウレタンポリマーラテックスの代わりにポリエステル系ウレタンポリマーラテックス(第一工業製薬株式会社製スーパーフレックス500 平均粒径0.14μm)を固形分で6mg用いた以外は導電性材料前駆体14の作製と同様にして、導電性材料前駆体16を得た。
【0079】
≪導電性材料前駆体17の作製≫
下地層3の塗液の作製において、グルタルアルデヒドの代わりにグリオキザールを用いた以外は導電性材料前駆体14の作製と同様にして、導電性材料前駆体17を得た。
【0080】
≪導電性材料前駆体18の作製≫
下地層3の塗液の作製において、ポリビニルアルコールとしてPVA217の代わりにPVA117(株式会社クラレ製 鹸化度99%、重合度1700)を用いた以外は導電性材料前駆体14の作製と同様にして、導電性材料前駆体18を得た。
【0081】
≪導電性材料前駆体19の作製≫
下地層3の塗液の作製において用いた硫化パラジウムゾルの代わりに、前記の硫化スズゾルを用いた以外は導電性材料前駆体14の作製と同様にして、導電性材料前駆体19を得た。
【0082】
≪導電性材料前駆体20の作製≫
下地層3の塗液の代わりに下記の組成の下地層4の塗液を作製し、用いた以外は導電性材料前駆体14の作製と同様にして、導電性材料前駆体20を得た。
【0083】
<下地層4の塗液の組成/導電性材料前駆体の1mあたりの量>
ゼラチン 30mg
ポリカーボネート系ウレタンポリマーラテックス 17.2mg(固形分6mg)
(DIC株式会社製ハイドランWLS210 平均粒径0.05μm)
界面活性剤 12mg
(泰光油脂化学工業株式会社製タイポールNPS−436)
1規定水酸化ナトリウム 110mg
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジンナトリウム塩
5mg
硫化パラジウムゾル 0.4mg
【0084】
≪導電性材料前駆体21の作製≫
下地層4の塗液の作製においてポリカーボネート系ウレタンポリマーラテックスの代わりにアクリル系ラテックス(大同化成工業株式会社製ビニゾール1082 平均粒径0.10μm)を固形分で6mg用いた以外は、導電性材料前駆体20の作製と同様にして、導電性材料前駆体21を得た。
【0085】
≪導電性材料前駆体22の作製≫
下地層4の塗液の作製においてポリカーボネート系ウレタンポリマーラテックスの代わりにポリエステルラテックス(高松油脂株式会社製ペストレジンA115GE 平均粒径0.05μm)を固形分で6mg用いた以外は、導電性材料前駆体20の作製と同様にして、導電性材料前駆体22を得た。
【0086】
≪導電性材料前駆体23の作製≫
下地層4の塗液の作製においてポリカーボネート系ウレタンポリマーラテックスの代わりにポリ酢酸ビニルラテックス(大同化成工業株式会社製ビニゾール290 平均粒径0.5μm)を固形分で6mg用いた以外は、導電性材料前駆体20の作製と同様にして、導電性材料前駆体23を得た。
【0087】
≪導電性材料前駆体24の作製≫
下地層4の塗液の作製においてポリカーボネート系ウレタンポリマーラテックスを除いた以外は、導電性材料前駆体20の作製と同様にして、導電性材料前駆体24を得た。
【0088】
≪導電性材料前駆体25の作製≫
下地層4の塗液の作製において用いた硫化パラジウムゾルの代わりに、前記のパラジウムゾルを用いた以外は導電性材料前駆体20の作製と同様にして、導電性材料前駆体25を得た。
【0089】
≪導電性材料前駆体26の作製≫
下地層3の塗液の作製において硫化パラジウムゾルを除いた以外は、導電性材料前駆体14の作製と同様にして、導電性材料前駆体26を得た。
【0090】
<導電性材料の作製>
上記のようにして得られた導電性材料前駆体14〜26の各々について、感光性レジスト層表面に、線幅が10μm(透光部)、線間隔が300μm(遮光部)の格子パターン画像からなるマスク画像を有するガラスマスクを真空密着させ、感光性レジスト層の感光域の波長を有する光(超高圧水銀灯)を集光し、コリメーターレンズを通して平行光露光を行った。露光後の導電性材料前駆体14〜26は各々、現像液として液温30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、現像液をシャワー方式にて感光性レジスト層に30秒間吹き掛けて現像し、格子パターンのレジスト画像を得た。なお露光量は、格子パターン画像部のレジスト画像で被覆されていない領域(下地層が露出している領域)の線幅が10μmになるように設定した。レジスト画像部の線幅は共焦点顕微鏡(Lasertec社製OPTELICS C130)で確認した。
【0091】
なお導電性材料前駆体26については、上述の導電性材料前駆体14〜25と同様にしてレジスト画像を形成した後に、1質量%の塩化パラジウム溶液に2分間浸漬して一旦乾燥した。
【0092】
次に、各導電性材料前駆体の上記レジスト画像を有する側の面を脱イオン水で洗浄し、圧縮空気により脱イオン水を吹き飛ばした後、前記のアンモニア性硝酸銀溶液と前記の還元剤溶液を双頭スプレーガンにて、レジスト画像を有する側の面に同時に30秒間吹き付けて無電解銀めっきを行い、レジスト画像で被覆されていない下地層上に厚さ0.25μmの銀めっき層を形成した。その後、脱イオン水で洗浄し、自然乾燥させた。双頭スプレーガンの吹き付け量は各々240ml/分であった。
【0093】
次に、各導電性材料前駆体のレジスト画像を有する側の面に、5質量%水酸化ナトリウム溶液をシャワー方式にて60秒間吹き掛けてレジスト画像を溶解除去し、水洗後、自然乾燥することで、導電性材料14〜26を得た。得られた導電性材料では各々、線幅が10μm、線間隔が300μmの格子パターンの銀画像からなる導電性パターンが得られた。
【0094】
<導電性パターンのシート抵抗値測定>
得られた導電性材料14〜26の格子パターン部のシート抵抗値を、ロレスターGP/ESPプローブ(株式会社ダイアインスツルメンツ製)を用いて、JIS K7194に従い測定した。結果を表2に示す。なお、実使用上、シート抵抗値は50Ω/□以下であることが好ましい。
【0095】
<導電性パターンの全光線透過率測定>
得られた導電性材料14〜26の格子パターン部の全光線透過率を、ダブルビーム方式ヘーズコンピューター(スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。結果を表2に示す。なお、導電性材料26においては、銀画像のエッジ部分にレジスト画像の除去不良と見られる汚れが存在していた。なお、実使用上、全光線透過率は80%以上であることが好ましい。
【0096】
<導電性パターンの密着性の評価>
得られた導電性材料14〜26の格子パターン部に粘着テープ(積水化学工業株式会社製セキスイセロハンテープ(テープ規格JIS Z 1522))の12mm幅×5cmを貼り付け、馬楝で粘着テープを上から擦った後、剥離角度60°にてゆっくりとテープを剥がし、格子パターン部の銀画像を共焦点顕微鏡(Lasertec社製OPTELICS C130)にて観察した。銀画像に剥離した部分が無かったものを○、剥離した部分があったものを△として評価した。結果を表2に示す。なお、評価結果が△のものは他の部材との貼合時等において取り扱いに注意が必要であるが、実使用は可能である。
【0097】
【表2】
【0098】
以上の結果より本発明によれば、導電性パターンが線幅25μm以下の微細なパターンであっても、十分な全光線透過率を有した上で良好な導電性を有する導電性パターンを形成することができ、更には、形成した導電性パターンの密着性にも優れている導電性材料前駆体が得られることが判る。更に本発明によれば、無電解めっき時間が短時間であっても良好な導電性を有する導電性パターンの形成が可能であり、高い生産性にて導電性材料を製造することが可能であることが判る。