【実施例】
【0026】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0027】
図3は、実施例のインクジェット記録装置を含む自動印字システムの一例の概略を示す図である。図示の自動印字システム1は、実施例のインクジェット記録装置2、ワーク検出センサ4、搬送速度センサ6及びディスプレイ装置8などで構成されている。
【0028】
インクジェット記録装置2は一般的に「インクジェットプリンタ」と呼ばれていることから、このインクジェットプリンタという用語を使って説明すると、インクジェットプリンタ2は、ワーク搬送ライン10に設置されてワーク搬送ライン10を流れるワークWに文字や図形を印字するのに用いられる。印字対象物であるワークWは、例えば電子部品、プラスチック袋などである。ワーク検出センサ4は、ワークWの有無を検出して印字を開始するトリガを出力し、このトリガ信号を受けてワークWに対する印字が開始される。
【0029】
インクジェットプリンタ2は、ワーク搬送ライン10の近傍に設置されるコントローラ本体200と、ワーク搬送ライン10に設置されるヘッド300とを有し、コントローラ本体200とヘッド300とは可撓性チューブアッセンブリ12によって連結されている。コントローラ本体200とヘッド300とは、これらの間で速乾性のインク液が循環され、そして、ヘッド300は、次々と搬送されてくるワークWに対してドット印字を実行する。
図3の矢印はワークWの搬送方向を示す。
【0030】
図4はヘッド300を斜め前方から見た図である。このヘッド300は、上から下に向けて順に配置された、加圧器(加振部)306、ノズル302、帯電電極308、帯電検出センサ310、偏向電極312、ガター304を有している。加圧器306は、コントローラ本体200から供給されたインク液を加圧するための機能を有している。ノズル302には、その吐出口から鉛直方向下向きに吐出されるインク液に上下振動を与えるためのデバイス(例えばピエゾ素子)が設けられ、この振動によりノズル302から吐出されるインク液が粒子化される。
【0031】
加圧器306はGNDに接地され、他方、帯電電極308には電位が印加される。この帯電電極308は、ノズル302から吐出されたインク液Inが粒子化するブレークポイントに対応して位置しており、このブレークポイントが帯電電極308の所定の位置になるようにインク液Inの粘度が調整される。
図4中、参照符号「Ip」は粒子化したインク粒を示す。
【0032】
制御されたパルス電位が帯電電極308に印加される。後に説明するインク粒の偏向量を大きくするために(偏向量が小さいときに比べて)帯電電極308に相対的に高い電位が印加される。すなわち、帯電電極308の印加電位(正電位)を高めることでインク粒Ipの帯電量(負電位)が大きくなり、後に説明する偏向電極312によるインク粒Ipの偏向量が大きくなる。帯電検出センサ310は、インク粒Ipの帯電状態を検出してインク粒Ipが適切に帯電しているか否かを監視する。
【0033】
偏向電極312は、インク粒Ipを帯電量に応じて偏向させるための一対の対向電極で構成されている。ここでは、数千ボルトの電圧が偏向電極312間に印加される。帯電状態のインク粒Ipは、偏向電極312間を通過する間に、インク粒Ipに作用する静電力によって進行方向が変化(偏向)し、そしてインク粒Ipの帯電量が高い程インク粒Ipの偏向量が大きくなる。ここにノズル302が吐出するインク液Inの吐出方向つまりこの実施例では鉛直方向下向きをx軸方向と呼び、このx軸を横断する横方向をy軸方向と呼ぶと、
図4に示すy軸方向とは逆方向にインク粒Ipが偏向される。
【0034】
インク粒Ipの偏向量を制御することによりワークWに対して印字が行われる。印字に関与しないインク粒Ipはガター304の中に落下して、このガター304によってインク粒Ipが捕捉される。
【0035】
図5は、インクジェットプリンタ2におけるインク液等の流れ経路を示した経路図である。コントローラ本体200には、濃度(粘度)調整したインク液を収容したメインタンク202、回収した洗浄液を収容するコンディショニングタンク204、メインタンク202にインク液を補充するためのインク液を入れたインクカートリッジ400、溶剤を入れた溶剤カートリッジ500が備えられている。インクカートリッジ400、溶剤カートリッジ500はコントローラ本体200に対して脱着可能である。
【0036】
すなわち、実施例のインクジェットプリンタ2はカートリッジ式であるが、変形例として、インクカートリッジ400の代わりにインクタンクをコントローラ本体200に設置し、このインクタンクに対してインク液を補充するようにしてもよい。同様に、溶剤カートリッジ500の代わりに溶剤タンクをコントローラ本体200に設置し、この溶剤タンクに対して溶剤を補充するようにしてもよい。
【0037】
このメインタンク202で濃度調整されたインク液がヘッド300へ送り出されることにより、ヘッド300で帯電したインク粒Ipが生成され、そして、このインク粒Ipの進行方向を偏向させることでワークWに文字や図形が記録される。この印字を実行しないときでもインク液がヘッド300に供給され続ける。このときのインク粒Ipはガター304で受け止められ、ガター304内のインク液が吸引されてコントローラ本体200内のメインタンク202に回収される。すなわち、このインクジェットプリンタ2は常時、インク液を循環させるコンティニュアス方式のプリンタである。
【0038】
このインクジェットプリンタ2では、溶剤カートリッジ500の溶剤をそのままヘッド300へ送り出すことにより、溶剤を用いてヘッド300内の各部を洗浄することができるようになっている。洗浄に用いられた溶剤は、ガター304で受け止められ、このガター304内の洗浄液(溶剤)は吸引されてコントローラ本体200のコンディショニングタンク204に貯留される。すなわち、洗浄に用いられた溶剤はコンディショニングタンク204に蓄えられ、この使用済みの洗浄液(溶剤)は、必要に応じてメインタンク202に供給され、インク液の濃度(粘度)調整のために再利用される。
【0039】
メインタンク202及びコンディショニングタンク204は排気管206を介して外部に連通しており、メインタンク202内及びコンディショニングタンク204内に充満した気体は、排気管206を介して大気中に排出される。
【0040】
メインタンク202には、メインタンク202内のインク液を循環させるためのインク循環経路208が接続されている。このインク循環経路208には、循環供給切替弁V5、循環ポンプ212及び粘度測定電磁弁V11が、インク液の流れ方向に順に介装されており、循環供給切替弁V5及び粘度測定電磁弁V11を開いた状態で循環ポンプ212を駆動させることにより、メインタンク202内のインク液はインク循環経路208を通じて循環される。
【0041】
インク循環経路208における循環供給切替弁V5と循環ポンプ212の間には、循環フィルタFが介装されている。この循環フィルタFは、インク循環経路208内を流れるインク液に含まれる異物を捕獲するためのものであり、40μm以上の異物を捕獲することができる。
【0042】
また、インク循環経路208における粘度測定電磁弁V11の下流側には、インク循環経路208内を流れるインク液の一部を取り込んで、そのインク液の粘度を検出するための粘度計214が介装されている。この粘度計214で検出されるインク液の粘度に基づいて、メインタンク202内のインク液の濃度を検出することができる。
【0043】
インクカートリッジ400内のインク液は、インク供給経路220を介してメインタンク202に流入する。インク供給経路220は、インク流入切替弁V8を介して、インク循環経路208における循環ポンプ212の上流側、より具体的には循環フィルタFの上流側に接続されている。したがって、インク流入切替弁V8及び粘度測定電磁弁V11を開いた状態で循環ポンプ212を駆動させることにより、インク供給経路220及びインク循環経路208を介して、インクカートリッジ400内のインク液がメインタンク202に供給される。
【0044】
溶剤カートリッジ500内の溶剤は、溶剤供給経路222を介してメインタンク202に供給される。溶剤供給経路222は、溶剤流入切替弁V13を介して、インク循環経路208における循環ポンプ212の上流側、より具体的には循環フィルタFの上流側に接続されている。したがって、溶剤流入切替弁V13及び粘度測定電磁弁V11を開いた状態で循環ポンプ212を駆動させることにより、溶剤供給経路222及びインク循環経路208を介して、溶剤カートリッジ500内の溶剤がメインタンク202に供給される。
【0045】
このインクジェットプリンタ2を使用する際には、インクカートリッジ400内のインク液がインク供給経路220を介してメインタンク202に供給されるとともに、溶剤カートリッジ500内の溶剤が溶剤供給経路222を介してメインタンク202に供給されることにより、メインタンク202内に濃度調整されたインク液が生成される。このとき、メインタンク202内のインク液をインク循環経路208に循環させて、その濃度を粘度計214の出力から検出し、検出した濃度に応じた量の溶剤をメインタンク202内に供給することにより、インクの濃度調整を良好に行うことができる。
【0046】
メインタンク202内のインク液は、インク供給管230を介してインクポンプ232に供給され、インクポンプ232から送り出されるインク液は、インク経路231を介してヘッド300へ導かれる。ヘッド300には、上記インク経路231に関連した噴射切替弁V14が設置されている。
【0047】
インク経路231におけるコントローラ本体200側の部分には、減圧弁234及び圧力計236が、インク液の流れ方向に順に介装されている。減圧弁234は、インク経路231内(具体的には、減圧弁234よりも下流側の経路)のインクの圧力が高すぎる場合に、圧力を減少させるためのものである。圧力計236は、インク経路231内、特に減圧弁234の下流側におけるインクの圧力を検出するものであり、この圧力計236で検出される圧力に応じて、インクポンプ232の吐出圧を調整することができる。
【0048】
インク経路231におけるインクポンプ232の下流側、より具体的にはインクポンプ232と減圧弁234の間には、インクメインフィルタFmが介装されている。このインクメインフィルタFmは凡そ10μm以上の異物を捕獲することができる。また、インク経路231には、ヘッド300内において噴射前インクフィルタFfが介装されている。
【0049】
溶剤カートリッジ500の近傍つまり溶剤供給経路222の上側端には、後に説明する光学式空検知機構700が介装されている。溶剤供給経路222には、光学式空検知機構700の下流で分岐した溶剤経路250が接続されている。溶剤経路250には、溶剤ポンプ252、開閉弁V16、減圧弁254が溶剤の流れ方向に順に介装されている。この溶剤経路250はヘッド300に通じており、ヘッド300には、この溶剤経路250に関連した切替弁V12、V15が介装されている。この溶剤経路250はヘッド300の洗浄の際に用いられる。
【0050】
ヘッド300のガター304で回収されたインク液は、インク回収経路240を介して、ヘッド300からコントローラ本体200へ回収される。インク回収経路240は、その先端がメインタンク202に接続されている。インク回収経路240におけるコントローラ本体200側の部分には、ガター流入切替弁V10、回収フィルタF、ガターポンプ242及び回収インク供給切替弁V1が、インクの流れ方向に沿ってこの順序で介装されており、ガター流入切替弁V10及び回収インク供給切替弁V1を開いた状態でガターポンプ242を駆動させることにより、ヘッド300から回収されたインク液がメインタンク202に戻される。
【0051】
ただし、ヘッド300から回収したインク液をメインタンク202に戻す代わりに、メインタンク202とは別個に設けられた回収インクタンクに収容するようにしてもよい。
【0052】
このインクジェットプリンタ2の立ち上げ時や立ち下げ時には、ノズル302から溶剤が噴射されることにより、ノズル302、帯電電極308及び偏向電極312などのヘッド300内の各部が溶剤を用いて洗浄される。洗浄に用いられた溶剤は、ガター304で回収され、インク回収経路240を介してヘッド300からコントローラ本体200へ回収される。
【0053】
コンディショニングタンク204は、ヘッド300から回収された溶剤を受け入れる。すなわち、コンディショニングタンク204は、回収溶剤供給経路258、回収溶剤経路切替弁V3を介して、インク回収経路240におけるガターポンプ242の下流側に接続されている。したがって、ガター流入切替弁V10及び回収溶剤経路切替弁V3を開いた状態でガターポンプ242を駆動させることにより、インク回収経路240及び回収溶剤供給経路258を通じて洗浄に用いた溶剤がコンディショニングタンク204に回収される。コンディショニングタンク204は必ずしも必須ではない。コンディショニングタンク204の機能をメインタンク202で行うようにしてもよい。
【0054】
コンディショニングタンク204内の溶剤は、回収溶剤流入経路260を介してメインタンク202に流入する。回収溶剤流入経路260は、回収溶剤流入切替弁V9を介して、インク循環経路208における循環ポンプ212の上流側に接続されている。したがって、回収溶剤流入切替弁V9及び粘度測定電磁弁V11を開いた状態で循環ポンプ212を駆動させることにより、回収溶剤流入経路260及びインク循環経路208を介して、コンディショニングタンク204内の溶剤をメインタンク202に流入させることができる。
【0055】
ヘッド300から回収された溶剤がコンディショニングタンク204に貯留されているときには、このコンディショニングタンク204に貯留されている溶剤が、溶剤カートリッジ500内の溶剤よりも優先してメインタンク202に供給され、インク液の濃度調整に使用されるようになっている。
【0056】
インクカートリッジ400、溶剤カートリッジ500、メインタンク202及びコンディショニングタンク204にそれぞれ貯留されている液体は、廃液経路262を介して外部に排出することができる。廃液経路262の先端には廃液キャップ(図示せず)が形成されており、この廃液キャップを廃液ボトルに取り付けて廃液を行うことにより、廃液ボトル内に液体を貯めることができる。廃液経路262は、廃液切替弁V4を介して、インク回収経路240におけるガターポンプ242の下流側に接続されている。また、インク回収経路240におけるガターポンプ242及び廃液切替弁V4の間と、インク循環経路208における循環ポンプ212及び粘度測定電磁弁V11の間とは接続管264により接続されている。この接続管264により、回収経路内の気泡が粘度測定経路に混入するのを防ぐことができる。
【0057】
粘度測定電磁弁V11を閉じ、循環供給切替弁V5及び廃液切替弁V4を開いた状態で、循環ポンプ212を駆動させれば、インク循環経路208、接続管264、インク回収経路240及び廃液経路262を介して、メインタンク202内のインク液を廃液することができる。
【0058】
メインタンク202内のインク液を廃液する際、溶剤流入切替弁V13を開くとともに、循環ポンプ212を駆動させれば、溶剤カートリッジ500内の溶剤をメインタンク202内のインク液と共に廃液することができる。粘度測定電磁弁V11を閉じ、回収溶剤流入切替弁V9及び廃液切替弁V4を開いた状態で、循環ポンプ212を駆動させれば、回収溶剤流入経路260、インク循環経路208、接続管264、インク回収経路240及び廃液経路262を介して、コンディショニングタンク204内の溶剤を廃液することができる。
【0059】
インク経路231におけるインクポンプ232の下流側には、インク経路231内のインク液をメインタンク202に送り返すためのインク圧抜き経路266が接続されている。このインク圧抜き経路266は、メインタンク202に連通しており、その途中にインク返送切替弁V2が介装されている。メインタンク202内のインク液を廃液する際、インク返送切替弁V2を開いておけば、ヘッド300に連通するインク経路231内(インクメインフィルタFmの下流側)のインクをインク圧抜き経路266からメインタンク202に流入させ、メインタンク202内のインク液と共に廃液することができる。
【0060】
インク循環経路208における循環ポンプ212の上流側には、空気流通切替弁V6を介して、吸引経路270が接続されている。この吸引経路270は、コントローラ本体200からヘッド300まで延びており、吸引経路270の先端は、ヘッド300に備えられたノズル302に接続されている。このインクジェットプリンタ2の立ち下げ時などには、空気流通切替弁V6及び循環供給切替弁V5を開くことにより、吸引経路270、インク循環経路208、排気管(排気経路)206を介して、ノズル302を大気中に連通させることができる。したがって、コントローラ本体200とヘッド300との間で空気を流通させて、ノズル302から噴射されるインク粒の噴射圧を調整することにより、インク液の切れを良くすることができる。
【0061】
循環ポンプ212、溶剤ポンプ252、インクポンプ232及びガターポンプ242などの各ポンプの動作は、コントローラ本体200に備えられた制御部により制御される。制御部は、従来と同様に、CPUと、RAM、ROMなどのメモリによって構成され、インクジェットプリンタ2を統合制御する。また、回収インク供給切替弁V1、インク返送切替弁V2、回収溶剤経路切替弁V3、廃液切替弁V4、循環供給切替弁V5、空気流通切替弁V6、インク流入切替弁V8、回収溶剤流入切替弁V9、ガター流入切替弁V10、粘度測定電磁弁V11、噴射切替弁V14などの各切替弁の動作は電子制御される。この電子制御部には粘度計214及び圧力計236からの検出信号が入力される。
【0062】
溶剤経路250には、切替弁V15が取り付けられており、その下流には、フィルタFとASCノズル320が配置されている。ASCノズル320は、加圧器306や偏向電極312などを洗浄するためのノズルである。このASCノズル320はヘッド300内に定置され、このASCノズル320から洗浄液がノズル302の先端や偏向電極312に向けて噴出されて、これらの洗浄が行われる。インクジェットプリンタ2を長期に停止する際には、メインタンク202のインク液及びコンディショニングタンク204の溶剤が廃液される。
【0063】
光学式空検知機構700(図6〜図10):
図6〜
図10は光学式空検知機構700を説明するための図である。
図6は光学空検知機構700の配置位置を説明するための図である。
図6を参照して、溶剤カートリッジ500の中の溶剤は、
図5を参照して前述したように循環ポンプ212又は溶剤ポンプ252によって吸い出される。この溶剤カートリッジ500は密封状態が維持されていることから、循環ポンプ212又は溶剤ポンプ252の吸い出しに伴って溶剤カートリッジ500のボトルは潰れて、その容積が小さくなる(減容化)。溶剤カートリッジ500は、これを製造する過程で、溶剤Sを充填したボトル800をゴム栓で密封した後で所定量の空気Arがボトルの中に存在するように、ボトルの中に充填する溶剤Sの量が規定される。光学式空検知機構700は、光学式空検知手段である光学式空検知ユニット702と、好ましくは電磁開閉弁704とを含む(
図6)。
【0064】
図7は光学式空検知ユニット702の斜視図である。光学式空検知ユニット702はユニット本体710とホルダ712とで構成されている。
図8は、光学式空検知ユニット702からホルダ712を取り外した状態つまりユニット本体710の斜視図である。
図9は、
図7のX9―X9線に沿って断面した図である。
【0065】
図8を参照して、ユニット本体710は、コントローラ本体200の内部配管の一部を構成する光透過管720と、投光器722と、受光器724とで構成されている。光透過管720は透明管、典型的にはガラス管、フッ素樹脂(PFA)管で構成される。投光器722、受光器724は光透過管720に臨んで配置されている(
図9)。この光透過管720に臨む投光器722、受光器724は、その投光部及び受光部が光ファイバを主体に構成されており、この光ファイバの基端に投光器本体、受光器本体が接続される。この種の投受光器は従来から既知であるので、その詳しい説明は省略する。
【0066】
図10、
図11は光透過管720を透過する光を使って溶剤カートリッジ500が空になったことを検知する本発明の原理を説明するための図である。つまり透過方式の検知である。
【0067】
図10、
図11の(A)は、光透過管720にエアが入ったときの光の屈折を示し、(B)は、光透過管720が溶剤Sで満たされたときの光の屈折を示す。
図10は反射型投受光器を採用したときの本発明の原理を説明するための図である。
図10の(A)は、光透過管720にエアが入ったときの光の屈折を示し、(B)は、光透過管720が溶剤Sで満たされたときの光の屈折を示す。
【0068】
光透過管720の材料としてガラスを採用したときには、ガラスの屈折率は1.45である。光透過管720の材料としてフッ素樹脂(PFA)を採用したときには、PFAの屈折率は1.35である。
【0069】
溶剤カートリッジ500には、一般的にメチルエチルケトン(MEK)やエタノールが用いられる。MEKの屈折率は1.38であり、エタノールの屈折率は1.35である。これに対して空気の屈折率は1.0003であり、この値は、MEKやエタノールの上述した屈折率とは大きく異なる。
【0070】
溶剤と空気の屈折率の違いを利用したのが本発明の一つの特徴である。
図10に図示の例では、光透過管720がエアで満たされたときに、光透過管720の軸線に対して傾斜した姿勢で配置した投光器722からの光を受光器724が受け入れるように、投光器722及び受光器724の傾斜角度及び相対的な配置が規定されている(
図10(A))。したがって、光透過管720に溶剤Sが存在しているときには、その屈折率の違いによって、投光器722からの光を受光器724で受け止めることはできない(
図10(B))。
【0071】
前述したように、溶剤カートリッジ500には、その内部に所定量の空気が封入してある。溶剤カートリッジ500のボトル800の残量が少なくなるとボトル800は潰れて減容化する。ボトル800の残量がゼロになると、ボトル800の中の空気が光透過管720に入り込む。光透過管720の中に空気が入り込むと、投光器722からの投光が徐々に受光器724で受け止められるようになる。どの程度の光を受光器724が受け取ったときに受光器724の出力を反転させるかは受光器724のしきい値を調整すればよい。これにより、溶剤カートリッジ500が空になったことを直接的に検知することができる。また、溶剤カートリッジ500から光学式空検知機構700との間にエアが混入した状態を検知することができる。
【0072】
なお、
図10には、投光器722と受光器724とが光透過管720の周方向に離間して配置した例が開示されているが、投光器722と受光器724とを光透過管720の軸線方向に離間して配置してもよいのは勿論である。
【0073】
図10に図示の例では、光透過管720を縦置きに配置してもよいし、横置きに配置してもよい。また、光透過管720の断面形状は任意であり、断面円形でもよいし、矩形でもよいし、楕円や扁平な断面形状であってもよい。変形例として、光透過管720が溶剤で満たされたときに投光器722からの光を受光器724が受け入れるように、光透過管720の軸線に対する投光器722及び受光器724の傾斜角度及び相対的な配置を規定してもよい。
【0074】
図11を参照して、詳しく説明すると、投光器722と受光器724は、光透過管720を挟んで互いに対面して配置されると共に、投光器722及び受光器724の光軸が光透過管720の軸線に対して直交するように位置決めされている。
図11の(A)は、光透過管720の中に空気が存在するときを示す。この
図11(A)の状態では、投光器722から出射した光は光透過管720を横断して受光器724によって受け止められる。
【0075】
図11の(B)は、光透過管720の中に有色の溶剤Sが存在するときを示す。この(B)の状態では、投光器722から出射した光は光透過管720の中に存在する有色の溶剤Sによって減衰され、受光器724によって受け止められる光の量は、ゼロ又は
図11の(A)のときに比べて相対的に小さくなる。どの程度の光を受光器724が受け取ったときに受光器724の出力を反転させるかは受光器724のしきい値を調整すればよい。これにより、溶剤カートリッジ500が空になったことを直接的に検知することができる。
【0076】
図12は、光透過管720で反射する光を使って溶剤カートリッジ500が空になったことを検知する本発明の他の原理を説明するための図である。つまり反射方式の検知である。この検知方法は、光透過管720の材料の屈折率と溶剤の屈折率が近似している場合に効果的である。
図12の(A)は光透過管720の中に空気が存在するときを示す。
図12の(B)は光透過管720の中に溶剤Sが存在するときを示す。
【0077】
図12に図示の例では、光透過管720がエアで満たされたときに、投光器722から出射された光が、光透過管720と、その中の空気との境界面で反射された光を、受光器724が受け入れるように、投光器722及び受光器724の傾斜角度及び相対的な配置が規定されている(
図12(A))。したがって、光透過管720に溶剤Sが存在しているときには、光透過管720と、その中の溶剤Sとの境界面での反射が少なくなるため投光器722からの光を受光器724で受け止めることはできない(
図12(B))。
【0078】
投光器722と受光器724の配置に関する変形例として、光透過管720が溶剤Sで満たされたときに、投光器722から出射された光が受光器724で受け入れられるように、投光器722及び受光器724の傾斜角度及び相対的な配置を規定してもよい。
【0079】
溶剤カートリッジ500の空検知(図13〜図15):
溶剤カートリッジ500の溶剤が空になったか否かの空検知処理の手順の一例を
図13〜
図15のフローチャートに基づいて説明する。
図13はメインフローであり、
図14、
図15はサブフローである。
【0080】
図13のメインフローは、溶剤カートリッジ500からメインタンク202に溶剤を供給して、メインタンク202のインク液の粘度調整を行うときに実行される。溶剤カートリッジ500を使用したメインタンク202の粘度調整を行う信号が生成されると(S1)、コントローラ本体200内に溶剤カートリッジ500の負圧よりも大きな負圧を発生させるための動作が開始される(負圧発生動作:S2)。
【0081】
負圧発生動作処理(図14):
図14のステップS201において、コントローラ本体200の各種のバルブが制御されて、溶剤カートリッジ500から溶剤をメインタンク202(
図5)に取り込むための経路が作られる。そして、電磁開閉弁704(
図6)を閉じる(S202)。循環ポンプ212(
図5)の動作によって、電磁開閉弁704から循環ポンプ212に至る経路の負圧が溶剤カートリッジ500内の負圧よりも大きくなるのに十分な時間、電磁開閉弁704は閉じ状態が継続される(S203)。
【0082】
溶剤カートリッジ500の空検知処理:
図13に戻って、ステップS3で電磁開閉弁704(
図6)が開弁される。この電磁開閉弁704の開放によって溶剤カートリッジ500の溶剤の吸い込みが開始される。この電磁開閉弁704の開弁状態は、メインタンク202(
図5)のインク液の粘度(濃度)が目標粘度(濃度)から乖離しているその度合いに応じた時間、継続される。そして、このメインタンク202内のインク液の粘度調整が完了すると電磁開閉弁704が閉弁される(S4)。
【0083】
次のステップS5において、光学式空検知機構700によって溶剤カートリッジ500の空状態が検知されたか否かを判断し、NOつまり溶剤カートリッジ500に残量が存在すると判別されたときには、ステップS6に進んで空検知処理を終える。
【0084】
前記ステップS5においてYESつまり溶剤カートリッジ500の残量がゼロと判別されたときには、次の念のための確認処理(空検知リトライ処理)が実行される(S7)。
【0085】
空検知リトライ処理(図15):
この空検知リトライ処理は、先ず、負圧発生動作を実行する(S701)。すなわち、電磁開閉弁704(
図6)が短時間、開弁される(S702)。この電磁開閉弁704の開弁時間は、溶剤カートリッジ500の溶剤を光学式空検知ユニット702(光透過管720)まで引き込むのに足りる時間である。そして、この所定時間が経過したら電磁開閉弁704を閉じる(S703)。そして次のステップS704に進んで、光学式空検知機構700によって溶剤カートリッジ500の空状態が検知されたか否かを判断し、NOつまり溶剤カートリッジ500に残量が存在すると判別されたときには、ステップS705に進んで、溶剤カートリッジ500は空ではない、つまり溶剤の残量があると判定して、後に説明するステップS8(
図13)に進む。
【0086】
前記ステップS704においてYESつまり溶剤カートリッジ500の残量がゼロと判別されたときには、次のステップS706で空検知回数をインクリメントした後にステップS707で、この空検知回数が規定回数に達したか否かを判別する。上記の空検知の回数が規定の回数に達したらステップS708に進んで、溶剤カートリッジ500は空であると判定して、後に説明するステップS8(
図13)に進む。
【0087】
図13に戻って、上記の空検知リトライ処理が完了したら次のステップS8に進んで空判定の有無が判別され、YESであれば、ステップS9で溶剤カートリッジ500の残量がゼロつまりカートリッジ500には溶剤が残存していないと判定して、これに対応した処理が実行される。空判定に伴う処理を例示すれば、カートリッジの交換を促す警告を発したり、溶剤カートリッジ500が記録媒体を備えている場合には、この記録媒体に残量ゼロを書き込む等を挙げることができる。
【0088】
上記ステップS8においてNO、つまり溶剤カートリッジ500には溶剤が残っているとの判定であれば、ステップS10に進んで、コントローラ本体200の通常の動作に移行する。
【0089】
長期保存用の乾燥処理(図16):
図16は、インクジェットプリンタ2を長期に休止させる場合の処理(長期休止用の乾燥処理)を説明するためのフローチャートである。インクジェットプリンタ2は通常の立ち下げ処理を行った後に電源OFFの状態にあると理解されたい。印字を実施しているインクジェットプリンタ2の動作を停止させて電源OFFする前に、長期休止用の乾燥処理モードを用意し、ユーザが通常の立ち下げ処理の代わり又は立ち下げ処理の後に
図16に図示のフローチャートに従って乾燥処理を実行するようにしてもよい。
【0090】
図16を参照して、ユーザがインクジェットプリンタ2の電源をONし(S20)、ユーザが長期休止用乾燥処理モードを選択すると、ステップS21に進んでメインタンク202及びインク経路231からインク液を廃棄する処理が実行される(全廃液処理)。なお、ユーザがインクジェットプリンタ2の電源をONしたとき、通常の立ち上げ処理を実行するか長期休止用の乾燥処理を実行するかを選択する画面が表示されてもよい。
【0091】
図17は、全廃液処理(
図16のS21)の詳細を説明するためのフローチャートである。全廃液処理がスタートすると、ポンプが動作を開始すると共に、それまで全ての開閉弁が閉弁状態(S2101)であったのが、開閉弁V2、V4、V8(
図5)が開弁される(S2102)。なお、
図17の○印は開弁状態を意味し、×印は閉弁状態を意味する。このステップS2102によってインクカートリッジ400に通じるインク供給経路220のインク液が接続管264を通じて廃液される(インク供給系の廃液処理)。
【0092】
このインク供給系の廃液処理(S2102)が完了したら全ての弁を閉弁(S2103)した後に、次のステップS2104でメインタンク202の廃液処理が行われる(メインタンク系の廃液処理)。このステップS2104での弁の開閉状態は
図17に図示のとおりである。メインタンク202内のインク液はインク循環経路208、開閉弁V5、循環ポンプ212、接続管264、開閉弁V4を通じて廃液される。また、このメインタンク202の廃液に伴ってインク圧抜き経路266内のインク液もメインタンク202を通じて廃液される。
【0093】
次いで、ステップS2105において、開閉弁V1、V11が開弁されて経路に残るインク液がメインタンク202に回収され、次のステップS2106でメインタンク202の更なる廃液が行われる。
【0094】
次のステップS2107では、コンディショニングタンク204の廃液処理が行われる(コンディショニングタンク廃液処理)。このステップS2107では、開閉弁V9、接続管264、開閉弁V4を通じてコンディショニングタンク204の廃液が行われる。
【0095】
次のステップS2108では、経路に残っているインク液をコンディショニングタンク204に回収する処理が行われる。この処理は、上記ステップS2107の経路状態において開閉弁V4を閉弁して廃液を中止することにより行われる。
【0096】
次のステップS2109では、コンディショニングタンク204の更なる廃液処理が行われる(コンディショニングタンク廃液処理)。このステップS2109では、開閉弁V9を開弁した状態で開閉弁V4が開弁されて廃液経路が開かれる。
【0097】
次のステップS2110では、溶剤を経路に供給して溶剤を循環する処理が行われる。すなわち、開閉弁V16が開弁され、溶剤カートリッジ500の溶剤がヘッド300に供給され、ガター304に入った溶剤は開閉弁V10を通じてインク回収経路240を通り、開閉弁V4を通じて廃液される。
【0098】
次のステップS2111では、開閉弁V6が開弁されて吸引経路270の廃液処理が行われる。
【0099】
次のステップS2112では、溶剤カートリッジ500からの溶剤の供給を停止した状態(開閉弁V16が閉弁)で、インク回収経路240にエアを吸い込ませる処理が行われる。また、吸引経路270にエアを吸い込ませる処理が行われる。これによりインク回収経路240及び吸引経路270に残っている溶剤(インク液)が廃液される。
【0100】
次のステップS2113で、循環ポンプ212、ガターポンプ242の動作を停止した後、ステップS2114で、経路内の圧力を抜く処理を行った後にインクジェットプリンタ2は一旦、その動作を停止する。これにより全ての開閉弁が閉弁状態になる(S2125)。
【0101】
図16に戻って、上述した全廃液処理(S21)が終わったら次のステップS22に進んで経路の洗浄処理が行われる。
図18は経路洗浄処理の詳細を説明するためのフローチャートである。この経路洗浄処理に先立ってインクカートリッジ400を外して、その代わりに溶剤カートリッジ500が設置される。したがって、インクジェットプリンタ2のインク供給経路220(
図5)には、インク液に代わって溶剤が供給される。
【0102】
図18を参照して、全ての開閉弁が閉じた状態(S2201)及び上述したようにインクカートリッジ400を取り去って溶剤カートリッジ500を設置した状態で、ステップS2202で開閉弁V8を開いて、インクカートリッジ400と置換した溶剤カートリッジ500からメインタンク202に溶剤が充填される。
【0103】
次のステップS2203で、2本の溶剤カートリッジ500から溶剤の供給を受けながら、メインタンク202に関連した経路208、240、266及びヘッド300のインク液の流れ経路の洗浄が行われる。
【0104】
次のステップS2204で、吸引経路270を含むヘッド300の洗浄が行われる。次のステップS2205で、粘度測定電磁弁V11が開弁されて粘度計214に関連した経路が洗浄される。
【0105】
次のステップS2206で、開閉弁S3が開弁されて、溶剤がコンディショニングタンク204に移送され、また、これに関連した経路の洗浄が行われる。
【0106】
次のステップS2207で、開閉弁V9、V4が開弁されてコンディショニングタンク204の廃液が行われる。
【0107】
次のステップS2208で、開閉弁V4を開弁した状態を保ったままで、本来の位置に配置されている溶剤カートリッジ500の溶剤を開閉弁V16を通じてヘッド300に供給しながら、吸引経路270を通じて廃液される(ヘッド及び吸引経路270の洗浄)。
【0108】
次のステップS2209では、開閉弁V4を開弁した状態を保ったままで、本来の位置に配置されている溶剤カートリッジ500の溶剤を開閉弁V16を通じてヘッド300に供給しながら、インク回収経路240を通じて廃液される(インク回収経路240の洗浄)。
【0109】
本来的に設置されている溶剤カートリッジ500及びインクカートリッジ400の代わりに設置した溶剤カートリッジ(図示せず)の溶剤を使ってインクジェットプリンタ2の経路を以上の手順で洗浄した後にインクジェットプリンタ2は運転を停止した状態になる(S2210:これにより全ての開閉弁が閉弁)。
【0110】
図16に戻って、上記の経路洗浄処理(S22)が終わったら次の全乾燥処理が行われる(S23)。
図19は全乾燥処理の詳細を説明するためのフローチャートである。なお、この全乾燥処理は、インクカートリッジ400、溶剤カートリッジ500を取り外した状態で行われる。
【0111】
図19を参照して、全乾燥処理がスタートすると、ポンプが動作を開始すると共に、それまで全ての開閉弁が閉弁状態(S2301)であったのが、開閉弁V1、V4、V5(
図5)が開弁される(S2302)。メインタンク202は、排気経路206(排気口206a:
図5)を通じて大気開放状態になる。メインタンク202は、インク循環経路208、開閉弁V5を通じて廃液経路262に通じ、循環ポンプ212の吸引力によって、外気が排気経路206からメインタンク202に導入され、メインタンク202を通過したエアはインク循環経路208、廃液経路262を通って外部に排出される。これによりメインタンク202の乾燥が行われる。要するに、排気口206aからメインタンク202に流入したエアが、メインタンク202内の液体を廃液するときの経路を通って外部に排出されることで、メインタンク202の乾燥が行われる。
【0112】
変形例として、メインタンク202を乾燥させるのに、廃液経路262を使って外気を取り込み、この外気を廃液経路262、インク循環経路208を通じてメインタンク202内に導入し、このメインタンク202内のエアを排気経路206を通じて外部に排出するようにしてもよい。つまり、廃液経路262からメインタンク202を通り排気経路206を通じて外部に排出されるエアによってメインタンク202を乾燥させるようにしてもよい。
【0113】
次のステップS2303では、開閉弁V1を閉弁する代わりに開閉弁V2が開弁される。この開閉弁V2の開閉によって、圧力変動を発生させ、インクポンプ232の下流にあるフィルタFのメディア(繊維)に残留したインクを除去しやすくなる。具体的には、開閉弁V2を閉じると、インク経路231に圧が溜まる一方、開閉弁V2を開くと、インク経路231の圧が開放される。この開放した瞬間、エアの流速が速くなるため、フィルタFのメディアの抵抗があっても、残留インクを除去し易くなる。
【0114】
次のステップS2304では、開閉弁V10、V6を開くことにより、外気がヘッド300(ノズル302)やガター304を通じて導入され、インク回収経路240、吸引経路270をエアが通過して、廃液経路262を通じて外部に排出される。
【0115】
次のステップS2305では、ヘッド300の開閉弁V14、V15、V16が開弁され、溶剤カートリッジ500を受け入れるリザーバから導入されたエアが溶剤ポンプ252、開閉弁V16を通って溶剤経路250をエアが通過してヘッド300のASCノズル320から吐出される。これにより溶剤経路250の乾燥が行われる。なお、このとき開閉弁V12が開くことで、ヘッド300内のインク経路の一部の乾燥も行われる。具体的には、開閉弁V12が開くと、加圧器306、開閉弁V6、吸引経路270、開閉弁V4、廃液経路262を介して、エアが外部に排出される。これにより、インク経路の一部の乾燥が行われる。
【0116】
次のステップS2306では、開閉弁V10、V4が開弁されてガター304を通じて導入されたエアがインク回収経路240を通過して廃液経路262を通じて外部に排出される。変形例として、ガター304を通じて導入されたエアがインク回収経路240を通過し、また、メインタンク202を通過させて排気経路206を通じて外部に排出させるようにしてもよい。また、開閉弁V6が開弁されて、溶剤カートリッジ500のリザーバ又はメインタンク206を通じて導入されたエアが、溶剤経路250又はインク経路231、吸引経路270を通って廃液経路262を通じて外部に排出される。これによりインク回収経路240、インク経路231、溶剤経路250、吸引経路270の乾燥が行われる。
【0117】
次のステップS2307では、開閉弁V13及びV4が開弁し、循環ポンプ212が稼動することで、溶剤供給経路222(粘度調整ライン)の乾燥を行うことができる。
【0118】
次のステップS2308では、開閉弁V5、V11が開弁されることによって、粘度計214を含む粘度測定経路にエアが流れメインタンク202を通じて循環される。これにより粘度測定経路の乾燥が行われる。エアは、ガター304、排気管206、開閉弁V10、接続管264を通じて導入される。
【0119】
次のステップS2309では、開閉弁V3、V8が開弁されることによって、インクカートリッジ400を受け入れるリザーバからエアが導入され、開閉弁V3を通ってコンディショニングタンク204に入り、このコンディショニングタンク204から排気管206を通じて外部に排出される。これによりコンディショニングタンク204の乾燥が行われる。
【0120】
次のステップS2310では、コンディショニングタンク204のラインが乾燥される。具体的には、開閉弁V4、V9が開弁しているので、循環ポンプ212の稼動によって、排気口から吸引されたエアが、排気経路206、コンディショニングタンク204、回収溶剤流入経路260、開閉弁V9、開閉弁V4、廃液経路262を通って外部に排出される。この過程で、経路の乾燥が行われる。
【0121】
以上の一連の乾燥処理が終わったら全ての開閉弁が閉じられる(S2311)。そして、このステップS2301〜S2311の処理は、所定回数反復的に実行される(S2312)。
【0122】
図16に戻って、上記の全乾燥処理が終わったらステップS23からS24に進んでインクジェットプリンタ2の電源がOFFされる。
【0123】
図16〜
図19を参照して説明した乾燥処理によって、インクジェットプリンタ2の残留液を経路に膜を張らせない状態で固化させることができる。この乾燥処理によって、
図1、
図2を参照して説明したように、経路内の残留液は、経路の壁面に付着した状態で固化する。また、逆止弁であれば球弁が浮上した状態でその球弁の球面に付着した状態で固化する。したがって、
図16〜
図19を参照して上述した乾燥処理を実行することによって、インクジェットプリンタ2を長期に亘って休止させたとしても、経路や弁を閉塞させるような固着が発生する虞はない。
【0124】
図16に示すステップS30は、インクジェットプリンタ2を休止した後に初めて電源をONしたときを意味している。この電源ONに続いて立ち上げ処理が実行され(S31)、この立ち上げ処理が完了した後にインクジェットプリンタ2は通常の動作に移行する(S32)。
【0125】
前述した全乾燥処理に関連して立ち上げ処理(S31)について説明すると、
図5を参照して前述したインクジェットプリンタ2の回路構成において、循環ポンプ212、ガターポンプ242、インクポンプ232、溶剤ポンプ252はダイアフラム式のポンプで構成されている。このダイアフラム式ポンプは既知のように容積移送式ポンプに分類される。
【0126】
既知のように、ダイアフラム式ポンプは、これに関連して逆止弁が必須である。
図2を参照して前述したように、全乾燥処理では、強制的にエアを経路に流すことにより経路の乾燥が実行される。したがって、全乾燥処理の後では、吸引ポンプ24の球弁24aの表面やシールリング24bにはインク液の樹脂成分が固化した状態にある。したがって、インクジェットプリンタ2の休止の後に、インクジェットプリンタ2を起動しても、吸引ポンプのエアリークによって吸引ポンプの本来の閉弁機能を発揮できず、ポンプの本来の吸引能力を発揮できない状態になっている虞がある。
【0127】
図20を参照して、上記の問題を具体的な例で説明する。
図20は、全乾燥処理後、初めてインクジェットプリンタ2の電源をONしたときの状態を示してある。なお、ガターポンプ242の逆止弁の球弁24aの表面に樹脂成分Reが固化して、ガターポンプ242にエアリークが発生していると理解されたい。
【0128】
インクジェットプリンタ2の電源をONしてノズル302(
図5)からインク粒Ipが吐出されると、このインク粒Ipはガター304によって受け止められる。そして、ガター304に貯まったインクはガターポンプ242によって吸引される。ガターポンプ242は上述したエアリークによって吸引能力が低下している。また、図示の例では、インク回収経路240の一部(典型的にはヘッド300とコントローラ本体200とを連結するチューブアッセンブリ12の部分)が上下に湾曲している。
【0129】
ノズル302からインク粒Ipを吐出した直後つまりガターポンプ242が吸引し始めた初期では、ガター304から吸引するインクの量も少ない軽負荷の状態であるためガターポンプ242の吸引によってインクはインク回収経路240に吸い込まれる(
図20の(A))。しかし、この吸い込みが続くとインク回収経路240の中のインクの量が多くなり、これを吸い上げるだけの負圧をガターポンプ242が生成できないと、その後にノズル302から吐出されるインク粒Ipはガター304から溢れ出してしまう(
図20の(B))。
【0130】
このことは、例えば週末にインクジェットプリンタ2を休止したとき、ポンプを交換したとき、インクジェットプリンタ2を設置したとき等にもポンプの本来の吸引能力を発揮できない状態が発生することが多々ある。
【0131】
このようなポンプの吸引能力低下に対処するための手法として、インクジェットプリンタ2は負荷軽減立ち上げモードを備えているのが好ましい。
【0132】
負荷軽減立ち上げモードでは、ノズル302からインク粒Ipが吐出する期間に空白期間が設けられる。ノズル302からインク粒Ip又は溶剤を例えば15秒間吐出し、その後、30秒間インク粒Ip又は溶剤の吐出を停止する。このサイクルを何回か繰り返す。これによる作用効果を
図21を参照して説明する。
【0133】
ノズル302からインク粒Ip又は溶剤を吐出する期間が15秒間だとすると、
図21の(A)は、第2回目の吐出期間の途中を図示している。
図21の(B)は、4回目の吐出期間の途中を図示してある。ガター304とガターポンプ242との間のインク回収経路240に位置しているインク液又は溶剤を参照符号40で図示してある。ノズル302からインク粒Ip又は溶剤を吐出していない期間が30秒間だとすると、この間は、ガター304からエアがインク回収経路240に吸い込まれる。
【0134】
第1回目の吐出期間にガター304からインク回収経路240に吸引されたインク液又は溶剤を参照符号40(No.1)で示し、第2回目の吐出期間にガター304からインク回収経路240に吸引されたインク液又は溶剤を参照符号40(No.2)で示し、第3回目の吐出期間にガター304からインク回収経路240に吸引されたインク液又は溶剤を参照符号40(No.3)で示し、第4回目の吐出期間にガター304からインク回収経路240に吸引されたインク液又は溶剤を参照符号40(No.4)で示してある。
【0135】
第1回目と第2回目の吐出期間の間にガター304からインク回収経路240に吸引されたエアを参照符号42(No.1)で示し、第2回目と第3回目の吐出期間の間にガター304からインク回収経路240に吸引されたエアを参照符号42(No.2)で示し、第3回目と第4回目の吐出期間の間にガター304からインク回収経路240に吸引されたエアを参照符号42(No.3)で示してある。
【0136】
各回の一塊のインク液又は溶剤40の量は、吸引能力が低下したガターポンプ242がインク回収経路240に生成することのできる負圧によってインク液又は溶剤40を吸引できる程度に設定される。つまり、ガターポンプ242の負荷を低減することで、ガターポンプ242までインク液又は溶剤40が到達できる吐出期間が設定される。
【0137】
一塊のインク液又は溶剤40により、各回のインク液又は溶剤40(No.1)、40(No.2)、40(No.3)・・・は順次ガターポンプ242に到達することができる。ガターポンプ242にインク液又は溶剤40が入り込むことによって、このインク液又は溶剤40によって、ガターポンプ242に付着して固化している樹脂成分Reが溶解される。したがって、経時的にガターポンプ242はその本来の吸引能力を取り戻すことができる。
【0138】
上記吐出期間は同じであっても良いし、異なっていても良い。ガターポンプ242の吸引能力の予想できる復活に伴って吐出期間を長く設定してもよい。
【0139】
立ち上げ処理(図22):
図22はインクジェットプリンタ2が備えている2つの立ち上げ処理モードを説明するためのフローチャートである。
図22を参照して、先ずステップS50で負荷軽減フラグがON状態にあるか否かの判別が行われる。ここに負荷軽減フラグは次の条件が成立しているときにONされる。なお、他にも、出荷直後(ユーザが購入後、初回起動時)に電源ONしてもよい。
【0140】
(1)インクジェットプリンタ2の電源OFFから30時間経過:
(2)インクジェットプリンタ2が上述した全乾燥処理を行った後、初めて電源ON:
(3)ガターポンプ242を交換した後、初めて電源ON。
【0141】
負荷軽減フラグがOFFのときには、ステップS51に進んで通常の立ち上げ処理が開始される。すなわち、ステップS52でインク経路231、溶剤経路250が昇圧される。次のステップS53で溶剤がヘッド300に供給され、ノズル302から溶剤が吐出され、この溶剤はガター304で受け止められて、ガター304内の溶剤はコンディショニングタンク204に回収される。
【0142】
ノズル302からの溶剤吐出を所定時間行った後に溶剤の吐出を停止し(S54)、次いで、インク循環経路208でのインク液の循環が開始される(S55)。これにより立ち上げ処理が完了する(S56)。
【0143】
ステップS50に戻って、このステップS50において、フラグがONであると判断されると、ステップS57に進んで負荷軽減立ち上げ処理が開始される。すなわち、ステップS58でインク経路231、溶剤経路250の昇圧が開始される。そして、次のステップS59で溶剤がヘッド300に供給される。すなわちノズル302から溶剤が吐出され、この溶剤はガター304で受け止められて、ガター304内の溶剤はコンディショニングタンク204に回収される。
【0144】
この溶剤の吐出は15秒間継続され(S60)、溶剤吐出から15秒が経過すると溶剤吐出が停止される(S61)。
【0145】
次のステップS62において、上記の溶剤吐出の期間が第2回目であるか否かが判定される。いまは第1回目であることから、NOということでステップS63に進んで30秒間、溶剤の吐出停止が継続される。この間は、ガター304からエアが吸い込まれることになる。そして、30秒が経過すると前述したステップS59に進んで溶剤の吐出が再開され、この溶剤の吐出は15秒間継続される(S60、S61)。
【0146】
この第2回目の溶剤吐出期間が経過すると前記ステップS62からステップS64に進んで、インク循環経路208でのインク液の循環が開始され(S64)、次いで負荷軽減フラグのOFFが行われる(S65)。これにより立ち上げ処理が完了する(S66)。
【0147】
上記の処理において溶剤を吐出する所定時間(15秒:ステップS60)は任意に設定可能であり、例えば第1回目の溶剤吐出期間に比べて第2回目の溶剤吐出期間を長くしてもよい。また、所定時間(30秒)の間隔を隔てて溶剤を吐出する期間は2回に限定されず、3回以上の任意の回数を設定することが可能である。インクジェットプリンタ2の休止期間の長短によって例えば長く休止されたときには溶剤吐出期間の回数を増やすようにしてもよい。また、インクジェットプリンタ2の休止期間における環境温度の平均値の高い低い、最高温度の高い低いなどによって、溶剤吐出期間の回数を増減するようにしてもよい。勿論、環境温度の平均値が高い又は最高温度が高いときには溶剤吐出期間の回数を増やすのがよい。なお、溶剤吐出の回数を増やすと、負荷が重くなる可能性があるため、溶剤吐出の間隔を長くするようにしてもよい。
【0148】
図23を参照して、立ち下げ処理モードの自動設定に関する処理手順の具体例を説明する。
図23のステップS70はインクジェットプリンタ2の立ち下げ処理を示し、この立ち下げ処理の後にインクジェットプリンタ2は電源OFFされる(S71)。インクジェットプリンタ2の電源をOFFする際に電源OFFの日時がメモリに記憶される(S72)。
【0149】
インクジェットプリンタ2は、電源をOFFする前に前述した立ち下げ処理が実行される。すなわち、立ち下げ処理は、ヘッド(ノズル)の洗浄及びインク液が流れた経路の洗浄を行い、次いで、洗浄液である溶剤を回収した後に空気を通過させて、洗浄した経路を乾燥させる。
【0150】
インクジェットプリンタ2は複数の立ち下げ処理モードを有し、環境温度などを検知して最適な立ち下げモードが設定される。インクジェットプリンタ2は休止期間中であっても、その設置環境の特に温度によって溶剤の揮発量が異なる。例えば、空調設備が整った環境下であっても、休日の空調停止によって設置環境の温度は外気温度の影響を受けて変動する。典型例で説明すれば、夏は溶剤の揮発量が多い。冬は溶剤の揮発量が少ない。また、空調が働いていても、夏期は例えば28℃前後に設定され、冬は例えば22℃前後に設定される。
【0151】
インクジェットプリンタ2が休止している間の設置環境の温度をインクジェットプリンタ2に温度センサを設置して、この温度センサからの出力を記録しておいてもよいが、この温度センサを設けない場合には、粘度計214(
図5)の出力及び/又は光学式空検知機構700(
図5〜
図12)の出力によって間接的に環境温度を推定するのがよい。
【0152】
推定の方法を次に例示的に説明する。
(1)インクジェットプリンタ2の電源OFFから例えば7時間以上経過した後に電源ONされたときに電源ON時の粘度計214の出力から放置温度を推定する。インクジェットプリンタ2の筐体の熱容量は比較的大きい。したがって、インクジェットプリンタ2の休止期間中の平均温度と電源ON時の温度はほぼ等しいと考えることができる。推定した温度を次の式に基づいて第1スコア(判定値)を求めてもよい。
【0153】
第1スコア=(放置温度−20)×10
【0154】
(2)インクジェットプリンタ2の運転中、1時間毎に粘度計214の出力を記録して最高温度を推定する。粘度計214の出力に基づく推定温度は、インクジェットプリンタ2の電源ONから最大24時間まで1時間毎に粘度計214の出力を記録し続けることにより行うのがよい。日本の天候で説明すれば、夏の最高温度は38℃、冬の最高温度は32℃、空調の設定温度は、夏は28℃、冬は22℃と考えることができる。推定した最高温度を次の式に基づいて第2スコア(判定値)を求めてもよい。
【0155】
第2スコア=(最高温度−32)×16
【0156】
(3)
図5〜
図12を参照して説明した光学式空検知機構700の空判定を取り込んで、これにより環境温度が比較的高温であったか否かを判別する。溶剤カートリッジ500がインクジェットプリンタ2に搭載され且つ溶剤カートリッジ500が空でない場合でも、インクジェットプリンタ2の休止期間中に光透過管720内の溶剤が揮発してしまう可能性がある。この現象は夏の熱帯夜のときに発生し易い。
【0157】
光学式空検知機構700による空判定にスコアを付与するのであれば、第3スコア=100を設定すればよい。光透過管720内の溶剤が揮発して光透過管720内がガス状態となっている場合には、例えば第3スコア=100が設定される。
【0158】
上記(1)〜(3)のパラメータの少なくとの一つのパラメータに基づいて立ち下げ処理モードを選択してもよいが、全てのパラメータから総合的に環境温度を推定して立ち下げ処理モードを選択してもよい。
【0159】
例えば、第1〜第3のスコアの合算値が150点以上であれば溶剤の揮発量が多く、インクジェットプリンタ2の休止期間中に経路内の残留液が固化してしまう可能性があるとして、立ち下げ処理での溶剤使用量を相対的に増量する立ち下げ処理モードを実行するのがよい。
【0160】
逆にスコアの合算値が50点以下であれば溶剤の揮発量が少なく、インクジェットプリンタ2の休止期間中に経路内の残留液が固化してしまう可能性が低いとして、立ち下げ処理での溶剤使用量を相対的に減量する立ち下げ処理モードを実行するのがよい。
【0161】
図23を参照して立ち上げ処理モードの自動設定の手順の一例を具体的に説明すると、上述したように、ステップS70は、インクジェットプリンタ2の電源OFFする際の立ち下げ処理を示す。この立ち下げ処理が完了するとインクジェットプリンタ2の電源がOFFされる(S71)。この電源OFFの際、粘度計214の出力に基づく温度を検出して、この温度がメモリに記憶される(S72)。ここに、粘度計214が計測したインク液の粘度と温度とは一定範囲の相関関係がある。
【0162】
例えば休日明けにインクジェットプリンタ2の電源をONすると(S73)、ステップS82の立ち上げ処理を完了した後に印字が実行可能になるが(S83)、これとは別にステップS74で電源ON(S73)した時の日時及び粘度計214の検出値に基づく温度(T2)がメモリに記録される。次のステップS75では、上述したステップS72で前回電源をOFFしたときの日時と、今回電源をONしたときの日時から、前回の電源OFFから7時間が経過しているか否かの判定が行われる。
【0163】
ステップS75でYESつまり前回の電源OFFから今回の電源ONまで7時間以上経過しているときには、ステップS76に進んで今回電源をONしたときの粘度計214の検出値に基づく放置温度から、上述した第1スコアが求められる。
【0164】
次のステップS77では、光学式空検知機構700から光透過管720が空であるか否かを判定して、空であれば、上記第3スコアとして100が設定される。
【0165】
また、電源ON(S73)の後、定期的に粘度計214が検出した粘度に基づく温度(取得温度)がメモリに記録され(S78)、次のステップS79において、この取得した温度と既に入手している最高温度とを対比する。そして、取得温度が最高温度よりも高いときにはステップS80に進んで環境温度(最高温度)の更新が行われる。
【0166】
上記ステップS79において、取得した温度が最高温度よりも低いときにはステップS81で1時間待って再びステップS78に進んで粘度計214の検出値に基づく温度が求められる。これにより、インクジェットプリンタ2の電源がONされている間、最高温度の更新が行われる。
【0167】
インクジェットプリンタ2で立ち下げ指令が生成されると(S84)、直ちに上述したスコアが算出され(S85)、次のステップS86で、このスコアが150以上か否かの判定が行われる。ステップS86でYESつまり高温環境下にあるとして、ステップS87で第1立ち下げモードが設定され、この第1立ち下げモードに基づいて立ち下げ処理を行った後に電源がOFFされる。
【0168】
上記ステップS86においてNOつまりスコアが150未満であれば、ステップS88で、スコアが50以上であるか否かの判定が行われ、NOつまり50未満であれば、ステップS89で第2立ち下げモードが設定され、この第2立ち下げモードに基づいて立ち下げ処理を行った後に電源がOFFされる。
【0169】
上記ステップS88において、YESつまりスコアが150未満50以上であれば、ステップS90に進んで前回電源OFFするときの立ち下げモードで立ち下げ処理を行った後に電源がOFFされる。
【0170】
ここに、第1立ち下げモードでは、洗浄に用いられる溶剤の量が比較的多く(例えば溶剤消費量16cc)且つ洗浄時間及び回収時間も比較的長い(トータル245秒)。第2立ち下げモードでは、洗浄に用いられる溶剤の量が比較的少なく(例えば溶剤消費5.6cc)且つ洗浄時間及び回収時間も比較的短い(トータル158秒)。
【0171】
上記の2つの立ち下げモードを自動的に使い分けることにより、溶剤の使用量の的確性を高めて溶剤の過剰な使用を回避することができると共に比較的揮発し易い環境下での固着の問題の発生を未然に防止することができる。
【0172】
なお、
図5に示すように、インクジェットプリンタ2のコントローラ本体200には、経路に流れる不要物を取り除くための複数のフィルタ(F、Fm、Ff等)が設けられている。そして、
図19に示す全乾燥処理によれば、これら複数のフィルタも併せて乾燥させ、長期保存前に、フィルタのメディア(繊維)にインクが残留するのを低減することができる。
【0173】
しかし、それでもインク残留を完全に防ぐことは困難であり、一定期間が経過した後(例えば1年毎に)、フィルタを新品に交換する必要がある。このとき、フィルタを1個ずつ交換することもできるが、これは手間の掛かる作業である。
【0174】
そこで、複数のフィルタを1個のモジュールにすることで、フィルタ交換作業を容易にしている。具体的には、例えば、循環ポンプ212の上流に配置された循環フィルタFと、ガターポンプ242の上流に配置された回収フィルタFとをモジュール化した様子を、
図24、
図25を用いて説明する。
【0175】
図24は、コントローラ本体200の前面カバーを開けたときの様子を示す図(一部抜粋)であって、フィルタモジュール600を取り付けた後の様子を示している。
図25は、コントローラ本体200の前面カバーを開けたときの様子を示す図(一部抜粋)であって、フィルタモジュール600を取り付ける前の様子を示している。
【0176】
図24に示すフィルタモジュール600は、略直方体形状を有し、その前面にツマミ部601を有している。ユーザは、ツマミ部601を摘んでコントローラ本体200の前方に引き出すことで、フィルタモジュール600をコントローラ本体200から取り外すことができる(
図25参照)。
【0177】
交換可能に収容されるフィルタモジュール600は、その内部に、インク液が流れるインク流路を有しており、そのインク流路の途中にフィルタが配置されている。
図24に示すフィルタモジュール600は、その背面の略四隅に4本のチューブ突起を有しており(図示せず)、これら4個のチューブ突起がコントローラ本体200側のチューブ受入部602〜605(
図25参照)に連結可能になっている。また、4個のチューブ突起は、フィルタモジュール600内で循環フィルタFが配置されたインク流路のIN/OUT、フィルタモジュール600内で回収フィルタFが配置されたインク流路のIN/OUT、に相当する。
【0178】
このように、複数のチューブ突起を有するフィルタモジュール600がコントローラ本体200に取り付けられたとき、フィルタモジュール600内のインク流路と、コントローラ本体200側のインク流路とが、連結(連通)されるようになっている。したがって、ユーザは、フィルタモジュール600を交換するだけで、複数のフィルタを一度に交換することができる。
【0179】
なお、本実施形態では、ツマミ部601の後方にネジ軸が取り付けられており(図示略)、ツマミ601を回すと、このネジ軸がネジ受け部606に螺合されるようになっている。つまり、フィルタモジュール600を前方からコントローラ本体200に取り付けた後、ツマミ部601を回して締め付けることで、コントローラ本体200側にしっかり固定することができる。もちろん、本実施形態のように、螺合により固定するだけでなく、係合により固定したり、嵌合により固定したりすることも可能であり、フィルタモジュール600をコントローラ本体200にしっかり固定するための構造の如何は問わない。
【0180】
また、本実施形態では、フィルタモジュール600の背面中央下方に、ガイド用の孔が設けられており(図示略)、フィルタモジュール600をコントローラ本体200に取り付けたとき、コントローラ本体200側に設けられたガイド突起607(
図25参照)が、このガイド用の孔に挿入されるようになっている。これにより、フィルタモジュール600を取り付ける際のガタつきを低減することができる。
【0181】
さらに、本実施形態では、2個のフィルタを1個のフィルタモジュール600に埋め込んでいるが、例えば3個、4個など、3個以上のフィルタをフィルタモジュール600に埋め込んでも構わない。