特許第6266362号(P6266362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6266362-射出成形機用取出機 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6266362
(24)【登録日】2018年1月5日
(45)【発行日】2018年1月24日
(54)【発明の名称】射出成形機用取出機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/42 20060101AFI20180115BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20180115BHJP
【FI】
   B29C45/42
   B29C33/44
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-14751(P2014-14751)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-139964(P2015-139964A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】坂本 一郎
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−048324(JP,A)
【文献】 特開昭51−109951(JP,A)
【文献】 実開昭63−151816(JP,U)
【文献】 特開2004−160910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/42
B29C 33/44
B22D 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に形成されるキャビティ空間に成形材料を充填して得られる成形品を前記金型から取り出す射出成形機用取出機であって、
ガス流路を形成するガス流路形成部と、
前記成形品を保持する成形品保持部を有し、
前記ガス流路形成部は、成形停止時に、前記金型の温度よりも低い露点温度の除湿ガスを前記ガス流路から前記金型に吹き付け、
成形運転時に、前記ガス流路形成部が前記成形品保持部から前記ガス流路へガスを吸引することにより、前記成形品保持部が前記成形品を吸着して保持する射出成形機用取出機。
【請求項2】
成形運転時に、前記ガス流路形成部が前記ガス流路から前記成形品保持部にガスを供給することにより、前記成形品保持部が前記成形品の保持を解除する、請求項1に記載の射出成形機用取出機。
【請求項3】
金型に形成されるキャビティ空間に成形材料を充填して得られる成形品を前記金型から取り出す射出成形機用取出機であって、
ガス流路を形成するガス流路形成部と、
前記成形品を保持する成形品保持部を有し、
前記ガス流路形成部は、成形停止時に、前記金型の温度よりも低い露点温度の除湿ガスを前記ガス流路から前記金型に吹き付け、
成形運転時に、前記ガス流路形成部が前記ガス流路から前記成形品保持部にガスを供給することにより、前記成形品保持部が前記成形品の保持を解除する射出成形機用取出機。
【請求項4】
前記ガス流路形成部によって前記ガス流路から前記成形品保持部に供給されるガスを、保持解除用ガスと前記除湿ガスとの間で切り替える切替部を有する、請求項2または3に記載の射出成形機用取出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機用取出機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形システムは射出成形機および取出機を有する。射出成形機は、金型装置内のキャビティ空間に液状の成形材料を充填し、充填した成形材料を固化させることにより成形品を成形する(例えば、特許文献1参照)。取出機は、金型装置から成形品を取り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−183705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、成形停止時に金型装置に結露が生じることがあり、結露の跡が成形品に付くことがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、成形停止時に金型装置の結露を抑制できる、射出成形機用取出機の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
金型に形成されるキャビティ空間に成形材料を充填して得られる成形品を前記金型から取り出す射出成形機用取出機であって、
ガス流路を形成するガス流路形成部と、
前記成形品を保持する成形品保持部とを有し、
前記ガス流路形成部は、成形停止時に、前記金型の温度よりも低い露点温度の除湿ガスを前記ガス流路から前記金型に吹き付け、
成形運転時に、前記ガス流路形成部が前記成形品保持部から前記ガス流路へガスを吸引することにより、前記成形品保持部が前記成形品を吸着して保持する、射出成形機用取出機が提供される。

【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、成形停止時に金型装置の結露を抑制できる、射出成形機用取出機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態による射出成形システムの型閉完了時の状態を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による射出成形システムの型開完了時の状態を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による射出成形システムの成形停止時の状態を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態による射出成形システムの型閉完了時の状態を示す図である。図1において、図2および図3に示す取出機40、吸気源50、給気源60、および除湿ガス源70の図示を省略する。図2は、本発明の一実施形態による射出成形システムの型開完了時の状態を示す図である。図3は、本発明の一実施形態による射出成形システムの成形停止時の状態を示す図である。
【0011】
射出成形システムは、例えば図1図3に示すように、射出成形機10、金型装置30、取出機40、吸気源50、給気源60、除湿ガス源70、および制御装置80を有する。
【0012】
射出成形機10は固定プラテン12および可動プラテン13を有し、金型装置30は固定金型32および可動金型33を有する。
【0013】
固定プラテン12は、フレーム11に固定される。固定プラテン12における可動プラテン13との対向面に固定金型32が取り付けられる。
【0014】
可動プラテン13は、フレーム11上に敷設されるガイド(例えばガイドレール)17に沿って移動自在とされ、固定プラテン12に対して進退自在とされる。可動プラテン13における固定プラテン12との対向面に可動金型33が取り付けられる。
【0015】
射出成形機10は、固定プラテン12に対して可動プラテン13を進退させることにより、金型装置30の型閉、型締、および型開を行う。型締状態の固定金型32と可動金型33との間にキャビティ空間34(図1参照)が形成される。射出成形機10は、キャビティ空間34に液状の成形材料を充填し、充填した成形材料を固化させることにより成形品35(図2参照)を成形する。成形品35は、型開時に、可動金型33と共に移動してよく、固定金型32から分離してよい。
【0016】
取出機40は、図2に示すように型開後の固定金型32と可動金型33との間に挿入され、可動金型33から成形品を受け取る。その後、取出機40は、射出成形機10の外に退避され、金型装置30から成形品を取り出す。取出機40は、成形品保持部41およびガス流路形成部42を有する。
【0017】
成形品保持部41は、成形品35を保持する。成形品保持部41は、例えば筒状に形成されてよく、内部に成形品35を保持してよい。複数のキャビティ空間34に対応して複数の成形品保持部41が設けられてよい。
【0018】
ガス流路形成部42は、第1ガス流路43、および第2ガス流路44を形成する。第1ガス流路43は、配管を介して、吸気源50、給気源60、および除湿ガス源70と接続される。第2ガス流路44は、配管を介して、除湿ガス源70と接続される。
【0019】
吸気源50は、第1ガス流路43からガスを吸引する。吸気源50は、例えば真空ポンプで構成される。吸気源50が吸引するガスは、特に限定されないが、例えば空気であってよい。
【0020】
給気源60は、第1ガス流路43へガスを供給する。給気源60は例えば空気圧縮機で構成され、この場合、給気源60が供給するガスとしては空気が用いられる。尚、給気源60はボンベなどで構成されてもよい。また、給気源60が供給するガスは、多種多様であってよく、例えば窒素ガスでもよい。
【0021】
除湿ガス源70は、第1ガス流路43および第2ガス流路44へ除湿ガスを供給する。除湿ガス源70は例えば空気乾燥機で構成され、除湿ガスとしては乾燥空気が用いられる。尚、除湿ガスは、多種多様であってよく、例えば窒素ガスでもよい。
【0022】
制御装置80は、メモリなどの記憶部およびCPUを有し、記憶部に記憶される制御プログラムをCPUに実行させることにより、吸気源50、給気源60、および除湿ガス源70を制御する。例えば、制御装置80は、ガス流路形成部42によって第1ガス流路43から各成形品保持部41に供給されるガスを、保持解除用ガスと除湿ガスとの間で切り替える切替部として機能する。
【0023】
次に、取出機40の動作について説明する。
【0024】
取出機40は、成形運転時に、型開後の固定金型32と可動金型33との間に挿入される。続いて、制御装置80が吸気源50を作動させると、ガス流路形成部42が各成形品保持部41から第1ガス流路43へガスを吸引する。これにより、各成形品保持部41が成形品35を吸着し保持する。
【0025】
この状態で、取出機40が射出成形機10の外に退避され、成形品35が金型装置30から取り出される。その後、制御装置80が吸気源50を停止させ、給気源60を作動させると、ガス流路形成部42が第1ガス流路43から各成形品保持部41にガスを供給する。これにより、各成形品保持部41が成形品35の保持を解除する。
【0026】
取出機40は、成形停止時に、型開状態の固定金型32と可動金型33との間に配設されてよい。この状態で、制御装置80が除湿ガス源70を作動させると、ガス流路形成部42は、可動金型33の温度よりも低い露点温度の除湿ガスを第1ガス流路43から可動金型33に吹き付けると共に、固定金型32の温度よりも低い露点温度の除湿ガスを第2ガス流路44から固定金型32に吹き付ける。ここで、除湿ガスの露点温度とは、除湿ガスを冷却したときに除湿ガスの一部が気体から液体へ転化する現象が始まる温度をいう。
【0027】
第1ガス流路43は、途中で分岐しており、複数のキャビティ空間34に対応して複数の分岐路43aを有してよい。各分岐路43aは、可動金型33のキャビティ空間34を形成する壁面に除湿ガスを吹き付ける。除湿ガスの吹き付けは、連続的または間欠的に行われる。
【0028】
同様に、第2ガス流路44は、途中で分岐しており、複数のキャビティ空間34に対応して複数の分岐路44aを有してよい。各分岐路44aは、固定金型32のキャビティ空間34を形成する壁面に除湿ガスを吹き付ける。除湿ガスの吹き付けは、連続的または間欠的に行われる。
【0029】
取出機40は、成形停止時に、射出成形機10のカバー(図示せず)内に配設されてよい。カバー内に除湿ガスを溜めることができ、カバー内に配設される金型装置30の周辺を除湿ガスで満たすことができる。カバー内は、外気の侵入を制限するため、外気圧よりも高い陽圧とされてよい。
【0030】
以上説明したように本実施形態によれば、ガス流路形成部42は、成形停止時に、可動金型33の温度よりも低い露点温度の除湿ガスを第1ガス流路43から可動金型33に吹き付ける。可動金型33に除湿ガスが直接吹き付けられるため、成形停止時に、可動金型33の結露が抑制できる。よって、成形運転時に品質の良い成形品が得られる。
【0031】
また、本実施形態によれば、ガス流路形成部42は、成形停止時に、固定金型32の温度よりも低い露点温度の除湿ガスを第2ガス流路44から固定金型32に吹き付ける。固定金型32に除湿ガスが直接吹き付けられるため、成形停止時に、固定金型32の結露が抑制できる。よって、成形運転時に品質の良い成形品が得られる。
【0032】
また、本実施形態によれば、成形運転時に、ガス流路形成部42が各成形品保持部41から第1ガス流路43へガスを吸引することにより、各成形品保持部41が成形品35を吸着して保持する。従って、保持用のガス流路と、除湿用のガス流路とが共通化される。そのため、成形停止時に、除湿ガスは、保持用のガス流路を通り、各成形品保持部41から可動金型33に吹き付けられる。よって、各成形品保持部41の結露を制限することができる。また、各成形品保持部41から可動金型33に除湿ガスを吹き付けるため、可動金型33のキャビティ空間34を形成する壁面に除湿ガスを吹き付けることができる。よって、キャビティ空間34を形成する壁面の結露が抑制でき、成形品の品質がさらに向上できる。
【0033】
また、本実施形態によれば、成形運転時に、ガス流路形成部42が第1ガス流路43から各成形品保持部41にガスを供給することにより、各成形品保持部41が成形品35の保持を解除する。従って、保持解除用のガス流路と、除湿用のガス流路とが共通化される。そのため、成形停止時に、除湿ガスは、保持解除用のガス流路を通り、各成形品保持部41から可動金型33に吹き付けられる。よって、各成形品保持部41の結露を制限することができる。また、各成形品保持部41から可動金型33に除湿ガスを吹き付けるため、可動金型33のキャビティ空間34を形成する壁面に除湿ガスを吹き付けることができる。よって、キャビティ空間34を形成する壁面の結露が抑制でき、成形品の品質がさらに向上できる。
【0034】
尚、本実施形態では、保持用のガス流路と、保持解除用のガス流路とが共通化されるが、独立に形成されてもよい。この場合、除湿用のガス流路は、保持用のガス流路、および保持解除用のガス流路の少なくとも一方と共通化されてよい。

【0035】
以上、射出成形機用取出機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0036】
例えば、上記実施形態の取出機40は、成形停止時に、型開状態の固定金型32と可動金型33との間に配設されるが、取出機40の位置および金型装置30の状態は特に限定されない。例えば、取出機40は、成形停止時に、型閉状態の金型装置30の横に配設され、金型装置30に向けて横から除湿ガスを吹き付けてもよい。
【0037】
また、上記実施形態の取出機40は、成形停止時に、固定金型32と可動金型33の両方に除湿ガスを吹き付けるが、いずれか一方に除湿ガスを吹き付けてもよい。
【0038】
また、上記実施形態の取出機40は、可動金型33から成形品35を受け取るが、固定金型32から成形品35を受け取ってもよい。この場合、成形品35は、型開時に、固定金型32に付着し、可動金型33から分離する。
【0039】
また、上記実施形態の射出成形機10は、型開閉方向が水平方向の横型であるが、型開閉方向が上下方向の竪型であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 射出成形機
11 フレーム
12 固定プラテン
13 可動プラテン
30 金型装置
32 固定金型
33 可動金型
34 キャビティ空間
40 取出機
41 成形品保持部
42 ガス流路形成部
43 第1ガス流路
44 第2ガス流路
50 吸気源
60 給気源
70 除湿ガス源
80 制御装置
図1
図2
図3